著者
柳井 晴夫
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.145-160,190, 1967
被引用文献数
2

1.大学における9つの系への適性診断検査を作成するために, 性格, 興味, 能力, 職業への関心, 高校教科の得意, 不得意の45の尺度からなる適性検査を大学の専門課程に学ぶ480名の学生に実施した。<BR>2.これらの被験者のうち, 現在学んでいる自分の専門にじゆうぶん適応していないとおもわれる人を除外し, 残つた人を9つの系の基準群として, これらの人が自分の所属している系に, 最も近く診断されるように多重判別関数方式, 因子分析方式による診断方式に従つて診断を行なつた。<BR>3.多重判別関数方式による診断によると, 9つの系は, 4つの因子でかなり明確に分離され, 各人の8つの因子得点と9つの系の重心との距離を測つて, 最も距離の短くなる系を最も適している系とする診断方式によつて, 基準群被験者360名のうちの76.1%が自分の所属する系に最も適していると診断される結果がえられた。<BR>4.因子分析の主因子解によつてえられた因子得点に基づく診断は, 多重判別関数方式による診断よりかなり精度が低いことが判明した<BR>5.距離の算出においては, 多重判別関数方式では市街モデルの方が, 因子分析方式がユークリッドモデルの方がより精度の高い診断がされた。<BR>6.多重判別関数と因子分析によつて得られる函子構成にはかなりの相違がみられる。<BR>6.自分の現在学んでいる専門にじゆうぶん適応できていない人の90%近くは, 自分の所属している系に遠いと診断され, 自分の現在学んでいる専門に比較的適応できていて, 自分の所属している系に遠いと診断された人は14名前後である。これらの結果から, 全体的にみてかなりの高い精度の診断の結果が得られたといえる。 (多重判別関数方式の市街距離モデルによる診断)<BR>7. 1人の例外もなく誤つた診断がされないようにしていくためには, テスト尺度の構成や新しい診断の理論方式についての検討が行なわれていかなければならない
著者
村上 達也 西村 多久磨 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.156-169, 2016 (Released:2016-08-08)
参考文献数
43
被引用文献数
1 10

本研究の目的は, 小学生および中学生を対象とした対象別向社会的行動尺度を作成し, その信頼性と妥当性を検討することであった。小学4年生から中学3年生までの1,093名を対象とし質問紙調査を実施した。探索的因子分析の結果, 家族に対する向社会的行動, 友だちに対する向社会的行動, 見知らぬ人に対する向社会的行動の3因子を抽出した。加えて, 確認的因子分析により, 向社会性という高次因子を仮定したモデルが最終的に採択された。対象別向社会的行動尺度の内的一貫性および再検査信頼性係数は十分に高いことが確認された。中高生版向社会的行動尺度, 共感性尺度, 自己意識尺度, 学級生活満足度尺度といった同時に測定した外的基準との関連が概ね確かめられた。また, 尺度の内容的妥当性についても確認された。尺度得点に関しては, 男女差がみられ, 女子の得点の方が男子の得点よりも高いことが確認された。また, 学年差に関して, 概ね, 小学生の得点の方が中学生の得点よりも高いことが確認された。最後に, 本尺度の利用可能性について考察されるとともに, 今後の向社会的行動研究に関して議論された。
著者
市川 玲子 外山 美樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.228-240, 2016 (Released:2016-08-08)
参考文献数
39
被引用文献数
3

自己愛傾向と対人恐怖心性は, 自己愛性パーソナリティ障害の下位概念との近似性があり, 共通して恥の感じやすさとの関連が考えられる。本研究は, 特に恥が喚起されやすい他者の面前での失敗場面において, 自己愛傾向と対人恐怖心性の高低による5類型間の, 自己呈示欲求(賞賛獲得欲求, 拒否回避欲求)が失敗経験後に生じる感情(恥, 敵意, 抑うつ)に及ぼす影響の差異を明らかにすることを目的とした。大学生を対象とした質問紙調査を実施したところ, 368名が分析対象者となった。分析の結果, 失敗場面は2因子に分類され, “自分の失敗場面”と“他者からの指摘・叱責場面”が抽出された。そして, “他者からの指摘・叱責場面”では, いずれの類型においても失敗経験後の恥が抑うつに寄与するが, 自己愛傾向のみが高い誇大型と, 対人恐怖心性のみが高い過敏型において特に拒否回避欲求が恥に強く影響していることが示された。これらの結果から, 自己愛傾向か対人恐怖心性のいずれかが高い類型では特に, 他者の面前での失敗経験後の恥は評価過敏性の影響を強く受けており, 失敗を自己全体に帰属することで自己評価が著しく傷つけられ, その結果として抑うつが強く喚起されることが示唆された。
著者
竹内 謙彰
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.47-53, 1992-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
7 28

The purpose of this study was to construct Sense of Direction Questionnaire-Short Form (SDQ-S), and investigate its relationship with geographical orientation, personality traits and mental ability. 532 undergraduate students (female 373, male 159) were administered SDQ-S, and the results were factor-analyzed using the principal factor method and varimax rotation. Two factors, i.e., awareness of orientation Factor I, and memory for usual spatial behavior Factor II, could be identified from 17 items (9 items to Factor I and 8 items to Factor II). The reliability of the questionnaire was tested on the same subjects using internal consistency and split-half methods. The relations between sense of direction and geographical orientation based on 70 subjects suggested the concurrent validity of SDQ-S. Also, 47 subjects (female only) helped examining the influence of personality traits and mental ability on sense of direction.
著者
坪井 裕子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.110-121, 2005-03-31
被引用文献数
4 4

本研究の目的は児童養護施設に入所している虐待を受けた子どもたちの行動と情緒の特徴を明らかにすることであった。児童養護施設に入所中の子ども142人(男子: 4〜11歳40人, 12〜18歳45人, 女子: 4〜11歳25人, 12〜18歳32人)を対象に, Child Behavior Checklist (CBCL)の記入を職員に依頼した。その結果, 女子は男子に比べて内向尺度得点が高く, 特に高年齢群女子は身体的訴えと社会性の問題の得点が高かった。被虐待体験群(n=91)と被虐待体験のない群(n=51)に分けて比較したところ, 社会性の問題, 思考の問題, 注意の問題, 非行的行動, 攻撃的行動の各尺度と外向尺度, 総得点で, 被虐待体験群の得点が有意に高かった。被虐待体験群は, 社会性の問題, 注意の問題, 攻撃的行動, 外向尺度, 総得点で臨床域に入る子どもの割合が多かった。虐待を受けた子どもの行動や情緒の問題が明らかになり, 心理的ケアの必要性が示唆された。
著者
山森 光陽
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.206-219, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
62
被引用文献数
3 4

学級規模, 学習集団規模, 児童生徒—教師比の問題は教育政策上大きな関心が寄せられている問題であり, 諸外国では教育心理学をはじめとした教育に関係する様々な学問領域における知見の蓄積と, それらの政策への反映が見られる。しかし, 日本の教育心理学においては, これらの問題について十分に論じられてきたとはいえない。この展望論文では, 児童生徒の学習行動や個人差とそれらの変化を研究対象の一つとしている教育心理学においてこそ, 学級規模等の研究に取り組む必要があることを議論する。そのために, 日本における学級規模等の縮小を目的とした政策の展開を概観し, 国内外の学級規模等に関する研究のうち, 特に児童生徒に与える影響を検討した研究の動向をまとめ, 日本の学校の特質を考慮すると諸外国の知見の日本における適用可能性が低いことを指摘する。そのうえで, 望ましい学級規模や学習集団編制の在り方の検討材料となり, また指針を示しうる教育心理学的研究を実現するための着眼点を提示し, 今後取り組まれるべき研究課題を展望する。
著者
中西 信男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.8-16,65, 1969
被引用文献数
1

(1) 反抗の行動類型は1かんしやく型 (1:0~1:11が最高), II攻撃型 (3:0~3:11が最高), III言語型 (9:3~10:2が最高), IV緘黙型 (11:3~12:2が最高) の順にあらわれ, IVはその後, 青年期にまで持続される傾向を示している。<BR>(2) I, IIの行動的反抗とIII, IVの言語的反抗の類型は5才台では両型とも40~50%の出現率を示しているが, その後, 行動的反抗は漸次減少し, 言語的反抗がしだいに顕著になる。<BR>(3) I, IIの行動類型が児童後期まで持続されるときは神経症的反抗または逸脱した問題行動と考えることができる。<BR>(4) しばしば反抗がくり返される場面は睡眠, 排泄, 食事, 離乳, 服装, 生活空間の拡大, 経済, 遊戯, 非行, 家事, 学業, 娯楽の選択などの各領域においてみられる。<BR>(5) このうち, 1才児においては睡眠, 排泄, 食事習慣, 離乳, 行動空間の拡大などの基本的身体的習慣形成に関する反抗がみられ, 3才児では経済, 遊戯, 家事などに関する反抗がそれに加わる。4才になれば1才児にみられた身体的習慣形成に関する多くの反抗が消失するが, 5才以後, 衣服の選択, 学業, 家事, 娯楽の選択などに関して反抗が増加する。<BR>(6) しかし同じ食事場面の反抗でも1才児では基本的食事習慣に関するものがみられ, 4才以後ではこれらのかわりに食物の嗜好に関する不平が増加する。同様なことは生活空間の拡大についてもいえる。子どもの行動半径が拡大されるにつれて, 寝台から子供部屋へ, 家の周辺部へ, さらに近隣へと葛藤場面が移行している。<BR>(7) 反抗が頻発する場面の発達的変化は児童の運動能力の成長, 社会性の発達, それにともなう子供に対する親の期待の変化, 児童の成長にともなう決定領域の拡大とそれによつておこる家族内の不安定な力関係とに密接な関係がある。<BR>なお本研究は昭和32年度民主教育協会調査研究援助費によつて行われたものである。
著者
栗山 直子 上市 秀雄 齊藤 貴浩 楠見 孝
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.409-416, 2001-12-30

我々の進学や就職などの人生の意思決定においては,競合する複数の制約条件を同時に考慮し,理想と現実とのバランスを満たすことが必要である。そこで,本研究では,高校生の進路決定において,意思決定方略はどのような要因とどのような関連をもっているのかを検討することを目的とした。高校3年生359名に「将来の目標」「進学動機」「考慮条件」「類推」「決定方略」についての質問紙調査を実施した。各項目の要因を因子分析によって抽出し,その構成概念を用いて進路決定方略のパスダイアグラムを構成し,高校生がどのように多数存在する考慮条件の制約を充足させ最終的に決定に達するのかの検討を行った。その結果,意思決定方略には,「完全追求方略」「属性効用方略」「絞り込み方略」「満足化方略」の4つの要因があり,4つの要因間の関連は,「熟慮型」と「短慮型」の2つの決定過程があることが示唆された。さらに,「体験談」からの類推については,重視する条件を順番に並べて検討する「属性効用方略」の意思決定方略に影響していることが明らかになった。
著者
井上 正明 小林 利宣
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.p253-260, 1985-09
被引用文献数
29 35

This paper presents a survey of the research domain and scale construction of adjective-pairs in a Semantic Differential Method in Japan. 233 papers or articles using Semantic Differential to measure the meanings or images of the concepts were collected. Among the collected articles 99 papers using factor analysis on scales were examined. From the point of factor analysis on the adjective-scales 382 pairs were collected. Also 68 effective scales having high frequencies in the Semantic Differential study were examined. On the bases of these results, 68 proper scales fitting to measure the meanings or images of self-concepts, ideas of children, and personality cognition were hypothetically constructed.
著者
長濱 文与 安永 悟 関田 一彦 甲原 定房
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.24-37, 2009-03-30 (Released:2012-02-22)
参考文献数
44
被引用文献数
10 14

本研究の目的は, 協同作業の認識を測定する尺度を開発し, その信頼性と妥当性を確認することであった。まず研究1において, 大学生と専門学校生1,020名を対象として探索的な因子分析をおこなった。その結果, 協同作業の認識は, 協同効用, 個人志向, 互恵懸念の3因子18項目で構成されていることが示された。確証的因子分析をおこなった結果, 3因子モデルの十分な適合度が示された。そこで, この3因子からなる尺度を協同作業認識尺度とした。研究2では, 大学生と専門学校生2,156名を対象に調査をおこない, 3因子の併存的妥当性を検討した。また, 研究3では, 協同学習を導入した授業を受講した97名の大学生を対象に, 3因子の介入的妥当性と予測的妥当性を検討した。研究2と研究3の結果より, 協同作業認識尺度を構成する3因子の妥当性を確認することができた。最後に, 協同学習の実践場面における協同作業認識尺度の活用法や今後の課題について考察した。
著者
山内 香奈 菊地 史倫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.131-143, 2016 (Released:2016-04-11)
参考文献数
47
被引用文献数
4

本研究は, 鉄道輸送障害時における鉄道従業員のアナウンス業務にみられる慣習的行動を目標行動へと主体的に変容させるための職場研修(DVD教材の視聴)を取り上げ, 研修の効果の持続性を高めるフォローアップのあり方を不等価4群事前事後テストデザインの準実験により検証した。首都圏の鉄道会社1社の543名に対し, 4つのフォローアップ条件(GS : 教材視聴直後に目標設定を要請, FB : 教材の視聴前後の同僚の意識や行動の変化を視聴から3か月後に提示, 併用 : GSとFBの併用, 統制 : フォローアップなし)のいずれか1条件を職場単位で実施し, 目標行動に対する態度, 主観的規範, 行動意図の3つの心的変数と目標行動の実践状況を質問紙調査により複数回, 測定した。研修前と研修から6か月後を比較した結果, (1) 心的変数の変化量はいずれも統制群に比べGS, FBの各群で有意に大きくなり, (2) 目標行動の実践率は, 研修前に目標行動がとれているか否かにかかわらずFBによる促進効果が他の条件に比べ高い可能性が示された。最後に, 心的レベルと行動レベルでの有効性が示唆された本研究で実施したFBの効果を更に高めるための教育的工夫について提案した。
著者
植木 理恵
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.301-310, 2002
被引用文献数
16

本研究の目的は, 学習方略との関連から高校生の学習観の構造を明らかにすることである。学習観を測定する尺度はすでに市川 (1995) によって提案されているが, 本研究ではその尺度の問題点を指摘し, 学習観を「学習とはどのようにして起こるのか」という学習成立に関する「信念」に限定するとともに, その内容を高校生の自由記述からボトムアップ的に探索することを, 学習観をとらえる上での方策とした。その結果,「方略志向」「学習量志向」という従来から想定されていた学習観の他に, 学習方法を学習環境に委ねようとする「環境志向」という学習観が新たに見出された。さらに学習方略との関連を調査した結果,「環境志向」の学習者は, 精緻化方略については「方略志向」の学習者と同程度に使用するが, モニタリング方略になると「学習量志向」の学習者と同程度にしか使用しないと回答する傾向が示された。また全体の傾向として, どれか1つの学習観には大いに賛同するが, それ以外の学習観には否定的であるというパターンを示す者が多いことも明らかになった。
著者
竹島 克典 松見 淳子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.158-168, 2013-06-30 (Released:2013-10-10)
参考文献数
25
被引用文献数
3 1

本研究は, 小学校において, 抑うつ症状を示す児童の仲間との社会的相互作用を行動観察し, その対人行動の特徴と機能的関係を検討することを目的とした。自己記入式の抑うつ評価尺度を用いて抽出した抑うつ症状を示す高学年児童10名について, 学校内の2つの場面で行動観察を実施し, 仲間との相互作用について低抑うつ児童10名との比較を行った。観察1では, 学校の休憩時間に抑うつ症状を示す児童の自然観察を行った。観察2では, グループの問題解決課題場面を設定し, 抑うつ症状を示す児童と仲間との相互作用を観察した。その結果, 抑うつ症状を示す児童は, 自然場面において孤立することが多く, 仲間との相互作用が少ないことが明らかになった。また, 観察2の結果から, 抑うつ症状を示す児童は, グループ場面においても孤立・引っ込み思案行動が多く, 仲間とのポジティブな行動のやり取りが少ないことが明らかになった。さらに, 相互作用の逐次分析から, 抑うつ児の孤立・引っ込み思案行動の下では, 仲間の攻撃行動が起こりにくいことが示された。 これらの結果から, 児童の対人行動および仲間の行動との機能的関係について考察し, 子どもの抑うつに関する対人モデルを検討した。
著者
伊藤 武彦 田原 俊司 朴 媛淑
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.75-84, 1991-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2 3

In a Japanese agent-patient-action type sentence, an agent is marked by the nominative particle GA and a patient is marked by the accusative particle 0. The aim of the present study was to compare the cue strength of 0 with that of GA in sentence comprehension of agent-patient relations and to find their developmental process. Because 0 is semantically simpler than GA, it was hypothesized that (1) the cue strength of 0 was stronger than that of GA and (2) the acquisition period of the former particle was earlier than that of the latter in Japanese children. Eighty Japanese native speakers of 5, 6, 7, 9, 11, 13, 15 years old and adults were instructed to listen to simple sentences and to judge which noun was the agent in an act out method by using miniature animals and objects. Stimulus sentences consisted of 27 sentence types composed of word order×particle×noun animacy combinations. The results were compared with Ito and Tahara (1986). The hypotheses were both verified.
著者
小塩 真司
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.261-270, 2002-09-30
被引用文献数
25

本論文の目的は理論的に指摘される2種類の自己愛を考慮した上で,自己愛傾向の観点から青年を分類し,対人関係と適応の観点から各群の特徴を明らかにすることであった。研究1では511名の青年(平均年齢19.84歳)を対象に,自己愛人格目録短縮版(NPI-S),対人恐怖尺度,攻撃行動,個人志向性・社会志向性,GHQを実施した。NPI-Sの下位尺度に対して主成分分析を行い,自己愛傾向全体の高低を意味する第1主成分と,「注目・賞賛欲求」が優位であるか「自己主張性」が優位であるかを意味する第2主成分を得た。そして得られた2つの主成分得点の高低によって被調査者を4群に分類し,各群の特徴を検討した。研究2では,研究1の各被調査者のイメージを彼らの友人が評定した。384名を分析対象とし,各群の特徴を検討した。2つの研究を通して,自己愛傾向が全体的に高い群を,理論的に指摘される2種類の自己愛に類似した特徴を示す2つの群に分類可能であることが示された。
著者
中川 恵正
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.38-47, 1980-03-30

本研究は3コの実験からなっている。実験Iでは,併行弁別訓練事態において過剰訓練によって手掛り結合が形成されるか否かが,実験IIでは,手掛り結合に基づいて2コの弁別課題遂行間に相互作用が生じるか否かが,実験IIIでは,3コの弁別課題が併行して訓練される事態においても過剰訓練によって手掛り結合が形成され,そして相互作用が生起するか否かが検討された。 実験Iでは,32名の幼児は2コの弁別課題を用いた併行弁別訓練を受け,そして過剰訓練(24試行または0試行)を受けた後,テストを受けた。テスト条件: 群Iは2コの弁別刺激対の負刺激が互に入れ替る条件であり,群IIIは2コの弁別刺激対とともに原学習時の正刺激が残存し,負刺激がともに新しい刺激に替る条件であり,群IVは2コの弁別刺激対ともに原学習時の負刺激が残存し,正刺激がともに新しい刺激に替る条件であり,群IIは群Iと同じ条件だが,過剰訓練を受けない条件である。主要な結果は次の通りである。1,群I,IIIおよびIVの弁別遂行間に差がみられなかった。しかもこれら3群のテストでの弁別遂行は過剰訓練期間中の弁別遂行に比べてそこなうことがなかった。 2,群IIは他の3群に比べて弁別遂行が劣っていた。 実験IIでは,64名の幼児は2コの弁別課題を用いた併行弁別訓練を受け,過剰訓練(20試行または10試行と0試行)を受けた後,逆転学習の訓練を受けた。逆転学習条件: 全体逆転群は2コの弁別課題ともに同時に逆転された。部分逆転群は1コの弁別課題のみが逆転され,もう1コの弁別課題は逆転されなかった。分離逆転群は1コの弁別課題のみが逆転され,もう1コの弁別課題は除去された。統制群は原学習,逆転学習ともに1コの弁別課題の訓練を受けた。主要な結果は次の通りである。1,過剰訓練を受けたとき,全体逆転群は他の3群より早く,また分離逆転群と統制群は部分逆転群に比べて早く逆転学習を完成した。2,全体逆転群の逆転学習は過剰訓練によって促進され,分離逆転群および統制群の逆転学習も促進される傾向がみられたが,部分逆転群の逆転学習は遅延された。 実験IIIでは,60名の幼児は3コの弁別課題を用いて併行訓練を受け,過剰訓練(30試行と0試行)を受けた後,逆転学習の訓練を受けた。逆転学習条件:全体逆転群は3コの弁別課題ともに逆転された。部分逆転-I群は1コの弁別課題のみ逆転され,残りの2コの弁別課題は逆転されなかった。部分逆転-II群は2コの弁別課題がともに逆転され,もう1コの弁別課題は逆転されなかった。主要な結果は次の通りである。1,標準訓練条件下と過剰訓練条件下とにおいて,全体逆転群の学習の速度と部分逆転群(IおよびII群ともに)のそれとが逆関係になった。2,部分逆転群(IおよびII群ともに)の逆転されない弁別課題における誤反応は過剰訓練によって増大した。
著者
金田 茂裕
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.212-222, 2009 (Released:2012-02-22)
参考文献数
33
被引用文献数
3 2 1

本研究の目的は, 減法の求残・求補・求差の場面理解の認知過程について, 先行研究で使用された文章題に加え, 新たに作問課題を用いて調べ, それらの場面理解の難しさの程度と理由を明らかにすることであった。研究1(N=110)では, 式(6-2)と絵(求残・求補・求差の場面)を併せて提示し, 両方を考慮して適切な話を文章で記述することを小学1年生に求めた。その結果, 求残より求補, 求差の場面で正答率が低いことが示され, これらの場面理解は難しいという従来の研究の知見が確認された。さらに, 誤答内容を分析した結果, 場面間でその傾向が異なることが示され, 求補の場面では絵と対応しない誤答が多く, 一方, 求差の場面ではそれに加え, 式と対応しない誤答も多くみられた。同様の結果は, その4ヶ月後に実施した研究2(N=109)でも得られた。以上の結果から, 求補の場面では絵に表わされた全体集合と部分集合の包含関係を理解することが難しいこと, 求差の場面では式と絵の対応関係を考えることが求められる点が難しいことが示唆された。
著者
深谷 優子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.78-86, 1999-03
被引用文献数
1 2

本研究では, 生徒の学習を促進させる記述に改善するための, 実際的なテキスト修正の手法を提案する。ここで用いた手法はBritton & Gulgoz(1991)に由来するが, 本研究においてはそれを日本語のテキストにも適用可能で実用的となるように調整した。予備研究においては, その手法を中学校の歴史の教科書からの抜粋に適用し, 局所的な連接性がオリジナルテキストよりも高まるようにした修正テキストを作成した。実験では, テキスト該当箇所の内容をまだ学習していない中学1年生115人を2群に分け, 1群にはオリジナルテキストを, もう1群には修正テキストを呈示して学習させた。そして彼らの遂行成績を直後条件と遅延条件とで測定した。結果は, 修正テキストを読んだ群の方がオリジナルテキスト群よりもよい成績であった。この研究からの教育的示唆は以下の2点である。a) 新しい事項をテキストで学ぶときには, 局所的な連接性がよい(配慮されている)テキストを用いる方が, そうでないテキストを使うよりも生徒にとって恩恵がある。b) 本研究で用いた局所的な連接性の修正手法は, 教科書にも実際に適用可能であろう。
著者
柴田 玲子 高橋 惠子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.37-47, 2015 (Released:2015-08-22)
参考文献数
41
被引用文献数
2

人間関係をソーシャル・ネットワークとしてとらえて, 小学生の人間関係についての母子の報告のズレを検討するとともに, 母子の報告のズレと子どもの適応との関連を検討した。研究協力者は小学2~6年生(女児が47%)とその母親337組である。子どもの人間関係は集団式絵画愛情の関係テストで測定することにし, 子どもとその母親から独立に回答を得て母子の報告のズレを検討した。子どもの適応は小学生版QOL尺度によった。その結果, (1) 母子ともに愛情の要求の対象とする重要な他者を複数種あげたが, 子どもより母親の方があげた種類が多かった, (2) 子どもが報告した以上に母親は子どもにとって母親が重要だとし, 特に, 生存や安心を支える中核的な心理的機能を果たしているであろうとした, (3) もっとも頻繁に挙げられた対象が誰であるかを指標にして親しい人間関係を類型化すると, 類型についても母子の報告のズレは大きく, 母親の58%が子どもは母親型であろうとしたが, 子どもは24%にすぎなかった, (4) 母子の報告のズレの大きさは子どものQOLの低さと関連した。これらの結果にもとづいて, 子どもの人間関係における母子のズレの意味について論じた。
著者
吉野 巌 山田 健一 瀧ヶ平 悠史
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.83-83, 2015

62巻2号に掲載された「音楽鑑賞における演奏者の映像の効果―音楽心理学研究に基づく仮説の実践授業での検討―」の英文要約の中の誌名が誤っていたため,修正いたしました。