著者
大塚 美奈子
出版者
上田女子短期大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究は,研究1において指筆談援助法による知的障害児(者)80名の「内言」を記録し,語彙数や文法の観点から実態と比較し,整理する。事例抽出し「内言」から対象者の考えに添った支援を行い,支援前後の行動の変容について分析を行う。研究2において個別データを自閉スペクトラム症,知的障害,肢体不自由等の障害種別に分類しKHcoder(樋口,2014)を用いてテキスト分析し,障害種別の「内言」の言語レベルや特徴を検討する。
著者
山本 希美子 安藤 譲二
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

血管内皮細胞は血流や血圧に起因する力学的刺激であるせん断応力や伸展張力を常に受けている。内皮細胞には力学的刺激をセンシングし、血行動態の情報として細胞内部に伝達することで細胞応答を起こす働きがあり、循環系の恒常性維持に重要な役割を果たしているが、その仕組が障害されると、様々な心血管病の発生に繋がる。最近、せん断応力依存的に血管内皮ミトコンドリアでATPが産生することを見出し、力学的刺激が細胞のエネルギー代謝に直接関与する事を示した。本研究では、血流刺激に反応するミトコンドリアでのATP産生メカニズムに焦点を当て、力学的刺激受容オルガネラとしてのミトコンドリアの役割とATP代謝経路を解明する。
著者
高橋 英彦
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

統合失調症患者の脳内における単語の表象ネットワークの乱れを脳内における単語の表象ネットワークにグラフ理論による解析を適応し、定量的に解析することを目的とする。対象は統合失調症患者で、臨床・心理データに加え、脳MRIを取得する。被験者に自然動画刺激を提示し、全脳活動をfMRIによって記録する。動画に含まる単語のラベル時系列と脳活動から、重み係数を求める。この過程で、単語をベクトルに変換する自然言語処理技術Word2Vecを用いる。脳内単語ベクトルの任意の2語の組み合わせの類似度を表した行列を得るこの行列から、隣接行列を作成し、グラフ理論による脳内の単語表象のネットワーク解析を行う。
著者
小佐野 重利 亀田 達也
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

激しい明暗と情動的な特異な図像表現で知られるバロックの巨匠カラヴァッジョの絵画画像を被験者に見せて、被験者の絵の見方を眼球運動計測から探り、同時に暗示的動作を示す画中人物を見て被験者の脳内に惹起される運動や情動の反応をfMRIによる脳機能イメージ ングによって計測する。美術史をベースとした神経科学との文理融合型の実験研究によって、絵画鑑賞者の視線と脳内の運動・情動反応から、カラヴァッジョの絵画の特質を探る。
著者
羽渕 由子 仲 真紀子 立部 文崇
出版者
徳山大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究では,日本語を母語としない面接対象者の日本語(第二言語)の会話能力を精査し,「やさしい日本語」による司法面接の特徴を抽出し(研究1),通訳を介した司法面接との比較を行い(研究2),「やさしい日本語」による面接が実施可能な範囲と基準を検討する。さらに,研究3では,研究1と研究2で得られた供述および面接映像を用いて,実務家(警察官・検察官・弁護士)を対象とした調査を行い,これらの面接で得られた供述の信用性と法的判断場面における有用性について比較・検討を行う。研究の最終年度には,研究1~3をまとめ,多様な言語話者を対象とした「やさしい日本語」による司法面接法,実施可能な範囲と基準を提示する。
著者
菅原 彩加
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

小学三年生から「外国語活動」という名の体験型授業が開始され、小学五年生から教科としての英語が必修化された。このような時代の流れに呼応するように、学齢期前から早期英語教育を行う保護者が増えている。イマージョン教育を行っている団体はそのメリットを説く一方、言語学者や教育学者の間では懐疑的な意見が少なくないが、早期英語教育の是非についての議論は世間に共有されていないと言わざるを得ない。本研究は早期英語教育が共時的に母語獲得過程に影響を与えうるかについて調査するものである。また、研究結果を公開することで、学齢期前の幼児を持つ保護者が科学的な根拠をもとに教育機会の選択をする一助となることを目標とする。
著者
西地 令子 古田 豊子 園田 和子
出版者
第一薬科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

初年度(1年目)で、主に①匂いの絵本の作成・製本、②対象児の決定、一部調査開始、③母親へのインフォームドコンセント後、絵本を母親に郵送、児の発達(体重含む)チェックおよび食事および食行動(以下「食行動等」)の観察を実施する。2年目以降も初回調査を行うが、追跡調査も実施する。調査は月齢に応じた発達チェックや食行動等を行えるformsを作成し、対象児の月齢のQRコードを母親に送付し回答して得る。3年目以降は追跡調査とし分析を行う。原則対象児が3歳に達するまで観察を継続する。また、ある特定の匂い特異的な反応を示す児においては、発達障害診断ツール等を追加し観察を行う。
著者
津守 不二夫
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は5次元プリンタを開発し,応用していくことを目的とする.5次元プリンタとはこれまでの3次元プリンタ(x,y,z)に加え「それぞれの箇所における材料物性の配向(3次元ではθ,φの2方向で表される)」を制御したプリンタである.研究期間中に開発した装置はガルバノスキャナを備えたUVレーザ光源により樹脂を硬化するタイプである.この装置を利用した応用例は生体模倣構造のひとつである人工繊毛である.人工繊毛をアレイ状に出力する際,一本一本に磁気異方性を付与することにより,それぞれの動きが異なる構造を出力した.この方法により実際に自然界にで観察されるメタクロナール波を再現することが可能となった.
著者
田中 省作 本田 久平 長谷川 由美
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

研究計画に従い,次のようなテーマを重点的に推進した.1. 崩れのモデルに基づいた指文字の生成:前年度提案した,掌と手の向きごとに分割した手指に対して生理構造の観点で最も安定的な手指の状態形状との一種の重み付き平均に基づいた手指形状の生成モデルの実装を進めた.このモデルのパラメタである重みの範囲が,指文字の崩れに連関する.そのパラメタは被験者実験で推定することを計画していたものの,コロナ禍の影響もあり,かなわなかった.2. 学習システムのプロトタイプの実装:カメラに向かって指定された指文字を表出し,それを自動的に認識した上で,その正誤を判定するようなモジュールの開発を進めた.1のテーマが進み,指文字ごとに許容される崩れの範囲がパラメタとして推定されれば,この学習システムの正誤判定にそのまま適用できる.3. 指文字学習のための新しいテキストの作成:これまでの指文字の崩れや,指文字間の錯誤に基づいた部分形状を活用した指文字の類型化を盛り込んだ,今までにない新しい指文字の学習テキストを作成した.
著者
竹谷 豊
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

慢性腎臓病は、日本人の1300万人が罹患していると推定されており、その対策が喫緊の課題である。慢性腎臓病では、腎機能が低下し、悪化すれば人工透析が必要となる。それに加え、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクや骨粗鬆症、筋肉の萎縮による低栄養状態を招き、これらが重なると生命予後が悪化する。我々は、腎機能低下に伴い上昇する高リン血症が、これらの病態に共通した因子であることを見出してきた。これまでは、食事や薬剤で高リン血症の改善を試みてきたが、運動を行うことが、高リン血症の改善や骨粗鬆症、筋肉の萎縮などを改善するために効果的であると考え、その効果の検証と分子機序の解明に取り組む。
著者
牛山 明
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

インフルエンザは感染力が強く、毎年多くの感染者を出し、その社会的影響力は大きい。例年同時期に流行が始まる以上、その季節性変化がウイルスおよび感染を受ける側の生体に対しどのような影響を与えているのかを研究・調査する必要がある。本研究は疫学的研究を基に組織学的研究、分子生物学的研究によりインフルエンザの流行メカニズムの一部を明らかにするものである。本研究課題の成果により流行メカニズムを知ることで新たな対策を立てる基礎的知見を提供する。
著者
石渡 哲哉 榊原 航也
出版者
芝浦工業大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

複素平面上で定義される複素数値関数の解析学である複素解析学は、数学のみならず工学等における応用でもよく活用されている数学の理論の1つです。本研究では、その離散的対応物である離散複素解析学の基盤を作ることです。このような研究は20世紀前半より進められてきましたが、複素平面の離散化の形状に制限がありました。これは、複素関数論で重要となる正則性の離散版の定義に起因します。本研究では、この離散正則性の定義をコーシーの積分定理を基礎に見直し、複素平面の離散化に対する制限を完全に取り払い、任意の平面分割上での離散複素解析学の構築のための基礎を確立します。
著者
西林 仁昭
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

窒素ガスと水からの触媒的アンモニア生成反応が極めて効率的に進行することを明らかにした。この反応ではSmI2を還元剤として利用する必要があった。電気化学反応を適用し、反応に使用したSmI2の使用量を低減することができれば、実用化が可能になる。SmI3からSmI2への還元反応を検討したところ、イオン性液体を電解質として存在させた電気化学的還元手法を用いることで、SmI2が82%収率および81%ファラデー効率で得られることを明らかにした。本手法でSmI3から得られたSmI2を還元剤として利用した触媒的アンモニア生成反応を検討したところ、触媒当たり最高48当量のアンモニアが生成することが確認できた。
著者
喜田 聡
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

認知症克服は世界的課題である。主症状の一つが夕方に会話困難、徘徊、妄想的言動等の症状か増悪する「夕暮れ症候群」であるが、この機構は不明である。また、認知症の記憶障害は「想起(思い出せない)障害」である可能性も指摘されている。一方、代表者は生物時計に障害を与えた遺伝子変異マウスでは夕方に想起能力が低下すること、生物時計が想起を制御することを示しており、この成果から「夕暮れ症候群は生物時計の異常による時間帯依存的な想起障害と関連する」との仮説を立てた。本研究では、この仮説に基づき、生物時計の異常による想起障害の観点から夕暮れ症候群の機構解明を目的として、生物時計の障害と認知症との関連を追求する。
著者
山岸 順一 Cooper Erica
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

我々は伝統話芸である落語の実演データから深層学習モデルを学習、あたかもプロの噺家の様に、噺を読み上げる落語音声合成システムを最先端音声合成技術に基づき構築した。従来の音声対話システムとは目的が全く異なり、聞き手を楽しませるAI噺家の実現を目標としている。本課題では 、長期的音響情報および非言語情報の明示的モデル化により合成音声の表現力を向上させ、 ニューラル言語モデルによる噺の自動生成に取り組む。
著者
花栗 哲郎 町田 理
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究では、電子状態解析ツールである走査型トンネル顕微鏡が、単一原子操作にも用いることができる点に着目する。超伝導体やMott絶縁体など電子相関が本質的に重要な系の表面に、単一原子操作によって人工構造を作製し、非自明な「新物質」をボトムアップ的に実現する。規則配列した原子のスピンや電荷と、基板の多体効果が協奏・競合して生み出す電子状態を、走査型トンネル顕微鏡を用いた分光イメージングで解明し、新しい量子現象を探索する。
著者
下澤 雅明
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究課題では、温度感度の優れた超伝導小型温度センサーを走査システムと組み合わせることで、超高感度の走査型熱顕微鏡を開発することである。さらに、開発した測定システムを用いて、キタエフスピン液体や量子スピン液体などのバルク熱測定で見られる実験ごとの矛盾点・不一致点に対して、局所的な視点から考えるきっかけを作る。
著者
酒井 英明
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

次世代トポロジカル量子計算に必須のマヨラナ準粒子を実現できる系として、超伝導体とトポロジカル絶縁体の人工超格子薄膜が注目されている。これに対し本研究は、鉄系超伝導体を高温超伝導層とトポロジカル絶縁層の自然超格子物質として新規開拓することを目的とする。本系ではマヨラナ粒子の高温化に加え、熱輸送測定による検出が可能になると期待される。そこで、元素置換によるキャリア濃度の精密制御を行い、得られた最適物質においてマヨラナ粒子特有の熱伝導・熱ホール効果を実証する。これにより、多彩なマヨラナ粒子を実現できる物質の設計法を確立することを目指す。
著者
中森 雅之
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

遺伝子上の3塩基繰り返し配列の異常伸長が原因のトリプレットリピート病には、CAGリピートによるハンチントン病や、CTGリピートによる筋強直性ジストロフィーなどがあり、いずれもが根本的治療法のない進行性の難病である。これらの疾患では、リピート長が長いほど重症となる傾向がある。またリピートは年齢とともに伸長して症状の進行に寄与する。異常伸長したリピートを短縮することが可能となれば、症状の改善や発症予防が期待できる。本研究では、こうした異常伸長リピートを短縮誘導して正常化するというこれまで試みられたことのない革新的なアプローチで、トリプレットリピート病の根本的治療法開発を目指す。
著者
上阪 直史
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

生殖細胞である精子形成のメカニズムに関して不明な点が多く残されている。本研究では、カルシウムが精子形成を制御する可能性を検討するために、イメージングや光遺伝学などの細胞活動操作技術を応用し、脳活動を操作したときの精巣細胞のカルシウム活動をリアルタイムで観察・操作できるin vivo実験系の開発を目指した。成果として、マウス精巣においてin vivoカルシウムイメージング法を新規に開発し、in vivoで細胞のカルシウム活動を1細胞レベルかつ多色でイメージングすることが可能となった。また精巣においてカルシウム活動を駆動しうる分子を見出し、カルシウム活動が精子形成に関与する可能性を見出した。