著者
加藤 みゆき 大森 正司 加藤 芳伸
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.421-427, 2011-09-15 (Released:2011-10-12)
参考文献数
26
被引用文献数
2

緑茶を対象としてretroposon-like sequence DNA (RLS-DNA)塩基配列の比較解析により品種の判別を試みた.実験には,やぶきた品種のチャ葉より製造した緑茶と,市販されている中国,ベトナム,ミャンマー,台湾の緑茶,そして日本の緑茶用40品種の生茶葉を用いて実験した.RLS-DNAの塩基配列を比較解析することにより,おくみどり,べにふうき等の品種の判別が生茶葉と緑茶葉を用いた場合,共に可能であることが認められた.また,中国,ベトナム,ミャンマー,台湾の緑茶についてもRLS-DNAの多型解析により我が国の緑茶と識別可能であることが認められた.今回の実験から,RLS-DNAを指標とした塩基配列の多型解析は,おくみどり,べにふうき品種等の品種を判別するための手法に適用できるものと考える.
著者
中村 善行 増田 亮一 藏之内 利和 片山 健二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.433-438, 2016-10-15 (Released:2016-11-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

糊化開始温度の異なるデンプンを含むサツマイモ3品種(「ベニアズマ」,「ほしキラリ」,「クイックスイート」)の塊根を蒸した後に残存する総アスコルビン酸の含量をデンプン糊化度およびマルトース含有率と併せて測定した.糊化開始温度が約75℃の「ベニアズマ」,約65℃の「ほしキラリ」,約55℃の「クイックスイート」の総アスコルビン酸残存率はそれぞれ約57%,約71%,約80%で,糊化開始温度の低い品種ほど残存率が高かった.一方,細胞内デンプンの糊化およびマルトース生成が認められる塊根加熱温度は糊化開始温度が低い品種ほど低く,マルトース含有率が高いほどアスコルビン酸残存率が高くなった.これは加熱塊根におけるマルトースの存在がアスコルビン酸の分解抑制に関与することを示していると考えられた.さらに,加熱してもマルトースが生成しないサツマイモ「オキコガネ」やジャガイモの総アスコルビン酸残存率は約50%と上記3品種より低かった.以上の結果から,蒸したサツマイモではマルトース生成が総アスコルビン酸の含量低下を抑制すること,およびデンプン糊化温度の低いサツマイモ品種はアスコルビン酸含量の維持に有効であることが示唆された.
著者
新本 洋士 門分 彰子 八代 朋美 長縄 康範
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.156-158, 2015-03-15 (Released:2015-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

ステンレストレー上に風乾した牛乳を加熱することによって乳糖と乳タンパク質のメイラード反応による乳タンパク質のグリケーションが生じる.風乾した牛乳を140°C以上で1時間加熱するとSDS-PAGEによって検出されるタンパク質は消失した.120°C加熱による牛乳タンパク質のグリケーションは高濃度のクロロゲン酸およびエピカテキンで抑制することができたが,アスコルビン酸は逆にグリケーションを促進した.
著者
山本 (前田) 万里 永井 寛 江間 かおり 神田 えみ 岡田 典久 安江 正明
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.584-593, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
31
被引用文献数
8 9

A double-blind clinical study was carried out on subjects with Japanese cedar pollinosis for the evaluation of the effects and safety of ‘Benifuuki’ green tea, which contains epigallocatechin-3-O-(3-O-methyl)-gallate (O-methylated catechin), and a combination of ‘Benifuuki’ green tea and ginger extract, with ‘Yabukita’ green tea as a placebo. First, the effect of the combination of ‘Benifuuki’ green tea and various vegetable extracts on cytokine production inhibition was investigated using mast cells ; the simultaneous use of ‘Benifuuki’ green tea and ginger extract was found to suppress cytokine (TNF-α or MIPI-α) production to a remarkable extent. Subjects were given 1.5 g of ‘Benifuuki’ green tea, ‘Benifuuki’ green tea containing 30 mg of ginger extract, or ‘Yabukita’ green tea with water twice every day for 13 weeks. As cedar pollen scattering increased, the severity of pollinosis symptoms among the groups was observed to increase in the following order : placebo group>’Benifuuki’ group>’Benifuuki’ and ginger group. Eleven weeks after the beginning of treatment, during the most severe cedar pollen scattering period, symptoms of runny nose and itchy eyes were significantly relieved among the ‘Benifuuki’ group compared with the placebo group (p<0.05). In the ‘Benifuuki’ and ginger group, runny nose, itchy eyes and nose symptom scores were significantly reduced at the eleventh week, and nasal congestion, sore throat and nose symptom medication scores were significantly reduced at the thirteenth week compared with the placebo group. Among all test groups, hematological examination, general biochemical examination, determination of total IgG, CMV antibody titer, and serum iron content, and interviews throughout the intake period found no changes related to clinical problems. These results suggest that intake of ‘Benifuuki’ green tea over one month is useful in reducing some of the symptoms of Japanese cedar pollinosis, and did not affect normal immune response in subjects with Japanese cedar-pollinosis. It was also found that the addition of ginger extract enhanced the effect of ‘Benifuuki’ green tea.
著者
熊沢 賢二 増田 秀樹 西村 修 平石 真也
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.108-113, 1998-02-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
5 9

コーヒー飲料の加熱処理による香気変化について検討し,以下の結果を得た.1) ガスクロマトグラムでは,furfuryl acetate以外に顕著な差は認められず,コーヒー飲料の加熱処理による香気変化に大きく関与する成分は見いだせなかった.2) FD-クロマトグラムで,加熱処理により減少する2-furfurylthiol, methional, 3-mercapto-3-methyl-butyl formate,β-damascenoneおよびskatoleの5成分を見いだした.これらの香調および閾値を考え合わせた結果,コーヒー飲料の加熱処理による香気変化に,これら5つの香気寄与成分の減少が大きく関与していると推定した.3) 上記香気寄与成分を含むモデル実験から,コーヒー飲料中の香気寄与成分は加熱処理により一般に,酸化,熱分解,あるいは加水分解反応が起こった結果,減少すると考えられる.
著者
石黒 貴寛
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.488-492, 2018-10-15 (Released:2018-10-26)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

Kori-tofu is a traditional food in Japan. Kori-tofu is known to decrease serum LDL-cholesterol and triacylglycerol. Kori-tofu also decreases HbA1c, indicating improved sugar metabolism. A dominant hypothesis regarding these phenomena is that the undigested protein fraction of kori-tofu (resistant protein) binds to bile acids in the intestine, preventing bile acid resorption. Recent studies have shown that bile acids are a type of signaling molecule that activates FXR and TGR5. This can explain why the binding activity of bile acid, involving resistant protein, relates to lipid and sugar metabolism. Resistant protein in kori-tofu is increased during its production process, including high-pressure treatment of fresh tofu, freezing and low-temperature aging. The abundance of resistant protein can explain the function of kori-tofu.
著者
安藤 聡 坂口(横山) 林香
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.417-421, 2015-08-15 (Released:2015-09-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

グアニル酸等の呈味性ヌクレオチドは,グルタミン酸との相乗効果により,少量でうま味を増強する.調理用9品種と生食用2品種のトマトについて,加熱調理前後のグアニル酸含量を比較したところ,全品種において有意にグアニル酸が加熱により増加していた.加熱条件がトマトのグアニル酸の増減に及ぼす影響を調べることを目的に,25∼100°Cでトマト果実を加熱したときのグアニル酸およびその分解物であるグアノシンの含有量を定量した.これら2成分の挙動から,50∼60°Cにおいてグアニル酸の生成と分解の差が最大となった結果,最大のグアニル酸蓄積が起こったと考えられる.
著者
奥 和之 沢谷 郁夫 茶円 博人 福田 恵温 栗本 雅司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.381-384, 1998-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
22
被引用文献数
12 15

トレハロースを含むとされる天然食品及び発酵食品中のトレハロース含量について,ガスクロマトグラフィーにより分析を行った.1) トレハロースはキノコ類,パン酵母に比較的多く含まれており,固形物当たりのトレハロース含量は,キノコ類で10~23%,パン酵母で7~11%であった.2) トレハロースは,酒類(日本酒,ビール,ワイン),味醂,大豆製品,エビ類に,海藻類ではモズク,ヒジキに検出され,各々のトレハロース含量は,30~240ppm,260 ppm, 5~150ppm, 5~5000ppm, 4ppm, 2700ppmであった.以上の結果より,トレハロースは,キノコ類,酵母類に多く含まれていたが,その他の食品にも幅広く含まれており,トレハロースは,日常的な食事において広く摂取されている糖質であると推察される.
著者
川本 伸一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-15, 2017-01-15 (Released:2017-01-24)
参考文献数
38
被引用文献数
2 2

Food poisoning is a serious threat to public health. During the past decades, society has undergone significant lifestyle changes, including the use of new methods for processing and preparing foods. Surveillance of food poisoning has been emphasized because of the centralization of food production and increased international trade and tourism. The responsibility for food safety has moved from individuals to industries and governments, and these changes have created the potential for outbreaks of food poisoning. In this paper, I provide an overview of the current trends in food poisoning in Japan from 2006 to 2015, focusing on prevalence and mortality with respect to food preparation facilities, causative agents and the food sources involved. This review is based on food poisoning statistics collected in Japan, published by the Ministry of Health, Labor and Welfare of Japan. An English version of all figures and tables in this paper is presented in the Appendix.
著者
高橋 義宣 増田 康之 杉本 正裕 江成 宏之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.455-460, 2008-10-15 (Released:2008-11-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

りんご搾汁残渣を酵素分解,熱水抽出することでペクチンオリゴ糖を調製して,その整腸作用について検討した.腸内細菌を用いた資化性試験では優先菌であるBacteroides属やBifidobacterium属に資化性が見られ,糞便培養培地中の短鎖脂肪酸,腐敗産物の分析により,酢酸,酪酸,乳酸が高い増加率を示し,腐敗産物の生成は抑制されていた.また,便秘気味の方を対象にAPOを2週間1日1回5g摂取させた場合に,排便回数は3.0回/週から5.0回/週と有意な増加が認められた.これらの結果から,APOの摂取は整腸作用に効果がある事が明らかとなった.
著者
中原 徳昭 古田 幸 境田 博至 甲斐 孝憲 榊原 陽一 西山 和夫 水光 正仁
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.355-365, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
46
被引用文献数
1

センサにより本格焼酎の基本的な味を表現することを目的とし, 各脂質膜センサの特性 (意味づけ) について, 官能評価と化学分析を組み合わせた解析を行った. その結果,1. 水和シェルが存在し, ある程度エタノールポリマーの刺激を抑制すると考えられる6~18%のエタノール溶液においては, エタノールに対して主に「苦味」を, それ以上の濃度のエタノール溶液に対しては強い「刺激感」と共に「甘味」も感じることが確認された.2. 25%以上のエタノール溶液および本格焼酎を口に含んだ場合, 舌の表面においてエタノールと水の結合による発熱が起こり, この発熱が, 飲用温度による味覚感受性の変化と共に本格焼酎の味に何らかの影響をおよぼすことが示唆された.3. エタノール濃度に選択的に応答するセンサの特定を行った結果, プラス膜のAE1センサおよびブレンド膜の0E1センサが, 本格焼酎のエタノール濃度に良く応答することが確認され, この2つのセンサ挙動を比較することで, その他の味成分とエタノールの相互作用を確認できることが示唆された.4. 本格焼酎の官能評価における「酸味」は, pHおよび酢酸濃度に必ずしも一致しないが, AN0, CN0, AAEセンサのようにセンサの脂質膜にリン酸エステルを使用することで, 本格焼酎に含まれる「酸味」成分によく応答すると共にその他の成分との相互作用を確認できることが示唆された.今回の試験の結果, 本格焼酎におけるエタノールの味は, 刺激を伴う「苦味」が主体であることが確認できた. しかし, 日常において本格焼酎を飲用する際, このエタノール溶液のような強い「苦味」を感じることは希である. これは, 熟成の効果もさることながら, 本格焼酎独特の製法によって生み出される様々な成分が相互作用し, このエタノールの刺激を伴う「苦味」を抑制しているためと考えられる.今後はさらに, その他の各脂質膜センサの特性 (意味づけ) について解析を進めると共に, 本格焼酎の主成分であるエタノールの味を軸に, その他味成分との相互作用について官能評価と化学分析に味覚センサを組み合わせた検討を行っていく予定である.
著者
馬場 良子 中村 后希 熊沢 賢二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.294-301, 2017
被引用文献数
5

<p>ダージリン紅茶の特徴香に寄与する成分を探索するため,産地(銘柄)の異なる8種類の紅茶浸出液の香気寄与成分を比較検討し,以下の結果を得た.</p><p>(1)ダージリン紅茶に特徴的な成分として,3,7-dimethyl-1,5,7-octatrien-3-ol (hotrienol)(floral, fruity),2,3-diethyl-5-methylpyrazine (roasty, nutty)および不明成分(green, meaty)を見出した.不明成分は,ダージリン茶葉のSDE抽出物より,シリカゲルカラム,次いで,オフライン2次元GCにて高度に精製し,最終的に,マスカット果実の重要香気寄与成分である4-mercapto-4-methyl-2-pentanone (MMP)と同定した.さらに,ダージリン紅茶とマスカット果実にて高い寄与度を有する香気成分を比較し,紅茶におけるマスカットフレーバーが,紅茶全般に共通する3成分(linalool, geraniol, <i>β</i>-damascenone)とMMPより形成され,その発現にはMMP含有量が深く関与している可能性を見出した.</p><p>(2)(1)にて見出したダージリン紅茶に特徴的な3成分の生成に,製造工程中の乾燥条件や,茶葉の生育環境および品種に起因する前駆体量の違いが関与する可能性を推察し,ダージリン紅茶の,マスカットフレーバーを含む特徴香の形成に,特有の生育環境や伝統製法等の要因が影響している可能性を見出した.</p>
著者
坂本 浩子 山崎 勝利 加賀 千文 山本 幸子 伊藤 隆二 黒澤 康之
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.598-602, 1996-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1 21

準強力粉を主原料として中華麺を調製し,麺の物性に対するMTGaseの添加効果を調べた.(1) かんすいの添加量を調整し生麺調製時のpHを約6~10と変化させ,ゆで麺,酸処理麺の破断強度に及ぼす影響を調べた結果,MTGase無添加麺ではpHが高いほど破断強度が高かったが,MTGase添加系ではpH 6~8で破断強度増加効果が得られた.(2) pH 8.0で生麺を調製し, MTGaseの添加量が破断強度に及ぼす影響を調べた結果,MTGase 0~7U/gproteinで酵素濃度の増加とともにゆで麺の破断強度が増加した.ゆで麺を酸処理またはレトルト処理した場合,調べた0~10U/g proteinの範囲内で酵素濃度の増加とともに破断強度が増加した.(3) 生麺の断面を走査型電子顕微鏡により観察した結果から,これらMTGaseによる効果はG-L架橋形成によりグルテンのネットワーク構造が補強されたためと推定された.(4) 以上より,MTGaseを使用するとゆで麺の破断強度が増加すること,さらに酸処理やレトルト処理をしても破断強度の低下が抑制されることが判明した.
著者
熊谷 武久 川村 博幸 渡辺 紀之 岡田 早苗
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.484-490, 2002-07-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

焦げ肉摂取による尿及び便中変異原に対する植物性乳酸菌の抑制効果について検討した.(1) 発酵乳は植物性乳酸菌L. casei subsp. casei 327を109cfu/gを含むものを用い,変異原物質として牛挽肉を炒めたものを用いた.(2) 焦げ肉,尿及び便中の変異原物質はブルーレーヨン法で抽出し,変異原性試験を行った.(3) 被験者4人と少数で焦げ肉摂取により尿及び便中の変異原性の上昇を確認し,尿では6時間で,便では約3日間で排泄された.(4) 被験者8人で焦げ肉摂取時,発酵乳と焦げ肉摂取時,牛乳と焦げ肉摂取時の尿及び便中の変異原性を測定し,発酵乳を摂取することで変異原性が有意に低下することを確認した.対照食である牛乳摂取では明確な変異原性の低下は見られなかった.(5) 発酵乳を摂取することで腸内乳酸桿菌数の有意な増加が見られ,内2人の腸内乳酸桿菌が検出されない被験者で増加したため,当該乳酸菌が腸内到達性を有することが示唆された.
著者
宮脇 長人 表 千晶 小栁 喬 笹木 哲也 武 春美 松田 章 北野 滋
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.98-101, 2017-02-15 (Released:2017-03-01)
参考文献数
8
被引用文献数
4

小型円筒型界面前進凍結濃縮試験装置およびスケールアップ用装置としての循環流壁面冷却型界面前進凍結濃縮装置を用いて日本酒の凍結濃縮を行った.前者においては,市販清酒のアルコール度数を12.5vol-%から24.0%に,また,後者においては市販日本酒原酒のアルコール度数を17.0vol-%から27.1%に濃縮することができた.後者の濃縮酒については,これをアルコール濃度基準で濃縮還元し,濃縮前試料と有機酸分布および香気成分分布を比較した結果,濃縮前後でほとんど変化はなく,界面前進凍結濃縮法により成分分布プロフィールを維持したままの濃縮が可能となることがわかった.このことは,濃縮前と比較して成分分布が大きく変化するこれまでの蒸留酒とは異なる,これまでにない新カテゴリーの日本酒および各種アルコール飲料の製造が可能となることを意味している.
著者
梶本 修身 勝呂 栞 高橋 丈生
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.335-343, 2001-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

日頃,乾燥肌で肌荒れ傾向のある女性32名を対象に,グルコサミン塩酸塩(1500mg/day)のplaceboを対照とした6週間の二重盲検長期摂取試験を実施した.その結果,以下のことが明らかとなった.(1)医師による診察所見において,グルコサミン塩酸塩が,肌の乾燥や化粧のり,落屑を有意に改善させる働きのあることが示された.(2)肌の水分量測定において,グルコサミン塩酸塩が,水分量を増加させる働きのあることが示された.(3)肌の顕微鏡的3次元的皮膚表面解析によって,グルコサミン塩酸塩が,肌の滑らかさや鱗屑を改善させる働きのあることが示された.以上より,グルコサミン塩酸塩の長期摂取が,肌の保水や滑らかさを向上させる上で有効であることが示された.
著者
人見 英里 田村 聡美 鶴本 祐子 津田 孝範 中野 昌俊
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.779-785, 1999-12-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
21
被引用文献数
3 5

南アフリカ産発酵茶であるルイボスティーについて数種のin vitroモデル系を用いてその抗酸化性の評価を行った.(1) ルイボスティー茶葉熱水浸出液およびルイボスティー熱水抽出物はリノール酸モデル系において強い抗酸化性を示し,ルイボスティー熱水抽出物はクエン酸との間に相乗効果を示した.(2) 生体モデル系である赤血球膜ゴースト系,ラット肝ミクロソーム系,ラット肝ホモジネート系においてもルイボスティー熱水抽出物又はルイボスティー茶葉熱水浸出液は濃度依存的に過酸化を抑制した.(3) ルイボスティーに含まれることが報告されているフラボノイド類から6種を選んで抗酸化試験を行ったところ,ルテオリンとクェルセチンが特に強い抗酸化性を示した.
著者
山内 恒治
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.193, 2006-03-15 (Released:2007-03-09)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

ラクトフェリン(LF)は,トランスフェリンと類似の構造をもつ分子量約80,000の鉄結合性の糖たんぱく質である.1939年にSørensenらによって牛乳の乳清画分から赤色たんぱく質として発見され,1960年に母乳と牛乳から単離された.LFは特に初乳での濃度が高く,たんぱく質中の数十%の割合を占め(図1),乳児(仔)の感染防御に重要な役割を果たしていると考えられている.また,涙や唾液などの外分泌液や白血球の一種である好中球にも存在する.LFの生理機能として,1)抗菌・抗ウイルス活性,2)ビフィズス菌増殖促進作用,3)免疫調節作用,4)抗酸化作用,5)鉄吸収調節作用などの多様な作用が知られている.抗生物質の場合,全ての細菌に抗菌作用を示し腸内ではその菌叢全体を死滅させるのに対して,LFは有害菌である大腸菌を抑制する一方,有用菌であるビフィズス菌に対しては増殖効果を示す.LFは胃の消化酵素であるペプシンによる加水分解を受け,より強い抗菌活性をもつペプチド“ラクトフェリシン®”が生成される.このペプチドは細菌や真菌など多くの病原菌に対して殺菌的な抗菌活性を示す.また,抗菌活性以外にも免疫調節作用など種々の生理活性を示し,LFの多様な機能の一端を担うペプチドと考えられている.近年の研究において,LF経口投与による種々の細菌,真菌に対する感染防御機能が明らかとなりつつある.その作用機序として,経口投与されたLFが腸管免疫系に作用し,免疫ネットワークを介して全身免疫系機能が亢進され,生体防御能が高まるものと考えられる.また,大腸はじめ,膀胱,食道,肺,肝臓についてモデル動物における発がん抑制効果が報告されている.ヒトにおいては,乳児におけるビフィズス菌叢の形成促進のほか,足白癬における皮膚症状の改善効果や,C型慢性肝炎における抗ウイルス作用の効果など,LF経口摂取による臨床試験成績が報告されている.LFは未加熱の牛乳には約20mg/100ml,ナチュラルチーズには約300mg/100g含まれており,長い食経験がある.ラットを用いた亜急性毒性試験において毒性は認められず,Ames試験,染色体異常試験,小核試験の遺伝毒性試験でも異常は認められていない.また,これまでの臨床試験においても特に副作用は認められず,ウシLFの食品としての安全性は極めて高いものと考えられる.LFの応用に当たっては,牛乳やチーズホエイを原料として,工業的規模で陽イオン交換カラムを用いた分離精製および膜処理技術を用いた脱塩・濃縮による高純度での生産が確立された.分離精製されたウシLF粉末は淡赤桃色の色調で無味無臭,水に対する溶解性は高く,溶解度は40%である.LFの水溶液は酸性条件では安定でpH4では90℃~100℃5分の処理でも変性しない事が見出された.本特性を利用することにより,活性を保持したLFを含有した食品の製造が可能となった.現在,LFは育児用ミルク,ヨーグルト,乳酸菌飲料,サプリメントなどに広く応用されている.機能性を持った食品よって生活の質の向上や疾病リスクの低減を図る動きは日本だけでなく欧米でも高まっており,今後の更なるエビデンスの蓄積に基づくLFの機能性食品への応用が強く期待される.