著者
大竹 翼
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

天然に産する様々な超苦鉄質岩を出発物質として摂氏90度での蛇紋岩化反応実験を行った結果、未変質なハルツバージャイト(かんらん石と輝石を含む石)が最も高い水素生成量を示した。溶液および固相分析の結果から、これらの実験系では、輝石の溶解によって低結晶性マグネシウムケイ酸塩鉱物でpH緩衝能を持つM-S-Hが沈殿し、かんらん石や輝石の溶解速度が促進されることで高い水素生成量を示したと考えられる。実際に出発物質にシリカを添加した系で実験を行ったところ、水素生成量が約50%増加した。さらに、地球化学モデリングの結果からは、開放系の実験系において水素生成量が100倍程度まで増大する可能性を示した。
著者
布川 清彦 井野 秀一 関 喜一 酒向 慎司
出版者
東京国際大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究の目的は,視覚障害者の環境認知における白杖を用いて能動的に作られた音の効果を実験的に検証することである.目的を達成するために次の4つの研究を計画した.研究1:白杖によって作られる音情報(反響音の物理的効果)の分析,研究2:白杖 によって作られる音情報における人の効果検証,研究3:白杖によって作られた音情報の効果検証,研究4:総合考察.本年度は,研究1と2を実施した.研究1と2の両方で,推定する対象を硬さにした.硬さを推定する対象としては,一辺の長さが300mmの正方形で,その厚さが12mmであるゴム板を用いた.また,使用する白杖には,視覚障害者に広く用いられているアルミニウムの主体とペンシルチップ(石突き)を用いた.研究1では,人を介在させずに機械的に一定の高さから白杖の先端を自動的に落とす装置を作成した.この装置を用いて,機械的に対象を打った時の音を録音した.ゴムの硬さは,20度から10度刻みで90度までの8種類を用意した.そして,周波数分析を行うプロトコルを作成して,周波数分析を行い,硬さに対する基本的な白杖の打撃音の特性を検証した.研究2では,白杖ユーザが利用する代表的な3種類の握り方を条件として,視覚障害白杖ユーザと晴眼大学生を実験参加者として,白杖で対象となるゴム板を叩き,触覚情報と音情報の両方を利用して主観的な「硬さ感覚」と「空間の広さ感覚」をマグニチュード推定法を用いて硬さを推定する実験を行った.研究1の一部について,国内学会で発表し,そのプロシーディングを出版した.
著者
倉橋 節也 吉田 健一 津田 和彦
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本年度は,複雑システムにおけるモデルパラメータの推定と変数選択を効率的に行うためのアルゴリズムについての研究を実施した.また,逆シミュレーション学習によるエージェントモデルのパラメータ推定手法の手法を,実際の社会システムを対象に適用事例を作っていくことを主に行った,1)都市動態モデル,3)組織多様性モデルについて検討した,1)変数選択モデル エージェントモデルでは,多数の変数を扱うことになるが,それらを網羅的に探索して適切な値を求めることは,計算資源の課題から困難な場合が多い,また,取り扱う変数も削減することが,モデルの簡潔さとシミュレーション結果の解釈において,重要となる.実データを適用する場合においても,大量かつ複雑なデータの獲得と蓄積が進み,重要な変数を選択する手法の重要性が高まっている.そこで,実数値遺伝的アルゴリズムを用いて,同一世代内の遺伝子の分散を活用した変数選択手法を提案し,パラメータ推定と変数選択の両方に対応できることに成功した,2)都市動態モデル 中世において都市の集中化は始まっており,人口の増加に伴う流動化が移民の増加へと拡大している.このスプロール化した都市がどのように発生するのかを解明することは,華僑の発生と都市構造との関係を知る上で重要となる3)組織多様性モデル 少子高齢化が進む日本では,労働力を確保するために働き方,働く人が多様化している.海外からの労働者を受け入れることは,事務職においても今後増えることが予想され,オフィスにおける多様性のマネジメントが課題となるそこで,多様性を定量化するフォールトラインの考え方に基づき,日本の組織を対象にした実態調査の結果を用いて,組織の多様性と成果関係をエージェント・ベースモデルによって明らかにした.多様性はフォールトラインの強さとサブグループ数によって成果への影響が異なることがが明らかになった.
著者
鈴木 道生 鈴木 庸平 アーサン ナズムル
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

黄鉄鉱ナノ粒子を合成したという報告は数多いが、再現性および安定性の面から実用化は困難であった。応募者らはウロコフネタマガイが特定の生体高分子タンパク質と黄鉄鉱ナノ粒子が共に含まれることに着目し、市販のタンパク質を用いて水系の溶液で非常に効率よく粒径の揃った黄鉄鉱ナノ粒子を合成することに成功した。本研究ではウロコフネタマガイ由来のタンパク質を組み換え体として準備し、より粒径の小さい黄鉄鉱ナノ粒子を、高効率で大量に合成する手法を検討し、太陽光発電のデバイス開発に応用する。
著者
入江 崇 福士 雅也 坂口 剛正 酒井 宏治
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

センダイウイルスは、ヒトに病原性、遺伝毒性を持たず、蓄積された基礎研究成果に基づいた様々な性能改変が可能であり、iPS細胞作製用ウイルスベクターとしても広く利用されている。本研究では、我々の保有する様々なSeV株、変異クローン、組換え変異体などを基に、他のウイルス増殖に対して単独または相互干渉作用を示すウイルスを探索し、干渉性能をレポーターウイルスなどを作成して詳細に評価するとともに、ベクターの半生化や性能の改良を行う。これらの検討は、当初は培養細胞系を中心に行うが、マウス実験系での評価も行う。
著者
山口 良文
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

冬眠は、全身性の代謝抑制により低温・乾燥・飢餓といった極限環境下での長期生存を可能とする生存戦略である。冬眠する小型哺乳類であるジリスやシリアンハムスター(Mesocricetus auratus、以下ではハムと記載)は、冬眠期のあいだ、深冬眠と中途覚醒を繰り返す。深冬眠では、体温は外気温+1度まで低下し (外気温4度の場合、深部体温5-6度)、心拍数も1分間に10回程度まで低下する。深冬眠は数日から1週間近く経過したのち中途覚醒により中断される。深冬眠から中途覚醒への移行時には、体温は数時間で36度付近まで回復する。中途覚醒状態は半日程度継続し、再び体温が低下し深冬眠状態となる。ヒトやマウスなど 多くの非冬眠哺乳類は長時間の低体温下では臓器機能を保持できず死に至ることを鑑みると、こうした冬眠自体が驚異的だが、その制御機構は未だ殆ど不明である。本研究では、体温が36度から低体温へと移行開始する深冬眠導入の際に発動するシグナルの同定を目指して研究を行なっている。現在までに、ハムが冬眠に際して低体温へ移行する際に、発現が著しく上昇または低下する遺伝子を、肝臓および腎臓において多数同定した。さらに定量PCRによる経時的遺伝子発現量解析により、深冬眠特異的遺伝子の中にも体温が36度から低下するさなかに上昇する遺伝子が含まれることを明らかにした。 さらに麻酔薬で強制的に低体温 を誘導した際との遺伝子発現量を定量PCRで比較することで、これらを低体温応答の結果発現誘導されるものと、強制低体温では誘導されず深冬眠特異的に誘導されるもの、とに分類することが可能となった。これらのDTIG (Deep torpor induced gene)のうち、特に顕著な発現変動を示したDTIG1について遺伝子改変個体を作出した。
著者
井上 敬一
出版者
新潟大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

機能未知の遺伝子C9orf72のイントロンへのリピートの挿入変異は、進行性神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症ALSと前頭側頭型認知症FTDの最大の原因である。この変異は異常mRNAを発現させ、mRNAが核内で凝集し(RNA foci)細胞毒性を示す。それゆえRNA fociの除去を目的とした治療法が求められるが、オートファジーは細胞質に存在する基質を分解するため、核内の凝集体は分解できない。そこで申請者は、ALS/FTDの治療法の開発を目的として、核内のRNA fociをオートファジーにより分解させる方法の樹立をめざす。
著者
千葉 満
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

NASHは不可逆的な病態である肝硬変や肝癌への進展リスクがあり,初期の段階での発見が病態進展予防に不可欠であるが,これまで炎症による肝細胞傷害や線維化の兆候を同時に捉えることのできる初期NASHの診断に有用なバイオマーカーはいまだ開発されていない。エクソソームは血中にも存在しており,様々なリボ核酸を内部に安定的に保持しているため様々な病態のバイオマーカーとして注目されている。本研究課題では血中エクソソームに着目し,肝硬変への進展リスクのあるNASHを初期状態で発見できる新たなRNA診断バイオマーカーの発見を目指す。
著者
高橋 淑子
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

これまでに発生中の胚を用いることで、腸がもつ内在的な蠕動運動ポテンシャルとその遺伝プログラム制御の可能性を見出しつつある。また腸由来細胞を用いた長期培養法を可能にすることで、「腸収縮オーガノイド」の作製に世界で初めて成功した。これらの独自解析系を用いることで、特に蠕動運動のペースメーカーと考えられていたがその実体が謎であった「カハール介在細胞」の理解が一気に進み始めた。カハール介在細胞が腸平滑筋や腸神経系とネットワークを作る機構を明らかにし、蠕動運動を可能にする細胞-組織ー器官の協調的制御の全容に迫りたい。
著者
小原 道法
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

乳がんは女性のがんで多く見られる悪性腫瘍で、現在1年間に新たに乳がんと診断される日本人女性は6万人を超える。根治が困難な症例も多く、適切な乳がんモデル動物で乳がんの生物学特性、治療および予防法を研究するのは急務である。乳がんモデルとしてツパイの検討を行ってきた。ツパイは、体重が約150グラムの小型哺乳動物で、ツパイ目ツパイ科に属している。ツパイは人に近い遺伝情報を持ち、ツパイの神経伝達物質の受容体は齧歯類より霊長類のものと高い相同性を持つために、毒物学とウイルス学、抗うつ薬などの前臨床研究で利用されている。また、ツパイの乳腺の生理学的特徴と発育などはヒトに類似している。自然発症乳腺腫瘍を観察した結果、発生率は24.6%(15/61)、再発率は60%(9/15) であった。細胞診の結果、上皮系悪性腫瘍であった2個体の腫瘍組織について精査を行った。多発性の全ての腫瘍組織でプロゲステロンレセプターが陽性、91.3%でエストロゲンレセプターが陽性、4.3%がHER-2陽性であった。また病理組織学的検索と実験動物用X線CT LCT-200解析の結果、腹腔内で内分泌系腫瘍も観察された。以上の結果から、ツパイは自然発症乳腺腫瘍モデルとして有用である可能性が示唆された。
著者
鷹野 敏明 大矢 浩代 中田 裕之
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

高層の淡い雲の構造・性質解明を主目的に、研究代表者らは高感度高分解能のミリ波レーダ FALCON-I (FMCW Radar for Cloud Observation-I)を開発・運用してきた。この装置は従来のレーダに較べて周波数が 95 GHzと高く、空間分解能や感度が優れており、またドップラー測定の精度も高いことが特徴である。 FALCON-I を用いて、過去 10 数年にわたって地上から高度 20km までの範囲で、陸および海洋で雲や雨の観測を実施してきた。これらの観測を通じて FALCON-I では大気中に浮遊する昆虫などが観測できることが示された。そこで、FALCON-I などの新しい手段を用いて、どこまで小さい浮遊物が検出できるか、その計数、サイズ分布、時間および高度分布、季節変化を探索・解明する手法を創設することが本研究の目的である。初年度の 2018年度は、9月末から 10月初めにかけて、空中浮遊物を採集する係留気球実験を実施し、FALCON-I で得られるエコーデータとの比較を行った。また、これまでに行った春・秋・冬の空中浮遊物採集実験の結果の解析・整理を行った。その結果、大きさが 0.5mm 程度以上の浮遊物体は、もれなく FALCON-I で検出できていること、これまでに行った春・秋・冬の季節と比べて、2018年度 9・10月の空中浮遊物の空間密度は 1.5倍高いこと、気温が低い冬期は浮遊物体の空間密度が 1/5 程度となること、などが明らかになった。2019年度はさらに解析を進めるとともに、地上から上空までの風速・風向と大気浮遊物体の空間密度の相関などについて調べた結果、風が弱い場合のほうが大気浮遊物体の空間密度が高いことが分かった。さらに風の様子のシミュレーションなどを行い、大気浮遊物体が受ける影響を評価し観測結果と比較検討を進めた。
著者
佐倉 統 五十嵐 太郎 片山 杜秀 菅 豊
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

この研究は、近代以降「『日本的』という標語がどのように語られてきたか」を分野横断的に比較し、近代・現代における「日本的」イメージの多様性を総覧するとともに共通性を抽出するものである。「民族」について様々な言説が乱れ飛ぶ現在、学術的かつ専門的な見地から、日本とその国民が自らをどのようにイメージしてきたかを明らかにして、現在におけるひとつの「規矩」を提供することは、社会的にも意義があると考える。
著者
神谷 厚範
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究は、従来の神経計測法(体外培養下や臓器外における記録等)では決して分かり得ない、臓器組織の内部における神経線維終末の動態(生体情報の感知, 細胞機能の調節)という未開の領域を、独自の先端的神経計測技術(生動物2光子末梢神経イメージング, MEMS神経マイクロマシン)によってリアルタイムに計測し解明することを目指す。がん組織や胸腹部臓器に分布する末梢神経を対象として、実施する。
著者
小池 聡 竹田 将悠規
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

ウシは第一胃(ルーメン)に共生する微生物に飼料の分解を委ねており、ルーメン微生物の働きは乳肉生産に大きく影響する。本研究では、ウシの生産性と関連するルーメン微生物を特定し、これをバイオマーカーとして利用する可能性について検討した。まず、ウシや作業者の負担を軽減するために、ルーメン内容物の代替として口腔内の反芻残渣が利用可能であることを確認し、サンプリング手法の簡便性を大きく改善した。この手法を応用して、黒毛和種肥育牛においてはPrevotella属細菌群の分布量と体重に正の相関がある可能性を明らかにした。今後、本属細菌を体重増加のバイオマーカーとして活用できるかもしれない。
著者
粂田 昌宏
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は、音波で遺伝子をコントロールする技術の開発に向けて、①細胞音波照射設備の構築・②音波応答遺伝子の網羅的探索・③音波応答遺伝子領域の抽出・④音波による細胞分化操作、の各研究計画を推進した。その結果、独自に構築した音波照射システムを用いて、約400の音波応答遺伝子を同定することに成功した。これらの遺伝子の制御領域の音波応答性を検証したところ、有意な応答を示すものは得られたが、その応答性は高くはなかった。筋・骨細胞分化に対する音波照射の影響を調べたところ、筋分化が有意に促進されることを見出した。本挑戦的研究は、音波による遺伝子操作・細胞操作への道を拓く画期的な成果が得られたものと総括できる。
著者
岸本 太一 岸 保行
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

近年文化製品の国際展開は、国家戦略となるほどにまで活発化し、その拡大に示唆を与える研究は、社会から強く求められつつある。本研究では、日本におけるワインという成功事例を基に、文化製品の大衆品化メカニズムの解明を試みる。研究領域の細分化と専門化が進展する経営学において、本研究では複合領域的な視角を採用する。具体的には、製品開発論、生産管理論、サプライチェーンマネジメント、マーケティング、国際経営論、社会学(文化論)を活用して分析を行う。一方、最終目的に関しては、特定仮説の実証研究による短編論文が主流の中、「メカニズムの全体像を描く仮説群の提示」自体を目的に掲げ、著書による最終成果物公表を目指す。
著者
小川 敬也
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

DFT計算に基づいて、常温・常圧においてNH3合成を行う[ArylN3N]Moの3本のAryl部分を電子供与性の固体に結合させて、安定化・反応性向上するか理論的に検証した。Amido部分がプロトン化された状態とのエネルギー差を調べたところ、Aryl部分が短い炭素鎖の場合、安定化することがわかった。カリウムをおいたモデルでは、炭素鎖を伝ってAmidoの窒素原子にも電子供与されてプロトン化されやすくなり、炭素鎖の自由度が十分でない範囲で、不安定化することがわかった。MD計算も行ったところ、PCETを起こすプロトン源・電子源のみが炭素鎖の立体障害をすり抜けて反応しやすいことがわかった。
著者
高橋 広夫 佐々木 博己
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究では、国立がん研究センター独自の細胞バンクから、生体内分子の網羅情報であるオミクスと抗がん剤感受性情報を得て、その関係を機械学習でモデル化し、難治胃がんの精密医療(Precision Medicine)を目指す。そのために、web上で公開されている各がん細胞株のオミクス情報と薬剤感受性情報の関係を機械学習し、転移学習による再最適化に基づき、胃がんの薬剤感受性予測モデルの構築を行う。
著者
高田 智和 田島 孝治 堤 智昭
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研課題究は、前近代の漢文訓点資料を対象として、(1)漢文本文及び訓点(読み仮名、送り仮名、ヲコト点・声点・句読点・語順点などの各種記号)を文書構造の国際記述(TEI: Text Encoding Initiative)に基づく構造化記述法を考案する。(2)平安・鎌倉時代を特徴付ける訓点であるヲコト点(漢字の四隅・四辺等に記入して読みを表す記号)のデータベースを作成する。(3)(1)と(2)のデータに基づいて、ヲコト点の類型と系統を定量的観点から考察する。(4)(1)と(2)のデータに基づいて、漢文訓点資料の書き下し文の自動生成方法を検討する。これらにより、漢文訓点資料の解読成果を学界で共有するための基盤構築を目的とする。2018年度は以下の活動を行った。(1)訓点の定量的分析のための文書記述を2017年度に引き続き検討した。(2)2017年度に作成した移点ツールのプロトタイプに、仮名点・語順点入力機能を追加し、『尚書(古活字版)』(国立国語研究所蔵)の記述を行った。(3)(2)の移点ツールと『尚書(古活字版)』の記述データ(試行版)を公開した(http://www.gifu-nct.ac.jp/elec/ktajima/tools.html)。(4)これまでに各研究者が作成した点図について、座標表現によるデータ化を試行した。(5)点図データと連携させる訓点資料の書誌情報データの設計を検討した。(6)ヲコト点図データベースに公開した(https://cid.ninjal.ac.jp/wokototendb)。