著者
大竹 孝司
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成13年度の研究成果は以下の通りである。第1点は、心内辞書における語彙に接近する際のモーラの役割を検証した。この研究は音声の連続体の中から単語を切り出すことが可能となる分節のメカニズムに関わる研究で、これまでの研究では言語のリズムと関連する音韻単位によって分節が行われるとしてきたが、語彙内においては語境界をモーラの音韻単位が担うことを明らかにした。西欧の言語によって検証が行われているPWC (Possible-word constraints)が日本語においても適用できることを明らかにした。第2点は、「音素の活性化に基づく語彙選択」がモーラ言語である日本語においても観察されるか否かを検証した。本研究では、まず日本語の伝統的な言語遊戯である「語呂合わせ」に着目して、モーラに加えて子音及び母音の交替が存在する事実を明らかにした。次に、「語彙の再構築」という実験手法を用い、日本語話者でも音素レベルで活性化が起こる可能性を明らかにした。第3点は、第2点を更に進展させたもので、現代の言語遊戯の代表とも言える「駄洒落」に着目して、その構造を語彙認識の観点から明らかにしたものである。インターネット上の駄洒落データベースの分析を行い、基本的には「語呂合わせ」と同様な構造が存在することを明らかにした。つまり、現代日本人が日常に楽しむ言語遊戯は、音素レベルで起こる可能性が存在する。第4点は、心内辞書内における音韻表示の普遍性の問題である。モーラ言語とされる日本語話者の心内辞書においてモーラ以外の音韻単位である音節と音素の2つの単位に着目して、幼児、児童、成人、バイリンガル話者などを対象に検証を行い、(1)音節構造内における音節とモーラの発達の順序は、音節からモーラへ移行する可能性と(2)ローマ字を認識する以前の段階で、日本語話者の児童は、音素認識が存在する可能性を明らかにした。
著者
寶月 拓三
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1991年6月3日の大火砕流の発生以来,雲仙普賢岳の東向き斜面には引き続き火砕流および土石流が襲い,8,000人以上が被災者した。被災者は自治体の指導による長期の避難生活の結果,転居を余儀なくされ,被災者は散在し,地域の住民の再構成が成されることになった。被災地域内の各地域では,民間住宅,公営住宅あるいは仮設住宅などの特徴を持つ住宅への入居の状況が異なっていた。これらの状況の類似性から,地域性を指摘できるが,この地域性は被災の時期や程度の地域性,被災者用の公営住宅等の設置場所によって生じていると判断した。多くの被災者は被災前の住居付近に転居することを望んでいたが,実際には,離れた場所に設置された被災者用住宅であっても転居する傾向が認められた。家屋を含め財産の多くを失った被災者にとって,経済的負担を軽減することが第一義的に重要であったと判断できる。被災者世帯のほぼ3分の1は避難の過程で分離した。世帯の分離は,一般の世帯でも観られるように,世帯内での世代構成に依存しているようである。即ち,老親・未成年の扶養・養育や,成人した子供の独立に依存する。ただ,被災地域内の地域によっては,このような世帯の分離が促進されたようである。それに加えて,被災前に比較して,被災後は世帯から分離した人々が被災地である島原市の外へ出ていく傾向が強まったようである。また,就業者のうち,農業従事者が被災後に転職あるいは無職になっている例が多数認められ,生産基盤である農地を失うことにより,離農が加速されていることが窺えた。結局,被災世帯の分裂および都市近郊農村社会における就業構造の変貌が恐らく不可逆的に加速し,さらには居住地の分散移動の結果,地域社会が質的および空間的に再編成され,新たな地域社会が形成されてきた。地域社会の再編を促す触媒として,今回の火山災害を位置付けることができると現時点では考えている。
著者
西村 秀樹 清原 泰治 岡田 守方
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

戦前から嶺北地域でおこなわれてきた相撲大会の運営資金は、地区の総代が集めた寄付金による。当日に向けての練習指導も、土俵づくり、桟敷づくりもすべて地区総ぐるみでなされる。戦前も現在も、行政の側とは無関係に、地区の熱意によって脈々と続けられる"フォーク・ゲーム"なのである。社会体育とかコミュニティ・スポーツの原点として見直すべき姿であろう。強い力士には、ひいき連中すなわち地縁・血縁を媒介とした後援会によって「しこ名」がつけられ、また「化粧まわし」が贈られた。ひいき連中は熱烈な応援を繰り広げ、喧嘩沙汰になることもたびたびあった。ここには、各集落の「ローカリズム」といったものがうかがえる。しかし、そうした緊張を緩和させる集落間の対外的調和機能をも宮相撲は有していた。「勧進元預り」といった勝負を引き分けにする裁定があったこと、大会には出店が並び、各集落の特産物が集められ、集落間の交流がなされたこと、集落を越えての男女交際・婚姻の契機となったことなどは、そうした意味をもっている。宮相撲は、こうして地域的共同性の再生産をもたらしていたと考えられる。相撲という力くらべの大会を通して老若男女が共通の時空間へ参加した。人々は、そうした共通の体験を通じて、日常生活における利害を超越した共同性の感情を確認していったのである。その共同性は、各集落を核としながらも、他集落を含んだより広域のものへとなっていったと考えられる。地域社会はこうして編成されていくのである。
著者
溝口 広一 櫻田 忍
出版者
東北薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

行動薬理学的実験の結果から新規内因性μオピオイドペプチドTyr-Pro-Phe-X-NH_2を想定し、マウス脊髄・脳からの単離・同定を試みた。残念ながら、HPLC-ECD、HPLC-LC-MS、HPLC-TOF-MSの何れのシステムを用いても、上記ペプチドは検出されなかった。その為、上記ペプチド(あるいはその前駆体)を産生しうる遺伝子の検索を試みた。全マウス遺伝子からの検索となる為、該当する遺伝子は未だ発見できていない。しかしその検索過程において、未だその産生遺伝子が発見されていない内因性μオピオイドペプチド、endomorphin-1およびendomorphin-2の産生遺伝子を発見した。
著者
櫻田 忍 溝口 広一 渡辺 千寿子
出版者
東北薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

Morphineの鎮痛作用が神経障害性疼痛において著しく低下する原因を解明すると共に、神経障害性疼痛に対しても極めて有効な新規鎮痛薬としてamidino-TAPAを開発し、その鎮痛作用が神経障害性疼痛においても維持されるメカニズムを解明した。また、神経障害性疼痛発症時に特異的に低下するμ受容体スプライスバリアントを一過性に補充することによる、神経障害性疼痛に対するジーンセラピーの確立を試みた。
著者
大池 真知子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題は、社会運動における小説の働きを、アフリカのHIV/エイズをめぐる社会運動を例に考察した。アフリカのHIV/エイズのキャンペーンでは、映画、演劇、テレビ・ラジオ・ドラマといった視聴覚を使う物語芸術が応用されている。これらは受け手の五感に作用して、主人公との一体化をもたらし、HIV/エイズ問題にたいする共感的な態度を熟成する。それに対し小説は、社会の異性愛主義言説を主人公が内面化していく過程を批判的に表象する。読み手は距離をもってその過程を追体験し、分析的かつ情緒的にエイズ問題を認識する。視聴覚に訴える映画等と言語のみを用いる小説という両物語芸術は、HIV/エイズの社会運動において補完的な働きをしている。
著者
中山 文 成田 静香 野村 鮎子 濱田 麻矢 西川 真子 松尾 肇子 林 香奈
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究の目的は、現代中国の中国文化(文学・演劇・映画など)に表れたジェンダーを明らかにすること、および文化の根底にある中国人のジェンダー観念を歴史的に考察することであった。我々は、平成15年度〜16年度(2003年4月〜2006年3月)にかけて、これをテーマとする研究会を計22回開催し、平均して毎回14〜15名の参加者を得た。2004年3月7日の国際シンポジウム「中国演劇におけるジェンダーの表象」では、パネリストとして、中国から中国の女性演劇である越劇の監督である楊小青氏、中国戯劇家協会の重鎮で『中国戯劇』の副主編である黎継徳氏を迎え、日本側からは中山文(神戸学院大学)、伊藤茂氏(神戸学院大学)、細井尚子氏(立教大学)が加わり、中国の越劇と日本の宝塚との比較やジェンダーの表象について討論した。また、2005年6月25日〜26日には、日中の女性演劇の比較をテーマとする国際シンポジウム「男らしさ・女らしさの作り方-越劇と宝塚」を開催した。宝塚からは、草野旦氏(演出家)・磯野千尋氏(宝塚歌劇団専科、男役)・一原けい氏(宝塚歌劇団専科、女役)、越劇(中国の女性演劇)からは、楊小青氏(演出家)・陳雪薄氏(杭州越劇院、男役)・周俊氏(杭州越劇院花旦、女役)を迎え、実演を交えて、一般にも広く公開した。このほか、研究会では、中国のジェンダーを歴史的に考察するための入門書『中国女性史入門-女たちの今と昔』(人文書院2005年3月)を編纂・出版した。この書は、中国女性の歴史を、婚姻生育・教育・女性運動・労働・身体・文芸・政治ヒエラルキー・信仰の8つのテーマに分けて解説したもので、すでに書評などで高い評価を得ている。
著者
石神 健
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

新規薬剤となりうる天然生理活性物質の立体化学決定を目的に合成研究を行った。抗ピロリ菌活性を有するサンタロール型セスキテルペン類に関しては、タンデム型ラジカル環化反応による効率的構築法を確立した。抗腫瘍剤Topsentolide類に関しては、全立体異性体を合成し、絶対立体配置の決定と生物評価を行った。抗真菌剤Majusculoicacidの合成に関しては、キラルビルディングブロック新規構築法を確立した。
著者
湯川 和典 吉田 謙二 竹内 典子
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

セマフォリン受容体のplexin-A1を欠損するマウスは、精神疾患で異常となる驚愕反射のプレパルス抑制(PPI)試験において、14週齢以上のマウスで障害が顕著となった。また自発活動量増加と毛繕い行動亢進、加齢進行性のミクログリア過剰活性化と脱髄所見を認めた。したがってplexin-A1欠損マウスは、ミクログリア関与の示唆はあるが未だ本態不明の精神疾患の発症機構解明に繋がる新規知見を得るための有用なモデルと判明した。
著者
松尾 哲矢
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の主な結果は以下の通りである.1.スポーツ競技者養成の《場》に着目し,学校運動部と民間スポーツクラブを自ら相対的自律性の獲得(正統性の獲得)のために独自に再生産戦略システムを有する《場》として捉え,それぞれ異なる《場》で養成された競技者の身体化された文化資本(ハビトゥス)の様相の差異を両下位《場》の教育戦略,象徴戦略の視点から分析することが目的であった.本研究の分析対象者は,全国上位の高校サッカー競技者で,中学校,高等学校を通して学校運動部に所属する194名と民間スポーツクラブに所属する78名であった.主な結果は,以下に示す通りである.1)学校運動部,民間スポーツクラブの両競技者ともに幼少期の相続的文化資本に差異はみられなかった.学校運動部および民間スポーツクラブの競技者間で現在の身体化された文化資本(ハビトゥス)の様相において差異がみられた.2)現在の身体化された文化資本(ハビトゥス)の様相の差異に関して,教育,象徴の各戦略の視点から検討され,特に民間スポーツクラブにおいて勝利志向の隠蔽のみならずその勝利志向を暗黙の内に前提化するようなハビトゥス形成に教育戦略や象徴戦略が巧妙に機能していることが示唆された.2.スポーツ競技者養成の下位《場》である民間スポーツクラブに着目し,指導者の有するスポーツ観,《場》に対する表象,親との関係性等から,スポーツ競技者養成の《場》の正統性をめぐる再生産戦略の諸相を教育戦略,象徴戦略,対人戦略という視点で明らかにするとともに,《場》の構造とハビトゥス形成のダイナミズムについて検討することが目的であった.本研究の分析対象者は,フルタイムの契約職員,専任職員,自営業主として勤務する民間スポーツクラブ指導者273名(サッカー83名,水泳111名,体操競技79名)であった.なお,比較分析のために,筆者が行った民間スポーツクラブ競技者の調査結果(2001)が必要に応じて用いられた.主な結果として,スポーツ観,《場》の表象において,指導者と競技者間で相同性が認められたが、競技者において,より限定的で強い意識や表象を有している場合がみられた.この両者間の相同性と異質性から,伝承の二重性のダイナミズムが示唆された.
著者
佐久間 春夫
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、試合などでの比較的長時間の注意集中を求められるオープン・スキル系の選手を対象に、競争ストレス下での注意能力の変動について明らかにするとともに、競技パフォーマンス向上の為の注意メカニズムの検討とバイオフィードバック技法の方略を明らかにして随意的コントロールの可能性についての検討を行った。実験ではサッカー、ラクロスなどのオープン・スキル系種目の重要な要素とされている「息の合う」プレーを注意力を構成する一要素と捉え、協同作業における精神生理学的特徴について調べた。重回帰分析を行った結果、「息が合う」ことに影響を及ぼす要因として、息づかい、心拍数が見いだされた。この結果に基づき、注意力を維持する呼吸法についての検討を行った。呼吸法として、順腹式呼吸法、逆腹式呼吸法、太極拳式呼吸法を取り上げ、心拍数と脳波を基に調べた結果、逆腹式呼吸法と太極拳式呼吸法で、覚醒水準が保て、α波と負の相関が見いだされ、呼吸法と脳波のパターンを組み合わせたバイオフィードバック・システムの構築についての基礎的なデータを得た。次に、事象関連電位(CNV, PINV)を用い、競争ストレスによる注意機能の低下現象を明らかにした。特に、前頭部における低下を見いだせたことは、これまでの注意モデルに客観的な生理学的検証を示したといえる。さらに、触れることによる注意水準の維持を狙った健康運動を用い、情動や認知機能に及ぼす影響を調べた。認知機能の指標としてP300を用い、積極的な効果を検証すると共に、右半球の前頭部におけるα波の顕著な出現を見いだし、情動面の改善にも有効なことを見いだした。
著者
布施 晴美
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、双生児と母親との母子関係形成プロセスの特徴を明らかにすることを目的に、双生児育児中の母親を対象に双生児が生後1か月から18か月になるまでの期間に縦断的調査を実施した。双生児育児を始めた最初の1か月というのは母親にとって重要な時期であるが、母子の関係性を見る上で、3か月も注目すべき時期であることがわかった。双生児が3か月になる頃は育児に慣れる時期と考えられるが、この時期にうまく育児に取り組めているのか、母親が自信を喪失していないか、双生児をどのようにとらえているのかを確認する大切な時期であると考えられた。
著者
竹山 重光
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

・X線画像をはじめとする画像技術の普及および進展によって、人間のからだにたいするイメージや知識が大きく再構成された。・それらイメージや知識は医学医療側によって占有的に囲い込まれており、生きられるからだはいわば不在になっている。・そうした状況下にあってわれわれは、医学医療という科学技術の営みとどうかかわるべきか。事実的に、われわれが抱くイメージおよび知をそれが構成している以上、それと訣別することはできない。囲い込みの柵を破って、われわれ自身がこの営みに近づき、ハイデガーの言う「技術との自由な関係」を結ぶべく努めるしかない。・画像制作を先導している諸概念、諸志向をわれわれ自身が追跡し言語化しなければならない。・そしてその際に、医学医療の営みに相当ジェンダー・バイアスがあること、これが手がかりとなる点であり、また留意すべき点である。
著者
工藤 寿美 堀 哲夫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

我々はこれまでに鎖肛ブタ家系を構築し責任遺伝子の主座が15番染色体上にありGLI2遺伝子を候補遺伝子として同定した。本研究の目的はSNPをマーカーとしてGLI2遺伝子における連鎖解析を行い鎖肛発症に関連する領域を特定することである。DNAサンプル調整を行い遺伝子相同性を利用してGLI2遺伝子領域のSNPを同定した。ブタゲノム計画の進行により高速かつ大量のSNPタイピングを行う予定である。
著者
西垣 鳴人
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、民営化前の郵便貯金事業における免税等「官業の特典」額とユニバーサルサービスや官業の特殊性から生じる機会費用等「官業の制約」額とをそれぞれ推計、比較した。その結果、特典が次第に減少する一方で業務制限等による機会費用が急増し収益構造を大幅に悪化させている事実が浮き彫りにされた。諸外国の経験を合わせて考えれば、イギリスやニュージーランド等の様に業務制限を相当緩めない限り、将来、同事業におけるユニバーサルサービス等の民業補完事業は持続困難に陥る危険性が高い。
著者
山本 隆儀
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ACOASからの出力結果を用いた葉層表面積/葉層体積比および薬滴付着量分布の2種類のシミュレーションモデルを作成するとともに, 用いるパラメータ類の検証実験を行った.4樹種それぞれ154個の樹形について20年間にわたリシミュレーションを実施したところ, 10a当たり散布量の20年間平均値の序列とともに10a当たり散布量や薬滴付着量などに関連する多くの要因が明らかになり, 減農薬樹形開発のための基礎的資料が得られた,
著者
野口 潤
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ケイジドグルタミン酸を2光子励起分解する手法により、神経伝達物質であるグルタミン酸を任意のシナプスに投与する方法論は脳スライスを用いた研究においてシナプス機能を解析する上で大きな効果をあげている。本研究ではその方法を"生きた個体に"応用する方法を開発した。すなわち、そのために必要な動物維持固定装置、低侵襲的な手術・麻酔方法等の開発を行い、生体におけるシナプス機能の解析に実際に適用した。
著者
向後 千春
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、オンライン大学に入学した社会人を対象として学習継続要因を調査した結果、以下のことが明らかになった。(1)ポジティブな要因としては、eラーニングでの受講形態、時間管理のスキル、学費の工面や家族の協力がある。ネガティブな要因としては、孤独な学習環境が心理的・物理的距離感に影響を及ぼす可能性が示唆された。(2)オンライン大学の学生は、学友とのつながりが、教員・教育コーチへのコミュニケーションに影響を与える要因となる。これらの結果は生涯学習のためのeラーニングシステムを構築するための示唆となるだろう。
著者
荒木 正純 吉原 ゆかり 南 隆太
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

・平成15年度予算で、荒木編集の論文集『<翻訳>の圏域:文化・植民地・アイデンティティ』(2004年2月刊)を出版し、全国および海外の研究施設に送付し好評を博した。また、雑誌『英語青年』(研究社出版)でリレー連載の形で、東アジア圏の研究者に自身の国で英米文学がどのように受容され、教育・研究がなされているかについて執筆してもらった。・平成16年度は、この2つの成果を受けて、3月19日・20日・21日の3日にわたり「国際シンポジウム」を開催した。発表はすべて英語で行った。・このシンポジウムを通じて、英語を第一言語としているマレーシアやシンガポール、インド、そして英語を第一外国語としている日本、韓国、台湾、トルコでは、事情が異なることがわかった。英語教育の場合でも、前者では国語教育の一環であり、後者では外国語教育となる。世界シェイクスピア学会副会長のマレシアのリム氏やインドのトリヴェディ氏からは、このシンポジウムが世界で最初の試みであり、今後こうした会議を継続的に行いたいという評価と提言があり、この会の発表をまず一年以内に論集の形で出版し、その後、研究誌を発刊したいという統一見解ができた。つまり、ポスト・コロニアル的状況下で、「アジアの英語文学」研究を推進するさらなるプロジェクトを立ち上げることになった。・こうした二つの成果を、「平成16年度科学研究費補助金研究実績報告書」として作成した。報告書の内容は以下のとおり:内容:・筑波大学国際シンポジウム・プログラム(Reception and Transformation of English Literature in Asia and Japan), pp.1-15・English Studies Relocated in New Asias(1)-(7)(『英語青年』連載), pp.16-51・さらに、現在、この論文を核として、上記シンポジウムに参加し発表した研究者の論文と他の研究者数名の論文をまとめ編集し、英語圏のマレーシアの出版社で出版するため、編集作業を行っている。
著者
渡辺 裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

土地に関わる記憶が人々のうちに形作られ、また変容してゆく過程で、その土地に関連する芸術作品がどのように機能し、その際にいかなるメカニズムが作動しているか、それが人々の共同体意識やアイデンティティ意識の形成にどのように関わっているか、といったことを明らかにするため、小樽市(北海道)、軍艦島(長崎県)、東京タワー、日本橋といった事例を取り上げ、それらの場所を舞台とした映画作品などの作品や、その周辺にある言説の分析を行うことを通して、このような過程に関わる諸要素やそれらのおりなす力学の一端を解明し得た。