- 著者
-
石渡 明
- 出版者
- 金沢大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
この研究では,既に国際学術誌に論文公表済みの多くの成果があった.Koizumi & Ishiwatari(2006)では丹波帯の付加体緑色岩が,ナップ基底部にまとまって産するものとメランジュ中にバラバラに産するものとの間で化学組成の多様性に大きな違いがあり,前者が海台,後者が通常の海洋底に由来すると結論した.Ichiyama et al.(2006)は丹波帯小浜地域の付加体緑色岩から,これまで日本ではほとんど報告がなかった,大規模火成岩区(LIP)に特徴的な鉄ピクライトを報告し,その成因を論じた.Ichiyama et al.(2007)は丹波帯の同じ緑色岩体から,顕生代では初めての大型スピニフェックス組織を示す玄武岩を報告し,同様の岩石を産するコラ半島ペチェンガ地域の原生代前期火山岩やズピニフェックス組織の再現実験結果と比較しながらその成因と地質学的意義を論じた.Ichiyama et al.(2008)は基底部緑色岩をTi含有量によって3種類に区分し,スーパープルームによるマグマ活動の一般的な時間的変化と対応づけてペルム紀海洋下におけるそれらの形成過程を論じた.このほか,この研究課題に関連する研究成果として,Ishiwatari et al.(2006)では小笠原前弧の母島海山にアダカイト質火山岩が産することを報告し,他の火山岩,斑れい岩,超苦鉄質岩の分布や岩石学的性質を検討して,太平洋プレート上の小笠原海台の沈み込みに関連してブロック状に隆起した前弧オフィオライト衝上岩体であるとするモデルを提出した.柳田ほか(2007)はマリアナ海溝南部の島弧側斜面からドレッジされた超苦鉄質岩を研究し,海洋底では初のMgカミングトン閃石を報告するとともに,原岩の鉱物化学組成や平衡温度,そして変成作用の特徴などから,この地域では前弧から背弧に至るマントル断面が,それらを横断するように形成された新しい海溝斜面に露出している可能性を示唆した.また,Ishiwatari et al.(2007)は世界的にも例の少ないざくろ石斑れい岩-超苦鉄質岩体をロシア北東部から報告した.