著者
中村 悦子 鈴木 宏
出版者
新潟青陵大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

「外国人看護師候補者の看護師資格取得・教育に関わる大学の教育支援システム構築」に向け実施した。実施対象は3医療施設(新潟・長野・東京)で5人のEPA看護師。支援の大学教員は、3大学(新潟青陵大学・佐久大学・了徳寺大学)4人である。支援内容は、1)「系統別看護師国家試験問題」をオンラインで学習支援、2)Skypeによる、面接指導、3)目標を設定し、訪問指導、であった。結果、国家試験合格者は5人のうち1人であった。結論、国家試験合格には、日本語能力、異文化適応能力を必須とし、そのレディネスとモチベーションを整えることが重要な課題である。
著者
田中 章浩
出版者
東京女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

内容が理解され,記憶に残りやすいのはどのような音声であろうか.常識的には,魅力的で感情豊かな声は理解や記憶を促進し,笑顔でしゃべれば話の内容の理解や記憶も促されると考えるだろう.しかし,本研究ではそうした話し方はむしろ逆効果である可能性に着目する.具体的には,(1)音声の感情情報処理が音声言語の理解・記憶に及ぼす影響,(2)音声の魅力情報処理が音声言語の理解・記憶に及ぼす影響,(3)視覚情報処理が音声言語の理解・記憶に及ぼす影響,以上3点の検討を通して,記憶に残りやすい音声の要件を明らかにすることを目的とする.3年目である平成29年度は,上記項目(3)に関する検討を進めた.項目(1)および項目(2)では,聴覚呈示される音声に含まれる言語情報と非言語情報の関係という切り口から検討した.項目(3)では,視覚呈示される非言語情報と聴覚呈示される言語情報の関係に着目し,顔の表情と魅力が音声言語理解に及ぼす影響について検討した.実験では視線計測も併用し,表情の種類によって顔の注視部位がどのように変化し,それがどのように課題成績に影響を及ぼすのかを分析した.実験の結果,発話者が喜び顔であり,かつ観察者が発話者の口元を注視している場合に文章理解が促進された.音声の感情情報処理が音声言語の理解・記憶に及ぼす影響(項目1),および音声の魅力情報処理が音声言語の理解・記憶に及ぼす影響(項目2)は妨害的なものであった.これに対して本年度の結果からは,顔の表情の視覚情報処理が音声言語の理解・記憶に及ぼす影響は促進的であることが示された.
著者
水口 雅 池田 和隆
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

結節性硬化症はmTOR系の過剰な活性化を主な病態とする遺伝性疾患で、自閉症を高率に合併する。mTOR阻害薬を用いた自閉症の薬物治療を開発する目標に向けた橋渡し研究として、結節性硬化症モデルマウスを用いた薬物治療の実験を行なった。モデルマウスの思春期個体にmTOR阻害薬ラパマイシンを投与したところ、成獣と同等に自閉症様症状(社会的相互作用の低下)が改善した。しかし発達期にラパマイシンを長期投与すると全身状態の悪化、臓器の萎縮など副作用が顕著であり、今後、投与の時期と量を最適化する必要がある。
著者
水口 雅 池田 和隆
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

自閉症の中核症状である社会的相互交流障害の改善に有効な薬物療法を開発することは重要である。結節性硬化症はTSC1ないしTSC2遺伝子のハプロ不全に起因し、自閉症をしばしば合併する。本研究は、結節性硬化症モデル動物Tsc1^<+/->およびTsc2^<+/->マウスの自閉症様行動異常、mTOR阻害薬ラパマイシンの投与によるその改善、mTOR系遺伝子の脳内発現異常のラパマイシン治療による正常化を見いだした。これらはマウスの自閉症様行動におけるmTOR信号伝達の重要性を示すとともに、ヒト自閉症の薬物治療におけるmTOR阻害薬の有用性を示唆する。
著者
村方 多鶴子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

【目的】重度の精神障がいを持つ親のもとで生育した子どもの主観的体験と、看護者に対して期待していたニーズについて明らかにする。【研究方法】研究対象者は、重度の精神障がいを持つ親のもとで生育した子どもで、精神障がい者家族会の責任者から紹介を受けた。60分程度の半構造化面接にて、精神障がいを持つ親と同居していて心配・負担だったこと、看護者に対して期待した援助などについて調査した。インタビュー内容から逐語録を作成し、質的記述的に分析した。所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果および考察】研究対象者は男女各1名で、年齢は30代前半と40代後半であった。障害を持つ親は両者とも母親で、60代と70代前半であった。研究対象者は、二人とも現在主介護者となっていた。そのプロセスは、①母親の入院経験はなく比較的生活が安定していた子ども時代、②両親から自立し自分のペースで暮らしていた成人期、③母親の精神症状悪化を病気とは気づかず、母親の突然の入院から主介護者となった時期の3つに分かれた。介護者は自分を介護者と見なすのではなく、その状況ですべき責任を担う(Polkki et al,2004)と言われているが、主介護者となった背景には、親に対する愛情だけでなく、病気に関する知識が不十分であり、親元を離れていたために精神症状に気付かない時期があり、症状を悪化させたという自責感も影響したと考えられる。また、精神障がいを持つ親の子どもは、親のネガティブな状況を話しても、批判するつもりはない(Fjone et al, 2009)というように、子ども時代の母親との体験をポジティブに意味付けし、経済的にも精神的にも自立した後に老年期の親の病状悪化に直面し、親に対する感謝と後悔、自責感から主介護者となったと考えられる。
著者
田中 琢三 高橋 愛 中村 翠 福田 美雪
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は前年度に引き続きエミール・ゾラの作品におけるモニュメントの表象の分析を行うとともに、ゾラ以外の作家とモニュメントの関係について検討した。研究分担者の高橋は、パリのヴァンドーム広場にあるナポレオン円柱に着目し、ゾラの『ルーゴン・マッカール叢書』の小説、具体的には『獲物の分け前』『居酒屋』『壊滅』『愛の一ページ』における登場人物たちと、ナポレオン伝説のモニュメントといえるこの円柱との関わりに注目して、ナポレオン円柱に対する作中人物の多様な視線の意味を政治的、社会的な観点から検討し、その成果を学術雑誌に論文として発表した。そして平成29年10月29日に名古屋大学東山キャンパスで開催された日本フランス語フランス文学会2017年度秋季大会において、北海道大学准教授の竹内修一氏をコーディネーター、研究代表者の田中と研究分担者の福田をパネリストするワークショップ「パンテオンと作家たち」を実施した。このワークショップでは、第三共和政以降にパリを代表するモニュメントのひとつであるパンテオンで行われる国葬、つまりパンテオン葬を取り上げ、田中がヴィクトル・ユゴーの、福田がゾラの、竹内氏がアンドレ・マルローとアレクサンドル・デュマのパンテオン葬について報告した。これらのパンテオン葬の検討によって、フランスという国家と文学が取り結ぶ関係の変遷について明らかにした。その成果を踏まえたうえで、田中と福田はそれぞれ異なった視点からゾラのパンテオン葬を検討した論文を学術雑誌に発表した。
著者
辰巳 隆一 水野谷 航 ANDERSON JUDY E. ALLEN Ronald E.
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

骨格筋の肥大・再生は、筋幹細胞(衛星細胞)の活性化に大きく依存している。これまでに代表者は、「運動や筋損傷などの物理刺激を引き金として、細胞外マトリックスから遊離する肝細胞増殖因子(HGF)依存的に衛星細胞が活性化する分子機構」をほぼ解明した。これを更に発展させるため本研究では、活性化の抑制機構を調べた。その結果、過剰なNOラジカルの産生によって遊離HGFがニトロ化されることを見出した。筋の肥大や治癒を妨げている「活性化抑制機構(HGFの不活化)」を更に追究することにより、筋肥大・再生を促進する食肉生産システムの開発に資する他、筋再生医科学・加齢筋医科学・スポーツ科学などに貢献が期待された。
著者
柴崎 貢志
出版者
群馬大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

脳内の局所温度を自在にコントロールすることで、神経疾患の画期的な治療法となる可能性がある。この点に着目し、マウスの脳内に埋め込むことで局所(1mm3周囲)脳内温度を上は42℃、下は28℃まで加温冷却出来る局所脳内温度可変システムを開発した。そして、脳内冷却に伴う組織損傷や細胞死の有無を調べた。その結果、脳内温度を正常温度の37℃から30℃まで低下させた場合には、全く組織損傷や細胞死は観察されなかった。これらの点より、局所脳冷却を治療に用いた場合には組織損傷を伴う副作用は生じないことが確認出来た。そして、てんかん原性域を30℃まで低下させることで充分にてんかん発作の抑制を出来ることを見いだした。
著者
武部 貴則
出版者
横浜市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

人びとの健康行動の持続的誘発には、対象属性に応じたコミュニケーションが重要である。広告医学という新規概念を提案し、デザインやコピーライティングなどといった、わかりやすく、人々に影響を与える広告的視点を取り入れることで、生活する人々の行動変容を実現するコミュニケーション研究を進めている。本研究では、広告医学の基礎概念実証を目指し、運動量の増加を目指した介入施策を複数デザインし、それらによる歩行量の増加を実証した。本年度における成果を礎に、今後も広告医学の概念に基づくアイテム開発・実証実験を継続していくことで、疾病予防に大きく寄与する独創的なコミュニケーション手法が生み出されるものと期待される。
著者
田坂 恭嗣
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

養液栽培ジャガイモの根域環境と生育の関係を調査した結果、養液温度を下げることで塊茎を誘導できることが分かった。養液温度 27℃、23℃、17℃の3つの処理区で養液栽培を行ったところ、17℃処理株の生育は地上部、地下部とも劣っていたが、わずか2週間で地下部ストロンが伸びたうえ、茎の基部には異常な塊茎が誘導された。これらの結果は、根域の環境制御する方法で植物体の生育の調整や、塊茎形成を誘導できる可能性を示唆している。
著者
安川 正貴
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

がんに対する抗体療法の抗腫瘍効果は抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性に依存している。ADCCは細胞表面に発現しているCD16を介してNK細胞が担っており、T細胞にはCD16発現が陰性であるのでADCC活性がない。本研究では、CD16-CD3zキメラ遺伝子を作製し、活性化CD8陽性T細胞に導入した。このCD16-CD3z-T細胞は抗体存在下で高いADCC活性を示すことがin vitroで明らかとなった。さらに、CD16-CD3z-T細胞と抗体併用療法は、ヒト腫瘍を移植した免疫不全マウスを用いたin vivo実験系でも高い抗腫瘍効果が示された。
著者
近藤 滋
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

以下の新しい知見が得られた。●アドレナリン受容体阻害剤の骨に関する影響に関して1.ゼブラフィッシュでは骨が小さいため、薬剤の影響を細かく調べることができないので、エンゼルフィッシュを使い、特に頭部の骨の形成を調べた。その結果、アドレナリン阻害剤の効果で、頭部の骨が全般的に薄くなっていることが解った。このことは、破骨細胞の活性が亢進していることを示している。2.骨芽細胞特異的に発現するプロモーターでGFPを発現させて、骨芽細胞の分布を調べた。その結果、骨芽細胞の量、分布にはアドレナリン阻害剤は影響しないらしいことが解った。3.トラップ染色により、脊椎周辺での破骨細胞の分布を調べた。その結果、予想通り、破骨細胞の分布に異常が見られた。しかし、その一方で、破骨細胞総量に関しては大きな変化は見られず、そのあたりは頭部骨とのデータが一致していない。●脊椎骨の変形をおこすstp変異のクローニング1.Stp変異(優勢の変異、enuで作られたため、ポイント変異と思われる)とクローニング用の株を交雑して、ポジショナルクローニング法による変異部位の特定を行った。2.22番染色体の一部に、stp変異を持つ個体由来のpcrbandが高い確率(86/88)で出る事が解り、おおよその遺伝子の位置が判明した。3.その領域は染色体の末端にあたるため、候補となる遺伝子は比較的少ない。4.その領域には別の骨形成変異を持つ突然変異の遺伝子(既にクローニング済み)が含まれている。5.Stpの染色体から、その遺伝子をクローニングし、配列を調べた結果、アミノ酸の置換があることが解った。6.今後、さらにF2の個体についてマーカーをスクリーニングすることで領域を絞るとともに、発見された変異遺伝子を含むプラスミドによるトランスジェニックの作成により、変異遺伝子の特定を目指す。
著者
加藤 淳子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

再分配における平等の問題は、福祉国家研究のみならず、哲学や思想などでも重要課題である一方で、その背後にある動機付けや心理過程については、直接のデータをもって分析されることはなかった。本研究は、福祉国家の所得階層構造(高中低所得層)を踏まえ実際の再分配の問題を考えるため、仮想社会における再分配ルール決定の際の参加者の脳の活動をfMRIで計測することで、平等をめぐる心理過程の解明した論文を自然科学英文専門誌に掲載し、社会科学の分野から複合分野である脳神経科学へ参入に成功した。また、脳神経科学実験を行う際に、政治学の行動分析の知見がどのように役に立つか方法論的考察も行い社会科学専門誌にも寄稿した。
著者
高野 順平
出版者
大阪府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、シロイヌナズナにおいてSPOT1/KNS3と呼ばれる機能未知タンパク質がホウ酸チャネルのカーゴレセプターとして小胞体から細胞膜への細胞内輸送の初期段階を制御することを証明することを目的としている。本研究の端緒は、GFPタグしたホウ酸チャネルGFP-NIP5;1が根の表皮細胞において小胞体にとどまる変異株を単離し、その原因遺伝子をSPOT1/KNS3と同定したことにある。SPOT1/KNS3の変異株は花粉の外壁構造に異常を持つことがすでに知られていたため、SPOT1/KNS3の膜タンパク質輸送機能は花粉の発達にも寄与すると考えられる。平成28年度までにspot1/kns3変異株の根の表皮細胞において様々な膜タンパク質の局在を解析したところ、ホウ酸チャネルのみが小胞体にとどまることが明らかになっていた。平成29年度はタバコ葉における一過的発現系を用いて細胞内局在解析を進め、SPOT1/KNS3は小胞体膜とゴルジ体膜に局在することを明らかにした。以上から、SPOT1/KNS3はホウ酸チャネル特異的に小胞体からゴルジ体への輸送を助けるカーゴレセプターである可能性が高まった。平成29年度には、NIP7;1-GFP発現形質転換シロイヌナズナを作出し、ホウ酸チャネルNIP7;1は葯のタペート細胞の細胞膜に局在することを示した。NIP7;1は葯室にホウ酸を供給して花粉の発達に貢献する可能性が高い。H30年度はspot1/kns3変異株のタペート細胞におけるNIP7;1の局在と、ホウ酸チャネルとSPOT1/KNS3の相互作用に焦点をあてて解析を進める。
著者
細田 耕 池本 周平
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

空気圧人工筋によって駆動されるヒューマノイドによって,局所的反射の機能を解明するために,人工筋の状態を計測する人工筋紡錘を開発した.人工筋紡錘は,筋の状態を計測する局所的な受容器と,その信号から生体の細胞の応答をエミュレートし,出力を計算するための局所的な計算機からなる.この人工筋紡錘によって,実際のロボットに局所的なフィードバックを実現できることを示し,たとえば,跳躍の際に,このような伸張反射の側抑制が,運動の安定性に寄与することを実験的に示した.
著者
細田 耕 池本 周平
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

柔軟な皮膚を持ち,ヒトと類似した構造を持つロボットハンドを開発し,ひずみ振動を連関学習することにより,滑りを未然に防ぐような把握制御を実現した.ヒータを備えたハンドシステムを開発し,ひずみセンサと温度センサによって,さまざまな対象物を識別できることを実験により示した.センサの信号強度がノイズ強度に比較して小さいような環境で安定なセンシングを実現するための,確率共鳴現象を基にしたひずみ測定の方法を提案した.
著者
小島 望
出版者
川口短期大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は,森・川・海と人と暮らしのかかわりのなかで,地域で長く受け継がれてきた「伝統 知」の掘り起しを行ない,同時に,自然環境が開発等人為的影響によってどのように変化してきたかについて,①現地での聞き取りやアンケート調査,②文献検索によって明らかにすることが目的である.調査地はおもに,熊本県人吉市(球磨川流域),徳島県那賀町の2ヵ所を中心とするが, 隣接する周辺地域や,特徴的な伝統的農林水産業を営んでいる場所についてはこの2ヵ所に限らず調査を行なっている.①現場での聞き取りから,例えば球磨川流域では,かつての人々の暮らしが詳細にみえてきた.かつてこの地には「水害」という言 葉はなく,台風や集中豪雨の際には,川と上手くつき合ってきた歴史や知恵が集積されている.数々の「伝統知」を集めることができた.しかし,科学的な災害対策,特に河川工学的治水対策が中心となった特に戦後以降は,それら「伝統知」は通用しなくなり,姿を 消していった.球磨川に幾つものダムができて以来,同時に,地域住民と川との関係が変化していったのは当然であろう.このような 背景があったからこそ,川辺川ダム計画は中止されたといえる.那賀町(旧木頭村)においては,山や川と深く関りをもった伝統的な暮らしを探ることによって,戦後の経済成長政策が中山間地を犠牲に成り立っていたかを考察するための材料を得ることができた.また,拡大造林や下流域のダムの影響など近代化によって「伝統知」が失われつつあったが,ダム建設反対運動を通して,かつての人と自然のつき合い方が問われたという事実が見い出すことができた.②収集した様々な資料によって,日本各地での伝統的な川や山と人の暮らしの比較検証を行なうことで,今後の農林水産業のあり方 や,ダムを中心とする河川構築物が水産業へいかに大打撃を与えたのかについての様々な情報を得ることができた.
著者
渡辺 宏久 Bagarinao E. 祖父江 元 伊藤 瑞規 前澤 聡 寳珠山 稔 森 大輔 田邊 宏樹
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、fMRIと脳波 (EEG) を組み合わせたEEG-fMRIを用い、fMRIの有する高い空間分解能を活かした解析に加え、脳波の有する高い時間分解能生を活かした解析を組み合わせて、ヒトの高次脳機能神経回路や精神症状をサブミリセカンドで観察出来るシステムを構築した。我々の解析方法を用いることで、作業記憶課題を用いた脳活動の観察では、認知課題中に1秒未満で連続的に変化する脳活動を観察可能であった。またてんかん活動を観察しつつ同定した焦点は、手術により確認したそれと良く一致していた。我々の開発した解析手法は、高い空間分解能で1秒未満の連続的な脳活動変化を捉えられる。
著者
片岡 淳
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、福島原発事故で飛散した137-Cs分布の3次元可視化技術を新たに開拓した。具体的には(1)土壌中で散乱した2次ガンマ線と直接ガンマ線の比率 (2)散乱ガンマ線画像の広がりの両方を用いることで、2次元ガンマ線画像の縮退を解くことができる。シミュレーション及び実験室環境での詳細検証を経て、福島県浪江の森林部においてフィールド試験を行った。137-Csが深度方向に指数関数分布をしていると仮定し、緩衝深度β=2.22±0.05 cmを得た。これはスクレーパープレートによる直接調査の結果と良く一致している。今後は SPECT などで散乱ガンマ線を用いることで、新たな医療応用も期待できる。
著者
黒田 嘉紀
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

鉱物油の免疫学的影響について、鉱物油を投与したマウスの腹腔細胞、脾臓細胞を使用しT細胞、マクロファージ細胞及びB細胞への影響についてFCMを使用し、細胞表面レセプターについて検討した。T細胞ではCD28、ICOS、CD40L、PD1が増加していた。またマクロファージ及びB細胞についてはCD28、ICOS、CD40LのリガンドであるICOS-L、CD40、PD-L1 PD-L2はいずれも低下していた。これらの結果からT細胞は刺激され、マクロファージ細胞及びB細胞抑制される可能性が示唆された。