著者
森田 孝夫
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

被害地域から離島、中間・山間農業地域を選び、水害記録・現地調査、郵送アンケート調査を実施し、地勢と避難行動と避難所形成の相互関係および計画課題を分析した。豪雨状況のリアルタイムの双方向情報伝達の不通と、避難路の寸断も想定する避難計画が必要であり、豪雨の場合は、小学校区よりも小さな部落単位やコミュニティ単位で避難所整備が必要であり、防災無線による避難勧告よりも地元消防団の避難誘導が有効であった。
著者
黄瀬 浩一 岩村 雅一 大町 真一郎 内田 誠一
出版者
大阪府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

人間が外界とやりとりをする重要な情報の多くは,読む・書くという行為による.本研究では,このうち書く行為に焦点をあて,そのすべてをライティング・ライフ・ログとして記録することに挑戦する.記録は単なる画像データとしてではなく,どの文書のどの位置に何を書いているのかを認識する処理による.これにより,書く行為を元にした様々な処理,例えば,学習支援やユーザの興味推定が可能となる.この挑戦を可能とするため,本研究では,ペンに取り付けたカメラから得た時系列画像を用いて筆跡を復元する処理,それを文書の正しい位置に配置する処理の2つを考案,改善した.その結果,高い精度で筆跡が復元可能であることがわかった.
著者
小塚 真啓
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では,特にエージェンシー理論の知見に基づき,法人所得課税を正当化する先行研究に着目し,当該先行研究の分析に課税権者を加えることにより,その帰結がどのように異なることになるのかを主として検討したところ,課税権者を含めた利益最大化(あるべき所得課税の実現)という観点からすると,パス・スルー課税に代えて法人所得課税を実施するということにより十分なエージェンシー・コストが削減されることはない,との結果が得られた。
著者
小林 秀樹
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

研究最終年度は、平成20年度・21年度の調査結果を踏まえて、具体的な立地を想定して組合所有住宅の計画モデルを作成し需要供給のあり方について検討を行った。本研究では、LLCまたはLLPを用いた組合所有コープ住宅の可能性について、日本における大正時代の住宅組合法の検証、LLPまたはLLCを用いた先駆的事業の調査、北米の住宅生協法人法を含めた様々な法人形態の比較検討、具体的な立地を想定したケーススタディ、金融の可能性の検討などを通じて解明するものである。組合所有住宅は、区分所有が定着した日本では一般的に普及するメリットには乏しい。しかし、公的賃貸住宅の払下げ、密集市街地の再生、高齢者住宅等において、賃貸住宅の良さを生かして経営でき、かつ入居者の自主運営の努力を生かせる点で適している場合がある。この場合、LLC(合同会社)が、住宅組合の法人形態として比較的使いやすいことが明らかにされた。また、組合所有住宅に対する融資については、一般化することは現時点では困難であるが、「街なか居住再生ファンド」を用いることで、当該ファンドの目的に合致した事業については融資が組み立てられる可能性がある。これは、リーマンショックの影響で銀行等による不動産融資が停滞する中で、各銀行等が抱える不動産融資債権を買い取り、それをまとめて証券化する構想から検討が進められたものである。これにより、銀行が次の不動産融資に乗り出しやすくするとともに、地方都市を含めてノンリコースローンを日本に定着させようと意図したものである。また、老朽団地の定期借地権による払い下げのように、外部からの融資を必要としない事業であれば、さらに実現の可能性は高まろう。
著者
花見 健志 伊藤 昌可
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

5-hmdCを含むDNAオリゴマーを長鎖アルキルアンモニウム塩が共存する状態でアプロティックな溶媒に溶解させたうえで、5-hmdC選択的な保護反応を行った。その結果、4位のアミンと5位のヒドロキシメチル基を架橋する形で保護する試薬と選択的に反応していることを示唆する結果を得ることが出来た。さらに、この保護基は脱アミン反応に対して安定であった。
著者
小林 麻己人
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

突然変異ゼブラフィッシュ系統の解析により、小胞体ストレスが肝細胞のリソソーム残渣を蓄積させることを見出した。リソソーム残渣の蓄積は、老化や神経変性症との関連が指摘されており、酸化ストレスとの関わりも注目される。そこで、小胞体ストレスと酸化ストレスとの関連性を探るために、酸化ストレス応答に重要な因子Nrf2の突然変異系統を作出し、小胞体ストレスを自然発症する突然変異ゼブラフィッシュ系統との二重変異系統を作製・解析した。
著者
窪薗 晴夫
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

学会・研究会・集中講義等を利用して、言語学専攻・専修を有する大学の教員および学生(学部生、大学院生)に対して聞き取り調査を行った。また国際会議に来日した海外の研究者から、海外(主に欧米)の主要大学における言語学プログラムに関して情報を得た。これらの調査の結果、海外の大学と比較した場合に、日本国内の言語学プログラムについて次のような状況が浮かび上がった。1.多くの大学において、大学院重点化の結果、学部生向けの授業や研究指導から大学院生向けの授業・研究指導にカリキュラムの重心が移り、10年前に比べると学部生用のプログラムの比重が小さくなっている。とりわけ、学部生向けの授業が減少し、大学院生向けの授業と合同になっているところが多い。この結果、学部レベルの教育が不十分であると認識している教員が多い。2.その一方で、大学院の教育が充実しているかというとそういうわけでもない。10年、20年前に比べ、大学院生の数が倍増しており、研究指導にかかる時間が倍増しているものの、大学院生一人ずつの研究指導という意味では、以前より充実しているとは言えない。また、合同の大学院演習や研究発表会に予想以上の時間をとられているという教員も多いようである。3.大学全体の予算削減や、学長や学部長レベルの政策的経費が増えていること等の影響で、講座や教員に対する研究費が削減されてきており、研究図書費が大幅に減少している。大学院生が研究遂行のために必要とする研究図書費用や実験費用を教員の科研費でカバーしているところも少なくない。
著者
三留 雅人
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

海馬歯状回には神経幹細胞が存在し,成体においても分裂を続け,記憶や空間認識に関与していると考えられている。最初に制限給餌が海馬神経幹細胞の性質,増殖,分化,維持及び機能に与える影響について調べるために,マウスに13時から17時までの4時間のみに餌を与える制限給餌を8週間行い,海馬歯状回において分裂した神経幹細胞のマーカーであるBrdU (bromodeoxyuridine, 50μg/g b.w.)を1日1回,12日間投与した。投与終了1日後,半数を4%パラホルムアルデヒデドにて灌流固定し,固定後脳を取り出し,ビブラトームにて50μmの厚さで海馬全体の連続切片を作成した。残りの半数はBudU陽性細胞の一定期間後の生存・分化を調べる目的で,さらに各条件で5週間飼育した後,灌流固定を行い同様の脳切片を作成し,分裂した神経幹細胞を蛍光免疫染色法により調べた。制限給餌群では,BrdU投与直後では,BrdU陽性細胞数には変化はなかったが,BrdU投与5週間後において,制限給餌群のBrdU陽性細胞数が有意に増加していた。次に,制限給餌における味覚の影響を調べるために,マウスに12時30分から20分間サッカリンを溶かした水を8週間与え,同様にして海馬歯状回における神経幹細胞の増減を調べたところ,サッカリン投与群では,BrdU投与直後およびBrdU投与5週間後で,BrdU陽性細胞数が有意に増加していた。これらの結果,制限給餌は,海馬歯状回神経幹細胞の維持を上昇させ,さらに,ノンカロリー成分であるサッカリンの制限投与のみでも,神経幹細胞の増殖と維持の上昇に関与したころから,味覚による一日一定時間の刺激は,海馬歯状回神経幹細胞の増減に関与し,記憶や空間認識に影響を与えることが示唆された。以上のことから,規則正しい食生活は,中枢神経の活性化に関与していることが示唆された。
著者
設楽 宗孝 水挽 貴至 松本 有央
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

視覚認識視覚認識において確率共鳴現象がどのような条件で起こるかどうかを調べるために、サルに逐次型遅延見本合わせ課題をトレーニングするための実験制御装置を作成した。ここで、ノンマッチ刺激およびマッチ刺激、背景にはランダムドットノイズを加える。ノイズ量と視覚認識の反応の早さとの関係を調べるために、サルのこの課題のトレーニングを行っているところであるが、ヒトで予備的検証を行ったところ、5%ノイズ程度のところで反応時間が最も短くなり、ヒトでも同様のプロセスがあることが考えられた。
著者
國吉 真哉
出版者
琉球大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、沖縄県を中心とした亜熱帯島嶼地域における環境配慮型の生活文化について、デジタル教材を開発し、高等学校家庭科の「生活文化の伝承と創造」に対応した授業研究を行うことを目的とするものである。そのため、研究最終年度となる本年度では下記のことを研究成果として明らかにした。1. 自然環境に配慮した暮らしの知恵(工夫)に関するデジタル画像としてのデータベース化昨年度、天候不良のため十分な調査結果が得られなかった夏至の日について再調査を実施し、国指定重要文化財中村家住宅において、季節格差、日格差、気象などに配慮した暮らしの知恵をデジタル画像(動画及び静止画)で撮影し、そのデータベースを作成した。尚、観察時間は、午前9時30分から午後5時30分の時間帯において実施した。2. デジタル教材の開発高等学校家庭科の学習指導要領に基づき、住生活の視点からデジタル教材開発を行った。高等学校教員との事前ヒアリングを通して、(1)授業者が多様に活用できる、(2)視覚的に分かりやすい、(3)短時間のものに仕上げる、ことに配慮し、実証的な観察データをとりまとめた教材「中村家住宅での日影の動き~夏至の日と冬至の日の比較~」 (ソフト:Microsoft PowerPoint)を作成した。3. デジタル教材に対する評価の実施当初予定していた本教材を用いた授業実践は、高等学校教員の協力が得られず実施ができなかった。そこで、本デジタル教材自体に対する高等学校教員へのアンケート調査を実施した。調査は沖縄県内の高等学校60校に在籍する全家庭科教員158名を対象に実施した。有効回収率は50.6%であった。その結果、概ね教材に対する評価は得られたが、住領域の学習時間の確保、情報関連設備の不足、生徒の基礎学力に対応した補助説明の必要性等、課題もみられた。今後は、生徒や学校環境に対応した教材の改良を行っていく必要がある。
著者
古賀 章彦
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

大規模なヘテロクロマチンが短期間(種分化が起こる程度の時間)に増幅(生成を含む)あるいは縮小(消失を含む)する現象が、ヒト科やテナガザル科など、霊長類の多数のグループでみられる。その機構の解明につなげることを目指し、増幅や縮小を起こしたヘテロクロマチンの特性を調べた。反復配列が転移などでセントロメアやテロメアに入り込んだ際にこれが起こること、および増幅や縮小の効率は塩基配列に依存することが判明した。
著者
町山 栄章 兼子 尚知 石村 豊穂
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

時代的・空間的に広範な分布を示すコケムシについて、海洋環境指標として利活用できるか否か、その検証を行った。MART指標(群体を形成するコケムシの個虫サイズが水温と逆相関の関係にあることを利用して、群体が成長した期間における海水温の平均年較差を算出する)の検証の結果、個虫サイズと平均水温の年較差との関連が実証された。また、対象としたコケムシ骨格の酸素同位体比が平均水温変化と調和していることから、コケムシ骨格は古海洋環境復元指標として有用であると結論づけられる。
著者
阪口 政清 片岡 健 村田 等 許 南浩
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

がん幹細胞クローニング用プラスミドベクターを完成させたこと、このベクターを使用して、がん幹細胞の特性を備えたクローン化がん幹細胞株を樹立できたこと、があげられる。クローン化の高効率化を目指し、独自のプラスミドベクターを完成させるまでに多大な時間を費やした。現在、膜タンパク質を調製し、免疫のステップに移行している。
著者
今野 幹男 長尾 大輔
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

磁性ナノ粒子(マグネタイト)とシリカを均一に複合化することで、電場と磁場の両者に迅速に応答する単分散な複合粒子を合成した。複合粒子の合成過程では、磁性ナノ粒子をシリカ粒子表面に均一に担持した後に、粒子表面を別のシリカで薄く被覆した。このシリカ被覆により、複合粒子が水溶液でも均一に分散するようになった。さらに、複合粒子の集積状態を光学顕微鏡で容易に観察できるように、複合粒子をミクロンサイズまで大粒径化した。この複合粒子の懸濁液に電場を印加したところ、複合粒子は電場印加方向に対して平行な鎖状構造を形成した。磁場を印加した場合も、類似の鎖状構造を形成した。これらの外場下で形成される複合粒子の鎖は、いずれの外場印加に対してもその強度とともに伸長した。さらに、磁場と電場を互いに直交方向に印加した場合は、複合粒子がヘキサゴナル型に配列したシート状構造体を形成した。このような外場印加を雪だるま型の複合粒子に対しても行った。磁性ナノ粒子を含む雪だるま型粒子に磁場を印加したところ、磁性成分を含む雪だるまの頭部が印加磁場方向に対して並んだ構造を示した。一方、電場作用下での雪だるま複合粒子は、印加方向に対して粒子長軸を平行に向けた鎖状構造を形成した。さらに、磁場と電場の両者を同一方向に印加した場合は、雪だるま粒子の頭部を一方向に向けて配列した構造も観察することができた。これらの結果から、電場および磁場を複合的に利用することで、異方性粒子の配向性も制御できることを示した。
著者
相澤 正夫 田中 牧郎 金 愛蘭
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

国立国語研究所は、難解用語がもたらす言語問題への具体的な対応策として、「外来語」と「病院の言葉」を分かりやすくする提案を行なっている。これらの提案は、新しい外来語や医療用語のように一般になじみの薄い難解な用語が濫用され、国民一般の情報伝達に支障が生じている今日の社会状況を考えると、「情報弱者」を支援するための具体的な方策を提案している点において、「福祉言語学」を実践する新たな研究モデルの一つと位置付けることができる。
著者
山本 昌宏 代田 健二 斉藤 宣一
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

逆問題に対して、再生核ヒルベルト空間ならびに多重スケール核に基づいて、多次元の任意形状をもつ領域における数値解析手法の研究と開発を目指したが、この方法は正則化手法と密接に結び付いており、また離散化のためには有限要素法などを駆使しなくてはいけないことが、より鮮明になり、その方面の研究を進めた。実績は以下のとおりである。(1)相転移問題や熱伝動現象で初期値を決定する逆問題などの応用逆問題で上記の着想に基づいた数値解析手法を開発し、成果として公表した。(2)再生核ヒルベルト空間の手法をチホノフの正則化に適用した場合の近似解の安定性・収束の理論や正則化パラメータの最適な選択原理の講究を実施し、成果を出版した。逆問題個有の不安定性があり、データの微小変動に対して逆問題の解の偏差が極めて大きくなる可能性があるが、そのために正則化の数値計算のためには必要な離散化には特別の注意が必要である。すなわち、逆問題の数値解の精度をあげるために離散化を細かくしていくと、逆問題自体の不安定性からしばしば精度が悪くなる。そこで、逆問題の数値解法においては、要求されている解の精度の範囲において離散化の精度を適宜コントロールすることが必要不可欠である。これへの1つの解答を与えた。該当年度においては正則化法に有限要素法を用いて安定な数値解法を提案し、論文を完成させ公表した。(3)また、継続中の課題としては、再生核ヒルベルト空間の1つの数値手法である多重スケール核の方法の逆問題への応用についての研究があるが、これまで得た成果を本萌芽研究での知見を活用して将来的に大きく発展させる素地ができたと判断している。
著者
金子 昌信
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

j-関数のマルコフ2次無理数における値のある種の連続性をファレイ分数の言葉で定式化した.j-関数の実二次点での値そのものについての数論的性質の解明には至らなかった.しかしマルコフ数のファレイ分数によるパラメトリゼーションを用いてマルコフ数のある種の新しい合同式を証明することが出来たほか,実二次数のcaliberについて,広義,狭義ともに,その偶奇を完全に決定できた.他には一変数モジュラー形式のフーリエ係数の合同,楕円曲線との関連などの結果を得た.
著者
青野 京
出版者
近畿大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究で提案するライフパタン研究とは,大規模な量的調査データを用いて個人の各ライフステージでの生活,志向性,価値観などの変遷を時系列的に追って,いくつかのパタン化を試みようとするものである。モデルの構築には長期的なパネルを用いた縦断的研究が必要となるが3年間で変化を抽出することは難しいため,これを補完する方法として想起法による過去5時点の生活領域の変化を検討し,ライフパタンモデル構築のための基礎資料とした。統計的な手法の確立については今後の課題である。また,2007年~2009年に組織労働者を対象に質問紙調査を行い約19,000名分のデータを得た。ここから生活や生き方のパタンの違いによる幸福感や働きがい,生活満足度などを検討したところ,大きく6つのタイプが抽出された。生活満足度が高かったのは家庭中心型であり,幸福感が最も高いのもこの型であった。日本の組織労働者の全体傾向としては,まず家庭領域が幸福感に大きく寄与していることが明らかになった。一方で生きがい感に対しては家庭,そして仕事領域の双方が大きな影響を及ぼしていることがわかった。そして余暇などの自由時間領域は幸福感や生きがいに直接貢献してはいるものの,その働きは仕事や家庭のストレス要因を緩和するようなものであることが示唆された。一方で「趣味に生きるオタク」や「仕事人間」のように一つの領域のみにエネルギーを費やしている層は生活満足度や幸福感が低い傾向がみられた。これらのことからワーク・ライフ・バランスの観点からは,家庭と仕事,自由時間の間のバランスのとれた生活が人生全体において望ましいことが改めて示されたと言える。今後は,現在構築中のライフパタンモデルを確立し,価値観や志向性などの観点も加味して,現在のライフ・バランスや幸福感満足度などが時系列的にどのように変化していくかということを総合的に検討していくことが課題である。
著者
平田 憲司郎
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

選好パラメータについて,一卵性双生児間,二卵性双生児間それぞれに相関係数を求め,その相関係数の差異から選好パラメータの遺伝寄与度を推定している.その結果,近い将来に対する時間選好率の相加的遺伝要因の寄与度は24%であり,遠い将来に対する時間選好率の相加的遺伝要因の寄与度は23%であることがわかった.さらに, 2日先から9日先にかけての時間選好率では,共通環境要因の寄与度が年齢とともに上昇することがわかった.また,近い将来に対する時間選好率と遠い将来に対する時間選好率との間の相加的遺伝要因の寄与度の違いを検定した結果,統計的に有意な差異は認められなかった.