著者
山崎 慎也 澁澤 登 栗林 剛 唐沢 秀行 大日方 洋
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.522-527, 2012-10-15 (Released:2012-11-30)
参考文献数
11

(1) 杏仁をエタノール濃度0∼99.5 % (v/v)の水溶液に1∼3日間,25℃で浸漬し,アミグダリン量の変化を調べた結果,エタノール濃度10∼30% (v/v)の範囲の水溶液に浸漬した杏仁において,特にアミグダリンの低減促進効果が高かった.(2) 0,20,50% (v/v)のエタノール水溶液に杏仁を浸漬し,アミグダリンの低減における酵素分解と浸漬液への溶出の割合について調べた結果,分解量は20% (v/v),溶出量は50% (v/v)で特に高い数値を示した.(3) 細胞損傷による酵素溶出がエタノール水溶液による低減の要因である可能性について検討し,エタノール濃度0% (v/v)においてもアミグダリンの減少が見られたことなどから,細胞損傷はエタノール水溶液によるアミグダリン低減機構の直接的な要因ではない考えられた.(4) 以上の結果から,エタノール水溶液によるアミグダリン低減促進効果の要因の一つとして,杏仁からのアミグダリンの溶出力とエタノール水溶液中での酵素活性のバランスにより,10∼30% (v/v)のエタノール濃度で特に高くなったという機構を推察した.(5) 杏仁を20% (v/v)エタノール水溶液に35℃で2日間浸漬することによってアミグダリン濃度を低減した後,蒸留水に交換してさらに35℃で2日間浸漬し,その後40℃で16時間送風乾燥を行うことで,最終的にシアン化水素残存量を7μg/gまで低減することができた.本研究の一部は,第58回日本食品科学工学会大会において発表した.
著者
内山 成人
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.356-363, 2015-07-15 (Released:2015-09-01)
参考文献数
78
被引用文献数
1 5

S-equol is a major intestinally-derived bacterial metabolite of daidzein, one of the principal isoflavones found in soybeans and most soy foods. S-equol has a similar structure to estrogen, and binds to estrogen receptors to exhibit estrogenic activity. S-equol has been shown to bind to estrogen receptors (ER) α and β and to effectively activate both receptors, although with greater transactivation of ERβ. It has been proposed that the ability to make S-equol when soy is consumed may be an important factor in determining the clinical efficacy of a soy diet, the so-called “equol hypothesis”. Equol has many beneficial effects on menopausal women. However, equol production depends on the individual’s intestinal flora; and research has shown that only 30 to 50% of individuals in the populations studied are capable of producing equol from daidzein. A lactic acid bacterium, Lactococcus garvieae (Lactococcus 20-92 strain), with equol-producing capabilities was identified and isolated from human feces. Recently, we standardized the production of an S-equol supplement (SE5-OH) using this strain. Reports suggest that the S-equol supplement contributes positively to menopausal symptoms, bone health, metabolic syndrome and skin aging. In this paper, we introduce new insights into equol or SE5-OH based on epidemiological and clinical study.
著者
伊藤 百合子 荒川 奈津枝 高村 あゆみ 森光 康次郎 久保田 紀久枝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.121-129, 2006-02-15 (Released:2007-03-07)
参考文献数
22
被引用文献数
3 4

1.スウィーティオパイナップルはレギュラーパイナップルに比べ豊かな香りが特徴であるが,香気成分量的にも顕著に多いことが確認された.また,上,中,下部の香気成分量に大きな違いがなく,最も少ない上部においても,レギュラーよりも香気成分量が多いことがわかった.2.フラネオール含量はいずれのパイナップルにおいても高い含有量を示すが,レギュラーでは,フラネオールの含有量が,突出しているのが特徴であるのに対し,スウィーティオでは,フラネオールの他に,3-(メチルチオ)プロパン酸メチル,メシフラン,ヘキサン酸メチル,4-ヘキサノライド,2-メチルブタン酸メチルおよびヘキサン酸エチルの含有量が高く,全体の成分組成のバランスが両パイナップル香気の違いに関与していると考察された.3.AEDA法およびodor unitによりスウィーティオパイナップルの香気寄与成分を抽出すると,量的な主成分であったフラノン類,含S化合物などに加えて短鎖のエステル類である2-メチルブタン酸メチルと2-メチルブタン酸エチルが重要成分として抽出された.4.2-メチルブタン酸メチルと2-メチルブタン酸エチルの立体配置について検討した結果,スウィーティオパイナップルでは,それぞれ97.4% eeおよび100.0% ee, レギュラーパイナップルでは99.0% eeおよび100.0% eeで(S)-体を主成分としていることを確認した.5.高いodor unitを示した2-メチルブタン酸メチルと2-メチルブタン酸エチルについて,ラセミ体を用いてであるがレギュラージュースへの添加実験を行い,官能評価を行った結果,この2種類のエステルを添加することにより,“広がりのある”,“さわやかな”および“果実様の”香りが強められ,スウィーティオパイナップルの香りに類似することが確認され,重要成分であることが分かった.
著者
舘 和彦 小川 宣子 下山田 真 渡邊 乾二 加藤 宏治
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.456-462, 2004-09-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

乾熱卵白を生中華麺に添加した時の影響について力学物性値の測定と官能試験の結果より評価した.また走査型電子顕微鏡を用いて中華麺の表面および断面構造を解析することにより,以下の結論を得た.(1) 中華麺に乾熱卵白を添加することで茹で伸びを抑制し,破断応力,瞬間弾性率は上昇し,硬さおよび弾力性に改善が見られた.さらに付着性の低下より舌触りが良くなること,引っ張り時の歪率の上昇から伸長が良く切れにくくなっていることが推測された.(2) 官能試験の結果より,乾熱卵白を添加した中華麺は噛みごたえ,弾力性,つるみ感,伸長度において無添加麺や乾燥卵白を添加した麺よりも良い評価となり,且つ高い嗜好性を示した.(3) 走査型電子顕微鏡による観察結果より,乾熱卵白を添加した麺の表面構造は,無添加麺や乾燥卵白を添加した麺と比較して隙間が狭く,滑らかであった.また乾熱卵白を添加した麺の断面構造も,蛋白質によって構成される網目構造が細かく,密であった.
著者
小関 成樹 伊藤 和彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.390-393, 2000-05-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
7 12

電解水の保存中の変化を検討した結果,以下のことが明らかになった.1) 短期間の保存において,強酸性電解水のORP,有効塩素濃度は明所開放条件によっては速やかに低下し,有効性を失うことが示された.一方,遮光密閉条件において強酸性電解水は安定していることが確認された.また,強アルカリ性電解水は保存条件によらず不安定であった.2) 長期間の保存においても強酸性電解水は遮光密閉状態であれば安定した状態を保つことが明らかになった.また,遮光しない場合にはORP,有効塩素濃度は速やかに低下してしまうがpHは変化を示さないことから,活性を失っても酸性を示す水溶液であることが明らかになった.
著者
谷口 久次 橋本 博之 細田 朝夫 米谷 俊 築野 卓夫 安達 修二
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.301-318, 2012-07-15 (Released:2012-09-04)
参考文献数
131
被引用文献数
4 21

Consuming rice as the staple, 0.95 million tons of rice bran is produced annually in Japan as a by-product from the rice milling process. Bran is used in several applications such as animal feed and fertilizer for mushroom cultivation, but most of it has been discarded as an agricultural waste although it contains various functional substances, such as γ-oryzanol, ferulic acid, sterol, wax, ceramide, phytin, inositol and protein. It could be considered a scarcely used but promising resource. As such, continuous efforts have been dedicated to exploring its effective utilization. In this context, functionalities of the substances contained in the bran are summarized, and our attempts for improving functionality, improving ease of use, and exploring new applications are presented.
著者
渡邉 悟 牛澤 良美 草間 正夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-6, 1996-01-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

アルカリ条件下でクロロゲン酸(Chl)とアミノ酸が反応して緑色色素を生成する現象は知られている.著者らは新しい天然色素の開発や食品中の色の変化についての基礎的な知見を得るため,Chlとグリシン(Gly)から生ずる緑色色素に対するpHの影響等について調べた.Chl・Gly混合液をアルカリ性でインキュベーションすると,680nmに極大吸収をもつ緑色色素が生成するが,この緑色色素を各pH (2~9)で処理すると,各pHでそれぞれ異なる吸収スペクトルが得られ,酸性側からアルカリ性側にかけて,赤,紫,青,緑系の色を呈した.これらの吸収スペクトルおよび呈色状況は時間とともに変化した.さらに各pH処理した緑色色素をHPLCで分析した所,各pHでパターンが異なり,アルカリ性で生成した緑色色素は複数の反応生成物から成ることがわかった.
著者
植村 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.151-156, 2003-04-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
松井 利博 白水 智子 坂口 貴臣 金谷 太作 寺澤 和広 川﨑 健司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.118-123, 2018-03-15 (Released:2018-03-20)
参考文献数
18

本研究で筆者らは,硬さの違うガムを噛んだ際の咀嚼効果の検討を行った.「硬ガム」を噛むと刺激時唾液量が「軟ガム」に比べて有意に多いことが確認された.「硬ガム」の咀嚼前後で有意に唾液中の菌数が減少していることが確認された.更に「軟ガム」と「硬ガム」を比較すると,唾液中菌数の減少率に有意な差が認められた.「硬ガム」を噛んだ後の方が噛む前に比べて,認知課題中の脳活動が有意に高くなることが確認された.これらのことから,硬さの異なるガムを噛んだ際の咀嚼効果に対する新たな知見が得られた.食品としてのガムは,硬いガムの方が軟らかいガムより,刺激時の唾液分泌量を増加させ,唾液中の菌数を減少させることが示唆され,口腔衛生への寄与が期待された.硬いガムは日常生活においてQOLを維持向上させる簡便なツールとして活用される可能性が期待された.
著者
盛永 宏太郎
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.416-421, 2001-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
11

大豆種子の組織を破壊した後,加水膨潤と加熱を行い組織破壊の程度がTIの熱失活に与える影響を調べて次の所見を得た.(1) 膨潤丸大豆と磨砕大豆に0.05Mリン酸緩衝液(pH 7.6)を加えて沸騰水浴中で20分間加熱したところ,いずれも膨潤丸大豆に残存するTI活性の方が磨砕大豆のTIよりも小さい値になった.そしてその値は120℃ 30分間加圧加熱したときの磨砕大豆の残存TI活性値に匹敵するものであることを認めた.(2) 丸大豆と破砕大豆微粉にリン酸緩衝液を加えて吸水膨潤後に沸騰水浴中で加熱したところ,加熱約5分までは微粉のTIの方が急激に熱失活した.そして両者共に,加熱5分後のTI活性は大豆1mg当たり,生大豆の約1/10相当する数単位になった.しかしそれ以後は微粉のTIは下げ止まりの傾向を示すのに対して,丸大豆はさらに減少し加熱20分後には破砕大豆のTIの約1/2にまで減少した.(3) リン酸緩衝液を加えて吸水膨潤した丸大豆と破砕大豆微粉を20分間加熱したところ,80℃以下の温度では,TI活性減少率は微粉の方が大きかったが,80℃以上では,丸大豆の方が大きくなった.(4) 破砕大豆にリン酸緩衝液を加えて吸水膨潤後に沸騰水浴中で20分間加熱したところ,微細に粉砕した大豆のTIほど熱失活しなくなった.しかし粒径1mm程度で限界に達し,それ以上に粉砕してもさらなる差異は生じなかった.(5) 圧扁大豆にリン酸緩衝液を加えて吸水膨潤後に沸騰水浴中で20分間加熱したところ,圧扁の程度が増すほどTIは熱失活しなくなった.(6) 剥皮した大豆を150℃ 20分焙煎すると剥皮処理を行うことでTIが熱失活しなくなる傾向が見られた.しかし湿式加熱ではこの傾向は認められなかった.また大豆をナイフで切断した大豆にリン酸緩衝液を加えて吸水膨潤後に沸騰水浴中で20分間加熱したところ,分割の程度が少ない大豆では,TIの熱失活しなくなる傾向は認められなかったが,8分割以上に細かく分割した大豆では,有意にTIが熱失活しなくなることが認められた.以上(1)-(6)までの結果,大豆種子は湿式加熱においても,焙煎加熱で見られたように,組織破壊の程度に応じてTIは加熱しても熱失活しなくなることが明らかになった.従来,大豆加工や調理においては食味向上を兼ねて大豆組織が充分に軟らかくなるまで煮熟するのが一般である.しかし以上の結果から,単に大豆のタンパク質の消化向上を目的とする場合は,過度の煮熟は必要なく,また加熱前に大豆を挽き割ったりすり潰したりする処理も不要であるように思われた.
著者
羽倉 義雄 行友 純恵 鈴木 徹 鈴木 寛一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.518-521, 2006-09-15 (Released:2007-09-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

鰹節の切削に及ぼすガラス転移温度の影響を検討した.水分11.34%の鰹節をガラス状態(25℃)とラバー状態(70℃)に設定し,それらを鰹節削り器で削り,削り節の歩留り,切削抵抗および切削エネルギーを測定した.切削物量の評価では,ガラス状態よりもラバー状態の鰹節の方が総切削量は多かった.また歩留りについても,ガラス状態よりもラバー状態の鰹節の方が常に高い値を示していた.切削抵抗の評価では,ガラス状態よりもラバー状態の鰹節の方が切削抵抗は小さく,ガラス状態の85~90%程度の切削抵抗でラバー状態の鰹節を切削することができた.切削エネルギーの評価でも,ガラス状態よりもラバー状態の鰹節の方が切削エネルギーは小さく,ガラス状態の77~80%程度の切削エネルギーでラバー状態の鰹節を切削することができた.また比切削エネルギー(1gの削り節を得るために必要な切削エネルギー)についても,ガラス状態よりもラバー状態の鰹節の方が小さく,ガラス状態の25~46%程度の比切削エネルギーでラバー状態の鰹節を削り節に切削することができた.以上の結果,鰹節の切削工程では,ラバー状態の鰹節の方が,効率的に切削が可能であることが明らかとなった.これは鰹節を工業的に切削する際の省力化や歩留り向上の可能性を示唆している.
著者
盛永 宏太郎
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.219-225, 1997-03-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

丸大豆および大豆粉を焙煎してタンパク質の消化を調べ,次の知見を得た.(1) 乾燥丸大豆を150℃で10分間以上焙煎すれば,トリプシンのみでダイズタンパク質の約80%を消化することができた.これは水に懸濁した大豆粉を加熱した場合のタンパク質の消化率に匹敵する高い値であることが確認できた.(2) 丸大豆を180℃で10分間以上焙煎すると,タンパク質の消化率は次第に減少した.これは,基質タンパク質分子中の塩基性アミノ酸が,褐変反応などによって化学変化を受け,このためにトリプシンが作用しにくくなっているためと思われた.(3) ダイズを粉砕してから焙煎した場合には,150℃で加熱してもTIが失活せず,丸大豆の場合ほどタンパク質の消化がよくならなかった.(4) ダイズを焙煎してから粉砕するか,粉砕してから焙煎するかによってTIが容易に失活したり,失活しなかったりするということは,TIは本来,不活性体として生大豆組織中に存在していて,細胞破壊を受けた際に活性化すること,また,一旦,活性化したTIは熱安定性を増し150℃程度の焙煎処理では容易に失活しないのではないかと考えられた.
著者
佐藤 三佳子 前村 公彦 髙畑 能久 森松 文毅 佐藤 雄二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.182-185, 2012-04-15 (Released:2012-05-31)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

カルノシン,アンセリンを高濃度に含有する鶏肉抽出物の摂取が,中高齢者の筋力にもたらす影響を検討した.中高齢者20名を2群に分け,鶏肉抽出物をそれぞれ一日量に1 500 mg(カルノシン,アンセリンの合計量として225 mg)もしくは0 mgを4週間継続摂取させた.摂取期間の前後に,等速性膝最大伸展力,膝最大屈曲力,および開眼片足立ちの保持時間を測定した.その結果,鶏肉抽出物群において,有意な膝最大伸展力の向上,開眼片足立ち保持時間の延長が認められた.これらの結果より,カルノシン,アンセリンを含有する鶏肉抽出物の摂取は,中高齢者の筋力の向上に有効であると考えられた.
著者
小林 彰夫 王 冬梅 山崎 美保 巽 規子 久保田 紀久枝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.613-618, 2000-08-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
5
被引用文献数
4 7

(1) 豆腐香気成分の捕集法として,ポーラスポリマービーズ充填カラムによる吸着とエーテルによる脱着が有効であった.(2) 国産大豆3種,米国産大豆1種から同様な条件で豆腐を調製しその香気組成と官能評価を比較した結果,エンレイ,フクユタカの高い評価にはマルトールの増加による甘い風味が関連すると考えられる.(3) 豆腐製造中の加熱温度条件として,磨砕時の温度および磨砕後の温度上昇速度について検討した.前者についてはっきりした違いは認められなかったが,後者では緩慢な上昇が風味の増加に寄与しており香気成分としては,ヘキサノール,マルトールが増加していたことから,これら2成分が風味の向上に寄与しているものと思われる.
著者
稲熊 隆博
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.263-273, 2015-06-15 (Released:2015-07-31)
参考文献数
40
被引用文献数
2 4

Carotenoids are known to be superior quenchers of singlet oxygen. Thus, carotenoids, which are present in various vegetables, are widely thought to exert many health benefits and anti-aging effects. This study investigated the health effects of carotenoid and carotenoid-rich vegetable intake at each stage of life. Among carotenoids, the use of lycopene can be cost-prohibitive. Thus, attempts were made to extract lycopene from tomato skin using SC-CO2 (supercritical-carbon dioxide). Further, the carotenoid content, a potential antioxidant source, of 70 vegetables in Japan was determined by reversed-phase HPLC. These results were applied to the development of carrot juice and space food. Additionally, a new assay method to quantify the singlet oxygen absorption capacity (SOAC) of antioxidants, including carotenoids, and vegetable extracts was proposed.
著者
岸尾 昌子 青柳 康夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.232-243, 2014-06-15 (Released:2014-07-31)
参考文献数
31
被引用文献数
4 5

還元糖生成能には品種によって有意差がある.ヒノヒカリ,ひとめぼれ,あきたこまち,コシヒカリといった,一般に良食味とされる品種は60℃浸漬時に胚乳中心部の還元糖生成能が高く,一方,キヌヒカリは20℃・40℃浸漬時の胚乳外縁部の還元糖生成能が高い傾向が見られた.日本晴はいずれの品種よりも低かった.また,産地間に還元糖生成能に差がある可能性が示唆された.北日本の地域の産米は60℃浸漬時における胚乳中心部の還元糖生成能が高い傾向が見られ,それに対して南日本の産米は20℃・40℃浸漬時の胚乳外縁部の還元糖生成能が高い傾向が見られたが,さらなる検証が必要である.還元糖生成能に関与するとされるα-グルコシダーゼ,α-アミラーゼ,β-アミラーゼの各デンプン分解酵素の活性において,品種によって優位となる酵素に違いがあることが示唆された.α-グルコシダーゼが最も強く関与するのはいずれの品種にも共通するが,2番目に寄与するアミラーゼの種類が品種によって異なり.ヒノヒカリはβ-アミラーゼ,コシヒカリはα-アミラーゼが2位で寄与すると分析された.食味に大きな影響を与えるとされる中心部の酵素活性において,1位と2位の酵素活性の寄与度はほぼ同等であった.α-グルコシダーゼに次いで優位に働く酵素は,ヒノヒカリとコシヒカリの場合,β-アミラーゼと分析された.日本晴の中心部にはα-グルコシダーゼおよびα-アミラーゼよりも,β-アミラーゼ様のマルトース生成酵素が寄与すると分析された.このような品種間の違いが,食味の違いに影響を与えている可能性が考えられた.胚乳外縁部の酵素活性においても,全品種の還元糖生成に最も強く影響する酵素はα-グルコシダーゼであった.しかし次に影響する酵素には品種ごとに違いがあり,ヒノヒカリはβ-アミラーゼ,コシヒカリはα-アミラーゼが2位で寄与すると分析された.日本晴はα-グルコシダーゼ,α-アミラーゼ,β-アミラーゼ様の酵素の順に還元糖生成に寄与すると分析された.上記3種のデンプン分解酵素は,品種により異なる活性を示し,それによって生成する還元糖の組成と生成量の違いが生ずると考えられた.
著者
三上 正幸 Trang Nguyen Hien 島田 謙一郎 関川 三男 福島 道弘 小野 伴忠
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.152-159, 2007-04-15 (Released:2007-10-04)
参考文献数
23
被引用文献数
4 5

本研究は豚挽肉から発酵調味料である肉醤を製造し,その性質について検討した.豚挽肉に食塩,麹,胡椒,水およびプロテアーゼとしてAlcalase 2.4Lを加えて,3種の異なった食塩濃度(15,20および25%)のもろみを調製し,30℃,6ケ月間発酵させた.この間,1ケ月後にFlavourzyme 500Lを添加したものも調製した.発酵期間中に細菌数は減少し,6ケ月後に,一般生菌数は3.9~7.0×102cfu/g, 乳酸菌数は300以下および大腸菌群は検出されなかった.発酵は1ケ月後から急激に進み,その後緩やかに進んだ.6ケ月後において,もろみからの肉醤の収率は67.0~78.5%,pHは4.76~5.01,タンパク質の回収率は71.9~79.8%,全窒素量は1.7~2.0g/100ml, ペプチド量は3.5~6.3g/100ml, 総遊離アミノ酸量は4.8~7.8g/100mlであった.Flavourzyme 500Lを添加したものは総遊離アミノ酸量が多くなった(p<0.05).肉醤の食塩濃度は,15%の食塩でもろみを調製したものは,20.5~20.8%,20%および25%の食塩で調製したものは,22.8~23.5%であった.官能評価の結果は,総合評価で20%の食塩で調製したものが,さらにFlavourzyme 500Lを添加したものが良い評価であった.
著者
境野 眞善 山下 貴稔 土倉 則子 佐野 貴士 渡辺 健市 葉桐 宏厚 桜間 勇樹 廣島 理樹 眞鍋 陽一郎 鈴木 美樹 今義 潤
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.346-352, 2014-08-15 (Released:2014-09-30)
参考文献数
15
被引用文献数
2

ドーナツの美味しさと泣きに重要な因子を特定し,ドーナツに適したフライ油の開発方法を示すために,様々な油脂の物性やドーナツの特性を評価した.その結果,フライ用油脂の上昇融点がドーナツの油染み量と,30°CにおけるSFCが官能評価での油っぽさやパサついた食感と関連することを見出した.また,上昇融点は高いほど望ましいが,概ね40°C以上,かつ30°CにおけるSFCが20%程度の油脂が物性,官能的に最もドーナツに適していた.これらの指標を基にして開発したドーナツオイルDは,上昇融点が46.3°Cと高いものの,30°CにおけるSFCが21.8%と低く,ドーナツのフライ用油脂として優れた特性を有することを確認した.また,ラットおよびヒトで吸収性を評価したところ,ドーナツオイルDは液体油よりも体に吸収されにくいことが分かり,ドーナツオイルDは物性,官能,および摂取カロリーの面でもドーナツに適した油脂であることを明らかにした.
著者
小嶋 道之 山下 慎司 西 繁典 齋藤 優介 前田 龍一郎
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.386-392, 2006-07-15 (Released:2007-07-15)
参考文献数
40
被引用文献数
8 15

in vivoおよびin vitro実験により,小豆ポリフェノール(APP)の抗酸化活性の能力を検討した.マウスに0.05%(w/v)APP入りの飲料(20ml/日)を一週間与えて,その血清,肝臓および腎臓ホモジネートの酸化促進剤に対する影響を検討したところ,どれもコントロールのそれらに比べて酸化を受けにくく,特に肝臓ホモジネートでは有意に酸化抵抗性を示した.また,0.05%(w/v)APPを1週間,事前投与したマウスにガラクトサミンとリポポリサッカライドを腹腔内注射したところ,コントロールのそれに比べて,血清GOT活性の上昇抑制や肝臓の過酸化脂質の生成が有意に抑制された.肝臓のグルタチオン量やGPx活性は,コントロールのそれらよりも有意に高い値を保持していた.これらの結果から,APPは炎症により発生するフリーラジカル・活性酸素を消去し,生体内グルタチオン量とGPx活性を高く保持して,過酸化脂質の生成を抑えることで,結果的に肝臓の炎症拡大を抑制している可能性が推察された.また,APPのDPPHラジカル消去活性におけるIC50は64.2μmol/l(カテキン量として換算)であり,市販のカテキンやビタミンCの1/2量で同じ効果を示した.また,0.05%APPを80μl添加した2.5mlのヒトLDL溶液(タンパク質70μg/ml)は,200μmol/lの硫酸銅溶液による酸化促進に対して抵抗性を示し,APP無添加の場合に比べて,LDL酸化の開始時間を1時間程度遅延させた.これらの結果は,APPには生体の酸化防止効果や肝臓保護作用があることを示唆している.また,小豆の主要なモノマー型ポリフェノールは,カテキン-7β-グルコシドであることを明らかにした.