著者
前田 清司 樽味 孝 田中 喜代次 山縣 邦弘 小崎 恵生
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

継続的な高強度の持久性運動トレーニングは、身体(臓器)に様々な構造的・機能的な適応を引き起こす(スポーツ心臓など)。しかし、日頃から高強度の持久性運動トレーニングを実施している持久性アスリートの腎臓について詳しく調べた研究はこれまでに存在せず、高強度持久性運動トレーニングが腎臓にとって“善”か“悪”かは不明である。そこで本研究では、高強度持久性運動トレーニングに伴う腎臓の生理的適応を核磁気共鳴画像法(MRI: magnetic resonance imaging)を用いて探索することを目的とし、「スポーツ腎臓」という新しい概念を提唱することを目指す。
著者
窪田 悠一 原田 勝孝 伊藤 岳
出版者
日本大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究は、歴史事象の現代社会における影響を考察の対象とし、超長期的因果関係の分析 に基づく新たな実証的社会科学研究を提唱することを目的とする。特にここでは、戊辰戦 争における戦闘や暴力の遺産が現代日本政治経済に与える影響について実証データを収集 しながら考察する。この目的のために本研究では、a) 戊辰戦争における戦闘・暴力の発生 メカニズムの解明、b) そうした政治暴力と現代市民の政治意識・行動、また経済活動の関 係性の分析を行う。
著者
小林 一郎
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2023-06-30

本研究では、このような生物における知能の発達を参考にし、現在の深層学習による学習方式とは異なる脳内情報処理機構を模倣した発達型人工神経回路網モデルを開発する.モデルの発達過程を具体的に示すため、低次の機能(ここでは特定の単一の課題を解くことができる機能とする)の組合せから高次の機能(単一の機能を組み合わせからなる機能とする)を獲得し成長する例を取り上げ、3つの重要な脳内情報処理特徴:(I)脳内領野の機能表現、(II) 低次から高次への抽象化による情報表現、(III) 領野の連関処理による高次機能の実現、を有する課題の処理を実現する発達型人工神経回路網モデルの開発に挑戦する.
著者
森田 果 尾野 嘉邦
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

日本の法学研究では,実証研究が少しずつ出現し始めてはいるものの,観察データに依拠したものが主で,実験データを利用した実証研究は少ない。そこで本研究は,実験データに基づいた実証研究を展開することを主要な目的とする。米国においては,どの裁判官がどの判決文を執筆したかが明らかなことから,裁判官の属性や当事者の属性が判決にどのような影響を与えるのかについての研究が盛んである。これに対し,日本では,このようなデータが存在しないことから,同様の研究が難しい。そこで,本研究では,日本においても実施可能な,実験を活用した司法政治の実証研究の手法を探っていく。
著者
伊藤 太一 楠見 淳子 松本 顕
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

近年我々のグループは刺胞動物のヒドラが眠っていることを分子レベルで実証し、これにより、睡眠の起源は動物が脳を獲得するよりも古いことが示された。そこで、次の問いとして、『神経系は睡眠に必須なのか』を検証する。ヒドラでは薬剤処理によって神経系を喪失させることが可能である。この全く動けない『寝たきり』状態のヒドラが眠っているのかどうかを分子レベルで判定し、睡眠には神経系が必須要素なのかどうかを判断する。これは、これまで当然と考えられてきた「睡眠は神経系が担う」という通説に挑む研究である。
著者
佐谷 秀行 齋藤 潤
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

Benzaldehydeは古くからがん細胞抑制作用があることが知られているが、その作用機序は全く分かっていなかった。研究代表者らはこれまでの研究で、膵臓がん細胞では14-3-3ζが高発現することで細胞増殖シグナル分子が活性化し、その機能をBenzaldehydeが抑制していることを見出した。14-3-3ζはこれまでにもがん治療の標的として注目されてきたが、その阻害剤の開発には至っていない。本研究ではBenzaldehydeの効果と毒性をマウスモデルを用いて検証し、新たな膵臓がん治療薬開発の端緒とすることを目的とする。
著者
猪俣 紀子
出版者
茨城大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

現在日本の女性メディアにおいてみられる「パリジェンヌ幻想」について、それがどのように形成されたのかを、歴史社会学的に分析した。明治、大正期において男性作家によって描写さていたパリジェンヌイメージ形成の担い手が女性へ受け渡されたのは戦後であった。それには、近年ファッション史において位置づけられるようになった洋裁文化の存在が大きな役割を果たしていたことがわかった。パリモードを頂点とする洋裁学校に通う女性たちは、高価で買うことのできないパリモードを、自分たちの体型に沿うよう翻案しながら衣服を制作した。女性たちはミシンを踏みながらパリジェンヌへの憧れを身体化させていったことが明らかになった。
著者
小松澤 均 松尾 美樹 柴 秀樹 岩野 英知 比地岡 浩志
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究の目的は、う蝕原因菌特異的に抗菌効果を発揮するバクテリオファージ(ファージ)を同定し、ファージセラピーによる新規う蝕予防法を提唱することである。自然界には多くのファージが存在しており、ファージは菌種特異性が高く、ファージが感染した細菌は死滅する。そこで、本研究では、う蝕原因菌を特異的に殺菌できるファージを唾液やデンタルプラークから同定・分離し、性状解析を行う。口腔感染症の予防・治療に新たな治療法を提案することで、これまでの感染症治療への新規治療法の開発という大きなパラダイム・シフトをもたらすのみならず、全身疾患への予防も視野に入れており、挑戦的かつ発展の可能性のある研究である。
著者
笹 健児 川原 秀夫 箕浦 宗彦
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

当該年度は研究の4年目としてコンテナ船での実船実験について、1年目に設計した実験システムをアジア~欧州航路のコンテナ船(20,000TEU)に搭載、2019年5月 より実海域での実験を開始し現在も継続している。実船実験では船橋における気温、湿度、日射量をはじめ、本船位置、速力、海水温度、風向風速、 船体運動 等を時々刻々に観測、データを蓄積している。2019年12月にデータ回収し、分析を進めた。(1) 2019年5月~12月に至るアジア~欧州間の航海(3往復)における実海域データが計測できた。外気温、湿度、日射量についての変動特性を季節および航海ごとに 整理できた。また2018年度~2019年度に実施した大島商船高等専門学校で実施した陸上実験の結果についても同様に整理を進めた。(2) 陸上実験の結果をもとにコンテナ内外の関係を重回帰分析にて季節ごとにモデル化した。これを季節・海域ごとに組み合わせ、実船実験にて計測された3往 復の航海についてコンテナ内(日射の影響を直接的に受けるコンテナ)の温湿度、露点温度、汗濡れの状況を推定した。 (3)計測したパラメーター間の相関分析を行い、各パラメータ間の関係を明らかとした。この結果、コンテナ内の状態は単独のパラメータではなく、気温、水蒸 気圧、日射量の3変数からなる重回帰推定が最も高精度になることを明らかとした。 (4)この結果、季節および往航・復航による違いは見られるが、一航海にて30~50%の期間にて汗ぬれが生じうる結果となり、特に温度変化が著しく発生するスエ ズ運河~地中海を境界とした欧州前後で結露現象が顕著となりうるものと考えている。
著者
保田 諭
出版者
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

固体電気化学デバイスである、固体高分子形燃料電池(PEM-FC)と固体高分子形水素ポンピング(PEM-ECHP)を組み合わせた省エネルギーでの重水素ガス濃縮デバイスを開発する。初めに、それぞれのデバイスで重水素ガスが高効率で濃縮する電極触媒を開発する。PEM-FCで発電したエネルギーをPEM-ECHPの駆動エネルギーに利用し、これらデバイスをカスケード接続することで、省エネルギーで重水素ガス濃縮が可能なデバイスを開発し、その動作機構の知見を得る。これにより、半導体産業や医薬品開発に重要な重水素ガスの低コスト製造法の礎を築く。
著者
福嶋 健二
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

磁場をかけると物体が回転する現象はアインシュタイン・ドハース効果と呼ばれ、100年を超える研究の歴史がある。また逆に回転する物体に磁化が生じる現象はバーネット効果と呼ばれ、理論的・実験的に詳しく研究されてきた。これらの効果は、スピンと軌道角運動量が相互作用により混じり合うことで磁化が回転に転換したり、またその逆のプロセスとして理解される。ところが相対論的な物理系では、スピンと軌道角運動量の分解そのものが非自明である。そこで本研究では、これらの効果の理論的な枠組みについて、相対論的な拡張を目指している。
著者
臼井 達哉 大松 勉 川野 竜司
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

ヒトと同様に猫の高齢化が進むことで治療の機会が増えているが、病態解明につながる研究がほとんど進んでいない。そこで本研究では、猫の正常肺、腸管、肝臓および腎臓オルガノイドを搭載したマイクロ流路デバイスを作製し、猫から分離された新型コロナウイルスを含む様々なウイルスを灌流させることで多臓器への直接的な影響やウイルス遺伝子の増幅や変異パターンの時空間的解析を行い、猫の生体内におけるウイルス感染症に対する制御機構を明らかにすることを目的とする。
著者
安藤 寿康
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は教育学を生物学に位置づけ、「進化教育学」という新たな分野を開拓することを目指し、「教育学習」というヒトに顕著な学習様式が、ヒト以外の動物も行なう「個体学習」や「観察学習」とは異なる独特な脳活動によることを、fMRIによる実験課題によって示すことを目的とし、指運動学習を自分のペースで行う「個体学習」、見本を観察して行う「観察学習」、教師が指導する「教育学習」の三学習条件で実施し、脳活動の差異を検討した。個体学習ではさまざまな部位が活動しており、個人個人が自分の仕方で学習している様子がうかがえたのに対し、観察学習や教育学習では心の理論に関与する部位の活動が高くなっていた。
著者
好井 健太朗
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

RNAウイルスの多様性獲得と進化において、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)による遺伝子RNAの複製と変異の蓄積が重要だと考えられているが、その詳細には不明な点が多い。近年、ウイルスだけではなく、様々な生物種も独自のRdRpを持つ事が分かってきた。本研究では、宿主RdRpのウイルス感染における生物学的意義を明らかにするために、宿主RdRpによるウイルスの排除または増殖促進作用の分子機序を明らかにするとともに、ウイルスの多様性獲得や宿主への適応・伝播への影響を解析する。
著者
日比野 由利
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究は、生殖ツーリズムと呼ばれる現象に着目する。本研究は、生殖ビジネスの最前線として、生殖ツーリズムの「利用される側」であるグローバル・サウスにおける現状を正確に記述することによって、この問題を検討するための基礎的な資料を提供する。東南アジア、東ヨーロッパ地域、中南米、ラテンアメリカ地域、アフリカ地域を対象として、包括的に情報収集を行う。文献収集、及び現地のインフォーマントにインタビューを行い情報を得る。本研究を行うことにより 、身体の商品化や子供の人権に直結する喫緊の問題に関して、国際秩序形成に向け議論を深化させることができる。
著者
齋藤 秀司
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

ホッジ予想はクレイ研究所が提出したミレニアム問題のひとつである.変動的ホッジ予想は,ホッジ予想よりは弱い予想であるが,アーベル多様体にたいしては同値である.最近の進展によりこの問題は,形式的スキームの代数的K群にたいする代数化の問題に帰着された.これはGrothendieckの偉業である形式的存在定理を大きく一般化する難題でこれまで一般的アプローチは知られていなかった.本研究は,リジッド解析空間のK理論を新たに構築することにより, リジッド解析的手法を上記の問題に適用する新たな道筋を開いた.