著者
近山 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.599-604, 1983-09-15
被引用文献数
4

近年 プログラム言語Lispは その提供する高い会話的プログラム生産性のため 記号処理用言語としてのみならず 汎用のシステム記述言語として注目されている.筆者はシステム記述言語としての利用を目的として Lisp の方言Utilisp の処理系をHitac M シリーズVOS3上に開発した.Utilispはシステム記述用に必要な文字列や二進データの効率のよい処理機能や 操作系など外部との通信を行う機能をもつ.一方 Lisp本来の特質を生かし 多様な利用形態に対応するため 高い柔軟性と拡張性を有している.本論文では Utilisp システムの機能面での特徴を述べ その必然性と 実現に用いた手法を解説する.
著者
横田 治夫 北上 始 服部 彰
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.1-9, 1990-10-15

本稿では 知識ベース処理の1つとして 項関係上での単一化検索(RBU : Retrieval by Unincation)演算の繰り返しによりホーン節推論を行うアルゴリズムを示し その理論的な定式化を行う.項関係とは 関係データベースにおける関係(テーブル)の格納対象を 述語論理で用いられる項に拡張したものである.またRBU演算とは 項を取り扱うために関係代数演算の比較処理に単一化を導入し 条件と単一化可能な要素を項関係から検索する演算である.ホーン節を二進木表現にして項関係に格納し RBU演算を繰り返すことにより 後ろ向きおよび前向きの推論が可能であることを示す.ホーン節に対する後ろ向き推論の演繹方法としては Prolog等で採用されている節中の最左端負リテラルを選択するSLD演繹を対象とし RBU演算を使ってSLD演繹を実現するアルゴリズムを示す.一方 前向き推論としては SLD演繹と同様の選択関数を用いるようにした単位演繹であるSUD演繹を提案し RBU演繹による実現アルゴリズムを提案する.最左端の負リテラルを選択するSLD演繹およびSUD演繹は 探索規則が均等であれば 健全であり完全である.対象とするホーン節の集合が充足不能の場合には 提案したアルゴリズムは それぞれ反駁を求めて停止する.
著者
海谷 治彦 原 賢一郎 小林 亮太郎 長田 晃 海尻 賢二
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.653-661, 2012-02-15

ソフトウェアを含め,ほとんどの工業製品は以前の製品を改訂し開発されている.よって,既存ソフトウェアの改訂を支援することも重要である.革新的なソフトウェア改訂技法や枠組みが提案はされているが,それらを現実の開発に導入することは現状の開発体制の観点から容易でない場合が多い.特にソフトウェアが中心でない製品の場合,その傾向は顕著である.本稿では,ソフトウェアが中心でない製品におけるソフトウェア改訂において,どのように技術導入をすべきかについての調査および試行結果を報告する.初めに我々はソフトウェアが中心でない製品を開発する産業界の協力者の支援をうけ,どのような作業をどのような技術で支援すべきかを調査した.結果,インパクト分析作業が技術的に支援可能であり,情報検索技術(IR)を用いたトレーサビリティ技術で支援することが適切であると判断した.次に協力者から提供があった実開発のデータに対して,当該技術を適用し,協力者とともに問題点や改善点を模索した.結果として,要求変更の特徴づけを支援するための技術文書の索引付け,IRの入力データの改善を支援する機械学習,間接的なインパクトを知るためのソースコード上の静的解析の3つが,IRに基づくトレーサビリティを改善する追加技術として適切であると判断した.我々はこれら3つの技術を追加したインパクト分析支援ツールを試作し,産業界の協力者に評価を依頼し,期待どおりの改善が見込まれることを確認した.Most industrial products are developed based on their former products including software. Revising existing software according to new requirements is thus an important issue. However, innovative techniques for software revision cannot be easily introduced to projects where software is not a central part. In this paper, we report how to explore and apply software engineering techniques to such non-ideal projects to encourage technology transfer to industry. We first show our experiences with industrial partners to explore which tasks could be supported in such projects and which techniques could be applied to such tasks. As a result, we found change impact analysis could be technically supported, and traceability techniques using information retrieval seemed to be suitable for it. We second had preliminary experiences of a method using such techniques with data in industry and evaluated them with our industrial partners. Based on the evaluation, we third improved such a method by using following techniques; indexing of technical documents for characterizing requirements changes, machine learning on source codes for validating predicted traceability and static source code analysis for finding indirect impacts. Our industrial partners finally evaluated the improved method, and they confirmed the improved method worked better than ever.
著者
中澤 篤志 加藤 博一 井口 征士
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.2895-2906, 2000-10-15
被引用文献数
5

本論文は,複数のカメラエージェントの協調によって広域環境中の人物位置検出を行う「分散カメラシステム」について述べたものである.カメラエージェントは各々1台の固定カメラを持つ画像処理コンピュータで,リアルタイムで複数の人物を追跡できる.またそれらはネットワークを通じて他のエージェントと通信を行うことができる.カメラエージェントは環境中のさまざまな位置に設置されており,互いの観察領域は重なっていたり離れていたりすることがある.さらに一部のエージェントの動作停止や新たなエージェントの追加といったイベントに対処する必要がある.このような問題に対し本論文では,各エージェントが与えられた環境マップと互いの観察領域から人物の追跡プランを動的に生成することで,複数のエージェント間で連続的に人物を追跡・位置検出する手法を提案する.実験では,追跡軌跡の評価実験およびエージェントの追加や動作停止実験を行い本手法の有効性を確認した.This paper proposes the ``Distributed Camera System''that can detect human position in a wide area.This system is constructed of many ``camera agents'' and achieves a task due to cooperation.Camera agents consist of a camera and an image processor and a computer network connects them.They are placed in a real environment and their viewing areas are either overlapping or separated.Each camera agent makes plans using an environmental map and the viewing information of the agent.Using these plans,the system can continuously track a person across all the viewing areas of camera agents.In addition, this system is robust with respect to agent's failure.We tested this system in two aspects: the detected trajectories and the system's robustness.In this paper,we present the results of these evaluations, confirming the efficiency of our system.
著者
後藤 真孝 根山亮 村岡 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.1335-1345, 1999-03-15
被引用文献数
22

本論文では シンボル化された音楽情報をネットワークを介して共有するための通信プロトコルRMCPについて述べる. 本研究は 音楽情報処理システムを分散実装したり ネットワークを利用したアプリケーションを実現する際に有効な 音楽情報処理のためのネットワークプロトコルを設計することを目的とする. そのような目的では 音楽情報の効率の良い共有が望ましいが 従来の音楽情報用の関連プロトコルの多くは1対1通信を基本としたコネクション型であり 複数プロセス間での効率的な情報共有は十分考慮されていなかった. RMCPはコネクションレス型であり 全通信をブロードキャストで行うため 各プロセスへ個別に送信するオーバヘッドがなく情報共有の効率が良い. さらにRMCPは リアルタイム音楽情報処理のために タイムスタンプを用いた時間管理の機能を提供し 遠隔地間の合奏のために 信頼性を確保しながら遠隔地間で双方向にパケットを中継する機能も提供している. 本論文では これらの機能を活用することで実現できる 遅延を考慮した新たな形態の遠隔地間の合奏も提案する. RMCPはすでに様々な音楽情報処理システムを実現するために運用されてきた. その経験から RMCPの通信遅延時間が十分小さいことが確認されただけでなく RMCPを用いることで必要な機能が再利用できて実装が容易になり 拡張性が高くなることも確認された.This paper describes a communication protocol, called RMCP (Remote Music Control Protocol), which is designed for sharing symbolic musical information through computer networks. The purpose of this research is to design a network protocol which is suitable for musical information processing and facilitates distributed implementation of music-related applications. Although efficient musical information sharing is desirable for such a purpose, most previous music-related protocols were connection-oriented and did not emphasize efficient information sharing among multiple processes. Since the RMCP is a connection-less protocol, it supports broadcast-based efficient information sharing without the overhead of multiple transmission. It also supports time scheduling using time stamps for real-time musical information processing and reliable bidirectional packet relay for remote sessions. This paper also proposes an innovative remote session over the Internet that has a long delay. RMCP has been utilized in various applications and we found that the communication delay of RMCP was enough small and RMCP facilitated system implementation and expansion because of good reusability.
著者
中村 康弘 松井 甲子雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.2057-2062, 1995-08-15
被引用文献数
16

この論文では、コンピュータネットワークを介して送受される電子出版物が、印刷されたハードコピーの状態で二次配布される問題に着目し、電子形態で取り引きされる英語の文書にあらかじめ署名を埋め込み、印刷配布された文書の認証を行う一つの方法を提案している。まず、電子出版の著作権保護およびそれらの二次配布の問題を考察し、電子文書こ密かに版権者の署名を埋め込む方法を示す。すなわち、英文の語間に設定されるスペース(空白)を単なる区切り符ではなく一つの情報源とみなして、各単語の左右にあるスペースをその長短により1対の信号に見立てるものである。署名したい情報をビット列に分解し、必要ならば版権者のもつ暗号化鍵でランダム化し、その0,1情報を単語間のスペースに写像しつつ、文書を編集する。この方法によれば、編集された文書上に署名は顕在化せず、無断コピーを企図する第三者の注意も引かず、また文書体裁もほとんど変わらない。さらに、この署名法に対する攻撃、および、多世代にわたるハードコピーによる署名の劣化消失などの問題に対する強健性について検討し、十分に実用に耐えうるものであることを示す。
著者
松山 隆司 浅田 尚紀 青山 正人 浅津 英樹
出版者
社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.2310-2320, 1995-10-15
被引用文献数
3

本論文では、我々が開発中の並列画像理解用計算機RTA/1上でデータレベル並列処理を実現する方法について述べ、ボトムアップ解析による対象認識過程を効率的な並列プロセスの組み合わせとして構成できることを示す。RTA/1は先に提案した再帰トーラス結合アーキテクチャに基づいて設計したMIMD型分敵メモリ並列計算機で、PE(Processing Element)群によって構成される2次元トーラスの再帰的分割・統合を最大の特徴としている。論文の前半では、データセット(要素データの集合)に対する演算を丑つの基本演算バターンに分類整理し、その並列化がデータセットと処理関数の分割および複写、SPMD(SingIeProgramMuItipleData)型およびMPSD(Multip1e Programs Sing1e Data)型の並列関数適用および並列バイプライン処理の5種類の機能によって実現できることを示す。すなわち、ここでは五つの基本演算パターンを並列実行することによりデータレベル並列処理が実現でき、並列化された演算バターン(並列プロセス)を組み合わせることにより、複雑な並列処理過程が構成できると考える、こうした考えに基づき論文では、RTA/1上でのデータレベル並列処理の実現法を検討し、エッジ検出、Hough変換、Geometric Hashingを用いた対象認識過程をデータレベル並列プロセスの組み合わせとして設計する。
著者
北 研二 小倉 健太郎 森元 逞 矢野 米雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.1937-1943, 1993-09-15
被引用文献数
30

自然言語処理では、形態素レベルにおける曖昧性や統語的な曖昧性などさまざまな曖昧性に対処する必要がある。このような曖昧性を軽減するための実際的な方法の一つに、慣用表現や定型表現等の複合的な表現を一つのまとまりとして処理することがあげられる。近年、世界各地で大規模コーパスの構築が行われており、大量な言語データが容易に手に入るようになってきている。本論文では、頻繁に使用される定型的な表現をコーパスから自動的に抽出する基準として「仕事量」という概念を導入する。仕事量は、いくつかの単語を一まとまりの単位と考えることにより、各単語を別個に処理するよりも、どれだけの処理が削減できるかということを定量的に測る尺度である。また、仕事量基準を用いた定型表現の自動抽出方法について述ぺ、提案した方法を実際の日本語のコーパスに適用することにより、その有効性を示す。また、コーパスから抽出された定型表現を形態素解析に組み入れることにより、単語区切りや単語誤りをはじめとする形態素レベルの誤りを削減できることを示す。
著者
斉藤 裕樹 高山 翼 山上 慶 戸辺 義人 鉄谷 信二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.773-781, 2014-02-15

GPS機能を備えた携帯端末などによる位置情報取得技術の普及により,人々の訪れた場所どうしを結ぶ行動履歴を解析する研究が活発に行われている.経路情報の蓄積によって得られる行動履歴は,人々の興味と移動との関係を解析する手段として注目されている.一方,TwitterをはじめとするマイクロブログはテキストとともにGPSセンサによる位置情報を付与し,公開することが可能なサービスとして世界的に利用されている.本論文では,マイクロブログ上に蓄積された人々の行動履歴を基に利用者の行動とコンテキストを解析し確率過程モデルに適用させることで,将来の利用者の行動を予測する手法の提案を行う.また,マイクロブログの実データを用いた行動予測精度の評価実験から,単純統計を用いた従来手法より高い予測精度が得られることを確認した.The advance of GPS-enabled portable devices such as PDAs and smart phones facilitates people to record their location histories. Location trajectories imply human behaviors and preferences related for their interests. On the other hand, microblog services such as Twitter enable us to publish text messages (e.g., Tweets) and location-tags (e.g., Geo-tags) to subscribers. This paper proposes a schema for predicting user behavior by analyzing location trajectories and contexts by applying a stochastic model. And, we confirm the effectiveness of our schema through experiment using the actual data obtained from microblog service.
著者
新原 敦介 小川 秀人 鷲崎 弘宜
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.922-938, 2014-02-15

複数機器を組み合わせて機能を提供するシステムにおいて,各機器の仕様は定義されているが,機器の組合せによって表出するシステム仕様や,システム仕様と各機器の仕様との関係は暗黙知となっていることがある.またそれらのシステムテストでは,テスト項目ごとに適切な機器を組み合わせてシステム構成を導出しテストを実施する必要がある.ここで,機器の組合せ作業は,前記の暗黙知を必要とし,多くの時間がかかり,テスト項目に対して漏れのリスクが生じる.本報告では,各機器だけではなく,機器が組み合わさり生じる仕様に対してもフィーチャ分析を行い,その結果を用いてテスト項目を分析し,充足可能性判定を利用してテスト項目を網羅するシステム構成群を導出する方法を提案する.また,ケーススタディとして,提案手法を仮想の多店舗向けPOSレジシステムに適用した.ケーススタディにおいて,従来のシステム構成導出に比べ提案手法では,テスト項目を網羅する妥当なシステム構成の導出が少ない時間で可能であった.
著者
三村 守 大坪 雄平 田中 英彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.1089-1099, 2014-02-15

今日,機密情報や個人情報の搾取を目的とする標的型攻撃は,多くの組織にとって脅威である.標的型攻撃の初期段階では,攻撃者はRAT(Remote Access TrojanまたはRemote Administration Tool)と呼ばれる実行ファイルをメールで送付し,コンピュータの遠隔操作を試みることが多い.近年ではRATが文書ファイルに埋め込まれることが多くなっており,検知はより困難となってきている.よって,標的型攻撃を防ぐためには,悪性文書ファイルに埋め込まれたRATを検知する必要がある.本論文では,RATがどのように悪性文書ファイルに埋め込まれているのかを調査し,その方式を体系化する.さらに,悪性文書ファイルへのRATの埋め込み方式を解読し,RATを検知する手法を提案するとともに,実験により提案手法の有効性を定量的に示す.
著者
藤井 治彦 鶴岡 行雄 多田 好克
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.992-1001, 2013-02-15

インターネットバンキングにおいて,ID・パスワードの盗難により,本人に成りすまして不正送金をする事件が増加している.攻撃方法も高度化しており中間者攻撃やサーバ証明書の不正取得など,従来のワンタイムパスワードや乱数表では対策困難なものが出現してきている.また従来技術は安全性の課題以外にも,経済性,利便性の面での改善も望まれている.本論文では,インターネット上での本人認証時に,あらかじめ登録した電話機から電話し,発信者番号の確認を行うことにより本人認証を行う方式を提案する.インターネットとは異なりクローズドな電話網を利用することによる安全性や,トークンの運用管理コストの不要化,電話をかけるだけなのでITリテラシが低い層でも利用できる特性がある.また提案方式の商用化に向け,新規登録など運用面についても考察した.Remittance fraud incident by ID and password theft is increasing. Owing to attack techniques are improved, a new attack is emerging, for example man-in-the-middle attacks and fraudulent procurement of server certificates that is difficult to protect for existing technique such onetime password or random number table. On the other hand, it has been required that former technique's improvement of cost performance and usability. In this paper the authors propose an authentication scheme sending caller ID (calling number notification function) previously registered, by calling the authentication server in addition to user authentication over the Internet. This scheme's good points are safety which using closing telephone network unlike the Internet, and reduction of operational management costs of token, and usability that allows any level of IT literacy user to use because of just calling. Also the authors proposed operational management such as new registration, and this scheme can be applied in real business.
著者
津田 祐輝 孔 全 前川 卓也
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.378-388, 2014-01-15

本論文では,Wi-Fi位置計測における大きい誤差を持つ計測エラーの検出,修正を行う手法を提案する.Wi-Fi位置計測において,参照するアクセスポイントの移動や位置データベースの劣化により,数十mを超える計測誤差が発生することがある.提案手法では,過去のWi-Fi計測位置の履歴から現在位置を推定し,Wi-Fi計測位置と比較することでWi-Fi計測エラーを検出,修正する.このとき,ユーザのコンテキストによって,位置推定の性能が大きく変化するため,様々な特性を持つ位置推定手法を複数用いることで,コンテキストアウェアなエラー検出フレームワークを構築する.評価実験では,実際に様々なコンテキストを想定して,収集したWi-Fi位置計測データを使用し,提案手法の有効性を検証した.
著者
内山 彰 勝田 悦子 上嶋 祐紀 山口 弘純 東野 輝夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.389-398, 2014-01-15

GPSは多くの携帯端末に搭載され,我々の生活に欠かせないものとなっているが,都市部においてはビルなどの障害物による遮蔽や反射・回折の影響を受け,測位誤差が大きくなることが知られている.そこで本研究ではGPSの見通し状況と建物の3次元モデルを利用した位置精度向上法を提案する.提案手法では建物の形状や配置により,各GPS衛星の見通し状況が地点ごとに決まることに着目する.衛星の見通し状況は,スマートフォンなどで一般に取得可能なGPS信号のSignal to Noise Ratioに基づき推定する.建物の3次元モデルに基づき,衛星の見通し状況を各地点において事前に計算しておき,フィンガープリントを構築する.構築したフィンガープリントと,GPSの受信状況から判定した見通し状況とのマッチングを行うことで存在領域を絞り込み,位置精度向上を図る.大阪駅周辺で取得したGPSログを用いて提案手法の性能を評価した結果,平均正解率81%でGPS測位結果の誤差範囲に対して17%相当の領域に絞り込みが可能なことが分かった.
著者
栗原 一貴 望月 俊男 大浦 弘樹 椿本弥生 西森 年寿 中原 淳 山内 祐平 長尾 確
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.391-403, 2010-02-15
被引用文献数
3

本論文では,現在一般的に行われているスライド提示型プレゼンテーション方法論について,その特徴を表す新しい定量的指標を提案する.提案指標は,「準備した順に発表資料を提示しているか」および「発表者と聴衆がどれくらい離れたところを表示しているか」を数値的に表現するものである.この指標を用いることで,プレゼンテーションの改善を図る様々な拡張手法を定量的に評価することが可能となる.さらに,提案手法を算出可能なプラットフォームシステム,Borderless Canvasを開発する.大学院講義における運用を通じて提案指標の算出と可視化例,解釈例を示し,指標の有効性と限界,適切な適用方法を議論する.In this paper we propose quantitative metrics to enable discussing the effectiveness and the limitations of extended methods of slide-based presentation methodology, which is widely used and studied today. We define metrics to estimate such as "how the presenter follows the prepared sequence of topics" and "how the presenter's behavior and every member of the audience's behavior differ." Then we develop a ZUI multi-display discussion software, Borderless Canvas, as a platform for calculating the metrics. The result of a situated datataking in a graduate school class for a semester shows an example usage of the metrics and their interpretation. Based on this, we discuss their effectiveness and limitation to apply them to evaluate extended methods of slide-based presentation methodology.
著者
翠 輝久 河原 達也 正司哲朗 美濃導彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.3602-3611, 2007-12-15

音声が主要なモダリティである環境において,自然言語で記述された文書を知識源として,インタラクティブにユーザに情報を提供する枠組みを提案する.これは,現在のオーディオガイダンスのように,システム側から一方的に情報を提示するのではなく,ユーザ・システム双方が対話の主導権をとりながら,インタラクティブに情報検索・提示するものである.そのために,ユーザ主導の検索・質問応答(pull)モードと,システム主導の提示(push)モードを用意して,ユーザの状態に応じてこれらを切り替える.検索・質問応答モードでは,漠然とした検索要求に対して文書を要約して提示したり,特定の情報・事実を求める質問に応答したりする機能を実装した.また,提示モードにおいては,システム側から,ユーザにとって有用な話題を動的に選択して,質問形式を用いて提示する方法を考えた.以上の枠組みを,顔認証機能を有するロボットエージェントに統合し,京都の観光案内システムとして,京都大学博物館の企画展示において運用を行った.3 カ月の運用期間中,のべ2 500人のユーザの利用があった.収集された対話を分析・評価した結果,提案手法がおおむね有効に機能していることを確認した.
著者
宮部 真衣 灘本 明代 荒牧 英治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.563-573, 2014-01-15

近年,マイクロブログの普及にともない,マイクロブログを用いた個人での情報発信が増加している.2011年3月11日に発生した東日本大震災においては,Twitterに多くの情報が投稿された.Twitterでは,重要な情報が伝搬された一方で,様々な流言の拡散も多数行われた.特に災害時は,流言が救援活動などに悪影響を及ぼす可能性が高いため,流言の広がりにくい環境を作る必要がある.本研究では,マイクロブログ上の流言に対して,どのような対応がされているかを調査した.また,人間によって発信される訂正情報に着目し,訂正情報に基づいて流言情報を収集・提供することにより流言拡散を防止するサービスを構築した.本提案手法では,流言であることを指摘する表現(流言マーカ)を含む情報を収集し,それらが訂正情報であるかどうかを判定する.平常時のツイート,災害時のツイートを用いて,構築した訂正情報分類器の判定精度を検証した結果,平常時を含めたデータを用いることで,平常時・災害時のどちらでも高精度な判定が期待できることを示した.Recently, conveying information from individuals has increased due to the development of microblog. After the Great Eastern Japan Earthquake in Japan 2011, numerous tweets were exchanged on Twitter. Twitter provided a lot of important information after the earthquake. On the other hand, various false rumors were spread on Twitter. False rumors negatively affect important activities such as relief activities. Therefore, it is required to structure the environment that prevents people from spreading false-rumors. In this paper, we analyze how people deal with false rumors on Twitter. Moreover, we propose rumor information cloud based on rumor-correction information. The proposed method collects information including indication of rumor, then classifies the information into correct information or other information. On the basis of these evaluation experiments, the method using data of nonemergency situation can classify both data of an emergency and a nonemergency situation with high accuracy.
著者
安藤 大地
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1030-1040, 2012-03-15

近年,コンピュータを用いたクラブ系音楽のマルチメディアリアルタイムパフォーマンスがさかんである.本論文では対話型進化論的計算(Interactive EvolutionaryComputation)のシステムを用いてクラブ系ループ音楽をリアルタイムに生成,また世代の概念を用いないBreedingのメカニズムを用いて音楽時系列を構成するパフォーマンスを行うことができる手法を提案する.提案手法では遺伝子表現として遺伝的プログラミング(GeneticProgramming,GP)を採用しつつも,1つの個体から複数の表現型を実現する仕組みを備えており,対話型の個体数の少なさをカバーしつつ応用範囲が非常に広くなっている.提案手法を用いて,モバイルデバイスに溜め込んだ写真からクラブ系ループ音楽を生成するシステムのプロトタイプが実装されており,音楽的表現に応じて様々なリアルタイムマルチメディアパフォーマンスに利用することが可能であることが示された.Real-time music and multimedia performances with lap-top computers have been very animated in club scene in recent years. In this paper, I propose a new method to generate club style loop music in real-time for club performances by means of Interactive Evolutionary Computation (IEC). The methods includes two features. The one is that enjoying "Breeding" without consciousness about generation. The second is that multiple-ontogeny mechanism that generate several phenotype from one genotype, includes ideas of co-evolution and multi-objective optimization. The proposed method reduces weak points of IEC, user's burden of interactive evaluation and narrow search domain originated in handling few individuals. A performance system generates club style loop music from photo album in mobile devices has been implemented by means of the proposed method, then has been tested. The success of performances with the implemented performance system indicates that the proposed methods works effectively.
著者
山田 隆行 合志 清一 越前 功
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.531-541, 2014-01-15

盗撮やカメラの写りこみによるプライバシー侵害を,被撮影者側から防止する手法を提案する.カメラ付き携帯端末の普及や,SNSや画像検索技術の進展により,無断で撮影・開示された写真を通じて,被撮影者がいつ・どこにいたかという情報が暴露されることになり,被撮影者のプライバシー保護が求められている.従来手法は被撮影者の顔面の隠ぺいや着色により顔面を変える必要があるため,物理空間における人対人のコミュニケーションに支障をきたすという問題があった.本論文では,被撮影者のプライバシーを保護するために,人間の視覚とデジタルカメラの撮像デバイスの感度特性の違いを利用したウェアラブルデバイスを被撮影者が着用することで,人の視覚に違和感を与えずに,撮影された画像からの人物の同定を不能にする手法を提案する.提案手法を実装したウェアラブルデバイス(プライバシーバイザー)を用いて10名の被験者による顔検出の評価実験を行った結果,プライバシーバイザーが被験者の顔を効果的に未検出にできることを確認した.
著者
宮部 真衣 灘本 明代 荒牧 英治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.563-573, 2014-01-15

近年,マイクロブログの普及にともない,マイクロブログを用いた個人での情報発信が増加している.2011年3月11日に発生した東日本大震災においては,Twitterに多くの情報が投稿された.Twitterでは,重要な情報が伝搬された一方で,様々な流言の拡散も多数行われた.特に災害時は,流言が救援活動などに悪影響を及ぼす可能性が高いため,流言の広がりにくい環境を作る必要がある.本研究では,マイクロブログ上の流言に対して,どのような対応がされているかを調査した.また,人間によって発信される訂正情報に着目し,訂正情報に基づいて流言情報を収集・提供することにより流言拡散を防止するサービスを構築した.本提案手法では,流言であることを指摘する表現(流言マーカ)を含む情報を収集し,それらが訂正情報であるかどうかを判定する.平常時のツイート,災害時のツイートを用いて,構築した訂正情報分類器の判定精度を検証した結果,平常時を含めたデータを用いることで,平常時・災害時のどちらでも高精度な判定が期待できることを示した.