著者
長谷部 信行 宮島 光弘 草野 広樹
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

(1)高真空及びガス純化装置を備えた固体キセノン製作クライオスタットの完成。(2)気体から液体を経て固体とする固体作成法と気体から直接固体を製作する固体作成法の完成。(3)基礎的な放射線物性の一つ、固体キセノンの発光現象の観測。
著者
松尾 知之
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、これまで困難とされてきた投球動作中の肩甲骨の動きを計測することを可能とした。複数肢位のキャリブレーション姿勢において、肩甲骨体表部に半径3mm の小型反射マーカーを2.5cm間隔で8行7列貼付し、その凹凸や角度、高さ情報から重回帰分析によって数学モデルを生成した。従来型のマーカークラスター法(AMC法)と比較すると、AMC法ではリリース付近で明らかなノイズが出現したが、そのノイズは消失しており、投球全域に亘って計測可能なことが確認された。この肩甲骨可動モデルをつかって、キネマティクスの算出を試みた結果、肩関節のnet forceのピーク値は、むしろ増加したことが明らかとなった。
著者
古澤 拓郎 清水 華 小谷 真吾 佐藤 正典 シブリアン リクソン アムリ アンディ
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

アジア・太平洋には多毛類生物いわゆるゴカイ類を好んで食する社会があるが、その近隣社会では釣り餌などにすぎず食料としては醜悪とみなされる。なぜ特定の社会だけがゴカイ類を好むのかを、生存、文化、楽しみという3点から研究した。ゴカイ類はタンパク質に富むが頻度と量は限られており、生存に必須であるとは判断できなかった。一方、生物時計により正確に太陽周期と太陰周期に一致して生殖群泳を行うので、それに合わせて儀礼を行うことで、田植えの季節を正確に知ることができる社会があった。また皆で採取し、共食を行い、祭りをすることが人々の楽しみになっていた。食料選択において栄養素以外の文化や楽しみの重要さを明らかにした。
著者
井口 泰泉
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ミジンコ類(枝角目甲殻類)は世界中の淡水に生息し、扱い易いことから生態学の研究に用いられてきた。我々は化学物質などの環境要因に応答する遺伝子を網羅的に解析するエコ(トキシコ)ゲノミクスを開始しているが、今後詳細に遺伝子機能解析を進めるには、導入遺伝子の発現を自在に制御することが必要不可欠である。本研究では遺伝的な交配実験系の開発について解析を行い、ミジンコは、複数の外部環境シグナルを統合して、単為生殖と有性生殖を切り替えることが分かった。また遺伝子導入法に改良を加えてその効率化を行った。これらの知見は、今後トランスジェニックミジンコ作出するための基礎的な知見として応用可能である。
著者
川村 光
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

地震現象の代表的な統計物理モデルとして知られるバネ-ブロックモデルを、標準的な摩擦構成則である「速度状態依存摩擦則」と組み合わせたモデルを用いて、通常の高速破壊地震のみならずスロースリップ現象を含めた地震現象の物理を、主として数値シミュレーションによって調べた。単純なバネ‐ブロックモデルの範囲で少数個のモデル・パラメータを変化させることにより、通常の高速破壊地震のみならず、地震核形成過程、余効すべりやサイレント地震等のスロースリップ現象までが、統一的な枠組みの中で再現出来ることを明らかにした。このようなモデルと枠組みの同定は、今後の地震研究に対しても重要なレフェレンスを提供することであろう。
著者
森 政之
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

SM/JとA/Jという遺伝的背景が異なる実験用マウス系統を交配して得られた雑種第一世代は繁殖性が両親より優れていることが判明した。このような雑種強勢と称される現象と、その逆の現象である近交退化(血縁個体間の交雑仔に、成長の遅れ、繁殖性の低下や、高率な奇形の発生などが起きる現象)が生じるメカニズムの解明には、これらの2系統マウスから作られたリコンビナント近交系マウスが有用である可能性を示した。
著者
田端 和仁
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

バクテリアゲノムの交換を目指し、その方法を開発する研究を行った。ゲノム交換を行うためには、宿主バクテリアのゲノムを取り除く必要がある。制限酵素の発現系を利用してゲノム破壊株の作成に成功した。さらに導入するゲノムも切断から守るため、認識部位のメチル化にも成功した。ゲノム入れ替えを試みたところ、いくつかのコロニーを得ることが出来たが、それらの持つゲノムはキメラ状態になっていることが示唆された。
著者
小松 真治
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ヨウシュヤマゴボウ色素を用いた色素増感型太陽電池の作製および評価した。さらに、光励起電子の増産化のために金属微粒子を固定化し、高い光起電力と対光溶解性を合わせ持つZn-Ti複合酸化物を用いた分光増感型太陽電池用負極材料を作製した。また、Au微粒子と天然植物色素を用いた色素増感型太陽電池の構築および最適化を行う一方で、ZnTiO3を使用した色素増感型太陽電池の作製および最適化を行なった。シイタケ抽出液への浸漬から作製した修飾電極における抽出液前処理および電解液pHによる条件検討を行なった。さらに、取り扱うキノコを毒キノコまで拡張し、同様な条件で作製した修飾電極における抽出液の条件検討を行なった。
著者
佐野 賢治 森 武麿 小熊 誠 内田 青蔵 安室 知 泉水 英計 森 幸一
出版者
神奈川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

日系南米移民の生活世界の形成において本国の文化はどのような役割を果たし、また、新たな環境のもとでどのような変化を遂げたのか。本研究は、このような問いに対し、日本民俗学が東アジアで蓄積してきた知見と調査法をもって答える可能性を探求したものである。具体的な研究活動は、移民資料の現状確認に赴いたブラジル国サンパウロ州での2度の現地調査である。諸機関が収蔵する生活用具の保管状態を検分して登録記録を収集し、また、日系入植地を巡見して初期の入植者家屋や工場、宗教施設を見学しつつ古老の記憶の聞き書きをすすめた。その結果、本格的な調査研究を展開する適地としてレジストロ植民地が見出され、次期事業が策定された。
著者
登尾 浩助 溝口 勝 佐藤 直人 丸尾 裕一 ホートン ロバート
出版者
明治大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

微小重力下での多孔質中の水分挙動は未だに明らかになっていない。放物線飛行による疑似μG場において毛管上昇実験と土壌中への水分浸潤実験を行い、微小重力下での水分移動を解明することを目的とした。航空機による放物線飛行と落下塔による自由落下によってμG環境を作り出し、毛管上昇と多孔質体中への水分浸潤が受ける微小重力の影響に関する実験を実施した。一連の実験から、毛管上昇理論の微小重力への適用性を確認した。しかし、細い内径の毛管の上に太い内径の毛管をつないだ場合には水分移動が阻害されることが明らかになった。多孔質体中への水分浸潤は、微小重力下では著しく阻害されることがわかった。
著者
岩田 修永
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

先行研究で、アルキル鎖の導入で脂溶性を付与したカテキン誘導体が、アルツハイマー病の原因物質アミロイドβペプチド(Aβ)の主要分解酵素であるネプリライシンやAβ産生を抑制するαセクレターゼ、さらにAβ産生酵素βセクレターゼの遺伝子発現をそれぞれ上方・下方調節する能力があることを見出した。本研究では、これらの発現制御に関わるカテキン結合タンパク質をカテキン結合ビースによる精製とLC/MSMS法を用いて二種類同定した。これらのカテキン結合タンパク質過剰発現細胞では、mock細胞に比較して脂溶性カテキン誘導体処理によるネプリライシン活性増強効果がさらに増大し、βセクレターゼ活性の減弱を引き起こした。
著者
林 良雄
出版者
東京薬科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)が有するプロテアーゼの阻害剤創製を通じ、電子吸引性のアリールケトン構造を基本的な阻害機構としたシステインプロテアーゼ阻害剤の創製手法の確立をめざした。過去の研究より得られた低活性な阻害剤を基に、初年度はトリペプチド型、最終年度はジペプチド型の強力な阻害剤創製に成功し、本阻害剤創製戦略が有効に機能することを確認できた。一方、阻害剤の効率的スクリーニング手法の確立に必要な、混ぜるだけで精製無しに基質をビオチニル化できる試薬の開発にも成功した。
著者
桑木 共之 山中 章弘 李 智 礒道 拓人 山下 哲 大塚 曜一郎 柏谷 英樹 宮田 紘平 田代 章悟 山口 蘭 石川 そでみ 桜井 武 加治屋 勝子 上村 裕一 二木 貴弘 Khairunnisa Novita Ikbar 有田 和徳 垣花 泰之
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

快情動は疾病予防や健康増進に有益であることが経験的に知られている。その脳内神経回路を明らかにすることによって、経験則に生物学的エビデンスを付与することが本研究の目的であった。快情動によってカタプレキシーを引き起こすことが知られているオレキシン欠損マウスを用い、カタプレキシー発作直前または同時に活性化される脳部位を網羅的に探索したところ、側坐核の活性化が顕著であることが明らかになった。今まで不明であった快情動を研究する際のターゲットとなる脳部位を絞り込むことができたが、健康増進との関連解明にまでは至らなかった。
著者
飯郷 雅之 宮本 教生
出版者
宇都宮大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

深海は極限環境であり,地球上に残されたフロンティアのひとつである.深海生物の生理や行動が日周リズムを示すかどうかは不明である.そこで,本研究では,深海魚における体内時計の存在とその特性を明らかにすることを目的に研究を進めた.次世代シーケンサーを用いたmRNA-Seqにより網膜,脳の光受容体および時計遺伝子群の網羅的同定を試みた.その結果,コンゴウアナゴでは,2種のロドプシンと非視覚オプシンが網膜に発現することが明らかになった.色覚に関与する錐体オプシンの発現は確認できなかった.Clock,Npas2,Bmal1,Per1,Cry1,Cry2などの時計遺伝子群の部分塩基配列も同定された.
著者
糸崎 秀夫 赤羽 英夫
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本課題では、MHz帯の電磁波と圧電効果を用いて不正薬物を非破壊・非接触で検知できる要素技術開発とその有効性について評価した。 要素技術では、MHz帯の電磁波の送受信回路と遠方での放射強度を抑えたグラジオ構造を有するプローブを開発した。また、実際に覚せい剤を用いた検出評価実験を行い、圧電効果を用いた新しい覚せい剤の検知方法の有効性を確かめることが出来た。
著者
森田 学 山本 龍生 竹内 倫子
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

口腔関連の疾患と気象条件との関係を明らかにすることを目的とした。岡山大学病院予防歯科診療室の外来患者で、歯周病に起因する症状を急遽訴え、予約時間外で来院した患者(217名)を対象に、来院時の気象条件との関連を分析した。各月を3等分(上旬、中旬、及び下旬)したところ、その間に来院した患者数が、その期間中の平均気圧(r=0. 310、p<0. 05)、平均日照時間(r=0. 369、p<0. 05)と有意な相関を示した。以上のことから、気象条件と口腔の炎症性疾患との間には何らかの関係がある可能性が示唆された。
著者
吉内 一浩 山本 義春 米田 良 大谷 真
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

ストレス関連疾患の治療法の一つにリラクセーション法があるが、習得の補助および習熟度の評価が困難であった。本研究では、EMAを応用したスマートフォンによるツールの開発を行うことを目的とした。方法は、スマートフォンによる自覚的習熟度や気分を入力するシステムを開発し、日常生活下においてリラクセーション法の前後における心拍変動による自律神経機能と自覚的な習熟度や気分との関連を検証した。結果は、習熟度の得点が高いほど、LF/HFが有意に低く、充実度が有意に高いという関連が認められた。従って、自覚的習熟度は、習得の程度を評価することが可能で、リラクセーション習得のための補助ツールとなることが示唆された。
著者
森部 豊 山本 明代 小沼 孝博 宮野 裕 舩田 善之
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,東ユーラシア世界で見られる草原世界と農耕世界との境界域,すなわち「農業・牧畜境界地帯」の歴史的性格・特質が,ユーラシア全域で普遍的に見られるかを検証し,将来的に,ユーラシア史の歴史像を書き換えるための準備作業を行った。その結果,「農業・牧畜境界地帯」という概念は,ユーラシア史を叙述する上では再定義する必要があるという結論に達した。
著者
中本 高道
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本年度はまず匂いセンサにおける遅延時間の改善を行った。匂いをチューブで吸引してセンサセルに導くのではなく、セミクローズ型のセンサセルを製作して、センサの位置を応答速度の観点から最適化した。その結果、チューブ方式に比べて応答速度が改善した。また、瞬間瞬間で変動する匂いセンサの応答パターンを認識するにはロバストな匂い識別アルゴリズムが必要であるが、本研究では従来用いていたLVQ(Learning Vector Quantization)法に代わってSVM(Support Vector Machine)を導入した。SVMはマージン最大化を行いながら判別境界を決定するために、環境変動に対するロバスト性が期待できる。判別境界の検討を行った後、長時間にわたってセンサ応答を測定しながら匂い識別を行い、LVQより優れた判別率をSVMは維持できることを確かめた。さらに匂いセンサと画像を同期させながら伝送する手法を改善した。以前の手法では匂いと映像を同期させるためには画像の更新速度を毎秒1フレーム程度に落とす必要があり、十分な動画像の画質は得られていなかった。本研究では、専用のデータ伝送フォーマットを作成しパケットに分割しUDPプロトコルにより伝送する。受信する側ではパケットを受信する毎にタイムスタンプ及びデータ種類を読み出し同一のデータ種類ごとにデータの連結を行った上で嗅覚ディスプレイまたはコンピュータスクリーンへ転送するようにした。その結果、毎秒10フレーム程度の伝送が可能になり滑らかに映像を表示できるようになった。この装置を用いて大学祭では344名に体験してもらい、匂いと映像の一致や匂いによる臨場感の向上に関して9割以上の体験者より肯定的な回答を得た。さらに大学と日本科学未来館をインターネットで結んで遠隔地から匂い発生源の場所を探索するゲームを行った。数十名の方にゲームを楽しんでもらい好評であったが、デモの途中で震災にあい途中で中止をよぎなくされた。
著者
金子 周司
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年、危険ドラッグとして我が国で蔓延した合成カンナビノイドの一種5F-ADBはカンナビノイドCB1受容体に対する強い親和性を示す一方、パニックなどの精神神経症状、頻脈などの心血管系症状を起こす。本研究では5F-ADB がドパミン・セロトニン神経機構に与える影響について検討した。急性単離中脳冠状切片において5F-ADB(1μM) はドパミン神経の自発発火頻度を有意に増加させCB1受容体遮断薬の存在下ではその増加作用は消失した。一方で縫線核セロトニン神経の自発発火頻度に関しては5F-ADBは影響を与えなかった。以上より5F-ADBはセロトニン神経活動に対して直接的な影響を示さないことが示唆された。