著者
須部 宗生 梅本 孝 浅間 正通 山下 巌
出版者
静岡産業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

2ヵ年にわたる本研究の最終年度にあたる平成22年度においては、昨年度に行った海外小学校英語教育視察調査の結果を書籍にまとめ、その成果を広く世に問うことを目指した。書籍の刊行に関しては、須部が中国、梅本がタイ、淺間がアイスランド、山下がフィンランドを担当し、それぞれ各国の特性を活かした英語授業活動を具体的に詳述した。分担者の淺間は、編集責任者として各々の原稿の細部に至るまで目を配り、日本の小学校英語教員にとって有意義な提言となるべく配慮を施した。既にすべての原稿提出、校正作業も完了し、現在は出版社との最終調整の段階に至り出版を待つのみである。研究代表者の須部は、磐田市教育委員会からの要請に応え、本研究従事者らによる、リレー形式の、小学校英語教員を対象とした講演活動を企画中であり、平成23年夏における書籍刊行と共に、当活動を実施していく予定である。具体的には、須部が第一回目を、第二回目を淺間が、第三回目を梅本が、そして第四回目を山下が担当し、それぞれが視察調査を行った国から得たティーチングチップスを豊富に盛り込むことによって、小学校英語担当教員にとって即戦力となるような講演内容を心がけるつもりである。また分担者の山下は、静岡県西部英語教育研究会の招聘により、高校の英語教員を対象に『フィンランド縦型コンプリヘンシブスクールにおける英語教育事情』と題した講演を行った。さらに、愛知県大府市の依頼を受け十月に、小学生親子を対象とした自然体験教養講座『かんたん英語でウォークラリー』を実施し本研究の成果の一端を紹介した。今後も本研究を契機として様々な困難が予想される小学校英語活動の動向を注視し、さらなる提言を試みるために新たな研究に着手していきたい。
著者
森川 英明 高寺 政行 鮑 力民 後藤 康夫 佐古井 智紀
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

日本で多発する刃物による傷害(事件)に対応するため,軽量で快適な防刃被服について検討を行った.研究は,防刃性能の工学的評価法の確立,高性能ナノ材料および複合層構造による貫通遮断機構の開発,防刃被服の温熱環境評価と改善法の検討,被服構成学に基づく防刃被服の評価・構造設計,の4つの側面から行った.その結果,防刃材料の開発に必要な物理量による評価手法を構築すると共に,防刃用繊維材料,防刃衣服の冷却機構などの提案が可能となった.
著者
山中 英生 滑川 達 真田 純子 松浦 正浩
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

公共事業の社会的合意形成において涵養とされる「中立的第三者」を制度的に成立するため、本研究では,(1)那賀川流域フォーラム(2002-2004)(那賀川の河川整備計画策定に当たって形成された参加型検討会)、(2)沖洲マリンピア整備手法検討委員会(2002) (高速道路ICの海浜埋立事業の見直しを行った委員会)(3)月見が丘海浜公園ワークショップ(2003-2005)(海浜埋立地の大規模公園設計ワークショップ)(4)北常三島交差点安全施策検討会(2005-2006)(幹線道路交差点安全施策,地域及び沿道住民,利用者,関係行政機関によって、コンセンサスビルディングの手法を忠実に実施した事例)(5)吉野川河川整備計画「住民の意見を聴く会」(2006-2008)(流域委員会に代わる方式として2006年度より始められた会。国土交通省が中立的ファシリテータとしてNPOを選定。NPOは行動規範,中立性確保のための条件を公表し、運営に当たった。)の5事例を対象として、多様な参加形態における「中立的第三者」が成立する上で必要な要件を分析した,平成21年度は,平成20年度までに実施した,以下の徳島県内の5事例に関するヒアリング,アンケート調査をもとに,我が国のPIにおける中立的第三者の成立性を明らかにした.また,吉野川河川整備計画「住民の意見を聴く会」のファシリテータグループのファシリテーションの行為言動を記録したビデオを用いて,ファシリテータの行為・言動が中立性に及ぼす影響について分析して、中立的第三者としての職能,倫理,契約、中立的第三者を社会的な役割として構成するためのロスターの試行と課題を整理した。
著者
直田 健
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本課題では、世界初の「超音波を合図に分子集合・発光する分子」の開発に関する研究を行った。分子内π-スタッキングで安定化している洗濯ばさみ形状を有するtrans-ビス(サリチルアルジミナト)2核白金錯体が、超音波照射で分子内、分子間のπ-スタッキングのスイッチングを起こすことによって超音波応答怪の分子集合を起こすことが明らかとなった。さらに、集合現象による白金錯体どうしの著しいネットワーク化によって発光強度が増大することを見出した。例えば、白金錯体の有機溶媒の希薄溶液に数秒程度の短い超音波を照射して瞬時に得られるゲルが、溶液状態ではほとんど観測されない550nm付近での緑色のりん光(λex=420nm)を示すことを明らかにした。環状2核白金錯体の構造について詳細な検討を行った結果、2枚の平面間の距離によって、それぞれが異なる超音波応答性分子集合挙動を示すこと、金属錯体どうしの規則正しい配列制御が可能になることが明らかとなった。量子化学計算による分子論的・構造化学的・電子論的観点から系統的に検討することで、分子集合様式と発光特性の相関を精密に理解した。これによって次世代の発光性機能分子の一分野として、音響応答性発光素子の新たな分子設計指針を確立することができた。
著者
伊福部 達 中邑 賢龍 福島 智 田中 敏明 畑一 一貴
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本課題の目的は、筋・神経系障害(筋萎縮や失語症・発話失行)により発話が困難になった障害者のために、テキスト情報に加えて、リズム、抑揚、笑い、怒りなどのノンバーバル情報を表出できるような実用的な発話支援機器を開発するところにある。平成22年度は、21年度に提案した実施項目に従って遂行し、以下のような成果が得られた。実施項目:昨年度はウェアラブルPCとポインティング・デバイス(P.D)を用いて、音声を生成するパラメータを直接的に指やペンの動きで制御できる「構音障害者の音声生成器」を試作した。本年度は、これを利用して家庭内やリハビリ現場を想定し、生成された連続音声や感情音がどこまで正確に認識され得るのかを評価し、誰もが利用できるようにios上でプログラムをダウンロードできるようにした。評価結果:(a)昨年度の評価結果から、摩擦音(サ行)が出だしにあるような連続音声の認識率が低かったことから、P.D上に摩擦音を出せる領域を設け、音声の認識率と操作性の複雑さの観点からその有用性を評価した。その結果、操作性はそれほど負担にならないこと、全ての連続音声を認識させえることなどを確認した。(b)イントネーションやアクセントも付加できるように、表面圧センサの付いたRDを用いて、筆圧や指の押圧により非言語音を生成できるようにした。その評価から、「急ぎ」、「笑い」、「怒り」などを表わす抑揚を30分程度の訓練で単語に付加できるようになった。以上から、使用頻度の高い音声ほど何かを緊急にリアルタイムで伝えたいときに有用であることを確認した。(c)本インタフェースを同時に、多くのユーザに利用してもらうために、歌を生成できるような「音声楽器」へ拡張するとともに、本プログラムをウェブ上でダウンロードすることによって、スマートフォンにより誰もが利用できるようにできるようにした。
著者
酒井 正彦 坂部 俊樹
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、プログラムの解読・改ざんが大変困難なプログラム言語であるMalbolgeを、ソフトウェア保護の目的に利用できるようにすることである。最も大きな問題点である、該当の言語でのプログラム作成の困難性を克服するため、Malbolgeのチューリング完全性を示し、Malbolgeプログラム作成手法の大枠を確立した。
著者
芳村 康男 蛇沼 俊二 前川 和義
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

船体の左右に一対のフィンを船首あるいは船尾付近に装備し、このフィンの角度を効果的に制御することによって、横揺れだけでなく、縦揺れ、および船首揺れをも減少させようとする新しい統合型減揺フィンの開発をめざして研究を行い、本年度は以下の成果を達成した。1)既存の漁業調査船を供試模型船(全長:約2m)とし、フィンの取付け位置を前年度の理論検討結果を用いて、より効果的な場所に変更し、水槽実験を実施した結果、縦揺れ・横揺れの双方に有効な結果が得られた。2)上記の模型実験は、20年度と同様、船を曳航する方式で減揺性能を確認したが、最終年度にあたる21年度は、模型船に舵・プロペラを装備して模型船を波浪の中を自走させ、向波だけでなく、横波斜波中の実験を実施した。使用した水槽は(株)IHI横浜研究所の大型角水槽である。また、模型船は無線操縦によって操船を行った。この実験の結果本減用システムは、種々の波向きの航走でも有効なことが確認できた。3)上記の実験を行う中で、減用フィンが操縦性能に及ぼす影響についても調査した。その結果、船首フィンの場合は、波浪中を直進するに際して、舵角を大きくとり、やや操船しにくいが、逆に船尾フィンの場合は、保針に要する舵角も小さく、操船し易いことが明らかとなった。4)以上の実験結果から、統合型の減用フィンは船尾に装備することが望ましいことが判明した。5)上記の研究成果は総合的に評価を行い、その結果を21年度の北海道大学の修士論文1件、および卒業論文1件としてまとめた。
著者
谷内 一彦 渡邉 建彦 古本 祥三 櫻井 映子
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

神経創薬に応用可能な神経イメージング基盤技術の萌芽的開発のために以下の研究を実施した。1)神経変性疾患に蓄積する異常蛋白質であるアミロイドβ、αシタクレイン、プリオンに結合する低分子標識化合物[^<11>C]BF-227を用いてPET分子イメージング法の臨床研究を行なった。アルツハイマー病(Aβ)、プリオン病(プリオン)、多系統萎縮症(Multiple System Atrophy)(αシヌクレイン)、パーキンソン病(αシヌクレイン)において、[^<11>C]BF-227の脳内での結合量が増加することが明らかになった。[^<11>C]BF-227はタウ蛋白には結合しないが、アミロイドAβ、プリオン、αシヌクレインへの結合特性を持っていることが基礎および臨床研究から明らかになり、神経変性疾患の超早期診断や鑑別診断に有用である。またタウ蛋白に結合特性があるTHK523をポジトロン(^<18>F)で標識して基礎研究を行い、インビトロ、インビボにおいてタウ蛋白に特異的結合することを見出した。さらに小動物用PETを用いて評価し、タウトランスジェニックマウスでのタウ蛋白の分子イメージングに成功した。2)ヒト脳内における薬物の脳内移行性について、鎮静性抗ヒスタミン薬を例にPET分子イメージングで研究した。前日の夜に鎮静性抗ヒスタミン薬ジフェンヒドラミン50mgを服用した場合に、12時間後の翌日までヒスタミンH1受容体を50%近く占拠することを明らかにし、翌日残存効果(hangover)のイメージングに初めて成功した。さらに鎮静性抗ヒスタミン薬であるケトチフェン含有点眼薬による鎮静作用の発生予測のために、点眼後に脳内H1受容体占拠率測定を行い、点眼により鎮静性抗ヒスタミン薬は脳内に移行することが明らかになった。PET分子イメージングを用いることにより組織移行性をヒトにおいて調べることが可能である。
著者
田中 正俊 和田 直久 関谷 隆夫 大野 真也
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本年度の研究計画に従って、原子層単位で酸化したSi(001)表面や表面修飾により仕事関数を変化させたSi(001)表面上にGFP、ルシフェラーゼ極薄膜を作成して蛍光、生物発光の測定を試みたが,共に変化は確認されなかった.しかし,下記のような系においては,分子の荷電状態により発光色が変化する現象を見出すことができた.1.caged ATPを用いてルシフェリン-ルシフェラーゼ反応による生物発光を起こさせると,caged ATPから放出された2-ニトロアセトフェノンによりルシフェラーゼの活性部位の荷電状態が異なり,通常の黄緑色ではなく赤色の発光を放出する.2.GFPに静水超高圧を印加すると分子の圧縮効果により蛍光ピーク波長が短波長側へシフトするが,IGPa付近では発色団から周囲のアミノ酸残基へ電荷が移動することにより,このシフトが相殺される.3.より単純なa-sexithiophene分子を様々に表面修飾したSi(001)表面上に供給すると,仕事関数の変化に呼応して分子から表面への電荷移動量が,そしてその結果としてπ→π*遷移のエネルギーが変化する.以上の結果は,もっと多量な分子を表面修飾したSi(001)表面上に供給できれば発光色の変化を観測できることを示しており,本研究の目的であった「荷電状態をチューニングすることにより光スペクトルを制御し、新規なバイオ光デバイスを開発できる」可能性を初めて明らかにしたものである.
著者
末本 誠 朴木 佳緒留 伊藤 篤 松岡 広路 津田 英二
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

<目的>本研究は、現代GPプログラムとして取り組んだ「アクションリサーチ型ESDの開発と推進」で得た成果(平成)19~21年度)を、日本国内外に普及、交流するための実践・研究的な方法の探求を課題にしている。<成果>(1)今年度は早稲田大学、東京農工大学等、日本国内でESDに取組む主要な大学を尋ね、ESD理解、カリキュラム、地域社会との関わり、ステークホルダーの役割などについての実地調査を行ったことにより、国内の主要な大学でのESDに関する具体的な取り組みの実態が把握された。また、神戸大学での取組みとの異同を議論することにより今後の実践研究的交流の基盤を構築することができた。(2)カナダモントリオール大学、同ケベック大学モントリオール校を尋ね、同上の点についての調査を行ったことにより、同上の成果を得たほか、国際的なESD研究を交流するための関係を構築した。(3)これらの調査活動で収集した資料を、データベース化した。これらは、その存在をweb上で公開し広く活用されるようにする予定である。(5)22年3月にフランスからライフヒストリーの研究者を招いて、ESDの国際シンポジウムを開催した。これにより価値観や生活態度を変えるというESDの課題に応える、具体的な教育方法論を開発する理論的な根拠を深めることができた。(6)神戸大学を会場として開かれた、平成22年9月の日本社会教育学会の研究大会において、「会場校企画」として「持続可能な社会作りと社会教育の再構成」をテーマにしたシンポジウムを開催した。これにより、大学でのESD実践・研究を社会教育の領域で展開する可能性が明らかにすることができた。
著者
内海 真生
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、申請者自身が開発した採水機ROCSの時系列採水機能を用い、高温熱水噴出孔とその周辺環境に生息する微生物の増殖速度や増殖特性について現場培養から定量評価することを目的に、熱水噴出孔域で使用できる新型微生物培養装置を開発・作成する。具体的には、申請者が中心となり開発した深海用新型採水機(ROCS)と本申請対象である新型培養装置を組み合わせた現場培養実験を通じて、熱水噴出孔生態系内の各種微生物群集の増殖速度やメタン酸化速度など微生物に由来する各種活性の測定と定量評価を試みる。研究最終年度であるH22年度は、まず、チタン製培養槽を用いてH22年3月に無人潜水艇「ハイパードルフィン」を使用し鹿児島湾熱水噴出孔で行った現場培養実験の微生物群集解析を行った。また、有光層下に存在する海洋性古細菌群集の代謝特性を現場培養で測定することを目的に静岡県焼津市沖駿河湾の水深400m環境での基質添加現場培養実験を実施した。鹿児島湾若尊火口海底水中には、全菌数として7.2×10^5 cells/mL存在し、その内訳は真正細菌が4.5×10^5 cells/mL、ユーリアーキオータ(7.0×10^4 cells/mL)、クレンアーキオータ(4.1×10^4 cells/mL)であった。全菌数の値は、一般的は外洋海水の値より1桁高い。現場微生物増殖速度は基質添加系で真正細菌およびクレンアーキオータ群集とも負の値を示した。駿河湾400m水深現場培養実験においても海水置換、基質添加および培養試料の時系列現場固定に成功し、基質添加現場培養から400m水深の真正細菌およびクレンアーキオータ群集の増殖速度を測定した。本研究の結果、潜水艇や調査船・漁船を利用した、任意の水深において基質添加可能な現場微生物培養装置の開発にほぼ成功した。
著者
横田 眞一 吉田 和弘 金 俊完
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

長寿命で耐振動性などの特長を備えた小形で低コストな極薄ジャイロを実現することを目的として,本年度では,小形化,薄形化,集積化,大量生産が可能なMEMS技術を用いた極薄ECFマイクロレートジャイロを開発した.ECFジャイロは,1)ECFジェット発生部,2)噴流発生部と流路,3)速度方向検出部の主要要素で構成されている.まず,MEMS技術によるECFジェット発生部として,高アスペクト比を有する金属構造体である三角柱-スリット形電極対を提案し,フォトリソグラフィによりガラス基板上に形成した金属の薄膜に高さ500μmのレジストによる鋳型を形成し,Ni電鋳により電極を形成する製作プロセスを提案した.鋳型に用いるレジストとして,高アスペクト比のマイクロ構造体の形成と,電鋳後の鋳型を選択的に除去可能な厚膜レジストKMPRを選定し,電鋳におけるプロセス条件を検討することでマイクロ電極対の試作に成功した.次に,電極対を形成したガラス基板にエポキシレジストSU-8により噴流発生部と流路を試作し,従来の機械加工によるジャイロに用いられていた速度方向検出部と組み合わせることで,部分的にMEMS化したECFマイクロレートジャイロを構成し,特性実験を行った.厚さを5mm,流路体積を10×8×t0.5mm^3とし,従来よりも1/5程度に小形化したジャイロの動作を確認したほか,流路高さを1mmとしたジャイロで印加電圧0.38kVとした際に比較的良好な特性が得られた.また,支柱の上の薄膜にホットワイヤとなる回路を形成した形の速度方向検出部を提案し,MEMS技術に応用可能なプロセスを用いてその試作を行ない,有効性を確認した.
著者
玄 学南 山岸 潤也
出版者
帯広畜産大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は異種抗原発現用新規原虫ベクターの構築と組換えワクチン開発への応用を目指して実施する。本年度に実施した研究内容と得られた研究成果は以下の通りである。1. 過年度に異種抗原発現用ネオスポラ原虫ベクターを構築し、トキソプラズマ原虫ワクチン候補遺伝子TgSAG1の発現(Nc/TgSAG1)に成功した。2. 今年度はまずNc/TgSAG1をBALB/cマウスに接種し、TgSAG1に対する特異抗体反応を誘導することを確認した。特異抗体のサブクラスを調べたところ、Th1型優勢免疫が誘導されていることが示唆された。また、Nc/TgSAG1を接種したマウスにおいてはIFN-γの産生がベクターのみを接種した対照群と比べ有意に高いことが示された。なお、IL-4の産生には対照群と比べ有意な変化がなかった。3. 次に、Nc/TgSAG1にて免疫したマウスに致死量のトキソプラズマ原虫を接種したところ、約80%のマウスが生残した。これらの結果より、異種抗原発現用原虫ベクターは次世代型ワクチン開発に新しいツールを提供しうることが示唆された。
著者
斎木 喜美子
出版者
至学館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の意義は、日本の近・現代児童文学研究においてほとんど注目されてこなかった沖縄の児童文学に着目した点にある。本研究ではまず第一に、沖縄においても大人の文学のみが注目されてきた山之口貘と伊波南哲の児童文学作品を発掘し、書誌事項を明らかにする。第二に文学者の生育史、教育史と当時の教育界の動向とを重ね合わせ、さらに周囲への聞きとりも網羅しながら両者の児童観や作品の持つ歴史的意味を分析・考察することを目指してきた。本年度は研究の総決算として以下の点で研究成果をあげることができた。1. 伊波南哲、山之口貘の児童雑誌の掲載作品について追加調査を行い、新たな資料発掘も含めてリスト化した。2. 伊波南哲、山之口貘の児童雑誌掲載作品を手がかりにしながら作家としての戦前・戦中・戦後の歩みをたどり、郷土を背景にした「子ども観」と「教育観」を明らかにした。3. 研究会にて研究発表を行い、さらに論文を執筆して研究成果を世に問うことができた。4. 児童雑誌掲載作品の調査と合わせて、すでに絶版になっている山之口貘、伊波南哲の著書を古書店等で入手し、資料収集に努めた。今年度が最終年度であったため、山之口貘・伊波南哲の作品主題、子ども観、教育観の差異を比較しつつ、両者に共通の郷土観、沖縄特有の時代的制約についても言及した。とりわけ山之口貘に関しては、これまでまったく知られていなかった作品情報を琉球新報朝刊(2010年10月25日)にて公表したことが成果として特筆できる。
著者
田口 智章 家入 里志 橋爪 誠 増本 幸二
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

・超音波画像とMRI画像の統合(2D-3Dレジストレーション)従来の超音波の2D画像とMRIの3D画像を画像解析にて座標統合する技術を開発した。超音波の画像認識技術、及びMRIボリュームから高速に病変部を高速に抽出(セグメンテーション)する技術は既に開発済みであったため、これらを応用発展させ、座標統合技術と補完的に用いることできることを確認した。・MRI誘導による穿刺による胎児手術モデルでの実証実験平成21年度の成果をうけ最終的にリアルタイムの診断と治療が融合した治療システムとしてのMRI撮像下でのマスタースレーブ手術支援ロボットを用いた実験を行った。まず臓器モデルを用いたMRIを撮像し、ナビゲーションシステムを用いて、臓器のセグメンターションを行い詳細な術前計画をたて、手術プロトコールを作成した。次に子宮を模したモデルを用いて経子宮的に小型ロボット用のトロカーを留置、3D内視鏡と7自由度を有するマニュピレータを子宮モデル内に留置、ロボットの鉗子先端と臓器のレジストレーションを行い、その後MRIのガントリ内にモデル・ロボット共にピットインし、撮像しながら、内視鏡画像・術前3D画像・リアルタイム撮像画像を参考に手術操作が可能なことを確認した。このMRI対応小型マスタースレーブ手術支援ロボットに分担研究者が開発したMRI対応多自由度細径鉗子を搭載し、その利点を最大限に生かした手術操作を遂行し、モデルを用いた手術操作では胎児手術操作が可能なことを実証した。
著者
中北 英一
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

ゲリラ豪雨を予測するために、レーダーで見えない赤ちゃん雲、ひいては卵の状態がどのようであったかを解析し、さらに豪雨発生の状態から元の卵の状態まで時間的に逆推定することで、何を新たに観測すれば予測が可能となるかを明らかにし、降雨予測手法の発展へと結びつけることを研究目的としている。平成22年度には、2010年7月より試験運用を開始した国土交通省のXバンドMPレーダネットワークを用いて以下の成果を得た。1)近畿地方で発生した22事例の積乱雲を対象にレーダー反射強度の3次元画像解析を行った結果、全ての事例において大気上空3-5km高度でその卵の発生を確認することができた。22事例を平均すると約3分ほど地上降水に先行して大気上空で卵が発生しており、レーダーによる3次元観測が極めて重要であることを示した。2)降水セルの3次元追跡手法を開発し、22事例中14事例(6割強)においては自動追跡が可能となった。3次元降水セル自動追跡結果から、エコートップ高度・降水セルの重心高度・降水セルの体積などの時間変化を解析できるようになり、将来的に豪雨をもたらす積乱雲の特徴付けとなりうる指標を作成した。3)発達する卵かどうかに関連して、ドップラー風速と発生高度に着目して解析した結果、積乱雲へと発生した事例においては、ドップラー風速に収束場や渦位を確認することができた。また、卵の発生高度に関して、偏波間相関係数を用いて融解層高度との関係性を調べたようとしたが、対流性雲では融解層高度の特定が困難であった。以上、3次元偏波レーダーデータを用いて、大気上空での卵の発生をとらえ、さらに自動追跡する手法を開発し、発達する事例においてはドップラー風速との関連陸を明らかにした。今後は解析事例を増やし、他の偏波レーダーパラメータやGPSによる水蒸気量などと卵の発達具合について解析を進めていく。
著者
大山 修一 小崎 隆 堀 信行
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

西アフリカ・サハラ砂漠の南縁に位置するサヘル地域では毎年、雨季になると、農耕民と牧畜民(フラニ、トゥアレグ)が放牧地をめぐって各地で衝突を繰り返している。ときに武力衝突によって、双方に死傷者が出ることもある。本研究計画は、農耕民と牧畜民のあいだで武力衝突が起きる要因を明らかにし、武力衝突を避けるための方策を提案することを目的としている。本年度に実施した現地調査の成果は、以下の通りである。牧畜民は雨季のあいだ、トウジンビエ畑の作物に対して食害を与えないよう、トウジンビエ畑を避けて、台地上の放牧キャンプに住み込んでいる。耕作地の拡大と荒廃地の発生にともなって、牧畜民が利用しうる放牧地が不足しており、牧畜民が放牧できる草地が新たに必要であること、そして牧畜民の管理する家畜が夜間に動き出し、畑のトウジンビエを採食することによって、農耕民と牧畜民が賠償金をめぐって口論した末、武力をともなう争いに発展するプロセスが浮かび上がってきた。フラニに聞き取りをしたところ、台地上やその周辺部に鉄製フェンスで囲いを作り、夜間の家畜囲いをつくることによって、夜間の家畜管理が容易になること、そして、その家畜囲いにおいて家畜が休息できるよう、生ゴミをまくことによって、砂を捕捉し、草地を再生させることが衝突予防のひとつの手がかりになるという知見を得た。生ゴミ施用にともなう緑化の有効性については圃場実験によって検証している。家畜囲いの面積は40m四方で十分であり、囲いを利用するのは、草本の生育する雨季の終盤が適していること、その草本は家畜の飼料となる一方で、夜間の野営によって家畜の糞が供給され、その糞が次年度に草本が生育する肥料となることが示唆された。ハウサの農村にも家畜囲いをつくることにも同意が得られ、この提案は、フラニ牧夫に高い評価を得た。周辺のフラニから鉄製フェンスとゴミ施用の要望が多く寄せられ、農耕民と牧畜民の衝突を回避する一つの有効な手段となる可能性が示唆された。
著者
出口 修至
出版者
国立天文台
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、低周波で明るく輝く電波源の位置や強度、スペクトルを観測し、それらの起源を、遠方の銀河団に付随するものか、あるいは銀河系内の比較的近傍に存在する低温矮星(または惑星)に付随するものか、を明らかにする事である.平成22年度には、前年度と同様にインドの大型電波干渉計(GMRT)によりさらなる観測を行い、遠方銀河団に付随すると思われる天体8つについて観測データーを得た.また、ヨーロッパで行われた関連する低温度星の研究会に出席し、研究発表を行った,前年度得た低温矮星候補天体についての詳細なデーターの解析、および本年得たデータの解析を行った.同望遠鏡で得た観測データーにはインドの干渉計に特有な電波雑音が無数に載っており、その除去に非常に手間取り解析が遅れたが、低温矮星候補天体のデーターについてはほぼ解析を終了し、現在結果を論文に纏めている.主要な成果は、低周波電波源のうち、その位置が低温矮星に1秒角以内で一致するものが2個有り、そのスペクトルは1.4GHzにピークを持ち、また数分の時間スケールで電波強度が変動している、という事が明らかになった事である。これらの事実は、電子サイクロトロンメーザー等の放射機構により低温矮星(あるいはその周囲を巡る惑星)から低周波電波が来ている事を強く示唆するものである。この結果は、かなりの数の低周波電波源が銀河系内天体に付随する可能性を示したという意義が有る。これは、今後発展するであろう低周波電波天文学の一つの方向性を決定づける重要な結果であると思われる。
著者
松田 厚範 武藤 浩行 大幸 裕介 逆井 基次 小暮 敏博
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では、種々の硫酸水素塩とリンタングステン酸(WAP)やケイタングステン酸(WSiA)を遊星型ボールミルを用いて複合化し、複合体の導電率の温度・組成依存性を系統的に調べた。CsHSO_4-WPA系と同様、KHSO_4-WAP系とNH_4HSO_4-WPA系では、硫酸水素塩含量が90mol%付近で導電率の極大が認められた。ミリング処理によって、WPAのプロトンの一部が一価カチオンによって置換され、ヘテロポリ酸の面間隔が小さくなっていることや、硫酸水素アニオンとヘテロポリ酸の間に新たな水素結合が形成されていることがわかった。導電率の対数値とH^^1 MAS NMRスペクトルのケミカルシフトから求めた水素結合距離の間に良好な相関を確認した。また50H_4SiW_12O_40・50CsHSO_4複合体をポリベンズイミダゾール(PBI)に混合することでPBI-50Si50Cs系コンポジット膜を作製した。シングルセル発電試験(無加湿160℃)の結果、コンポジット膜は非常に優れた発電特性を示した。これは無機固体酸複合体が分散することで、プロトンのホッピングが容易になったためと考えられる。
著者
伊原 博隆 高藤 誠 澤田 剛
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究課題は、新奇反応の開拓や機能材料を創造する新しい手法の開発・確立を目的として、極限環境場としてのメガGレベルの超重力場に着目し、各種モデル反応をデザインしながら有機反応やナノ傾斜構造化を実施した。本報告では下記の三つの研究課題について成果報告を集録した。(1)高分子電解質中でのアルカリ金属の選択的輸送現象の誘起と傾斜構造化の実現(2)有機半導体の傾斜複合化(3)ラジカル付加反応おける新奇立体選択の発掘