著者
高橋 京子 西銘 杏 柿沼 美玲 小板橋 淑恵 菅谷 明日香 谷藤 福子 宮本 朋子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.129-136, 2008-04-15 (Released:2008-05-31)
参考文献数
40
被引用文献数
3 2

沖縄県特産の調味料で泡盛とシマトウガラシ(Capsicum frutescens)から作られるコーレーグースについて,辛味と香気の特徴を知るため,市販のコーレーグース,シマトウガラシ,およびシマトウガラシを浸漬したエタノール水溶液の分析を行ない,以下の結果を得た.(1)辛味成分に関しては,HPLCを用いてcapsaicinとdihydrocapsaicinを定量したところ,市販コーレーグース9種類のうち8種では,capsaicinは0.037~0.058mg/ml, dihydrocapsaicinは0.011~0.026mg/mlで,組成比dihydrocapsaicin/capsaicin(DC/C)は0.23~0.57であった.原料のシマトウガラシでは,それぞれ,4.17mg/g dry weight, 2.22mg/g dry weight, 0.53であった.シマトウガラシを浸漬したエタノール水溶液の定量結果から,コーレーグース製品中のエタノール濃度が高いほど,capsaicinとdihydrocapsaicin濃度は高く,組成比(DC/C)が大きいことが示唆された.(2)コーレーグースの香気成分に関しては,固相マイクロ抽出(SPME)を用いたヘッドスペース分析により,泡盛の主要成分であるエタノール以外に,24成分が同定された.GC-Olfactometryにより分析したところ,寄与が高い成分は,2-isobutyl-3-methoxypyrazineと3-methyl-1-butanol,各種エステルであった.原料であるシマトウガラシと泡盛の両方ともに,香気に大きく関与していた.
著者
渡邉 章子 中根 一恵 今井 克彦 大羽 和子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.179-183, 2013-04-15 (Released:2013-06-04)
参考文献数
26

(1)ダイコンのNO3-は,上部に比べて顕著に下部に局在し,VCはNO3-含量の少ない上部に多く存在した.(2)全施肥窒素量を多く施用されたダイコンほどNO3-含量が多かった.また,施肥窒素量は同量であっても基肥窒素量を控えめにした場合に,NO3-含量が少なく,VC含量が多い傾向がみられたことから,基肥を控えた追肥主体の栽培方法により,NO3-含量の少ないダイコンが生産できる可能性が示唆された.
著者
宮井 輝幸 秋山 正行 中川 稔 矢野 陽一郎 池田 三知男 市橋 信夫
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.591-594, 2012-11 (Released:2013-10-08)

コーヒー,紅茶および緑茶の各種試料に,Bacillus属細菌(B. cereus,B. subtilis,B. coagulans)芽胞を接種し,85℃30分間(食品衛生法におけるpH4.6以上の清涼飲料水の殺菌基準)加熱処理した後,その試料の保存中における生育挙動を調べた。コーヒー,紅茶試料では,牛乳を添加した場合,B. cereusとB. subtilisの菌数の増加がみられたが,牛乳を添加していないコーヒー,紅茶および緑茶の各種試料(pH調整の有無;コーヒーの焙煎度;紅茶の抽出温度;コーヒー,紅茶への砂糖添加)では,Bacillus属3菌種の菌数の減少がみられた。これらのことより,85℃30分間の加熱殺菌条件で製造した牛乳無添加の各種飲料中にBacillus属3菌種が生残していたとしても,コーヒー,紅茶および緑茶の抗菌性により商業的な無菌性が保証される可能性が示唆された。
著者
森 直子 浅野 智絵美 永田 忠博 伊藤 輝子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.144-149, 2014
被引用文献数
1

干しいもの摂取が排便に及ぼす影響について平均年齢20±1歳の女子学生84名を対象とし,非摂取期2週間および摂取期2週間(干しいも100g/日)の単一群試験を実施した.被験者は,排便状況を毎日記録し1週間ごとに提出した.その際,食事調査と身体測定を受けた.また,週3日以上排便がない者を便秘群(15名),週4日以上排便のある者を非便秘群(69名)とし,群別に解析を行った.その結果,非摂取期と比較し摂取期では,被験者全体として排便日数,排便回数,排便量および放屁回数が有意に増加した.また便秘群では,排便日数および放屁回数が有意に増加したが,非便秘群では,放屁回数が有意に増加した以外に,他の項目での有意差は見られなかった.干しいもの摂取による排便促進効果を介入試験により示し,便秘の改善を確認したが,将来はプラセボ対照群を設定し,食事や長期摂取による影響を調べ,本試験結果を検証したい.

2 0 0 0 OA 複雑系

著者
平藤 雅之
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.340-340, 1998-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
6
著者
盛永 宏太郎
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.245-249, 2002-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
11

(1) 乾燥丸大豆を破砕後に焙煎して,TI活性の変化を調べたところ,無傷の大豆のTI活性は熱失活して1/20程度に低下したが,破砕して微細になった大豆ほどTIは熱安定性を増して熱失活しなくなった.粒径1mm以下に破砕した大豆のTI活性値は未加熱大豆のTI活性に近い高い値を示した.また,乾燥大豆を圧扁してから焙煎してそのTI活性の変化を調べたところ,破砕の場合と同様に,薄く圧扁した大豆のTIほど熱失活せずTI活性は高い値になった.これは破砕または圧扁処理により,大豆細胞が破壊されたためにTIが熱安定性を増したものと思われた.(2) 生大豆および焙煎丸大豆,焙煎破砕大豆のタンパク質をトリプシンで消化したところ,三者共にトリプシン量が残存するTI単位量以下の少量であっても,そのトリプシン添加量に応じて消化率は徐々に向上し,TI単位量に達したときに消化率は約50%になった.その後もトリプシンの添加量に比例して消化率が向上した.添加トリプシン量がTI単位量の約2倍になったときに消化率はほぼ最大値に近くなった.また,焙煎丸大豆のタンパク質はTI活性が低いので少量のトリプシン量で良く消化するのに対して,生大豆と焙煎破砕大豆はTI活性が高いために消化が悪く,多量のトリプシンを加えないと消化率は良くならなかった.(3) 焙煎大豆のTI失活に及ぼす焙煎温度と時間の影響を調べたところ,120℃加熱では温度が低く,無傷の丸大豆でもTI失活は不充分であった.破砕大豆TIはまったく失活しなかった.150℃加熱の丸大豆は加熱10分後にTI活性値は1/10に減少し,20分後には1/20になった.150℃加熱の破砕大豆のTIは20分後でもわずかに10%減少しただけだった.180℃加熱の丸大豆は加熱5分でTI活性値が1/10に減少した.しかしこのときの大豆は黒変して焦げた状態になった.破砕大豆のTIは180℃加熱でもなお幾分活性を持続し20分後の値は生の約1/5を示した.
著者
田辺 創一 渡辺 道子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.948-951, 2001-12-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
3 1
著者
小林 健治 土佐 典照 原 安夫 堀江 修二
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.930-938, 1996-08-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
6 13

水道水を電気分解処理して得られたアルカリ性水の炊飯水としての有効性について検討を行い,以下の結果を得た.(1) 白米と浸漬水の総体積変化は,アルカリ水,原水(水道水),酸性水の順に大きくなった.任意のpHに調整された試験水を用いた実験より,白米の膨潤度はpHの影響を受けていることが確認された.(2) 画像処理装置により炊飯米形状を二次元的に計測し,面積はアルカリ性水,酸性水,原水の順に大きく,アルカリ性水のものは原水のものよりも約4.5%の差がみられた.(3) 三粒法により各米飯のテクスチャーを測定したが,粘りと硬さの比がアルカリ性水,酸性水,原水の順に大きな値をとった.アルカリ性水により処理された炊飯米のテクスチャーが高い原因として,炊飯米表面の糊化した澱粉量が多いことによるものであることが考えられた.洗米において白米からの澱粉の溶出量は,アルカリ性水処理によるものが最も高く,炊飯米においても同様であった.この原因として,洗米では高いpHや界面活性的な働きが白米表面物質の遊離を促進するため,また炊飯米では高いミネラル濃度が澱粉細胞の細胞壁に沿って存在するタンパク質の可溶性を促進するためと推察された.
著者
熊谷 武久 瀬野 公子 川村 博幸 渡辺 紀之 岡田 早苗
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.677-683, 2001-09-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
21
被引用文献数
5 6

米及び米加工品より分離した植物性乳酸菌の食品発酵性,人工消化液の耐性及びヒト食餌モデル培地での生育について検討した.(1) 用いた乳酸菌はL. casei subsp. casei 6株及びL. plantarum 3株であった.(2) L. casei subsp. casei 327, 379, 409, 508及び511の5株は植物性素材で良好なpH低下を示し,米,小麦,トウモロコシ及びジャガイモでは菌数は103 cfu/mlオーダー程度に増殖し,豆乳,野菜汁及び果汁は109cfu/mlオーダー程度まで増殖した.牛乳ではpHの低下が少ないが,菌数は108cfu/ml以上に増加した.(3) L. plantarum 3株も植物性素材の発酵性は良く,米のみがpHの低下,菌数の増加が他の植物性素材よりやや悪かった.牛乳はpHの低下,菌数の増加がほとんど見られなかった.(4) 人口胃液pH 3.0以上では生菌数の変化は見られなかったが,pH 2.5ではL. plantarum 204の生菌数が若干減少し,耐酸性の高さが示唆された.それ以外の株では顕著な減少が見られた.(5) 人工腸液においては,全ての株で生菌数の増加が見られたが,胆汁無添加よりは生育度が低かった.(6) 胆汁を含む日本人とアメリカ人の食餌をモデルとした培地を調製し,両培地で生育が認められた.継代をすることで,生菌数が増加し馴化が見られた.
著者
西条 了康 武田 善行
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.138-147, 1999-03-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
29
被引用文献数
9 35

(1) 粉砕した茶葉400mgをアセトン抽出→メチルイソブチルケトン溶解→メタノール溶解→ODS処理によりカテキン類を調製し,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行った.(2) 抹茶,高級煎茶,普通煎茶,番茶,焙じ茶など5種類の日本茶について調べたところ,(-)-エピガロカテキン-3-ガレート(-EGCg),(-)-エピカテキン-3-ガレート(-ECg),(-)-エピガロカテキン(-EGC),(-)-エピカテキン(-EC)など4種類の主要カテキン類含有量が,総カテキン類の殆どを占めていた.また熱変化生成カテキン類(エピメル化物)である(-)-ガロカテキン-3-ガレート(-GCg),(-)-カテキン-3-ガレート(-Cg),(-)-ガロカテキン(-GC),(-)-カテキン(-C)も少量であるが検出された.特に焙じ茶には多く存在した.(3) 中国緑茶(竜井茶,雲南茶,ガンパウダー),ベトナム緑茶,インド緑茶(ダージリン茶,ダージリン・シルバーチップ)など6種類の外国産緑茶には,日本茶よりも総カテキン量が多く,主要4カテキン類特に(-)-エピガロカテキン-3-ガレートが多かった.4種類の熱変化生成カテキン類も存在した.また少量成分として(-)-エピガロカテキン-3-メトキシガレート(-EGCmetg),(-)-エピカテキン-3-メトキシガレート(-ECmetg),(-)-エピガロカテキン-3,5-ジガレート(-EGCgg),(-)-エピカテキン-3,5-ジガレート(-ECgg)などの存在が確認された.以上のことから,日本茶,外国産緑茶からはFig.1に示した全てのカテキン類と,熱変化生成カテキン類4種類がHPLCにより確認された.(4) -EGCg/-EGC,-ECg/-ECの比率は製茶原料用茶生葉の葉位,成熟度などの情報を与えるものと考察した.熱変化生成カテキン類は焙じ茶製造時に生成したと考えられる.2種類のジガレート(-EGCgg,-ECgg),2種類のメトキシガレート(-EGCmetg,-ECmetg)はそれぞれアッサム種,中国種の特有成分と推定した.
著者
黒田(澤井) 玲子 佐々木 裕 西川 智子 黒田 和道 桜井 孝治 山本 樹生 清水 一史
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.496-498, 2011-10-15 (Released:2011-11-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

我々は,カリン(Chaenomeles sinensis)中の高分子ポリフェノールの季節性インフルエンザウイルス A/Udorn/ 307/72 (H3N2)に対する感染性中和活性および赤血球凝集抑制効果を既に報告している. カリン中の活性画分CSD3を用いて,新型インフルエンザウイルス A/Chiba/1001/2009 (H1N1) pdm に対する赤血球凝集抑制活性および感染性中和活性を評価したところ,5 μg/ml のCSD3で処理したウイルスは赤血球凝集価が約1/2に,感染性が約1/10に減少することが明らかになった.250 μg/mlの処理では感染価は1/3 000に減少したこれらの結果は,カリン中の抗インフルエンザウイルス活性成分は,H1N1新型インフルエンザウイルスに対しても有効であることを示す.更に,赤血球凝集価の減少以上に感染性が減少したことからウイルス吸着段階以降における抑制作用の存在が示唆された.
著者
藤井 恵子 高橋 貞幸 木内 瑠美子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.363-368, 2000-05-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
21
被引用文献数
4 7

本研究では,ゲル化能を有する絹フィブロインに着目し,これを米粉と複合化してスポンジケーキの調製を試み,複合化効果について検討した.1.薄力小麦粉を用いることなく,米粉と絹フィブロインを複合化させることにより,スポンジケーキを調製することができた.2.米粉と絹フィブロイン泡沫を用いたスポンジケーキは薄力粉と卵白泡沫を用いたスポンジケーキと比べ,比容積が低くなり,膨化が小さかった.3.絹フィブロインを添加することでスポンジケーキの老化速度が遅くなった.4.官能検査の結果より,米粉と卵白/絹フィブロイン混合泡沫を用いたスポンジケーキは薄力粉と卵白泡沫を用いたスポンジケーキと比べ,内部のきめが細かく(P<0.01),しっとりとしており(P<0.01),最もおいしい(P<0.01)と評価された.
著者
江口 智美 吉村 美紀
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.353-361, 2014-08-15 (Released:2014-09-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1

エステル化タピオカ澱粉を0%,6%,10%,15%混合し,13分間ゆでたうどんの,力学特性と,若年者および高齢者における嗜好性,咀嚼特性を検討した.エステル化タピオカ澱粉を混合すると,混合濃度に関わらず,0%よりも有意に水分が多くて,やわらかいうどんになった.この中で,10%が,最も澱粉粒子間の隙間が広く,澱粉粒の膨潤・糊化が進行しやすい乾麺構造をもち,若年者・高齢者の両世代において,0%よりも有意にやわらかくて食べやすいと識別され,なめらかさが好まれた.しかし,咬筋および舌骨上筋群の咀嚼特性値に試料の有意な影響は認められなかった.若年者と高齢者の嗜好性・咀嚼特性を比較すると,高齢者は,若年者と同じ混合濃度のうどんを食べた場合,咀嚼力が低下するため,同じ硬さであっても,その硬さを有意に好まなかった.また,高齢者では,嚥下能力の低下に伴う舌骨上筋群の筋力の低下を,咬筋を強く動かすことで補い,最終嚥下を行っていることが示唆された.
著者
北野 泰奈 中村 祐美子 卾 爽 畠山 雄有 山本 和史 坂本 有宇 都築 毅 仲川 清隆 宮澤 陽夫
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.182-190, 2015-04-10 (Released:2015-05-31)
参考文献数
53

我々は最近,1975年頃の日本食は現代の日本食に比べて健康有益性が高いことを示した.1975年日本食の特徴のひとつに肉類の摂取量が低いことがあげられる.そのため,肉類を他の食品と置換することで,健康有益性の増加が期待できた.そこで本研究では,現代の日本において広く食べられている「ソーセージ」を伝統的な日本の食品である「かまぼこ」に置換することによる効果を,ラットを用いて検討した.凍結乾燥·粉末化した「ソーセージ」または「かまぼこ」を通常飼育食に重量当たり20%混合し,SD系ラットに4週間与えた.その結果,「ソーセージ」群に比べて「かまぼこ」群において,血漿と肝臓における脂質量と過酸化脂質量が低下した.次に,「かまぼこ」のタンパク質·脂質·炭水化物のエネルギーバランスと塩分を精製飼料のみを用いて再現した「mimicかまぼこ」を作製した.これを通常飼育食に混合し,ラットに4週間与えた.その結果,「mimicかまぼこ」群に比べて「かまぼこ」群で脂質量と過酸化脂質量が低下した.以上より,「ソーセージ」を「かまぼこ」で置換することは脂質量と過酸化脂質量を低減するために健康有益性が増加することが示され,この効果は「かまぼこ」のエネルギーバランスのみに依存しないことが示唆された.
著者
川村 純 琴浦 聡 奥山 孝子 古本 真理 府中 英孝 三明 清隆 杉山 雅昭 大西 正男
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.218-224, 2013-05-15 (Released:2013-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1

廃鶏表皮を原料として脱脂乾燥鶏皮粉末(DCS)を調製し,その摂取がヒトの肌に及ぼす影響を確認する目的でヒトによる二重盲検並行群間試験を実施した.その結果,DCS摂取群において皮膚水分量の増加傾向が認められ,特に皮膚の乾燥が重度な被験者においてはプラセボ摂取群と比較して有意に増加した.また,DCSの摂取後では皮膚弾力性が摂取前と比較して有意に増加していた.本試験の結果から,DCSの摂取は皮膚の乾燥が重度な人の皮膚保湿性を改善させ,加齢により低下した皮膚弾力性を改善する可能性が示された.
著者
内田 あゆみ 陶 慧 荻原 淳 松藤 寛 太田 惠教 櫻井 英敏
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.549-558, 2008-11-15 (Released:2008-12-31)
参考文献数
23
被引用文献数
4

イヌリン含量の高いジャンボリーキの生理学的機能を調べるため,ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病ラットの血糖値および血液生化学的指標とアセトアミノフェン(AAP)投与により発生する肝障害に対するジャンボリーキの凍結乾燥粉末(イヌリン含量60%)(PSII)の影響を検討した.最初の実験ではPSIIをラットのSTZ(60mg/kgbw)処理の1週間後から,2週間投与した.糖負荷試験は7日目と14日目に行った.血液の生化学的指標は14日目に測定した.2番目の実験では2週間,PSIIを投与した後にAAP(500mg/kgbw)を投与し肝障害を発生させた.投与24時間後に肝障害の指標である血中ASTとALTの活性を測定し,また摘出した肝臓の病理組織学的検査を実施した.最初の実験の糖負荷試験において,1日あたり8.3g/kg(イヌリンとして5.0g/kg)のPSIIの投与により食後血糖値の上昇は抑制されることが確認された.血液の生化学的指標において,総コレステロールとトリグリセリドはSTZ処理により上昇したが,PSIIの投与によりSTZ無処理の値以下に低下した.またASTとALTの活性に低下傾向が観察された.第二の実験において,ASTとALTの活性は低下し,肝臓の壊死と空腔は抑制され,PSIIの肝障害保護作用が確認された.
著者
志堂寺 和則 都甲 潔
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-8, 2007-01-15 (Released:2007-10-04)
参考文献数
7
被引用文献数
6 4

食品の見た目のおいしさについて検討するために,ケーキの写真を見た際に生じる印象について,SD法によるアンケート調査を実施した.その結果,3ないしは4因子を抽出することができた.この結果を参考に,4種類の初期モデルを構築し,共分散構造分析を実施した.モデルを修正しながら,ケーキ写真毎にアンケート調査データと適合性を検討した.最も適合すると考えられたモデルは以下のものであった.ケーキ写真から色彩に関する印象と形態に関する印象が生じる.両者には相互に因果関係があり,両者からケーキ写真についての全体印象が生じる.見る人の甘味に関する嗜好は色彩に関する印象に影響を及ぼす.また,甘味に関する嗜好とケーキ写真についての全体印象から,ケーキ写真についての評価が定まり,見た目のおいしさが決定される.
著者
清野 晃之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00085, (Released:2023-12-26)

本研究では, ニラの冷凍保存によるメチイン含量の変化を調査するために, 4種類の包装方法を検討した. その結果, ニラ葉の表面の乾燥を防ぐ方法, フリーザーバックやラップではニラを密閉・密着して保存することができるため, 冷凍後のニラのメチイン含量に影響はないことがわかった. 一方で, 新聞紙を用いた場合, 包装時の厚みにより, メチイン含量に影響が見られた. これはニラを薄く新聞紙で包んだ際に, ニラからの水分蒸発が新聞紙外の空気まで移動したことで乾燥が進み, それに伴いニラの組織や細胞が劣化したことで, エタノールによるメチインの抽出効率が向上したのではないかと考えられる.
著者
大野 智生 蒲野 悟史 古田 真優 三島 周平 岩橋 均
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00093, (Released:2023-12-25)

深部発酵法米酢における細菌群集構造の変化を, 発酵開始から終了まで調査した. 細菌組成の調査により, 酸度の異なる2種類の深部発酵米酢の両方において, エタノール濃度が減少し始めるタイミングにおけるKomagataeibacter属酢酸菌割合の急激な増加, 増加後の高割合での優占の維持が確認された. また, 植菌源に対するメタゲノム解析の結果から, 深部発酵米酢において発酵を行う酢酸菌については, 深部発酵で一般的にみられ, 高酢酸濃度に対する耐性を持つ, Komagataeibacter europaeusであることが示唆された. また, この菌株はヨーロッパで生産される深部発酵酢から分離された株と近縁であると推定された. これらの結果から, 深部発酵による米酢醸造における微生物組成の安定性が確認され, 発酵において主要な働きをする細菌が他の深部発酵酢と同様であることが示唆された. 本研究は米酢深部発酵の微生物に関する基礎的な情報を提供するものであり, 米酢醸造における発酵過程の最適化に役立つ可能性がある.