著者
橋本 令子 加藤 雪枝
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.127, 2004

【目的】現代はIT化、デジタル化時代といわれるが、人は時間に追われストレスに埋もれている。その緩和策として快い音を耳にしたり、美しいものを見ることにより安らぎ感や安心感を得ようとする。そこで今回は、生理評価と心理評価の測定を、環境音に映像を加えることで聴覚と視覚の刺激が複合され、相乗効果が期待できると考え研究を行った。【方法】音刺激はのどかな、わくわく、騒々しいといった観点から、川のせせらぎ、小鳥の鳴き声、列車音、海辺の波音、花火の音、街の騒音の6種とし、映像刺激は音の効果を反映するものとした。被験者は13名である。生理評価は、椅子に腰掛けた閉眼状態で音のみ呈示した場合と、開眼状態でスクリーンに提示された映像をみた場合の脳波(α波含有率、1/fゆらぎ)と心電(心拍変動)を測定した。その後、心理評価として10形容詞対を用いてSD法を行い、呈示方法の違いによる生理と心理評価の関連を追究した。【結果】音と映像による心理評価は「快適性」と「活動性」の因子が抽出された。映像の種類によってα波含有率に差が生じ、花火、列車音は映像呈示することによりα波が喚起され快適感が得られ相乗効果が認められた。川のせせらぎ、小鳥の鳴き声、海辺の波音は音のみ呈示、映像呈示ともに快適感が得られた。しかし街の騒音は、映像呈示により不快感が増しα波が抑制された。1/fゆらぎは、映像呈示後の出現人数が最も増加し、視覚から得られた情報が終了後も反映された形態を示した。心拍変動については映像呈示中にリラックス感を得た。生理と心理評価との対応において、α波含有率は「快適性」「活動性」の因子と関係が明らかとなり、心拍変動は「快適性」の因子と関係が認められた。
著者
菅野 友美 青木 里奈
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 近年,児童の多くが野菜を苦手に感じており,野菜離れが進んでいる.本研究では,児童の野菜への苦手意識を減し,積極的に野菜を摂取することを目的として,野菜の苦手意識の要因をマスキングする調理法を検討した.そして食育教室を実施して親子で野菜を用いた菓子を製作・試食し,野菜の認知と苦手意識について調査した.<br><b>方法</b> 苦手意識の強い野菜を試料とし,蒸す,炒めるなどの調理後,順位法を用いて官能検査した.野菜の苦手意識要因のマスキング効果があった野菜ペーストを用いてクッキーを開発した.食育教室で,3種類の野菜ペーストを使ったクッキーを作製した.対象は4~11歳の児童9名とその保護者6名である.作製・試食後,野菜の苦手意識に関するアンケートを行った.調査は質問紙方で行い,回答は無記名・自記式とした.<br><b>結果</b> 野菜を砂糖などの調味料と一緒に調理することで野菜の苦味をマスキングすることができた。また一度冷凍し、凍結のままペースト状にして加熱することで野菜の香りや食感を改善することができた。そこで3種類の野菜を凍結後ペーストにし、砂糖で煮詰めた野菜ペーストを用いて親子でクッキーを作製した。クッキーに入っている野菜の種類をあててもらったところ,正解率の平均は22%であり,児童は苦手な野菜も摂取していたことから,苦手意識を克服できたといえた。また親子で作製するというコミュニケーションも苦手意識の克服に必要であることがわかった
著者
荒木 裕子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.106, 2007

【目的】工芸茶は中国で考案されたお茶で、緑茶の中に多彩な乾燥花弁を包み込み糸で結束して作られ、浸出時の茶葉と開いた花の美しさや近年の健康ブームと相まって消費が伸びている。本研究では工芸茶の抗酸化能を明らかにするためにポリフェノール含量、DPPHラジカル補足活性を測定した。さらに工芸茶を有効に飲用するための浸出方法についても考察した。【方法】試料は中国茶専門店で購入した工芸茶7種で、使用されている花弁の種類が異なるものを用いた。ラジカル補足活性はDPPH法を用い測定し、ポリフェノール量はFolin-Denis法でクロロゲン酸相当量として算出した。浸出条件の違いによる溶出固形分、ポリフェノール含量を測定した。【結果】工芸茶の製造に用いられる花弁はカーネンション、キンモクセイ、芙蓉など色彩の鮮やかなものが多く、緑茶と花弁の構成比は10対1程度であった。DPPHラジカル補足活性を調べた結果、全ての工芸茶に高い抗酸化活性が示され、ポリフェノール含量とDPPHラジカル補足活性の間には有意に高い正相関が認められた。お茶の浸出条件を調べた結果、工芸茶は製造時に茶葉を硬く結束していることから、煎茶や紅茶に比べ抽出するのに時間を要した。熱湯で5分程度の浸漬では結束中心部まで充分に浸透せず、10分以上浸漬することが望ましいと考えられた。また、2煎目以降でも充分な成分の溶出がみられたことから、お湯を継ぎ足しながら飲用する方法も有効であると考えられた。
著者
櫻井 美代子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

【目的】小麦粉より作られるうどん・そうめんなどの麺類のほかに、すいとんや団子類・まんじゅう類・パン類にも加工されるほか、食品のつなぎや衣などに使用されている。このうち日常食・行事食のいずれにも使われ、地域的特徴のみられるうどんをとりあげ、その種類呼称、調理法用途などについて調査を行った。また、日常のうどん食が継承されている相模原市津久井地区のうどんとの関係についても検討したい。資料としては、大正末期から昭和初期の聞き取り調査をまとめた、『日本の食生活全集』(農山漁村文化協会)47冊を中心に調査・検討を行った。<br>【結果及び考察】 うどんは、ほぼ全国的に食されており今回は、「うどん」の呼称に注目し、以下のように分類した。①地名や形態の呼称。「讃岐うどん」や「稲庭うどん」のように地域名があるものや「ひもかわうどん」のようにうどんの形態をあらわしてあるもの。②うどんをゆであげててから食す、「釜あげうどん」や汁に野菜やうどんを煮こんだ「にこみうどん」などうどんの調理法と用途による違い。③日常食と行事食<br>以上の分類により、地域に根づいた呼称があるうどんが各地で存在している。煮こみうどんでも、ゆでこぼしてから煮こむものと、煮汁に直接いれて煮こむものと調理性の違いによるものがあった。日常では、煮こみにする時には季節の野菜などを共に煮て食され、毎日夜うどんを常食している地域も存在した。日常食以外でも、盆や祭り・正月などにうどんが供えられたり、人寄せの時に振る舞われたりしていた。多くは、行事や接待に使用する時には、ゆでこぼしたうどんを使用することが多く、てんぷらや野菜の煮たものなどを添え、つけ汁で薬味を添えて食することが見受けられた。
著者
湯浅 勲 湯浅(小島) 明子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.133, 2002-06-01 (Released:2003-07-29)

アロエの肝臓におよぼす影響を調べるために、培養肝細胞傷害モデルを用いてアロエ粉末の抽出物およびクロロホルム、酢酸エチル、ブタノールの各抽出分画の肝傷害保護効果について検討した。アロエ抽出物は1,4-ナフトキノン(NQ)による肝細胞傷害を濃度依存的に抑制した。その抑制効果は酢酸エチル抽出分画において最も顕著であった。NQによる細胞傷害に先立ち細胞内グルタチオンおよびタンパク-SH量の低下が認められたが、それらの低下はアロエ抽出物の添加により濃度依存的に抑制された。その際ジエチルマレートにより細胞内グルタチオン量を低下させたところ、肝細胞傷害の抑制効果およびタンパク-SH量はほとんど影響されなかったことから、肝傷害抑制効果にはタンパク-SH量が関与することが示唆された。
著者
青木 香保里 藤本 尊子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.247, 2003 (Released:2004-05-25)

目的:高度化、複雑化する現代社会にあって、生活を構造的に把握する視点の有無は生活にたいする認識と実践のありようを左右する。こうした状況下にあって教育の役割は一層重要になる。本研究では、生活を構造的に把握するための枠組みの検討と整理を試みるとともに、教育における実習の現代的再構成の意義について述べる。方法:文献研究による。なお、本研究の適用対象としては学校教育における家庭科教育を主として考えるが、家政教育、生活科学教育などへの拡張も可能であると考えている。結果:私たちの生活は人間の生産的な活動を基盤に成立している。人間の生産的な活動は「労働の生活」「職業の生活」として具体化する。労働するうえで必要となるエネルギー、すなわち労働力は、主として職業の生活において必要とされ消費される。また、労働力を回復する場として主となるのが家庭生活である。生活の総体からみた家庭生活の役割は、「労働力の再生産」にあることになる。したがって、「労働力の消費」「労働力の再生産」から構成される人間の生活活動は、その両側面を職業と家庭によって構造的に枠組みされていることになる。ゆえに、よりよい生活の実現のためには、労働を「労働力の消費」と「労働力の再生産」から双方向的に分析・総合する認識と実践が不可欠である。労働の多様化に伴い「労働とは何か」が見えにくくなっている現在、生産・消費と密接不可分な関係にある労働にたいする認識形成と実践化に向けて、教育において単なるものづくりに終始しない実習を積極的に位置づける必要がある。
著者
島村 知歩 藤本 さつき 池内 ますみ 花崎 憲子 小西 冨美子 志垣 瞳
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.180, 2005

【目的】近年わが国の食生活では、外食の日常化、中食産業の多様化や食情報伝達による食事の均一化がみられるようになってきた。そこで、家庭で主菜献立として作られてきた魚介・肉料理の手作り度・購入頻度、食品の摂取状況について、その実態を明らかにし、現場の教育に生かすためにアンケート調査を実施した。【方法】2002年11月_から_12月、東京、愛知、奈良、大阪、京都、岡山、広島、福岡の大学および短期大学14校に在籍する学生1092名の家庭における調理担当者に、アンケート調査を実施した。調査内容は、調理担当者の属性、調理時間、食品の摂取状況、魚介・肉料理の手作り度・購入頻度などであった。【結果】食品の摂取状況をみると、主食として週5回以上摂取されているものは、朝食では米が44%、パンが42%であり、夕食では米が95%であった。食品の摂取頻度は、年代や夕食の調理時間により違いがみられた。主菜となる動物性食品では、週3回以上摂取している人が卵類で84%、肉類で78%、魚介類で65%であった。家庭で作ると答えた魚介料理は、多い順に煮魚87%、塩焼き83%、鍋もの83%であり、肉料理はカレー98%、肉じゃが92%、肉野菜炒め91%などであった。購入すると答えた魚介料理は、さしみ85%、たたき53%、みそ・粕漬け35%であり、肉料理はシューマイ57%、ギョーザ49%、ミートボール49%などであった。調査対象者の50%以上が家庭で作ると答えた料理は、魚介料理よりも肉料理が多かった。
著者
石原 久代 橋本 令子 内藤 章江 井澤 尚子 成田 巳代子 橘 喬子 芦澤 昌子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.244, 2011

目 的 社会において色は重要な情報伝達手段であるが、色弱者への配慮は一部を除いてほとんどされていない。特に衣服は、コーディネートの観点から色そのものを把握する必要がある。そこで、我々は色弱者に配慮した衣服の色表示を提案するために、これまで色票を用いて色弱者の色認識や色弱模擬フィルタを用いた判別、色名の認知について検討してきた。本報では衣服の色を想定して布地の色の認識について実験を行い、検討した。方 法 試料は、前報の結果から選出した125色に「色覚の多様性に配慮した案内・サイン・図表等用のカラーユニバーサルデザイン推奨配色セット」の20色を加えた145色の綿ブロードを用いた。被験者は、正常色覚者14名、色弱者6名、色弱模擬フィルタを装着した正常色覚者7名で、実験は各試料の色名を回答させる方法で行った。色名はJISの基本色名に推奨配色セットの色名を加えた赤・黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫、白、灰、黒、茶、ピンク、水色、肌色、紺色、クリーム、焦げ茶、ねずみ色、空色、ベージュの23語とし、付与できる修飾語は、うすい、濃い、明るい、暗い、鮮やかなの5語とした。結果及び考察 色弱者は、正常色覚者や色弱模擬フィルタ装着者に比べ、修飾語の使用率が高かった。修飾語について正常色覚者は「うすい」を多く用いているのに対して、色弱者は「明るい」「鮮やかな」の使用率が高く、模擬フィルタ装着者は「暗い」が多かった。色名について、色弱者はピンクや赤紫の使用が多かった。また、色弱者には本来識別しにくいとされる赤や橙、緑、青緑などの使用率も正常色覚者や色弱模擬フィルタ装着者より多く使われた。なお、色名の選択については色弱模擬フィルタ装着者について有意な差が認められた。
著者
中村 久美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.330, 2002

集合住宅バルコニーのあり方を検討するため、207戸の中層集合住宅の利用実態と意識に関する調査を行った。それによると、物干しや植栽関連のモノに加えて、ゴミ、不要品や玄関や他の居室に収納しきれない多様なモノが置かれている。北側に台所から出られるバルコニーを有する世帯では、モノの管理はそちらで行い南北バルコニーの使い分けがみられる。展開される生活行為は、物干し、園芸以外にモノの管理を中心とする家事や夕涼み&middot;日向ぼっこ、季節行事、子供の遊び等が比較的よくされるが、多種類のゴミ、不要品を置いているバルコニーでは本格的なくつろぎ行為はされない。しかしリビングの延長としての利用への要求は高く、物干しとの区別、モノの管理を担う台所バルコニーの併置の必要が指摘できる。
著者
村田 光史 増淵 千保美 久保田 磨子 小伊藤 亜希子 齋藤 功子 池添 大 辻本(今津) 乃理子 田中 智子 中山 徹 藤井 伸生
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.256, 2003

【目的】高齢者の食生活の実態を明確にして、必要とされる食事支援のあり方を考察する。【方法】京都市中京区の2学区に在住する65歳以上の高齢者を対象に食生活に関するアンケート調査を直接聞き取り方式で実施した。時期は2002年9月、295人の協力を得た。【結果】現在の食事に「満足している」人が94%と多い一方で、調理を負担と感じている人が23%存在していた。日常的に惣菜を利用している人は34%、外食を利用している人は14%あり、高齢者の食生活に惣菜・外食利用が一定浸透していることが伺える。食事支援を希望すると答えた人は19%(56人)あったが、その多くが配食サービスを希望していた。他方で、普段1人で夕食を食べているのは、単身者だけでなく家族同居の高齢者にもややあり、会食や外食等、共食の機会を伴う食事サービスのあり方も検討する必要がある。その際、食事制限があったり、堅いものが食べられない高齢者の比率が高いことは十分な配慮を要する。また、「できる限り自分で調理したい」人も53%あり、調理支援や買い物代行等の支援の併用も望まれる。
著者
船津 香住 西村 南美 井上 容子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.268, 2006

【目的】これまでに階段の昇降し易さに関して、明視要素と段形状の関わり、ならびに順応の変化を考慮した評価法を提案している。同法は照度一様な実験室実験と屋内階段での検証実験に基づいたものであり、「物理量→物理量評価→良否評価→昇降のし易さ」という階層構造となっている。本報では、屋外階段の実測調査と評価実験結果を基に、屋外階段への適用性を検討する。【方法】建物内外をつなぐ階段や屋外階段において、光、色、寸法、材料などの物理環境の実測調査と、被験者による階段昇降時の評価実験を行っている。評価項目は、明るさや段寸法の大小、段の見え方や段寸法の良否、昇降のし易さ、昇降時の怖さ、などである。これらの結果を基に、既提案法の屋外階段に対する予測精度を検討している。対象階段は10箇所、被験者は各5名である。【結果】検討対象とした屋外階段の照度や輝度の範囲は、これまでの屋内階段の検討範囲を大きく越えた幅広いものであり、また、屋外から建物内へのアプローチ階段の場合、段面の照度変化も大きい。従って、明るさや寸法などの物理量に対する主観評価(物理量評価)に関しては、既提案法による予測値と被験者の評価値(実験値)の整合性は低い。このため、物理量から予測した階段の見え方や寸法の良否および昇降のし易さの予測精度は低い。一方、物理量評価の実験値から、良否評価や昇降のし易さを予測した場合には、予測値と実験値の間に十分な相関が認められる。このことより、従来法の中の物理量評価の予測方法を補正することによって、実用可能な屋外階段の評価式を得ることができると考えられる。今後、多種の屋外階段の実測調査ならびに昇降評価実験に基づいて、屋外階段の評価式を求めていく。
著者
広井 勝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.173, 2005 (Released:2005-12-08)

【目的】油脂は加熱により変質を生じ易い。そのため油脂の劣化防止は大変重要である。近年、炭の活用の一つに油脂劣化防止効果が報告されている。しかし、炭の劣化防止効果は用いる炭の種類や炭化温度によりその効果が異なることも示されてきている。そこで本研究では、昨年に続き桃の種を炭にしてその効果を竹炭と比較して調べた。桃種を用いたのは、福島県は桃の産地であり消費量も多く、加工の際に大量の種が廃棄されていることから、この種の炭に油脂劣化防止効果が見られれば、資源の有効利用という観点からも重要と考えたからである。【方法】試料油としてキャノーラ油を使用した。実験では温度コントロールの精度の高いホットプレートを用い500mlビーカーに油脂を100gとり、桃種の炭5g(5%相当)を入れ、220℃、250℃で2時間の加熱を行い、油脂の劣化度やトコフェロール(Toc)残存率を調べた。また、同様に60℃の定温器で加熱油脂、未加熱油脂を用い、数週間自動酸化を行い、その劣化防止効果も調べた。同じ条件で竹炭についても実験を行い、その効果を比較した。【結果】(1)桃炭を5%添加し加熱した場合、油脂劣化防止効果が認められたが、竹炭には及ばなかった。(2)自動酸化(60℃)におていは、1週間の放置では桃炭による劣化防止効果は少なく、2週間目より効果が認められた。竹炭では1週間目より効果があり2週間ではその効果が顕著であった。(3)劣化防止効果は竹炭では800℃炭化、桃炭では1000℃炭化のものがすぐれていた。(4)加熱油脂の一部を取り、60℃の定温器に放置した場合でも、桃炭による油脂劣化防止効果が認められたが、竹炭には及ばなかった。
著者
菊池 直子 佐藤 恭子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<b>目的</b> 岩手のホームスパンは,大正期に農家の副業として普及し,昭和期に民芸運動との結びつきによって美的価値が高められ,敗戦後の復興とともに地場産業にまで発展したものである.現在も継承されるホームスパンであるが,地元でも認知度が低下し,特に若い世代との乖離が著しくなっている.また,ホームスパン協働組合が2010年頃に解散して以降,工房間のつながりが途絶え,産業としての弱体化が危惧されている.ホームスパン文化を次世代に継承するためには,若い世代へのアプローチ,工房間の関係強化等が必要であり,その方策を探ることを目的とした.<br><b>方法</b> 10~30歳代の17名を対象に,ホームスパン工房で作業等を体験した上で各自がほしいと思うホームスパンを提案するワークショップを実施した.また,各工房の作家,職人をパネリストとする公開座談会を実施した.<br><b>結果</b> ワークショップの参加者からは,スマートフォンケース,ポーチ等の生活雑貨,ポケット付ストール,つけ襟等の服飾小物,ペンダントライトのセード,ファブリックパネル等のインテリア小物,ペットの衣服等,若者目線の製品が提案された.また,親から子への祝い品,マフラー受注会とパーソナルカラー診断の組み合わせ等の販売企画も提案された.公開座談会では,ホームスパンの認知度が低いことや価値が適正に評価されていないことが挙げられ,広報活動の余力を持ちえない工房の現状が浮き彫りになった.&nbsp;&nbsp;
著者
畑 久美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.216, 2009

《目的》手芸としてのビーズワークは、19世紀前半頃から上流階級の婦人の趣味として行われており、19世紀後期頃からは一般の家庭でも様々な生活用品にビーズを施して楽しむようになった。共立女子大学にはそうした趣味で作られたとみられるビーズワークが254点収蔵されており、前報でそれらの概要について報告した。そのような近代の手芸としてのビーズワークについて、その歴史の概論や制作方法などの書物は存在するがデザインや文化に関する専門的な研究はみられない。そこで本研究では主に服飾や手芸の観点から近代におけるビーズワークについて解明することを目的とする。《方法》共立女子大学所蔵のシアーズ=ローバック社の通信販売カタログのうち1897年から1954年のものを資料に、その誌面でのビーズに関連する商品の内容やその扱われ方について調査し、そこからみえるビーズワーク文化について検討する。《結果》通信販売のカタログは、(1)発行年と発行場所が確定できる、(2)当時確実に流通していたものである、(3)価格や商品の説明が記載されている、ことが対象となるモノの流行を知るための資料として有用であると考える。本研究の対象資料でビーズに関連する商品が掲載されているページ数、品目数、ビーズの種類数の数的推移をみたところ、大筋で、いずれも1920年代に伸び30年代には徐々に下降していき40年代以降はほとんど無くなっていくことが把握できた。通信販売のカタログである以上、売れ行きが商品掲載を左右するものとみて、1920~30年代のアメリカではビーズワークの人気が高まっていたと推測できる。
著者
竹内 紗央里 田手 早苗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.142, 2018

目的:TDS (Temporal Dominance of Sensations)とは、時間経過に伴うサンプルの質的変化を測定し表現する手法であり、近年新しい官能評価手法の一つとして企業などで取り入れられている。この手法を用いることで、サンプルを口の中に入れてから経時変化する風味の特徴を把握することが可能となる。multi-sip TDSとは、一般的なTDSがひと口飲み込んだ場合の評価であるのに対し、サンプルを複数回飲み込むことで飲料の実際の飲用場面に近づけたTDSの派生法である。今回は、弊社より発売しているReady To Drinkタイプのブレンド茶である十六茶が、狙い通りに改良できているか確認するために評価を行った。<br>方法:社内パネル約30名(20~60代男女)に対して、現行十六茶・新十六茶・競合品の計3品を約8℃で提供し、TDS法とmulti-sip TDS法による評価を実施した。項目は "苦味・渋味""甘味・うま味""お茶の風味""香ばしい香り""スッキリ感""コク"の6項目を使用した。<br>結果:TDSの結果より、新十六茶は現行十六茶と比較して後半の"香ばしい香り"の選択率が有意に高く、狙い通り味わいと香りを強化できていることが確認できた。またmulti-sip TDSの結果より、新十六茶は3口目の最後で"スッキリ感"が感じられていることから「スッキリゴクゴク飲める」という十六茶の特徴を保持していることも確認できた。
著者
梶原 彩子 草野 篤子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.109, 2003

目的 1995年の農水省による「家族経営協定の普及推進による家族農業経営の近代化について」通達により、家族経営協定は政策の中に位置づけられ、長野県においても2003年現在、家族経営協定締結農家は1,416組が誕生している。しかし一方で、家族経営協定に対して「知らない」「必要ない」と考えている農業者が多いことも事実である。そこで本研究では、家族経営協定締結の動機・家族経営協定の実際等を明らかとすると共に、今後、家族経営協定未締結農家に対する有効なアプローチを考察する。方法 2002年11月下旬に長野県小川村の家族経営協定締結者30人に配票調査・インタビュー調査を行なった。結果 小川村における家族経営協定締結者は、農業改良普及センターのすすめで協定を締結している者が多かった。発案者は大半の場合女性である。協定の効果については、全体的に経営面に関する変化は少なく、生活に関する変化や後継者との関係の変化に言及した者が多かった。
著者
布施谷 節子 松本 智絵美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.242, 2006

〈目的〉 スカート丈は流行によって変化するものの,定番のタイトスカートで、下体部が美しく見え、かつ、着用者に適合するような丈や色の設定はいかなるものであろうか。本研究では、若い女性が気にするような、脚が細く長く見える条件を体型別に明かにしようと試みた。〈資料・方法〉 被験者は体型が異なる女子大生4名で,着用実験に用いたタイトスカートは,各人の身体寸法に合わせて製作したものである。スカート丈は膝の中央を基準として、膝上10cm、膝の中央、膝下10cm、ふくらはぎの位置、踝の5条件で白と黒の2種類、計10条件をカメラで撮影し、これを評価の資料とした。写真資料を51名の女子大生が、バランスの良い・悪いもの、下体部の太く・細く見えるもの、脚の長く・短く見えるもの、総合評価の7項目の印象評価を行った。〈結果〉 _丸1_因子分析の結果、固有値1以上の6つの因子が抽出され、体型別に評価が分かれることがわかった。_丸2_黒スカートの場合、脚が細く長く見える丈は、背が高く太った被験者では踝丈、背が高く細い被験者では膝上10cm丈、背が低く太い被験者ではふくらはぎ丈であった。背が低く細い被験者では膝丈又は膝上10cm丈であった。スカートと脚のバランスの良い評価はいずれの被験者も膝丈であった。_丸3_白スカートの場合は、細い被験者は黒の場合と同じ評価であったが、太い被験者の場合では膝下丈は脚が細く見えるが、脚が長く見えるのは膝上丈であった。_丸4_黒と白のスカートを比較すると、太った被験者は黒の評価が高く、細い被験者では評価は分かれた。
著者
長保 美也 三野 たまき
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>【目的】</b>肥満は成人病などの様々な病気の原因とされている。これを予防し健康的な生活を送るためには,食生活に留意すると共に,運動習慣を身につけ,体脂肪を適量に保つ必要がある。誰もが無理なく行える有酸素運動下において,体脂肪が燃焼しやすい条件を探ることを目的とした。 <b>【実験方法】</b>被験者は20~22歳の成人女子11名であった。彼女らに測定前夜7時間の睡眠をとらせ,測定2時間前までに規定食を摂食させた。人工気象室(環境温度24.5&plusmn;0.3℃,相対湿度50&plusmn;0.5%)に入室後,有酸素運動の範囲内で,自転車エルコ゛メーターによる運動負荷を30分間与えた。<b>実験Ⅰ:</b>ある被験者の夏・冬季の呼吸代謝をそれぞれ月経2サイクルにわたって測定した。 <b>実験Ⅱ</b>(冬季に実施):全被験者それぞれの月経周期の位相の①低温期と②高温期に半袖・半パンで数段階に運動負荷を変えた時,③半袖・半パン,④長袖・長ズボン・帽子・ネックウオーマーを着用し,かつ,休憩を交えて10Wの運動負荷の時,4条件下で呼吸代謝を測定した。得られたRQから,消費エネルキ゛ー(kcal/min)とその由来〔糖・脂肪(g/min)〕を算出した。【<b>結果・考察</b>】<b>結果Ⅰ:</b>有酸素運動下における消費エネルキ゛ー量は有意に夏>冬,脂肪量は有意に夏>冬であったことから,夏の方が脂肪は多く燃焼することがわかった。また脂肪量は夏季では高温期>低温期であるが,冬季では低温期>高温期となり,冬季は夏季に比べて,また冬季の高温期に特に脂肪が消費されにくくなることが示唆された。<b>結果Ⅱ</b>:消費エネルキ゛ー量は有意に①>③・④,②>③・④,④>③であった。糖・脂肪の消費量は有意に①>③・④,②>③であった。脂肪消費量と心拍との関係についても述べる予定である。
著者
小田 良子 加藤 恵子 原田 隆 内田 初代 猪飼 弘子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.345, 2007

[目的] 本研究は,現在の高齢者の日常生活に関する実態および意識(基本的属性・栄養・運動・休養・余暇活動)について調査し,生きがいを持って健康生活を送る方法を見出すための基礎資料とすることを目的とした.本報では,身体状況と健康意識の関連について検討した。[方法] あいち高齢者大学受講生を対象に生活習慣に関するアンケート調査を2006年9~12月に実施した.分析対象者は618名,平均年齢68.9歳(男性283名,女性335名)であった。[結果] 分析対象者の体格はH16年国民栄養調査と比較すると,身長には差がなかったものの,体重,BMIについては全国レベルより低く,有意な差が見られた。このことからBMIは標準域にあるものの全国レベルよりも細身であった。また,メタボリックシンドロームの1つの尺度であるウエスト周囲径の平均は,男性84.4cm,女性83.9cmであった。服薬有の割合は,男性63.6%,女性57.0%であり,服薬の種類についてみると,男性は血圧降下薬40.2%,コレステロール降下薬15.1%,女性は血圧降下薬37.9%,コレステロール降下薬28.1%であり,服薬の種類には男女の違いが有意に明らかになった。さらに,ウエスト周囲径および服薬の内容から,メタボリックシンドロームおよび予備群の割合をみると男性はメタボリックシンドロームが4.6%,予備群20.8%,女性では前者が3.0%,後者が11.0%であった。国民栄養調査と比較すると,かなり少ない結果であった。また健康(運動・栄養・休養)に関する意識では男性,女性では若干違いはみられたものの良好な結果であった。
著者
渡邊 慎一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.231, 2009

<B>目的</B> 本研究は、アンケート調査に基づいて炬燵の使用実態を把握すると共に炬燵の使用終了日を特定することを目的とする。<BR><B>方法</B> アンケート調査は2008年4月下旬から7月に、愛知県を中心に実施した。回収したアンケート総数は1488件である。アンケートは以下の8項目から構成した。1.今年、炬燵を使用したか 2.いつ炬燵の使用を止めたか 3.性別 4.年齢 5.居住地の郵便番号 6.居住形式 7.築年数 8.自由記述。<BR><B>結果</B>(1)炬燵の所有率は全体の70%であった。住居形式別にみると、戸建住宅が77%、集合住宅が61%であった。また、炬燵の使用率は全体の53%であった。<BR>(2)地域によって炬燵使用を終了する時期に差があることが示された。20%の人が炬燵使用を終了する日は愛知県が3月20日、島根県が3月27日、長野県が4月1日であった。また、80%の人が炬燵使用を終了する日は愛知県が5月10日、島根県が5月11日、長野県が6月19日であった。寒冷な地域において炬燵使用を終了する時期は、温暖な地域よりも遅いことが示された。<BR>(3)20%の人が炬燵使用を終了した日の最低気温は、愛知県が7.8℃、島根県が5.6℃、長野県が0.7℃であった。また、80%の人が炬燵使用を終了した日の最低気温は、愛知県が14.6℃、島根県が11.2℃、長野県が12.6℃であった。<BR>(4)男性の方が女性より早く炬燵使用を終了する傾向がある。<BR>(5)30歳までは炬燵使用を終了する時期に差がみられないが、31歳以上になると徐々に炬燵使用を終了する時期が遅くなる傾向がある。<BR>(6)集合住宅の方が戸建住宅より早く炬燵使用を終了する傾向がある。