著者
松島 雅人
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

糖尿病患者における下肢切断は,糖尿病や足の管理が適切になされれば予防可能な合併症である.本研究では下肢切断の危険因子を検討する目的で症例対照研究を行った.症例は1993年1月から1998年6月に慈恵医大附属病院,第三病院,柏病院の整形外科,形成外科で初回の下肢切断を行った患者のうち,切断時の糖尿病合併例の全例(42例)とした.対照は三病院の外来糖尿病患者一覧から年次毎に症例対照の比を1:4となるよう無作為抽出した(168例).足の状態とフットケアに関し郵送にて質問票調査を行い,症例には下肢切断の1年前の状況を,対照にはそれに対応する時点の状況を質問した,各質問項目に関しステップワイズ変数選択により多変量ロジスティック回帰分析を行った.下肢切断のリスクを有意に増大させたのは(カッコ内はオッズ比).歩行時疼痛(59.8,95%信頼区間4.5-793.2),皮膚の乾燥,ひび割れ(42.6,同1.3-243.4),創傷治癒遅延(7.6,同1.4-41.6),深爪(30.2,同2.6-354.3),爪にヤスリを使う(33.0,同2.0-554.1),および爪をはさみで切る(26.2,同2.1-319.5)がモデルに取り込まれた.足の状態の分析では,歩行時疼痛や創傷治癒遅延など循環障害を示唆する症状ならびに皮膚の乾燥・ひび割れなどがリスクとして挙げられた.臨床的に見出しやすい徴候であり充分な注意を要する.また,フットケアに関しては,爪の日常的なケアについての項目がリスクとして見出され,患者指導の上で参考にすべきと思われる.
著者
川崎 登志喜
出版者
玉川大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

1. 研究の概要本研究は先行研究を基に、イベント効果の中でもスポーツイベントに深く関わる「ダイレクト効果」「コミュニケーション効果」「直接的波及効果」「間接的波及効果」「パブリシティ効果」の5つの効果に、「運動生活に及ぼす影響」「市民生活に及ぼす影響」「地域住民によるオリンピックの評価」の3項目を加えた計8項目の大項目から導き出された質問項目を設定し、長野オリンピック開催1ヶ月前と閉幕1ヶ月後、閉幕1年後の計3回にわたって調査を実施し、長野オリンピックが地域住民に及ぼす効果を測定しようと試みた。2. 主な結果の概要(1) ダイレクト効果:すべての項目において、開催前に比べて認知度が増していることが明らかになった(P<0.001)。しかしながら、「はあてぃ長野推進運動」「オリンピックアンバサダー」「スノーレッツクラブ」の3項目は、多くの市民に認知されなかった。(2) 直接的波及効果:「スポーツ施設が充実した」は開催前(4.08)から閉幕後(3.94)と平均値が減少し、期待通りではなかったという市民の評価ではないかと思われる(P<0.01)。また、オリンピックの理念である「国際平和」「国際交流」についてはそれぞれ平均値が上昇し、オリンピック(大会理念)効果が現れたと思われる。(3) 運動生活に及ぼす効果:スポーツイベントがその他のイベントと最も異なる効果を期待したい運動生活に及ぼす効果については、最も効果があったのは「スポーツへの関心」であった。(4) 市民意識に及ぼす効果:「開催を誇りに思う」「街を他人に自慢できる」(P<0.001)など、長野市民としてのアイデンティティーの向上がみられた。
著者
白石 陽子
出版者
理化学研究所
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

Cupidin(別名Homer2a/vesl2Δ11)は、後シナプス肥厚部(PSD)に局在する蛋白質であり、代謝型グルタミン酸受容体1α/5型、イノシトール三燐酸受容体、リアノジン受容体などと結合し、またShankとの結合を介してGKAP-PSD95-NMDA受容体とも複合体を形成することから、細胞内情報伝達経路に関わる蛋白質群を局所的に集める役割を担っていると考えられている。さらに、Cupidinは細胞骨格因子である繊維状アクチン、アクチン結合蛋白質であるdrebrin、そして細胞骨格制御因子である活性型Cdc42とも相互作用することから、後シナプスの情報伝達だけでなく形態形成という観点からもCupidinの生理的役割を検討する必要がある。そこで本研究ではCupidinおよび上記蛋白質群との結合能を欠失した変異型Cupidinを発現するアデノウイルスベクターを作成し、初代培養系海馬神経細胞にシナプスが形成される時期に感染させ、後シナプスであるスパインの形態を観察すると共に、シナプス分子を免疫組織学的に検出することによりシナプス形成に及ぼす影響を解析した。その結果、野生型Cupidinを強制発現させた場合、より成熟したシナプスに見られるマッシュルーム型形態を持つスパインの出現頻度が高くなり、またシナプス分子の免疫組織学的シグナル強度が増大した。反対に種々の変異型Cupidinのなかには、それらを強制発現させた場合、異常なスパイン形態と共に未成熟なシナプス形成が誘導されるケースが観察された。すなわちCupidinと複合体をなす分子群の組み合わせのなかにはスパイン形態に影響をおよぼす分子間相互作用が存在し、PSDにおけるCupidinの存在はスパインの成熟にともなうシナプスの成熟にも関与することが示唆された。
著者
内田 忠賢
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は主として近世史料を用いて、都市における怪異空間を復原・記述することを目標とした。そして本年度はさしあたり、江戸で流通していた説話的史料を分析することにより、新しい知見を得た。つまり科研費をいただいたお陰で、次の成果があがった。(1)フィクション(怪異小説)で描かれる怪異空間には、読書(聞き手)にリアリティを感じさせる周到な状況描写がなされ、近世の怪異空間の論理が読み取れた。(2)フィクションの怪異空間は、悪/良、魔/神という両面性を常に帯びており、日本文化に共通する空間的特徴をもつ。(3)ノンフィクション(世間話)の怪異空間とフィクションのそれを比べ、その共通点と相違点を見出だせた。これは当時の空間認識を知る手掛かりとなる。以上の知見は管見の限り、地理学はもちろん、このような研究対象を扱ってきた民俗学・歴史学などでも指摘されておらず、オリジナルな成果であろう。一方、このように研究を進めるプロセスで、いくつかの課題が残された。(1)地方都市(高知)の怪異空間と比較することを目指したが、在地の日記類を分析する途中である。(2)ノンフクションの空間のハード面での検証が残る。(3)空間に対する感覚のより詳細な検討が必要。(4)異なる時代・地域への目配りが欠ける。以上の仮題は次年度以降、解明していきたい。なお研究成果は学術論文以外にも、公開講座・放送ほか一般にも還元するよう心掛けた。
著者
土井 光祐
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

国語史資料として利用し得る新たな密教関係伝授聞書類を発掘すべく関西を中心とする古社寺、各所蔵機関の実地調査を行い、書誌調書の作成、写真撮影、本文転写を行って、資料の成立背景についての基礎的な分析を行い、国語史資料としての性格を考察した。主な調査機関は、東大寺図書館、仁和寺、神奈川県立金沢文庫、随心院、高山寺である。密教関係伝授聞書類は、密教の師資相承の中で成立するものなので、この観点から成立背景を確認することは不可欠の作業となる。特に、高山寺、仁和寺については、これまで相当に研究が進められてきており、その成果を参照しつつ個々の調査資料をその中に位置付けていくことを並行させつつ考察を進めた。この為には同一の教学環境で成立する関連諸資料との関係を確認することが必要であって、「金剛界念誦次第」「胎蔵界念誦次第」等の「次第」類や、諸尊法の類の加点本も併せて調査した。この過程でいくつかの重要資料を発掘することができたが、中でも仁和寺蔵「金剛界注」鎌倉時代初期写本は金剛界念誦次第の注釈書であって、仁和寺中興の祖である守覚法親王の自筆になるものであり、特に注目される。注釈には片仮名交り文も使用され、非常に詳細な墨点(仮名、ヲコト点(円堂点)、返点、声点、合符)が加えられている。一般に密教事相関係書で字句の訓詁注釈を行うものは極めて稀であるが、本資料によって従来確認の困難であった事相上の術語の鎌倉時代初期における確実な訓法が初めて確認される場合も多く、又、片仮名交り文の中には「ドコ」「デ(格助詞)」等、平安時代には一般に稀な新語の使用も認められる。本資料については、『訓点語と訓点資料』第99輯(平成8年3月発行)に全文の影印、翻字及び解題を掲載した。
著者
桑谷 善之
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

ベンゼンの炭素-炭素結合にsp炭素を2個ずつ挿入することによる設計される1,2,4,5,7,8,10,11,13,14,16,17-ドデカデヒドロ[18]アヌレン1は、等価な極限構造式の間の共鳴によりベンゼンと同じD_<6h>の対称性を持つと考えられ、分子軌道の縮退や芳香族性などの観点から興味が持たれる新奇な共役系化合物である。本研究では、対称的に置換基を持った誘導体を合成しその基本的性質を明らかにした。合成に当たっては、3,9,15位にフェニル基、6,12,18位に置換基Rを持った誘導体2を標的化合物として選択し、18員環骨格を構築した後にブタトリエン結合を還元的に導入するという方法による合成を検討した。具体的には4,10,16-トリメトキシ-4,10,16-トリフェニルシクロデカ-1,7,13-トリオン(3)を鍵中間体として合成し、そのカルボニル基に求核的に置換基を導入した後塩化スズを用いて還元することにより、ヘキサフェニル体(2a)をはじめ三種の誘導体(R=Ph,4-^tBuC_6H_4,^tBu)を得ることができた。驚くべきことにこれらはかなり安定な結晶として得られ、いずれも200℃以上の高い融点を示しその温度でもあまり分解しなかった。また、^1H NMRにおいて反磁性環電流による低磁場シフトが見られ、例えばフェニル基のオルト位のプロトンでは通常より約2ppmも低磁場に観測された。その他の分光学的データも、[18]アヌレン骨格が等価な極限構造式の間の共鳴によって良く表現されることを示しており、2が高い芳香族性を有することがわかった。さらに2aのX線結晶構造解析により、[18]アヌレン骨格がほぼD_<6h>の対称性を持つことが明らかとなった。化合物1は拡大されたベンゼンとして様々な応用が期待される。また本研究で用いた分子設計は非常に単純な考えに立脚しており、同様の方法で新しい化合物群が設計でき、今後それらに対する様々な展開も期待できる。
著者
本間 信
出版者
帝京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究においては、腸管ベーチェット病の大腸病変部位粘膜に浸潤するT細胞の性状について組織酵素抗体法を用いて定量的な解析を試みた。腸管ベーチェットでは、健常大腸粘膜および潰瘍性大腸炎・クローン病に比し、粘膜上皮細胞間のT細胞数は有意に上昇していた。これは主としてαβT細胞の増加によるものと考えられた。またこれら浸潤T細胞表面のCD11c分子の発現は亢進していた。さらに、粘膜上皮細胞間に浸潤するγδT細胞の割合は、腸管ベーチェットでは有意に低下していた。一方、粘膜固有層においては腸管ベーチェット・潰瘍性大腸炎・クローン病のいずれも健常大腸粘膜に比し、浸潤するT細胞数の有意な上昇を示し、これらはCD4陽性T細胞・CD8陽性T細胞・γδT細胞の全てのpopulationの増多によるものと考えられた。以上の結果より、粘膜固有層のT細胞浸潤は炎症に伴う非特異的な現象であると考えられた。これに対して、粘膜上皮間のT細胞浸潤は疾患特異的であると考えられた。すなわち、腸管ベーチェットにおいては、他の炎症性腸疾患とは異なり、主としてαβT細胞を中心としたリンパ球浸潤が見られたが、他の炎症性腸疾患においては粘膜上皮間のT細胞の浸潤増多は見られなかった。こうしたαβT細胞の粘膜上皮間への浸潤の機序を追求してゆくことが腸管ベーチェット病の発症機序の解明につながるだけでなく、他の炎症性腸疾患の病因解明の糸口となることが期待される。
著者
平田 政嗣
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

現在広く臨床応用されている人工歯根(インプラント)は、天然歯根と違いその周囲に歯根膜を有しないため、様々な問題が存在している。そこで、歯根膜由来培養細胞を用いて人工歯根周囲に歯根膜を再構築する必要がある。近年、付着依存型細胞の大量培養法としてマイクロキャリアー培養法が開発・応用されてきている。前年度の研究では、マイクロキャリア培養法が歯根膜線維芽細胞にも応用可能であり、その足場および移植担体(scaffold)としてコラーゲンゼラチン製の多孔性マイクロキャリアに関して適用可能であることが判明した。今回の研究では細胞を付着させたマイクロキャリアの生体内への応用および生体内での応答に関して、ラットおよびビーグル犬を用いて組織学的ならびに免疫組織化学的に検討した。歯根窩洞に細胞を付着させたマイクロキャリアおよびチタンを挿入し、歯周組織の反応を検索した結果、チタン周囲に新生骨様組織が形成されていた。また新生骨様組織とチタンとの間には一部線維が垂直に配列した歯根膜様軟組織が形成されていた。1.コラーゲンゼラチン製多孔性マイクロキャリア上で歯根膜由来線維芽細胞は付着伸展し、立体的な構造を呈することが判明した。3.ラットを用いたチタン埋入実験では、既存歯根膜組織が埋入チタン表面に伸展し、セメント質様構造物を伴った歯根膜様組織が再構築されることが判明した。またチタン表面に近接した組織ではアルカリホスファターゼ活性が上昇し、当部位での高い細胞活性と硬組織産生能が示唆された。以上の結果より、コラーゲンゼラチン製多孔性マイクロキャリアが歯根膜細胞の足場(scaffold)として応用可能であり、歯根膜および骨組織再生の可能性が示唆された。今後は、既存歯根膜組織に頼らない組織再構築の開発および培養・移植された細胞特性の詳細な解明が必要であると思われる。
著者
藤崎 清孝
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

Ka帯を用いた大容量・高速な衛星通信を簡易なシステムで実現するための基礎研究として,昨年度に引き続き,今年度も以下の研究を行った.(1)伝搬路中の媒質を不均質乱流媒質とみなし,ランダム媒質中の多重散乱理論を適用して,ビーム波がスポットダンシング状態にある状況下で伝搬路媒質がビット誤り率に及ぼす影響の解析を行った.これまでに電離層媒質がKa帯に与える影響は少なく,主に大気乱流が影響を与えることが明らかになっているが,今回,より詳細に解析を行った結果,地上のアンテナの仰角が低くなるほどに,大気媒質中を伝搬する距離が長くなるため,乱流媒質の影響がより顕著となり,この大気乱流による損失を十分に考慮した回線設計が必要であることが示された.また,数値解析で用いる大気乱流の揺らぎ特性を評価する相関関数として,ガウス分布モデルとコロモゴルフ型乱流モデルの二つのモデルを用いて解析を行ったが,2つの結果は大きく異なっており,この伝搬問題の解析を行う場合には,大気乱流を表現しているコロモゴロフ型の乱流モデルを用いることが重要であることが明らかになった.実際の伝搬では,これ以外にも様々な要因が入り込んで来るため,今後,これらの影響を加えたより詳細な解析が必要となる.更に,(2)本研究室の所有する複数の衛星通信システムを用いて,様々な気象条件下のKu帯の伝搬データおよびひまわりやアメダスなどの気象情報を取得し,気象と電波伝搬状況との相関について評価を行った.実験で取得されたデータは膨大な量であり,現在も解析を進めている状況であるが,これまでに得られた結果より,気象データより伝搬状況を予測できる可能性があることが示された.これらのデータの解析は今後も引き続き行い,電波伝搬環境の気象予測の可能性について検討していく.
著者
小原 豊志
出版者
山口大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

今年度は、南北戦争以降の黒人選挙権問題の展開を検討した。特に報告者が注目したのは、南北戦争直後に成立した合衆国憲法修正第15条である。なぜなら本条項は「黒人選挙権保障条項」として知られるように選挙権における人種差別を禁止したにもかかわらず、結局のところ19世紀末の南部に展開した黒人選挙権剥奪運動を阻止しえなかったからである。そこで報告者は、本条項の成立過程を追跡することにより、同条項の意義を再検討できると考えた。考察から明らかになったのは、合衆国の国制的特質および当時の黒人選挙権観が本条項の成立に大きな制約を与えたということである。すなわち前者についていえば、そもそも建国期から選挙権授権権限は州に帰属していたのであり、連邦政府が選挙権問題に干渉する余地はなかったのである。こうした「選挙権におけるフェデラリズム体制」が既に確立していたために、連邦が直接黒人に選挙権を付与することは国制上不可能であったわけである。さらに後者についていえば、世論の反黒人選挙権感情は戦前から一貫して強固であり、奴隷制の存在しない北部においても大半の州が黒人選挙権を拒絶していた。しかしながら、憲法修正条項が成立するためには四分の三以上の州で承認を得る必要があったため、黒人に対象を限定した選挙権保障条項案は各州から否決されるおそれがあった。以上の国制的制約および世論的背景のために、合衆国憲法修正第15条は選挙権授権にあたって各州に人種資格の設定のみを禁止するという内容にならざるをえなかったといえる。以上のことから、合衆国憲法修正第15条は消極的かつ間接的な「黒人選挙権保障条項」であったといえ、本条項においても「選挙権のフェデラリズム体制」を根本的に変革し得なかったことが後の南部黒人選挙権剥奪運動を招来する一因であったといえる。
著者
阪田 弘一
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

非建築材特にコンテナや車両を用いた建築物(以下コンテナ建築とする)の実態について、事例調査により明らかになったのは以下のことである。1) 現行法規ではコンテナ建築を建設するには仮設建築物として認められたもの以外、多くの制約がある。2) コンテナ建築の使用者による評価は、コスト、工期、建設や撤去の容易さなどの面で優れているが、一方で居住性に問題があるという結果となっている。さらに居住性を向上させるために加工を施すことがコスト高を招くなど、本来のメリットが失われていくことも明らかとなっている。これをふまえ、コンテナ建築の利用可能性について分析・考察をおこなった。1) 通常の建築物と比較した場合、コンテナの持つ利点(1)高気密 (2)コンパクト (3)リサイクル (4)仮設性(5)初期コスト小 (6)工場生産 (7)規格化 (8)移動性2) 通常の建築物と比較した場合、コンテナの持つ欠点(1)居住性 (2)法的規制 (3)加工コスト大3) コンテナ建築利用の方向性利用の方向性として、(1)恒久的、(2)仮設的(平常時)、(3)仮設的(非常時)が考えられるが、特にコンテナ建築では(2)および(3)での利用がその特性を生かせると考えられる。具体的には、住宅系 :(1)(2)部屋増築、物置等 (3)応急的住宅・倉庫商業系 :(1)貸スペース (2)店舗、貸スペース、屋台 (3)応急的店舗・事務所農業・畜産系:(1)(2)倉庫、動物檻、温室等医療系 :(3)応急的診療所・救護所等公安系 :(2)(3)派出所、検問所、拘留施設等などが有効な利用法として挙げられるであろう。
著者
若松 新
出版者
早稲田大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1978年のスペイン憲法は、1949年のボン基本法(現行ドイツ憲法)の影響下で制定された。1970年代半ばに、スペイン、ポルトガル、ギリシャでは、独裁制が終わり、自由民主化改革が始まった。この改革は、1989年前後の東欧市民革命と比較できる。フランコ旧体制下では、自給自足経済から開かれた市場経済へ変化した結果、政治体制も西欧化した。東欧市民革命では、経済的破綻が政治改革をも必要とした。1976年に成立したUCD(民主中央同盟)のスアレス内閣は、与野党協調路線を取って、政権への支持基盤を固めた。特に憲法制定に際しては、各党の少数の代表者計7名からなる「特別(起草)委員会」が妥協案作成に貢献した。この点で、ボン基本法制定時の3人委員会と同じ役割を果たした。またスペイン憲法制定時には、単純多数の賛成のみならず、圧倒的多数の賛同が計られた。この点でドイツのヘッセン州憲法制定時の多数派工作の実態と同じであった。1982年に成立したPSOE(スペイン社会労働党)のゴンサレス内閣は、保守層の支持獲得に腐心して、NATO残留政策を選択した。だが、50%以上の議席数の支持を得たゴンサレスの強力な指導力に足して、「議会野党」は精彩を欠いていた。D・L・ガルリイドは、両内閣と議会の権力構造を、象徴的な政治機構図に描いた。また、U・リ-ベルトは両内閣と議会の強弱関係を分析した。リ-ベルトによれば、1976年のスアレス内閣は「(政府)と対等な議会」の範疇に属する。他方、1982年のゴンサレス内閣時のスペイン国会は「政府に従属する議会」であった。ドイツで生まれた「建設的不信任投票制度(後任の首相の選出と現首相の解任を同時に行う制度)」がスペイン憲法113条に輸入され、スアレス少数政権下では政治の安定が計られたのである。
著者
中江 康之
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

【目的】前年度の研究において、急性膵炎や膵石症における血中α2-macroglobulin-trypsin複合体様物質(MTLS)測定の病態解析に対する有用性を示した。本年度は引き続きMTLS高値例におけるトリプシン残存活性と血中MTLS濃度の関係について検討した。【方法】(1)血中MTLS濃度およびトリプシン活性の測定:血中MTLS濃度力塙値を示した急性膵炎18例および膵石症26例の血中残存トリプシン活性を、Boc-Gln-Ala-Arg-MCAを基質として測定した。(2)膵石症における血中MTLS存在様式の検討:血中MTLS高値膵石症患者血漿をSDS-PAGEで泳動し、膵分泌型トリプシンインヒビター(PSTI)に対するWestern blot法による解析を行った。(3)PSTIによるMm.Sトリプシン活性阻害の検討:ヒト純粋膵液より精製したトリプシンとα2-macroglobulinを混和しα2-macroglobulin-trypsin複合体(α2M-T)を作成後、PSTIによるMTLS活性阻害を検討した。【結果】(1)血中MTLSの酵素活性は、急性膵炎17.0±30.lng/ml、膵石症2.5±3.8ng/ml、健常人1.2±1.3ng/mlであり、急性膵炎では活性の上昇を認めたが、膵石症では認められなかった。(2)膵石症血漿のWcstcmbIot法による解析ではpsn単体あるいはPSTI-トリプシン複合体よりも高分子側に抗PSTI抗体陽性のバンドを認めた。(3)PSTIによりα2M-TのMTLS活性は約50%阻害された。【結論】残存トリプシン活性は血中MTLS濃度と同様に急性膵炎では重症度を反映していたが、膵石症ではMTLS濃度が高値にも関わらずトリプシン活性を認めなかった。この活性阻害は膵液中のPSTIによると考えられたが、他の阻害物質の関与も示唆された。
著者
伊藤 雅之
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

研究は研究実施計画に沿って行い、ヒト中枢神経系の発達異常におけるアポトーシス発現を検索した。検索した対象は、周産期に多くみられる低酸素性虚血性脳症(HIE)と橋鈎状回壊死(PSN)とし、標本材料は我々の施設にある脳バンクを利用した。HIEあるいはPSNと診断された在胎21週から生後3ヶ月の小脳および脳幹部を用い、ヘマトキシリン・エオシン染色、in situ tailing reaction法により、アポトーシスの組織形態学的評価を行った。また、Bcl-2、Bcl-x、Bak、CPP32、GFAPの各抗体による組織学的検索およびWestern blotによる評価を行った。その結果、HIEでは、アポトーシスの変化は在胎21週から30週の未熟かつ重症仮死例かつ受傷後1日から2日の症例に多く観察された。また、Bcl-2とCPP32の過剰発現が観察された。PSNでは、アポトーシスの変化は在胎21週から25週の未熟児出生で、生存期間が1日から4日以内の症例に多く観察された。また、Bcl-xとBak、CPP32の過剰発現をみとめたが、BCl-2の発現には変化がなかった。これらの結果から以下のことが考察された。1.HIEやPSNの病態形成にアポトーシスが関与し、bcl-2familyやcaspaseがその役割を担っていること。2.未熟脳ほどアポトーシスに陥りやすいこと。3.病態の違いによってアポトーシスに関わる因子が異なっていること。前年度の研究から、ヒト脳の発達過程においてアポトーシスが関与していることがわかっている。発達期脳循環障害においてもアポトーシスが関与をしていることが推察された。今後、これらの違いを明らかにし、分子遺伝学的解析を加え、周産期脳循環障害におけるアポトーシスの機構を明らかにすることが、病態解明とその予防に重要である。