著者
杉田 あけみ 伊藤 セツ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.144, 2007

<B>目的</B>ワークライフ・バランス(WLB)のとれた働き方ができる環境整備は,男女共同参画社会の実現であり,少子化対策でもあるという政府見解(内閣府2006:3)が示された.企業における経営資源としてのヒトは,個人・家庭・地域においては血のかよった人間である. WLBのとれた働き方ができる環境整備の前提として,このような認識がなければならない.そこで,男女従業員のWLBの現状を把握し,WLB施策とその実施効果に関する男女従業員と企業との認識を生活経営の視点から検討する.<BR><B>方法</B>ファミリー・フレンドリー企業表彰受賞企業(1999~2005年)と均等推進企業表彰受賞企業(1996~2006年)の従業員(男性172人,女性133人)へ「WLB尺度」(WLB実態尺度とWLB満足尺度)による調査を実施した.WLB施策,同施策実施効果に関する調査も実施した(上記従業員と企業49社).2004年に実施した調査との継続において,生活経営の視点から考察した.<BR><B>結果</B>WLB尺度の位置は従業員個々人によって異なるが,「仕事中心の生活に満足していない」従業員は,「仕事中心の生活に満足している」従業員の男性で2.2倍,女性で3.8倍である.男女従業員は,WLB施策では,「長時間労働の廃止」を,同施策実施効果では,「従業員の職場生活と家庭・個人生活とにゆとりと豊かさが生まれ,従業員は,職場生活でも家庭・個人生活でも幸福感を得ることができるようになる」を,上位項目に選択している.企業も同項目を上位に選択している.調査結果から,本報告では男女従業員個々人が満足を得ることができるWLBの実現に向けて,生活経営の視点から企業へ働きかける方策を示した.
著者
久保田 紀久枝 勝見 優子 黒林 淑子 森光 康次郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.160, 2006

目的 セルリアク(Apium graveolens var. rapaceum)はセロリの変種で、ヨーロッパでサラダやスープなどによく利用されている。生ではセロリ様の風味を呈するが、加熱すると甘く香ばしいにおいとなる。本研究では、生および煮熟セルリアクの香気特性および主な香気寄与成分について明らかにすることを目的とする。方法 セルリアクの皮をむき2等分した後、細断後水とともにミキサーでホモジナイズし、一方は1h静置、他方は1h沸騰加熱した。遠心分離により上澄液を得、Porapak Qを充填したカラムにて香気成分を捕集した。有機溶媒で脱着・濃縮した画分をさらに高真空蒸留法により香気濃縮物を得、GC, GC-MS, GC-Olfactometryにより分析した。また、生と煮熟セルリアクのにおい特性を官能評価法により比較した。結果 官能評価の結果、セルリアクは煮熟するとみずみずしい青臭いにおいからキャラメル様の甘さや煮た野菜の甘さを感じさせ、まろやかさと深みのあるにおいになると評価された。香気成分組成を見ると、セロリ様の香りを有するフタライド類が生と煮熟いずれにおいても主成分であった。その他、生には青臭い香りを有するβ_-_ピネンなどのテルペン炭化水素類が多いのに対し、煮熟したものにはフラネオール、バニリン、マルトール、ソトロンなど甘い香りに寄与する成分の生成が認められた。さらに、クローブ様のスパイシーなにおいをもつ2-メトキシ-4-ビニルフェノールの顕著な生成が認められ、これらが官能評価で煮熟セルリアクが甘みや深みのあるにおいと評価された特徴香気に寄与していると考察された。
著者
山下 広美 金行 孝雄 西江 知子 辻岡 智子 伊月 あい 木本 眞順美 比江森 美樹 辻 英明
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.155, 2003

[目的] 持続的運動の最中、肝臓では脂肪酸の&beta;-酸化が盛んに行われ、著量のケトン体が生成される。ケトン体は血中に放出されると筋肉組織に取り込まれ、ミトコンドリア内で酸化分解を受けてエネルギーに変換される。持続的な運動を継続すると持久性は向上するが、演者らは、肝外組織のケトン体利用活性増大にその一因があると考えた。本研究では約1ヶ月の持久性トレーニングをラットに施し、その筋肉のケトン体利用活性について調べた。[方法] 4週齢の雄ラットに電動回転カゴを用いて速度17.7m/min での運動を毎日1時間課し、約1ヶ月間継続した。実験期間中の体重および摂食量を記録した。運動群および運動をさせなかった対照群のラット3匹ずつを解剖し、肝臓、心臓および骨格筋からミトコンドリアを単離した。単離したミトコンドリアについて、&beta;-ヒドロキシ酪酸を基質とした呼吸活性および&beta;-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(HBD)活性を測定した。さらにHBD遺伝子の発現を調べるために各組織からRNAを抽出しノザンブロットを行った。[結果] 運動群ラットにおける心臓ミトコンドリアの呼吸活性は、対照群と比較して有意に増加していた。肝臓、心臓および骨格筋ミトコンドリアの HBD活性を比較すると、心臓および骨格筋における本酵素活性は運動群で増加していたのに対して肝臓では変化していなかった。心臓および骨格筋ではケトン体利用活性が上昇していることが示唆された。各組織におけるノザンブロット解析の結果、心臓において本酵素遺伝子の発現が有意に増加していた。
著者
桑田 寛子 治部 祐里 田淵 真愉美 寺本 あい 渕上 倫子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.193, 2015 (Released:2015-07-15)

目的 ダイジョは別名アラタと呼ばれ、東南アジア原産のヤマノイモ科ヤマノイモ属ダイジョ種に分類される。自然薯に次ぐ粘質多糖類含量であるため、粘りが強い。このため、とろろの起泡性を利用した菓子への利用が期待されるが、えぐみと褐変しやすいという欠点を持つ。今回は冷凍耐性およびえぐみの原因の1つと考えられる針状結晶に着目した。すなわち、ダイジョと他のヤマノイモとの比較を行い、ダイジョの調理特性を検討するための基礎研究を行った。方法 剥皮したダイジョ、ナガイモ、ツクネイモを5%食酢液に30分間浸漬後、すりおろした。砂糖無添加、および10%添加したとろろを-20℃、-30℃、-80℃のフリーザーで凍結した。その後、25℃の恒温器で解凍し、動的粘弾性測定装置でレオロジー特性を測定し、冷凍前と比較した。また、ヤマノイモの皮を含む5㎜角の試料を食酢原液、0.5%塩酸溶液、1%塩酸溶液に浸漬し、針状結晶の有無を低真空走査型電子顕微鏡で観察した。結果 砂糖添加の有無や冷凍温度によって、冷凍後のレオロジーに大差はみられなかった。すべてのヤマノイモの皮下部にシュウ酸カルシウムの針状結晶がみられた。ナガイモに最も多く、次いでツクネイモで、ダイジョは最も少なかった。皮を剥くとき手が痒くなるのは、細胞中に埋もれていた針状結晶が飛び出して、手に刺さるためである。1%塩酸溶液に30分浸漬すると、すべてのヤマノイモの針状結晶が溶けたが、食酢原液では溶けなかった。
著者
岡本 洋子 吉田 惠子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目 的</b> 我々の健康維持や生活習慣病を予防するうえで、塩味や甘味の低減を考慮した食べ物の摂取が望まれる。本研究では、塩味と甘味の感じ方について、呈味量を軽減したうえで満足感を享受できる方法を明らかにすることを目的として行った。<br><b>方 法</b> 健康な女子学生27~34名を評価者として、「塩味均一試料」と「塩味外側試料」について、0.9%,0.6%,0.3%食塩濃度の塩むすびを調製して官能評価を行った。甘味類では、「甘味内側試料」と「甘味外側試料」を調製した。塩・甘味強度と嗜好性を、2点識別・嗜好試験法によって調べた。さらにカテゴリー尺度による評点法を用いて呈味強度と嗜好度を調べ、対応のあるサンプルのT検定を行って解析した。<br><b>結 果</b> 塩むすびにおいて、同一塩分濃度の場合には、「塩味均一」に比べ「塩味外側」が、有意に塩味が強いことが示された(<i>p</i><0.01)。さらに塩分濃度を2/3あるいは1/3に減じた場合であっても、「塩味均一」に比べ「塩味外側」が、有意に塩味が強いことが示された(<i>p</i><0.05)。塩を均一に混ぜる場合と外側にまぶす場合では、嗜好性については、有意差はみられなかった。同一甘味濃度では、甘味を試料の内側に入れるより、外側に甘味を添加した方が、有意に甘味が強いことが示された(<i>p</i><0.05)。6種の甘味試料のうち、5種の甘味試料について、「内側にのみ甘味」と「外側にのみ甘味」の試料間の嗜好性に有意差はみられなかった。食品に塩味や甘味を局在させた方が、塩味や甘味に対する満足感が大きいことが示唆された。
著者
芳住 邦雄 斉藤 栄一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.183, 2003

<目的> 廃棄物として処理される布団は年間1000万枚にも及ぶと推定される。循環型経済杜会の構築に寄与するための一つとして、布団の洗浄を行い3Rに貢献することが考えられる。一方では、清潔な就寝環境を得るために布団を洗いたいとの要求には根強いものがある。本研究は、布団を家庭用洗濯機で洗浄する際の使い勝手および乾燥特性を明らかにすることを目的としている。形状および充填量、中ワタの素材による影響を検討し、洗える布団を設計するに資する情報を得ることに主眼を置いている。<実験方法> 1)実験用布団:中綿に(1)ウォッシャブルポリエステル100%(2)ウォッシャブルウール100%(3)通常ウール50%・通常ポリエステル50%(4)通常ポリエステル100%(5)綿100%を用いて、クッション・サイズおよび幼児用サイズの布団を試作した。2)洗濯方法:市販7Kg用洗濯機を用いて、洗剤を加えて通常の洗濯プロセスにより自動運転した。最終的には、自動により脱水を行った。3)乾燥過程の測定:電子天秤を用いて重量を測定し、その減少量を以って、洗濯後の水分乾燥量とみなした。クッション・サイズについての乾燥実験は、実験室内で行いデータは1分間ごとに記録した。幼児用サイズでは、屋外にて乾燥実験を実施し、1時間おきに重量を測定した。<結果と考察> 中ワタの素材による乾燥特性の相違を、濡れ率={(濡れ時重量)-(乾燥重量)}/(乾燥重量)で定義して比較した。乾燥性はクッション・サイズおよび幼児用サイズの両実験に共通して、総合的に下記の順で良いことが明らかとなった。綿100%>ウォッシャブルポリエステル100%>通常ウール50%通常ポリエステル50%>ウォッシャブルウール100%>ポリエステル100%幼児用サイズにおいては中ワタ量によっては、家庭用洗濯機で洗うには困難が伴うことが実験結果から判断された。洗い勝手を考慮して敷布団構成は、二枚重ねにする必要があると結論した。直接肌に触れる上部敷布団は、肌にやさしい天然素材でかつ吸収性のある綿100%とし、その下側に透湿性および乾燥性に利点のあるウォッシャブルボリエステル100%を使用することとした。中ワタ重量を0.5kgにし再び乾燥実験を行った。冬期でも晴れの天候下では乾燥可能なことを確認出来た。以上の結果から、自動洗濯機で充分脱水するならば、上述の組み合わせは、洗える布団の構成として実用的に供しうると結論された。
著者
大矢 勝
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

目的 洗浄現象を理論的に解析するのに役立つ新たな洗浄力指標<sup>1)</sup>について検討した。汚れの付着力および洗浄作用のばらつきが正規分布に従うと仮定し、双方の確率密度関数から洗浄過程をシミュレートし、洗浄作用の分布の中心(&mu;<sub>RL</sub>)、および洗浄作用のばらつき(&sigma;<sub>RL</sub>)を汚れの付着力の相対位置として求める。この手法を検証した。<br>方法 酸化鉄(Ⅲ)、各種油性色素、各種酸性染料などをモデル汚れとして、ターゴトメータで5分間の洗浄を4回繰り返し、その間の洗浄率変化を求め、シミュレーションアプリケーションで&mu;<sub>RL</sub>と&sigma;<sub>RL</sub>を計算した。洗浄率は表面反射率からK/S値を求め、質量単位の洗浄率に近似できる洗浄率として計算した。ターゴトメータの回転数(60~180rpm)、各種界面活性剤の濃度、洗浄温度などを変化させて&mu;<sub>RL</sub>と&sigma;<sub>RL</sub>への影響を探った。<br>結果 &sigma;<sub>RL</sub>の値はカーボンブラック汚染布、酸化鉄汚染布、湿式人工汚染布が小さな値、油性汚れ(油溶性染料)が中程度、水溶性汚れ(酸性染料や直接染料)は大きな値となった。<sub>&sigma;RL</sub>の値がほぼ一定の値をとる条件下で、ターゴトメータの回転数、界面活性剤濃度などを変化させると、&mu;<sub>RL</sub>に加算法則が成立することが分かった。<br>実験に協力頂いた、羽田さん、執行さん、小野さん、平出さんに感謝する。
著者
今村 律子 西岡 真弓 赤松 純子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 「アイロンかけ」を体験するだけの授業を、中学校家庭科のねらいである「実践的・体験的な学習活動を通して」科学的に学ばせる授業へと転換することで、生活の中で応用し生かしていける力をつける授業づくりを目指した。<br><b>方法</b> 題材名「アイロンを極めよう」(2時間)で「繊維や布の特徴を理解したアイロンかけができる」ことをねらいとする授業実践を和歌山県内の中学校3校の1・2年生対象(285名)に実施した。しわが伸びる三要素(熱・水分・圧力)を押さえ、種々の衣生活内容と関連付ける授業内容と効果的な指導方法を研究した。また、生徒の授業前後のアンケートなどにより授業の効果を確認した。<br><b>結果 </b>1.「アイロンかけ」実習授業(2時間)に衣生活の総合的な視点を取り入れ、1時間目は【基礎編】、2時間目は【応用編】として内容を整理した授業が実践できた。<br>2.「しわが伸びる原理を示す模式図」や「カッターシャツ解体見本」、「アイロンかけビデオ」などの視覚的教材を活用した指導の工夫ができた。<br>3.「アイロンかけ」実習は、1枚のカッターシャツを分担し相互評価をさせるグループ学習により、時間を有効に使いながら相互に学び合う効果的な学習ができた。<br>4.1時間目実習時に生徒が気づいた「しわを整えるとかけやすそうだ」などの意見を生かし、かけ方のコツについて科学的に考えを深める問題解決学習ができた。<br> 本研究の一部は、基盤研究(B)26282011による。
著者
望月 美也子 重村 隼人 長谷川 昇
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.116, 2007

<B>目的</B> 炎症性腸疾患は、腸粘膜に慢性の炎症または潰瘍を引き起こす難治性特定疾患の総称であり、過剰な過酸化物の生成により発症することが明らかとなっている。一方、シクンシ科植物であるテルミナリアのその抽出物質であるセリコサイドは、<I>Terminalia sericea</I>の樹皮および根に由来し、アフリカや東南アジアでは、抗酸化作用を持つハーブとして民間療法に用いられている。そこで、本研究は、2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)によって誘発される、炎症性腸疾患動物モデルに対するセリコサイドの炎症性腸疾患保護効果を確かめるために行われた。<BR><B>方法</B> 雄SDラット(165±10g)を用い、セリコサイド(30mg/kg)を10日間連続的に経口投与した。その後、炎症性腸疾患を誘発させるためTNBS50%エタノール水溶液(120mg/Kg)を直腸内投与した。12時間後、大腸を採取し、炎症部位のダメージスコア、好中球浸潤の指標であるmyeloperoxidase(MPO)活性、superoxide dismutase(SOD)活性を測定した。<BR><B>結果・考察</B> 本研究の結果、TNBSによる潰瘍、出血を伴う炎症性大腸炎の症状と、MPO活性の有意な増加が見られた。この際、あらかじめセリコサイドを投与しておくと、粘膜肥厚と出血が抑えられ、白血球の浸潤も抑制された。以上の結果を総合すると、セリコサイドはTNBSによって惹起された炎症性腸疾患の粘膜保護に有効であることが明らかとなった。
著者
望月 美也子 重村 隼人 長谷川 昇
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.71, 2006

【目的】シクンシ科植物であるテルミナリアは、東アフリカなどの熱帯地方に約250種分布するといわれ、国内では沖縄県の海岸地帯に多く自生している。その抽出物質であるセリコサイドは、Terminalia sericeaの樹皮および根に由来し、アフリカや東南アジアではハーブとして民間療法に用いられている。そこで本研究では、抗肥満作用が報告されているセリコサイドに着目し、脂肪細胞の脂質代謝に及ぼす影響を確かめるために行われた。【方法】3T3-L1細胞を培養し、細胞がconfluenceに達した時点で、インスリンを培養液に加え、脂肪細胞へと分化させた。充分に脂肪を取り込んだ細胞に、セリコサイドを添加し、取り込まれた脂肪がどのように変化していくかを観察した。脂質動態の判定は、超音波処理細胞浸出液中の細胞質グリセロール量と細胞質中性脂肪量を測定した。【結果・考察】充分に脂肪を取り込んだ細胞に、セリコサイドを添加すると、コントロールに比べ蓄積脂肪が減少し、細胞質グリセロール量が増加する傾向がみられた。これらの結果は、セリコサイドの添加時間と濃度に依存的であった。
著者
荒川 友美子 田中 辰明
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.229, 2005

<b>目的</b> 平成15年6月「高齢者、身体障害者の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」が改正された。これにより、公共交通機関においてもユニバーサルデザインの考え方に基づくバリアフリーが広まっている。福祉後進国といわれているわが国であるが現状でのバリアフリーの普及はどの程度であるか、福祉先進国であると予想したイギリス、ロンドン地下鉄と東京メトロのバリアフリー施設の設置について比較検討することで、今後日本が公共交通機関においてバリアフリーをどう普及していくべきか提案することを目的とした。<br><b>方法</b> 日本とイギリスの公共交通機関のバリアフリー施設の設置について比較するために、日本においては東京メトロ各駅、イギリスにおいてはロンドン地下鉄各駅を調査対象とし、エレベーター、エスカレーター、ホームドアシステム、電車内での車椅子スペースなど、バリアフリー設備の有無を調査した。<br><b>結果</b> 東京メトロ駅総数169駅のうち81駅が、ロンドン地下鉄駅総数323駅のうち66駅においてエレベーターの設置があった。ホームドアシステムについては東京メトロ19駅に対し、ロンドン8駅という結果であった。バリアフリー設備の有無の割合では東京がロンドンより大幅に高いという結果になった。
著者
坂本 久子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.229, 2003

[目的]「福岡県福祉のまちづくり条例」(平成10年3月公布)にもとづいて、高齢化が進んでいる飯塚市の市街地2km<sup>2</sup>圏内での歩道、立体横断歩道施設、公園の実態について調査し、前回までの研究発表でこれらを報告してきた。本報では更に、障害をもつ人々がこれらの住環境をどのように感じているのかを調査し、その結果を報告するものである。[方法]障害者手帳所有者12名に対する聞き取り調査。回答者は調査対象地に居住しているか、またはその周辺に居住して仕事、通院、買物などで調査対象地と何らかの形でかかわりをもっ人を選定した。調査時期:平成15年1月[結果]回答者の性別は男性6名、女性6名で、男性は4名が職業を持っている。女性の有職者は1名である。年齢は40代が1名、50代が2名、60代が3名、70代が6名であり、そのうち65歳以上が7名と高齢者の回答が半数以上である。日常生活では、自立しているか家族の協力、福祉用具やヘルパーの手を借りて自立している。障害の部位については、肢体不自由者が7名、視覚障害者が4名、聴覚障害者が1名となっている。障害の部位により住環境に対する要求の箇所も異なっており、車いす使用者にとっては街の中の段差が切実な問題となり、視覚障害者にとっては音声の出る建物表示への希望が出されている。更に車を運転できる人は駐車場の問題や運転マナーの問題を挙げている。一般的に歩道に対しては、歩道まであふれた商品や看板、車の乗り上げなど使用者のマナーについて指摘が多かった。近所の公園に行く人は少なく、地区公園の勝盛公園には花見など目的がないと行かない人が多い。*本調査にあたり飯塚市身体障害福祉協会連合会会長藤延啓治氏のご協力を得ましたことを記して厚く感謝申し上げます。
著者
澤島 智明 ゴ・ティ チュ・フェン
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 居住者が日常生活において、夏期はより涼しい場所、冬期はより暖かい場所に選択的に滞在すれば、暖冷房エネルギーの使用を削減できる可能性がある。本報では夏期の住宅居住者の滞在場所と温熱環境の関係について事例調査をもとに検討する。<br><b>方法</b> 佐賀県と長崎県に建つ一戸建て住宅4件を対象に居住者へのインタビューと室温実測を行った。調査住戸選定の際には居住者数に対して室数が多く、居住者が比較的自由に滞在場所(室)を選択できることを条件とした。インタビューは事前に準備した平面図を見ながら、①エアコン・扇風機の使用状況、②住戸内各空間の使用・滞在状況、③ 室内の暑さ・涼しさなどについて質問した。インタビュー結果から室温測定の対象空間を定め、2013年8月中旬から9月中旬に10分間隔で測定を行った。<br><b>結果</b> 調査住戸のうち2件はエアコンを毎日、長時間使用しており、他の2件は通風中心の生活をしていた。エアコン使用の多い2件は部屋数に余裕があるにも関わらず、従来の室用途を守って生活しており、熱的条件の悪い部屋での滞在がエアコン使用を助長している可能性がある。一方、通風中心の住戸では居住者が日射を受けやすい場所や熱気のこもりやすい場所を避け、通風の良い場所を選択して滞在している様子が見られた。ただし、こちらも部屋の使用状況や生活行動の内容等を夏向けに大きく変化させているわけではなく、「同室内で着座場所が変わる」「短時間の滞在が時々見られる」といった行動の微細な変化であった。
著者
小林 泰子 石田 華南子 曽我 彩香 小島 麻希甫 牟田 緑
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 近年、多くの消臭製品が上市され、緑茶、ハーブ等の天然素材を利用した製品も目立つ。本研究では、綿布を各種条件で緑茶染色し、臭い物質のアンモニア、酢酸、エタンチオールに対する消臭性と、実用性を考慮した洗濯、光に対する染色堅ろう性について検討した。 <br><b>方法</b> 試料はシルケット加工綿メリヤス、緑茶粉末(宇治抹茶入り煎茶)、前処理剤はKLC-1カチオン剤、媒染剤はみょうばん、硫酸鉄(Ⅱ)、硫酸銅(Ⅱ)を用いた。染色は緑茶濃度5%o.w.f.、媒染は濃度0.5%で行った。調製布の染色性はK/S値で、消臭性は検知管法を用い、臭い物質の残存率で、洗濯、耐光堅ろう度はJIS法に従い、色差値で評価した。<br><b>結果</b> K/S値は、緑茶染色布では小さかったが、カチオン化+緑茶染色布では増加し、媒染、緑茶染色を重ねるとさらに増加し、染色性は向上した。アンモニアに対する消臭性は、未処理布にも認められ、消臭開始1時間後に残存率は20%となった。緑茶染色布では1時間後に0%、カチオン化+緑茶染色+銅媒染+緑茶染色布では10分後に0%になった。カチオン化、媒染により緑茶成分の布への吸着量が増し、高い消臭性が得られることがわかった。洗濯、耐光堅ろう性では、多くの調製布で変色が認められ、赤みが増した。緑茶中のタンニンやクロロフィルの影響によるものと考えられる。今後、成分と変色の関係を明確にし、堅ろう性の向上について検討する。
著者
秋元 宏 宇野 哲也 宮原 岳彦 江川 直行 宮坂 広夫 掬川 正純
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.12, 2007

目的<BR>生活者が衣類着用時に受ける衣類の摩擦について実態を把握するとともに、肌と衣類との摩擦低減効果のある柔軟仕上げ剤(以下、柔軟剤)の肌への影響について調べる。<BR>2.方法<BR><U>試験剤</U>:カチオン性界面活性剤系柔軟剤(以下、汎用柔軟剤)、ポリエーテル変性シリコーン柔軟剤(以下、シリコーン柔軟剤)<BR><U>試験布</U>:綿ブロードおよびポリエステルサテン。試験剤にて布に柔軟仕上げ処理をし、非使用を含む3種の試験布を作成した。<BR><U>動摩擦係数</U>:平面接触子に試験布を貼付し摩擦係数測定装置にて前腕内側上を滑らせて測定した。<BR><U>使用試験</U>:敏感肌、アトピー性皮膚炎、乾皮症等の皮膚炎を有する者を被験者としシリコーン柔軟仕上げ剤を洗濯時に使用させる方法で、1ヶ月間冬季に実施した。また、一部の被験者については約1年間通して使用させた。<BR>3.結果<BR>3種の試験布のうちシリコーン柔軟剤で処理した試験布の動摩擦係数が最も低く、非使用の試験布と比較しその値は0.1も低減していた。また、汎用洗剤および試験剤を用いて30回繰り返し洗濯をしたバスローブの着用感を官能による一対比較法にて試験した。その結果、すべりやすい、やわらかい等の項目に関してシリコーン柔軟剤で仕上げた衣類の着用感は良好であった。<BR>また、使用試験ではシリコーン柔軟剤で仕上げた衣類の着用で7割以上の被験者が「肌あたりの良さ」や「引っかからない感じ」を実感し、半数以上の被験者で肌の「乾燥」や「かゆみ」などが和らぐことが医師により確認された<SUP>1,2)</SUP>。さらに、約1年の長期使用によっても、有害事象および治療を妨げることは無かった。7割以上の被験者が「肌触りのよさ」を実感し、また、「今後も使用し続けたい」との意向を示した。<BR>文献<BR>1)永島敬士他;診療と新薬,43(9),p.912-917(2006)<BR>2)渡辺晋一他;診療と新薬,44(2),p.27-32(2007)<BR>
著者
杉森 孝
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.286, 2011

目的<BR>現在のファッション造形教育の指導においてその多くは、グラフィカルなデザインの内容に偏っているか、被服構成に偏ったものが殆どであり、人体や立体を中心にしたものを見つけることは困難である。ファッション造形教育を受けようとする学生の中には専門的な造形教育の経験が少ないか、全くないという学生も多い、また経験はあっても立体造形に対して苦手意識を持つ学生もいる。本研究はこのような学生であっても立体造形作品を無理なく制作できるための指導方法の確立を目的としている。<BR> 方法<BR>主に香蘭女子短期大学・ファッション総合学科での卒業制作(2009~2011)における造形指導について、20世紀初頭、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックらによって創始された「キュビスム」の手法をファッション造形教育へと導入し授業を行った。また全く同じ内容と指導ステップによってデザイン系専門学校の学生にも授業を行い、課題作品の比較を行った。<BR> 結果<BR>この指導方法の導入によって平面造形から立体造形への移行を自然に行うことが可能となった。また専門的な造形教育の経験の有無に関係なく立体作品の制作が可能であった。また完成した立体作品から服への展開も素材やパターンについての指導方法を整備していくことで解決することが可能である。以上のことから本指導方法がファッションにおける造形指導の一つとして有効であると考えられる。
著者
田中 辰明 柚本 玲
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.244, 2007

<b>目的</b> ブルーノ・タウトは日本では、著書「日本美の再発見」で日本建築の素晴らしさを世界に紹介した人物として知られている。1933年に日本に移住する前はベルリン市の住宅供給公社ゲハークの主任建築家、またシャロッテンブルク工科大学教授として活躍していた。1924年から1933年までの間に12,000戸の勤労者住宅を建設しており、それらは第二次世界大戦後も多数残っている。日本の団地にも大きな影響を与えた氏の作品を調査した。<br><b>方法</b> 調査対象はベルリン南部リッツの馬蹄形住宅フーフアイゼンジードリング・ブリッツ(1925-1930年:1963戸)、ベルリン西郊の森の団地ヴァルドジードリング・オンケルトムズヒュッテ(1926-1931年:1952戸)とした。後者には486戸の独立住宅、2軒を1棟とした住宅も含まれている。この2団地を中心にリューデスハイムプラッツ、アイヒカンプ、ヴァインガンドウーファー、シェラー公園、トリア通りの住宅について、住人への聞き取り、住宅内部調査を含め実地調査した。<br><b>結果</b> 氏の住宅ではヴィーゼと呼ばれる太陽を取り込み芝生のある庭が設けられている。また車の普及を予想し駐車場を確保したり、自然通風に配慮したりと住民への配慮が行き届いている。第二次大戦後の奇跡の復興による立派な住宅が多いベルリンでタウトの労働者住宅は決して目立つものではない。しかし、第一次大戦敗戦後に労働者が住宅に困窮した時代、「戦後復興は住宅から」という確固たる思想で、労働者の健康に配慮した団地建設を行なったタウトの仕事は賞賛されるべきである。リッツ、オンケルトムズヒュッテには住まい手に大変感謝されていることがしのばれるタウトの顕彰碑が建っている。
著者
佐藤 愛 芝木 美沙子 川邊 淳子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, pp.22, 2010

〈B〉目的〈/B〉 衣生活では食生活に比べ、学校教育を離れると手作りをする機会や場が減ってしまうという現状がある。また、核家族化が進みライフスタイルが多様化する中、妊婦が出産・子育てへの不安を抱えたまま、多忙な生活でお腹の中の赤ちゃんへの愛情をゆっくりと醸成させることができない状況にあるのではないかと考えられる。そこで本研究では、子育て支援の新たな取り組みを考える上で、妊婦のものづくり体験についての意識と実態を明らかにすることを目的とした。〈BR〉〈B〉方法〈/B〉 調査対象は、北海道A市の産科婦人科病院に通院する妊婦、および子育て支援事業の親学入門講座に参加する妊婦合計615名、調査方法は留置法による質問紙調査、調査時期は2009年6月下旬~8月上旬で、有効回答数は491名(79.8%)であった。調査内容は、裁縫技能の習得状況および方法、赤ちゃんに関する小物の製作経験および意欲、衣生活に関するものづくりの実態、子育て観などであった。。〈BR〉〈B〉結果〈/B〉 妊婦の63.7%から、生まれてくる子どものために衣生活に関するものづくりをしてあげたいという回答が得られた。その理由としては、「あたたかみ・愛情が感じられる」(16.3%)が一番多く、次に、「作ってあげたい・身につけさせてあげたい」等が続いた。一方、実際赤ちゃんに関する小物の製作経験をもつ妊婦は26.7%にとどまった。また、衣生活におけるものづくりをしない妊婦は70.9%にものぼり、「時間がない・忙しい」(29.9%)などの物理的要因とともに、「苦手・不得意」(21.8%)といった技能的な要因が多くあげられた。さらに、技能習得状況として、家庭科男女共修世代か否かの29歳を境に、ある一定の特徴が認められた。
著者
阿部 淳子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.99, 2004

【目的】 現代の子どもたちが地域の民俗文化としての祭囃子の練習に参加し、その学習過程において周囲の人々との関わりや、祭囃子の習熟を通して成長していく姿をフィールドワークにより観察した。その観察の中で、祭囃子への子どもの参加をきっかけとして、親やきょうだいも含めた家族、さらには地域の活動へと発展していく様子に注目し、地域に伝わる民俗文化の現代的意義を探ることが目的である。【方法】 1998年から2003年の6年間にわたり、埼玉県 O町における七夕祭りの祭囃子に参加する小・中・高校生、および保存会会員を対象に観察を行っている。参加人数は年度により異なるが、40名から60名の子どもたち、15名ほどの保存会会員が中心となり活動している。観察は参加観察、ビデオカメラによる記録、インタビューを通して行い、分析をおこなった。【結果】 祭囃子の活動は、子どもたちに太鼓の指導をする保存会の大人、幼稚園・小学校低学年の子どもたちの送り迎えを行う親、毎年祭囃子を楽しみに見に来る地域の人々など、直接演奏には参加していない様々な人に支えられて成り立っている。そして、祭囃子に参加する子どもを通じて、親同士のつながりや指導者と親のつながりが生まれ、地域における交流の場としての機能が観察された。これらのことから、現代において、地域に伝わる祭囃子の活動は、現代社会が失いつつある、地域社会における交流の場を提供するものとして、大きな意義をもつと言えよう。
著者
杉田 満 市川 裕佳子 繁田 明
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.337, 2002

一般家庭においてフローリングと総称される木質系床材が標準的な床材として定着してきているが、手入れ剤による拭き掃除は、材質への影響等の懸念から積極的には実施されていない傾向が見られる。そこで、15歳以下の子供のいる家庭を対象に掃除実態調査及び現場観察を行った。その結果、調査対象の半数近い家庭で、手入れ剤を使用した拭き掃除が日常的には行われておらず、その理由として、床材への影響懸念や水拭きだけで汚れは落ちているという意識が見られた。拭き掃除が不十分と見られる家庭では、汚れ残留によるつや低下や黒ずみが見られる傾向がある一方、床面の損傷(微細ひび割れ)は紫外線&middot;暖房機器類の影響を受けやすい場所で顕著であり、拭き掃除の影響は小さいものと考えられた。以上から、フローリング床材には場の汚れに合った湿式手入れの必要性があると考えられた。