著者
中川 重康 西村 萬平
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

シミュレーションにより予測誤差30%以下であれば、日射量予測による効果が現れ、数日先の日射量を予測することにより、さらに経済的な運用が可能であることが明らかとなった。一方、舞鶴において、全天日射量、傾斜面日射量、気温、風向および風速を1999年5月から測定した。日射量は太平洋側地域に劣らない量であったが、冬季にはかなり低い値となった。特に平成11年度は舞鶴海洋気象台史上初の積雪量となり、ファン付き日射計も埋もれることとなった。過去の気象庁気象データから舞鶴における天気に基づく全天日射量の推定誤差率を求めた所、6月を除く4月〜10月において10〜15%の範囲に収まるが、それ以外の月では15〜20%の範囲となった。この手法を文字放送から得た天気予報に適用し、日射量予測を実施した。その結果、冬季および春季の"晴れ"という予報以外において、天気予報による日射量予測が70%以上の確率で予測誤差30%以下を達成することが分った。太陽熱/電力給湯システムにおいて、市販集熱器と市販深夜電力給湯器との組み合わせを検討した結果、貯湯タンクを1つにした構成が本研究に適当であることが分かり、これを新たに設計し、校内に設置した。集熱器、貯湯タンク、配管などにセンサーを取り付け温度を計測した結果、天気が安定した場合における集熱特性および放熱損失が明らかとなった。以上のように、システムの稼動状況の記録およびパラメータの決定を行った。日射量予測値に基づいて深夜電力により加熱を行う試験運用を行った。このデータから日射量予測の効果を確認した。また、本システムは本校武道場シャワー室に設置したため、実際の給湯負荷に対する実験に発展させる予定である。
著者
マリアンヌ・シモン=及川 中地 義和 鈴木 雅生 畑 浩一郎 月村 辰雄 塚本 昌則 野崎 歓 塩川 徹也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

『イーリアス』第18歌でアキレスの盾を描写したホメロス以来、芸術作品、特に絵画をめぐる文章を著してきた文学者は枚挙にいとまがない。西欧文学では、絵画の描写はひとつの伝統として捉えられてきた。フランスにおいて文学者の絵画に対する関心がとりわけ顕著になるのは19世紀であり、絵画をめぐるテクストの質も多様化するが、本研究は、19-20世紀のさまざまジャンルのテクストを選択し、絵の様相と意味とを多元的に考察しながら、これまであまり研究の対象になっていなかった作品について検討し、文学と絵画の関係という分野において新しい成果を出した。
著者
高岡 治
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,体操競技の採点における分業制,および,非分業制の採点方法の違いが,演技観察の様相と演技の評価に与える影響を検討することにより,演技評価の内容的妥当性検討,さらには,審判技術指導上の基礎資料を得ることであった.被験者として,本研究の趣旨を説明し承諾を得ることができた国際体操連盟公認男子審判員資格を有する24名を選出し,無作為に三つのグループに分類した.平成14,15年度に開催された国内の競技力を代表する三つの競技会(全日本学生選手権,全日本選手権,NHK杯)において,ゆかと跳馬を除く4種目の演技をビデオカメラを用いて撮影した.これらより,各種目それぞれ4演技づつ計16演技抽出し採点資料とした.各被験者グループには,それぞれ,演技の価値点(難度,特別要求,加点の採点要素の採点結果に演技実施の配点(5.0)を加えた点数)の採点を行なう(A審判法),演技実施の採点を行う(B審判法),価値点と演技実施のいずれも行う(A・B審判法)のいずれかの採点方法を用いて,採点規則男子2001年版にしたがい演技の採点を行うよう指示した.演技の採点にあたり,各被験者にはアイマークレコーダ(nac EMR-8)を装着させた.演技観察の様相については,各種目とも特徴的な様相を示した技がみられ,特に,あん馬においては,技の成立に関わる部分への観察様相が顕著であった.しかしながら,これらと採点方法との関連については明らかにすることができなかった.一方,演技評価については,演技実施の減点において,採点方法の主効果がみられ,採点分業制は採点兼業制と比較して,演技実施の減点が約.10程度大きい値を示していた.このことは,同じ現象の同じ部分を観察しながらも,採点方法により演技評価が異なっていたことを示している.これらのことから,採点方法が演技評価の内容的妥当性に与える影響が示唆された.
著者
伊藤 佐知子 神林 崇
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

高齢健常者14名を対象に、ゾルピデム(マイスリー、アステラス社)5mg,塩酸リルマザホン(リスミー、塩野義社)1mg、トリアゾラム(ハルシオン、ファイザー)0.125mgの一回服用における翌日の運動機能と認知機能について、プラセボとの比較試験を行った。その結果、客観的指標に関してはゾルピデム5mgが良好な結果を示し,主観的評価についてはトリアゾラム0.125mgが良好な結果を示していた。これにより、睡眠導入剤の就寝前一回服用における高齢健常者の運動機能と認知機能の変化について、プラセボとの二重盲ランダム比較試験によって(1)半減期においては、超短時間型で、(2)ω1選択性の有る、(3)ノンベンゾジアゼピン系の睡眠薬が高齢者に好適な薬剤である可能性が高いことが示唆された。
著者
大和田 英子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

ウィリアム・フォークナーは1920年代後半から1940年代前半まで映画脚本の執筆に携わっていたが、その動機は財政問題にあったため、この時期のシナリオ諸作品には、文化的・歴史的視点からのアプローチが欠けていた。しかし、フォークナーと同時期にハリウッドでシナリオ製作、あるいは、映画プロデュースに携わっていた、作家・映画監督などの動向を詳細に検討すると、当時のアメリカ政府による文化政策の影響が色濃く、フォークナーもその影響の範囲内での仕事を余儀なくされていた事実が浮かびあがる。本研究では、フォークナーがハリウッド時代、共に仕事をしたハワード・ホークス文書をユタ州ブリガム・ヤング大学図書館にて調査し、フォークナーとホークスのみならず、ガイ・エンドア、エイゼンシュテインらとの共通認識であったアメリカ海兵隊によるハイチ侵攻及びハイチからの撤退という歴史的事実が与えた映画界への影響の痕跡を探った。映画に携わった当時の映画人・作家は、表現のうえでも、思想のうえでも、アメリカの軍事行動に反発を示し、アメリカ政府がそれに対して検閲制度を強化していったが、そのような制限の中で、いかなる文学作品あるいは映画が生まれ、あるいは闇に葬られていったのかを検証した。ガイ・エンドアの『バブーク』はその好例でもあるが、エンドアとフォークナーが同時期にハリウッドで脚本制作に携わりつつ、全く異なるハイチ表象を選択した背景は、各々の思想的相違というよりは、ハイチに対するイメージの相違と考える。
著者
羽渕 裕真
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、路側に設置した配信基地局から "ブロードキャスト型光無線多値変調法" により情報配信し、取得失敗した配信情報を "車々間通信を用いたスペクトル拡散変調型ランダムアクセス法" により補間する光/電波融合通信システムを構築している。特に、ユーザ間で損失パケットを補間する誤り制御法、データの価値にしたがって配信可能距離を設定する階層型情報配信法とオンオフ信号に対応できる光無線変調法を検討している。
著者
宇陀 則彦 松村 敦 寺井 仁
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は学習と情報資源(教材、図書、学術論文、Web情報)の相互作用に焦点をあてた。思考と情報資源は連動しており、理想的な環境は適切な情報資源が思考に追随してくれることである。本研究では、電子図書館システムと密に連動することで図書館の豊富な情報資源をオープンコースウェアと連携させ、学習者の思考に情報資源が追随する非定型学習環境を構築した。研究を通じて得た知見は、学習における情報資源の役割は予想以上に大きいこと、思考と情報資源の相互作用は補完的であること、情報資源を提供するサービスは学習プロセスと乖離しており、改善を要することの3点である。
著者
小栗 成子 柳 朋宏
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、セミダイレクトな添削指導のためのWebシステムERRMarkerをMoodleモジュールとして開発し、あらたな添削指導モデルを構築した。セミダイレクト手法の添削指導は、学習上の弱点に対する学習者自身の気づきを促すために有用で、英語レベルや学習動機に格差がある学習者集団においても、学習者それぞれの学習段階に応じて発生する学習ニーズを的確に把握する事を可能にしている。このセミダイレクト添削手法のMoodleモジュールは、スパイラル型指導の実践に貢献することができる。
著者
望月 康恵 大形 里美 森谷 裕美子 田村 慶子 織田 由紀子
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、東南アジア地域におけるジェンダー主流化の動きとNGOの役割について考察したものである。望月康恵(研究代表者)は、東南アジアの国際機構・制度に着目し、ジェンダー主流化への対応と加盟国との関係について考察を行い、機構・制度の独自の取り組みについて検証した。また、職務権限上の制限、加盟国への影響、取り組みの評価の必要性や将来への課題についても検討した。田村慶子(研究分担者)は、マレーシアおよびシンガポールの女性政策とNGOの関わりについて現地調査と具体的な検討を行った。それぞれの政府の女性政策と女性の地位について歴史的に明らかにし、またNGOが政府や州の政策にどのような役割を果たしているのか、その協力および対抗関係について分析し、問題点と課題を明らかにした。森谷裕美子(研究分担者)は、フィリピン、パラワン社会におけるNGO活動の個別、具体的な調査を行った。その結果、少数民族社会におけるNGO活動にはジェンダー主流化の配慮が欠けている例が多く見られたため、さらに、少数民族社会に影響力の大きいNGOにどのような課題が残されているかを明らかにし、今後、少数民族社会とNGOにどのような関係が期待されるのかを検討した。大形里美(研究分担者)は、インドネシアの女性政策の流れ、そして女性組織(社会団体、及びNGO)の発展について、インドネシア政府による2000年以降のジェンダー主流化政策が女性NGOの活動とアドボカシー活動によって実現したものであることを確認した。また、ジェンダー主流化に関連する様々な分野で活動を展開している女性NGOに着目し、組織の発展、活動内容について検討した。織田由紀子(研究分担者)は、ジェンダー主流化政策の歴史的変遷を踏まえつつ、アジア地域においてジェンダー問題に関わるNGOについて現状分析を行い、NGOが国境を越えたネットワークを通じて多様な課題におけるジェンダーの主流化の推進に影響を及ぼしてきていることを研究した。なお、研究代表者および分担者は、研究会を定期的に開催し、報告および意見交換を行うことによって、研究の進捗状況および方向性を確認しながら分析を深めた。その成果を日本国際政治学会東南アジア分科会(2002年11月淡路夢舞台国際会議場)にて報告し、また成果の一部を『アジア女性研究』(12号、2003年)の特集「ジェンダー主流化におけるNGOの役割-東南アジアを中心に」に掲載した。
著者
西村 浩一 佐々木 敦 小林 一義
出版者
釧路工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

10GHzを越える電波は降雨、降雪、霧などの大気条件によって減衰することは知られているが、釧路地方で発生する濃い海霧が12GHz帯衛星放送波の減衰に及ぼす影響については解明されていない。海霧発生時における衛星放送波の減衰について、より正確な実測データを得るため、受信レベルの測定地点における気象データ収集システムと、海霧等の視程値を計測する視程計測システムを製作した。これらのシステムを用い、これまで得られたデータから、次のような結果を得た。雨の場合は、雨量に応じて衛星放送波の受信レベルが減衰している。これに対し、海霧が発生している時の受信レベルは、その減衰量は少ないが絶えず細かく変動している。この受信レベルの細かな変動は、局所的な海霧の濃さの変動によるものだけではなく、海霧の空間的形状にも深く関係していると考えられる。また、視程がほぼ同じであっても、海霧の粒径により受信レベルに与える影響に差がある。粒径が大きな霧(湿った霧)ほど、受信レベルに与える影響が大きい。降雨による衛星放送波の減衰と、ガイシの絶縁特性の低下の間に相関関係があることもわかってきた。降水量が多い場合には、ガイシ表面の汚損物質が洗い流されて絶縁特性が再び回復するが、霧や小雨の場合は絶縁特性を低下させるだけである。特に海霧の場合は、その中に含まれる海塩粒子が絶縁特性をより低下させている。釧路地方で発生する海霧は、その濃さが場所によってかなり異なる。今後の展開として、衛星放送波の減衰と海霧の画像データから、海霧の動きを予想することも期待される。
著者
松尾 眞砂子
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

〔目的〕味噌によって生活習慣病を予防するため、味噌の抗酸化力を維持・増進する味噌の調理法、併用する香辛料や野菜の影響を検討する。〔方法〕調理温度、香辛料野菜の種類による味噌の褐色度、ポリフェノール化合物、イソフラポンの変動とORACの関係を測定する。味噌の生体内抗酸化力への影響は、野菜の味噌煮液をラット肺ホモジネートの上清に加え、SOD活性、GSH-Px活性と12-HETE生成量の変動を測定して推定した。〔結果〕1.調理法の影響 味噌の抗酸化力は主として70%エタノール可溶性画分のORACで、色度の明度、総イソフラボン量やアグリコン量に比例した。味噌の調理法による抗酸化力は蒸す、煮る、妙める、焙る、加圧加熱の順で褐色度、DPPH-SCとORACが増大し、総イソフラボン量とアグリコン量が減少した。加熱によるORACの増大要因にはメラノイジンの生成が示唆された。2.香辛料の影響 味噌を香辛料と調理すると、ショウガやゴマはポリフェノール量とOARCを増加し、ニンニクはポリフェノール量やイソフラボン量は増加しなかったが、ORACを増加した。唐辛子は褐色度とORACを低下させ、和芥子はポリフェノール量を増加したがイソフラボン量をORACを減少させた。これらの結果から、ショウガ、ニンニクとゴマはそれぞれ固有の抗酸化物質を溶出付加して味噌の抗酸化力を向上させ、唐辛子はメラノイジンの生成を抑制し、和芥子はメラノイジンの生成抑制とイソフラボンアグリコン量の減少により味噌の抗酸化力を減少させることが示唆された。3.野菜の影響 味噌をニンニク、葉ネギ、チンゲンサイ、ナスやブロッコリーと加熱するとORACが増加した。その要因には、ニンニクの場合はポリフェノールの溶出により、葉ネギ、チンゲンサイとブロッコリーの場合はポリフェノールの溶出と褐色度の増加が示唆された。4.生体内抗酸化力 ニンニク、ゴボウ、葉ネギはSOD活性とGSH-Px活性や12-HETE生成を促進し、タマネギ,チンゲンサイとピーマンはSOD活性を増大し、白ネギはSOD活性と12-HETEの生成を促進し、ナスはGSH-Px活性と12-HETEの生成を促進して体内でも味噌の抗酸化作用を増強することが示唆された。
著者
井野瀬 久美惠
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、18世紀末〜19世紀初頭にかけて創造され、19世紀半ば以降に確立された「解放する/自由主義の大英帝国」「慈悲深き/博愛主義の帝国」という言説について、この帝国像の構築に重要な役割を果たしたと思われる「帝国からの訪問者」、とりわけ、奴隷解放直後のヴィクトリア朝社会にさまざまな事情でやってきて暮らした非白人、いわゆる「黒いヴィクトリア朝人(Black Victorians)」に当てて、この言説の意味と役割、その構築のメカニズムを探ることにある。多様な形態をもつ彼らのなかから、本研究が分析対象としたのは、イギリス海軍(ないし陸軍)によって現地の苦境から解放、救出され、女王(あるいはイギリス貴族)の庇護の下、(本人の意志とは無関係に)イギリスに連れてこられ、(期間の差こそあれ)ここ帝国の中心部で生活した経験を持つ非白人の少年少女たちである。救出時、10歳前後であった彼らの渡英時期は、おおむね1850、60年代前後に集中しており、彼らが言及されたコンテクストは、奴隷貿易や奴隷制度と深く絡みあっていた。この時期、アジアやアフリカの植民地(正確にはイギリスによって植民地化されつつある地域)からやってきた彼ら、特に彼らの「救出劇」がどのように語られたのかを、同時代の資料(議会報告書や外務省や植民地省への報告書、新聞や雑誌、伝道諸団体の年次報告書など)から分析し、従来の在英黒人(非白人)分析ではすっぽりと抜け落ちていた1850〜60年代が、「奴隷を解放する慈悲深き帝国」という大英帝国の自己像にとって決定的に重要であったことを明らかにした。と同時に、この大英帝国の自己像が、21世紀初頭の現在、深化するイギリス国内のポストコロニアル状況のなかで200年目を迎えた「奴隷貿易廃止の記憶」によって、改めて問題視され、再検討されている諸相を、2007年を通じてイギリス各地でおこなわれた奴隷貿易廃止200周年記念イベントの中に探り、この記億をめぐる現代都市戦略を明らかにした。
著者
深井 純一
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

大正25年に北但馬で発生した大規模な地震の際に、被災地の中心にあった旧制豊岡中学校の生徒が救援活動の第一線に立ち、優れた功績を挙げた経過を手書き作文に残していた。それらの膨大な作文を読みやすい現代語に改めるとともに、分厚い作文集と資料集増補版に収録して刊行した。この研究成果が地方小都市や農山漁村で大災害が勃発した際に、地元に残る中学性・高校生たちの救援活動の旺盛な展開に役立つ教訓を残しえたならば、これほどうれしいことはない。本研究報告は活動中に生徒たちの人身事故を起こさずに、安全に震災救援に邁進した未成年の若者たちへの『青春賛歌』に他ならない。
著者
立岡 浩一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究はシリサイド系半導体の総合的な研究であり、結晶成長、物性評価からデバイス応用への応用まで広い範囲をカバーしていている。資源豊富で安全である材料を用い、太陽電池や熱光電池,熱電発電素子など環境保全に寄与するデバイスの開発を行った。得られた結果を総合的にまとめ、ファミリーとしてみたシリサイド半導体の光電デバイス、熱電デバイスへの可能性について纏めた。この研究テーマの最終的目標である資源豊富で安全な材料による半導体発電素子の開発が、将来のエネルギーフローを変える事を期待する。
著者
上原 徹三 清水 由美子 荒井 秀一
出版者
武蔵工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

コンピュータによる自然言語研究で辞書とコーパス(文例集。文法情報を付加したものは特に有用)が重要である。単語辞書には読み・品詞情報の他に概念情報が望まれる。現在の日本語については、概念情報を与える単語辞書と文法情報を付加したコーパスが電子化データとして存在する。しかし、古典文に関してはそのような単語辞書もコーパスも存在しない。そこで、単語辞書とコーパスの整備とその応用に関する機能の試作と実験を行ない次の成果を得た。1.総索引からの品詞タグ付きコーパス変換作成機能の試作とそれによる古典文品詞タグ付きコーパスの試作紫式部日記などの日記文学および伊勢物語などの物語文学に関する市販の総索引から、品詞タグ付きコーパスに半自動変換を行った後、人手による修正で古典仮名文コーパスを完成した。2.品詞タグ付きコーパスによる確率的形態素解析上の古典仮名文コーパスを学習・評価データとする確率的形態素解析の実験と評価を実施した。評価においては、学習データとテストデータを順次ずらした繰返し実験により信頼度を求める等の配慮を行った。3.対訳辞書の見出し語の概念推定法訳語の概念が既知の対訳辞書を用いて、訳語からの見出し語概念の推定とその評価を実施した。本技術は、古語辞典(古典語見出しに対し現代語訳語を与える)による古典語の概念獲得の基礎技術となり得るものである。ただし、古語辞典から古語の概念を取得するという研究開始当初の目的は実現できなかった。これに関しては概念辞書の整備、概念推定法の改良など、さらに検討すべき課題がある。
著者
早瀬 晋三
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、19世紀から20世紀にかけての国境線画定時に、無人島を含む島嶼の帰属がどのように扱われたのかを考察するための事例研究を、東南アジアを中心におこなった。そのために、イギリス議会文書やイギリス東インド会社文書などを整理し、考察した。その結果、漁業活動など利用権を主張するものはあっても、居住・耕作地を除いて、排他的占有権を主張するものはあまりなく、実質的な国境が曖昧なままであったことがわかった。
著者
山本 眞司 江崎 修央 清田 公保
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,視覚障害者,特に文字を覚えている中途失明者のための日本語入力システムに関する研究である.タブレットペンによりオンライン手書き入力をし,認識結果を音声で返して編集作業を行う形式であり,このシステムにより晴眼者との電子メールのやり取りを可能にすることをめざした.本研究期間中に取り上げた主な研究項目と結果は以下の通りである.(1)視覚障害者が書く漢字のデータベース作り.視覚障害を持つ人から大量の文字サンプルを入手することは困難を伴うので,晴眼者の目隠し状態での疑似データを含めることとし,最終的に3216文字種,約10万文字のデータを収集,蓄積した.(2)オンライン文字認識アルゴリズム(1文字単位)の高度化.教育漢字1000字程度を対象とした基礎的なアルゴリズムの開発をさらに発展させ,JIS第1水準漢字,ひらがな,カタカナ,記号,アルファベットなど3216字の文字種に拡大し,この文字種拡大に伴う文字認識精度の低下を補うためにアルゴリズムの一層の高度化をはかった.(3)単語単位,文節単位の認識文字修正アルゴリズムの開発1文字単位の文字認識に失敗した場合の単語単位ないし文節単位の認識文字修正アルゴリズムを2種類追加開発し,全体としての精度改善を果たした.(4)視覚障害者用の文字入力・計算機制御用(マンマシンインタフェース)デバイスの開発.視覚障害者にとって利用しやすいデバイスとして,右手にペン入力デバイス,左手に5本の指に対応したボタン操作を基本とした構造を試作し,複数の視覚障害者に実際に試用して貰うことによりシステムの最適化を図った.(5)文書処理全般に対する視覚障害者用の計算機制御方式の開発.ファイルの管理,文章修正,既存データの利用など日本語入力システムとして障害者と計算機との対話をどのような構造で実現するかが問題であり,(4)項の入力,計算機制御デバイスとも関連して視覚障害者がもっとも利用しやすいシステム構成を検討した.特に視覚障害者が電子メールを自由に取り扱うことが出来ることを目的としたメール送受信、ファイリング関係の充実を重点的に図った.
著者
倉賀野 志郎 高嶋 幸男 岡嶋 恒 奥山 洌 玉井 康之 諫山 邦子
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は報告書として、第一分冊としては、『北海道教育大学・釧路校:地域学校教育専攻における地域・学校との連携による学生の主体的・体験的な学習活動を取り入れた実践的カリキュラムの活動記録』として、また第二分冊として、『北海道教育大学・釧路校のへき地教育実習』として整理されている。また、各地域等の学校への普及用にパンフレットも作成している。第一分冊に関しても、学校訪問と地域連携とのかかわりの中で、二年間に実際に実施してきた活動が含まれている。列記すると、へき地実習関係(第二分冊)を除いても、標津町(薫別小中学校、忠類小学校)、中標津(養老牛小学校)、鶴居村(幌呂小学校)、標茶(久著呂小中学校)、釧路市:元・阿寒町(阿寒湖畔小中学校)、音別小学校、浜中(姉別南小学校)の学校に加えて科学の祭典(青少年科学館、遊学館)の実行委員として、通学合宿としては3地域(浜中・標津・本別)がある。また、北海道・自由が丘月寒フリースクールとは長年にわたって継続的に実験学校としての実習を行なってきている。さらには北海道のへき地を理解するためにも、釧路校と連携している沖縄の離島の学校訪問や、海外ではアラスカ、モンゴルにも赴いてきている。これらは4年間のカリキュラム構造と特質に基づいて配置してきたものである。各々について年次進行と合わせると下記のようになる。活動内容は、年次にまたがるものも多いが、主なる学年という形で表現されている。1年次では、地域にかかわっては薫別、忠類、養老牛、幌呂、久著呂などの小学校等、また科学の祭典の参画。2年次では、地域にかかわっては幌呂、音別、姉別南、通学合宿では通学合宿(標津・本別)3年次では、通学合宿(標津・本別)に加えて、へき地実習(薫別、忠類、古多糠、植別、飛仁帯、久著呂、沼幌、幌呂の小学校等)4年次・大学院では、幌呂、久著呂、忠類、幌呂、阿寒湖畔中で研究授業を実施。また学年横断としては、北海道・自由が丘月寒フリースクールの実験学校実習、沖縄離島学校訪問、アラスカ、モンゴルでの学校訪問等。
著者
鈴木 祥二
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、土佐藩参政の吉田東洋が中心となって編纂した『海南政典』と、安芸藩が化政期に編纂した『芸藩通志』を素材に、19世紀前中期に獲得された統治理念と技術・知識、及びその維新変革への影響を考察することを目指した。3か年にわたる研究の結果、次のような成果と展望を得ることができた。1、幕末土佐藩における吉田東洋および彼の門下による藩政改革は、藩政組織の再整備と役人の規律の確立、海防体制のための軍事力強化、政治儀礼の再編成をめざしたものであり、そうした内容が『海南政典』としてまとめられた。こうした政治文書は他に例を見ないもので、その内容は明治維新の政体構想の基礎になった。2、また、王政復古に行われた土佐藩の藩政改革は、「士民平均」を理念として、身分制度の廃止を実施しようとしたもので、こうした先進的な改革は『海南政典』に現れた改革思想を背景にもつと同時に、その理念は米沢藩や彦根藩などにも影響を与え、土佐藩を中心とした政治的連携を生み出すことになった。この点をよりいっそう解明していくことによって、廃藩置県の政治的背景を新たな側面から明らかにできる。3、19世紀に入り、幕府や大名は支配地の歴史・地理・生産などを把握するために、地誌の編纂に着手したが、それを可能にした知識の集積、地誌に反映された文明意識と歴史意識について明らかにした。また、20世紀初頭の地域史編纂にいたる出発点となった点を検討し、この100年間の地誌編纂史の流れを把握することができた。4、『芸藩通志』の編纂過程について、町村が作成した「国郡志御用につき下調べ書出帳」などを収集し、『芸藩通志』の内容との比較のための材料を得た。また、郡村毎の石高・戸口・牛馬数・物産・社寺・宗教者数など基本項目のデータベースを作成し、それらが藩政改革にどの程度生かされたのかを、今後検討していく基礎を作った。5、今後は藩政改革のために編纂されたこれら二書を、人民統治のための技術と知識が集積された政治文書としてとらえ、「民政学」という範疇でとらえて、近代化の上で果たした役割を検討したいと考えている。
著者
手塚 薫
出版者
北海学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

千島列島のほぼ全域で学際的な調査を実施し、考古学的遺物に加え、自然環境の変化を測定する各種データを収集し、環境変動に対する人類の脆弱性や耐性を究明した。千島列島において大小2回の人の居住時期の断絶が確認され、その原因を特定するうえで定期的に繰り返す海洋生物資源量の変動、火山噴火、地震津波などに起因する生態環境の悪化などを考慮するばかりではなく、それらの危機を乗り越える知識の拡充や社会ネットワークの活用などの文化・社会的なリスク回避の方法も検討することができた。