著者
山田 剛史 森 朋子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-21, 2010
参考文献数
26
被引用文献数
7

本研究では,大学生の汎用的技能獲得における正課と正課外が果たす役割について学生の視点から検討することを目的として,卒業を目前に控えた大学生657名に調査を行った.主な結果は次の通りである.(1)大学生の汎用的技能を捉えるために精選した項目群に関する因子分析の結果,35項目8因子(F1批判的思考・問題解決力,F2社会的関係形成力,F3持続的学習・社会参画力,F4知識の体系的理解力,F5情報リテラシー,F6外国語運用力,F7母国語運用力,F8自己表現力)が抽出された.(2)正課・正課外の差異に関するt検定の結果,正課は正課外に比してF5とF6が,正課外は正課に比してF2,F3,F4,F8が有意に高い値を示した.(3)学部系統別の正課・正課外による差異に関する分散分析の結果,正課と正課外は汎用的技能獲得において異なる役割を果たしていることが示され,目的養成学部やGPプログラム取得による効果が示唆された.
著者
加藤 由樹 加藤 尚吾 杉村 和枝 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.403-414, 2008

本研究では,テキストコミュニケーションの受信者の感情面に及ぼす感情特性の影響について検討するために,電子メールを用いた実験を行った.本実験の被験者は,42名の大学生であった.彼らを,無作為に2人1組のペアにし,電子メールを使ってコミュニケーションを行ってもらった.そして,電子メールを受け取るたびに,どんな感情が生じたか(感情状態)と,送信者の感情状態をどのように解釈したか(感情解釈),について尋ねる質問紙に回答を求めた.また,感情特性の指標である個別情動尺度-IVによって被験者を3群に分類し,受信者による感情解釈と受信者の感情状態の関係と,送信者の感情状態と受信者による感情解釈の関係を,3群で比較した.結果,これら二つの関係は,受信者の感情特性の影響を受けることが示された.結果から,テキストコミュニケーションで生じる感情的なトラブルの原因を考察した.
著者
松崎 邦守 北條 礼子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.157-160, 2008
被引用文献数
2

内省を重視した教員養成という観点から,英語科教育実習でポートフォリオを適用し,その効果をPAC分析により検討した.その結果,同活用により,実習生が授業を自発的に振り返るとともに意欲的に授業改善を試み,また教職への自信を持てるようになったことが推察された.また,指導教員と実習生との協同の場としてのポートフォリオを用いたカンファレンスが実習生の成長において重要な要因となったことが示唆された.さらに,改善点として,ポートフォリオ作成の時間的・労力的負担の軽減やガイドラインの詳しい説明の必要性が示唆された.
著者
酒井 統康 南部 昌敏
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.193-202, 2006
被引用文献数
2

小学生に身につけさせたい情報活用の実践力目標を,問題発見・計画力,収集力,判断力,処理力,表現力,創造力,発信・伝達力の7要素と22の具体目標で構成した.それぞれの具体目標ごとに評価規準と評価指標となる評価基準を策定した.それに基づき,児童同士が協働して具体的評価基準を作成する学習活動を取り入れた学習プログラムを開発し,総合的な学習の時間及び国語科の学習指導を通してその有効性を実践的に検討した.その結果,情報活用の実践力尺度による事前・事後・把持の調査結果から,具体的評価基準表作成活動は,問題発見・計画力や発信・伝達力の育成に有効であるという知見を得た.
著者
岸 磨貴子 久保田 賢一 盛岡 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.251-262, 2010
被引用文献数
1

本研究では,研究プロジェクトをベースとした特徴ある大学院教育を実践している研究室を実践共同体の分析的視座から捉え,院生が研究プロジェクトに十全的に参加していく過程について調査を行った.研究の対象となったX大学大学院A研究室では,地域社会や企業など大学外の組織と連携した研究プロジェクトを継続的に実施している.6名の院生に対して半構造化インタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析した.分析の結果,院生は,研究プロジェクトにおいて多様な立場の他者,大学外の組織と連携した活動,そして研究室の文化と相互に作用することで,大学外の組織と連携して研究を行うようになり,研究プロジェクトに十全的に参加していたことが明らかになった.このような研究活動は,個々の院生の充実感・達成感により価値付けられ,院生の研究プロジェクトへの十全的参加を方向付け,研究活動の必要な知識・技術を習得させることを促していた.
著者
山下 利之 清水 孝昭 栗山 裕 橋下 友茂
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.349-355, 2005
被引用文献数
1

高度情報化社会の発展に伴い, 子どもの学習のさまざまな場面でコンピュータによる作業が増えつつある.そのため, CAIなどのコンピュータを用いた学習システムにおいても"楽しさ"や"人間らしさ"を与えるヒューマンコンピュータインタラクションが求められている.そのようなインタラクション設計のための基礎的知見を得るために, 本研究ではコンピュータゲームの"楽しさ"に着目した.質問紙調査1では, コンピュータゲームの構造, 特性の因子分析とそれに基づくクラスター分析による考察から, コンピュータゲームの構造, 特性とコンピュータゲームのタイプ間の関連を明らかにした.質問紙調査2では, コンピュータゲームに対する感情表現の評定に関する分析から, コンピュータゲームのタイプとそのコンピュータゲームがプレイヤーにもたらす"楽しさ", "面白さ"の関連性を明らかにした.これらの結果から, コンピュータゲームのどのような構造, 特性がどのような"面白さ", "楽しさ"をもたらすかに関する基礎的知見を得た.
著者
佐藤 朝美
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.239-249, 2010
参考文献数
23

本研究では,幼児の物語行為における親の役割に着目する.Narrative Skill習得に関する先行研究は,幼児の語りの詳細を引き出す言葉がけをする親とそうでない親がおり,その差が子どもの語り方や考え方にまで影響するという結果を示している.そこで,それらの知見を踏まえ,Narrative Skill習得を促す親の語りの引き出し方の向上を支援するシステムを構築した.開発したシステム"親子de物語"は,親子で物語を作成し,その過程をWebカメラで録画,ビデオを親が自身で振り返ると同時に他の親子とビデオを共有していく,自己調整学習の仕組みを備えたWebアプリケーションである.評価実験に27組の親子に参加してもらい,その有効性を検証した.その結果,ビデオにより自己を振り返り,他者を観察することで,子どもの詳細な語りを引き出す親の言葉がけが向上することが分かった.引き出し方が特に向上した母親には,課題を行う過程で,他者の良い点から自身の言葉がけを反省するだけでなく,その都度,自分なりの目標を立てるという傾向が見られた.
著者
望月 俊男 北澤 武
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.299-308, 2010
被引用文献数
6

本研究の目的は,ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を活用し,教育実習生が実習期間中の体験報告に基づいた対話を行う場を提供することで,教育実習の振り返りを促進するとともに,教育実習生が実習期間中に身近なソーシャル・サポートを得られるようにすることである.授業実践を行った結果,SNSに備えられた日記とコメント機能を用いて,教育実習中に様々なソーシャル・サポートが交換された.実習期間中の日記をもとにした対話が,実践的知識の振り返りにつながるだけでなく,教育実習生が教育実習に関する事前知識や他者の実践的知識を共有することで,肯定的な思考を持つことができることが示唆された.
著者
佐々木 康成 笹倉 千紗子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.229-237, 2010
被引用文献数
2

ソーシャルネットワーキングサービス(以下SNS)を,実習を中心としたコンピュータリテラシの授業における学習サポートとして導入した.システムとしてはオープンソースのSNSソフトウェアを利用した.まずSNSを授業期間の一部において学習サポートとして導入し,学習の機会が増加するか,学生間の交流に影響があるかについて予備的な研究を行った.続いてその結果に基づいて,全授業期間を通じた学習サポートの場としてSNSを活用した.授業とSNSが密接に関連するように,SNSの機能を活用する授業デザインを行い,ブレンド型授業実践を行った.その結果,学習者の授業満足度は上昇し,学習者間の交流が活発になるなどポジティブな結果が求められた.一方で情報のただ乗りが発生することなどが明らかになった.また,授業の準備および運営に関して教員の労力が必須な点なども明らかになった.
著者
志賀 靖子 歌代 崇史 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.121-124, 2009
参考文献数
9
被引用文献数
1

電子掲示板は対面授業内外やe-learningにおいて広く活用されている.しかしながら,従来の電子掲示板は投稿機能のみが議論の参加手段であるため,非言語的手がかりが欠如し,相手の存在を意識しにくいとともに,投稿を読んでもコメントを積極的に行いにくいという問題点がある.本研究では投稿以外のフィードバック手段として下線引き機能を提案し,実装した.2つの評価実験より,投稿内容に下線を引くことは,他者から自分の投稿がどのように受けとめられているかということや他者同士の関係を把握しやすい可能性が示された.特に下線を引かれたのが自分の投稿である場合,励ましといった心理面への効果を持ち,より動機づけの低下を防ぐ可能性が考えられた.
著者
奥本 素子 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.11-21, 2009
被引用文献数
4

美術館初心者が美術館での学習につまずく原因の一つに,美術館展示から意味を構築する能力である博物館リテラシーが不足していることがあげられる.そこで,本研究では初心者の博物館リテラシーの不足を補うため,演繹的に作品を解釈できるように作品理解の観点を教授する博物館認知オリエンテーション(Cognitive Orientation of Museum:COM)という博物館学習支援モデルを提案する.本研究では,そのCOMの博物館学習における有効性を明らかにするために,COMに沿った学習教材を開発し,一般的な解説教材と比較し,その効果を検証した.
著者
兼折 泰彰 村松 浩幸
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.189-192, 2006
被引用文献数
1

現在,教員研修における方法として,教員が協同し問題を解決するワークショップが注目されている.中学校技術科の「情報とコンピュータ」の研修方法は,個人実習と講義が中心であるという現状がある.そこで,「情報とコンピュータ」の研修にワークショップの導入を検討し,講義と共に実習を含んだワークショップを取り入れた研修モデルを構想した.研修モデルに基づいて「情報通信ネットワーク」の教員研修プログラムを開発し,評価した結果,本事例におけるワークショップを導入した技術科専門研修における教員研修プログラムは,参加教員から肯定的な評価を得ることができた.
著者
牧野 由香里 福田 惠子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.79-92, 2005

本研究は, 遠隔ネットワーキングによる授業改善の実践共同体において, 高等教育の現場教師が共同体に参加する過程(カリキュラムの体験, 実施, 評価)を分析した.その結果, 古参者の象徴的な働きかけに対して新参者が価値的コミットメントと解釈の努力で応える, という条件が満たされる場合, 物理的空間を共有しない遠隔地においても, 十全的参加者が授業設計の熟練に至る可能性が示唆された.
著者
村田 育也 鈴木 菜穂子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.435-442, 2009
被引用文献数
1

近年,携帯電話使用の低年齢化にともない,未成年者が携帯電話を用いた犯罪の加害者や被害者になる事件が増えている.年齢によって持てる責任に限界がある未成年者に,保護者の監督下から離れて,携帯電話を1人で使用させることには大きな問題がある.本研究の目的は,未成年者の年齢と責任能力の関係を明らかにし,未成年者の責任能力の観点から携帯電話の使用適正年齢を検討するための資料を作ることである.まず,未成年者に関する法律や判例などで認められている未成年者の責任能力について整理した.その上で,未成年者が関わった出会い系サイトに関する事件を,新聞社2社の記事データベースを用いて2002年から2005年までの4年間について調べた.重複を除く1,130件の事件事例を収集し,これらの事件に関わった未成年者1,314名の年齢分布を用いて,未成年者の責任能力について考察した.
著者
坂巻 文彩
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.399-413, 2023-12-20 (Released:2023-12-16)
参考文献数
24

本研究は,インターンシップ参加を目指す学生に対し,大学が,どのような参加計画が効果的であるかを指導する際に有用なノウハウの取得を目的とする.分析データは,内閣府が大学生を対象に実施した調査結果によるものである.本研究では社会科学系学生に焦点を絞り,インターンシップ参加の,日数および回数と効果との関連性を軸にした検討を行っている.明らかになった主要点は,以下の2点である.第一は,「1日間」のインターンシップは,参加回数が増すにつれ,効果は増す一方で,中(2~5日間)・長期間(6日間以上)のインターンシップは,「1回」参加の場合に効果が,もっとも得られた点である.第二は,学生の性別,大学の設置形態,偏差値,所在地等の条件(統制変数)の影響を分析すると,効果の出方が一様ではなく複雑であるという点である.インターンシップへの参加にあたり,参加の日数,回数の組み合わせを重視する必要がある.
著者
池尻 良平 池田 めぐみ 田中 聡 鈴木 智之 城戸 楓 土屋 裕介 今井 良 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.15-24, 2022-02-20 (Released:2022-03-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では,若年労働者の思考のモデリングが,経験学習と職場における能力向上に与える影響と,思考のモデリングの実態を調査した.インターネット調査で取得したデータをもとに構造方程式モデリングを用い,仮説を検証した結果,思考のモデリングは経験学習の具体的経験,および職場における能力向上に正の影響を与えることが明らかになった.また,若年労働者は上司や先輩から,主に仕事や業務の仕方や方法や進め方,過去のものを含む資料といった対象に注目し,見る・聞く・読むことで思考のモデリングをしていることが示された.さらに,職場における能力向上の上位群では,仕事相手を含む対象まで観察できていたり,見る・聞く・読むことに加えて,分析することで,より深い思考を学んでいることが示された.
著者
亀岡 恭昂 小玉 祥平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S47023, (Released:2023-10-06)
参考文献数
18

本研究では,読解方略の産出欠如克服のために,読解方略を協調的な読解問題解決の文脈で学ぶ教育プログラムをデザインし,物語文及び論説文における10個の読解方略について中学生12名を対象に実践し,読解方略の有効性認知や効力感,コスト認知の観点からその効果を検討した.質問紙への回答と振り返り記述を総合したところ,全方略で有効性の認知が向上し,一部方略では効力感向上やコスト認知低減がみられた.また,読解問題解決の文脈で読解方略を学ぶことは読解方略習得に寄与した可能性も示唆された.一方で,協調が読解方略習得に寄与するには,学習者が読解方略の活用方法を具体的に共有することが必要である可能性も示唆された.
著者
柴崎 秀子 玉岡 賀津雄
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.449-458, 2010-02-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
15
被引用文献数
8

本研究では,小学1年から中学3年までの国語科教科書に収められたテキストの構成要素を分析し,学年による文章の難易尺度を検討した.学年を判定する式を構築するために,主要な国語科教科書の243テキストから,標準的な205のテキストを選んだ.そして,(1)1文の平均文字数,(2)1文の平均文節数,(3)1文の平均述語数,(4)テキスト全体の漢語の割合,(5)テキスト全体の平仮名の割合の5つを独立変数として,学年を従属変数とする重回帰分析(ステップワイズ)を行った.その結果,平仮名の割合と文の平均述語数の2つが有意な独立変数となり学年についての高い予測力を示した(R^2=0.791)ので,この2変数で学年判定式を構築した.
著者
渡邉 文枝 向後 千春
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.41-51, 2017-05-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
21
被引用文献数
9

本研究では,MOOCに代表されるオンライン講座におけるドロップアウト率の低減を図るための示唆を得るために,JMOOCの講座における学習者のeラーニング指向性と相互評価指向性(相互評価への信頼感,相互評価の有用感)が学習継続意欲と講座評価に及ぼす影響について検討した.その結果,eラーニング指向性は,相互評価の有用感と学習継続意欲,講座評価に正の影響を及ぼすことが示された.相互評価指向性においては,相互評価への信頼感から講座評価に正の影響を及ぼすことが示された.相互評価の有用感は相互評価への信頼感と学習継続意欲,講座評価に正の影響を及ぼすことが示された.また,相互評価の有用感は,学習継続意欲と講座評価に対して最も大きな正の影響力を示した.これらのことから,eラーニング指向性と相互評価指向性は学習継続意欲と講座評価に寄与することが示唆された.
著者
三井 一希 戸田 真志 松葉 龍一 鈴木 克明
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.157-169, 2023-01-20 (Released:2023-02-01)
参考文献数
26

本研究では,情報端末を活用した授業の設計を支援することを目指したシステムの開発を行い,その操作性と有用性(ユーザにとって有用と捉えられるか)を検証した.システムの設計にあたっては,先行研究から現状の問題点を抽出するとともに,ユーザーニーズの調査を行って5つの機能要件を定めた.そして,機能要件を満たすシステムをスマートフォン等で動作するアプリケーションとして開発した.開発したシステムを16名の教師が評価したところ,操作性については問題点が見られなかった.また,有用性については,特徴的な機能であるSAMR モデルに基づき授業事例を段階的に示すことを含め,機能要件に定めた項目について概ね良好な評価を得た.一方で,書き込み機能や実践のアップロード機能といったユーザ参加型の機能には,抵抗を示す教師が一定数いることが示された.