著者
井戸田 総一郎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

ベルリンのLandesarchivなどの文書館において、特に1945年から1962年までの期間について、劇場・ヴァリエテ・映画館などの文化・娯楽施設に関する政策上の資料、さらに各施設の興行関連資料を収集し、施設の立地地図の作製も含めて総合的に分析した。戦後東京の文化・娯楽政策について、ベルリンとの比較を可能にするために1945年から1962年の期間について資料を収集し、特に国立劇場開設に関する資料を総合的に分析した。ベルリンと東京を繋ぐ演劇人としてブレヒトを取り上げ、亡命からベルリンに戻ったブレヒトの活動、およびその東京における受容の様相を雑誌『テアトロ』などを中心に分析・執筆した。
著者
江藤 光紀 城多 努 辻 英史 水田 健輔
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

各地に劇場が林立し、劇場大国と呼ばれるドイツだが、地方分権が行き届いているため、各地の劇場のあり方も様々である。本研究では、それぞれに性格の異なる劇場をサンプル的に抽出し、その地の歴史性・特殊性/日々の公演の実際・運営上の工夫/財務構造とその問題点、という三つの視点から分析することにより各劇場の特性を総合的に捉え、「劇場大国」と一口にくくられるドイツの劇場が抱える問題の共通性と個別性を明らかにした。
著者
太田 一昭
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

シェイクスピア劇とその同時代劇作家の作品の出版状況を歴史的文脈において調査分析し、英国ルネサンス期の出版のありようを実証的に記述した。併せて、本研究の調査で得られた知見に立脚して『リア王』ほかの初期版本の本文を分析し、その特質を明らかにした。本研究は、筆者のもう一つの研究課題である英国ルネサンス期の演劇統制史研究と密接に関連している。最終的には、統制史研究の中に戯曲出版史の研究成果を組み込む予定である。
著者
松田 聡
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

モーツァルトが活動をした1780年代のウィーンにおける宮廷劇場のオペラ公演について,同時期のイタリアの諸都市、とりわけフィレンツェ,ミラノとの比較を行い,それぞれの公演の特徴と3都市間のレパートリーの相関関係について考察した。その結果,ウィーンのブルク劇場の演目は,フィレンツェのペルゴラ劇場よりミラノのスカラ座の方がより共通するものが多く,特に80年代末期にはそれが顕著であること等が分かった。
著者
金 顕哲
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は日本型マーケティングの全容を明らかにすることである。日本企業の典型的なマーケティング活動は何なのかを軸にその因果関係を解明することである。そのために主に文献調査とアンケート調査方法を利用する計画である。初年度の去年は、おもに文献調査を行ったが、二年目の今年は、2件のアンケート調査を行った。1件目は、日本企業のマーケティング活動全般に関するアンケート調査であった。製品戦略と価格戦略、チャネル戦略、広告プロモーション戦略に分け、各企業がどのようなマーケティング活動を行っているのかを調査した。調査では、最近のマーケティング活動と10年前のマーケティング活動に分け、比較する形式を取った。調査対象は上場企業2000社であったが、アンケートの量が多かったのが回収率は8%に満たなくてデータも良くなかった。現在、分析中であるが、ただ営業を重視する日本企業の姿勢は特に明確になっている。この調査結果を踏まえ、もう一つのアンケート調査では営業活動を重点的に調査した。日本企業はどのような営業活動を行っているのか、なぜそのような活動を選択しているのか、その成果はどうなのかなどを調査した。この調査では、1件目の調査の低い回収率の教訓を生かし、店頭公開企業をも調査対象にするなどの工夫をした。現在、回収中であるが、回収率は20%前後になりそうである。これからデータを入力し、分析する予定である。2件のアンケート調査の分析作業は今年の冬休みを利用し、集中的に行う予定である。
著者
瀧野 揚三
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

期間中の研究成果を、個人を対象とした学級経営に関する1回の介入的支援方法の改善と評価、小グループを対象とした年間を通した継続的な学級経営の介入的支援方法の開発と評価、学校危機後、PTSDやトラウマを抱える児童生徒が在籍する学級の経営を行う教師への介入的支援方法の開発と評価の3つの観点から報告書をまとめた。教師用RCRTを実施し、その結果をフィードバックする方法ですすめたが、1回だけの介入では調査に回答する負担に見合う学級経営への介入的支援になりにくいことが課題として残っている。教育実習後の学生に対しても導入し、実習の事後指導において、実習中の児童・生徒への見方を内省し展望することに有効であることが分かった。継続的に小グループで研修を重ねるなかで教師用RCRTの結果を活用するように学級経営の事例検討と、学級経営に意図的、計画的な取り組みを進めることができた。電子メールを活用してコメントするケースもあった。グループ内で実践への共感や取り組みのアイディアが出される等、相互援助的な関係が形成された。学校危機後の学級経営には、心理教育的な支援も行い、授業の観察やカウンセラーとの連携も行われ、配慮の必要な児童生徒への関わり方が明確化され、支援が進められた。教師や学級の状況の変化を捉えることができ、支援の具体化のために教師用RCRTの活用は有用であった。
著者
木部 暢子 松永 修一 岸江 信介
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1、従来、言語地図は手作業により記号を一つ一つ押していく方法で作成されていたが、この研究ではパソコンのデータベースソフトを利用して、正確かつ効率的に言語地図を作成する方法を開発し、さらに、記号から音声の出てくる「声の言語地図」の作成を試みた。2、研究の遂行のために、次のような作業を行った。まず、南九州37地点(熊本県2地点、鹿児島県19地点、宮崎県16地点)の音声の特徴について調査し、基本単語約150語の発話をDAT(デジタルオーディオテープ)に収録した。収録した音声データは1単語ごとに編集しなおし、5,550(150単語×37地点)の音声ファイルからなる音声データベースを作成した。次に、この音声データベースを基にして「南九州言語地図」(記号言語地図)を作成した。この作業には岸江信介他(2000)「エクセルとファイルメーカープロを利用した言語地図の作成」の方法を用いた。最後に「南九州言語地図」の記号と音声データベースをリンクさせて、声の出てくる「南九州声の言語地図」を完成させた。なお、ファイルメーカープロが一般にはあまり普及していないソフトであることを考慮し、これをPDFファイル形式に置き換えることにした。3、その成果をまとめて以下の2種類の報告書を作成した。(1)『南九州声の言語地図』 (冊子版)(2)『南九州声の言語地図』 (CD-ROM版)4、研究の遂行にあたり、広く専門家の意見を乞うため、研究期間中に以下の発表を行なった。(1)「南九州地方における音声言語地図の開発と作成の試み」日本方言研究会第74回研究発表会(東京都立大学) 2002年5月(2)「声の言語地図」ネットワーク構想国語学会デモンストレーション(徳島大学) 2002年11月
著者
岸本 実
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、環境についての客観的知識を提供する環境諸科学を総合するのみならず、環境倫理、風景、アメニティなどの環境についての主体的な意味を総合する、風土を中心概念とする環境教育力リキュラムにおいて、子どもの学習評価はいかにあるべきかを明らかにすることであった。客観的な知識および論理的な思考だけでなく、主体的で個性的な意味づけの多様性の評価方法として、ポートフォリオ評価法を手がかりとした。研究方法として、具体的な風土教材を開発した。これまで、琵琶湖を対象にした教材を引き続き研究するとともに、あらたに、中国内モンゴル自治区の草原の砂漠化をテーマとした環境教材の開発を行った。砂漠化の原因としては、過放牧、過開墾、乱伐という三つが原因とされるが、それらが清代、清末から中華民国、中華人民共和国における人民公社による大規模のうち開発、そして生産請負制の導入という歴史的な経緯の中でどのように関連しながら砂漠化の要因を形成してきたかを分析する教材を作成した。さらにそうした歴史をふまえて、今日的な環境政策である生態移民をどのように受け止めるのかをロールプレイを通して主体的に学ぶ生態移民ロールプレイの開発を行った。さらに、風土概念を社会科カリキュラムとその教育評価にどのように位置づけるのかを検討するために、アイルランドの公民政治カリキュラムにおけるスチュワードシップの概念とその教材と評価方法に注目した。
著者
JUANITA Heigham ROBERT Croker
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

研究者達は、2010年の春学期を用いて前年度の予備研究データ分析及び本研究に関連する最近の研究についての調査を行うと共に、2011年秋学期の教師トレーニングワークショップとボランティア活動のための準備を行った。9月には椙山女学園大学及び南山大学の学生14名を対象に、3回の教師トレーニングワークショップを実施した。各分野の専門家により小児の発達についての概論、初級言語レッスンの準備と授業管理についての講義が行われた。さらに学生達はデモンストレーションレッスンにも参加した。ワークショップの模様はビデオ録画され、参加者はワークショップの体験についてアンケートの記入、提出を行った。ワークショップに続き、トワイライトスクールでの毎週の授業準備として、研究者達は週2回の生徒とのミーティングにおいて短い授業デモンストレーションを提供した。デモ授業は学生の参考のためにビデオ録画された。ミーティングでは学生も授業演習を行い、デジタル録画される生徒同士のフィードバックセッションに参加した。参加者には研究者が作成した授業計画が与えられた。多くの学生は前年度にも同じプロジェクトに参加していたため学生間の習熟度に開きがあり、一部の学生は提供された計画に従って準備を行う必要があったが、他の学生は与えられた授業計画に自分なりの変更を加えて準備を行った。トワイライトスクールの実際の授業は10月から12月にかけて行われた。11人の参加者(元の14人のうち3人はスケジュールの都合で不参加)は名古屋市の4つの小学校(星ヶ丘小学校、西山小学校、伊勝小学校、千石小学校)の各校でそれぞれ8回、200人以上の小学生に授業を行った。各参加者は授業の後、考察文を作成し研究者達に提出した。11月後半、研究者達はJALT全国会議にて2010年のプロジェクトについて発表を行った。現在、研究者達は集計されたデータの分析を行っており、本研究についての最終報告は2011年に公開する予定である。
著者
米田 継武
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

随意的に素早い筋運動が投・跳・打・蹴などの日常動作の根本にありその神経的機構が、主として大脳皮質由来の機能に依存するという立場で研究を進めている。研究の基本は運動の元になる動き以前の力発生解析であり、パラメータは研究開始以来筋電図放電量(時系列区間解析)、筋電図周波数特性、および随伴する脳電位活動特性である。現象の一般的事実抽出に主眼をおいた1、2年目から、この3年目は個人差の類型特定という点で特に加齢に伴う分布変動を、健常人の広い年齢層を対象に、膝関節伸展運動及び筋電図の量的・時間的特性から有効なパラメータを求める計画をたてた。また全体的な目的からは神経筋系統合観点また、筋電図学上の観点から、筋の駆動のための神経プログラムの内容を探索がなされる必要があることから、運動単位動員と脳波の連関現象も引き続き検索した。しかし3年目初期に、制御パラメータの確立には中枢性の機序背景、中でも1側運動の神経支配が中枢側でも実行されているかどうかという確認計画を挿入して行う論理的な必要が生じた。そこで今年度研究は、3つの方向性で進められることになった。つまり、(1)素早い力発揮の所要時間が健常人の年齢別分布、(2)1側動作における両側運動皮質の振る舞い。(3)素早い力発揮時の運動単位脱動員に関連する皮質活動電位を捉える、であった。計画(1)についてはこれまでの進捗と同方向なので順調にデータ蓄積を果たし、学会発表を行い(国内1と国際1但し後者は21年6月)論文の執筆が可能な状況に到達した。(2)は新たな基礎実験であったが、予想外に進行させることが出来て国内学会(1)に成果を発表できた。(3)の検討は(2)という新たに加えられた実行プランに影響を受け昨年同様実験進度の低い状況となった。総じてこの手法により、個人差の類型特定という点と、実際のすばやい'運動'に適用を拡延して行くこととで研究の土台は確実に構築された。
著者
東山 篤規
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究によりつぎの2点が明らかにされた.1)地図をたよりに歩きながら,ある地点から別の地点に移動するときには,我々は距離,方向,ランドマーク(LM)の手がかりを用いていると考えられるが,この研究ではどのようにそれらを用いているのかを認知心理学的に明らかにしようとした.実験では,距離,方向,ランドマーク(LM)の3手がかりがすべて与えられた地図,1つあるいは2つの手がかりしか与えられていない地図を数種類用意して,各地図に対して正しく歩くことができた被験者数とその歩行速度を比較することによって,うえの3手がかりの相対的な効果性について検討した.我々の実験の結果によれば,もっとも重要な手がかりは,LMであり,ついで方向,もっとも重要度の低い手がかりは距離であった.竹内(1992)の「方向音痴尺度」をもちいて,あらかじめ被験者の方向音痴の程度を尺度化し,そのあと各被験者に対して,地図を見ながら方向の判断を求めたところ,判断エラーと方向音痴尺度の間には,まったく相関が認められなかったが,反応時間と方向音痴尺度との間には相関が認められた.すなわち,方向音痴の自覚が高い被験者は,方向判断のエラーの数は,通常の人と変わらないが,反応までに長い時間を必要とすることがわかった.
著者
竝木 崇康
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日英語における複合名詞と複合形容詞の意味研究の精密化を目指し、次のことをした。(1)ある種の「意味の稀薄化」が起きている複合語について「特質構造」の概念を用いて意味解釈の仕方の方向性を示した。(2)「~一流」、「~よろしく」等における「複合語に特有の下位意味」の特徴を考察した。(3)「食べ放題」などにおける「放題」という表現について、現代日本語における意味と用法、15世紀からの日本語における意味と用法の変化について考察し「放題」は複合語に関わる「文法化」の例と考えられると指摘した。
著者
飯沼 賢司
出版者
別府大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は今年度最終年度を迎え、報告書の作成を行った。中心フィールドである大分県直入・大野郡域は、この3月31日をもって、竹田市と豊後大野市に再編合併され、両郡の郡名は失われた。その意味で、この4年間の研究は、結果として合併以前のこの郡域の市町村の古い資料、地図、地名等の発掘、記録化として意味を持つことになった。この調査では、この地域の特質を(1)阿蘇のカルデラの縁から張り出す台地地形、(2)くじゅう連山んから張り出した尾根とその側面に尾根の地下から染み出した水によって形成された迫(小谷)地形に特色づけられる地域、(3)祖母山系から流れ出す緒方川が形成した緒方盆地の三つに類型化し、(1)荻台地、(2)竹田市三宅、朝地町、(3)緒方町をフィールドに設定し、環境歴史学の方法論によって中世荘園の実像に迫ろうと試みた。その結果次のような調査・研究成果を得ることができた。【1】荘園の収取の単位であり、経営の単位でもある「名」(みょう)の構造を景観論の中でどのように位置付けられるのかを検討した。この地域では、地名型の「名」と仮名型の「名」があるが、前者が圧倒的に多い。後者は(3)の緒方荘域の緒方盆地の中に限定され、緒方川の水を利用した大規模灌漑の水系にその耕地が存在している。それに対して、前者も水田を編成する単位ではあるが、野や野地や畠が「名」を結びつけるものとなっており、同じ台地や同じ尾根を共有する地域を「名」の領域とする傾向が見られる。これは一見水系とは無関係なもので編成されているように見えるが、尾根は地下水が通っており、見えない同一の水系で編成されているともいえる。【2】この地域に見られる平安時代末の磨崖仏(宮迫・普光寺など)や神社、寺院は里と山の境界点に創られている。特に磨崖仏や神社は尾根の中を流れる水や川の水を意識し、水の恵み、開発の象徴としてこれらを創建している。これに対して、直入・大野郡に多い六地蔵塔は中世後期に領域が確定してくる後期型「名」の領域の境界点に建立される傾向がある。この他に、比較研究のために、東北、関東、紀ノ川沿い、山陰、中部地域で絵図のある荘園を取り上げ調査を行った。
著者
山越 智
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

サイトカインLECT2の関節リウマチにおける抑制作用を解析した。関節炎に関与しLECT2受容体を発現する細胞を同定した。滑膜細胞はLECT2受容体を発現していた。そこで、滑膜細胞の増殖、関節炎に関与する炎症性サイトカイン等各種遺伝子発現についてLECT2添加による影響を調べた。LECT2遺伝子欠損マウスを用いたマウス関節炎モデルにおいて、主要に働く炎症性サイトカインに支配される遺伝子を見出した。
著者
片長 敦子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

非退化な斉次多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクとして現れない実5次元多様体が,非退化な斉次多項式でない多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクとして無限個実現できた.さらに,非退化な斉次多項式で定義された超曲面単純K3特異点のリンクの微分同相型は,例外集合として現れる正規K3曲面の特異点の構造と関連していることを明らかにした.また,ある複素3次元超曲面孤立特異点の実5次元リンクの実7次元球面へのはめ込みを,ある条件のもとで正則ホモトピーに関する分類を行った.
著者
中瀬古 哲
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

就学前 5 歳児の体育課業並びに課業づくりに3年間継続的に参加した(述べ7施設、総計 160回)。そこで、身体運動文化(運動遊び)の特質解明と類型化を試みた。その結果、以下のことが示唆された。(1)就学前に培うべき基礎的技術能力は、(1)姿勢制御、(2)物や人の動きに対する予測・判断、(3)スピード・リズムのコントロール、の三つに分類できる。(2)身体運動文化(運動遊び)は、幼児の生活課題・発達課題を含みんこんだ総合的な活動であり、それらを踏まえ内容化した学習課題を構想する必要がある。
著者
湯川 聰子 湯川 夏子
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

この研究の最終目標は小学校の低・中学年の生活科と総合学習カリキュラムにおいて実施可能な,家庭科的視点からの教育内容を提案することと設定していた.新学習指導要領の実施に向けて,過重な負担感に悩む小学校教員を支援する意味をこめて,この研究は出発したのである.すなわち,低・中学年で無理なくできる調理活動を提示し,教員の指導可能性の予測が立てられるような資料を提供することである.この研究で明らかになったことは次の3項目に要約される.i 小学校教員自身の関心・経験と提案に対する反応の調査.ii 低・中学年児童の食生活に関する関心と,調理技能の現状把握 iii 実施可能な低・中学年向けレシピを提案し,授業化する試み.iは第2章の小学校教員対象の調査によって,現状を明らかにし,意見を知ることができた.iiは第1章の小学生対象の調査によって明快な回答が出たといえる.iiiは第3章,第4章に述べる実践研究によって,部分的にではあるが低学年向けの「お菓子つくり」メニューの提案,「国際理解」のためのレシピ提案という結果を,実験授業の協力を得て答えを,提案としてまとめることができた.ホームページでの公開を考えていたが,年度内にこの計画を実行することはできなかった.継続的な研究展開の中で教育現場との相互の情報交換を行い,実践支援の方向を展開していくことを考えている.
著者
八幡 俊男 清水 惠司 中林 博道 梶 豪雄 政平 訓貴
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

癌幹細胞は、悪性腫瘍を根治するために重要な標的として考えられている。本課題では、悪性脳腫瘍の細胞株から分離培養した癌幹細胞が、薬剤を細胞内から排出することで化学療法に耐性となる遺伝子(多剤耐性遺伝子)を高発現し、抗癌剤に対して低い感受性を示すことを明らかにした。また、癌精巣抗原遺伝子は、癌幹細胞においてエピジェネティックな因子の制御を受けて高発現することを見出し、免疫療法の標的分子となる可能性が示唆された。
著者
横地 優子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

インドでは3世紀以降の女神信仰をヒンドゥー教大伝統に融合する流れのなかで、雑多な個別の女神たちを統合する<女神>概念が生み出された。8~9世紀にはその極点として、宇宙の最高原理としての<至高女神>が成立したが、この<女神>は王権を支持基盤とする<戦闘女神>を核として、シヴァ教神話における<配偶女神>を統合し、宇宙に遍満するシヴァの力(シャクティ)という概念を教理的基盤とすることで成立しえたことを解明した。
著者
清水 潔
出版者
皇学館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

研究課題を遂行するための基礎的調査として本朝月令、延喜式、新儀式の写本調査を行い、次の成果を得た。1、 本朝月令の諸本16本の伝来と書写系統を明らかにした。その結果、宮内庁書陵部所蔵九条家旧蔵本と尊経閣文庫所蔵旧金沢文庫本の二本が中世に遡る古写本であり、とりわけ九条家旧蔵本が鎌倉時代に遡る最古写本であり、近世の諸写本の祖本とみられること、近世の諸写本は二系統に分かれること、しかし今日流布する群書類従本はその二系統のいづれとも異なる字句の異同を示しており、しかも明らかに訂正を必要とする字句が散見し、改めて校定し直す必要があることを確認した。2、 上記の点を踏まえ、本朝月令の校定本を新たに作成した。これによって本朝月令に引用されている平安時代中期までに存在した典籍の本文校定及び逸文蒐集に貢献するであろうし、儀式行事の成立と由縁を考察する上により正確な資料を提供することになろう。3、 延喜式の頭注標目「弘」「貞」「延」のうち、少なくとも金剛寺本中務省式にみえるものは、信頼してよいと考えられる。4、 新儀式の8本の写本を調査したが、いづれも近世の写本であり、今のところ新たな知見を加えるまでには至らなかった。個別の儀式行事そのものについては、宇多天皇朝の成立と説かれる「元旦四方拝」、延喜式成立前後、光孝天皇朝には成立していたと説かれる「一代一度の仁王会」は、いづれも既に嵯峨天皇朝の弘仁式段階で宮廷儀礼として成立していたことを明らかにした。その他、延喜天暦期の儀式行事の実態を把握するために、当該期を中心とした関係記事を編年的に整理して、今後の研究の基礎的データを蓄積した。