著者
及川 伸二 山嶋 哲盛 小林 果
出版者
三重大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

アルツハイマー病の発症には多くの要因が関係すると考えられているが、近年脂質類のアルツハイマー病への関与を示す報告が多数なされている。脂質は、加熱などにより酸化され過酸化脂質を生じ、この過酸化脂質がさらに生体に酸化ストレスをもたらすことがよく知られている。本研究では、過酸化脂質などにより酸化ストレスを暴露したサルを用いて、細胞死誘導と酸化損傷タンパク質の変動について明らかにした。
著者
中嶋 秀 手嶋 紀雄 東海林 敦
出版者
東京都立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究では,研究代表者がこれまでに開発してきた持ち運び可能な小型の表面プラズモン共鳴(SPR)センサーと研究分担者が見出したエクソソームと人工生体膜の膜融合現象を利用して,呼気中に含まれるエクソソームの膜タンパク質を高感度かつ網羅的に計測することが可能な新規分析法を開発する。また,マスフローコントローラーを備えた呼気凝縮液サンプラーと内在物質を用いた呼気凝縮液の希釈度補正法を開発する。
著者
竹村 泰司 山田 努
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

外径11 mmのカプセル内視鏡にはボタン電池が装着されており、それにより体内を照らすLEDやCCDカメラ、集積回路などを駆動している。血管内で駆動させることが可能な1 mm径サイズのマイクロ・ロボットが実用化すれば、診断や治療に有用であるが、電池を入れることが困難である。この課題をワイヤレス給電で解決することを目指す。具体的には電磁誘導方式を採用し、体内には電圧を誘導する1 mm径の受電コイルを用いる。そのコイルのコア(鉄心)にパルス電圧を誘起する特殊な磁性線を使用することが本研究の特徴である。
著者
石井 豊 稲生 啓行 荒井 迅 寺尾 将彦 鍛冶 静雄
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究の目的は、virtual reality 技術を用いて4次元空間を直感的に理解するための可視化方法や4次元対象物を自然に操作できるようにするためのデバイスを開発することにある。中でも、複素2次元力学系が生成するジュリア集合を可視化することでその幾何的性質を観察し更に数学的に有用な予想を引き出すことに、この研究の意義があった。また高次元空間におけるデータセットの「形」を理解するための雛形としても、本プロジェクトの重要性があると考えられる。今年度はコロナ禍の影響で国内・海外出張ができず、メールやslackなどでのやり取りを通して研究を進めた。前年度までに、4次元空間を可視化するための virtual reality デバイスである Polyvision を開発したため、今年度は、この Polyvision を用いた心理実験に向けた準備を進めた。具体的には、Polyvision を用いると被験者の4次元空間認識が向上するかを定量的に測定するための実験タスクをいくつか試験的にデザインし、その実装を行った。しかし通常の3次元空間では容易なはずのタスクが対応する4次元タスクになると急激に困難になるため、現在は(数学的な素養が必ずしもあるとは限らない)一般的な被験者が十分こなせるようなタスクを設定している途中段階にある。そのほかに特筆すべき実績としては、VRを用いた高次元認識に関する(主に数学的な立場からの)研究集会を分担者の稲生が開催し、好評を博すとともにその後の研究の進展に大きな刺激を与えた。
著者
石田 竜弘 異島 優 清水 太郎
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

タンパクや核酸など高分子医薬品の低侵襲的投与法として経皮投与技術の開発が切望されている。最大のバリアである皮膚の角質層を突破させるため、透過促進剤やマイクロニードルの活用、超音波や電気などの物理的な刺激を利用する方法などが提案されてきた。しかし、高分子医薬品の透過に成功した報告は乏しく、実用化に進む可能性のある技術の開発は未達である。イオン液体は陽イオンと陰イオンからなる常温で液体の物質であり、その特徴的な性質から、新たな電池材料や溶剤としてなどグリーンケミストリーの素材として活用されてきている。しかし、医療応用に向けた試みは行われていない。本研究の目的は、イオン液体をキャリアとし、皮膚角質層の突破という最も大きな課題を一気に解決するための高分子医薬品の低侵襲的投与法を開発することである。本年度はモデル抗原としてインスリンを用い、in vitroでの皮膚透過性試験を行った。その結果、ある種のイオン液体と混合することで、インスリンの皮膚透過性が飛躍的に向上することが確認できた。次いでin vivoでの皮膚透過性試験を行った。その結果、インスリンが角質層を透過し、血中ににまで移行していることを血糖降下作用によって確認した。現在、がんペプチドであるWT1を用いて同様の検討を行っているが、同様に良好な結果が得られつつあり、当初の目的である画期的な低侵襲性の経皮型がんワクチンの開発に繋げていく予定である。
著者
石田 健一郎 白鳥 峻志
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

食作用(phagocytosis)は原核生物にはないとされてきたが、我々は近年、バクテリアなどを食作用のように細胞で包み込んで捕食する2つの原核生物を発見し、培養株(SRT547株およびSRT713株)の確立に成功した。本研究では、これら2つを含む近縁バクテリアの比較ゲノム解析から、この食作用に似た捕食に関連する遺伝子を推定するとともに、それら遺伝子の機能を解析し、原核生物で初めて発見された“食作用”のメカニズムとその進化を明らかにする。これにより、真核細胞の基本性質である食作用の起源の理解に示唆を与え、真核細胞の誕生やミトコンドリアと葉緑体の獲得を含む細胞進化の理解に繋がる新知見を提供する。
著者
小林 憲正 三田 肇 癸生川 陽子
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

従来の古典的な化学進化説では,小分子から少しずつ大きな分子が生成し,その後,機能が創出したと想定されてきた。本研究では,単純な分子の混合物に高エネルギー付与と急冷により微弱な化学機能をもつ多様な分子(がらくた分子)が一挙に生成し,その進化・選択により微弱な生命機能を有する分子群が生成するというシナリオ,「がらくたワールド説」の実験的検証を行う。一酸化炭素・アンモニアなどの模擬星間物質や模擬原始大気に粒子線を照射した時に生じた高分子態複雑分子(がらくた分子)の機能を調べ,それが種々の宇宙地球環境下で変成を受けた場合の機能の進化を調べる。
著者
中岡 宏行
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

Yann Palu氏とのextriangulated category(以下、ET圏)を定義した共同研究は改定後論文誌に掲載された。Yu Liu氏とのET圏の余ねじれ対のハート構成を調べた共同研究は改定後論文誌に掲載された。Martin Herschend氏・Yu Liu氏との共同研究で高次数版としてn-exangulated categoryという概念を定義した。現在査読待ち。Osamu Iyama氏・Yann Palu氏との共同研究ではAuslander-Reiten理論をET圏で考察するプレプリントを作成した。他に、gentle多元環の導来不変量に関する単著のプレプリントを作成した。
著者
小松 晃之 木平 清人 森田 能次
出版者
中央大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

赤血球の代替物となる人工酸素運搬体の実現は次世代医療の最重要課題である。これまで多くの化合物が開発されてきたが、副作用や有効性に問題があり、未だ実用化には至っていない。本研究は、組換えヘモグロビン(rHb)と組換えヒト血清アルブミン(rHSA)からなる新しい人工酸素運搬体「組換え(ヘモグロビン-アルブミン)ナノクラスター」(rHb-rHSA3クラスター)を合成し、その構造と酸素結合能を明らかにすることを目的としている。さらにrHbの部位特異的アミノ酸置換により、適度な酸素親和性を有するクラスターも合成する。ヒト血液に全く依存しない量産可能な赤血球代替物の創製に挑戦する。(1)部位特異的アミノ酸置換による酸素親和性の制御:2019年度に得られた成果をさらに展開し、rHbの Leu-β28、His-β63、Cys-β93、Asn-β102を部位特異的アミノ酸置換により、Tyr、Gln、Ser、Alaに変えたrHb変異体を産生し、それらを用いてrHb(X)-rHSA3クラスター(Xは変異箇所を示す)を合成した。いずれも赤血球の酸素親和性(25Torr)に近い適度な酸素親和性を有する人工酸素運搬体となることがわかった。以上の結果を総合し、rHb-rHSA3クラスターがヒト血液に依存しない究極の赤血球代替物となることを実証した。研究成果は、国内学会での発表、国際学会誌への論文掲載により公開した。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同で行った本成果の一部を紹介する動画が、JAXAのウェブサイトに公開された。
著者
上田 和紀
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本年度は,熱可塑性樹脂を用いた積層型3D印刷のための要素技術の有効性確認を主目標に,以下の研究開発を実施した.(1) 大規模構造物の構築技術.土木および建築分野のトラス構造を参照しつつ,長尺のチャネル材を代替するビーム材の設計と試作を行った.寸法精度や強度等の要請からPETG系の素材を用いて,連結・分解が可能で必要な強度をもつビームを,アルミチャネル材の半分以下の重量で作成できる見通しを得た.また設計のパラメタ化を部分的に実現した.構築においては日本伝統建築の継手手法が非常に有効であることを確認した.今後さらに最適化の余地があるが,立体トラスを含む多様な構造への展開の足がかりを得ることができた.(2) 大型プロッタ用ヘッドの設計と構築.前年度設定した,大型ホワイトボードの垂直面で動作するプロッタの構築という課題に対し,ペンとイレーザを搭載可能なプロッタヘッドの試作を行った.プロッタヘッドは複雑な形状と多くの可動部品からなり,交換可能かつ印刷容易な部品から構成するという方針に基づいた結果,約50点の3D印刷部品からなる構成となった.本作業を通じて,(項目(1)で制作した)レールに搭載したヘッド全体のスムーズな移動,構成要素の並進動作や弾性保持,摩擦の最小化などの課題の洗い出しを行った.体系的設計論は今後の課題となったが,ソフトウェアにおけるアジャイル開発に近い開発方法論の有効性を確認した.これらを通じ,実際的な機能部品および多数の部材の組合せが必要な大規模構造物を支えるモジュール化技術およびソフトウェア技術の洗い出しを進めることができた.これとは別に,学部学生実験の自宅展開に利用する機械部品多数(二百数十点)の設計制作を,成果展開の一環として行った.
著者
福元 健太郎 菊田 恭輔
出版者
学習院大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

災害への対処が公金に値するかを市町村が「認定」すると、不正を含む政治的バイアスが入り込む余地がある。具体的には次の3つを検討する。(1)災害復旧事業費の国庫補助率を嵩上げする激甚災害指定の有無が、その前後の選挙におけるその市町村の与党得票率と関連しているかを、選挙間の最大降水量を操作変数として用いて不偏推定する。(2)災害弔慰金の対象となる災害関連死を認定するタイミングが、市町村によってどれほど異なるかを、ノンパラメトリックな生存分析を用いて調べる。(3)住家の被害認定が被災者生活再建支援金の支給条件を満たすか否かが人為的に決められていないかを、回帰不連続デザインによって判断する。
著者
永岡 謙太郎 平山 和宏 辨野 義己
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

私たちの健康維持には腸内細菌叢が深く関わっています。本研究では、マウスを用いた実験により、母乳中のアミノ酸代謝から産生される過酸化水素が乳子の腸内細菌叢の形成に関与していることを明らかにしました。過酸化水素は乳子の消化管内において外部から侵入してくる様々な細菌に対して門番の様な役割を担っており、乳酸菌など過酸化水素に抵抗性を示す細菌が優先的に腸内に定着していました。本研究結果は、母乳中に含まれる過酸化水素の重要性を示すとともに、アミノ酸や活性酸素による腸内細菌制御方法の開発につながることが期待されます。
著者
太田 一郎 宇都木 昭 太田 純貴
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

アニメ声優が演じる「声」の音響的独自性が人びとの「感覚」に内面化した社会文化的な制度として確立している様子を主に言語学とメディア論の観点から複合的にとらえることを試みた。(1) 女性声優のアニメの声と一般女性の声を比較した結果,アニメの声にはより多くの倍音成分が含まれるなどスペクトル包絡に関わる特性が見られる,(2) アニメと声をめぐる状況は 声優とキャラの間の「演技」,キャラとファンの間の「受容(消費)」,ファンと声優の間の「情的関与」が考察の対象となる, (3) アニメ・声・身体の関係の議論についての重層的な声の受容を論じる聴覚文化論や「音象徴」などの言語学的知見が有効なことなどを示した。
著者
菅原 聡
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究では新型PETによって,0.2V程度の超低電圧駆動で劇的な低消費電力化と,現状CMOS技術と同等以上の高速性能を有するロジックシステムの基盤技術を創出する.具体的には,電力遅延積が現状より2桁小さいロジックシステムの実現を目指す.ここで提案する技術群はCMOS構成のロジックシステム技術を踏襲し,現行のアーキテクチャを継承して,究極の省エネ化を可能とする新たなロジックシステムを構築することができる.本技術はPET以外の同等のBeyond-CMOSにも応用が可能である.
著者
小澤 正直
出版者
中部大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

量子力学の観測命題の論理である量子論理の上に数学を構築することは、経験と論理と数学を繋ぐ興味深いプログラムである。竹内外史は量子集合論を構築し、そこで定義される実数と量子物理量の同等性を示して、このプログラムに先鞭を着けた。本研究では、量子集合論とトポス量子論の関係を明らかにする問題と竹内の量子集合論で有界量化に対するド・モルガンの法則が成立しない問題の2つの懸案を研究し、解決に導いた。この成果により、量子論理、直観論理、パラコンシステント論理に基づく集合論の間に新しい統合が生まれた