著者
石田 博幸
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

国際教育援助を考えるとき、自然科学は世界共通であり、日本の理科教育がそのまま世界に通用すると思われがちである。しかし、児童の持つ初期科学概念が自然、社会、言語、文化宗教的な環境によって、大きく異なり、場合によっては互いに、一方には存在しない概念を、他方では当然の既有の概念として持っていることもある。このことを裏づけるために日本、タイ、ラオス、中国、ロシア、ホンジュラスの小学生に対して共通のアンケートを依頼し、その結果を検討した。各国における調査は、過去、及び現在の本学への留学生や、報告者の知人等に依頼した。結果、多くデータから貴重な情報が得られた。この研究結果は、国際教育協力に関る際には、自然科学といえども、その国、地方を理解した上で、協力にあたるべきであることを結論している。調査地域と調査数は6ケ国、11地域、1582名に及んだ。調査形式は,記述欄を含む選択式で、内容は、太陽、熱、光など、主に地域の気候環境をテーマとし、第2回調査においては、宗教、生命観を主題に設定し、概念地図方式も取り入れた。データ処理はMS-Windows上でMS-Visual BASICを使った。データ処理は多岐にわたる。その関係を見るための他種類のデータ解析・表示プログラムを作成した。単純統計をとった場合、特に大きな差がないケースも、個々の回答の組み合わせをみると、差が顕在化してくる。このような新しいデーター解析法によって、従来、単純に集計されていた研究データーからも新しい情報を汲み出せる可能性があることを示した。結果から作成した概念地図において気候環境、およびそこから派生している言語、宗教文化の差を色濃く表している結果がえられた。このように得られた知見は多く、おおむね報告者の仮説を裏付ける結果が出た。成果は5回の学会、8編の論文として公表した。
著者
高橋 努 野木 靖之 浅井 朋彦 高橋 俊樹 松澤 芳樹
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

磁場反転配位(FRC)プラズマを閉じ込め磁場に沿って移動する(移送)際,その経路内に存在する中性粒子や弱電離プラズマの効果を実験的に明らかにした.背景にある粒子は,移送速度に相当する速度で入射する一種のビーム入射の効果(FRCへの粒子やエネルギーの補給の効果)を持つと考えられる.背景粒子種や移送速度の制御により粒子閉じ込め時間,磁束減衰時間の伸長や回転不安定性の発生時間の遅延などFRCプラズマの閉じ込め特性の改善が可能になる.
著者
野崎 京子
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

平成19年『強制収容とアイデンティティ・シフト:日系二世・三世の「日本」と「アメリカ」』を出版した。平成20年、移民の出身地と受け入れ地(国)との比較分析をテーマにブラジルに出張、沖縄等の出自地を捉えてトランスナショナルに位置する「新日系人」やペルー日系人強制収容などを研究、その成果は平成21年10月、カリフォルニア大(バークレイ校)での招待講演「日本と日系:太平洋環の繋がり」に提示した。
著者
神尾 達之
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ラーヴァーターは学問の手前に位置していた観相学を学問に格上げしようとした。ラーヴァーターの観相学とその受容史を追うことで、次の二点を確認することができた。(1)学問がその条件として内包している客観的な観察という方法と、観察主体の透明性という前提は、近代の発明である。(2)観察主体が自覚しないままに自己特権化し、それを可能にするテクノロジーが開発されることによって、レヴィナスのいう「他者」の顔は隠蔽され続ける。
著者
紅林 秀治 兼宗 進 鎌田 敏之
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

コンピュータがプログラムで動作し, 様々な機器の動作を制御していることを体験的に学習することで, 科学的にコンピュータを科学的に理解する能力が身に付けることができることが可能になるか調査した。そのために, 独自の教材用自律型ロボットを開発し, 中学生に対する授業実践を行った。その結果, 自動制御機器や家電等, 日常利用している自動化されている機器の仕組みを類推できる能力が身に付いていることがわかった。類推の背景には, コンピュータ, 電気回路, アクチュエータ, センサー等が連動していているシステムを構成していることや, 入力に対してその情報を処理して出力している関係を理解するなど, コンピュータの役割や仕組みを科学的に理解する視点が生まれてくることがわかった
著者
森岡 裕一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

19世紀アメリカの禁酒小説と家庭小説に見られる感傷主義に着目し分析を進めた。とりわけ禁酒小説に関しては、その代表的作品ともいえるT・S・アーサーの『酒場での十夜』の翻訳を解説とともに出版できたことは意義深い。また、「涙する少女」のモチーフを通して、禁酒小説と家庭小説に共通する特質を抽出し、その成果を口頭発表や講演で発表、さらには論文や啓蒙的文章という形で公刊しえたことは大きな成果だと自負している。
著者
住吉 広行 山根 宏文 益山 代利子 建石 繁明 SHIRINASHIHAMA Hiroyuki MINEGISHI Yoshio
出版者
松本大学松商短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

今回の申請は、安曇野が持っている豊かな自然環境や文化的な土壌を活かして、グリーンツーリズムあるいはエコツーリズムという視点で観光産業を発展させ、地域の活性化を図ろうとするものであった。特に、この地域では多くの方々が同じ思いで、独自の取組をされているが、それらがなかなか有機的に結びついていないという欠点を持っていた。それを大学という学術的な面での拠点を活かして、人と人とを結びつけ、新たな事業展開を図ることを一つの大きな目標にしていた。この点に関しては、2度の集いを開催し、各回70名を越える参加者を得ただけではなく、参加者自らが情報ネットワークを構築して、互いの情報交換を頻繁に行おうというところまで進展させることが出来た。参加者同士での知識や技術の交換も行われ、こうした方向性に参加された多くの方々が意を強くされた集会となった。一方で、安曇野が持つ観光資源をさらに広い視野で捉えようと、国内においては、産地直送や安全安心をテーマとした都市と農村の交流を活性化させることや、ユニバーサルデザイン化された観光地という視点での問題点洗のい出し、さらには環境を重視した世界的な取組などを、地域の方々と連携しながら学ぶ中で、これからの安曇野観光を共に考える機会が持てたと思われる。また、行政との連携という視点では、安曇野観光ネットワーク推進協議会やそれがさらに発展した、安曇野ブランドデザイン会議の進展などの成果があり、その後も大学と国営アルプスあづみの公園などが連携して、地域住を巻き込んだ健康づくりの活動も進んできている。また団塊の世代を対象とした、エコツーリズムのプランも旅行業者や地元観光業界などとの提携で、順調な足取りを踏み出して来ている。
著者
松田 謙次郎
出版者
神戸松蔭女子学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

この研究プロジェクトは、過去の法令と言語をめぐるアプローチとは異なり、法令を言語データ(コーパス)と見なして言語変化・変異の観察を行い分析することで、法令の言語データとしての特質やその可能性を見極めようとしたものである。具体的な変異現象として先行研究の多いサ変動詞の五段化・上一段化現象を取り上げた。法令データを分析すると、その分布は先行研究の結果と似たものであり、法令データでも他種類と同様な変異が存在することが確認された。また同年に公布された法令間、また同一の法令の中でも同一動詞についてサ変~五段・上一段という活用のゆれが存在することが明らかとなった。次に改正履歴を追跡するために、改正履歴が追跡可能な法令データベースを用いて過去10年間におけるいくつかのサ変動詞の動向を調査した。その結果いくつかの動詞で変化が年とともに進行する様子を明らかにすることができた。これらの結果からは、この変化が法令作成に携わる関係者の意識下で進行する、「下からの変化」であることが分かる。また、内的要因を分析してみると、少なくとも五段化では、先行研究で主要な制約条件とされてきたものがそのまま当てはまることが判明した。
著者
PEKAR Thomas
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

亡命をめぐる文化人類学的要素(ホームシック、故郷の文化と移住地の文化の差異による葛藤、新しい文化への結びつき等)は異なる分野の亡命テクスト(哲学、文化、文学等)に見られることが明らかになった。これらのテクストを「亡命の文化テクスト」と定義することが可能であり、亡命文学、移住文学、旅行文学に共通するカテゴリーを定義することができる。このカテゴリーは、文学研究および文化人類学の分野で「超域文化テクスト」と定義されている。この「超域文化テクスト」という手法上の概念は第一の成果である。さらに、異文化交流の観点から亡命概念を考察することにより、日本における亡命理解の背景が明らかにされた。日本文化においては、ユダヤやキリスト教文化をベースとする「亡命」の概念が根付いておらず、日本において「亡命」は「追放」の意味合いを持つものとして捉えられていた。ドイツと日本という異なる文化における「亡命」概念の差異の分析は第二の成果である。第三の重要な成果として、様々な文書館および図書館での資料収集、学会の開催(研究発表は出版予定)により、第二次世界大戦中の日本および日本占領地を含む、東アジアへの亡命の全体像が明らかになった点が挙げられる。
著者
堀地 明
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、清代中国における食糧暴動の首謀者がどのよう法令に基づいて、いかなる刑事罰を受けたのかを実証的に解明することである。雍正~道光年間(1723~1850)の事例を検討した結果、清代の食糧暴動の首謀者に課せられた最重の刑罰は、大清律例軍律激変良民の光棍条例による判決後の即時執行の斬首刑であった。食糧暴動が頻発した乾隆13(1748)年には、皇帝の意向により斬首執行後の梟首が付加され、刑罰の厳罰化がはかられた。
著者
志柿 光弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では米国との関係におけるプエルトリコ、日本との関係における沖縄という二つの事例について、「一定の地理空間を歴史・言語・文化的な同質性の基盤として有するが、独自の主権国家を形成することはせず、歴史・言語・文化的同質性の範囲を越えたより大きな主権国家内にとどまり、あるいは統合されることを選択している人間集団が構成する政治単位」としての「国家内地域」という概念を措定し、これを上記の事例に適用し、その有効性の検証を試みた。プエルトリコについては、地理的空間を基盤に持っていること、アメリカ合衆国とは明らかに異なる歴史的・言語的・文化的特性を有していること、しかし、分離独立を支持する住民は少数であり、アメリカ合衆国の主権下に止まることを住民は望んでいることから、「国家内地域」概念が有効性を持つと考えられる。また、沖縄については、地理的空間を基盤にしており、日本本土とは異なる歴史的・言語的・文化的特性を有しているが、明治維新以来の同化政策の結果、その差異はプエルトリコの場合ほどには顕著とは言えない。しかし、分離独立の可能性は持っており、「国家内地域」概念の適用は可能である。何れの事例についても、「民族」や「エスニック集団」という概念では、現状を十分に説明できないが、「国家内地域」概念を導入することによって、より客観的で冷静な理解が可能となる。
著者
崔 鍾植
出版者
大阪商業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)最近の少年非行の動向としては、まず日韓ともに低年齢化の傾向が顕著である。少年比と殺人罪については韓国より日本のほうが高いが、反面、強盗罪と強姦罪、10万人あたりの少年犯罪者の割合は、韓国が日本より高く現れている。(2)少年司法においては、少年の健全育成という側面から見れば、全般的にいまだ足りないところが少なくない点から、日韓ともに「少年保護の理念」という初心に帰って処遇の多様化と充実化のためのさらなる工夫が必要であると判断される。特に、日韓ともに刑事裁判において少年に対する配慮が足りないところが多い点から抜本的な改善方策が急を要する。(3)日韓少年司法において望ましい市民参加による裁判制度については、少年審判と刑事裁判ともに参審制形態の市民参加による非公開の裁判制度の導入を検討すべきであるという結論に至った。
著者
吉富 巧修 三村 真弓 大西 潤一 水崎 誠
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、25年前と現在の幼児の歌唱能力と幼児をとりまく音楽的環境との比較を行うことを目的とした。25年前と同一の幼稚園で、25年前と同一の幼児の歌唱能力の調査と幼児をとりまく音楽的環境に関する質問紙調査を行い、両者を比較した。その結果、以下の知見を得た。(1)「メリーさんのひつじ」の無伴奏歌唱の評価は、有意差はないが、25年前の方が好成績であった。(2)音楽的な習い事をしている幼児は、25年前は35.7%、現在は40.0%であった。(3)25年前の習い事をしている幼児としていない幼児の無伴奏歌唱の評価は、3.36と3.84であった。現在の習い事をしている幼児としていない幼児の無伴奏歌唱の評価は、3.97と3.48であった。25年前では習い事をしていない幼児の無伴奏歌唱の評価が高かったのは、当時の幼稚園教育での音楽的活動によって幼児の歌唱能力が高められたからであるといえる。(4)無伴奏歌唱の開始音高の平均は、男児は25年前にはD#4+12cent、現在はC#4+36centであり、25年前のほうが有意に高かった(t(23)=2.56,p=.02)。女児は25年前にはE4+35cent、現在ではD4+88centであった。男児は25年前のほうが176cent(1.76半音)高く、女児も25年前のほうが147cent(1.47半音)高かった。この原因としては、幼児をとりまく音楽的環境のうち,家庭的環境には大きな変化はなく、音楽的な習い事をしている幼児はむしろ現在の方が多いことから、幼稚園での音楽的活動が25年前には非常に充実しており、現在では音楽的活動が質・量ともに不足しているからではないかと推察される。(5)幼児のピッチマッチングは、刺激音の種類によって成績が異なる可能性がある。ピアノ音<女声<女声での「こんにちは」、の順に成績が高かった。(6)幼稚園児の2年間・4回の縦断的調査の結果から、次の知見を得た。無伴奏歌唱の開始音高は、第2回調査<第3回調査<集中的な練習を行った第1回調査<第4回調査の順に高かった。音高弁別能力は、第1回調査<第2回調査<第3回調査<第4回調査であり、発達の道筋を示すものであった。
著者
森山 俊介 高橋 明義 天野 勝文 内田 勝久
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、成長ホルモン遺伝子が無脊椎動物に起源する仮説およびサケ成長ホルモンがエゾアワビ稚貝の成長を促進する発見に基づいて、軟骨魚類と無顎類の成長促進に関与するホルモン受容体を同定した。また、アワビの脳神経節にサケの成長ホルモン抗体に対する免疫反応陽性細胞群を検出し、その組織から成長促進因子および遺伝子を単離するとともに成長促進因子受容体を探索した
著者
飯田 敏行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

高純度サファイアの電気的特性を放射線照射下で調べた。その場測定の為の実験装置を製作し、中性子とγ線の照射実験を行った。一定のバイアス電圧下では、サファイア試料の放射線誘起電流はフラックスにほぼ比例し、単位呼吸線量率当りの電気伝導度増加係数は〜1.0×10^<-10>(S/m)(Gy/Sec)であった。また照射開始直後には大きな過渡電流が、そして、照射停止後には非常に遅い電流回復成分が観測された。さらに、外部バイアス電圧が無い状態でも放射線誘起電流が観測され、サファイア試料内部に電圧発生機構があることがわかる。これらの過渡電流やオフセット電圧の発生原因としては、試料の電荷蓄積や電荷キャリアの捕獲・再放出機構が考えられる。また、無機絶縁(MI)ケーブルについても同様の測定を行った。パルスX線照射実験では、ケーブル芯線に誘起される電荷量がパルス当りの吸収線量と芯線-シース間電圧にほぼ比例した。この事は、絶縁性低下の主要因が絶縁層内における電荷生成量とそのドリフトである事を示唆している。実験値を基にケーブル芯線に誘起されるパルス電荷量のシミュレーション計算を行った結果、絶縁材中の生成電子の平均ドリフト距離は、芯線-シース間電圧100Vに対して約15nmと推定された。この値の物理的妥当性については別方法によるクロスチェックが必要である。
著者
宮本 大
出版者
流通経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

近年の日本企業の成果主義的な賃金分配システムの変容において、企業の経営組織・経営戦略のあり方は人材管理の面にまで整合的に影響を及ぼし、全体的な経営管理システムは一貫してスピード(短期性)・効率性重視という方針の下で調整が進められてきた。しかし、その結果、人材育成という個別システムが軽視され、それが従業員および企業パフォーマンスに悪影響を及ぼしていることが明らかとなった。このことは全体的な管理システムの一貫性とは別に能力開発のような個別システムの重要性を示唆している。
著者
西田 司
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.コミュニケーション行動の予測に関する異文化間コミュニケーションの分析フレームワークを作成した。その分析フレームワークには第2章で詳述したように、四次元で構成した。(1)相手への態度や出会いの場の不安と不確実感の制御といったことがコミュニケーションが効果的になるかどうかに大きな影響を与える。(2)コミュニケーションの目的によっては、コミュニケーションをしようとする動機が強く影響する。(3)意思の表出能力と相互作用の能力はコミュニケーション行動が効果的であるか、ひいては、(4)コミュニケーション行動の結果、つまり、評価と満足に影響する。2.アジア人にはアメリカ人とは異なるコミュニケーションのルールがあることを知っていても、これまでの研究においてはアメリカで用いられている調査方法で研究がなされてきた。個人情報の開示に関する研究とコミュニケーション行動と内集団の研究を検証し、調査に取り入れるべき観点や方法を第3章で提案した。それは人の交流を複数の観点から捉えるもので、調査も集団の観点から行うことを意味する。3.調査法の転換に関する議論をもとに、二つの調査を行った。一つは、中国と日本において仕事や授業の終わった後の、内集団と交流活動の実態について学生を中心に調査票による調査を実施した。たとえば時間的コミットメントの実態、中国と日本の共通する面が確認された。また、交流時間は少ないが交流の重要性は高いという点が中国サンプルに明らかになった。もう一つは、アメリカ、中国、日本における人間関係のルールについて調査した。関係のみを明示しルールを集めた。この目的は、三つの文化における実際的な状況に関する情報を得るためであった。
著者
石渡 明
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

この研究では,既に国際学術誌に論文公表済みの多くの成果があった.Koizumi & Ishiwatari(2006)では丹波帯の付加体緑色岩が,ナップ基底部にまとまって産するものとメランジュ中にバラバラに産するものとの間で化学組成の多様性に大きな違いがあり,前者が海台,後者が通常の海洋底に由来すると結論した.Ichiyama et al.(2006)は丹波帯小浜地域の付加体緑色岩から,これまで日本ではほとんど報告がなかった,大規模火成岩区(LIP)に特徴的な鉄ピクライトを報告し,その成因を論じた.Ichiyama et al.(2007)は丹波帯の同じ緑色岩体から,顕生代では初めての大型スピニフェックス組織を示す玄武岩を報告し,同様の岩石を産するコラ半島ペチェンガ地域の原生代前期火山岩やズピニフェックス組織の再現実験結果と比較しながらその成因と地質学的意義を論じた.Ichiyama et al.(2008)は基底部緑色岩をTi含有量によって3種類に区分し,スーパープルームによるマグマ活動の一般的な時間的変化と対応づけてペルム紀海洋下におけるそれらの形成過程を論じた.このほか,この研究課題に関連する研究成果として,Ishiwatari et al.(2006)では小笠原前弧の母島海山にアダカイト質火山岩が産することを報告し,他の火山岩,斑れい岩,超苦鉄質岩の分布や岩石学的性質を検討して,太平洋プレート上の小笠原海台の沈み込みに関連してブロック状に隆起した前弧オフィオライト衝上岩体であるとするモデルを提出した.柳田ほか(2007)はマリアナ海溝南部の島弧側斜面からドレッジされた超苦鉄質岩を研究し,海洋底では初のMgカミングトン閃石を報告するとともに,原岩の鉱物化学組成や平衡温度,そして変成作用の特徴などから,この地域では前弧から背弧に至るマントル断面が,それらを横断するように形成された新しい海溝斜面に露出している可能性を示唆した.また,Ishiwatari et al.(2007)は世界的にも例の少ないざくろ石斑れい岩-超苦鉄質岩体をロシア北東部から報告した.
著者
石濱 裕美子 福田 洋一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究はチベット仏教の大成者ツォンカパ・ロサンタクペーペル(1357-1419)の最古層の伝記の研究を通じて、ゲルク派の歴史・教会史を明らかにすることを目的とした。現在入手可能なツォンカパの最も古い伝記には、『自伝』、直弟子のケドゥプジェ(1385-1438)の一般的な伝記『信仰入門』と神秘体験を綴ったンカ『秘密の伝記』、それに対する補遺として書かれたジャンペルギャムツォ(1356-1428)の『ツォンカパ伝補遺』他2篇がある。本研究課題では、これらの伝記の和訳研究を通じて、文献学、歴史学、仏教学の視点からツォンカパの思想形成や当時の教団の具体的な姿などを明らかにした。これらの伝記の成立順も確定することができた。まず最初に『自伝』が書かれて、ツォンカパの学習過程が修学期間、思想形成期間、講説期間という三つの期間に分けるパターンが確立した。ケドゥプジェの『信仰入門』が書かれ、次に同じく『秘密の伝記』が書かれ、それらを踏まえて『ツォンカパ伝補遺』が書かれた。その大部分はツォンカパ在世時に書かれたが、ツォンカパの死後『信仰入門』の最後にその様子が付け加えられたと推定される。また、ツォンカパの著作の全てのコロフォンを整理した。そこには、著作年次はほとんど見られないが、著作場所が記されていることが多く、また『信仰入門』にはツォンカパの場所の移動が細かく記されているので、それらを対照することで、多くの著作の著作年次または著作順序を明らかにすることができた。本研究課題の成果として、報告書において『自伝』、『秘密の伝記』、『補遺』の訳注と『信仰入門』の梗概を収録した。『信仰入門』全体の訳注は後日、その他の資料も含めて刊行予定である。
著者
鴨池 治 金崎 芳輔 秋田 次郎 吉田 浩 北川 章臣
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本年度の研究では、以下の3点の実績が得られた。1.はじめに、確定拠出年金の導入は実質的には退職金の前払いであり、その導入を決断した企業は年功賃金制のような賃金後払いの方法で従業員の勤労意欲を引き出すことを(部分的に)断念したに等しい。こうした企業は勤労意欲を引き出す手段として効率賃金を採用する可能性が高いが、この方法が広汎に採用されると、労働市場は高賃金が支払われる内部市場と低賃金が支払われる外部市場に階層化し、全く同じ能力を持つ労働者の生涯効用に格差が生じることになる。2.つづいて、厚生労働省のホーム・ページから2000年8月末に「確定拠出年金企業型年金承認規約代表企業一覧」を入手した。このリストにある1,993の企業から株式公開企業520社、さらに東証1部上場企業337社を抽出した。次に、日経テレコン21の記事検索により401k年金導入の記事が掲載された企業93社を探し出した。最後に、東洋経済新報社の株価CD-ROMより新聞掲載前後の株価データを入手し、401k年金導入のニュースに対して、株価(企業価値)がどう変化するかのイベント・スタディを行った。その結果、確定拠出年金導入の公表は当該企業の株価を高める効果は確認できなかった。3.最後に、『家計調査』の2002年から2006年までの貯蓄・負債編の公表集計表のデータを用いて日本における確定拠出年金制度の家計貯蓄に与えた効果を回帰分析した。年金型貯蓄/総貯蓄比率を被説明変数とした回帰では、勤労者でより所得の大きな世帯で拠出限度額の改定が総貯蓄に占める年金資産額を増やす可能性が示された。しかし、総貯蓄/所得比率を被説明変数とした回帰では勤労者でより所得の大きな世帯で、拠出限度額の改定が総貯蓄を侵食している可能性が示されている。いずれのケースにおいても、所得の小さな世帯においては確定拠出年金制度が年金型貯蓄および、総貯蓄を増加させているという効果は確認できなかった。