著者
増田 元香 松田 ひとみ 橋爪 祐美
出版者
福島県立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、高齢者の睡眠覚醒障害に対する生活方法の提案を意図し、看護の観点である生活リズムの調整、すなわち活動と休息の適正化を目指した看護介入プログラムの開発である。前年度までに、地域在住の活動的な高齢者の日常生活の特徴として、定期的な運動習慣を有するものが多く、日常生活行動は自立し趣味や菜園作りなど活発に活動していること、そのような高齢者の夜間の睡眠の特徴としては、夜間の覚醒回数が1回以上の人がほとんどであったこと、再入眠の状況については個人差がわかった。また飲酒習慣がある高齢者では飲酒量と入眠までの時間と睡眠の質を示す睡眠効率との間に関連があることがわかった。また日内活動の調整の観点から日中の活動状況を分析すると、昼寝習慣の有無や所用時間に個人差がみられた。昼寝時間が夜間の睡眠の質に関連していると考え調べたところ、夜間のトイレ回数が多い人は少ない人に比べ有意に昼寝時間が長いことが明らかになった。これらの成果をふまえて高齢者の睡眠の質を高めるための看護を検討した。そのためには、日中の活動内容を十分に把握し、どのような活動の特徴を持っているか、夜間の睡眠の質に関係する夜間排尿の状況と再入眠の状態、飲酒習慣とその量や主睡眠までの状態を評価することが重要である。さらに昼寝習慣のみならず、昼寝時間の長さ、および夜間の覚醒回数を関連して観察し、さらに夜間の覚醒している理由について、排尿なのか、それ以外なのかを把握し看護する必要があると考えられた。しかしながら、高齢者の睡眠の質に関連する生活習慣や要因の出現には個人差が大きいため、一律化することよりむしろ、個別性の高いケアの必要性が高く、その充実を図ること、すなわちアセスメント項目や生活リズムの調整方法の選択肢の充実のが看護プログラムを開発する上で重要性であると示唆された。
著者
武田 敬 佐々木 道子
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

(1) これまで立体化学的に極めて不安定なため発生が不可能と考えられてきた鎖状ニトリルのα-キラルカルバニオンの発生および炭素求電子剤による捕捉 (er = 90:10)に成功した.(2) ヒドロキシアリルシランの Brook 転位を経る SE2'型のプロトン化反応を利用し,電子求引性置換基 X が隣接位のキラルカルバニオンのラセミ化に及ぼす影響を半定量的に評価する方法を開発した
著者
坂本 瑞樹 徳永 和俊
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

水素透過粒子束の実時間測定システムを製作し、厚さ0.1mmのタングステン試料に重水素プラズマを照射して、試料表面状態の変化に起因していると考えられる水素透過フラックスの減少を観測した。また、厚さ0.1mmのタングステン基板に約280nmのイットリウム薄膜と約20nmのパラジウム薄膜を蒸着させた試料を作成し、試料表面への水素導入に対して光反射率が可逆的に変化することを示した。水素透過フラックスシステムとの組み合わせにより実時間の動的リテンション計測が可能となることを示すことができた。さらに、結晶粒の延びの方向が表面に対して垂直のタングステン試料の重水素吸蔵量は、平行の試料よりも重水素吸蔵量が2~10倍高いことを明らかにした。これは結晶粒界を通した実効的拡散係数の違いに起因していると考えられる。
著者
高橋 修平 川村 彰
出版者
北見工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

積雪地域の冬期間交通路で大きな問題である路面凍結を検知するシステムを試作開発した。検知装置は入射角45°のLED光源,天頂センサー,反射角45°センサーからなり,拡散反射および鏡面反射を求めた。スリップ事故の原因となる光沢路面は鏡面反射率から判別でき,ブラックアイスバーンは鏡面反射と拡散反射の比から抽出できた,道路上の観測は,北見市内、陸別町,国道39号山間部(石北峠)等で行い,良好な結果を得た
著者
宮崎 徹
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

小児の先天性代謝疾患で頻度が高いプロピオン酸血症(PA)は、Propionyl-CoA calboxylase (PCC)が欠損もしくは機能が低下する劣性遺伝病である。特定のアミノ酸・脂肪酸の代謝不全により中間代謝産物が蓄積するため、出生後ミルク摂取によりケトアシドーシスを呈し最悪の場合死に至る。PAの治療法は栄養制限療法が主であるが、低栄養による様々な副作用の併発などにより予後は必ずしも良くない。肝移植が一定の効果をあげているとはいえ、長期的予後の判定は今後の課題であり、患者にとっての侵襲は小さくない。私たちは、以前、新たな根治的治療法の開発としてPCCa鎖(PCCA)遺伝子をノックアウトすることにより、PAモデルマウスを確立した。さらに、このマウスの肝臓に正常の15%の酵素活性を戻すだけで症状が著しく改善することを証明した。この成果をもとに本申請研究では、非ウイルス性のナノ・ミセルを用い、患者胎児の肝臓にPCC遺伝子をデリバリーする胎児治療法を提案し、その効果と安全性についてモデルマウスを用いて実証を試みた。1.ナノ・ミセル型遺伝子ベクターの作製・最適化東京大学工学系研究科・片岡一則教授の協力のもと、まずは予備実験としてGFP遺伝子発現プラスミドDNAをポリエチレングリコールの外殻で被ったナノ・ミセルベクターの最適化を行った。2.GFP発現ベクターを用いた胎仔肝臓での発現に関する予備実験次に、妊娠メスマウスを麻酔下で腹側より子宮を露出し子宮壁を一部切開し、羊膜上血管からGFP発現ベクターDNAを封入したナノ・ミセルベクター溶液を注入した。注入後、経時的に肝臓を摘出し、組織標本を作製・観察したところ、導入したGFP遺伝子は注入後1日で発現が確認され、2週間以上持続した。本研究により、ナノ・ミセルベクターによる胎仔肝臓への遺伝子デリバリーとその遺伝子発現がマウスにおいて可能になった。今後は実際にPCC遺伝子をノックアウトマウスへ導入し、PA治療への効果を検証したい。
著者
有吉 誠一郎 田井 野徹 寺嶋 亘 大谷 知行
出版者
名古屋工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、超伝導トンネル接合素子(STJ)の新しい作製法を用いて究極感度の検出デバイス実現へ向けた技術的基礎を築くことにあった。具体的には、従来の多結晶成膜法(スパッタ法)に代わり、単結晶成膜法(分子線エピタキシー法)を導入し、原子層レベルで平坦なトンネルバリア界面を形成することで超低雑音特性をもつAl系STJ素子の作製技術を検討した。まず、Al単層膜の成膜時にはAl203(oool)とsi(111)の2種の基板を用いた。反射高速電子線回折(RHEED)や原子間力顕微鏡等を用いて薄膜の結晶性と平坦性を多角的に評価した結果、平坦性と結晶性の両立の観点から成膜時の基板温度は約100℃が適していることが分かった。次に、MgOをトンネル障壁とする3層膜をSTJ素子に加工し0.3Kに冷却して電流電圧特性を評価した結果、STJ素子の臨界電流密度は15.5~ll7A/cm2、素子品質の指標の一つであるR、g/R、は4.0~60.2であり、良好な特性を有する3層エピタキシャルSTJ素子を実現した。
著者
熊谷 純
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

細胞の存在する状態で放射線照射された培養液を回収し、その被ばく培養液を被曝していない細胞のフラスコへ移し処理すると、被ばくしていない細胞中に放射線影響を受けたかのような挙動を示すものが現れる。これは、培養液を介したバイスタンダー効果と呼ばれ、照射された細胞(ドナー細胞)から分泌されたバイスタンダー因子が、別のフラスコの未照射細胞(レシピエント細胞)に作用して起こる現象と理解されている。我々はバイスタンダー培養液をレシピエント細胞に24時間作用させると、遅発性長寿命ラジカルが生成して突然変異頻度が上がることを見出した。バイスタンダー培養液に24時間晒されたレシピエントCHO細胞では、ドナー細胞の吸収線量が1Gyの場合、ラジカル濃度がそれぞれ27%有意に増加することを見出した。この増分が遅発性長寿命ラジカルにあたり、その濃度はおよそ130pMと見積もられた。ドナー細胞がない場合は培養液を照射してもラジカル濃度は増加しなかった。ドナー細胞の入った系にミトコンドリアの電子伝達阻害剤Myxothiazolで照射前に2時間処理すると(0.5μM)、レシピエント細胞中のラジカル濃度は増加しなかった。従つて、照射されたドナー細胞中のミトコンドリアの機能不全が培養液へのバイスタンダー因子の放出に関与していると考えられる。バイスタンダー培養液にアスコルビン酸(AsA:1mM)を加えると、ラジカル濃度の増加は抑制され為が、NAC(5mM)の場合は抑制されなかった。突然変異頻度試験においても、AsA添加によって突然変異頻度は有意に下がったが、NACを添加しても下がらなかった。本結果はバイスタンダー効果によって誘発された遅発性長寿命ラジカルがAsAによって消去されて突然変異が抑制されたと考えられ、遅発性長寿命ラジカルが直接あるいは間接的に突然変異誘発に関与していると示唆される。
著者
井本 逸勢 中屋 豊 二川 健 田嶋 敦
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

Wistar系ラットから樹立された高運動習性動物モデルであるSPORTS(Spontaneously Running Tokushima-Shikoku)ラットを対象に、高運動習性の表現型形成の分子基盤を解明することを目的に、次世代シーケンサーを用いた全エクソン配列解析、連鎖解析、ならびにデータベースを用いた選択アルゴリズムから新規に構築するラットゲノム解析パイプラインを駆使することで、未同定の原因遺伝子のスクリーニングを行い、候補遺伝子群を得るとともに、モデルラットの表現型関連遺伝子のスクリーニングツールとシステムを確立した。
著者
川上 光彦 沈 振江
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では,地方自治体における行われている中心市街地活性化政策などの計画政策の効果を検証する計画支援ツールとして,マルチエージェントシステム(以下,MAS)を用いて,土地利用計画支援モデルを開発し,その適用により有効性の検証を行う.具体的には,大型店の立地と各世帯の購買行動をシミュレーションし,中心市街地の商業への影響を提示できる計画支援システムの開発を行う.今年度では、研究事項3シミュレーションシステムの構築と検証-商業施設と購買行動研究事項4シミュレーションシステムの構築と検証-住宅の立地活動研究事項5シミュレーションシステムの構築と検証-土地利用パターン以上の研究事項を行い、特に研究事項3~5について、金沢市を事例として、国土数値情報や国勢調査などにより、1980年代から2000年代までの商業施設の立地や世帯の変遷を調べた。シミュレーションシステムの構築には,これまで、実際の都市空間をシミュレーションシステムへ導入できるように、システムを改良し、マルチエージェントシステムを用いた世帯エージェントの交通行動と購買行動に関するシミュレーションシステムを開発した。関連研究は、国際会議では3編の論文を発表した。なお、中国の北京市を対象に、研究事項5との関連で、北京市の都市成長シミュレーションを行い、中国語で「地理学報」で、英語で国際誌Environment and Planning B, Planning and Designで、査読論文2編が採用された。
著者
佐藤 栄作
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

日本語研究の最新の成果である「役割語」の視点を導入して、「写生」・写生文を見直した。俳句実作者と俳句評論家を中心に、近代文学研究のテーマとして議論される「写生」について、日本語研究も加わって論じる場を立ち上げた。まず、「写生」とは固定観念から主体を解放することを前提とするから、その実践である写生文は「役割語」とはなじまないことが確認できた。しかし、写生文の中の方言は「役割語」ではないとか、写生文の方言だけは資料として第一級だとはいえない。写生文においても、使用された方言の資料価値は、作品個々の問題であるという結論に至った。
著者
大槻 毅
出版者
流通経済大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

本研究では,中高齢者のべ 243 人を対象に,24 時間血圧,起床後 2時間における収縮期血圧(SBP)の上昇(モーニングサージ),筋力づくり運動(抵抗性運動)時およびウォーキング時の血圧を測定し,日常生活における身体活動量および体力との関連を検討して,以下の知見を得た.1.24 時間における SBP の平均値およびモーニングサージと運動時の心拍数上昇との間に正の相関関係が認められた2.就寝時における SBP の最低値と身体の柔軟性との間に正の相関関係が認められた.3.抵抗性運動時の SBP 上昇は,加齢に伴い増大したが,日常生活における身体活動量が多い者では小さかった.4.ウォーキング時の SBP 上昇は,より高齢の世代では気温が低い日に,比較的年齢が低い世代では体格指数(BMI)が高い者で大きい傾向にあった.
著者
秋山 英文
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

高い精度で生物化学溶液発光の絶対定量分光計測を行うための技術装置開発を進め、量子収率の評価や、種の異なる生物など様々な発光酵素にまたがった発光スペクトルの直接比較を行えるようにし、古くから関心の的でありながら未だ理解されていない、ホタル生物発光の発光色決定機構の解明に迫ることが本研究の目的である。産業技術総合研究所・光放射標準グループによって国家標準トレーサブル校正が行われたフォトダイオードと、併せてダングステンランプおよび干渉フィルターを用いた光源を用いて校正を行い、0.29%の集光効率と約5.7%の分光器透過率を経てCCD検出器で19フォトン/カウントの絶対感度で生物発光絶対量分光計が行えるようになった。天然北米産ホタルの精製ルシフェラーゼを用いて、ホタル生物発光の量子収率計測のpH依存性と温度依存性の実験を行い、我々自身による過去の測定値41.0±7.4%に近い、47.1±6.5%という値を得た。天然北米産ホタルの精製ルシフェラーゼを用いて、通常のMgの代わりに、Zn、Cd、Ni、Co、Ca、Mnなどの金属イオンを付加したことによるスペクトル変化の定量計測を行った。Ca、Mnでは、Mgの場合と同様に色変化は起きなかったが、Zn、Cd、Ni、Coを添加した場合には、pH依存性の結果と同様に、緑側の発光成分の量のみが金属イオン量に応じて変化し、赤側の発光成分は変化しないという兆候が見られた。また、発光スペクトルが、1.85eV、2.0eV、2.2eVにピークをもつ3つのガウス型ピークに分解する解析が可能であることもわかっているので、発光スペクトルをピーク強度、位置、幅の3つのパラメータとして数値化して整理し、金属イオン依存性を定量的にプロットした。色変化の感度の大小は、Mg、Ca、Mn<Co、Ni<Zn、Cdのような序列に従っていることがはじめて明らかになった。
著者
内山 靖
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

薄暗い視覚環境下では、 明所と比較して姿勢調節機構が低下しており、むしろ閉眼時よりも姿勢調節の緻密さが低下していた。また、視認性が低下しているにもかかわらず、明所と類似した歩行戦略を選択していることが明らかとなった。本研究から、薄暗い環境では姿勢調節にかかわる情報処理過程が複雑であるために機能不全が顕在化しやすく、これらの点から臨床評価指標を開発することの妥当性が示唆された。
著者
國武 國武
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ブルーベリー葉におけるアントシアニン生合成において、光照射時の温度や光源が大きな影響を与えることが明らかとなった。また、葉においてはシアニジン系のアントシアニンが主として生合成され、アントシアニン生合成の制御機構が、果実とは異なる可能性が高いことが分かった。cDNA サブトラクションおよび degenerated PCR により 9 個のアントシアニン生合成関連遺伝子を単離することに成功した。アントシアニン生合成遺伝子の多くは、24 時間程度の強光照射により、発現が増加した。アントシアニン生合成機構は、光ストレスからの防御のため、素早く反応している可能性が高い。
著者
越後 成志
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

当研究科で開発した骨再生材料であるoctacalcium phosphate(OCP)と豚皮膚由来のアテロコラーゲンとの複合体は自己修復不可能と言われる骨欠損へのインプラントで骨架橋を形成したが、組織学的所見で、僅かではあるが母床骨と異なっており、形成された骨が歯科矯正的な歯の移動に際し障害を与えることが考えられた。そこで、イヌに人工的な顎裂を形成し、顎裂部へ骨再生材OCP/Collagen埋入後、イヌ自身の骨髄穿刺液を播種した群と播種しない群とで骨形成を比較することを目的とし実験した。その結果、骨再生材料(OCP/Col)へ骨髄穿刺液を播種した群の骨形成がよりよい骨形成が得られた。
著者
松下 大介 藤野 修 川北 真之 高木 寛道
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

穴あき円盤の上の滑らかなアーベル多様体の族, あるいは底空間を高次元化した多重円盤から座標軸にあたる超平面を除いたものの上の滑らかなアーベル多様体の族を底空間の穴あるいは除いた超平面の上まで延長した族を構成することに成功した. この問題は1980年代には考察されていた問題ではあったが, 満足出来る証明がこれまで与えられてこなかったため, 関連する問題に不自然な技術的な仮定を付けざるをえないものが多くあり, この成果を利用することで, 関連するいくつかの結果を改良することが見込まる.
著者
山岡 テイ 石井 富美子 谷口 正子 森本 恵美子 佐野 友恵 榎井 縁 野澤 義隆 臧 俐 孔 秉鎬 翁 麗芳 王 美平
出版者
立正大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

11言語の質問紙による「第2回多文化子育て調査」を実施し、77カ国籍2065人の園児の保護者から日本での子育てや園生活の現況と子育て支援への意見を得て考察した。園や関係諸機関へ分析結果を報告し日本語と英語のHPを公開している。加えて、日本・韓国・中国・台湾の現地で同様の調査票による国際比較を行い多元的に検証した。5つの子育て調査研究(N=7,863)の背景となる各国の保育教育政策や社会変動の現状、保護者が望む子育て支援などを報告書にまとめて、相互に情報を共有化した
著者
山岡 哲二 斯波 真理子 馬原 淳
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本プロジェクトでは、代謝のアンバランスからもたらされる様々な疾患を治療する"DNCS, Drug Navigated Clearance System"という新たな治療概念の実証に挑戦している。その基本的原理は、これまでのDDS研究には類を見ない「生体内病因物質を、生体が備えている別の分解・排泄機構へと誘導する」ことによる疾患の治療法である。まず、高脂血症治療を目指して、血中LDL分子を肝細胞アシアロオロソムコイドレセプターに誘導するシステムの構築を進め、モデルマウスを用いたin vivoでの効果の検証に成功してきた。昨年度は、拡張型心筋症の治療を目指した自己抗体の除去について同様の検討を実施した。その結果in vitroにおいては有効な幹細胞による体ゲット抗体の取り込みを確認したために、この治療効果を実証するための動物モデルの作成を進めてきた。すなわち、血中抗体価が低下することで、その症状の軽減をモニターできるシステムである。また、抗体を直接肝細胞へ誘導するシステムに加えて、体内のLDL分子をメディエータ分子として利用することで、単純な分子で目的抗体を肝細胞へ誘導することが可能となっており有望なシステムと考えている。現在、有効な動物モデルの作成には至っておらず、そのin vivo検証ができない状況である。しかしながら、特異的な抗体の幹細胞への誘導効率は飛躍的に向上しており、今後、他施設の動物モデルも検索した上で、in vivoにおける治療実験を進める。
著者
戸所 隆
出版者
高崎経済大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

地域主権の視点から知識情報社会の国土形成に適した大型公共事業・社会基盤整備の在り方を研究した。この研究は従来の中央集権型地域政策でなく地方分権型地域政策の視点から、国土政策の思考過程を都市の論理と村落の論理の対立から両者を止揚して把握することに努めた。具体的には八ッ場ダム建設や新幹線建設などを例に、大型公共事業の整備やその建設中止・延期が地域づくりや国土構造形成に与える影響を研究し、地域主権に基づく地域開発哲学の在り方を検討した。その結果、次の結果を得た。工業化社会から知識情報化社会への転換し、人口縮減時代に入った日本は、市民も行政も混乱しており、国民、とりわけ若者に夢と希望を持って住みたい・働きたい社会・まちを創ろうとする新しい開発哲学・まちづくり哲学が不可欠となっている。かかる開発哲学に基づいた地域論の構築には、"ものづくり"中心の社会構造から"ものづくり"を基盤に"ひとづくり"・"時間づくり"に重点を移した社会構造にする必要がある。また、交流・情報・文化・創造・個性化・コンパクト化・国際化・多様化・ボーダレス化・地域連携をキーワードに、地域性を無視した大規模開発から地域資源を活かした地域づくりへの転換が求められる。かかる開発手法は、資本の論理・生産者の論理・強者の論理による地域経営から地域の論理・消費者の論理・弱者の論理に重点を置いた地域経営への転換を意味する。そのためには統治形態を中央集権型から地方分権型へと転換させ、地域主権を確立するための新たな開発哲学を創造する必要がある。また、新たな開発哲学に基づく地域づくり・まちづくりに努め、21世紀のあるべき国のかたちへと日本を再構築しなければならない。東日本大震災の復興には新しい開発哲学に基づいた復興グランドデザインを構築して推進する必要がある。そのためにも、この開発哲学に関する研究を更に深化させることが重要である。
著者
刑部 育子 戸田 真志 植村 朋弘
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、実践者(教師や保育者)と研究者が共に日常の教育実践や保育活動記録を気軽に共有でき、実践を協働でデザインすることを支援するインターフェイスを構築することを目的としている。インターフェイス・デザインの分野ではデザイナがユーザとともにモノとのかかわりを含めた活動文脈を有し、経験する「参加共有型デザイン(participatory design)」が行われ始めている。この手法を保育・教育実践に応用することで、実践者とともに保育(教育)実践および記録をその日のうちに共有し、新たな実践を共に日常的に創造することを支援するインターフェイスの開発を目指した。本年度は研究計画3年間の最終年であり、観察ツールを実践において使用し保育デザインの循環を構築した。本年の成果の特記事項として、昨年度の試作版ツール開発に関する受賞に続き、拡張版ツール開発における成果が国際教育工学系会議ED-MEDIA2009で発表した結果、657の採択論文のうちの18の受賞論文の一つとして選ばれ、二年連続で受賞したことである(Gyobu, Toda, Uemura, & kudo, 2009)。このツールを実際の保育実践の場で年間の園内研究会で使用した実績も大きな成果であった。実際に使用した結果として、このツールによる、その日のうちに即時の重要な活動のシーンの共有が園内研究会における話し合いを焦点化、活性化させる効果がみられ、複数の人々との議論における、言葉のみの議論にありがちな言葉によるすれちがい、イメージのずれを解消し、建設的な「場面」に基づく事実による保育実践の話し合いが可能となった。