著者
佐藤 真実 江口 雅美 丸山 悦子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.27-32, 2007-02-20

若年層が白飯のおいしさを評価するために重視している要素として,白飯自体がもつ要素と評価する側がもつ心理的,社会的影響をうけたおいしい白飯に関するイメージについて調査を試みた。白飯自体がもつおいしさの要素は,15項目の項目をあげ,それぞれの項目の必要度の高さをSheffeの1対比較法を用いて解析を行った。評価する側がもつおいしい白飯に抱いているイメージの調査は,20項目の項目をあげ,SD法を,さらに因子分析を行い,イメージ因子の抽出をおこなった。自飯自体がもつおいしさの要素はうま味,甘味,飯粒がやわらかいが必要度が高くなった。とくに女子は噛んだときの粘り,つや,透明感などの味以外の食感や外観の必要度も高くなる傾向がみられた。おいしい白飯に必要な要素を化学的,物理的要素に分類したところ,化学的要素は39.6%,物理的要素は60.4%となった。おいしい白飯のイメージ因子は4つ抽出された。第1因子は健康,第2因子は親近感,第3因子は郷愁感,第4因子は環境が抽出された。
著者
大谷 貴美子 長渡 麻未 柴田 満 冨田 圭子 佐藤 健司 川添 禎浩
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.239-248, 2007-08-20
被引用文献数
1

伝統食品である京都大徳寺瑞峯院の大徳寺納豆について,ラジカル消去活性の強さを解明するために,製造過程のラジカル消去活性の変化とその関連成分について検討を行った。大徳寺納豆は,7月下旬から9月下旬にかけて仕込まれる。大豆(鶴姫)を蒸煮することで,ゲニスチン,ダイジン,グリシチンが増加した。しかし,室での発酵期間に減少し,熟成期間では,代わってゲニステイン,ダイゼインが増加した。また,室での1週間の発酵期間に,プロテアーゼの働きにより,遊離アミノ酸,特にグルタミン酸やペプチドが増加した。炎天下における2ヶ月間の熟成期間には,徐々にメラノイジン関連物質が産生された。またラジカル消去活性は,ポリフェノール含有量と高い相関を示したが,ラジカル消去活性に寄与している主な成分はメラノイジン関連物質であることが示唆された。
著者
清原 玲子 山口 進 潮 秀樹 下村 道子 市川 朝子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.294-299, 2009-10-20
被引用文献数
1

我々は揚げ物,炒め物に独特のコク,うま味の一因として,加熱調理に伴って生成する油脂酸化物の影響を考えた。そこで本研究では油脂酸化物の味への影響を調べるため,主にヒトでの官能評価によって以下のことを明らかにした。リノール酸,リノレン酸,ドコサヘキサエン酸,エイコサペンタエン酸,アラキドン酸(AA)の5種類の脂肪酸を35℃24時間酸化させ水で抽出し,それぞれ醤油希釈水に添加したところ,添加無しに比べて有意に醤油の味が強まった。なかでも酸化AA水抽出物の添加作用が最も強いことが示された。AAを数%添加した植物油で調整したコロッケ,炒飯,野菜スープは有意にうま味,コク味,後味などが強まり,嗜好性も高まる傾向がみられた。以上より,油脂酸化物が食品の味を強める作用を持つこと,また植物油にアラキドン酸を添加することで,油脂調理食品のおいしさを向上できることが示唆された。
著者
坂本 真里子 河野 一世 熊谷 まゆみ 赤野 裕文 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.427-434, 2007-12-20
被引用文献数
4

硬度の異なる3種の水,南アルプスの天然水,エビアン,コントレックスを用いて,かつお節だし,野菜スープ,牛肉のスープストックを調製した。総窒素,遊離アミノ酸,イノシン酸,グアニル酸,有機酸の分析および官能評価を行い,水の違いを比較した。かつお節だしでは用いた水の種類によって,遊離アミノ酸のパターンが異なっていた。官能評価では総合的な好ましさに有意の差は無かったが,エビアンと南アルプスの天然水が好まれる傾向にあった。野菜スープでは南アルプスの天然水に殆どの遊離アミノ酸が多く,次いでエビアンに多かった。官能評価ではこの両者が有意に好まれた。牛肉スープストックではコントレックスがアクを最も多く分離してスープは清澄であった。遊離アミノ酸合計量はエビアンに最も多く,ついでコントレックスであった。エビアンはイノシン酸,グアニル酸も有意に多かった。官能評価で最も好まれたのはエビアンであった。硬度の異なる水で3種の煮出し汁を調製すると,溶出成分に差があった。煮出し汁の好ましさは溶出成分だけでなく,水そのものの味も影響することから,溶出成分と水の味との兼ね合いで好ましさが決まるといえる。
著者
山田 潤 五十嵐 圭里 松田 秀喜
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.134-137, 2008-04-20
被引用文献数
8

荒節だしと枯節だしのラジカル消去活性をDPPHラジカルを用いて比較した。かつお節の抽出温度・時間の違いによる検討では,100℃30分の抽出条件が荒節枯節ともに最も高いラジカル消去活性を示した。また,どの抽出条件においても荒節だしは枯節だしの1.7-1.8倍のラジカル消去活性を示していた。porapaq Qを用い香気成分の分離を行ったところ,吸着画分では荒節だしは枯節だしの4.4倍のラジカル消去活性を有していた。このラジカル消去活性の違いは主に,フェノール化合物の含有量に由来しており,含有されていたフェノール化合物のうち本研究で初めて,2つのフェノール成分の活性を明らかにした。非吸着画分の活性は,荒節だしと枯節だしで同等のラジカル消去活性を有していた。
著者
杉田 浩一 今井 美樹 山下 光雄
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.321-328, 1997-11-20
被引用文献数
4

The changes of the meaning of "cooking" were studied with descriptions about its definition, objective and method, selected from the special books on food science since Meiji era. These changes were divided into five periods based on their characteristics. It was summarized as follows. (1) From early years through middle years of Meiji era : Food scientists theoretically taught the people how to cook meat as new food materials. It was reflected in the definiton of "cooking". (2) From later years of Meiji era through Taisho era : Three kinds of cooking ; Japanese, Western, Chinese and their mixtures were popularized among people in their common meals. So the definition of "cooking" reflected such various standpoints (3) From later years of Taisho era through early years of Showa era : People attached importance to the rational cooking with the high degree of nutritional efficiency, and the change of food components during cooking was investigated. (4) The early period after the end of the World War II : Practical use of food materials and improvement of nutritional lives were required, and the studies on theoretical cooking were promoted. The science of cookery with engineering was proposed. (5) In the later years after the end of the war : The advance of food production and food service businesses into the cooking field contributed to diversifying Japanese diet. The range of the definition of "cooking" expanded. "Cooking" enhanced its range from menu planning to dining table composition, and the theory of cooking to meet the changing lifestyle now are studied.
著者
水谷 令子 久保 さつき 松本 亜希子 成田 美代
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.192-197, 1998-08-20
参考文献数
11

元来すしは魚や肉の貯蔵法の一つで, 魚と飯から作られ, 現在のすしとは違って酢を使用しないで発酵させる。あゆずしは, 三重県では, 宮川(伊勢市)と北山川(紀和町)の流域に伝承されている。あゆずしを調製するのは冬季で, 塩漬けしたアユと冷ました飯を合わせて, 木の桶にきつく詰め, 重石をして30〜40日間熟成させる。通常は正月のご馳走として, 家庭内で消費され, 市販されてはいない。1996年11月下旬に伊勢市大倉町で本漬けされたあゆずしについて, 水分, pH, 塩分, カルシウム量および各種有機酸の量を調べた。結果は次のようである。1) すしあゆ(あゆずしの魚部分)のpHは, 38日間熟成した場合は5.10, 65日では4.10で, 魚と飯のpH差はほとんどなかった。2) 塩漬けしたあゆの食塩濃度(23.2%)は, 5回水洗いすると8.7%まで下がり, これを飯と共に熟成させている間に2.1%まで下がった。3) 塩付けあゆの骨のカルシウム量は55.5mg/g, 38日間熟成したものは25.0mg/g, 65日では16.8mg/gであった。頭部のカルシウム量は65日間熟成すると著しく減少した。4) すしあゆ中の有機酸量は乳酸, 酢酸, コハク酸の順に多かった。これらの酸は, いずれも熟成中に徐々に増加した。すしあゆの乳酸量は65日間の熟成で約26倍に増加した。有機酸量は魚の方が飯より多かった。5) すし桶の上層部に漬けてあったすしは, 桶の中央部に漬けたものより熟成が速かった。また一旦逆押ししたすしを保存すると, その間に熟成は進行し, 食味に変化が生じた。
著者
貝沼 やす子 福田 靖子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.118-126, 2005-04-20
被引用文献数
1

We have shown in previous studies that the use of bamboo charcoal advanced the gelatinization of starch, and reddened and softened kintoki beans. We applied these effects for red rice steamed with glutinous rice and cowpeas. The pH value of the bamboo charcoal extract was about 9.5, and it decreased to about 8.0 after cooking cowpeas for 15 minutes. The broth used to boil the cowpeas with the bamboo charcoal extract became redder and clearer. There was a positive correlation between the pH value of the cooking water and the value measured by a color difference meter of the broth used to boil the cowpeas. Glutinous rice soaked in the broth used for boiling the bamboo charcoal extract became redder after steaming. The sensory test evaluated the red glutinous rice prepared by using the bamboo charcoal extract as significantly redder than that by using tap water. Use of the bamboo charcoal extract also accelerated the softening of the cowpeas, and the red glutinous rice was evaluated as tender in texture just after steaming.
著者
古郡 曜子 菊地 和美
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.410-416, 2009-12-20

本研究は,平成2年前後に生まれた学生を対象とした保育所・幼稚園における「食の思い出」アンケート調査をまとめたものである。調査時期は2008年4〜5月に実施し,有効回答数は732人,調査対象者の平均年齢は18.5歳であった。アンケート調査の結果は以下のとおりであった。食生活の出来事における思い出の回答では,「印象に残っていること」は「いただきます・ごちそうさまという挨拶」を多く挙げていた(74.5%)。通園先における「食事が楽しかった」という回答が82.2%であり,「楽しい思い出」の質問には,みんなで食べたこと,お弁当に関すること,食べ物の栽培をしたことなどを回答していた。一方,幼児期の家庭における「食事のしつけ」の記憶数は,平均4.0±2.2個であった。「現在,食事のマナーが身についていると思う」と回答した学生は,幼児期の家庭における「食事のしつけ」の記憶数が多いという,関連性がみられた。
著者
大羽 和子 山本 淳子 舟橋 由美 小原 明子 石井 現相 梅村 芳樹
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.102-108, 1999-05-20
被引用文献数
3

1)キタアカリ(VC高含有品種)および男爵薯の生育に伴って,塊茎の重量,デンプン価,ビタミンC(VC)量が増大し,7月下旬に最大になり以後減少した。2)ジャガイモ(7品種)塊茎を冷却(4℃)貯蔵するとVC量も(GLDHase活性も1ヶ月後に顕著に減少し,1〜2ヶ月の間は変が少なく,2〜3ヶ月後に再び減少した。3ヶ月後のVC量が著しく減少する時期および貯蔵2ヶ月以降のVC含量の低い時期に高くなった。3)収穫直後に塊茎を4℃に移すとその2〜3日後にVC量およびGLDHase活性が増大し,以後減少した。4)ジャガイモ塊茎を15℃に貯蔵した方が,4℃に貯蔵した場合よりもVC量の減少が小さく,GLDHase活性は低く保たれた。
著者
大藪 一
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.242-249, 2001-05-20
被引用文献数
1
著者
森 悦子 尾形 壽子 江越 和夫 岡 輝美 野中 重之
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.303-309, 2002-08-20
被引用文献数
1

環境保全と食資源の開発の視点から,現代の食生活で不足しやすい食物繊維を多く含むが従来はほとんど食品として利用されていなかった「穂先タケノコ」を有効利用する方法を検討した。硬い組織を柔らかく食するため,茄でた穂先タケノコを5cm長さの千切りした後調味(醤油煮)し,凍結乾燥させたスティック状穂先タケノコと,茄でた穂先タケノコを凍結乾燥後,粉にした粉末穂先タケノコを調製した。両穂先タケノコ加工品の特徴は,変異原性や肝臓ガンの誘発作用があるヘテロサイクリックアミンの吸着性がゴボウやキャベツよりも優れていた。スティック状穂先タケノコは,食物繊維を多く含む保健食・噛むおやつ・汁物の浮き身として適当である。粉末穂先タケノコは,小麦粉調理・卵料理・ゼリーなどの各種デザートなどに幅広く利用できる。
著者
和泉 眞喜子 高屋 むつ子 長澤 孝志
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.343-349, 2005-08-05
被引用文献数
2

The optimum amount of water suitable for boiling spinach was evaluated by investigating changes in the color and tenderness, and the decrease in oxalic acid and potassium contents by increasing amounts of boiling water. The result of a sensory evaluation showed that the flavor and overall evaluation of the cooked spinach tended to decrease as the amount of boiling water was increased. There was no difference in the color tone, while the tenderness of the cooked spinach increased with increasing amount of boiling water. The oxalic acid content of spinach boiled in 5 times the amount of water decreased to about 61% of the value for raw spinach harvested in the spring, and decreased to 45% of this value in 20 times the amount of boiling water. The change in potassium content was similar to that of the oxalic acid content. Although the content of free oxalic acid differed by 100mg between 5 times and 20 times the amount of boiling water, there was no difference in the sensory evaluation. These results suggest that about 5 times the amount of boiling water is the optimum for boiling spinach.
著者
梶本 五郎
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.387-391, 2000-08-20

本学学生の自宅生306名と単身生活生142名について,揚げ物と妙め物の回数,さし油の有無,使用後のフライ油の保存方法,廃棄までの使用回数,廃棄の目安,廃食油の処理法,捨て方などについてアンケート調査を行い,既報の調査結果と比較検討した。 1.自宅生と単身生活生の割合は68および32%で,自宅生の家族構成では4人家族が最も多く,ついで,5人,3人,6人の順であった。前回(1969年)調査に比べ,6人家族の割合の減少と,8人以上の家族はなく,核家族化,少子化傾向があらわれている。 2.揚げ物を行う回数は,自宅生の家庭で週1回が最も多く,ついで,2回であった。家族数が多くなるほど揚げ物を行う割合は高い。単身生活生は全く揚げ物をしない者が半数を占め,行っても月1回程度であった。 3.さし油を行う割合は自宅生と単身生活生で75%および68%で,前回の調査結果の60%よりやや高い傾向にあった。 4.使用後のフライ油は瓶,缶に移し保存するが60%で,40%はフライ鋼に入ったままの保存であった。 5.廃棄するまでのフライ油の使用回数は,自宅生の家庭で1〜2回が40%,単身生活生で50%を占め,4回までで廃棄する割合は両者ともに90%であった。 6.廃棄の目安は,フライ油の色で判断する割合が最も高く,ついで,使用回数であった。 7.廃食油として出されたフライ油の処理は,紙,布にしみ込ませて捨てる方法と市販の凝固剤で固めて捨てる方法が最も多く,両者で75%を占めていた。一方,廃食油を出さない割合は4%,生活排水に流す割合は自宅生の家庭では2%と少ないが,単身生活生の1割は生活排水に流していた。
著者
大島 英子 樋上 純子 山口 美代子 殿畑 操子 山本 悦子 石村 哲代 大喜多 祥子 加藤 佐千子 阪上 愛子 佐々木 廣子 中山 伊紗子 福本 タミ子 安田 直子 米田 泰子 渡辺 豊子 山田 光江 堀越 フサエ 木咲 弘
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.338-345, 1999-11-20
被引用文献数
9

本実験では,焼成条件の違いがハンバーグの内部温度に及ぼす影響について検討し,次の結果を得た。 1.ハンバーグ内部の最低温度を示す点は,焼き始めはオーブン皿に接している底面の近くにあるが,生地の焼成とともに,底面から上の方に移動し,約10分経過の後からは厚さのほぼ中心付近にあることが明らかとなった。2. ガスオーブンの庫内温度を180℃,200C,230℃と変えてハンバーグを焼成した場合,焼成温度の違いは75℃到達時間の違いにあらわれるだけでなく,余熱にも影響を及ぼした。焼成温度が230℃の場合では,75℃到達後すぐに取りだしてもなお内部温度上昇が顕著に起こるので,75℃以上1分の条件を満たすことは十分可能であり,焼成時間の短縮も期待できる。 3.焼成開始時のハンバーグ生地品温が0℃,10℃,20℃と異なる場合,75℃到達時間は0℃では22分,10℃と20℃では16分となり,有意差が認められた。このことから,チルドなどの0℃付近の品温のハンバーグは,焼成の時間設定を長めにする必要があるが,焼成後オーブンから取りだしてからの内部温度の推移に差はなかった。 4.電気オーブンとガスオーブンでの焼成を比較すると,庫内を230℃に予熱して焼成した場合,ガスオーブンの方が75℃到達時間は0.9分早く,余熱最高温度も6.5℃高くなり,75℃以上保持時間も5.7分長かった。これらの差はガスと電気の熱量の違いによるものと思われる。 5.70℃まで焼成したハンバーグと,75℃まで焼成したハンバーグとを官能検査したところ,両者の間に有意差は認められず,75℃まで焼成しても焼き過ぎとは判定されなかった。厚生省指導による75℃以上1分間加熱は,ハンバーグの焼き色,香り,触感,味などの点で十分賞味できるものであることが認められた。
著者
モサマット ナズマナラ カノム 高村 仁知 青佐 千津子 モハマド アブル マンスル 松澤 一幸 的場 輝佳
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.201-204, 2001-05-20

バングラデシュの半醗酵魚製品チャパ・シュトキのヘッドスペース揮発性成分をガスクロマトグラフィー質量分析計で分析し,いずしおよびイワシの生干しと比較した。チャパ・シュトキ,いずし,およびイワシの生干し中にそれぞれ21個,10個,および11個の揮発性成分が同定された。同定された化合物の中で,エタノール,ヘキサナール,プロパナール,および1-ペンテン-3-オールの3つの魚製品中で共通して見られた。アルデヒト,アルコール,ケトンといった脂質由来化合物が中心を占めていたが,チャパ・シュトキでは酢酸や酪酸のような酸がいずしやイワシの生干しより多く含まれていた。
著者
和田 淑子 阿部 廣子 杉山 久仁子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.37-45, 1998-02-20
被引用文献数
2

高齢化社会を迎えて, 健康な高齢者が充実した食生活を送ることはきはめて重要なことであり, 高齢夫婦にとって快適な食事作りのための環境を整えることは, この問題の出発点となる最も基本的なことである。しかし, 高齢夫婦のみの世帯を対象とした食事作りに関する調査はあまり行われていないため, その実態を調査し, 学生家族世帯(一般世帯)との比較検討を行った。調査は横浜市金沢区在住の高齢夫婦世帯274, 本学学生世帯475を対象とし, 自己記入法によりアンケート形式で行った。調査結果は次の通りである。食事の摂り方に関しては夫婦一緒に朝食, 夕食を食べることが多く, 90%以上であった。食事作りを楽しいと感じる人が42%いるが, 献立を考えることと後片付けには負担を感じている。高齢になるほど料理への負担感は増す一方, 後片付けの負担感は減少する。また, 食事は和風献立が多くなり, 食事内容を決める際には配偶者の意見が大きい。食料品の買い物は, スーパー以外に個人商店を利用する割合も高く, 買い物の頻度は約半数が毎日だあったが, 75才以上の高齢者では, 2〜3日おきが70%を占めていた。買い物では値段より自分の好みを考慮する割合が高く, 惣菜の購入が比較的多いのが特徴である。また, 買い物では荷物が重い, 少量買えない, 表示が見づらいなど不満点も見られた。高齢夫婦世帯の外食の頻度は学生家族世帯に比べて高いが, 75歳以上ではその割合が減少し, 学生家族世帯と同程度となる。食事サービスへの関心は, 弁当・寿司などの即喫食の可能な宅配サービスに高かった。調理器具については高齢者の方が所有器具をよく利用していたが, 器具の使用に際して, 力が入らない, 操作が複雑, 表示が見えにくい, 器具が重いなどの取り扱い上の問題点が多かった。以上の結果から, 高齢者の自立した食事作りを支援するために検討を要する問題として, (1)食料品の買い物時における不都合な条件が軽減されるような販売面での配慮やサービスが望まれる, (2)調理の場において加齢と共に低下する身体機能に対応できる使いやすい器具のあり方に多くの課題があげられる。