著者
深沢 太香子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的</b> 温熱的快適性における性差を明らかにすることを目的とする.本研究では,ヒトの温熱的快適性と高い相関性のあることが確認されている皮膚濡れ率を用いて,実験的に検討することとした.<br><b>方法</b> 健康な日本人若年者を対象とした.本研究には,男子大学生7名(22.5 &plusmn; 1.2 歳)と女子大学生16名(22.1 &plusmn; 0.3 歳:卵胞期間中)の協力を得た.被験者は,実験用衣服を着用した後,気温 22 &deg;C,絶対湿度 10 mmHg,気流 0.2 m/s の温熱環境条件に制御された実験室内に,計65 分間滞在した.室内では,実験開始から20分間安静椅座位を保ち,その後45分間,4.5 km/h の歩行運動を行った.実験中,鼓膜温,皮膚温8 部位,皮膚露点温度5部位を連続測定した.主観評価として,全身の温冷感,湿り感,温熱的快適感について,5 分ごとに申告させた.<br><b>結果と考察</b> 実験時間における全身からの潜熱放散は,男子の方が女子よりも有意に多かった(p< 0.001).その結果として,男子の平均皮膚温は,女子よりも低値を示した(p< 0.001).さらに,男子における全身の皮膚濡れ率は,若年女子よりも高値を示した(p< 0.001).この皮膚濡れ率を指標とした全身の温熱的快適感の閾値は,男子の場合はw= 0.39 &plusmn; 0.05 (-)であり,女子の場合はw= 0.21 &plusmn; 0.03 (-)であった.両者の閾値には,有意差が認められたことから(p< 0.001),男性よりも女性の方が温熱的不快感を覚えやすいことが実験的に示された.これは,体温調節反応における性差とともに,女性の温冷覚の閾値は男性よりも小さいことに起因するものと考えられた.
著者
石井 克枝 境 里美
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.21, 2005 (Released:2005-12-08)

【目的】食生活の洋風化に伴いわが国においてもさまざまなスパイスを使用する調理が多くなってきた。甘い香りのスパイスは味覚に影響を与え、甘味の増強効果が報告されている。しかし、具体的な調理では詳細には明らかにされていない。そこで本研究では、甘い香りを持つスパイスを対象にし、嗜好性と各種調理における甘味の増強効果を調べ、スパイスを利用による砂糖の使用量の減少程度を明らかにすることを目的とした。br>【方法】甘い香りを持つスパイスはアニス、フェネル、バニラ、シナモン、バジル、八角の6種類を対象にした。甘味の増強効果は、一定量の各種スパイスに熱湯を加え3分間抽出し、これに蔗糖5%加えスパイス添加蔗糖溶液とし、5%蔗糖溶液を対照とし、3段階で評価した。調理における増強効果は、ババロア(バニラ)、りんごジャム(シナモン)、クッキー(アニス、バジル)、ナイトーフ(八角)、りんごのコンポート(フェネル)を対象にスパイス無添加のものを対照とし、識別法変法で、3段階評価を行った。【結果】嗜好性はバニラ、シナモン、バジルで高く、八角、アニス、フェネルで低かった。嗜好性の低いスパイスに共通する成分はアネトールである。5%蔗糖溶液に対しての甘味の増強効果はバニラが最も高く、シナモン、アニス、八角、バジルでも高い傾向であり、フェネルでは認められなかった。甘味を感じる時間を測定した結果、スパイス添加により蔗糖溶液の1.5倍から3倍になり持続性が高められることがわかった。各種調理ではすべての調理で甘味増強効果が認められ、砂糖の使用量をバニラでは40%、その他では20%減少できた。
著者
山口 智子 小谷 スミ子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

【目的】新潟県では米粉の消費拡大による食糧自給率の向上を図っており、米粉パンや麺類、クッキーなど米粉を使った食品が数多く開発されている。これまでに演者らは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いたアレルゲンフリー米粉パンの製造方法を確立している。本研究では、このHPMCの膨化作用を米粉ドーナツの製造に応用し、玄米粉を配合した米粉ドーナツの吸油率、硬さ、おいしさについて検討を行った。<br>【方法】白米粉はH21年度新潟県産コシヒカリDKタイプ(新潟製粉(株))を、玄米粉はH21年度新潟県産コシヒカリ((株)新生バイオにて製粉)を、増粘剤HPMCはSFE-4000(信越化学工業(株))を使用し、白米粉に対して玄米粉0、25、50、75、100%配合したドーナツを製造した。比較対象として小麦粉ドーナツも製造した。ドーナツメーカーで成形後、180℃のサラダ油で4分間揚げ、吸油率の測定と官能評価を行った。さらに、常温保存および冷凍保存したドーナツの硬さを、卓上型物性測定器(TPU-2S(B)、(株)山電)にて測定した。<br>【結果】吸油率は米粉ドーナツで約18%、小麦粉ドーナツで約26%となり、米粉ドーナツの方が有意に吸油率は低かった。玄米粉の配合割合の違いによる有意差は吸油率にはみられなかったが、硬さに関しては、玄米粉の配合割合が50%以上になると有意に硬くなった。官能評価において、外観の色は玄米粉の配合割合が高いほど悪いと評価され、総合的なおいしさでは玄米粉を25%配合した米粉ドーナツが好まれる傾向にあった。米粉ドーナツは常温で保存すると硬化が進むが、冷凍保存することにより硬化が抑制される傾向がみられた。
著者
工藤 彩 川端 博子 生野 晴美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.59, 2011

<B>目的</B> 授乳期においては体型の変化や授乳により妊娠前とは違った衣服が求められ、ブラジャーに関しては授乳専用品が利用される。授乳専用ブラジャーは一般に母乳パッドと共に使用され、乳頭部の保護と母乳を吸収する役割を果たす。本研究では、綿の授乳専用ブラジャーに3種のパッド(不織布と吸水ポリマーからなる使い捨て、綿100%布製、ポリエステル100%布製)を装着し、パッド内部の温度・湿度環境の実態把握と着用感の比較を目的とする。<BR><B>方法</B> 授乳期の女性の協力を得て、日常生活の中でパッドに付着する母乳の量と、パッド内部の温度・湿度の推移を把握した。室温28℃・湿度60%の人工気候室内で、女子学生被験者15名が30分間安静を保ち着用感の評価をした後、母乳にみなした37℃の温水を4mlパッド内部に注入し、安静30分後に再び着用感評価を行なった。5名については、小型のロガー付きセンサーを用いてパッド内部の温度・湿度を測定した。<BR><B>結果</B> 交換時までに使い捨てパッドに付着する母乳量には、同一人物でも、左右差があるなど一定の傾向はみられない。多い時には10gを超えるケースもある。パッド内部の温度は36℃前後、湿度は90%を超え、高温多湿である。一方、女子学生では温度33℃、湿度40~50%前後であった。<BR> 人工気候室内の被験者5名の水注入前のパッド内温度・湿度の平均は35℃、60%前後で、3試料間には温度・湿度ともに差はみられない。水注入後には、使い捨てでは温度・湿度はほとんど変化しないが、綿とポリエステル製では温度はともに下降した。湿度は、綿では急激に、ポリエステルでは緩やかに上昇するが、30分後には両者とも約90%になる。このことから、布製では母乳の漏れがある時にドライな環境を保つのが難しいと考えられる。不快感においても、水注入前には3試料間に差はみられないが、水注入後には使い捨てがもっとも優れていると評価された。
著者
五十嵐 由利子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

【目的】1Kプランの学生アパートにおいて、空間の有効利用の観点からベッドとして使用できるロフト付きアパートがある。しかし、実際にベッドとして使用していない学生も多いことから、ロフトがどのような使い方がされているのか、また、ベッドとして使用されていない要因について検討することを目的とした。【方法】ロフト付きアパートとロフト無しアパート(自宅生も含む)居住の大学生を対象に、アパートの選択理由、ロフトの印象、入居時と現在のロフトの使用実態、使用状況が変化した理由などについてのアンケート調査を行った(有効回答数:195)。さらに、ロフト付きアパート4戸(1戸のみベッドとして使用)を対象に夏季の温熱環境の実測調査を行った。調査期間は、2011年6月~8月末までである。【結果】<u>アンケート調査</u>から以下のことが分かった。①ロフトの印象として、おしゃれ、近代的と回答したものが多かった。②ロフト付きがアパートの選択理由の上位ではなかった。③ロフト付きアパート居住者は入居時ベッドとして使用していたものが73%であったが、現状ではベッドが30%、物置が49%と、ベッドの使用が少なくなった。③入居後にロフトの使用方法が変わったもの37人のうち、物置へ変更が33人と最も多く、その理由として夏の暑さが多かった。また、<u>温熱環境の実測調査</u>の結果、ロフトをベッドとして使用している住戸のみ、夜間のロフト温度が冷房停止後も30℃を超えにくかったが、他の3戸は冷房中でも30℃を超えていた。
著者
辻 美智子 舟木 愛美 藤井 恵子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.15, 2015 (Released:2015-07-15)

目的 雑穀はミネラルや食物繊維が豊富であり、食物アレルギー対応食材として活用が期待される。ハトムギは茶や漢方薬として用いられているが、ハトムギ粉を用いた加工食品の開発に関する報告は少ない。そこで本研究では、ハトムギ粉を主原料としたグルテンフリーパンを調製し、製パン性および嗜好性について検討した。 方法 パンの主原料はハトムギ玄麦粉とし、副原料にグラニュー糖、イースト、水を用いてパンを調製した。粉体特性としてアミロース、タンパク質、脂質含量、澱粉損傷度、吸水性、糊化特性、製パン性として色度、比容積、破断特性を測定し、官能評価により嗜好性を評価した。 結果 ハトムギ粉の粉体特性は、最大吸水量に達するまでに約200分かかり、米粉と比べ吸水量は少なくなった。また糊化特性のピーク粘度、最終粘度は、いずれも米粉に比べ低いことが明らかとなった。ハトムギ粉パンは、加水量が増加するほど比容積は大きくなったがきめは粗くなり、最適加水量は80%となった。また品質を向上させるためにオリーブ油を添加したところ、パンの比容積は小さくなる傾向を示し、オリーブ油2%添加時に初期弾性率が顕著に高くなった。官能評価において、市販品のライ麦パンを基準としてハトムギ粉パンを評価したところ、香ばしさ、外相のカリカリ感の評価が高く、総合的に好ましいと評価された。ハトムギ粉を主原料としてパンを調製することができ、嗜好的に好まれることが示された。
著者
治部 祐里 寺本 あい 安川 景子 佐々木 敦子 渕上 倫子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.18, 2006 (Released:2008-02-28)

<目的> 本研究では、玄米・七分つき米・精白米を、100℃・107℃・130℃対応の電気炊飯器で炊飯し、飯の物性測定を行い、玄米をおいしく炊く条件を検討した。また、電気炊飯器・圧力鍋・土鍋で炊飯した飯の官能評価や玄米と精白米の混合飯の好ましい配合割合について検討した。<方法> 本研究では、玄米・七分つき米・精白米を、100℃・107℃・130℃対応の電気炊飯器で炊飯し、飯の物性測定を行い、玄米をおいしく炊く条件を検討した。また、電気炊飯器・圧力鍋・土鍋で炊飯した飯の官能評価や玄米と精白米の混合飯の好ましい配合割合について検討した。<結果> 130℃・107℃対応炊飯器は昇温期(炊飯開始から温度急上昇期に達するまで)に細かく温度調節され、緩慢な温度上昇であったのに対し、100℃対応炊飯器は釜の温度の上下動が大きかった。普通炊きと玄米炊きを比べると、玄米炊きの方が普通炊きに比べ昇温期の緩慢上昇が短く、短時間で沸騰期に達し、沸騰期が長かった。炊飯中の温度は圧力鍋は120℃であった。玄米飯の官能評価は七分つき米・精白米の飯に比べ悪く評価され、七分つき米・精白米の飯は大差なかった。玄米を圧力鍋・電気炊飯器・土鍋の3器具で炊いた飯を比較すると、炊飯直後、2時間室温放置後とも圧力鍋で炊いた飯が最もおいしいと評価された。好ましい配合割合については玄米と精白米を同量の配合割合で炊いた飯が最もおいしいと評価された。
著者
多邊田 美香 深井 尚子 弦巻 和
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.92, 2004 (Released:2005-04-02)

【目的】家事実態については、いままで家事時間で比較されてきた。しかし、時間の長さだけでは家事実態は表しきれていないと思われる。そこで家事がどんな時間帯に実施されるのか「生活時間帯調査」を行い、現代の熟年・若年専業主婦の家事実態を明らかにした。【方法】1)インターネット調査:2003.6 2)郵送留め置き式アンケート:2003.7<首都圏在住・核家族 218人> (20_から_30代専業主婦131人、40_から_50代専業主婦87人 どちらも子供あり)【結果】40_から_50代の熟年世代は、洗濯・掃除・朝食の片付けなどの多くを午前10時頃迄に終えるのに対し、20_から_30代の若年世代では、昼ごろまでに終える傾向にあり、洗濯や掃除については夕方以降の実施もあるなど、家事時間帯に世代の違いがあることが分かった。このような違いは、家事意識の差から生じると考え、家事意識の視点から見ると、衣食住に関する基本意識(「食事はできるだけ手作りしたい」「汚れに気づいたら掃除したい」等)に大きな差は見られなかった。しかし「家で揚げ物をしたくない」「使う食器の枚数を減らしたい」等の省力化意識は、若年で強かった。さらに家事行動を詳細に見ると、熟年の洗濯には「汚れの前処理」「仕分け」など工夫があるが、若年は洗濯機まかせという家事の質の違いや、若年では実施頻度が低下している家事や「しない」家事があることが分かった。いわば熟年の家事は、意識も行動も[しなければならない(must)]であるが、若年の家事は、自分の価値優先[しなくてもよいものは省略・後回し(select)]ではないかと推測され、この家事に対する思いの差が、家事時間帯の違いとして現れたと考える。
著者
小林 由実 内方 文朗 上田 善博 加藤 邦人 小川 宣子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.207, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 おいしい天ぷらとは素材のうまみが保持され、さくさくとした衣に覆われているものと評価できる。天ぷらに使用する食材は、澱粉性食品のさつまいも、タンパク質食品の魚介類、野菜類など多種にわたるため、それぞれの素材のうまみが生かすための揚げ方について温度や時間などから検討されている。一方、家庭では、温度計に頼らず、視覚的に判断を行っている。そこで本研究では、160℃,180℃,200℃と異なる温度で食材を揚げ、その時の油の表面の様子を定量化するとともに、揚げ終わった時の衣の評価を水分含量、物性、画像処理から測定し、調理中の様子から天ぷらの出来上がりを推定することとした。 方法 1)試料:さつまいもを用い、衣(薄力粉:卵水=30:50g)をつけ、油(160℃,180℃,200℃)で4分(加熱2分後裏返す)加熱した。2)測定項目①調理中の変化:油面の様子を高速度カメラで撮影し、調理中に発生した気泡や波によるゆらぎをcontrastの時系列変化から調べた。②調理後の変化:衣の水分含量、物性を破断解析、凹凸の程度を画像処理によるcontrastから評価した。 結果 ①調理中の変化:160℃で調理した場合は油面のゆらぎは少なく、180℃は投入直後と20秒後で大きくゆらぎ、200℃は投入直後から非常に大きかった。②調理後の変化:油の温度が高くなるにつれ水分含量は少なく、破断応力は大きく、衣の凹凸は160℃は少なく平坦であり、180℃は全体に存在し、200℃はむらがあった。調理中の油面の様子が衣の形状に影響を与えると考える。
著者
小林 由実 上田 善博 加藤 邦人 小川 宣子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.17, 2015 (Released:2015-07-15)

目的 天ぷらの「おいしさ」は素材の旨味が保持され、さくさくした衣に覆われたものと評価できる。この「おいしさ」の評価を調理過程の指標から推定できる可能性を澱粉性食品のさつまいもから検討した1)。その結果、調理過程での水分蒸発量が天ぷらの出来上がりに影響を及ぼすことを明らかにした。そこで、本研究は調理過程における素材と衣の性状から調理過程中の水分挙動について検討を行った。 方法 天ぷらはさつまいも(直径46mm、厚さ8mm)に衣4.6g(薄力粉30g:卵水50g)をつけ、180℃の油(日清キャノーラ油)1300gで表裏それぞれ2分揚げて作成した。調理過程の水分蒸発は、油表面の泡の発生状況を高速度カメラで撮影し、油のゆらぎによる画像処理のcontrast値と秤の上で天ぷらを揚げた時の重量減少量の両者から経時的に調べた。あわせて、さつまいもと衣の調理過程中の性状変化を水分量、グルコアミラーゼ法による糊化度、走査電子顕微鏡像から調べた。結果 油面の泡の発生量はさつまいも投入1秒後と17秒後に多くみられ、これは水分蒸発量ともほぼ一致していた。さつまいも投入1秒後は主として衣から水分が蒸発し、17秒後は衣からさつまいもへの水分移動が見られ、合わせてさつまいもの細胞破壊が見られたことから、この時間は糊化が始まる時ではないかと推定した。[文献]1)小林他:日本家政学会第66回大会研究発表要旨集、p70(2014)
著者
黒林 淑子 河野 恵美 森光 康次郎 久保田 紀久枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.156, 2005 (Released:2005-12-08)

目的 セロリはコンソメスープを調製する際、よく用いられる香味野菜のひとつである。セロリは目的とする風味により、葉・茎部が使い分けられることがある。本研究ではセロリの部位別の香気組成を調べ、それらがスープ風味に与える影響を検証し、調理における使い分けの意義付けを試みた。方法 セロリの葉・茎部はそれぞれ水系で加熱後、水相をエーテル抽出し、SAFE(Solvent Assisted Flavor Evaporation)蒸留装置を用い揮発性成分を捕集し、GC、GC/MS、GC/O測定に供し、成分の分析を行った。一方、動物性素材のみでチキンブロスを調製し、水蒸気蒸留法により得られたセロリの葉・茎部の煮熟香気を添加し、その風味について官能評価を行った。結果 セロリ香気を加えたチキンブロスは添加前に比べ、大きく風味が改善された。その際、葉と茎では風味改善効果の特性に若干違いが認められた。セロリ特徴香に関与する主要成分として3-butylphthalide (1)、Sedanenolide (2)、Sedanolide (3)などのフタライド類が同定されたが、葉中には茎に比べ、特にSedanolideが多く見出された。フタライド(1)および(2)を単独でブロスに加えた場合の効果を評価したところ、種類により風味に与える影響が異なっていた。このことから葉と茎におけるフタライド類の組成の違いが、出来上がったスープの風味の差に影響を及ぼすのではないかと考察された。
著者
片平 理子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.65, 2012 (Released:2013-09-18)

目的 シイタケのうまみ成分のグアニル酸(5’‐GMP)は、加熱調理中にヌクレアーゼによるRNA分解により生成され、続いてホスファターゼの作用を受けると無味のグアノシン(GR)になることが明らかにされている。しかし、この2つの酵素以外の5’‐GMPの生成と分解に関与する酵素や代謝経路については、ほとんど報告が無い。本研究では、シイタケの5’‐GMP生成に関係するプリンヌクレオチド代謝経路の全体像を明らかにし、これまで注目されなかった経路のうまみ生成への寄与について検討を加えた。方法 生及び50℃送風乾燥干しシイタケスライスを用いて14C標識したプリン代謝関連物質のトレーサー実験(25℃・4時間)を行い、粗酵素液でプリン代謝関連酵素活性を測定した。結果 生シイタケには、5’-GMPの分解により生じるGRやグアニン(G)がサルベージ(再利用)されて5’‐GMPに再変換される代謝経路が存在した。グアニンヌクレオチドはアデニンヌクレオチドの変換によっても生成されたが、逆は起こらなかった。酵素活性測定結果から、GRは直接5’-GMP には変換されず、ホスホリラーゼによってGに分解されてか ら、GとPRPPから5’-GMP を生成するホスホリボシルトランスフェラーゼ(GPRT)によって5’-GMP に再変換されると推定された。干しシイタケスライスでは、GPRT活性が生と同レベルで検出されたが、トレーサー実験ではGやGRはPRPPを添加した場合にのみ5’-GMP に変換された。干しシイタケでは限られた条件下でのみサルベージ経路による5’-GMP合成が起こると考えられた。
著者
平林 由果 片瀬 眞由美 渡辺 澄子 栗林 薫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.93, 2003 (Released:2004-05-25)

【目 的】制服にローファーを履いて通学する女子高校生の姿をよく目にする。ローファーは歩行に適した靴とは言えない。それにも拘わらず、ローファーを履いている高校生が多いのはなぜだろうか。そこで、高等学校における通学靴の現状を把握するため、生徒指導教諭と女子高校生を対象にアンケート調査を実施した。【方 法】調査1:愛知県下の全高等学校(男子校を除く)218校に調査用紙を送付し(郵送調査法)、通学靴に関する規定の有無とそれに関連する着衣や持ち物などに関しての規定について調査した。調査は2002年7月に実施し、127校(58.3%)から回答を得た。調査2:調査1の結果から、通学靴を指定している高等学校に対し、指定されていることに対する女子高校生の意識を尋ねる調査を実施した(自記式集合調査法)。調査時期は2002年12月、有効回答数は759であった。【結果および考察】調査1:通学靴を「指定している」高校は13%であり、すべてがローファーを指定していた。「規定を設けている」は61%であった。指定や規定を設けている理由としては、「制服との調和」、「高校生らしさ」などが多く挙げられていた。調査2:回答した高校生の67%が指定されているローファーを気に入っていた。指定靴に関して「制服との調和」、「色」は、ほぼ80%が満足していると回答したが、「価格」、「個性の表現」では、50~60%が不満足と回答した。指定靴がない場合でもローファーを履きたいというものは64%を占めており、靴を選ぶ第1の基準が「色・デザイン」であるという高校生の実態と関連していると思われる。
著者
小林 史幸 小竹 佐知子 大久保 恵子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的:</b>南総里見八犬伝、椿説弓張月等の作者として知られる戯作者・曲亭馬琴(1767-1848年)は、身辺の出来事について詳細な日記をつけていた。その『曲亭馬琴日記』の天保2および3年(1831~32年)の2年間を対象とし、当時の食の状況を知ることを目的にして、特に菓子類について、その種類と用途に注目して文献調査をおこなった。<b>資料:</b>『曲亭馬琴日記』(中央公論社、2009)の天保2年と同3年の本文から菓子の記述を抜き出し、各種菓子の記録数および全体に対する記録数の割合を調べた。その際、種類別と用途別の2種類の方法で集計した。種類別の集計では1種類の菓子の記録1つにつき1回と数え、用途別の集計においては、1つの用途に必要とされる菓子の数を菓子の登場回数とした。また、砂糖については入手頻度と入手量からその使用状況を推測した。<b>結果:</b>日記に登場する菓子類を種類別にみると菓子、餅菓子といった大まかな分類の他、落雁、団子など個々の名称もあわせて25種類の菓子類に関する事柄が記録されていた(天保2年に143回、天保3年に162回の記録)。両年とも最も記録回数が多かったものは餅菓子(38回、55回)であり、正月準備に多種多様な餅を注文したものが多く見られた。次いで多かった砂糖(29回、36回)の場合は、白砂糖、黒砂糖の分類、分量等詳細に記録された日もあったが、砂糖を入手したということのみ記録された日もあった。用途では贈答、供え物、注文品記録、購入品記録等全部で20種に分類できた(169回、193回)。その中では貰い物が最も多く(68回、61回)、その送り主は大家にあたる人物、身内、友人、板元からの物が多数記録されていた。
著者
菅沼 恵子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的</b> 布の滑りやすさは美しい装いや衣服の着脱をスムーズにするなどの点で重要な性質である。この目的で裏地やスリップなどが用いられるが、汗などで湿潤状態になるとかえって滑りにくいと感じられることもある。先の研究によって布が含む水分によって摩擦係数が大きくなり、滑りにくくなること、またこの影響はナイロン、ポリエステルに比べて綿、レーヨン、キュプラでは大きいことがわかった。今回布の水分率と摩擦係数の関係を詳細に調べ、水分率による影響を数値で表した。<b>方法</b> 1)摩擦係数の測定 摩擦感テスターKES-SEを用いて、ピアノ線センサーにおける布の摩擦係数を測定した。ナイロンタフタ、ポリエステルタフタ、ポリエステルサテン、ポリエステルモスリン、キュプラ2種、レーヨンタフタ、スフモスリン、綿金巾、絹羽二重などの布を用いた。2)水分率の測定 水分率の自然対数に対して摩擦係数がほぼ直線的に変化する範囲の水分率(~約70%)を数段階調整し、摩擦係数測定後直ちに秤量ビンに移して重さをはかり、乾燥して絶乾質量から水分率を算出した。<b>結果</b> 水分率の自然対数―摩擦係数の曲線は①水分率に従って摩擦係数が増加する領域と②やがて飽和し、③その後過剰な水分によってやや摩擦係数を減じる領域に分けられる。水分率による影響の大きさは主に①に依存し、その領域では直線近似が可能である。そこでこの直線の傾きを求めて水分率の影響の指標とした。その結果、ポリエステルが織り方に依存せず最も小さく、次いでナイロン、その他の布はかなり大きく、ほぼ一定の範囲内の値となった。
著者
土肥 沙有里 飯島 久美子 香西 みどり
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.165, 2012 (Released:2013-09-18)

目的 真空調理法は食品を調味液と一緒にフィルムに入れ、減圧状態で包装してから加熱する調理方法であり、煮崩れしにくく、味がしみこみやすいと一般的にいわれているが、基礎的な研究に関する報告は少ない。そこで本研究では、減圧処理が食品に及ぼす影響を明らかにするために、種々の検討を行った。方法 試料としてダイコンを用いた。真空包装機による真空包装試料、真空デシケーターによる減圧処理試料(0~0.8 atm)を調製し、対照を大気圧試料として、真空包装後に加熱した試料の硬さ、生試料中央部の切片における生細胞率、密度測定による空隙率、生および加熱試料における調味液(食塩水、しょうゆ溶液)浸漬後の食塩濃度の測定を行った。結果 真空包装し20℃で2または4時間放置後に沸騰水加熱をした試料でわずかな硬化傾向が見られた。各減圧処理および処理後1~5日間の4℃保存による生細胞率の明瞭な変化は確認されなかった。減圧処理による試料の空隙率の明瞭な低下は見られなかった。加熱後に食塩水中で0 atmの減圧処理した試料では、浸漬10分で外側において対照よりやや高い食塩濃度を示したが、適度な濃度となる30分以上では差がみられなかった。試料と同量のしょうゆ溶液と共に真空包装した試料および10倍量の同液中に浸漬した対照試料を95℃で加熱すると、少ない調味液量の真空包装試料は調味液が十分な対照試料より低い塩分濃度を示した。以上より、減圧処理による細胞膜の損傷はわずかであり、調味液中の食塩拡散の明らかな促進は認められなかった。真空調理法は成分の溶出と煮崩れが防止できるため、少量の濃い調味液で加熱することで、より効果的に利用できることが示された。

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著者
松本 幸子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.237, 2015 (Released:2015-07-15)

■目的 古着の意味は、過去に着用されたことのある服飾品の総称である。古着は他の人と違う個性あるファッション表現と格安であることから、若者の間で着用する人が増えている。現在どのような古着が売れているかを店舗商品の傾向と若者の古着に対する意識を調査し、どの程度取り入れられているかを明らかにすることを目的とする。■方法 現在古着の店舗がたくさんあると言われている中で、高円寺、下北沢、原宿、中目黒、町田、渋谷が古着店舗の地域が有名とされている。そこで今回は、高円寺と下北沢に加え、地元である町田の店舗調査を行った。方法として、店内のコーディネートとそれぞれのお店の特徴と売れ筋商品の聞き取り調査を行った。更に古着に対しての意識調査をアンケート調査よって収集し検討することとした。■結果 店舗調査の結果、高円寺店舗は、チェック柄やギャザー、フリルなどの可愛い系が目立ち、下北沢店舗は、ビックシルエット系が多く、町田店舗は、あまり特徴がなかった。共通点として挙げられるのは、重ね着とロング丈のスカートが多いことであった。アンケート結果では、古着のイメージとして、1・2・3位は「個性的である」・「安い」・「オシャレ」となった。他の選択肢であった「着こなすのが難しい」「古ぼけている」といったマイナスイメージはとても少なく、古着に対するイメージはプラスのものが多く、日常生活に活用されている割合が多いことがわかった。
著者
小寺 真実 針谷 萌那 森 太郎 原 知子 久保 加織
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的</b> 「近江の伝統野菜」14品目に含まれる杉谷なすび、下田なすの物理的特性を賀茂なす、千両二号と比較し、伝統野菜の普及の一助となる情報を収集した。<br><b>方法</b> 滋賀大学内農場で栽培した杉谷なすび、下田なす、賀茂なす、および千両二号の果実を供試した。赤道を中心とした幅2cmの輪切りなすを200℃で30分間加熱したものを焼きなすとした。クリープメーター(山電)により直径1.5mmの円柱状プランジャーを速度0.5mm/sで圧縮・貫入させて物性を測定した。色調は測色色差計(日本電色工業株式会社)を用いて測定した。官能評価は、滋賀大学の学生および教職員44名を対象に5点評点法により行った。<br><b>結果</b> 破断荷重値より、生なすの果皮は、賀茂なす、杉谷なすび、千両二号、下田なすの順に、果肉は、杉谷なすび、賀茂なす、下田なす、千両二号の順に硬いことが明らかになった。官能評価でも、生の下田なすが他品種に比べ柔らかいと判断された。焼きなすにすると、果皮は柔らかくなったが、杉谷なすびは他品種に比べ、あまり柔らかくなることはなく生の硬さに近かったが、もろさ荷重値は大きかったことから、噛み切りやすさがあると考えられた。杉谷なすびの果皮はL*値a*値b*値ともに他品種より低く、緑がかった深い紫色であった。果肉の色調では品種間に大きな差はなかった。焼きなすにすると、果皮のL*値a*値b*値は高くなった。果肉はa*値が高くなったが、品種間で色調が異なった。
著者
河原 咲子 萱島 知子 松原 主典
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.69, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 これまで我々は、シソ科ハーブのローズマリーの機能性成分であるカルノシン酸とカルノソールが血管新生を抑制することを明らかにした。血管新生はガンの進行に関与していることが知られている。今回は、卵巣腫瘍細胞に対するローズマリー成分の効果として、細胞増殖とガン進行の因子であるストレスホルモン刺激に対する影響を明らかにすることを目的とした。 方法 卵巣腫瘍細胞(SKOV3)を用い、ローズマリー成分であるカルノシン酸、カルノソール、ロスマリン酸、ミルセンを培地に添加し、一定時間培養後、Cell Counting Kit-8を用い吸光度を測定し細胞数を測定した。またカルノシン酸添加後、ストレスホルモンであるノルエピネフリン添加により刺激を与え、一定時間培養後、上清中の血管内皮細胞増殖因子VEGF量をELISA法にて定量し求めた。 結果 SKOV3の増殖については、コントロールと比較しカルノシン酸添加により、25 µMで50%程度、50 µMで10%程度にまで抑制された。同様に、カルノソール添加によりSKOV3の増殖は有意に抑制された。ストレスホルモン刺激に対する影響については、ノルエピネフリン添加でSKOV3の増殖は増大し、これはカルノシン酸添加により抑制された。また、ノルエピネフリンによるVEGFの増大も、カルノシン酸添加により抑制された。