著者
浜島 教子 橋場 浩子 根本 勢子 渋谷 裕美
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.62-67, 2001-02-20

まんじゅう皮の調製法に関する基礎的条件を検討するため,まずは一般的で材料組成の簡素な小麦粉(薄力粉),膨化剤(ベーキングパウダー),水,砂糖を材料とする小麦まんじゅう皮を調製し,それらの配合割合いの品質におよぼす影響を検討し,次のような結果を得た。(1) まんじゅうの外観および切断面の観察の結果加水量および砂糖添加量の少ないものは小さく,硬い感じて,逆に多いものはやわらか過ぎて流れた感じで,まんじゅう皮としては適さなかった。まんじゅう皮としては加水量30%で砂糖添加量50%のものと,加水量35%で砂糖添加量40〜50%のものが適した配合であった。(2) 膨化率は加水量と砂糖添加量の二因子の増加により増大した。(3)テクスチャー測定の結果,硬さは加水量および砂糖添加量の増加に伴って減少した。凝集性は加水量および砂糖添加量による有意差はなく,弾力性は砂糖添加量の増加に伴って減少し,そしゃく性も加水量および砂糖添加量の増加に伴って減少した。(4) 練りあんを包んだ小麦まんじゅうの皮部分に対する官能検査の結果,やわらかさ,味,総合の3項目において加水量30%,砂糖添加量50〜60%または加水量35%,砂糖添加量50%のものが好まれた。
著者
山崎 歌織 河村 フジ子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.122-126, 1997-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
2

We evaluated the quality of fish preserved in white miso, red miso or single soybean miso, keeping the sodium chloride and water contents of miso at definite levels. The results were summarized as follows:The percentage of decrease in the weight of miso-preserved fish was highest in single soybean miso, and lowest in white miso. There were no differences in the quantity of sodium chloride permeated into fish and the hardness of fish in different kinds of miso. The reducing sugar level was markedly high or for the fish preserved in white miso, which was followed by the fish in red miso and then by the fish in single soybean miso. Formol nitrogen level for the fish preserved in single soybean or red miso, was twice as high as for fish in white miso.when the fish was preserved in miso, its protein changed to low molecular weight protein regardless of the kinds of miso. A marked lipid oxidation-inhibiting effect was noted, with single soybean miso showing the highest inhibitory effect, followed by red miso and white miso in order.
著者
郡山 貴子 飯島 久美子 小西 史子 佐藤 瑶子 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.174-181, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
32
被引用文献数
5

多収穫を特徴とするムクナ属マメは,L-DOPAを乾燥種子中に3-9%と多く含有するため,食品としての利用は限られている。ムクナ豆の利用として味噌に着目し,種々の条件の組み合わせによる4種類:米麹辛口,米麹甘口,麦麹甘口,および米麹甘味噌を調製し,発酵中の外観及び成分変化を測定した。比較のため同じく4種類の大豆味噌を調製した。pH,酸度Ⅰ・Ⅱ,たんぱく質溶解度,および色測の値より,ムクナ豆味噌はいずれの種類においても大豆味噌と同様な熟成過程を経て味噌になった。ムクナ豆味噌のL-DOPA量は仕込み直後には味噌湿重量 100 g中 0.14-0.26 g残存していたが,発酵開始後は直線的に低下し,味噌完成時には検出されなくなった。官能評価の結果,ムクナ豆味噌の総合評価は大豆味噌に比べて高い傾向を示し,中でも米麹を用いた甘口味噌の評価が高い傾向がみられた。ムクナ豆米麹甘口味噌の抗酸化能は大豆米麹甘口味噌よりも有意に高く,DPPH法では1.7倍,ORAC法では4.5倍高値を示した。これらのことより,ムクナ豆を主原料とした味噌は発酵過程でL-DOPAが消失し,嗜好性が良好で,抗酸化能にも優れることが示された。
著者
田原 美和 森山 克子 東盛 キヨ子 金城 須美子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.49-56, 2015 (Released:2015-03-06)
参考文献数
47

沖縄の代表的な祖先祭祀の一つである清明祭の伝来の経緯や行事食の変遷を概観し,併せて,日本調理科学会特別研究「行事食・儀礼食」調査の結果を世代別(若年層30代以下,中高年層40~80代)で比較しながら,清明祭の行事食が若い世代に受け継がれているのか考察を行った。沖縄の清明祭は,18世紀には中国の渡来人の集落(久米村)で執り行われており,その後,首里王府,士族,そして庶民へと伝わっていった。主な供物として,国王墓や久米村では,中国の三牲に倣ったウサンミ(御三味=豚・鶏・家鴨・魚など)を供えていたが,近年は,伝統を守っている所もあるが,大方その素材を用いた重箱料理に簡略化している。アンケート調査の結果,清明祭の認知度,経験の状況はいずれの世代も高い。行事の供物である重箱料理は,以前は手作りをしていたが,現在は一部既製品を利用する,購入するなどの割合が多くなり外部化傾向がみられる。こうした状況から,若い世代は清明祭の概要について認識はしているが,食材や調理の知識や体験が少なく,次世代への伝承が危惧される。今後は,調理技術や家庭の味を守り,受け継ぐために,清明祭の意義を理解させ,家庭や地域,教育機関等で行事食の習得を促進するなど,積極的に関わる必要があると考える。
著者
今野,暁子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, 2003-02-20

The extent to which iron is eluted by different cooking methods from an iron pot during cooking was investigated. The addition of seasonings and the use of oil, as well as the effect of heating time,・were evaluated. The amount of iron eluted tended to be less with the use of oil, and was also affected by the seasoning added during cooking. In particular, the amount of iron eluted was markedly increased when vinegar was added. The amount of iron eluted also increased with increasing heating time. 78-98% of the iron that was eluted from the iron pot was in the form of easily absorbed ferrous compounds. Added vinegar resulted in 98% of the eluted iron consisting of ferrous compounds which exhibited outstanding stability. The results of this study demonstrate that the amount of iron supplied depended on the cooking method employed.
著者
森高 初恵 中西 由季子 不破 眞佐子 谷井 涼子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.115-122, 2012-04-05
被引用文献数
2

米飯摂食後の血糖値上昇抑制を目的として,米飯へ0〜2.5%寒天を添加した効果について,嗜好特性,熱特性ならびに血糖値を測定して検討した。高い濃度の寒天を添加した米飯においては,味,香り,外観は悪いと評価され,硬さは硬いと評価された。昇温DSC曲線における最も高温の吸熱ピークは,寒天添加により高温側へシフトし,エンタルピーは小さくなった。米飯摂取後120分間の血糖応答曲線において,寒天の添加により血糖値は緩慢に増加し,最大血糖値は低下した。グリセミックインデックスは,寒天無添加米飯で大きく,寒天濃度が増加すると減少した。
著者
奥田 和子 林 香枝
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.24-30, 1997-02-20

市販の4種類の菜箸-長さの長短,箸頭の紐の有無,箸先の滑り止め加工の有無,金属製と木製-を用いて実際に調理を行いながら,両箸の機能性を10ないし11項目について評点比較した結果,次のことが判明した。1) 長(33cm)短(30cm)の箸の比較を,茹で卵,茹でそうめん,卵焼き,たまねぎ妙め,フライドポテトの調理で行った。前3者では,長い箸の評点は短い箸の評点3に比べて有意に低く,短い箸の方が使い易かった。一方,たまねぎ妙めの調理では「妙めやすさ」「油の手に飛び具合」「手の熱くなり具合」の3項目で長い箸の評点はそれぞれ3.24,3.74,3.94であり長い箸は有意に使い易かったが,その他の項目では,短い箸の方が有意に使い易かった。フライドポテトを揚げる調理では「揚げ易さ」「油の手に飛び具合」「手の熱くなり具合」の3項目で長い箸の評点はそれぞれ3.59,3.76,3191で長い箸は有意に使い易かったが,その他の項目では短い箸の方が有意に使い易かった。2)紐の有無による差を茹でそうめんの調理で比較した結果,紐の付いた箸の評点は2.33から2.76で,紐のない箸の評点3に比べて有意に使いにくかった。3)滑り止めの有無による差を茹でそうめんの調理で比較した結果,箸の持ち易さでは両者に差がなかったが,その他の項目では滑り止めの付いた箸の評点は3.24から4.19で,滑り止めのない箸の評点3に比べて有意に使い易かった。4)金属製と竹製をフライドポテトを揚げる調理で比較した結果,「油の手に飛び具合」と「手の熱くなり具合」では金属製の箸は3.31,3.22で竹製の3より良好であったが,その他の項目では,金属製の箸の評点は1.66から2.40で竹製の箸の評点3に比べて有意に使いにくかった。5)妙める,揚げるといった調理操作中には長い箸33cmの方が望ましいが,それ以外の調理では短い箸30cmで紐がなく,滑り止めの加工を施した箸の方が使いやすいことが判明した。
著者
永塚 規衣 大野 隆司 大川 佑輔 松下 和弘 仁科 正実 峯木 眞知子 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.360-365, 2004-11-20
参考文献数
10
被引用文献数
3

煮こごりを始めとするゼラテン料理に加えられるアルコール量のゲル化に及ぼす影響をみるために低濃度から高濃度(1%,3%,5%,10%,20%)まで変化させたアルコール添加ゲルを調製し,動粘度モニタリングシステム,旋光度,動的粘弾性,レオメーターによる力学特性及び^<17>O-NMRのスピン-格子緩和時間(T_1)の測定,電子顕微鏡によるゲル内部の組織観察を行い,得られた結果を以下にまとめた。(1)アルコール添加濃度が高濃度になるほどゼラチン分子のゲル化特性(ゲル化温度,旋光度,粘性率及び弾性率の低下)に影響を及ぼし,初期の架橋形成も遅れることが示唆された。つまり,高直度のアルコール添加はゲル化が阻害されることが明らかとなった。(2)10%以上の高濃度アルコール添加ゲルの物性は,表面はゴム状の延性的性状を有したが,(1)の結果から内部は網目構造の少ない口どけの早いゲルを形成すると推測された。(3)ゾルのNMR測定及びゲル内部の組織観察から,10%以上の高濃度アルコール添加はアルコールと溶媒の水との相互作用により,ゼラチン分子の網目形成が阻害され,ネットワークの少なく組織構造の変化したゲルを形成することが認められた。
著者
新澤 祥恵 中村 喜代美
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.89-98, 2001-02-20
被引用文献数
7

伝統的年中行事のなかで,位置づけの大きい正月の食生活の動向を探るため,石川県を中心とした地域に居住する女子短大生の正月3が日の食生活より,雑煮と和風おせち料理の喫食について約20年間の変化を検討した。1) 雑煮では,正月3が日をとおしての喫食率は若干減少傾向にあるものの,ほとんどのものが食べていた。しかし,日別にみると,調査当初の1978年では,大部分が元日に食べているが,1984年以降は元日に必ず食べるといった傾向は少なくなり,また3が日間の平均喫食回数も徐々に減少していた。2) 従来よりも一般的におせち料理としてよく取り上げられるものや,当地の正月に準備されるもののなかで,出現頻度の高いもの18品目を検討した。回答者のほとんどがこれらのうち,なんらかの料理を喫食していたが,個々にみるとほとんどの料理の喫食率が減少しており,料理の種類が少なくなっていることが推察された。また,日別に分析すると,元日は食べても2日,3日と減少しており,特に当初よりも最近の調査においてその傾向が顕著になっていた。3) 回答者の居住地域(金沢地区,加賀地区,能登地区,石川県外)による喫食状況を比較したところ,有意差のある料理は少なかった。特に調査当初は有意差の認められる料理もあったが,1991年以降は全くなくなり,伝統的な行事食も画一化されていることが推察された。また,回答者の家庭の家族形態による喫食状況の比較では,高齢の家族との同居が予想される拡大家族世帯での喫食率が高いことを期待したが,有意差のある料理は少なく,あっても,核家族世帯のものの喫食率の高いものが多かった。4) 正月3が日に喫食した料理を,和風,洋風,中華風等に分類して検討したところ,喫食料理は減少しており,特に和風料理の減少が著しかった。これに関連し,主食類の動向を分析したところ,軽食類の増加が大きかった。また,洋風・中華風料理は若干増加しているが,特に種類が多様化する傾向がみられた。5) 以上の調査結果より,正月行事は大きな節目として依然として生活の中に根づいており,その中で雑煮や従来より継承されたおせち料理を食べる習慣も続けられていくものと考えられる。しかし,従来のように正月中続けて食べることはなく,元日のみ儀礼的に食べるといったかたちとなり,おせち料理の形式も徐々にではあるが変容していくことが推察された。
著者
松本 仲子 松田 康子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.58-65, 2000-02-20
被引用文献数
3

料理方法の簡便化を目的として,いくつかの料理を従来行われてきた方法と簡便な方法とで調理し,それらの調理法の間に差がみられるか否かについて検討した。かぼちゃの煮物,さといもの煮物,ふろふきだいこんでは,従来は下処理として野菜を下茄でしてから煮るのが普通であるが,下茄でせずに煮汁で直接煮たものとを比較すると,両者の問には有意差は認められなかった。 じゃがいもの妙め煮となすの揚げ煮において,加熱前に水さらしするかしないかを比較した結果についても両者の間には有意差はみられなかった。 麻婆豆腐では,予め豆腐を茄でたものは,茄でないものに比べて有意に低く評価された。 ぶりだいこんでは,ぶりを水洗いする,湯煮するなど5方法の下処理を行ったが,いずれの方法にも有意差はみられなかった。 あじの煮つけにおいては沸騰した煮汁にあじを入れるのと沸騰させないであじを入れて煮た場合を比較した結果,二方法の間には有意差は認められなかった。 稲荷ずしの油揚げの煮時間を変えて比較した結果,煮時間が5分と短いものは有意に評価が低かった。 茶碗蒸しについては,卵液を濾したものと濾さないものまた,蒸し器で蒸したものと地獄蒸ししたものとをそれぞれ比較した結果は,いずれの比較においても有意差はみられなかった。 炊き強飯では加熱前の浸水時間を変えて比較した結果,浸水時間が18時間と長いものは,低く評価された。
著者
角野 猛 会田 久仁子 金子 憲太郎 金田 尚志
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.253-256, 1995-11-20

キムチの生菌数を好気培養および嫌気培養法による測定, 分離菌の形態観察および腸内細菌科の菌属, 菌種の同定を行い, 次の知見を得た。1. 好気培養および嫌気培養法による生菌数は, それぞれ, 10^2〜10^8および10^3〜10^8/gであり, 培養法による生菌数には大きな相違は認められなかった。2. 好気および嫌気培養共にグラム陽性の無芽胞桿菌が最も多く分離された。3. 分離された腸内細菌科の53株の菌属はEnterobacterが最も多く, 67.9%を占めていた。次いで, Serratia属, Erwinia属, Klebsiella属, Hafnia属の細菌であった。
著者
木戸 詔子 大野 佳美 角田 万里子 口羽 章子 中原 満子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.140-147, 2006-04-20
被引用文献数
1

高齢者にむせないで利用しやすい「合わせ酢」の開発を目的に,その前段階として女子大生を対象として,3種類の市販の食酢を用い,4種類の方法で調製した「合わせ酢」の官能評価を行った。なお,酢の物が「好き」「どちらでもない」「嫌い」の3グループに分けて評価を行った。その結果,以下の通りにまとめられた。1)「基本の合わせ酢」を市販の「穀物酢」,「米酢」,「純玄米酢」を用いて評価したところ,酢の物が「好き」のグループでは,「穀物酢」がすっきりしてさわやかであるなどの理由で「米酢」よりも好ましく,「純玄米酢」はまろやかな点から好まれた。しかし,「どちらでもない」のグループでは3種類の食酢での相違はほとんどみられなかった。「好き」と「嫌い」のグループ間で「穀物酢」や「純玄米酢」で調製した「基本の合わせ酢」では,0.1%の有意水準の差があったが,「米酢」では3グループ間での有意差はなく,「嫌い」のグループで評価が高かった。2)「基本の合わせ酢」の加熱処理は,穏やかな沸騰持続20〜30秒が,風味が失われず,酸度が5%低減してまろやかさが得られたが,官能評価では,3グループともに期待される効果は見られなかったものの,「嫌い」のグループでは5%有意水準で加熱による評価が高かった。3)「合わせ酢」を3倍に希釈した食酢10%相当の「希釈の合わせ酢」は,特に「嫌い」のグループで0.1%の有意水準で高い評価が得られた。4)砂糖濃度5%の「合わせ酢」の官能評価では,「好き」および「どちらでもない」のグループと「嫌い」のグループでの評価では,それぞれ0.1%の有意差があったが,砂糖濃度が8%になると5%有意水準となり,砂糖濃度13%では有意差がなくなり,「嫌い」のグループの評価は「好き」の評価と同等の高い評価を示した。5)「合わせ酢」について,香り,酸味,甘味,塩味,旨味,おいしさ,のみ込みやすさ,後味,総合評価の9つの評価項目間の相関関係を求めたところ,特に「のみ込みやすさ」は「総合評価」と強い正の相関関係をもち「合わせ酢」の重要因子であることが明らかとなった。また,「のみ込みやすさ」と「酸味」は負の強い相互関係を示し,「甘味」と「香り」が正の相関関係を示し,「のみ込みやすさ」の重要因子であることが分かった。この研究は日本調理科学会近畿支部・高齢と食分科会の研究活動の一環として行ったものである。
著者
奥田 弘枝 田坂 美央 由井 明子 川染 節江
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.2-9, 2002-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
3

食品の色彩識別と味覚の関係について若年層の傾向を把握することを目的に20歳前後の男女826名を対象にアンケート用紙に色見本を添え調査し,次のような知見を得た. 食べ物の色が食欲増進に影響するという認識は,男8(8)食品の色彩と味覚の関係子80.6%に対し,女子は92.4%と1割程度高く,影響しないとの回答は男子が9.3%に対し,女子は1.9%と低く,この回答率についての性差はx2検定により有意と認められた. 20歳代の男女が食欲を増進させると意識している色は,上位から赤,オレンジ,黄の3色,逆に減退させると意識している色は黒茶,紫,青の4色が主であった. この男女の選択率を変量としたスピアマンの順位相関係数は高く有意と認められ,男女が共通した意識をもっていることが分かった. 味覚と色彩との関連では,男女とも甘味からはピンクとオレンジの暖色系を,酸味からは黄色,塩味から白,苦味からは茶と無彩色,うま味からはオレンジ,赤,茶をそれぞれイメージし,これらの結果にも相関係数により男女間の一致性は高く有意と認められた. 食べ物の配色については,色相の隔りが小さく色みの近いもの,あるいは,隔りの大きい色相の異なった色が選ばれていた. 性別でみると男女に共通しているのはオレンジ,黄,黄緑若干異なるのが緑,白,大差が見られるのは茶であった. 料理の色の組み合わせについての関心度は,女子のほうが男子よりも高く「大変ある」の回答者は,男子6.5%に対し女子は24.3%と男子の4倍であり,この男女差はZ2検定により有意が認められた.