著者
間宮 貴代子 小出 あつみ 阪野 朋子 松本 貴志子 山内 知子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.58-64, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究では愛知県の雑煮を構成する食材について検討した。愛知県の雑煮の食材構成では,東日本で多く使用された角餅に,醤油とかつおだしの清まし仕立てが多かったが,これは味噌仕立を嫌った武家社会の歴史的影響である。具は古くからの形式が現在も維持され,縁起担ぎから,尾張地域在来の餅菜が使用され,かまぼこ・なるとを加え,かつお削り節を添えていた。しかし,尾張地域と三河地域には相違点がみられた。和風風味調味料の使用が,女性の労働力率が高い三河地域で有意に多かった。また,三河地域の雑煮の具は,収穫量が多い白菜,豆腐・油揚げ(大豆),人参を使用する地産地消の傾向が伺え,尾張地域より多彩な具であった。
著者
沢村 信一
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.231-237, 2011 (Released:2014-06-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

現代の抹茶は,微細に粉砕され,滑らかな食感である。このように微細になったのは,茶の栽培技術や粉砕道具の発達を考慮すると近世になってからと考えられる。粉砕の面から抹茶を4期に分けて再現し,その粒度を測定し味の評価を行った。薬研で粉砕した2種類の抹茶は,粒度が粗く,ざらつきを感じた。味は,強い苦味を感じた。2種類の茶臼で粉砕した抹茶は,微細に粉砕され,滑らかな食感であった。味は,まろやかでうま味を感じた。
著者
貝沼 やす子 福田 靖子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.139-147, 2002-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

要約: 1.竹炭を利用して炊飯した米飯は低温保存後のかたさの増加が抑制された。特に80%圧縮で顕著であり,米飯粒内部の糊化が促進されているものと考えられた。竹炭浸出液を使っての炊飯に効果が期待できた。2.竹炭を長時間水に浸漬して得られた竹炭浸出液を使って炊飯した米飯は,白飯よりやわらかく,おいしいと評価された。3.竹炭浸出液のpHは高くなり,浸出条件によってはpH10近くにもなる。カリウムを多く含むのが特徴であり,導電率とカリウム含有量に正の相関関係がみられた。また,微量ではあるが,強いアルカリ性を示す成分の溶出がみられた。これらの傾向は800℃ の竹炭で再現性が高かった。4.竹炭浸出液は加熱することによりpHは高くなり,浸出条件による差はなくなった。また,米を入れて浸漬,加熱することにより,pHは8前後と低くなったが,水のみでの炊飯よりは高いpHであった。5.竹炭を利用した炊飯液には全糖,タンパク質が有意に多く溶出していた。これらが液の濁度を高めているものと考えられ,特に全糖量と濁度には正の相関関係がみられた。竹炭利用による炊飯水の高いpHがデンプンの分解を促進し,老化の抑制に効果的に働いているものと推察した。
著者
安部 春香 髙橋 弘一 冨永 美穂子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.254-263, 2017 (Released:2017-12-21)
参考文献数
16

甘藷の切干しは長崎県の多くの地域で「かんころ」と呼ばれている。「かんころ」の呼称は長崎県外にも存在するが,製造工程を含め同じものであるかは不明瞭である。そこで本研究では,西日本を中心に長崎県内外における「かんころ」の製造工程および甘藷の切干しの呼称とその分布状況を明らかにすることを目的とした。 甘藷の切干しの有無やその呼称などに関して西日本の海岸沿いの府県,市町村などの行政庁,教育委員会,計691ヶ所を対象として,甘藷の切干しに関する質問紙調査を郵送法により実施した。長崎県内の2地域ならびに県外8地域において,地域食文化に精通していると考えられる質問紙回答者を中心に「かんころ」の製造工程や呼称などに関するインタビュー調査を行った。 長崎県内調査においては,「かんころ」の製造工程は同じであったが,調査地域間で使用する器具や「干し棚」の構造に違いが見られた。甘藷の切干しの呼称は「干しいも」が最も多く,西日本全体に広く分布していた。「かんころ」は九州北部から瀬戸内海沿岸地域にかけ帯状に広がっていた。「かんころ」は甘藷の切干しに関連した呼称であったが,その製法は調査地域間で異なっていた。
著者
杉山 久仁子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.299-303, 2013 (Released:2013-10-18)
参考文献数
15
被引用文献数
2
著者
本田 佳代子 阿久澤 さゆり 澤山 茂 中村 重正 川端 晶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.226-231, 1997-08-20
被引用文献数
1

凍みいも2種を山梨県鳴沢村より,ブランコ,ニグロをボリビアより入手した。一般成分と糊化特性を検討し以下の結果を得た。1. 一般成分は,澱粉含量は56%であった。窒素含量も少なく生じゃがいもに比べて成分の変化がみられた。総食物繊維量は,生じゃがいもに比べて顕著に増加しており,中でもリグニンの含量が高かった。2. 示差走査熱量分析では,糊化開始温度が生じゃがいもに比べて凍みいもはわずかであるが高温側であった。また,ブランコ,ニグロでは低温側にあった。3. 澱粉の水可溶性区分の分子量を比較したところ,凍みいもとブランコ,ニグロは高分子側にピークがみられた。また,ヨウ素呈色反応によりFr I, II, III に分けたところ,生じゃがいもではFr III までみられたが,凍みいもではFr II までしか測定されず,凍結乾燥による組織成分の変化が示唆された。
著者
堀江 秀樹 平本 理恵
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.194-197, 2009 (Released:2015-02-13)
参考文献数
8
被引用文献数
3

野菜の消費拡大のためには,おいしく味わう工夫が重要である。予備試験の結果,ニンジンを蒸し加熱することで甘味が増強する可能性が示された。そこで,蒸し時間を変えたニンジン片について,官能評価と理化学評価を行った。蒸し時間が増すにつれて,官能的には,軟らかさ,ジューシーさと甘味が増加した。蒸すことによる甘味は糖含量によって説明できなかった。それはニンジン片中の糖含量は蒸し加熱によって変化しないからである。30秒間一定の低圧で加圧したときに蒸したニンジン片から滲出するエキスの量を比較した。より長時間蒸したニンジン片から,より多量のエキスが集められた。エキス中の糖類の濃度は約10%であった。容易に滲出するエキスの量が感覚的な甘さやジューシーさに関係するものと考えられる。
著者
馬橋 由佳 大倉 哲也 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.323-328, 2007-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
1

炊飯の昇温期の温度履歴の違いが米飯の化学成分に及ぼす影響を調べた。5種の異なる昇温速度での炊飯では,全糖および還元糖量が昇温速度に応じて増加した。グルコース量は昇温速度が遅くなるにつれ有意に増加したが(p<0.001),フルクトースおよびスクロース量には変化がなかった。総遊離アミノ酸は炊飯によって有意に増加したが(p<0.05),5種の昇温速度に依存した量差はほとんどみられなかった。昇温期に40℃,60℃,80℃ を15分間保持した3種の炊飯においては,特に60℃を維持したもので全糖,還元糖量が増加した。グルコース量は60℃(p<0.001)および80℃(p<0,05)の温度保持で有意に増加し,フルクトースおよびスクロース量には違いがみられなかった。総遊離アミノ酸は,グルコースに比べ量差は小さいものの, 40℃, 60℃の温度保持により有意に増加した(.p<0.05)。
著者
井部 奈生子 肥後 温子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.189-196, 2012 (Released:2014-02-28)
参考文献数
17
被引用文献数
1

市販ぬれせんべい17種類の水分量は9.8~28.7 g/100 g,水分活性は0.38~0.81であり,製法,水分含量,テクスチャーを異にする各種の製品があった。そこで,調湿が水分およびテクスチャーに及ぼす影響を含めて製品を分類したところ,揚げせんべいタイプ,半乾きせんべいタイプ,湿せんべいタイプ,湿おかきタイプの4つのタイプに分類できた。なお,3タイプの代表的な製品について官能評価を行ったところ,破断しやすい製品が好まれる傾向がみられ,半乾きせんべいタイプの硬い食感,濃く味付けされたおかきの味が嫌われた。
著者
遠藤 瑶子 藤居 東奈 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.8-14, 2013 (Released:2013-11-22)
参考文献数
22
被引用文献数
6

調理過程における根菜類中のNaCl拡散係数およびNaCl濃度の変化について検討した。ダイコン,ニンジン,ジャガイモは2 cm角に成型し, 20,50,70°Cで16,8,6時間0.2 M NaCl水溶液に浸漬し,拡散係数を測定した。測定の結果,拡散係数はダイコン>ニンジン>ジャガイモの順に大きく,水分含量が多いほど拡散係数は大きかった。2 cm角のダイコンを試料として20°Cの0.2~0.8 M NaCl水溶液におけるNaCl拡散係数を測定したところ,この範囲での拡散係数の濃度依存性はほとんどみられなかった。測定した拡散係数を用いて,温度変化,濃度変化を伴う調理条件での各体積要素の平均食塩濃度の変化を予測したところ,予測値と実測値はよく一致した。よって,試料を1mm3の体積要素の集合体とし,差分方程式を用いることで,試料の食塩濃度の分布および全体の平均濃度の予測が可能であることを示した。
著者
杉山 寿美 原田 良子 平岡 美紀 大重 友佳
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.192-200, 2010 (Released:2014-11-21)
参考文献数
28
被引用文献数
2

コラーゲンに対する生姜プロテアーゼの作用は,酸性条件下でのテロペプタイドに対するものであり,三重らせん部位に対しては作用しない。一方,生姜プロテアーゼはコラーゲンの熱分解物であるゼラチンには作用する。我々は,コラーゲンに対する生姜プロテアーゼの作用に基づき,加熱・温蔵過程における鶏肉のコラーゲンの変化と軟化を検討した。その結果,加熱により,鶏肉の酸可溶性コラーゲン(ASC),ペプシン可溶化コラーゲン(PSC)は減少したが,不溶性コラーゲン量(ISC)は増加した。加熱調理した鶏肉の温蔵は,ゼラチン化を促し,コラーゲン総量を減少させた。生姜搾汁の添加ではコラーゲン総量が減少し,加熱後に生姜搾汁を添加した場合に著しいものだった。これは,加熱調理および温蔵過程で不均一な構造となったコラーゲンの熱変性部位に生姜プロテアーゼが作用したためと考えられた。また,生姜搾汁を添加し温蔵した鶏肉は,生姜搾汁を添加していない鶏肉と比較して剪断強度が低かった。
著者
飯島 久美子 小西 史子 綾部 園子 村上 知子 冨永 典子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.154-162, 2006-04-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
20

A questionnaire survey was conducted to identify the regional variety of Japanese New Year's dishes and how they are prepared.Questionnaires were sent out to students of universities and colleges throughout Japan in December 2001 and 2608 questionnaires were collected in January 2002.Japanese soba was eaten by 74.8% of Japanese on New Year's eve, while Okinawa soba was eaten by 58.8% in Okinawa. Osechi dishes were eaten by 79.6% during the New Year period, most being homemade although some were bought from shops. Kuromame was most commonly eaten, followed by boiled fish paste, cooked herring roe, cooked sweet-potato paste, cooked vegetables, cooked sardines, fried eggs, rolled kombu and vinegared dishes. The cooked vegetables and vinegared dishes were mostly homemade, while fried eggs and boiled fish paste were mostly purchased from shops. The popularity of Japanese New Year's dishes varied according to the region although it has decreased compared to that of 23 years ago.
著者
峯木 眞知子 鈴木 惇
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.58-62, 2005-01-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
18

Smaller hens's eggs and yolks are composed of smaller yolk spheres, and vice-versa for larger yolks. We examined whether the size of the yolk spheres was related to the size of eggs and yolks in eggs from different birds. The cross-sectional area of the yolk spheres in the intermediate layer of steamed yolks was measured by the image-processing technique.The weights of the eggs and yolks from different birds were greatest in the ostrich (>duck>White-Leghorn >Nagoya>guinea fowl>quail). The weight of an ostrich egg was about 25 times greater than that of hen eggs,, and about 120 times greater than that of quail eggs. The cross-sectional area of yolk spheres was greatest in the White-Leghorn (>ostrich>duck>Nagoya>quail>guinea fowl). There was no significant correlation between the cross-sectional area of yolk spheres and the yolk weight in eggs from different birds (r=0.12).The kinds of bird egg cannot be identified by the different cross-sectional areas of the yolk spheres.