著者
大浦 律子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.124, 2004 (Released:2005-04-02)

目的:家庭洗濯によって排出される排水は、下水道がまだ完全に整備されていない現状では、河川水への負荷を与えている。環境負荷を低減するための洗浄剤のビルダーとして、酸素系漂白剤の有効利用を試みた。洗浄補助剤としての漂白剤の利用は、近年の除菌習慣の高まりと共に実用されつつあるが、色素汚れの除去にはまだ不十分である。本研究は市販漂白剤入りの洗剤とモデル洗剤との比較を行いながら、漂白剤を配合することによる界面活性剤の減量化を図った。また、酸素系漂白剤の河川水中での分解について検討した。方法:漂白剤入り市販洗剤及びモデル洗剤を用いて洗浄実験を行い、洗浄性を比較した。洗浄実験には湿式汚染布および紅茶汚染布を用いた。洗浄性は洗浄効率の算出、洗浄後の汚染布の分光反射率曲線、蛍光強度の測定により評価した。また酸素系漂白剤の河川水中での分解速度を滴定法により測定し、河川水中への影響について調べた。結果:界面活性剤を10_から_20_%_減量し、この減量分の酸素系漂白剤を配合すると、湿式汚染布の洗浄効率は低下せず、色素汚れの除去率は上昇する。漂白剤配合の市販洗剤では色素除去には特に効果はなく、洗浄による白さは蛍光増白剤に依存していることが確認された。酸素系漂白剤の環境負荷について、河川水中での分解速度はpH、温度ともに高いほど速く、特に過炭酸ナトリウムについては夏季ではかなり速く分解する。界面活性剤の濃度が濃くなるとCOD値も高くなるため、界面活性剤の減量化が望まれ、このための対策の一つとして漂白剤の有効利用が望まれる。
著者
湯浅 勲 湯浅(小島) 明子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.166, 2003 (Released:2004-05-25)

【目的】アロエは種々の生理作用を有し、機能性食品として注目を浴びている。我々は、昨年度の本大会においてアロエ抽出物の肝傷害保護作用について報告したが、本研究ではアロエの抗ガン作用に着目し、その作用メカニズムについて検討した。【方法】エールリッヒ腹水ガン細胞は10%FCSを含むMEM培地で3~4日間培養した後、実験に供した。アロエ(Aloe Africana Miller/ Aloe ferox Miller/ Aloe spicata Baker混合種)は乾燥粉末を有機溶媒(エタノール、クロロホルム、酢酸エチル、ブタノール)を用いて分離、抽出した後、凍結乾燥したものを用いた。細胞生存率はTrypan-blue法により、DNA合成能は細胞内の3H-thymidine量により測定した。細胞周期はPI染色後、Laser scanning cytometerを用いて解析した。【結果】アロエの各抽出画分における抗ガン作用を細胞生存率およびDNA合成能で評価したところ、クロロホルム抽出画分に最も強い抗ガン作用が認められた。さらにクロロホルム抽出画分の細胞周期に及ぼす影響を調べるためにLaser scanning cytometerを用いて解析したところ、コントロール群と比較してDNA合成期であるS期が顕著に減少し、アポトーシス細胞死の指標であるsub-G1期の増加が認められた。この際、G1期からS期への移行に関係するRbタンパクのリン酸化が抑制されていることが確認された。【結論】アロエには抗ガン作用を有する成分が含まれること、また、その成分はガン細胞におけるDNA合成を抑制することによってガン細胞のアポトーシス細胞死を誘導することが明らかとなった。
著者
佐々木 麻紀子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.246, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 家庭洗濯は衣類に付着した汚れを除去し、元の状態に回復させながら繰り返し使用していくことを目的に行われる。そこで家庭洗濯の効果的な方法を検討することを目的として、衣類の中でも汚れ落ちが気になる靴下汚れを試料として着用実験を行い、つけ置き洗いの効果について検討した。方法 20代から30代の女性10名に日常生活及び運動中に靴下(綿100%白色)を着用し活動をしてもらい試料とした。洗濯は、市販の液体洗剤及び粉末洗剤に30分間浸け置き後、渦巻き式洗濯機及びドラム式洗濯機の標準コースで洗濯を行った。着用・洗濯を繰り返し6回行い、新品の靴下との一対比較でつま先、かかと、すねの3カ所について目視により9段階評価した。結果 運動中に着用した靴下の汚れは毎回のつけ置き洗いの有無で洗浄性に差があり、つけ置き効果が高い。しかし、日常生活で着用した場合の汚れ落ちはつけ置き洗い有は無の場合より効果はあるものの、運動中と比べその効果は小さいことがわかった。日常生活及び運動中ともにつけ置き洗いをしたものは、洗浄効果が高く、つけ置き洗いの効果が認められるものの汚れの種類によりその効果に差があること、また1回の洗濯では汚れ落ちの差は少ないが、汚れは累積しており、6回の繰り返し洗濯において洗濯方法の違いによる汚れ落ちに差がみられた。この実験では、洗濯機の種類による汚れ落ちの差は認められなかった。
著者
楠 幹江
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.151, 2005 (Released:2005-12-08)

目的:健康の視点から靴下の効用を考えると、足部の保温性や皮膚の保護、清潔などが考えられる。これらの効用は、当然ながら、靴下の物理的形状により異なると思われるが、本研究では、普通靴下と5本指靴下を使用して、その相違を検討した。<BR>方法:普通靴下と5本指靴下の相違を検討するため、女子学生を対象として、アンケート調査および被験者実験を試みた。アンケート調査では、靴下の形状による健康観の相違をたずねた。また、被験者実験では、素材を綿100%に限定した両者の靴下を使用して、皮膚表面温度の測定(サーモトレーサーを使用)、血圧・心拍数の測定、足型の測定(フットプリンターを使用)、疲労度の測定(むくみの検討:下肢の5カ所の周経を測定)、靴下の形状による相違を検討した。<BR>結果:1. アンケート調査による意識調査の結果、5本指靴下に対する健康的イメージ度は高い結果が得られた。一方、ファッション的イメージ度は高くもなく低くもなくといった中間的な結果であった。2.サーモトレーサーによる皮膚表面温度の測定結果、安静時における表面温度は普通靴下着用時が高いが、運動後の表面温度は5本指靴下の方が高い結果が得られた。靴下の形状による保温効果の相違はあると考えられる。3.疲労度の指標として、14時間着用後の足のむくみを測定した結果、普通靴下着用よりも5本指靴下着用の方がむくみが少ない傾向が得られた。4.フットプリンターによる歩行時の足型を検討した結果、普通靴下着用よりも5本指靴下着用の方が素足に近い足型が得られた。靴下の形状による歩行状態の相違はあると考えられる。
著者
柚本 玲 今井 綾乃 田中 辰明
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.131, 2005 (Released:2005-12-08)

目的本研究では衣類のカビ汚染を防ぐために市販防虫防カビ剤の代替品として天然植物精油を使用することを目指した。精油は天然由来で生分解性が高いこと、市販されており入手しやすいなど居住者にとって利点が多い。そこで、気体状態でカビを発育阻止する市販の天然植物精油を選出し、効果の持続性、必要量、揮発成分の発育に対する影響を検討することを目的とした。方法衣類のシミから分離したCladosporium cladosporioides、Aspergillus nigerを供試菌としてpotato dextrose 寒天培地に植菌し、ペトリ皿(φ90 mm)内に0.1 mlの精油を含ませた滅菌ろ紙を培地に触れないように設置した。25℃で7日培養後に集落が目視確認できなければ”効果あり”とし、効果持続日数、必要量、精油揮発成分と発育阻止効果との関係を分析した。結果精油の揮発成分に室内空気汚染源となる物質は含まれていないことを確認した。両真菌に効果のあった精油は8種、C. cladosporioidesのみでは3種、A. nigerのみでは2種であった。両真菌を30日以上発育阻止した精油は7種、C. cladosporioides のみでは3種であった。そのうち、本実験の最少量である6μlで30日発育阻止した精油は、両真菌に対してLEMONGRASS、THYME、C. cladosporioidesに対してはROSEWOOD、A. nigerに対してはCINNAMON leafであった。発育阻止持続日数の短いつまり発育阻止効果の弱い精油の揮発成分放散量の方が効果の強い成分よりも多い傾向にあったことから、放散量が発育阻止効果に与える影響は小さいことを確認した。
著者
小泉 智史 矢田貝 智恵子 内藤 佐和 柳澤 泰任 須見 洋行
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.44, 2004 (Released:2005-04-02)

【諸言】ビタミンKは血液凝固因子の合成のみならず骨粗鬆症との関係が注目されている。これまで当研究室では納豆菌が生産するビタミンK2(MK-7),ナットウキナーゼ(NK)について報告してきた。今回,市販納豆及び納豆菌によるビタミンK2,NKについての培養温度,振盪速度による生産性の変化などを検討した。【実験方法】納豆菌は(Bacillus subtilis natto)納豆の製造に用いられる宮城野株,朝日株,高橋株,医薬用に用いられる日東株,目黒株,中国雲南省の納豆から分離した雲南株,金沢株の計7種類の菌株を基本培地2%ポリペプトンS(和光純薬),3%グリセリンを用い,液体振盪培養を行った。また比較対象として市販納豆7種類の乾燥物を試料とし,MK-7は当研究室で確立したHPLC法(Sumi et al.,Food Sci.Tech.Res,5:48,1999;農化,73:599,1999)で測定した。またNKの血栓溶解活性は標準フィブリン平板の溶解面積(mm2)(Sumi et al.Experientia,43:1110,1987)で測定した。【結果】市販納豆7種類でのMK-7含量は11.9±8.6μg/g(dry wt)で,液体振盪培養による菌体内MK-7含量は2,852.0±2,774.2μg/gとはるかに高含量であり,最も多く生産したものは29℃の金沢株の12,800μg/g(dry wt)であった。培養液上清の場合,特に目黒株は100rpmよりも30rpmの方が高い数値を示した。またNKの血栓溶解活性はMK-7とは相関せず,29℃よりも37℃,30rpmよりも100rpmの方が生産性のよいことが確認された。
著者
西澤 千惠子 北野 亜紀 鈴木 美弥 小長井 ちづる グュエン ヴァン·チュエン
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.122, 2002-06-01 (Released:2003-07-29)

コーヒーは牛乳やクリームなどと混合され、飲料されることが多い。そこでコーヒーに牛乳、クリーム、砂糖などを添加した時に、コーヒーの有する抗変異原性、抗酸化性およびラジカル消去作用が変化するかどうかを検討した。その結果コーヒーおよび牛乳を原料とする添加物はこれだけで抗変異原性、抗酸化性およびラジカル消去能を示した。またコーヒーにこれらの添加物を加えると、抗変異原性およびラジカル消去能は大きくなり、抗酸化性はコーヒーとの中間の値を示した。これらの性質はコーヒー中のクロロゲン酸と乳製品中のカゼインが関係していると思われ、混合してもクロロゲン酸やカゼインは妨害されることなくそれぞれの性質を発現しているものと推察された。
著者
畑江 敬子 香西 みどり 古川 英 熊谷 美智世 伊藤 純子 十河 桜子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.250, 2003 (Released:2004-05-25)

【目的】近年、家庭用調理機器においては従来のガスコンロに代わり、電気の誘導加熱を利用した電磁調理器(IH)の普及が進んでいる。そこで本研究では、現状の調理内容に即したエネルギー使用データを収集し、ガスコンロとIHの違いを把握することを目的としている。【方法】 春夏秋冬それぞれ1日の朝食、昼食、夕食の献立を、女子栄養大出版部「栄養と料理」献立カレンダーより選定し、さらに一部をアンケート結果による人気メニューに置きかえることにより、季節、栄養、カロリー、調理方法、人気を考慮した現代版メニューを作成した。年代と調理経験の異なる3人の調理者により、作成メニューについてガスコンロ、IHそれぞれに対し同じ調理を行い、熱量および使用時間を測定した。実験では大きさを揃えた両調理器で適した鍋を用い、同一メニュー内では食材および量を統一した。【結果】IHの方が多くの一次エネルギーを消費した。四季別において冬メニューでは夏の2倍以上のエネルギーを消費し、調理別においては湯沸かし茹で、煮るでエネルギー消費量全体の6割以上を占め、これらはガスコンロ、IHで同じ傾向を示した。火力別の効率と使用割合から一次エネルギーでの総合効率を求めると、ガスコンロで50.0%、IHで27.7%となった。ランニングコストは四季別、調理別のどちらにおいても電気代の方がガス代に比べ高くなった。両調理器の10年間の使用を含めた製造から廃棄までの総エネルギー消費量は、IHではガスコンロの約1.3倍となった。
著者
久保 桂子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.164, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 共働き世帯において、夫の職場環境が夫の家事・育児参加や、仕事が家庭生活への妨げという夫の意識に影響を及ぼすことは、これまでの研究において明らかにしてきた。本研究では、さらに、夫の職場環境が妻の仕事と家庭生活の葛藤とも関連するかを明らかにする。加えて、妻の葛藤と、妻の夫に対する家庭生活への参加要求行為(クレーム行為)との関連についても検討する。方法 2013年11月に、千葉県西部の公立保育所21保育所の保育園児の保護者を対象に行った質問紙調査の結果を用いて分析する。調査票は家族票・母親票・父親票を組にして2119世帯に配布し、回収は1118世帯分であった(回収率52.8%、有効票は1099世帯、51.9%)。平均年齢は、夫37.5歳、妻35.7歳、平均子ども数1.7人である。結果 (1) 夫の職場環境が「残業を当然とする雰囲気・残業をしないと終わらない仕事量」の得点が高い場合、妻の仕事から家庭生活への葛藤の得点も高くなる傾向が認められる。一方、妻の家庭から仕事への葛藤との関連は認められない。また、育児など家族の都合を相談できない雰囲気という夫の職場環境は、妻の葛藤と関連がみられない。(2)夫の職場環境の残業関係の得点が高い場合、妻の夫へのクレームの得点も高い。しかし、実際の夫の労働時間の長さとクレーム行為との関連は弱い。(3)妻の仕事から家庭生活への葛藤の得点が高い場合、妻の夫へのクレーム行為の得点も高い。
著者
今井 悦子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.194, 2002-06-01 (Released:2003-07-29)

目的 属人器の実態の地域による違いを明らかにすることを目的とした。方法 2001年2月、放送大学の宮城、新潟、京都、広島および鹿児島学習センター所属の学生3,482名に対し、家族構成、食器の専用·共用状況と共用への抵抗感、外食の食器に対する抵抗感などをアンケート調査した。解析はχ2検定、CHAIDおよびコレスポンデンス分析を行った。結果 回収率は46%であった。1人世帯を除き、既に報告した埼玉のデータを加えて分析した。どの食器も、各地域の専·共·その他の割合には違いがあった。共用することへの抵抗感の有無は、飯碗、汁物椀および箸において地域差があった。食器の専用実態と共用に抵抗感ありの実態から見て、宮城と新潟、京都と広島はそれぞれ似ていた。
著者
望月 美也子 長谷川 昇
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.28, 2004 (Released:2005-04-02)

【目的】 茶(Camellia sinensis)は、近年、生理機能が多数解明され注目されている嗜好飲料である。我々は既に、粉末緑茶が高脂肪食を摂取させたZuckerラットの体重増加を抑制し、その原因は緑茶により脂肪細胞における脂肪分解が促進する事によることを明らかにしている。そこで本研究は、緑茶中の作用物質を特定する目的で、緑茶中の渋み成分である茶カテキン類の脂肪分解作用を確かめるために行われた。 【方法】 3T3-L1細胞を培養し、細胞がConfluenceに達した時点でインスリンを培養液に加え、脂肪細胞へと分化させた。脂肪分解作用は、充分に分化した脂肪細胞に茶カテキン類を添加し12_-_24時間反応後の細胞質中のグリセロール濃度、中性脂肪(TG)濃度を測定することにより判定した。【結果・考察】 細胞質のグリセロール濃度は、以下のような順になった。 (-)-epigallocatechin-3-gallate(EGCG) > コントロール> (+)-catechin緑茶カテキンの脂肪分解効果は、緑茶中に約53%含まれるEGCGによるものであることが明らかとなった。反対に、(+)-catechinは脂肪分解を抑制することが明らかとなった。これらの結果を総合すると、EGCGには強い脂肪分解作用がみられ、我々のこれまでに得たZuckerラットや、脂肪細胞での粉末緑茶の効果を裏付ける結果であると考えられた。一方、微量成分であるが、脂肪分解に対して反対の作用を示すカテキンの存在も確認された。
著者
湯浅 勲 小島(湯浅) 明子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.165, 2006 (Released:2008-02-28)

【目的】食物繊維による大腸ガンの予防メカニズムとして、発ガン物質の吸着や希釈による腸管上皮への曝露の減少、食物繊維中のフィチン酸による鉄ラジカルのキレートあるいは胆汁酸の抱合による排泄などが考えられているが、その詳細についてはいまだ明らかにされていない。本研究では食物繊維が腸内細菌による発酵・分解によって生成される短鎖脂肪酸に着目し、ヒト大腸ガン細胞(HT-29)の増殖におよぼす影響について検討した。【方法】HT-29細胞は10%FBSを含むDMEM培地に播種し、細胞を付着させた後、培地交換をおこない実験に供した。短鎖脂肪酸はナトリウム塩を用い、蒸留水に溶かした後、最終濃度が1または2mMになるように添加した。細胞生存率はTrypan-blue法を、細胞周期はLaser Scanning Cytometerを用いて測定した。【結果】食物繊維の発酵・分解により生成される酢酸、プロピオン酸と酪酸についてヒト大腸ガン細胞の増殖におよぼす影響について調べたところ、酪酸が最も強くガン細胞の増殖を抑制した。また、その抑制は細胞周期をG2/M期で停止させることによって誘導されることが明らかとなった。一方、酪酸と同時に活性酸素の消去酵素であるカタラーゼを添加すると、細胞増殖能は回復することから、酪酸によるガン細胞増殖の抑制作用には活性酸素が関与していることが示唆された。【考察】腸内細菌による食物繊維の発酵・分解によって生成される酪酸は、強いヒト大腸ガン細胞増殖抑制効果を有することが明らかとなった。また、その有効濃度は大腸内で生理的に産生される濃度(約10 mM)以下であった。これらのことから、食物繊維による大腸ガン抑制のメカニズムに酪酸が関与する可能性が示唆された。
著者
笠松 千夏 高岡 素子 戸田 貞子 飯島 久美子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.188, 2006 (Released:2008-02-28)

目的 精進料理は動物性食品を一切使用しないことから、カロリー控えめでヘルシーであると思われている。精進料理メニューの実態調査を行い、精進料理の栄養と食味の特徴を明らかにすることを目的とした。方法 鎌倉に店舗を構える精進料理専門店で季節のメニューを注文し、食品ごとの重量を測定した。栄養価計算はエクセル栄養君にて行い、50-69歳女性、身体活動レベルIIの1日の推奨量を基準に、各専門店の1食分のメニューの栄養バランスを検討した。また、白和え、きんぴらごぼうを”炒め”および”ゆで”の2通りで調製し、官能評価により香り、塩味、甘味の強さ、食感の好ましさについて比較した。結果 調査した専門料理店メニュー1食分のエネルギーは、876-1222kcalであり、エネルギー比率ではたんぱく質の割合が少なかった。不足している栄養素はビタミンDとビタミンB12であった。野菜の使用量は150-360gと多かった。白和えは具材を油で炒めることにより塩味を強く感じ、食感が好まれた。きんぴらごぼうは油で炒めた方が、甘味を強く感じた。精進料理メニューは食味の点で単調にならないよう、野菜類のうまみを存分に引き出すためにだしと油を効果的に使用した調理であることが確認できた。
著者
柴田 紗知 松原 主典 萱島 知子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.163, 2012 (Released:2013-09-18)

目的 シソ科ハーブであるローズマリーの主な機能成分として知られているカルノシン酸には、抗酸化作用や細胞の酸化ストレス生体防御機能(Keap1-Nrf2 システム)活性化作用が報告されている。本研究室では、カルノシン酸の新規機能として血管新生抑制作用を明らかにしている。血管新生抑制作用はガンとの関係がよく知られているが、近年脳疾患のリスク低下との関連性が注目されている。血管新生抑制物質による脳機能保護作用は、血管に対する間接的な効果と神経細胞に対する直接的な効果が考えられる。そこで本研究では、カルノシン酸の直接的な脳神経細胞保護作用について検討した。方法 実験には、ヒト神経芽細胞腫由来のSH-SY5Y 細胞を用いた。過酸化水素による酸化ストレス、神経毒、飢餓に対するカルノシン酸の神経細胞保護効果を発色試薬による細胞数測定法で評価した。また、カルノシン酸の細胞保護作用機序ついては、細胞情報伝達タンパク質リン酸化酵素に対する阻害剤を用いて検討した。結果 酸化ストレス、神経毒及び飢餓に対するカルノシン酸の脳神経細胞保護作用を検討した結果、カルノシン酸は酸化ストレスと飢餓において有意な保護作用を示した。一方、神経毒に対する保護作用は認められなかった。カルノシン酸の保護作用機序について、情報伝達タンパク質リン酸化酵素に対する阻害剤を用いて検討したところ、酸化ストレスと飢餓に対するカルノシン酸の保護作用が消失した。従って、カルノシン酸による細胞保護作用には細胞内情報伝達タンパク質のリン酸化に対する作用も関連していると推測された。
著者
雨宮 敏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<b>目的</b> クエン酸を用いてカルボキシ基を導入後に銅処理した染料不使用型の消臭綿布について,既に報告した.クエン酸処理綿布についてはアンモニアやエタンチオールに対する除去能は認められたが,酸処理に伴う綿繊維の脆化がみられた.本研究では,調製消臭布の強度を保持する目的で新たにクエン酸塩を用い,その消臭能を検討した.<br><b>方法</b> 綿ブロードを25℃のクエン酸二水素ナトリウム水溶液に浸漬し,予備乾燥後,熱処理を行った.クエン酸塩処理後,硫酸銅(II)五水和物を用い85℃で30 min,銅処理を行った.試料布2 gを入れた2 Lテドラーバッグにアンモニア1000ppmまたはエタンチオール100ppmを含む空気を導入後,バッグ内の気体の残存濃度を気体検知管法またはガスクロマトグラフ法で経時的に測定した.<br><b>結果</b> 得られた試料布の強度はクエン酸処理の場合よりも高かった.未処理綿布(白布)に対し,クエン酸塩処理綿布のアンモニア除去性能は顕著に向上した.カルボキシ基が繊維高分子に導入され,酸塩基中和反応による除去性が高まったと考えられる.また,クエン酸塩処理後に銅処理を行うことにより銅の取込量が増加したことから,導入されたカルボキシ基が銅の結合サイトとして用いられたことが示された.本研究で得られた消臭綿布は,酸塩基中和反応によるアンモニア除去と銅の酸化分解作用によるチオール除去という2つの異なる消臭機構を合わせ持つとともに,処理による強度低下が少なく,実用上有用であると考えられる.
著者
雨宮 敏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的 </b>これまで媒染染色により染料を銅の主な担持サイトとした消臭綿布を調製してきた.本研究では染料を用いず,多価カルボン酸を用いて綿布にカルボキシ基を導入後,銅処理を行った.調製した試料布のアンモニアやエタンチオールに対する除去能を検討した.<br><b>方法</b> 綿ブロードを25℃のクエン酸水溶液に浸漬し,予備乾燥後,熱処理を行った.クエン酸処理後,硫酸銅(II)五水和物を用い85℃で30 min,銅処理を行った.試料布を入れた2 Lテドラーバッグにアンモニア1000ppmまたはエタンチオール100ppmを含む空気を導入後,バッグ内の気体の残存濃度を気体検知管法または炎光光度検出器を用いたガスクロマトグラフ法で経時的に測定した.<br><b>結果</b> アンモニア除去については,30 min後,クエン酸未処理綿布(白布)では 600ppmであったのに対し,クエン酸処理綿布では0ppmを示し,クエン酸処理によりアンモニア除去性能が顕著に向上した.導入されたカルボキシ基との酸塩基中和反応による除去が行われたと考えられる.また,クエン酸処理により銅の取込量が増加したことから,導入されたカルボキシ基が銅の結合サイトとして用いられたことが示された.本研究で得た試料布はこれまでの媒染染色による銅量より少なかったが,エタンチオールに対する酸化分解型の除去能は示された.近年のアゾ染料への規制強化を考慮し,染料を用いずに綿布に銅を担持する方法は有用であると思われる.
著者
辻 幸恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.249, 2006

【目的】現在、キャラクターはその商品のイメージアップや売れ行きを良くするために衣類、食品類などの多く商品に活用されている。本報告の目的は、幼稚園児に選択されやすいキャラクター商品の特徴を明らかにすることである。【方法】調査地域は兵庫県と大阪府である。調査対象は幼稚園に通う5歳児クラスの158人である。なお、これは複数の幼稚園に通う園児の合計人数である。彼らを観察したことにより得た結果をデータとした。相関分析を用いて園児(男女それぞれ)と菓子(新製品、定番)、キャラクター(新キャラクターと定番)と菓子などの項目ごとに分析をした。【結果】女子の園児と女の子の好むキャラクター間(0.86)、男子の好む菓子とキャラクター間(0.78)には強い相関が見られた。一方、定番である菓子とキャラクター間(0.11)と新製品の菓子とキャラクター間(0.14)には相関が見られなかった。【考察】女子は菓子の種類よりも、キャラクターを選択基準としては優先させる傾向にある。一方、男子は菓子そのものの種類が重視されている。ここから女子には見た目の美も商品には必要であることが考えられる。また、「かわいい」にはサイズ、色に加えて流行の要因があると考えられる。
著者
平林 由果 渡辺 澄子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.37, 2007

【目 的】ファッションはその人のライフスタイルを反映し、個性を表現する。おしゃれをすることは、着る人の高揚感を高め、ストレスを軽減させ、免疫力を亢進させるのではないかと考えられる。そこで、気に入った服装とそうでない服装をした時にストレス負荷を行い、おしゃれの心理的効果とストレスホルモンへの影響を検討した。【方 法】ストレスの指標として、唾液中のアミラーゼ、コルチゾール、分泌型IgAを測定した。並行して服装時に生起する多面的感情状態尺度を肯定的・否定的な35項目について尋ねた。実験は女子大学生9名を被験者とし、5分間のクレペリン検査実施後、唾液を採取し、学内の人通りの多いロビーを通って売店で買い物をするというプロトコールで行った。服装条件(条件1: 気に入った服・化粧あり、条件2: Tシャツと短パン・化粧なし)を替えて同実験を実施し、その結果を比較した。【結果および考察】感情状態尺度において、実験後に条件1では肯定的感情状態の値が高くなり、条件2では否定的感情状態の値が高くなった。唾液中のアミラーゼ分泌量、IgA分泌量においては、服装条件の違いによる一定の傾向は認められなかった。コルチゾールの分泌量は9例中7例において、条件1の方が条件2よりも実験後の減少が大きく、有意差(P<0.05)が認められた。コルチゾール分泌量はストレス負荷により増加することが明らかにされている。この実験では、クレペリン検査によるストレスを買い物をすることで解消したが、気に入った服装時(条件1)の方がその効果が大きかったと推測される。これらの結果は、おしゃれを楽しむことがストレスを緩和し、心も体も元気にする可能性を示唆していると考えられる。
著者
川嶋 比野 織田 佐知子 数野 千恵子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.45, 2011

<B>目的</B> 我々は「染付皿に占める青色の割合が和食に与える影響」(家政誌,2010,Vol.61,no.12)で,白い皿色に占める青色の割合が40%前後の染付皿が多くの和食料理と相性が良かったことを報告した.それを踏まえ,本研究では皿に描かれている絵柄の種類によっても食欲の感じ方に影響があるのか,またどのような絵柄と料理の相性が良いのかについて調査を行った.<BR><B>方法</B> 植物,動物,風景,幾何学の絵柄の染付皿から柄の配置等が似ている写真を選び,画像処理ソフトを用いて青色の色合いを合わせ,皿に占める割合を40%程度に調整した.料理は,温菜として筑前煮,天ぷら,卵焼き,磯辺もち,冷菜として寿司,刺身,冷奴,水まんじゅうを用意し,皿と料理の写真を合成して自然な盛り付けに見えるよう大きさを調整した.食物栄養学部の女子大生53名,一般の中高年(40~80歳代)79名を対象とし,料理ごとに4種の皿に盛りつけられた写真を同時に見比べ,どれが美味しそうに見えるか順位法でアンケート調査を行った.<BR><B>結果</B> 対象者全体の結果としては,植物は全ての料理と相性が良く,風景は天ぷら,寿司,刺身などの高級なイメージのある料理と相性が良い傾向が見られた.動物は筑前煮や水まんじゅうと,幾何学は磯辺もちと比較的相性が良い傾向が見られた.女子大生と中高年で結果が大きく違ったのは,刺身,磯辺もち,水まんじゅうであり,女子大生はこれら3つとも植物の評価が最も高かったが,中高年は刺身では風景,磯辺もちでは幾何学,水まんじゅうでは動物の評価が最も高かった.中高年の性別で比較すると男性には風景が,女性には植物が好まれる傾向が見られた.また,温菜よりも冷菜で風景が好まれる傾向が見られた.
著者
増田 啓子 古寺 浩 東 珠実 柿野 成美 鈴木 真由子 田崎 裕美 吉本 敏子 村尾 勇之
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.63, 2003

【目的】学校教育法の一部改正に伴い、大学が文部科学相の認証を受けた認証評価機関による第三者評価を定期的に受けることが制度化された。実際の施行は平成16年度からで、当初は対象となる専門分野がある特定の分野に限られるものの、今後、様々な専門分野の教育・研究の質を個々にどのような認証評価機関が、どのような手続きにより、どのような基準によって評価するのか大変注目されるところである。本報告では、わが国における大学評価の全般的な現状をふまえながら、報告者らの研究グル-プがこれまでに明らかにしてきたアメリカ家政学会による認定活動に関する研究成果と、わが国においてすでに実施されている特定専門分野における認定活動における評価基準および、認定組織・手続きを比較・分析することにより、わが国で大学に対する専門分野別第三者評価が現実のものとなった場合の家政学分野における諸課題を見出すことを研究の目的とする。【方法】学校教育法の改正内容と特にその経緯を中教審などの公表資料(議事録など)から明らかにするとともに、アメリカ家政学会が発行している専門分野別基準認定手引書、日本技術者教育認定機構(JABEE)の同様な手引き・申請書式などから認定評価基準・認定組織・申請から認定取得に至る手続きを明らかにし、両者のそれを比較・分析する。【結果】比較した日米両組織が設定する認定評価基準は、教育プログラムの構造をはじめ細部にわたるもので、中教審の議論にもみられたように大学による自由な教育権との関係を明確にする必要がある。改名・改組という流れの中で、わが国の家政系学部・学科構成は多様化しており、特定専門職者育成に関わる分野に比して基準策定・適用が困難である。