著者
湯川 夏子 田中 康代 中村 道彦 木村 晶朗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.105, 2011

【目的】私たちが食事をしておいしいと感じる要因には、食べ物そのものの味やにおい、見た目だけでなく、食事をするときの周囲の環境(食事環境)が挙げられる。本研究では、食事環境として音環境を取り上げ、BGMが食欲に与える影響について検討した。<BR>【方法】2010年11月~12月の10時~12時に、大学生20名を対象に、食欲とBGMの関係性を調べる実験を行った。被験者に食堂の食器一式と料理の画像を見て食事をイメージしてもらいながら、5つの音環境(騒がしい洋楽・穏やかな洋楽・クラシック・学生食堂の録音・BGMを使用しない)において、食欲の増減、音環境の印象について質問紙調査を行った。同時に脳波測定(I-rlx, デジタルメディック社)を行った。統計処理にはSPSS15.0を、脳波解析にはData Make とExcel2010を用いた。<BR>【結果・考察】5つの音環境中、「騒がしい洋楽」で有意に食欲の減退がみられた。音環境の印象調査で、25形容詞対を主成分分析したところ、「優和性」「高尚性」「快活性」「評価性」の4つの因子が抽出された。因子得点より、クラシックで「優和性」「高尚性」が高い、「騒がしい洋楽」で「優和性」が低いという特徴がみられた。各因子と食欲の関係をみると、「優和性」と食欲の間に有意に高い相関がみられた。脳波測定の結果より「脳安静度」を算出したところ、学生食堂の録音やクラシックで安静度が高く、「騒がしい洋楽」では安静度が低かった。「脳安静度」と食欲は -0.63と逆相関がみられ、安静度が高い時、食欲も増すということが明らかになった。以上のことより、食事環境におけるBGMが人の食欲に様々な影響を及ぼしていることが明らかになった。
著者
榮 光子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.110, 2009

<B>目的</B> 近年、日本において病原性大腸菌O157による食中毒など細菌汚染にまつわる事件が多発し、安全や衛生に関する意識が高まっている。それに伴い、抗菌加工製品の市場は拡大し、特に繊維製品の市場拡大は著しい。本研究では、抗菌加工製品の市場動向、消費者の購買意欲、抗菌に対する意識を調査し、今後の抗菌加工繊維製品市場の動向を検討することを目的とした。<BR><B>方法</B> 2008年8月に百貨店、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストアにおいて、衣料用、インテリア用、バス・トイレ用、日用、医療用繊維製品5品目について、抗菌表示の有無、抗菌剤の種類、価格等を調査し、エクセルを用いて分析した。また、同年8~9月に306人の男女を対象とし、日常生活の意識行動、「抗菌」という言葉の理解度、抗菌効果の評価など全26項目の質問紙調査を実施し、エクセルまたはSPSSを用いて分析した。<BR><B>結果</B> 本市場調査では、医療用繊維製品では75%、バス・トイレ用では53%、インテリア用では14%、日用では9%、衣料用では8%に抗菌表示があった。「抗菌」の意味については75%が正しく意味を理解しており、衣料用繊維製品に対して根強い購買欲求があることが分かった。今後、抗菌加工を強調したり、望ましい抗菌加工処理をすることによって衣料用繊維製品における抗菌市場はより成長するものと思われる。また、トイレ用繊維製品の便座カバーについては、抗菌加工がほぼすべてになされている温熱洗浄便座の普及とともに、減少するものと推察される。<BR>
著者
鎌田 佳伸 千葉 真澄 亘 麻希 江端 美和
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.37, 2009

<B>目的:</B>刺繍ミシンの縫い機構は本縫いミシンと同じであるが、ステッチ長の変化が大きく、前後・左右・斜めと種々の方向に縫いが行われるので縫いは極めて過酷である。縫い方向で縫目形成状況が変わるとすれば、それは光沢にも影響を及ぼすことが考えられる。したがって、よりよい光沢を得るためには先ずは縫目形成の実態調査が必要であると考える。本研究では、送り方向による縫目形成の差異について、糸締まり率と動的上糸張力の測定から検討した。なお、刺繍枠の送り方向は左右に限定した。刺繍ミシンはジャノメメモリークラフト10001、設計用ソフトはデジタイザープロ、刺繍糸は♯50ジャノメ刺繍糸(アクリル、濃い緑色(品番206))を用いた。実験要因にはステッチ長と縫い速度を採用した。<BR><B>結果:</B>糸締まり率:本研究において縫目は下締まり状態にある。その中で、枠が左へ移動する時は刺繍として適正な縫目形成状態にあると思われるのに対して、右へ移動する時は過剰に縫い目がゆるんでいた。これは顕微鏡観察でも確認されている。ピーク引締張力の変動は刺繍枠が左に移動する場合に対して右方向に動く場合は大きい。したがって、枠が右よりも左へ移動する時の方が安定した良い縫目形成となる。なお、ピーク引締張力の大きさの左右差はステッチと縫い速度の両者で差が認められなかった。<BR><B>結論:</B>糸締まりの左右差は縫い方の違いに由来すると考えられる。すなわち、枠が左へ移動する時のパーフェクトステッチに対して、右に移動する時のヒッチステッチでは上糸張力による下糸の引き上げが不十分となり糸調子皿から余分な上糸の引き入れが行われるために上糸がゆるむと推測される。
著者
小林 未佳 柚本 玲 若月 宣行
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<b>目的</b> ホールガーメント編機によりニットワンピースを製作する場合、一般的には編目の増減により成型する。本研究では編目の増減をせずに、編目の大きさを変えることによって成型する、新しい製作方法の検討を行った。<b>方法</b> ホールガーメント横編機MACH2X(8G)およびデザインシステムSDS ONE APEX3(SHIMA SEIKI)により、糸2/48(毛100%)を用い平編みで製作した。編目の大きさは、編機の糸引込み量の設定項目である度目値により変更した。肩からワンピース裾までのよこ方向の編目数を同じにし、度目値設定の変更により編目の大きさを変えた。この変更により起こる寸法変化を利用してワンピースの成型を試みた。ワンピースを円筒に見立て、前身頃と後ろ身頃を同幅で編成した。<b>結果</b> 編成可能な度目値の範囲は度目値30~80であった。度目値10ごと(30、40、50、60、70、80)の1目あたりのたてよこの編目長さを測定し、度目値と編目長さの関係式を得た。肩からウエストまでの前後身頃幅は、仕上り肩幅の長さとし、本編機で編成するのに最適な度目値50で編成した。この場合に必要なよこの編目数を関係式から算出し、編目数136で編成した。裾に向かって幅が大きくなるようにウエストから度目値50から10ずつ80まで上げた。その結果、上半身は身体に沿い、ウエストから裾に向かって広がるフレアスカートワンピースを成型することができた。
著者
岡崎 貴世
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.274, 2009

【目的】冷蔵庫は毎日の食事で私たちが口にするものを保存している場所であるため、衛生には特に注意を払い清潔に保っておきたい。しかし、台所のシンクやガスコンロ周りなど汚れが目につきやすい箇所は掃除の頻度が高いが、冷蔵庫は温度が低く菌に汚染されにくいというイメージがあり、定期的に掃除を行う家庭は少ないのではないのかと考えられる。そこで一般家庭の冷蔵庫の細菌汚染状況及び掃除頻度を調査した。<BR>【方法】調査は本学学生86名を対象とし、2008年6月17日から7月16日に実施した。細菌検査は、生菌数用・標準寒天と大腸菌・大腸菌群用XM-G寒天(フードスタンプ「ニッスイ」)を使用し、冷蔵庫の棚とドアポケットの2ヶ所を検査した。冷蔵庫の掃除頻度は、自記式アンケートで調査を行った。<BR>【結果・考察】調査した全ての冷蔵庫から一般生菌が検出された。また、4割を超える冷蔵庫から大腸菌群が検出された。掃除頻度の低い冷蔵庫ほど検出される菌数は多い傾向にあったが、各冷蔵庫でばらつきがみられた。庫内の汚染状況は、ドアポケットより棚の方が菌の検出率が高かった。これは、棚に置いている他の食材からの汚染が原因のひとつと考えられた。冷蔵庫の掃除は、「年に1回程度している冷蔵庫」では年末やお盆前など決まった時期に行っていることが分かった。しかし、「年に2~3回している冷蔵庫」は『気が向いた時』や『汚れた時』など、不定期に掃除を行っているケースが多く、汚れた部分のみを掃除している可能性が考えられた。今回の結果より、各家庭の掃除頻度は予想以上に低く、また冷蔵庫は多くの細菌に汚染されていることが明らかとなった。
著者
早川 文代 風見 由香利 阪下 利久 上平 安紘 池羽田 晶文
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

【目的】モモの品質には果肉部の軟らかさや特有の風味が重要である。しかし、部位差、剥皮時の果肉損傷および剥皮後の褐変が著しいため、官能評価が難しく、その報告例は少ない。本研究では、モモの分析型官能評価法を設計し、品種および追熟条件の異なる種々の試料の官能特性の数値化を試みた。<br>【方法】官能評価設計には、2014年、2015年産のモモ9品種(日川白鳳、浅間白桃、一宮白桃、川中島白桃、なつっこ、さくら、幸茜、甲斐黄桃、黄金桃)を用い、官能評価パネルの討議および篤農家への面接調査を行った。本評価では、2016年産の6品種について、出荷翌日の果実を、追熟なし、5℃あるいは20℃で4日間追熟させ、その後24時間20℃に置いて試料とした。パネルは選抜、訓練された9人とし、赤色照明下のブースで評価を実施した。各パネリストに試料1果を提示し、においかぎによる香りの評価後、自身で試料片を調製させ、風味およびテクスチャーを評価させた。あわせて、硬度および可溶性固形分を測定した。<br>【結果】「花様の香り」「ココナッツの香り」等、18特性について、各試料の官能評価データを得た。追熟によって、テクスチャーの軟化と香りの増加がみられ、その変化は20℃で顕著であった。においかぎによる香りの評価は、試料片の口中香の評価よりも、品種間差および追熟条件間差の検出力が高く、皮の香気の影響および味やテクスチャーとの相互作用の影響が推察された。
著者
山口 智子 大樌 春菜 小谷 スミ子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.101, 2011

【目的】小麦粉の代替品として米粉に注目が集まる中、昨今、米粉パンから製造した米パン粉が開発されている。縁者らはこれまでに、市販されている種々の米パン粉と小麦パン粉について、フライ調理過程における吸油率の比較を行い、米パン粉の吸油率が小麦パン粉に比べて低いことを明らかにしている。本研究では、パン粉の粒度による吸油率や着色度の相違を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】試料として、米パン粉(生)、小麦パン粉(生)、市販小麦パン粉(乾燥)2種を用いた。米パン粉(生)と小麦パン粉(生)は、原材料とその配合割合ができるだけ同じになるようにパンを焼成し、常温で72時間経過後にフードプロセッサーで粉砕、粒度2、3、4mmのパン粉を作成した。水分は常圧乾燥法で、吸油率は全国パン粉工業協同連合会2008による簡易測定法で、着色度は色彩色差計で測定した。また、米パン粉と小麦パン粉を用いたハムカツについて、5段階評点法による官能評価を行なった。<BR>【結果】米パン粉(生)の吸油率は約30%であり、小麦パン粉(生)より吸油率に低い傾向がみられた。米パン粉(生)では粒度によって吸油率に相違はみられなかったが、小麦パン粉では粒度の小さい方が吸油率が低かった。フライ調理後の着色度については、米パン粉(生)は小麦パン粉より明度L<SUP>*</SUP>が低く、赤味a<SUP>*</SUP>が強く、黄味b<SUP>*</SUP>が弱くなる傾向があった。また、全パン粉において粒度の小さい方が明度L<SUP>*</SUP>が高く、黄味b<SUP>*</SUP>が強い傾向がみられた。粒度3mmのパン粉を用いたハムカツの官能評価の結果、米パン粉のフライは小麦パン粉のフライに比べて衣の色が濃く、衣がかたく、口当たりがやや悪いものの、味が良く総合評価も高かった。
著者
團野 哲也 川口 順子 鳥居 隆司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.232, 2006

目的 巡航高度に達した旅客機の機内は,0.8気圧,相対湿度10%程度と,通常の生活環境からは大きく隔たっていることが知られている.このような外部環境の変化に伴って,衣服気候も相当の変化を伴うと予測されるが詳細については不明な点が多い.長時間のフライトにおいても健康で快適な衣環境が提供されることは,旅客にとって重要である.そこで本報告では旅客が機内へ搭乗開始してから目的地へ到着するまでの,外部環境と衣服気候を詳細に記録する方法とその問題点について述べる.また,得られたデータについての解析も一部行う.<BR>方法 データロガーとして,TANDD社製Thermo Recorder TR-72Uを2台用い,それぞれ機内環境,衣服気候測定用とした.温湿度ジャンプ方により求めた温湿度プローブ(TR- 3110)の時定数(63%)は,それぞれ180秒(温度),150秒(湿度)であった.測定は2005年7月30,31日ANA高知,東京間の往復にて行った.被験者は49歳男性で,衣服気候測定プローブを田村の方法1)により,みぞおちの皮膚に固定した.測定間隔は1分とした.測定時の服装には,内衣として半袖Tシャツ,上衣には半袖のカッターシャツを着用した.<BR>結果 機内温度は離陸直前から巡航高度にいたる約15分間に3.5℃低下し,その後は徐々に上昇した.機内湿度は離陸直後から下降直前までに約50%低下し,最低値は13%であった.衣服気候も機内環境の変化に伴い同様に下降上昇を示したが,温度は環境変化に良く追随したのに対し,湿度変化は環境変化よりも緩慢であった.環境変化が短時間で起こるので,レスポンスの早い測定プローブを使用する必要があると考えられる.<BR>文献 1) 田村,基礎被服衛生学,p78,文化出版局(1988)
著者
松尾 量子 武永 佳奈
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的 </b>ビジネス・シーンにおいて着用することを前提としたマタニティウエアを開発することを目的とする。 <br> <b>方法 </b>マタニティウエアについての現状リサーチをもとに検討を行い、体型が大きく変化する妊娠中期から後期にビジネス・シーンにおいて着用することができるパンツ・スーツについてプロトタイプを制作した。制作用のボディは、妊娠6ヶ月のサイズで作られたものを選定し、シーチングと詰め物を使用して制作したベストを着用させることで妊娠後期の体型に対応した。ジャケットは、胸ポケットを左右につけることで、視線を上部に集め、ダブルの打ち合いと前端の斜めのラインによって、腹部のふくらみが目立たない工夫をした。パンツは、体型変化に対応するためにウエストサイズの調節が必須であること、着脱のしやすさを考慮して、後ろウエストにゴムを入れ、前部は面ファスナーを使用している。シーチングによる試作を繰り返した後に、細かなストライプの入ったダークグレーの布地を用いてプロトタイプを制作し、インタビュー形式によるモニタリングにより、インターネット・ショップにおける販売を前提とした商品化に向けての検討を行った。 <br> <b>結果 </b>マタニティウエアは限られた期間のみの着用であるため、着用者側には価格帯や産後も着用できるかなどを意識する傾向がある。今後はよりユニバーサルな視野から開発を進めることで商品化への糸口を探る必要がある。
著者
ガンガ 伸子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.244, 2018

【目的】わが国では、高齢者世帯の増加を背景に、消費市場では高齢者消費の割合が増加傾向にあり存在感を増している。その一方で、貧困化する高齢者が増加の一途をたどり、生活保護世帯の半数以上を高齢者世帯が占めるに至っている。現役引退後の高齢者世帯は、消費が所得を上回り、貯蓄の取り崩しによって赤字を補填するという生活になる。しかしながら、晩婚化の進行等により、十分な老後の資産形成ができないまま高齢期を迎える世帯が拡大し、金融資産の保有状況により消費生活の内容に大きな違いが生じるという高齢者世帯の二極化が進んでいる。そこで、高齢者世帯のバランスシートを作成し、他の年齢階級との比較から、その特徴を明らかにしていく。<br>【方法】総務省統計局「全国消費実態調査」から世帯主の年齢階級ごとにバランスシートを作成し、高齢者世帯(世帯主が60-69歳、70歳以上)の特徴を明らかにする。その他、就業状況や住宅の所有等の違いによる比較も行う。さらには、時間の経過とともに、どのように高齢者世帯のバランスシートが変化してきたかについても明らかにする。<br>【結果】世帯主の年齢階級間でバランスシートを比較すると、世帯主が60歳代の世帯の純資産が最も大きく、その後貯蓄の取り崩しにより70歳以上では減少している。負債は世帯主40歳代以降年齢とともに減少していくものの、60歳代や70歳以上になっても住宅・土地のための負債が残っているという現状であった。
著者
五十嵐 由利子 萬羽 郁子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.281, 2006

【目的】 2004年10月に発生した新潟県中越地震による住宅被害は全壊3,185棟、大規模半壊2,157棟、半壊11,546棟、一部損壊103,503棟で、多くの被災住民が応急仮設住宅に入居した。この仮設住宅建設に当たっては阪神淡路大震災での教訓を生かし、また積雪寒冷地への対応についても考慮された。このような配慮が夏季の温熱環境にどのように影響しているかを実測調査から明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】 新潟県内に建設された仮設住宅について新潟県の資料から配置計画の特徴を捉え、居室の向きの異なる住戸(2DKを中心に)を対象に調査協力を依頼し、10戸を対象として各室の温湿度を2005年6月24日から8月21日まで計測した。<BR>【結果】 仮設住宅では各戸の1室にはエアコンが設置されており、その室はほとんどの住戸で居間として使用されていた。エアコンの使用時間については被災前の住宅での使用状況が影響し、各住戸での違いが見られた。6月から居室の日最低温度が25℃以上、最高が30℃を超えているところが多く、8月の夏日が続いたころは、エアコンのない部屋の日平均温度が30℃を超えている住戸が多かった。また、東向きの居室では午前中の温度上昇が大であった。
著者
花輪 由樹 岸本 幸臣 宮﨑 陽子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.97, 2018

■研究背景:近年、SNSを利用した「資源」と「ニーズ」を繋ぐシェアリングエコノミー(以下SEと称す)が流行している。SEは、主に「お金」「スキル」「空間」「モノ」「移動」を対象に、顔見知りの範囲を越えて行われるシェアをいう。例えば旅先で他人の部屋を借りる「airbnb」や、移動手段として個人の車に乗る「uber」等が有名で、基本的には個人間で取引が行われる。<br>■研究目的と方法:本研究では、このようなSE現象を家政学的視点からそれが大量生産・大量消費型生活の再考に提起する意義と可能性を探ることを目指した。なお方法として、「安全・安心で持続可能な豊かな家庭生活」の実現にどう寄与するのかという側面に着目し、SE現象を分析した。<br>■研究結果:身近な資源の有効活用は、生活者にとって金銭的効率性や今までにない新たな人間関係の構築ができ、また生活者がスキルを活かす新たな活躍の場を得るなど、充実した生活への萌芽的試みとなりうる。一方、やり取りが個人間であるため、子育てサービスなど「安全・安心」への信頼度が必要な行為は、それを保障する情報が欠かせない。したがって、SE利用が私達の生活をどう充実させるのか、また「安全・安心」で持続的な利用をするためにはどうしたらよいかを考えられるSEリテラシー育成の社会的担保も必要である。また「安全・安心」の基準を探ることも、見知らぬ人どうしで新しい繋がりを形成するSE社会の課題といえる。
著者
髙橋 秀子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.176, 2015 (Released:2015-07-15)

目的 2004年に一関市内の保育所の給食とおやつの実施状況に関する調査を行なった.その調査から10年経過しており,その後乳幼児の給食とおやつの嗜好は変化したのか,食育指導はどのように行われているのかをアンケート調査した.一関市内の保育所の10年後の状況を報告する.方法 調査へのご協力のお願い,協力同意書,アンケート項目を作成した.事前に許可を得た保育所2014年10月中旬に,書類を郵送または訪問で渡した.回答の期限を10月中,返信方法は郵送とした.回答を,Ⅰ保育園の全体に関すること,Ⅱ給食,Ⅲおやつ,Ⅳ食育に関する4つの項目に集計をした.結果 20ヶ所でアンケートを実施し,18ヶ所から返信があった.各年齢で最も好まれた給食献立はカレーあった.0,1歳児は味噌汁,2歳児以上は唐揚げやハンバーグなどの肉を使用した献立であった.手作りするおやつはおにぎり,蒸しパン,がんづきなどで好まれるおやつはゼリー,せんべいがあげられた.おやつと給食に関しては,10年前の調査とほぼ同じ結果であった.保育士が主となって毎日食育指導をしている保育所が多かった.その内容は,箸や食器の持ち方,食べ物についての紙芝居や絵本の読み聞かせ,クッキング,3色食品群など食べ物の栄養,さつまいもとトマトの野菜作りがあった.乳幼児は食材に興味を持ち,意識し,好んで食べるようになったと報告された.
著者
小見山 二郎 宮崎 由伊 中野 麻子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.247, 2006

<目的>昨年、表題の現象について社会心理学的に考察した。ジーンズのボロ化現象は続いているが、今回、各社会的要因、個人化、アメリカ化、環境意識などの重要度とこれらと個人の意識の連関について、少し深く再考した。また前回はこれらを取り上げた理由を直感としか説明しなかったが、少し詳しい説明が必要と考えた。実践女子大学生活科学部紀要43号(2006)に投稿するに際し、これらのことを再考したのでお話したい。<方法>その後の文献調査により、この取り扱いは、デカン「流行の社会心理学」岩波書店(1981)の亜流といってもよいことがわかった。戦後の日本社会の変化はいろいろの視点で捕えられるが、本説の捕え方は50年間に書物と経験から得た知識の集大成としか言いようがない。当日要点を説明する。またボロ化が前近代への突き抜けであるとの考察では、柳田國男の視点を参考にした。現代の個人の意識については、聞き取った言葉から抽象した。<結果>衣服文化論を離れて、戦後の日本社会の変化が、人々の心にどういう変化をもたらしたかを概括した。ジーンズのボロ化に対する影響における重要度の順に、個人化、アメリカ化、環境意識とした。ボロ化における個別性、下から上への流行の波及、自然化と前近代化、がこれらの3つのそれぞれの影響であると考えた。個人の意識と社会的意識を納得できるように結ぶことも重要で、この点は当日説明する。さらにボロ化の3分類、すだれ状の破れ、脱色、つぎはぎ、の今後についても議論する。
著者
後藤 昌弘 岩田 惠美子 大久保 郁子 森 一幸 中尾 敬
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>[目的]</b>ジャガイモは,栄養学的に優れた食品であり,様々な調理や加工に用いられている。本研究ではジャガイモの品種による調理方法と食味の構成要因を解析することから様々な調理法に適した品種を探求することを目的とし,西南暖地の主要産地である長崎県産の品種・系統について種々の物理化学的調査及び官能検査を実施した結果について報告する。 <br><b>[方法]</b> 平成25年度秋作のニシユタカ,デジマ,アイユタカ,さんじゅう丸,西海31号の育成品種,品種登録前の育成系統西海37号,西海40号の7品種系統をそれぞれ,蒸す,ゆで,レンジ,焼き,揚げ加熱で調理した。加熱試料について「ニシユタカ」を標準試料として色,香り,口当たり,甘み,苦み,おいしさ,総合評価の項目について官能検査(評点法)を行った。また,加熱前後の試料の遊離還元糖,アミノ酸,フェノール物質含量と加熱試料のテクスチャーの測定を行い,これらの関係を調べた。<br><b>[結果]</b> 「デジマ」は揚げ加熱で還元糖含量が多かった。「アイユタカ」(黄肉)は蒸し加熱で他の品種に比べ色の評価,総合評価が高かった。「さんじゅう丸」は加熱法による差はみられなかった。「西海31号」(赤肉)は全ての加熱法で色の評価が低かった。「西海37号」は揚げ加熱で還元糖含量が多く,レンジ加熱で色の評価が高かった。「西海40号」はレンジ加熱を除くと標準試料に比べ,口当たりの評価が高かった。
著者
大久保 洋子 長尾 慶子 松本 祥子 松本 時子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.123, 2003

[目的]食生活指針に「食文化や地域の産物を活かし・・」とうたわれているように食事に対する知識や料理技術の伝承が失われつつあり、その存続が危惧されている。そこでその実態を知り、今後の食物教育に役立てることを目的に調査を行った。[方法]神奈川・秋田・山形3地域の短大生の親世代40~50代について、留置き式で調査を行い(1)現在作られている行事食の種類(2)手作り食品名および作り方を知った手段、(3)伝承料理の意識、(4)存続させたい伝承料理名、(5)伝承させたい料理技術を検討した。[結果]調査対象者は神奈川109、山形83、秋田176名であった。結果は(1)年越し蕎麦と雑煮は地域、年代に関わらず8割以上で食べていた。おはぎが次いで多く約7割、7草粥は約5割を占めた。(2)手作り食品では赤飯、おはぎ、漬物が地域差がなく、特に白菜漬けは秋田・山形に多く、神奈川では糠味噌漬けが多かった。伝承の手段は祖母と母からが多くを占めた。(3)日本の伝承料理を引き継ぎたい意識が神奈川(5割)山形(7割)秋田(3.5割)、新旧とりまぜて安全な手作り食品を伝えたい意識が神奈川(6割)山形(7割)秋田(6.5割)、それに対して加工食品及び流行の料理を取り入れたい意識が神奈川(2割)山形(4割)秋田(2割)とわずかな地域差がみられた。(4)存続させたい伝承料理は煮物・赤飯・雑煮(神奈川)、赤飯・漬物・きりたんぽ・梅干・おはぎ(秋田)、煮物・漬物・赤飯・雑煮・笹まき・ぼたもち(山形)が多かった。(5)伝承させたい料理技術は庖丁・食器の手入れ、食材の選び方、調味の仕方、衛生面の知識(神奈川)、山形では調味の仕方、魚のおろし方、食材の選び方、食事のマナー、献立の知識、秋田では調味の仕方、魚のおろし方、だしの取り方、箸使いが多かった。
著者
小川 暢祐 本島 佑香 村上 美音
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

[目的] 大学期の青年は、少なくとも食の面ではほぼ自立段階に達するが、生活リズムの乱れや偏食等、好ましくない生活習慣が固定化してしまうのを、大学教育等の介入を通じ是正させることは可能だろうか。本発表はそのような問題意識に立ち、前提となる、現代の大学生の嗜好・喫食パターンを、いわゆる学食の販売データから推定し、栄養摂取状況改善に寄与できる新規メニューを企画することを目的とした。<br>[方法] 大学学生食堂の販売月次データに基づき、各メニューに対する選好傾向を把握してソーティングしたうえで、使用食材や価格、あるいは期間限定フェアといった要因ごとに選好理由を推定した。その際、たとえば「鶏の照焼」と「ローストチキン」といった、いわば同工異曲的なメニューの併存にも注意を払い、選択式/記述式アンケートにより選好理由を絞り込み、要因の特性をある程度明確化した。次いで、得られた要因から、栄養機能のより高い食材・調理法を用いるメニューへの展開可能性を検討した。<br>[結果] 友人同士で談笑しながら昼食を摂る、というかつての喫食パターンにもまして、携帯電話の画面操作をしながら喫食する等の事例が増加していることに伴い、ある特徴をもつ品目の被選好傾向が高いこと等が明らかとなった。それをふまえ、学生食堂の既存メニューにはない、栄養機能の高い、かつ選好されることが期待される新商品のコンセプトを策定した。
著者
富士栄 登美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.248, 2018

目的 選択的夫婦別姓が国会で取り上げられてから20年以上が経過し、2015年には「選択的夫婦別姓は合憲」であるとの高等裁判所の判断が下された。2018年1月に男性事業者が「選択的夫婦別姓」訴訟を東京地裁に起こし、その波紋は大きく広がっている。別姓が認められない現状から「旧姓を結合した選択的夫婦同姓」を提案することを目的としている。<br>方法 邦人女性と仏人男性の婚姻届けに立ち会うところから始まる。これまでの「夫婦別姓問題」を検証し、これからどうすればジェンダー平等な社会になれるのかを考えてみる。<br>結果 日本の外務省は、2019年を目途にパスポートに旧姓併記の実施の検討を始めている。しかし、「父の姓に統一、妻は結合姓も認める、子供は父の姓」であるトルコのようになると推測される。この場合、妻は結合姓であっても夫は結合姓ではない。<br> 新しい家族は戸籍が新しくなるように姓も新しくなる必要がある。本当の意味のジェンダー平等の姓とは、双方の姓を結合した結合姓で且つ夫婦同姓ではないだろうか。発表者自身、結合姓を意識したとき、生まれてきた孫の存在に大きな変化を感じた。双方のどちらの孫でもあるという感覚である。これからの婚姻届けに記載する夫婦の氏は、レ点をつけるのではなく自分たちが選択して決めた新姓を書くことができるようになればと考えている。旧姓の残る夫婦同姓は、家族の崩壊どころか親族の絆が深まっている。
著者
峯木 眞知子 棚橋 伸子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.25, 2005

「目的」ダチョウ卵は、全国的に飼育されてきており、その鳥類最大の肉と卵は、新たな食料資源になる。著者は、ダチョウの卵を用いてスポンジケーキ、フィナンシェなど起泡性を利用した製品について鶏卵を用いた調理品の品質と比較してきた。本研究では、ダチョウの卵の熱凝固性について、検討した。「方法」ダチョウの卵は、茨城産のダチョウ(Struthio camelus domesticus)が産卵した無精卵、対照とした鶏卵(白色レグホーン種)は群馬産産卵3日以内の市販卵を用いた。熱凝固性を利用した調理品は、卵焼き及び厚焼き卵(無添加、卵液の塩1%、砂糖5%、10%)、プリン(卵15g、牛乳は卵液の1倍、2倍、砂糖は全体の15%)を作成した。それぞれの調理品について、テクスチャー(破断特性)、組織観察(光学顕微鏡)、色の測定、水分含有量および官能検査を行った。「結果」ダチョウの卵を用いた卵焼きは、鶏卵の製品に比較して加熱時間が長く、色が白く、できあがりの体積は大きかった。ダチョウ卵で作成した厚焼き卵は鶏卵の調理品と官能検査(分析型評点嗜好調査)で比較したところ、厚焼き卵の「見た目」の項目を除いて、「かたさ」「弾力」「味」が好まれた。ダチョウの卵を用いたプリンでは、鶏卵のプリンより破断応力が大きく、もろさ応力は小さかった。官能検査では、鶏卵のプリンと「総合的な好み」には差がなかったが、「やわらかさ」「なめらかさ」が有意に好まれた。従って、ダチョウ卵のプリンのレシピは、鶏卵と異なるものを使用する必要があった。DSC分析から、ダチョウ卵の卵黄及び卵白の凝固温度は鶏卵より幾分高いことがわかった。
著者
森 英子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.266, 2005

発意 郵便局の民営化・分離独立計画策は発案されて久しいが、反対異論続出でむしろ後退している。喫緊性が疑問視される新幹線や空港の公共事業など。経済効率からは考えられない政策・建設が昔から繰り返されている。幾つかの個別例を検証する。私は尊敬、同感するエコノミストの日経新聞紙上の論文を永く保存し続けているが、歳を思い、関心と共にいっさいを清算する記念とする。〈BR〉 方法 空前のバブル崩壊による不況の1992_から_1993年時に日経新・経済教室に載った政府・官僚・審議会委員等(現在も積極的な論者多数)の論説を主に、逐次発表されたそれや、その他の関連発言記事の中から取り上げ、彼等エコノミストの立案や施策が経済理論に基づくものでありながら、実現せず時としては予期せぬ危険な方向に発展してしまった事例をもって現場音痴を検証する。〈BR〉 実例・音痴たらしめる主因・アノマリースの階段 検証 赤字国債の膨張歯止めは至難 高橋是清蔵相ー不況克服に一時的が軍部の圧力で失敗、戦後は福田・太平蔵相ー一年か短期間で均衡財政復帰のつもりが赤字国債発行ゼロにするだけにバブルの恩恵があったにも拘らず十年を要した。経済理論通の各蔵相を実情音痴たらしめたのはレント・シーカー(公的タカリ屋)による拡大圧力を軽視しているからである。逆に官庁エコノミストは統計偏重で実体経済把握に甘く不況に後手であり、積極財政をとのエコノミストの声もある。経済理論からのアノマリースは第一に人の本能の経済合理思考と感情の葛藤が第二に行動経済学となり第三に社会的奸智がさらにアノマリース幅を拡大し恒常化してしまう。