著者
野口 聡 田中 雄也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Suppl., pp.45-48, 2021-12-20 (Released:2022-02-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究では,人に教えるために書く活動において,その文章を書く方略を変えた理由や契機を明らかにする.その前提として,初期と19ヶ月後における書くための方略の出現単語の傾向から分析した.その結果,初期と19ヶ月の時点に差が見られた.そのため書くための方略を変えた理由や契機の自由記述をKJ 法で分類し,4つのカテゴリが生成された.「評価の意識」は学習評価に関わるもの,「失敗の予期や経験」「他の参考」は試行錯誤によるもの,「学びの気づき」は取り組むことの気づきに関わるものであり,それらによって書く方略を変化させたことが示唆された.
著者
稲垣 忠 嶺岸 正勝 佐藤 靖泰
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.Suppl., pp.109-112, 2008-12-20 (Released:2016-08-05)
参考文献数
7
被引用文献数
5

児童が自分の考えを説明する場面において,電子黒板はどのような影響を与えるのだろうか.本研究では,小学校高学年算数科「分数の掛け算と割り算」単元の授業実践において,電子黒板を利用した説明場面を対象に,質問紙調査,ビデオ記録,児童・教師へのインタビュー調査を実施した.その結果,電子黒板を用いることで書きながら説明する行動が観察され,聞き手は口頭での説明と比べ,より話者の考えを理解し,自分の考えと比較しやすいこと,また,手立てとして,画面上に配布資料と同じものを提示することが,書きこみや説明のしやすさをもたらすことが明らかになった.
著者
成田 忍 村田 貴彦 神武 直彦
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.295-304, 2021-12-20 (Released:2022-03-18)
参考文献数
17

本研究では,小学校高学年の探求学習における共同学習時の個人の発言量の偏りを減少させ,個人の発言量を増加させるグループ編成アルゴリズムを設計し評価した.アルゴリズムに児童の興味領域や能力,性格特性データを入力することで,1万通りのグループの組み合わせを作り,個人の予測発言量,グループ内の予測発言量平均値と発言の偏りを予測し,個人の発言量が増加する組み合わせを算出することが可能である.このアルゴリズムによる発言量の偏りの予測精度,発言量の偏り,個人の発言量変化の3つの観点から有効性を評価するため,埼玉県内の小学校で児童を対象に実際にこのアルゴリズムに基づいてグループ編成を行い,共同学習の発話の録音分析とその授業を担当した教員へのアンケートを実施した.その結果,発言量の予測値と実測値には相関が見られ一定の予測ができること,また,普段発言量が少ない児童に発言増加の効果があることを確認した.
著者
青柳 尚朗
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.15-29, 2021-06-10 (Released:2021-06-18)
参考文献数
27

本研究では,社会的事象の本質を捉える思考の促進を目的に,中学校社会科で実験授業を実施し,その効果を検討した.学習内容を「具体的事実」「個別的本質」「普遍的本質」に構造化し,単元内に「複数の具体的事実を関連づけて共通点を探究する過程」「その社会的事象の持つ,他事象にも活用可能な性質を考察する過程」を組織した.その結果,複数の具体的事実を把握し,その共通点を探究することで個別的本質の理解が促進されること,そこで把握された個別的本質のうちのどの性質が近接領域の他事象にも適用可能かを検討することで普遍的本質の理解が促進される可能性が示された.上記の過程では,「①個人での多様な探究→②クラス全体での多様な思考の関連づけ→③そこで関連づけられた思考を生かした個人探究」という協同的・探究的な学習過程が組織され,①③で多くの情報を関連づけた生徒の中に普遍的本質の理解を達成する者が現れることが示唆された.
著者
中山 舞祐 森本 康彦
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.149-152, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
6

協働的に開発作業を行うプログラミングスタイルの一つにペアプログラミングがある.しかしながら,小学校プログラミング教育において,児童がペアプログラミングの仕組みを理解して取り組むことは難しいと考えられる.そこで,本研究では,ペアプログラミングを取り入れた小学校プログラミング教育の実施方法を提案することを目的に,児童がペアプログラミングに取り組む際のルールを定め,それに則り実践を行った.児童への提案方法の効果を聞く質問紙調査の結果,児童は,ペアプログラミングにおける役割を意識し,ねばり強く,2人で教え合いながら取り組めることが明らかになった.
著者
遠藤 育男 益川 弘如 大島 純 大島 律子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.363-375, 2015-03-20 (Released:2016-08-11)
被引用文献数
5

1人ひとり異なる多様な視点で解き方について議論することがその話し合いの対象としている課題の理解を深めるプロセス(以下,知識構築プロセス)を引き起こし,そこで構築した理解が長期にわたって保持されるという仮説に基づき,6年生算数・組み合わせの授業を,ジグソー法を基にデザインし実施した.検証は,班の対話プロセスを個々人の知識変化で分析する認知内容分析と,班でつくられていく知識変化を分析する社会ネットワーク分析の2種類を行うとともに,知識構築プロセスを引き起こしていた学習者がその理解を保持でいているか回顧記述調査から同定した.その結果,多様な視点での議論が,知識構築プロセスを引き起こすこと,その議論によってどう考えて解けばいいのかという抽象的な理解につながる可能性が見えた一方,正解を同定するような介入や特定の方略を価値付けてしまうような介入が学習の深まりを止める可能性など,次なる検討材料を得た.
著者
加藤 達也 町 岳
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.93-102, 2021-06-10 (Released:2021-06-18)
参考文献数
26

本研究では,小学校4年生の社会科で,半年間にわたり単元統合型授業に学習方略活用支援を加えた授業デザインを実践したことの効果を,社会科の思考力である概念化・一般化及び,問題解決過程に合わせた学習方略活用の2点から検討した.ノートに記述された2つの大単元(4つの小単元)を貫く問いに対する答えを各単元の前後で比較した結果,3つの小単元と2つの大単元で,単元後に概念化・一般化が促進されることが示された.また,社会科の問題解決過程に合わせた学習方略を提示し,方略活用を段階的に児童に移譲したことの効果を質問紙調査と児童が立案した学習計画により検討した結果,児童が予見段階と遂行段階において学習方略を活用していることへの意識の向上や,学習計画の質の向上が示された.本研究の結果は,学習内容論に重点が置かれがちだった社会科授業研究に,新たな研究の視点を提示する可能性を示唆している.
著者
杉山 昂平 森 玲奈 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.381-396, 2020

<p>人々が興味を深めるとき,ゆるやかな社会関係はいかに関与するのだろうか.本研究の目的は,興味追求としての趣味に着目し,強固な実践共同体に対比されるゆるやかな実践ネットワークが,趣味人の興味の深まりにいかに関与するのかを明らかにすることである.事例としてデジタル時代のアマチュア写真を取り上げ,アマチュア写真家14名に対してインタビュー調査を行った.その結果,興味の深まりに関与する実践ネットワークとして「刺激的な隣人」と「不特定の観衆」の存在が明らかになった.「刺激的な隣人」は自立的に興味を追求する多様な趣味人の姿を可視化し,「不特定の観衆」は作品に対してフィードバックを与え,それ自体が深い興味の対象になったり,興味を深めるさらなる行動を促したりする.こうした実践ネットワークはSNS によって形成されることもある一方,展覧会や撮り歩き会のような,趣味の世界における対面的な活動によっても形成されていた.</p>
著者
木村 敦 宮脇 健
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.45-48, 2021

<p>授業評価アンケートの実施媒体(WEB vs. 印刷)と大学生の授業評価アンケートに対する回答行動・態度との関係を調査により検討した.調査対象者は学期末の授業評価アンケートをWEB媒体で実施している学部の学生268名(WEB 群)と, 紙媒体で実施している学部の学生237名(印刷群)であった.調査の結果, WEB 群は印刷群と同様に高回答率者の度数も大きい一方で, 回答率が1/2未満の低回答率者の割合が印刷群よりも有意に大きかった.授業評価に対する態度や未回答理由について分析した結果, 回答時間が授業時間中に確保されるかといったアクセシビリティや, 授業評価に対する効力感との関連が示唆された.</p>
著者
脇本 健弘 苅宿 俊文 八重樫 文 望月 俊男 酒井 俊典 中原 淳
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.209-218, 2010-01-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
24
被引用文献数
5

本研究では,初任教師の育成として授業に関するメンタリングに注目をした.メンタリングとは,経験を積んだ専門家(熟達教師)が新参の専門家(初任教師)の自立を見守り,援助することである.初任教師を対象に授業に関するメンタリングを行う際は,初任教師が授業を行い,子どもの姿をもとにした授業の振り返りを行うことが有効である.しかし,子どもの姿をもとにした授業の振り返りを行う際に,(1)対話内容が授業技術や理論的なもの中心で,具体的な子どもの話がでてこない,(2)熟達教師の子どもの話が初任教師に伝わらない,(3)振り返る子どもに偏りが出るという問題がある.上記問題を解決するために,メンタリング支援システムFRICA(読み方:フリカ)を開発した.その結果,FRICAを利用することにより,子どもの話が引き出され,初任教師に伝わるように熟達教師が子どもの話ができるようになった.また,子どもの偏りに関しても効果がみられた.
著者
池尻 良平 山本 良太 中野 生子 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Suppl., pp.109-112, 2021-12-20 (Released:2022-02-02)
参考文献数
6

本研究では,ICT を利用した,ジグソー法のエキスパート活動における知見の同期的収集が,教師のモニタリングと介入にどのような影響を与えるかを,机間巡視のみの場合と比較して調査した.その結果,内容を含めた俯瞰的なモニタリング,各専門家グループのキーワードのシェア度合いに関する俯瞰的なモニタリングと各グループ内のシェアを促す介入,普段は優先順位の低い上位層のモニタリングを促す可能性が示された.
著者
佐藤 和紀 齋藤 玲 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Suppl., pp.49-52, 2017-01-15 (Released:2017-03-06)
参考文献数
7

佐藤ほか(2015)による,教師のメディア・リテラシーに対する意識の変容をねらったプログラムの効果検証は若手教師に限定されていた.本研究では,新たにベテラン教師(教師歴20年以上)を対象に効果検証を実施した.具体的には,プログラム前後の質問紙,および事後インタビューの観点から,その効果検証を行った.その結果,ベテラン教師においても,メディア・リテラシーに対する意識の変容が確認された.本論では,プログラムの適用範囲の拡大可能性およびベテラン教師に対する効果について議論する.
著者
稲垣 忠 内垣戸 貴之 黒上 晴夫
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.103-111, 2006-09-20 (Released:2016-08-03)
参考文献数
22
被引用文献数
3

遠隔地の学校間で電子メール,電子掲示板,テレビ会議システムなどを用いて交流する学校間交流学習は,インターネットを用いた授業実践として広く取り組まれている.筆者らは,学校間交流学習における,学習者の活動プロセスと教師の学習環境設計に着目した授業設計モデルの開発を試みた.モデル開発の方法として,1)先行研究および構成主義の学習観に基づくモデル構築,2)実践経験者への調査によるモデルの精緻化,を行った.その結果,学習の活動プロセスを明確にする「枠組みモデル」と,設計の順序を示す「手順モデル」から構成した授業設計モデルを,学習論と実践経験者の知見を反映したものとして開発することができた.
著者
三島知剛 一柳智紀 坂本篤史
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.535-545, 2021-03-20 (Released:2021-03-25)
参考文献数
11

本研究の目的は,教育実習において実習生の指導を担当する教員が,教育実習指導を通した自身の学びや教師としてのその後の力量形成につながるかどうかについての認識を検討することであった.その際,小学校及び中学校教員の認識の違いについても着目した.教育実習指導を経験したことがある小中学校の教師を対象とした質問紙調査(有効回答133名)の結果,(1)全体的に学びや力量形成に対する得点が高く,校種間では小学校教員の方が学びや力量形成を高く認識していること,(2)実習指導における指導形態と学びや力量形成の関連が多く見られ,特に実習生と協働して実習を進めるという指導形態が学びや力量形成と関連していたこと,(3)校種別では,実習指導における指導形態と学びの関連については中学校教員の方が多く,実習指導における指導形態と力量形成の関連については小学校教員の方が多いこと,等が示された.
著者
橋本 陽介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Suppl., pp.29-32, 2021-12-20 (Released:2022-02-02)
参考文献数
9

本研究では,1人1台の端末を使用した集団活動の際に,発達障害児童にみられる行動特性を,他者の発表を聞く時間における逸脱行動に焦点をあてて検討した.その結果,発達障害児童には,端末を見る・触るという逸脱行動が出現しやすく,それらを低減させる方策が必要となると考えられた.これを受け,端末で作業するスペースと発表に取り組むスペースを分けるといった,視覚的なわかりやすさが伴う,実施環境の配慮を行い,再度,他者の発表を聞く時間における逸脱行動に焦点をあてて検討した.その結果,実施環境への配慮は,1人1台の端末を使用した際に,発達障害児童に出現しやすい逸脱行動の低減に寄与する可能性が示唆された.
著者
荒木 淳子 高橋 薫 柏原 拓史 佐藤 朝美
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.169-172, 2021

<p>キャリア教育の重要性が指摘されて以来,学校と地域が連携した取り組みを行う学校も多い.しかし,実践の効果に関する研究は少ない.本研究は岡山県のNPO 法人だっぴが中学生を対象に行う「中学生だっぴ」を事例とし,実践が中学生のライフキャリア・レジリエンスと自尊感情に与える影響について分析を行った.165名の事前事後の質問紙と106名の事後作文の分析から,地域の大人との対話が生徒の将来や仕事に対する見方を広げ,ライフキャリア・レジリエンスと自尊感情を向上させることが明らかとなった.</p>
著者
八木澤 史子 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.431-442, 2021-03-20 (Released:2021-03-25)
参考文献数
31

本研究では,1人1台の情報端末を活用した小学校の授業で用いられる教師の教授知識の特徴を明らかにするため,授業で観察された教師の教授行動の背景にある意図について授業者にインタビューを行い,その内容を「授業についての教師の知識領域」(吉崎 1988a)の枠組みを参考に分類した.その結果,1人1台の情報端末を活用した授業においても,情報端末を用いる以前から示されていた枠組みが授業者の教授行動の背景として存在する教授知識あるいは考え方を分類するうえで適用可能であることが示唆された.また,授業者が用いた教授知識の中には,学習活動や学習機会,学年,教科の影響を考慮する必要がある特徴をもつ知識も示された.さらに,ICT に関する知識を吉崎が示した知識領域との関連の中に見出した.その結果,ICT に関する知識は4つに分類され,吉崎が示した知識領域の拡張と捉えられるものとそうでないものがあることが示唆された.
著者
泰山 裕 三宅 貴久子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Suppl., pp.17-20, 2013-12-20 (Released:2016-08-10)

本研究は,習得した思考スキルが課題解決過程に与える効果を明らかにするものである.関西大学初等部で取り組まれている思考スキルの習得,活用を目指した実践を対象に,課題解決を行う際に習得した思考スキルをどのように用いているのかについて児童へのインタビューから明らかにした.結果,習得した思考スキルの効果として「課題分析,計画」「課題に合わせた思考のコントロール」「思考過程のメタ認知」「自分の思考の特徴把握」の4つが確認され,習得した思考スキルが課題解決過程におけるメタ認知を補助していることが示唆された.
著者
佐藤 和紀 高橋 純 安里 基子 齋藤 玲 吉野 真理子 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.041-044, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
11

教員養成大学の学部1・2年生を対象に,情報モラル教育の基礎知識を学び,現職教員による模範授業映像を視聴した上で,情報モラル教育の授業設計を学習させるための講義を開発し実施した.講義の事前事後に情報モラル指導の自信を測定する質問紙調査を行った.その結果,全質問項目の得点の上昇が見られた(研究1).自由記述では,スモールステップで指導案を作成するワークシート(以下WS)の効果が期待された.そこで研究2は,足場かけの有無によるWSを2種類用意することにより,効果を調べたところ,1年生には足場かけ無しWS が,2年生に は足場かけありWS が効果的であった.
著者
林 一真 梅田 恭子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.497-511, 2021-03-20 (Released:2021-03-25)
参考文献数
20

本研究の目的は,1人1台のタブレット端末を活用した情報活用能力を育成する授業設計の留意点の提案である.この目標を達成するため,情報活用の場面を教育活動に応じて7つの区分に分け,公立小学校第6学年を対象として,1人1台のタブレット端末を活用した社会科の授業実践に取り組んだ.1学期は児童が自ら情報を収集し,整理,分析する「考える授業」,2学期は分析の結果を生かす「表現・伝達」をゴールに見据えた「探求的な学習」に取り組んだ.4回のスキル調査や評価テスト,5回のワークシートの内容や文字数の調査で,授業実践による児童の情報活用能力の変容を測り,分析を行った.その結果,ICT スキルや学習に対する力や意識を含め,情報活用の6つの場面で有意な向上が見られ,本授業実践の学習支援や3つの授業形態が有効であることが明らかとなった.ここから「情報活用能力」を育成する授業設計における留意点を提案した.