著者
阿久津 英憲
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

受精卵は細胞核リプログラミング現象に関して2つの非常に興味深い事象を提示している。これまで受精卵の全能性で重要である遺伝子発現量補正に関わるX染色体の不活化機序に着目し卵子細胞における刷込み型X染色体不活化が卵子細胞核タンパク質の特定の化学的修飾(H3K9me3)により制御されることを見出した。これを受け、X染色体不活化を制御することで全能性獲得に寄与する転写因子を探索し、Pou5f1(Oct4)がこのエピジェネティック リプログラミングに関与することを見出した(本成果は国際誌へ投稿中)。卵子のリプログラミング分子機序から受精卵の全能性機能を解明するキー因子の働きを明らかにできた。
著者
スチュアート ギルモー
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

HIVと結核はアフリカ及びアジアの一部において、深刻な課題である。本研究は新たな疫学的手法にてHIVコントロールに関する政策を評価した。サハラ砂漠以南のアフリカ32カ国の2000~2012年の人口保健調査データを用い、時空間回帰分析にてHIV検査実施率の推移及び新規HIV感染を2020年までに根絶するための目標検査実施率との比較を行った。結果9カ国は2012年の目標検査実施率を達成し、3分の1は統計学的有意に下回った。これは新規感染根絶の目標検査実施率からはるかに下回ることを示し、サハラ砂漠以南のアフリカにおけるHIVコントロール及び新規HIV感染根絶にはさらに効果的な新たな方策が必要である。
著者
原田 和典 西山 峰広 山崎 雅弘 權 寧璡
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

火災時の高強度コンクリートの爆裂は,発生機構が未解明の厄介な現象である。本研究では,空隙圧力と熱応力が複合して発生する応力が爆裂発生の原因であるとの仮説を立て,これを検証することを目的とした。外周圧縮実験と耐火加熱実験を行い,部分加熱時のように不均一な温度分布下で爆裂が起こりやすいこと、また爆裂に先立って亀裂が生じて空隙圧力が低下しても爆裂が生じることを示し、空隙圧力よりも熱応力の方が影響が大きいことを実験的に明らかにした。並行して熱伝導解析と弾性熱応力解析を行い、爆裂が生じた部分における熱応力の集中傾向を考察した。
著者
甲田 勝康 伊木 雅之
出版者
近畿大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

二重エネルギーX線吸収法(DXA法)による体組成(骨量、脂肪量、除脂肪軟部組織量)のデータについては、我が国の母集団を代表としたものはない。本研究課題では、我が国の成人母集団の代表性のある大規模無作為抽出標本調査の15年後の追跡調査対象者の体組成をDXA法によって測定した。その結果、体組成に地域差や年齢による変化がみられた。また、体組成と骨密度の関連や、体脂肪の分布パターンと心血管系疾患等のリスク要因との関連が示唆された。
著者
大佐古 紀雄
出版者
育英短期大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

フィンランドの保育者制度を精確に理解することに予想以上の困難があったが、その詳細をつかむことができた。幼保の制度は一元的であっても、保育者養成のルートが多様であり、その最終学歴レベルにおいても裏付けとなる専門分野も異なる者が混在して職場にいるような状態である。特に大学と応用科学大学(AMK)に着目して事例研究を行ったが、同国の高等教育の質保証のシステムに準拠しながらも、それぞれの機関で良質な教育を提供するべく、教育課程、入試、実習においても工夫が為されていたことが確認できた。当初予定していた他の欧州諸国との比較まで至ることができなかったが、保育者およびその養成の制度の比較の視座が得られた。
著者
西津 貴久
出版者
岐阜大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では,無菌充填・無菌包装された食品の微生物危害を誘起するパッケージ・シール部の細孔を振動法により検出する検査システムの開発を行うことを目的としている.変位制御式加振器とレーザー・ドップラー検出器から構成される計測システム(以下,レーザー式)と,加振器・検出器を兼ねた動電型スピーカー利用の計測システム(以下,スピーカー式)の試作機を用いて測定を行った.試料には,200mL容量のアルミ付き紙容器(ブリックタイプ)に蒸留水をアセプティック充填したものを用いた.細孔を模擬するためにストロー挿入口に1mm厚のセプタムゴムを接着し,そこに外径0.4mmのシリンジ針を突き刺し,2.5mLまでの範囲で空気を注入した.スピーカー式で得られる第1共振ピークはスピーカーと容器の1自由度の振動で,容器重しか反映していない.また第2共振(または第3共振)ピークは,レーザー式では検出されなかったが,レーザー・ドップラーの原理から,この共振はねじれ振動である可能性があると推察される.スピーカー式で検出された第2共振周波数と,レーザー式で検出された第1共振周波数は,容器内に空気が封入されると低周波側ヘシフトした.空気量が容器容量の1.25%までの範囲では,空気封入前の周波数を基準とした差率と空気封入量に線形相関がみられた.レーザー式(r2=0.89,n=37)の方がスピーカー式(r2=0.64,n=40)よりも高相関であったため,精度を高めるためにはレーザー式が有利である.これらの共振周波数は容器によって異なり,個体差と,空気が入ることによる差率は同じオーダーであることから,共振周波数の絶対値による細孔の有無の検出は困難であった.これを解決するためには,測定後,細孔からの空気流入を促すために容器を真空下においた後に一気に復圧する操作を行ってから再度測定し,圧力操作前後の差率を用いて閾値以上のものを有孔と判断する方法が有効であった.
著者
大木 章 中島 常憲
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

火山灰中に含まれる多環芳香族炭化水素(PAH)濃度を正確に測定する方法を確立した。桜島が噴火したときに得られた降灰を採取し、PAH濃度を測定したが、10種の3-4環PAH合計濃度は1.6-5.1 ng/gであり、微粒分ほどPAH濃度が高い傾向であった。また、降灰量が多い場合ほど、降灰中の水銀濃度は低くなった。火山降灰は、自由対流圏を含む大気中のエアロゾル捕集材として機能し、この中に含まれるPAHや水銀などの有害成分を吸着することが明かとなり、大気エアロゾル成分の年次変動を反映することがわかった。しかしながら、これらの成分において、越境大気汚染の割合を特定するまでには至らなかった。
著者
森 俊哉
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題では、係留気球を用いた火山噴煙の観測手法の開発めざし、特に、噴煙中の火山ガス組成の測定をターゲットにした開発研究を実施した。気球に搭載できるよう、二酸化硫黄と硫化水素濃度を測定できる装置を小型軽量化し、噴火活動中の阿蘇中岳の噴煙中の火山ガス濃度比を係留気球を用いて観測を行い、観測手法の確立を行った。本研究で得られた知見や技術は、係留気球を用いた観測だけでなく、近年急速に進化した無人飛行機を使用した噴煙測定にも応用できると期待される。
著者
渡邊 昭子
出版者
大阪教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

19世紀ハンガリーにおける異宗派間の婚姻に関して、現地での研究動向、各宗派の婚姻規定を調査し、さらに、おもにユニテリアン教会文書館史料を用いて、個別研究をおこなった。ユニテリアン教会文書館史料からは、同教会が、異宗派婚裁判の運用とそれをめぐる議論を通して、義務的民事婚法制定に果たした積極的役割を明らかにした。
著者
千葉 則茂 藤本 忠博
出版者
岩手大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

全方位投影型プロジェクションマッピングを支援するための以下のようなアルゴリズム開発を行った.(1)ポリゴン表面上に一様な6角形セル配置を求めるための点群の一様な分布を生成する運動シミュレーションアルゴリズム(2) 6角形セル空間で動作する典型的な2次元アニメーションアルゴリズムとして,波紋と魚群の遊泳シミュレーションアルゴリズム(3)実物体表面に一致する映像投映のためのカメラを使用しないプロジェクタの位置・姿勢推定と映像変形アルゴリズム
著者
脇坂 崇平
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究実施者らは、認知心理実験装置・代替現実(SR)システムの第二世代版を作成した。基本的機能の大幅な改善に加え、幾つかの基礎的な機能を追加した:1)視線追跡装置(2)床振動再現(3)Open Sound Protocolに準拠した体験シナリオ制御システムやその他外部機器との連動等。また、いくつかの応用を実施した:(1)『MIRAGE』(理化学研究所と日本科学未来館共催)(2)『没入快感研究所』(SONY)など。また2012年度デジタルコンテンツエキスポにてInovative Technologiesに採択。成果の一部は先端技術館@TEPIAにて体験することができる(2014年5月現在)。
著者
鈴木 秀之
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

大腸菌のバイオフィルム(BF)形成にスペルミジンが必須であることを示した。スペルミジンは菌体外から取り込んでも、菌体内で生合成しても、あるいは菌体外から取り込んだプトレッシン(Put)から合成してもいいことを示した。5つあるPutトランスポーターの遺伝子を1つずつ潰した菌株を作成し、Putを含む培地でBF形成を調べた結果、PlaPを欠損させた場合にBF形成が顕著に低下した。ところが、どのトランスポーターが欠損している株でも、菌体内のスペルミジン濃度に大差がないことから、PlaPはトランスポーターとして機能するのでなく、PlaPにPutが結合することがBF形成シグナルになると考えられた。
著者
大橋 靖史
出版者
淑徳大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

従来内的心理現象と捉えられてきた時間的展望現象を、社会的相互作用と捉え直し、その生成プロセスを明らかにするため、未来や過去について語り合う占いの場を分析した。予備研究の後、占い師3名が30名のクライエントに対し占いを行う様子を録音・録画し、ディスコース分析等の手法を用い分析した。その結果、占い師とクライエントは、前者が専門性や権威を後者に示し、後者が前者に委ねる関係にあること、また語られた内容をクライエントの手相に帰属させる語りの定式化が存在すること等が明らかとなった
著者
大澤 義明 小林 隆史
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

計量的考察において,具体の関東地域の自治体の将来人口を推定し20歳(18歳)以上のメディアンを算出し地理情報システムなどを用いて時間的かつ空間的に見える化し,投票年齢引き下げの影響を分析した.また,北関東3県自治体の将来予測人口と,各自治体が策定する総合計画の目標人口とを比較することにより,目標人口の過大推計度合いを定量的に明確にした.さらに,茨城県内44市町村を対象とし,東日本大震災による現時点での人口流出の影響を分析した.理論的考察において,異なる人口ピラミッドを持つ2地域にて2政策を選択するモデルを構築し,地域間距離や選挙区の大きさと各地域の投票による政策結果との関係を解析的に導いた。
著者
川本 正知 春田 晴郎
出版者
奈良産業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

当研究課題は、中東地域に存在するシリア語文献の調査とシリア語が使用されてきた環境としての東方キリスト教会の調査研究を行うことであるが、最終年度平成22年度は、当初の「研究実施計画」に従って研究代表者川本は主にイタリアとイギリスのシリア語写本コレクション調査を行い、研究分担者春田は昨年やり残していたイランにおけるアラム語の調査を行った。川本は、2010年9月5日~26日イタリアを訪れ、ヨーロッパで最も古いシリア語コレクションをもつヴァチカン図書館とフィレンツェのメディティ家図書館(Biblioteca Medicea Laurenziana)においてシリア語写本調査を行った。残念ながらヴァチカン図書館は修理中休館であったが、メディティ家図書館において、有名なアッセマニ作成のカタログによってバルヘブラエウスの著作を中心に多くの写本を実見し、15世紀に写されたいくつかの写本の存在を確認した。また、この間、ナポリ東洋大学(L' Universita degli studi di Napoli "L' Orientale")を訪問し、ローマ大のVita Silvio教授に紹介された東方キリスト教およびシリア語の専門家たちと研究交流することができた。また、2011年2月20日~26日(7日間)、大英図書館(British Library)とバーミンガム大学において当研究に関する文献調査を行った。バーミンガム大学のMinganaコレクションでは、2日をかけて多くのシリア語写本を実見した。一方、研究分担者春田は、前年度配算繰越分全額を使用して、イラン国立博物館所蔵アラム系文字史料調査と研究交流を目的として、2010年12月25日~2011年1月5日(12日間)イラン・イスラーム共和国テヘラン市イラン国立博物館を訪れ、同館碑文部門にて調査を行なうかたわら、同部門責任者アクバルザーデ博士他の研究者と研究交流した。同じく春田は、今年度配算分全額を使用して、2011年1月28日~30日滋賀県甲賀市のMIHO MUSEUMと京都市の総合地球環境学研究所を訪れ、MIHO MUSEUM所蔵アラム文字資料調査および総合地球環境学研究所にて文字資料分析法の調査研究を行った。
著者
白濱 圭也 本多 謙介
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究は、ナノポア中ヘリウム同位体混合液のエネルギー離散化を利用して超低温を生成する新手法を開発することと、ヘリウム3を用いた準粒子スピントロニクスを開拓することを目的とする。ポーラスアルミナの表面に金を堆積させ、細孔が直径10nm程度まで狭窄化することに成功した。この手法を追求することで、エネルギー離散化が顕著に表れる直径5nm程度のナノポアアレイの作成手法を確立できる見通しが立った。
著者
今岡 春樹
出版者
奈良女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

2台のデジタルカメラから得られた2枚の画像から,3次元人体形状の奥行き情報を得る装置を開発することが目的である.この際にランダム柄の密着衣服(レオタード)を着用すると,2枚の画像間の対応が明確になり便利であるランダム柄密着衣服については,大型のプリンターで布にランダム柄を印刷し,実際にレオタードを試作し着用実験を行った.一昨年度購入したレオタード作成CADを用い,7種類の異なる縫製部位を持つ型紙について,最もフィットする型紙がどれであるか,またフィットするとはどこを評価すればよいかを研究した.その結果ブラウス原型が最もフィット性が高く,その評価においては服とボディの空隙量を用いることが良いことが示された.この結果は学会で発表した画像の対応関係から注目点の奥行きを計算するには,2台のカメラの位置情報(外部パラメータ)とレンズや焦点距離の位置情報(内部パラメータ)が必要になる.昨年度購入したデジタルカメラについてその内部パラメータの同定(キャリブレーション)を行った.キャリブレーションの方法としては,2度にわたって行列の最小固有値を求めることが基本であり,対応する固有ベクトルの向きを定めることが,内部パラメータでは影響しないが,外部パラメータでは影響することを見出し,ヒューリスティックによる解法を定めた,データの標準化によって精度が向上すること,最終的な精度としては±0.4mm以内であったことは,学会で発表した
著者
三木 明子 友田 尋子
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

1.患者暴力被害事例の収集と分析病院職員に調査を実施し、患者暴力の被害事例を700事例収集し、状況別と原因別に分類した。状況別には、(1)ケア介入時に遭遇する暴力、(2)危険行動の注意・制止時に受ける暴力、(3)日常的に繰り返される暴力、(4)特定の個人または多数の被害者が受ける暴力、原因別には、(5)病気に起因する暴力、(6)病気に起因しない性的暴力、(7)感情コントロール不全者による暴力が分類された。我が国で初めて患者暴力被害の事例集(130以上の暴力被害事例を掲載、日本看護協会出版会から6月以降発刊予定)をまとめ、病院職員が暴力にどのように対応するのか、解説した。2.病院職員のための暴力のリスクマネジメントプログラム1)事例教材、チェックシートの作成暴力の価値基準の共有化のための事例教材とチェックシートを作成し、職員に試行し、活用できるか確認した。暴力発生の危険予知のために、「患者同士の喧嘩の仲裁」「危険行動の制止」「酩酊状態の患者の対応」「問題行動の制止」の場面の視覚教材を作成し、危険要因と現象をアセスメントし、チームで共通の行動目標を確認できるチェックシートを作成した。2)職員合同の暴力回避トレーニングの実施多職種構成のグループで暴力回避トレーニングを実施した。参加者からは「患者に威圧感を与えず、緊張を生まない距離や立ち位置はすぐに実践できるので良かった」「患者に痛みを与えない介入方法もあることを知ったことは大きい」など肯定的意見が挙がり、認識の変化を認めた。トレーニング1ヵ月後の面接調査では、「病院職員合同トレーニングを通して、他部署や他の職種と連携がとりやすくなった」(興奮状態の患者に対し、じっくり話を聞き鎮静化させた(成功事例)」などの意見が挙がった。
著者
大鶴 徹 富来 礼次
出版者
大分大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

研究代表者と分担者はよ緊密な連携のもと当初計画に従い以下実施した。検討1: 粒子速度センサのキャリブレーション手法の確立に向けた検討:当初計画では広帯域(20Hz-20kHz)への拡張を目指す計画としていた。しかし、所有する2台のセンサが交互に不調をきたし、製造元での調整を繰り返すこととなった。本研究の目的が開発途上にある粒子速度センサの可能性を探ることにあり、こうした事態も予め想定した上で2台のセンサを用いてきた。これに伴い当初予定を変更し、本研究の主眼である100Hz~1500Hzの周波数域に対象を絞り、センサの安定性に留意しつつ以下の各項目を実施した。検討2: 粒子速度センサを利用した測定法と既往の測定手法(残響室法、管内法)により得られる吸音特性の関連の明確化:提案手法、残響室法、管内法3者の吸音率を比較し、その相違を定量的に示した。また、建築研究所や日本大学等で測定したラウンドロビン・データをもとに詳細な検討を加え、音源位置-受音位置-試料境界-音圧・粒子速度、の相互関連を実験的に明らかにした。検討3: アンビエントノイズの定義の明確化:高速多重極展開境界要素法を用い、音場のパラメトリックスタディとモンテカルロシミュレーションを実施し、アンビエントノイズの定義並びにその利用による音響測定メカニズムの詳細を解明した。なお、粒子速度センサを利用して材のランダム入射時の吸音特性のアンサンブル平均を測定する際に必要な各条件(センサ位置、試料寸法等)を明らかにし、本研究の成果を活用し材料の開発等を行う際の基礎資料とした。これまでに得られた成果については逐次、日本建築学会、日本音響学会、Internoise (Ottawa、招待論文)、WESPAC(北京)等で公表し、周知と議論に努めた。また、測定メカニズムに関わる基礎的検討の成果はアメリカ音響学会誌で公表した。
著者
白川 美也子
出版者
昭和大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的はDV等のストレスやトラウマをもつ妊産婦の精神医学的・心理学的実態と、それらか新生児の心身の状態および発達に及ぼす影響について産前から産後の母子を追跡調査して明らかにすることである。このたび昭和大学新生児コホートに参加することになり、特にオキシトシンの測定が可能になった。オキシトシンは胎児の成長や発達、出産後のアタッチメント形成の双方に関連があることで知られており、さらに抑うつや不安で女性において低下することが知られている。参加者の中から本研究に同意が得られたものに、妊娠初期・中期・後期における採血を行い、オキシトシン濃度を測定する。初期には抑うつや不安、児へのボンディング、知覚されたストレス等の調査を行い、関連の可能性がある要素としてセルフエスティーム、ソーシャルサポート、ライフスタイルの調査を行う。中期にMINIを施行して現在および過去の主だった診断名をつけ、出産後に新生児行動評価と母子相互作用の評価を行い、ストレスやうつ、不安からくる自己調節障害の現れとオキシトシンの関連を確認することとした。さらに1か月の時点での身体的発達と、6か月の時点での養育者の育児ストレスと子どもの気質を調査することによって、妊娠時のストレスや不安がうつが、胎児の成長発達やその後の母子相互作用に関連するか、それがオキシトシンにyって媒介されていつかをみる。また社会福祉施設で生活する周産期等にDV被害をうけた女性のデータとも比較可能な部分は比較していく。現時点で発達コホート中の母親で同意がとれたケースが100例程度あり、また社会福祉施設でより簡易な調査を行っているケースも100例程度ある。今後、オキシトシンのデータを得て、順次母親のメンタルヘルスと関連する要素や、オキシトシンデータとの関係、その後の発達や母子相互作用や気質等に及ぼす影響を順次解析していく。