著者
児玉 雄二 岡田 真平 木村 貞治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.479, 2003

【はじめに】近年、成長期の中学生におけるスポーツ障害の報告が数多く認められる。我々が相談を受けたY中学校野球部でも、膝関節や足関節周辺のスポーツ障害が数多く認められた。また、ほとんどの選手において柔軟性の低下が認められた。そこで、本研究では、スポーツ障害の予防・改善を目的として柔軟性向上プログラムの指導を実施し、介入前後における柔軟性の変化について検討した。【対象】対象は、Y中学校野球部に所属する1年生13名、2年生3名の計16名で、調査に際しては、本人及び顧問、保護者の同意を得た。【方法】平成14年7月29日に、柔軟性の評価を行った。評価項目は、(1)ハムストリングス:体前屈、(2)腸腰筋:膝窩-床間距離、(3)大腿四頭筋:踵-臀部間距離の3種類とした。次に、これらの筋を中心に全身的な柔軟性向上プログラムを指導した。指導内容は、スタティック・ストレッチとダイナミック・ストレッチ(ブラジル体操)とし、ウォーミング・アップ時とクーリングダウン時に全員で実施するよう指導した。そして、約2ヶ月後の10月3日に柔軟性の再評価を行ない、指導前後での柔軟性の変化をt検定を用いて解析した。また、部員と監督に対し、アンケートによる意識調査を行なった。【結果】柔軟性向上プログラム施行前後での柔軟性の変化については、左右の平均で膝窩-床間距離は6.0cmから4.7cm(p<0.05)へ、体前屈は37.0cmから39.6cm(p<0.05)へ、踵-臀部間距離は10.2cmから9.6cm(p<0.05)へと、すべての項目において有意な改善が認められた。また、アンケート調査では、約7割の部員が、「身体が柔らかくなったと感じる」、「痛みが少なくなった」と回答した。【考察】介入前の評価では、膝関節,足関節周辺の慢性的な疼痛が多く認められるとともに、殆どの選手で柔軟性の低下が認められたことから、中学校野球部でのこれまでの部活動では、野球そのもののトレーニングが中心になっていて、柔軟性などの体力要素に着目した自己管理プログラムの実践が不十分であったと考えられる。また、約2ヶ月という短期間であったが、セルフケアとしての柔軟性向上プログラムの継続的な実施により、有意な柔軟性の改善が認められるとともに、アンケートの結果では、疼痛の軽減が認められた。以上より、今回指導した柔軟性向上プログラムは、柔軟性の向上に効果があるとともに、慢性的な疼痛などのスポーツ障害の軽減にも有効であったため、今後も、コンディショニングやスポーツ障害の予防・改善のための基礎プログラムとして、より多くの学校で実践してもらうよう啓発活動を継続していきたい。
著者
鈴木 裕二 守川 恵助 乾 亮介 芳野 広和 田平 一行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Da0999, 2012

【はじめに、目的】 起立性低血圧は目眩や失神などの症状を引き起こし、日常生活の大きな妨げになる。この対策として下肢弾性ストッキングが有用とされており、血圧低下を軽減することができる。しかし使用すべき圧迫力に一致した見解は得られていない。今回、3種類のストッキングを使用し、起立時の血行動態の変化について比較、検討を行った。【方法】 対象は健常男性20名(年齢24.9±3.2歳)。足首に対してそれぞれ、弱圧(18-21mmHg)、中圧(23-32mmHg)、強圧(34-46mmHg)の圧迫力が加わる3種類の下肢弾性ストッキングを着用した状態と、着用しない状態(Control)の計4条件でそれぞれ起立負荷を行った。起立負荷は安静座位の後、4分間のスクワット姿勢となり、その後に起立を行う方法で行った。この際、非侵襲的連続血圧測定装置(portapres,FMS社)を使用し、SBP:収縮期血圧、DBP:拡張期血圧、SV:一回拍出量、HR:心拍数、CO:心拍出量、TPR:総末梢血管抵抗を測定し、血行動態指標とした。測定時期は安静座位をRest期、起立直前の10秒間のスクワット状態をSquat期、起立後10秒間をSt10期、11秒~20秒間をSt20期、21秒~30秒間をSt30期とした。また3種類のストッキング着用に対する不快感をVAS(Visual Analogue Scale:0=全く不快感を感じない、10=最大の不快感を感じる)にて評価した。統計方法は、各測定時期における4条件間における各血行動態指標及び、VASに対して反復測定分散分析を行い、多重比較にBonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、協力していただいた施設の倫理委員会の承認を得ると同時に、ヘルシンキ宣言に基づいて被験者に本研究内容を説明し、署名によって同意を得た。【結果】 SBPではSquat期からSt10期にかけて、Control(150.9±15.3→112.5±11.4mmHg)、弱圧(153.0±16.5→119.5±14.8mmHg)、中圧(151.4±15.4→115.7±12.7)、強圧(151.9±16.0→120.2±13.8mmHg)とそれぞれ起立により低下がみられた。Squat期では4条件間に有意差はみられなかったが、St10期ではControlに比べて弱圧(p<0.05)と強圧(p<0.01)が有意に高値を示し、弱圧と強圧との間には有意差がみられなかった。このSt10期において、SVでは強圧(83.1±11.8ml)がControl(72.7±10.1ml)に比べて有意に高値を示し(p<0.01)、COでも強圧(7.9±1.2L/min) がControl(7.2±1.1L/min) に比べて有意に高値を示した(p<0.001)。弱圧はSt10においてControlに比べて、SV、HR、CO、TPRを高値に保つことができたが、有意差はみられなかった。VASでは強圧(3.9±0.5)が弱圧(2.4±0.4)、中圧(2.7±0.5)に比べてストッキング着用の不快感がそれぞれ有意に高値であり(p<0.01)、弱圧と中圧の間では有意差はみられなかった。【考察】 St10期に弱圧と強圧がControlに比べてSBPを有意に高値に保つことができたのは、ストッキングの圧迫により、起立時の下肢への血液貯留を軽減でき、SVが上昇し、COを高値に保てたことが大きな要因と考えられる。しかし、弱圧ではSV、COにおいてControlとの間に有意差がみられなかった。しかし、血圧の決定因子である、CO(SV×HR)、TPRのすべてが有意差はないものの、Controlに比べて高値を示していたことから、これらの因子の相乗効果により、SBPを有意に高値に保つことができたと考えられる。VASでは強圧の不快感が有意に高値であった。Rongらは本研究の弱圧レベルのストッキングの使用が最も快適であると報告している。このことから、強圧の過度の下肢への圧迫が被験者の不快感を増大させたと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 下肢弾性ストッキング着用の不快感は日常生活の着用において大きな問題となる。今回の研究において起立性低血圧の予防に不快感の少ない弱圧のストッキングが十分に効果的であることが示唆された。これは使用者が快適な日常生活を送る上で大きな意義がある。
著者
池添 冬芽 中村 雅俊 佐久間 香 塚越 累 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】筋力トレーニングの方法として,運動速度をゆっくりとするスロートレーニングと運動速度を素早くするパワートレーニングがあるが,どちらの筋力トレーニング法が高齢者の運動機能や筋特性,歩行能力,活動量,精神心理機能の改善に効果的であるかを多面的に検討した報告はみられない。本研究の目的はスロートレーニングとパワートレーニングのどちらが高齢者の機能向上に有効であるかを明らかにすることである。【方法】対象は京都市介護予防事業に参加した地域在住高齢者59名のうち,介入前後の測定会に参加できた51名(男性5名,女性46名,年齢77.9±5.6歳)とし,スロートレーニングを実施するスロー群,パワートレーニングを実施するパワー群,トレーニングを実施しない対照群の3群に分類した。なお,測定に大きな影響を及ぼすほど重度の神経学的・筋骨格系障害や認知障害を有する者は対象から除外した。スロー群およびパワー群には週1回8週間の理学療法士監視型の筋力トレーニングを実施した。また,この監視型トレーニング以外に,家庭での自主トレーニングとして同様の運動プログラムを実施するよう指導した。運動強度は主観的運動強度で「ややきつい」程度とした。筋力トレーニングは6種目(立ち座り動作,立位で股関節屈曲・伸展・外転など)の下肢筋力トレーニングを実施した。スロートレーニングでは求心性・遠心性フェーズともに5秒かけて運動を行った。パワートレーニングでは求心性フェーズはできるだけ速く動かし,遠心性フェーズでは2秒かけて運動を行った。両トレーニングともに反復回数は各種目につき10回とした。運動機能として筋力(膝伸展筋力,握力),バランス(片脚立位保持時間,ファンクショナルリーチ,ラテラルリーチ),柔軟性(長座体前屈),敏捷性(立位ステッピング)を評価した。歩行特性として多機能三軸加速度計を用いて最大努力歩行時の速度,ケーデンス,ストライド長,立脚期時間の左右非対称性,歩行周期変動性を評価した。筋特性として超音波診断装置を用いて大腿四頭筋の筋厚および筋輝度を測定し,それぞれ筋量および筋の質(筋内の非収縮組織の割合)の指標とした。また,Life Space-Assessment(LSA)により生活空間を評価した。歩行量として3軸加速度センサーを用いて1週間分の記録データから1日あたりの平均歩数と歩行時間を求めた。精神心理機能として,Geriatric Depression Scale-15(GDS-15)により抑うつ状態,転倒に対する自己効力感スケール(Fall Efficacy Scale;FES)により転倒恐怖感の程度を評価した。統計学的検定として,各群における介入前後の比較には対応のあるt-検定,各測定項目の群間比較には多重比較検定を用いた。【倫理的配慮,説明と同意】すべての対象者に研究に関する十分な説明を行い,書面にて同意を得た。なお,本研究は本学医の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号E-1581)。【結果】3群の年齢,身長,体重に有意差はみられなかった。週1回の監視型トレーニング以外に自主トレーニングをスロー群では2.7±1.9日/週,パワー群では3.4±1.4日/週行っており,この実施率に2群で有意差はみられなかった。運動機能の変化について,膝伸展筋力は対照群では変化がみられなかったが,スロー群とパワー群では介入後に有意な増加がみられ,両群の筋力増加率に有意差はみられなかった。膝伸展筋力以外の運動機能はいずれの群も変化がみられなかった。また,スロー群,パワー群ともに筋厚の有意な増加および筋輝度の有意な減少がみられ,筋厚および筋輝度の変化率に両群で有意差はみられなかった。歩行特性はスロー群の立脚期左右非対称性と歩行周期変動性のみ有意に減少した。生活空間や歩行量,抑うつ状態や転倒恐怖感は3群いずれも変化がみられなかった。【考察】スロー群,パワー群ともに介入後に膝伸展筋力や筋厚,筋輝度の改善がみられ,両群の改善率に有意差はみられなかった。このことから,スロートレーニングとパワートレーニングは筋力や筋量,筋の質の改善に有効であり,その効果は同程度であることが示唆された。それに加えてスロー群においては歩行周期変動性や左右非対称性の改善がみられたことから,歩行特性の改善にはスロートレーニングが有効であることが示唆された。しかし,両トレーニングともに筋力以外の運動機能や生活空間,歩行量,精神心理機能に及ぼす効果は不十分であることが示された。【理学療法学研究としての意義】スロートレーニングとパワートレーニングはともに筋力や筋量,筋の質の改善に有効であり,加えてスロートレーニングは歩行特性の改善にも有効であることが示唆された。
著者
松岡 雅一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】大阪府理学療法士会(以下,府士会とする),保健福祉局,保健福祉相談部における大阪府民を対象とした相談業務は,昨年度までホームページを通して,メールを用いた方法のみで行っていた。しかし,相談件数は少なく,保健福祉相談部として重要である相談業務の在り方を検討するべきであると考えられた。そこで,府民からの相談件数を増やすことを目的として,今年度から以下に示すような活動を開始したので報告する。【活動報告】府士会,保健福祉相談部における相談業務とは大阪府民から理学療法や理学療法が関連する医療,保健,福祉,介護,健康増進(予防),養成校などについて相談を受け,相談者が問題や悩みを解決する上で有益な情報提供や助言を行うこととしている。今年度から新たに開始した活動は,以下の2つである。1つは,府士会,ブロック局の各ブロックが開催する市民公開講座の会場での相談業務と,もう1つは,「合同イベント」と称して,他の2局と合同して開催した理学療法(士)啓発イベントの会場での相談業務であった。全ての会場において,机と椅子を用いて,随時2・3名の相談に対応できるように相談ブースを設置し,相談業務を実施した。前者の市民公開講座は9つから成るブロックがそれぞれ1・2回開催し,1年間で計11回開催する。ブロック局に協力を依頼し,全ての会に参加し,公開講座参加者を対象に相談業務を実施する。後者は大型ショッピングモール内のスペース兼通路を会場として開催し,モール内を通行する人を対象に相談業務を実施した。相談件数は1回の会において,4・5名(1割から2割)であった。【考察】これまでの相談業務は受動的であったが,今回の活動は相談者へ働きかけることができ,能動的であったと考えられ,結果的に相談件数が増えた。しかし,相談件数は少なく,開催場所は見直しが必要である。【結論】相談業務の改善を図り,相談件数は増やすことができた。
著者
岩崎 仁美 幸田 利敬 武中 美佳子 松本 尚子 山根 学 矢本 富三 助川 明 武富 由雄 高田 哲
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G2Se2067, 2010

【目的】医療専門家の教育は、1965年に提唱されたBloomらの3分野、認知領域・精神運動領域・情意領域に基づいており、理学療法士養成は概ね知識と技術、専門的態度の3つから構成されている。近年、医療界全体で医療従事者の対人スキル・コミュニケーション、専門家としての態度をいかに養うかが大きな課題となり、その到達目標も定められてきている。一方、目標達成のためには、個々の学生が指導者側の指導をどのように受け止めるかも重要で、受け止め方の傾向を熟知し、学生の特性に応じた指導を行うことが大切である。そこで我々は、理学療法実習を終了した学生を対象に絵画連想法であるP‐Fスタディを実施し、実習における態度評価との関連を検討した。<BR><BR>【方法】平成20年度に実習を全て終了し、卒業が見込まれた学生のうち協力が得られた69名、男性50名(20~47歳、平均28.9歳)、女性19名(20~49歳、平均27.6歳)を対象とした。心理テストはP-Fスタディを用い、自分が起こした事象に対する他者からの指摘と、他者が起こした事象によって生じるフラストレーションに対する反応を採点し、評点因子毎に標準得点を算出した。実習態度評価については、「指導者の助言を受け入れることができる」という項目に着目した。実習評価者による差を排除するため複数の実習における平均値を個人の得点とし、その中央値よりも高い24名を上位群、低い15名を下位群とした。P‐Fスタディより得られた各評点因子を、実習評価の上位群・下位群間で比較し、Mann-WhitneyのU検定(p≦0.05)を用いて分析した。<BR><BR>【説明と同意】本研究が単位取得に関わらないことを示すため、実施は単位認定後とし、今後の臨床実習指導に役立てる旨を伝え、同意の得られた学生にのみ実施した。尚、得られた情報は、個人の特定が不可能な状態で研究に使用し、解析後は破棄した。<BR><BR>【結果】(1)上位群では、「問題解決を図るために他の人が何らかの行動をしてくれることを強く期待する反応」が下位群より有意に高かった。(2)同様に、上位群においては、「自責・自己非難の気持ちの強さに関係する反応」が下位群より高い値をとった。(3)「一般の常識的な方法で適応できるかをみるための指標」についても上位群が下位群より高得点であった。(4)他の指標に関しては両群間に有意差を認めなかった。<BR><BR>【考察】上位群では適度な自己反省心を持ち、問題解決に向けて自分から援助・助力を求めることができるが、下位群では自己反省心にやや乏しい傾向があり、適切に必要な助力を求めることができず、問題解決のための積極的姿勢が乏しいのではないかと示唆された。原因を自分に求め、自分の努力によって問題を解決しようという反応や、規則や習慣に従って解決を待つという忍耐強さに関わる反応においては両群間で有意差がないことからも、単に反省して従順であることではなく、困難な場面では助力を求める積極的な姿勢が指導者に評価されていた。一方、自己反省心が強すぎる場合には、自分自身を過度に攻撃する可能性、また他者への期待が高すぎる場合には、依存心の強さと捉えられる場合もあるため、評価にあたっては個別に判断する必要があると思われた。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】今後は、実習前後での変化や、実習中に問題が生じる学生についても検討し、学生の特性に応じた指導に繋げていきたい。
著者
遠藤 恭生 田中 悠也 早川 庫輔 鷲澤 秀俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb1154, 2012

【目的】 当院において,10代におけるスポーツ障害患者の約4割は小学生である.その中でも,野球におけるスポーツ障害受診率は小学生全体の約3割と高く,その多くは野球肩,野球肘の診断を受けているのが現状である.一般的に野球肩・野球肘の発生頻度は投手と捕手に多いと言われている.今回われわれは,当院近隣にある少年野球チームに対し,メディカルチェック(以下MC)を実施した.少年野球選手をピッチャーまたはキャッチャー群とその他ポジション群の2群に分け比較検討し,ポジション別の身体特性を知ることを目的とした.【方法】 対象は,軟式少年野球3チーム58名の各選手に対し,事前アンケートとして学年・身長・体重・既往歴・現病歴・睡眠時間・食事内容・ポジション・投球側・打撃側・野球歴・その他のスポーツ歴を記入してもらい,MC当日は,理学療法評価として立位アライメントのほか,圧痛は肩関節・肘関節・膝関節・踵部に行い,関節可動域(以下ROM)の測定として,肩関節・前腕・手関節・股関節・膝関節・体幹に対し,投球側および非投球側の両側に実施した.スクリーニングテストにおいては,握力,母趾・小趾筋力,片脚バランス,立位四股テスト,しゃがみ込みテスト,体幹機能テスト,ブリッジテストを実施した.事前アンケートでポジションの記載があった51名のうち,ピッチャーまたはキャッチャーの選手19名をPC群,その他ポジションの選手32名(内野手15名、外野手17名)をO群の2群に分類し比較した.統計処理として,対応のないt検定またはMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準を5%未満とした.【説明と同意】 対象者および保護者・チーム関係者には,十分な説明を行い,同意の上で測定を行った.【結果】 ROMにおいて,投球側肩関節HFTではPC群109.2±12.0度,O群118.9±15.0度であり,投球側前腕回外ではPC群95.3±7.4度,O群100.8±10.5度,投球側股関節外旋ではPC群48.4±8.3度,O群55.8±10.7度といずれもPC群がO群より有意に低値を示した(p<0.05).スクリーニングテストにおいては,投球側握力ではPC群20.0±5.8kg,O群15.8±6.2kgとPC群がO群より有意に高値を示した(p<0.05).体幹機能テストではPC群がO群より有意に高い傾向を示し,投球側軸足の片脚バランスにおいても,PC群がO群より片脚バランス時の動揺が有意に少ない傾向を示した(p<0.01).また他の項目に関しては、有意差は認められなかった.【考察】 少年野球選手において,野球肩・野球肘の発生頻度は投手と捕手に多いと言われている.今回,われわれのMCの結果から,ピッチャーまたはキャッチャー選手の身体特性として,ROMにおいて,いずれも投球側肩関節HFT・前腕回外・股関節外旋が有意に低値を示した.スクリーニングテストでは,握力が有意に高値を示したほか,体幹機能テストでは有意に点数が高く,投球側軸足の片脚バランスにおいても有意に動揺が少ない傾向を示した.これは,ピッチャーまたはキャッチャーというポジションが,チームの柱になるポジションであるため,筋力・スキルが高い選手に任させることが多いためと思われる.しかし,投球側上下肢のROM制限を認めることから,身体的負担が大きく,これらが野球肩・野球肘の発生に関与する一要因になるのではないかと考える.今後は,MCを定期的に継続し,障害発生の予防に努め,選手のみならず保護者や監督・コーチへのセルフケアの指導や全力投球数の制限などの啓蒙をしていく必要がある.【理学療法学研究としての意義】 ピッチャーまたはキャッチャー選手と,その他ポジション選手におけるポジション別の身体特性を知ることで,野球肩・野球肘の障害発生予防の1つの要因になることが示唆された.
著者
吉田 昌平 守田 武志 舌 正史 沼倉 たまき 小出 裕美子 中尾 聡志 足立 哲司 原 邦夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.474, 2003

【目的】今回我々は体重の1%(1%BW)、2.5%(2.5%BW)、5%(5%BW)、7.5%(7.5%BW)、10%(10%BW)の5種類の負荷を用いて全力ペダリングを実施し、それぞれの負荷によって得られるパワー発揮特性をピークパワー(PP)、体重あたりのPP(PP/BW)、ピーク回転数(P-rpm)と最大無酸素パワー(MAnP)から評価し、実際の30mスプリントパフォーマンスとの関係について検討した。【方法】某大学サッカー部、男子14名(年齢19歳、身長172cm、体重68kg)を対象とし、自転車エルゴメーター(パワーマックスVII)を用いて、1、2.5、5、7.5、10%BWの5種類の負荷で各1回10秒間の全力ペダリングを実施した。それぞれの負荷で得られたPP、PP/BW、 P-rpmを二次回帰し、負荷-PP 、PP/BW、 P-rpm曲線を算出した。30mスプリントテストは3回の試技を手動により計測しその平均時間を求めた。【結果】1)PPは負荷との間にY=-3.689+ 230.247*X-13.146*X^2(r=.99)の関係が認められた。PP/BWは負荷との間にY=-.267 +3.612*X-229*X^2(r=.99)の関係が認められた。rpmは負荷との間にY=227.96- 10.405*X-.311*X^2(r=.95)の関係が認められた。負荷-PP 曲線から算出したMAnPは988wattで、体重あたりのMAnP(MAnP/BW)は14.4 watt/BWであった。MAnPが得られた時のrpm(MAnP-rpm)は120 rpmで、負荷は12.4%BWであった。2)3回試技における30mスプリントテストの平均時間は4.15±0.13秒であった。30mスプリントパフォーマンスと各負荷のPP、PP/BW、P-rpmの相関係数は1%BWでそれぞれr=-.21、r=-.41、r=-.59(ns、ns、p=.026)、2.5%BWでそれぞれr=-.21、r=-.48、r=-.61(ns、ns、 p=.020)、5%BWでそれぞれr=-.28、r=-.68、r=-.70(ns、p =.010、p=.006)、7.5%BWでそれぞれr=-.29、r=-.55、r=-.57(ns、p =.041、p=.034)、10%BWでそれぞれr=-.31、r=-.42、r=-.42(ns)、MAnP 、MAnP/BW、MAnP-rpmでそれぞれr=_-_.21、r=-.22、r=-.42(ns)であった。多変量解析で30mスプリントパフォーマンスと有意に相関したのは5%BW でのP-rpmのみであった(p<.01)。【考察】PPおよびPP/BWは、負荷-PP、PP/BW曲線からMAnPが得られた負荷12.4%BWを上限として負荷が大きくなればなる程高い値を示した。P-rpmは、負荷-P-rpm曲線から負荷が小さくなればなる程高い値を示した。このようなパワー発揮特性とスプリントパフォーマンスとの関係について検討すると、パワーは負荷が大きい程高い値が得られるが、スプリントパフォーマンスとの関係はむしろ弱くなった。逆に負荷を小さくして高回転を得た方がスプリントパフォーマンスとの関係は強くなった。すなわち、スプリントパフォーマンスは踏力よりもむしろ回転速度に依存したパワー発揮特性と関係が強く、ペダル回転数が実際の走動作であるピッチ数と関係していると推察した。
著者
渡部 幸喜 赤松 満 坪井 一世 高橋 敏明 渡部 昌平 山本 晴康 一色 房幸 浦屋 淳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.A1078, 2005

【はじめに】<BR> 我々の日常生活においてサンダルやスリッパは身近に使用されている履物のひとつである。しかし、転倒の危険性も高く、全転倒例のうち26%がサンダル使用時という報告もある。これまで靴を装着しての足底圧を含めた歩行分析や動作解析の検討は多くなされているが、サンダル履きでの検討は少ない。そこで今回我々は、サンダル使用時と靴使用時および素足での歩行足底圧を計測し、若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象と方法】<BR> 対象は下肢に痛みや変形が見られない健常男性10名(年齢21歳~47歳、平均31歳)で靴使用時、サンダル使用時、および素足での歩行足底圧を計測した。歩行は速い、普通、遅いの3段階に分けて行い、測定にはニッタ社製F-scanシステムを用い1秒間に20コマで計測し、得られたデータから、足底圧分布、最大圧、重心の軌跡等について比較検討した。<BR>【結果】<BR> 重心の軌跡の分析では、サンダル履きの場合、いずれの歩行速度においても踵接地の位置、つま先離れの位置がそれぞれ後方・前方へ移動する傾向がみられた。それに伴い靴使用時に比し有意に前後方向への重心の移動距離が大きかった。側方への重心移動距離も遅い速度で有意に大きかった。また靴使用時との違いは遅い速度においてより著明であった。最大荷重圧については素足・靴とサンダル使用との間には有意な差は見られなかった。<BR>【考察】<BR> 近年、足底圧の評価として簡便で再現性の高いF-scanが開発され、下肢の評価によく使用されている。そこで我々は靴とサンダルでの歩行時の足底圧の動的な検討を行った。足関節・足趾周辺に麻痺があるとサンダルがよく脱げるというのは臨床でも経験する通り、遊脚期にサンダルが脱げないようにするための筋活動が歩行の不安定に関与していると思われるが、立脚期においてもサンダルは靴に比べ重心の移動が大きく、不安定であることが示唆された。サンダルは足への圧迫感が少なく、靴に比べて通気性が良く、白癬などの感染も少ないことから好まれることが多い。しかし、サンダル使用による転倒の危険性は高く、またひとたび転倒すると靴使用時に比べ骨折の率も高くなるという報告もありこの所見を支持したものと考えられる。
著者
植田 拓也 柴 喜崇 畠山 浩太郎 中村 諒太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EaOI1038, 2011

【目的】<BR> 脊柱後彎変形(以下,円背)は加齢に伴い進行する高齢者特有の姿勢であり(Milne,1974),高齢者の約60%に認められると報告されている(川田,2006).高齢者の円背の増加はバランス能力低下(坂光,2007),呼吸機能の低下(草刈,2003)などと関係があり,円背の定量的測定の開発が求められている.また,円背進行予防運動の効果を検討するためにも,時間的な制約のある臨床現場ではより効率的で簡便な円背の測定が必要であると考えられる.<BR> 現在,円背の定量的測定のGold standardとして脊柱矢状面レントゲン画像から算出するcobb角がある(Kado,2009).また,自在曲線定規による円背指数(Kyphosis Index(%):以下,KI)が最も安価で簡便な測定方法であるとされている(Lumdon,1898).<BR> そこで本研究の目的は臨床で使用可能であり,簡便な円背の定量的測定方法の開発を目的とし,小型ジャイロセンサーを用いた円背の定量的測定の妥当性及び再現性を検討することとした.<BR>【方法】<BR> 参加者は神奈川県S市のラジオ体操会会員から募集した56歳~86歳の地域在住中高齢者96名(男性50名:平均年齢70.1±5.0歳,女性46名:平均年齢72.7±6.2歳)であった.<BR> 姿勢測定は((株)ユーキ・トレーディング社製,ホライゾンKS08010:以下,姿勢測定装置)を使用し,脊柱後彎角度(Kyphosis Angle;以下,KA)を算出した.本装置は小型ジャイロセンサーが内蔵された測定器(±0.7°の精度)であり,三次元的な角度の測定が短時間かつ正確に可能である.KAは,第7頸椎棘突起(以下,C7)と脊柱の最大後彎部を結ぶ線,脊柱の最大後彎部と両側上後腸骨棘の中点(以下,PSIS中点)を結ぶ線のなす角度である.また,外的基準として円背の程度の測定をKIにて算出した.KIは身体に非侵襲的であり,高値になるほど円背が重度と判断される指標である.また,Cobb角との高い相関が確認され(Milne,1974),検者内,検者間の再現性のある測定方法である(Lundon,1998).KIの算出は,測定を立位にて実施した.C7と両側上後腸骨棘を触診し,C7からPSIS中点までの脊柱アライメントを自在曲線定規で型どりそのアライメントを紙にトレースした後,C7からPSIS中点を結ぶ線との交点までの長さL(cm)と直線Lから彎曲頂点までの高さH(cm)を記録し,H/L×100で算出した.<BR> 統計解析は姿勢測定装置による円背測定の妥当性について,KIとKAの関連をPearsonの積率相関係数を用いて検討した.また,2回及び3回連続測定の再現性について,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:以下 ICC(1,1),ICC(1,2),ICC(1,3))を算出し,適切な測定回数を検討した.なお,有意水準は1%未満とした.<BR>【説明と同意】<BR> 参加者には事前に書面及び口頭で本研究について十分な説明を行い,書面にて自署において同意を得た.<BR>【結果】<BR> 参加者全体のKA及びKIの平均値はKA:163.8±6.8°,KI:8.4±2.6%であった.KAとKIの間には,全参加者(r=-.63,<I>P=.00</I>,n=96),男性(r=-.64,<I>P=.00</I>,n=50),女性(r=-.62,<I>P=.00</I>,n=46)において統計学的有意な中等度の相関が確認された.<BR> KAの連続測定の再現性の検討では,2回連続ではICC(1,1):0.967(99%Confidence interval(99%CI);0.935-0.983),ICC(1,2):0.983(99%CI;0.966-0.991),3回連続ではICC(1,1):0.958(99%CI;0.9267-0.9766),ICC(1,3):0.985(99%CI;0.974-0.992)であった.<BR>【考察】<BR> 本研究では姿勢測定装置による円背の定量的測定の妥当性と再現性を検討した.結果,姿勢測定装置による円背測定の妥当性が確認された.また,ICCは0.9以上で"優秀"と定義されていること(Shrout,1979)から,2回及び3回連続測定の高い再現性が確認された.これは3回の連続測定の再現性に関しては,本装置による体幹前傾角度の計測法を検討した先行研究(Suzuki,submission)とも一致する結果となった.姿勢測定装置による円背測定の回数はKAのICC(1,1)が0.95以上であったことから1回の測定でも十分再現性は高いといえる.つまり,姿勢測定装置による円背の測定は1人の検者が1回測定すれば十分であるということができる.以上のことから,姿勢測定装置による円背測定は,妥当性,連続測定の再現性が高く,臨床現場において簡便に実施可能な円背の定量的測定方法であることが示唆された.<BR> しかし,本研究では姿勢測定装置での日の違いによる検者内再現性及び検者間再現性は検討しておらず,今後はこれらについても検討する必要がある.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 現在,求められている科学根拠に基づく理学療法の確立には治療効果を定量的,客観的に測定することが必要である.また,その測定方法は簡便であり,時間に制約のある臨床場面で容易に使用できることが前提となるべきである.本研究において,効率的かつ正確に円背の定量的測定が可能になることで,円背の進行予防に対する効果的な訓練方法の確立につながると考えられる.
著者
河野 美華 武田 知樹 大平 高正 山野 薫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0076, 2007

【目的】<BR> 自転車エルゴメーターは,下肢関節への負担が少なく筋力増強が得られるため,運動療法の中で幅広く利用されている.しかし,その特性について,臨床で使用が容易な低強度での筋活動,また駆動肢位についての報告は少なく,不明な点もみられる.今回は,自転車エルゴメーター駆動時における,強度や膝関節位置の相違が駆動時の大腿四頭筋活動に与える影響について考察する.<BR>【方法】<BR> 対象は本研究に同意した健常成人4名(男女各2名)とした.平均年齢は24.0±4.0歳,平均身長は171.5±6.5cm,平均体重は62.0±7.5kgであった.自転車エルゴメーターは,Cateye社製ergociserMODEM EC-1000を用い,運動強度は60Watt(1.0kp×60rpm:低強度),120Watt(2.0kp×60rpm:高強度)の2条件を選択した.サドルの高さは膝関節最大伸展時30°に設定した.駆動肢位は,大腿中央-膝蓋骨中央-下腿中央を結んだ線を中間位とし,それより膝が内側へ入った場合(内側位),外側へ出た場合(外側位)の3肢位を設定した.筋活動の測定は,表面筋電図NORAXON社製テレマイオ2400を用い,大腿直筋,内側広筋,外側広筋の筋活動を測定した.得られたデータは全波整流し,1サイクルごとの平均振幅を求め,14サイクル分の平均値を代表値とした.さらに,各筋の最大等尺性収縮時の筋活動量に対する相対値(%MVC)を算出した.肢位別の比較検討では,各筋ごとに中間位の平均振幅値を100%とし,内側位と外側位の活動量を比較した.<BR>【結果】<BR> 強度別の比較において,大腿直筋では低強度10.8%に対し,高強度21.4%であった.外側広筋では低強度23.4%に対し高強度46.6%,内側広筋では低強度46.8%に対し,高強度85.3%であった.低強度は高強度の約半分の活動量であり,最も高値を示したのは内側広筋であった.肢位別に比較した場合,低強度において外側位で大腿直筋の活動量の増加が認められ,同じく内側位で外側広筋と内側広筋に活動量の増加が認められた.高強度では大きな増加はみられなかった.<BR>【考察】<BR> 低強度による自転車エルゴメーター駆動では,筋力増強が得られにくいとされているが,今回の結果より低強度でも内側広筋では約50%の活動量が得られ,他筋と比較して高い活動量を示したことより,内側広筋に対して有効性が示唆された.また,肢位別比較では,二関節筋である大腿直筋の起始・停止の関係が影響していると考えられ,拮抗筋である大腿二頭筋の活動量測定を行う検討の必要がある.高齢者や術後早期の患者に対しては,低強度の施行が多く用いられるが,目的とする筋に対して駆動肢位設定を確認する必要がある.<BR>
著者
田中 秀明 井舟 正秀 諏訪 勝志 藤井 亮嗣 川北 慎一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B4P2120, 2010

【はじめに】神経痛性筋萎縮症は急性の激痛で発症,痛みの消失とともに出現する(肩周囲の)弛緩性運動麻痺,多くが自然回復,の3つの特徴がある.本症はウイルス性の腕神経叢炎と言われているが現在の所,明確な病理学的裏づけがないのが現状である.臨床症状と他疾患の除外によって診断される「症候群」と考えるべきと言われている.今回,本症を経験する機会を得たので報告する.<BR>【症例紹介】50歳代男性,職業は事務職.左利き.<BR>【説明と同意】本人に説明を行い,本報告の同意を得た.<BR>【経過】1ヶ月前より発熱があり内科を受診.その2日後,左肩から上腕の疼痛あり,翌日には両前腕に疼痛が広がり,神経内科を受診。採血では炎症所見が認められ,RA疑いで整形外科へ紹介.整形外科ではRAは否定され,多発性筋痛症の疑いでリハビリテーション科へ紹介.両三角筋、棘上筋、棘下筋、左前腕筋などに著明な萎縮がみられ肩周囲の筋力はMMTで右3-レベル,左4レベル,握力は右18kg,左19kg,両肩に夜間痛,両上腕・前腕外側、母指・示指背側の感覚異常を認めた.関節可動域に関しては特に制限は認めなかった.車の運転やデスクワーク,更衣動作などに障害があった.針筋電図検査施行され右肩周囲と左前腕・手指筋にPSW,fbを認め神経原性筋萎縮症と診断された.以後,週1回来院し関節可動域運動,筋力維持・増強運動の自主練習内容の確認と評価を実施した.運動療法開始当初の目標は拘縮予防と筋力維持・増強とし,肩関節以外の上肢筋力運動,腱板の収縮が可能となり次第,セラバンドでの筋力強化を代償動作が入らない程度の回数で実施してもらった.また抗重力が不可能な時期は仰臥位、腹臥位で上肢の重力を除いた状態での三角筋を最大限に動かす運動を実施した.例としてテーブル上をバスタオル等で抵抗をなくしすべらせる方法での運動について指導した.2ヵ月後,握力は右25kg,左26kgに増加したが肩周囲に関しては症状の変化はほとんどなかった.6ヵ月後,握力は右27kg、左27kgと増加したが肩周囲の筋力に変化はなかった.感覚異常も左前腕は初期に比べ中等度まで,その他は軽度まで改善した.肩周囲の関節可動域に関しては若干制限を認めるも自己練習にて維持は出来ていた.10ヵ月後,左肩周囲の筋力は5レベルに改善,右も4レベルと抗重力運動が可能となり握力は左右30kg,感覚異常も左前腕は軽度まで軽減,その他はほぼ正常に改善した.筋力増強運動に関してはセラバンドの種類を変更し負荷を強めていった.1年後,握力は右37kg,左35kgと改善.感覚異常も左前腕に若干の違和感を残しその他は改善した.1年5ヵ月後,左41kgと改善,針筋電図施行され右肩周囲と左前腕・手指筋のPSW・fbの減少,polyNMU・NMUの出現を認め改善傾向と説明をうけた.左前腕の感覚異常は消失した.以後,経過観察必要なため定期的に来院している.<BR>【考察】神経痛性筋萎縮症の予後として90%以上が回復良好とされ1年以内36%,2年以内75%,3年以内89%と報告がある.少なくとも2年以上の長期観察が必要であるとされている.不全麻痺例や,完全麻痺であっても3ヶ月程度で正常にまで回復するものがあり,非変性型の神経障害も起こりうると推測される.一方,予後不良因子としては,痛みが長く持続・再燃するもの,障害範囲が広く腕神経叢全体と考えられるもの,下位神経根領域が主体のもの,3カ月以内に回復の徴候がないもの,などがあげられている.上位型の麻痺に比べて下位型の麻痺の回復が不良な理由について,障害部位から麻痺筋までの再生距離が長いことによって説明しようとする考えがある.発症後1-4週の早期に回復傾向が現れるものでは,予後は良いとされている.本症例においてはリハビリテーション科受診までに改善した部分はあったとのことで傾向は見られていた.その後,下位においては徐々に改善してきたが、上位は改善の傾向が見られるまでに1年近く時間を要した.理学療法としてはごく一般的な内容で自動運動が不可能な時期においては拘縮予防を中心に自己にて可能な上肢関節の他動運動,自動介助運動の指導を行い、自動運動が出現してくれば筋力増強運動を実施した.通院頻度は職業もあり頻回には来院できない為,的確な自己運動方法を指導することや,経過が長期にわたるため医師からのインフォームドコンセントや精神面でのフォロー,合併症予防につとめることが重要な要素であると考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】希少な症例の症候や治療内容を提示することで,疾患に対する理解やよりよい治療方法を確立することに意義があると思われた.今回の症例は,報告数の少ない症例で理学療法の介入点について更なる検討が必要と思われた.
著者
赤尾 健志 寺林 恵美子 大場 正則 水島 朝美 城戸 恵美 高橋 秀幸 山上 亨 八野田 純
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.D1218, 2008
被引用文献数
1

【目的】当院の癌終末期理学療法では、1.患者・家族のニーズに答える、2.患者・家族の信頼を得る、3.チーム医療を重視することを目標に取り組んでいる。今回、癌終末期理学療法の取り組みを現状と患者・家族のコメントをもとに検討したので報告する。<BR><BR>【対象】2006年4月から2007年9月の間、癌終末期で理学療法を施行し入院中死亡した22名、男性11名、女性11名、平均年齢73.8歳、現疾患は、肺癌16名、大腸癌2名、胃癌2名、肝細胞癌1名、胆嚢癌1名であった。<BR><BR>【方法】理学療法開始時と終了時の理学療法内容とADLレベル、理学療法実施期間、理学療法終了日から死亡までの期間について調べた。また対象者を、理学療法を死亡まで継続可能であった群(以下継続可能群)14名、患者の希望により理学療法を途中で中止した群(以下希望中止群)3名、合併症等の発症により理学療法を中止した群(以下合併症発症群)5名に分類した。それぞれの群に対し、患者・家族のコメントをカルテ等から抽出した。<BR><BR>【結果】理学療法内容は、開始時は、ADL練習19名、肺理学療法5名、筋力運動10名、関節他動運動7名、疼痛緩和・浮腫改善2名であった。終了時は、関節他動運動14名、肺理学療法12名、疼痛緩和・浮腫改善6名、ADL練習1名であった。ADLレベルは、理学療法開始時は歩行レベル7名、車椅子レベル11名、ベット臥床レベル4名であった。終了時は、車椅子レベル2名、ベット臥床レベル20名であった。理学療法実施期間は平均42.6日(7日~170日)であった。理学療法終了日から死亡までの期間は平均4.3日(0日~20日)であった。患者・家族のコメントは継続可能群では、呼吸が楽になった、むくみがとれて足が軽くなった等の身体的改善感の他に、自分の体を触ってもらうことで温もりを感じる、雑談等ゆっくり話ができる、リハビリをするのが生きる支えとなっている等、精神面に関するコメントが見られた。希望中止群では、触ると痛い、歩く練習をすると疲れる等であった。合併症発症群では、脳梗塞発症、消化管出血、呼吸急性増悪等で、急激に全身状態が変化した場合が多かった。<BR><BR>【考察】癌終末期理学療法の現状としては、全身状態が自然経過として次第に悪化していくにも関わらず、理学療法を継続している症例が多く見られた。その理由として、一時的でも身体的改善感が得られること、厳しい現実から少しでも逃避できる癒しの効果、精神的支え等が考えられた。以上より、当院での癌終末期理学療法の取り組みは患者・家族に対し、身体・精神的に良い効果を与えることができているのではないかと思われた。また途中中止になった症例から、患者の状態に応じて少数・頻回のより細かな理学療法内容の検討、また合併症の発症等から、一日一日のリスク管理を含めたチーム医療での情報共有等がより重要だと思われた。<BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR><BR>
著者
壬生 彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome:CRPS)に対する理学療法として,中枢神経系の機能異常に対する介入である鏡療法や段階的運動イメージプログラムなどが,疼痛の軽減および機能の改善に寄与することが認められており,推奨されている。しかし,効果が十分でない症例も報告されている。今回,鏡療法を実施したが,十分な効果が認められなかったCRPS症例に対して,運動療法を中心とした介入に変更することで日常生活動作(Activity of daily living:ADL)およびCRPS症状の改善を認めた経過を報告する。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>症例は30歳代の女性で,X-2年5月,自転車走行中にバイクと衝突し転倒した。直後より左上肢の痛みがあったが,明らかな骨折や神経損傷はなかった。複数の医療機関において加療を受けるも症状改善せず,X-2年2月にCRPSと診断され,X年6月に当院を紹介受診となった。主訴は左上肢痛と歩行困難であり,杖歩行にて来院した。左前腕より遠位および右下腿より遠位にNumerical Rating Scale(NRS)で6から9の痛みを訴え,著明な浮腫を認めた。アロディニアにより患部への接触は非常に困難であった。患肢,右肩関節,頸部の関節可動域制限があり,四肢体幹の運動は緩慢であった。また,The Bath CRPS Body Perception Disturbance Scale(BPDS)は37/57であり,患肢の身体知覚異常を認めた。疼痛生活障害尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS)は47/60であった。精神心理面はPain Catastrophizing Scale(PCS)が48/52,Pain Self-Efficacy Questionnaire(PSEQ)が4/60であった。初期評価より,患肢の疼痛軽減と機能改善を目的として鏡療法と触覚識別課題を開始した。1か月間の介入を行ったが,疼痛増強や不快感を訴え続けたため,これらの介入のみでは改善が期待できないと判断し,ADLの改善と活動量増加を目標に患部外の運動療法を中心とした介入へと変更した。具体的かつ段階的な目標設定と達成度のモニタリングを行い,基本的動作能力の改善と活動量増加を図った。来院時には,健肢および体幹の積極的な運動を行い,運動による機能の改善が目標とする動作の改善につながることを実感させるように心がけた。患肢に対しては,自宅で鏡療法を継続させ,患肢および鏡像肢の知覚の変化に合わせて課題を調整した。</p><p></p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>理学療法開始より9か月時点での評価では,独歩が可能となり,ADLと精神心理面の改善を認めた(PDAS:26,PCS:36,PSEQ:16)。NRSに著変はないものの,アロディニアの軽減,身体知覚の改善などCRPS症状の改善も認めた(BPDS:27)。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>本症例では,CRPSの理学療法として推奨されている鏡療法よりも基本的動作能力の改善と活動量増加を図った運動療法が奏功した。初期評価時に自己効力感が低い症例に対しては,鏡療法といった即時的な効果を実感することが困難である介入よりも,日常生活動作の改善に直接つなげる運動療法が有効かもしれない。</p>
著者
木元 稔 加藤 千鶴 近藤 堅仁 岡田 恭司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100204, 2013

【はじめに、目的】 脳性麻痺(cerebral palsy;以下、CP)児に対し、歩行速度、歩幅、歩行効率の改善を目的に種々の筋力トレーニングが行われているが、効果は乏しいとする報告が多い。 トレーニングでは動作様式や筋の活動様式からみた特異性の原則に従うことが重要であるとされている。しかしこれまでのCP児に対する筋力トレーニングは歩行能力全般の改善を目的としたものが多く、歩行速度、歩幅、歩行効率の改善に重点を置いたプログラムは少ない。以前我々は、CP児の歩行効率がケーデンスよりも歩幅と強く関連し、また、歩行速度、歩幅、歩行効率には、下肢筋力や足を前方へ大きく1歩踏み出す運動機能が影響することを報告した。よってCP児では、歩行の動作様式や筋の活動様式を考慮した筋力トレーニングや、特に歩幅の増大に着目したトレーニングにより、歩行速度、歩幅、歩行効率が改善する可能性が考えられる。 また、一般的にトレーニングは週2~3回行う必要があるが、頻回の通院は通学や社会参加への影響が大きい。そのため病院での頻回な理学療法よりは、定期的なモニタリングを行いつつ、家族指導を中心としたホームエクササイズプログラム(home exercise program;以下、HEP)が好まれる傾向にある。 以上から本研究では、CP児の歩幅の増大に重点を置いたHEPの有効性を以下のように検討した。【方法】 本研究はランダム化比較対照試験で行った。対象は当センターにおいて理学療法を受ける4〜19歳の痙性両麻痺型CP児のうち、Gross Motor Function Classification SystemレベルIまたはレベルⅡに分類される21名を対象とした。参加者を年齢(4〜12歳と13〜19歳)と、ボツリヌス治療の有無でマッチングした上で、HEP群10名と対照群11名へそれぞれ割り付けた。帰結測定 Loaded sit-to-stand(以下、STS)の1 repetition maximum(以下、1RM STS)、Loaded half knee rise(以下、HKR)の1RM(以下、1RM HKR)、最大1歩距離を測定した。また16 mの直線路を快適速度で歩行したときの時間と歩数を測定し、歩行速度、歩幅、ケーデンスを算出した。歩行効率の指標はTotal Heart Beat Index(以下、THBI)とし、1周20 mの歩行路を10分間歩行したときの歩行距離と心拍数を測定し、10分間歩行中の総計心拍数を歩行距離で除すことにより算出した。HEPと帰結測定時期 HEP群では通院による理学療法に加え、8週間週3回のHEPを行った。HEPは、Loaded STSまたはLoaded HKRを、1RM STSや1RM HKRの50%の負荷で反復可能回数を2セット、また、足を前方へ大きく1歩踏み出す最大1歩体操を、最大1歩距離の80%の距離で10回2セットを行った。HEP期間終了後8週間はHEPを行わず、通院による理学療法のみを実施した。対照群は全期間中、通院による理学療法のみを実施した。 帰結測定は両群とも、HEP前、HEP終了時、HEP休止8週後の計3回行った。統計的解析 各帰結測定においてHEP前のデータを共変量とする共分散分析により、HEP終了時とHEP休止8週後でHEP群と対照群の帰結測定結果を比較した。有意水準は0.05未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者とその保護者に対して研究の説明を行ない、書面で参加への同意を得た。【結果】 HEP終了時、HEP群では対照群と比較して最大1歩距離、歩行速度、歩幅が有意に高値であった。1RM STS、1RM HKR、ケーデンス、THBIは、HEP群と対照群との間に有意差が認められなかった。 HEP休止8週後では、歩幅がHEP群で対照群よりも有意に高値であった。最大1歩距離、歩行速度、歩行速度、1RM STS、1RM HKR、ケーデンス、THBIは、HEP群と対照群との間に有意差が認められなかった。【考察】 8週間のHEP終了時、最大1歩距離は対照群と比べHEP群で大きく、今回考案した最大1歩体操がホームエクササイズでも有効であることが示された。HEPによる最大1歩幅の増大が、歩行時の歩幅を大きくし、歩行速度を速くしたと考えられた。HEP群における歩幅の増大はHEP休止8週後でも見られ、最大1歩体操とLoaded STSまたはLoaded HKRで構成した歩幅の増大に着目したHEPの効果は、持続性もあることが示された。【理学療法学研究としての意義】 CP児の歩行速度や歩幅の改善を目的としたHEPの有効性を示した。
著者
橋本 雅史 上田 克彦 佐竹 勇人 留守 正仁 富樫 昌彦 森 拓也 市川 博之 川原 勲
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】変形性膝関節症は臨床で多くみられる疾患であるが,膝関節内反モーメントと下腿の回旋についての報告は少ない。横山らは,変形性膝関節症患者の立脚期での内反モーメントのファーストピークは健常人の1.5倍と報告している。またSasakiらは,内側変形性膝関節症に対して外側楔型足底板を使用することで,大腿骨頭から踵骨までの荷重線を変化させると報告している。さらにNakajimaらは,外側楔型足底挿板にアーチサポートを付加すると後足部の運動が保たれ,かつ膝関節内反モーメントを減少させ足底挿板の効果を高めると報告している。我々は変形性膝関節症の患者に,Nakajimaらの足底挿板を参考にした簡易インソールを挿入し,下腿内旋角度・膝関節内反モーメントが減少することを三次元動作解析装置にて確認した。膝内反モーメントは下腿回旋に影響されるが,健常人での下腿回旋角度は未だ報告されていない。今回健常者に対し,オイラー角を用いて正常歩行時の下腿回旋角度を明らかにすることを目的とした。【方法】本研究の対象は,下肢に整形外科的既往の無い健常男性9名(年齢28.6±5.97歳,身長173.4±5.43cm,体重66±7.12kg)とした。裸足での歩行を三次元動作解析装置と床反力計を用いて計測し,歩行速度は快適速度とした。三次元動作解析装置(アニマ社 ローカス3D MA3000)を用いて下腿のオイラー角を計測し,同時に床反力計(アニマ社MG100)にて床反力のモーメントを計測した。下腿のオイラー角は,踵接地0.01秒前を基準(0°)とし測定し,制動期終了時を立脚中期としデータを算出した。また,各個人の踵接地から立脚中期までの時間を100%表示に正規化した。オイラー角の平均と膝関節内反モーメントの平均をSpearmanの順位相関係数を用いて統計処理を行った。統計処理ソフトは,R2.8.1を使用し行った。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,阪奈中央病院倫理員会の承認を得た。また,対象者に対して研究の主旨と内容,得られたデータは研究以外で使用しないこと,及び個人情報漏洩に注意することについて十分に説明し,同意を得て研究を行った。【結果】踵接地から立脚中期にかけての最大外旋角度13.71°~0.56°と個人差があり平均4.71±2.6°であった。最大内旋角度は8.41°~-1.03°と個人差が見られ平均は2.03±2.27°であった。今回の計測では大きく分けて3パターン確認され,①下腿外旋-下腿内旋の(2 times of rotation)パターン(5例)②下腿内旋-下腿外旋-下腿内旋の(3 times of rotation)パターン(2例)③踵接地から立脚中期まで常に下腿外旋位である(1 time of rotation)パターン(2例)に分類できた。下腿回旋角度と膝関節内反モーメントはr<sup>2</sup>=0.584と中等度の相関関係にあることがわかった。3パターンのオイラー角の平均を,フリードマン検定より多重比較を行った結果はp<0.01と有意差が認められた。【考察】今回三次元動作解析装置を使用し,下腿と大腿を面として捉えオイラー角を計測することで,踵接地から立脚中期にかけての下腿回旋角度を計測することができた。堀本らは,健常人の70.6%が距骨下関節回外位で踵接地を行い,29.6%が距骨下関節回内位で踵接地すると述べている。今回の結果では9例中7例が踵接地後下腿外旋位に変位し,2例が踵接地後下腿内旋していることが確認できた。運動連鎖から考えると距骨下関節回外位での踵接地により下腿外旋し,距骨下関節回内位での踵接地により下腿内旋していると考えられ,堀本らと同様の結果となった。踵接地以降の下腿回旋角度は,足底圧中心軌跡が足部のどの位置を通過するかにより,下腿の回旋パターンが変化すると考えられる。今回の結果では,下腿回旋角度と膝関節内反モーメントとの相関がみられた。我々が先行して行った変形性膝関節症患者への簡易インソール挿入前後の比較では,挿入により下腿外旋が増加し健常人の下腿外旋-下腿内旋の(2 times of rotation)パターンに近い結果となった。また,内反モーメントの比較では,挿入により内反モーメントの減少がみられ疼痛の減少が確認できた。我々の先行研究と今回の結果より,下腿回旋角度をコントロールすることで,内反モーメントを制御できると考えられた。【理学療法学研究としての意義】今回の研究で歩行時の下腿回旋角度が測定することができ,3パターンに分類することができた。今後さらに研究を進め対象数を増加させることで,より明確なパターン分類が期待できると考える。
著者
米村 武男
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E1171, 2008

【目的】訪問理学療法では、在宅生活管理並びに心身の活動量の改善を目的に介入することもある。自主トレーニング(以下自主トレ)の指導はその一手段として用いられるが、定着が困難な場合が多い。今回、糖尿病(以下DM)患者に対し自主トレ指導方法に関する検討を行ったので報告する。<BR>【症例紹介】86歳 女性 疾患名:DM・廃用症候群 合併症:網膜症 末梢神経障害 現病歴:10年前にDMと診断。引きこもり傾向・廃用により転倒頻度が増える。<BR>【初期評価】<BR>▼身体面 TUGT:20秒 筋力:下肢体幹3/5 周計(大腿cm):34/34.2 Borg指数:16/20(20分程度の散歩後)▼DM Hba1c:8.3% BS:210mg/dl BMI:26▼歩行数:平均2000歩/日 LifeSpaceAssessment(以下LSA):74 「生活するのが疲れる」 <BR>【経過】<BR><B>第一期(6M):転倒頻度の減少と自主トレ未定着</B><BR>指導内容:下肢ストレッチや筋力トレーニング(主に大腿四頭筋を下腿の自重負荷・等尺性収縮にて20回/2setを訓練実施)の他、訓練内容同様及び30分/日散歩を自主トレ設定とし、口頭・紙面で指導した。結果:姿勢・ROM・TUGT・転倒頻度の改善を認めた。しかし自主トレが定着せず、訪問リハ終了による再度廃用の懸念が残り自主トレ定着が課題となった。またLSA・歩行数・Borg指数・筋力に変化を認めなかった。<BR><B>第二期(6M):行動分析学的指導による自主トレの定着</B><BR>指導内容:訓練頻度・内容は第一期と同様、自主トレ指導として行動分析学的指導を用いた。主な内容は自己効力感を高める為に▼目標行動の設定:TimeStudy法による実施時間の明確化▼セルフマネジメント行動の確立:DM管理や歩行数・自主トレ回数の自己記録評価▼他者強化:訪問時間中の自己記録評価のフィードバック を実施した。また自己効力感の評価としてSF36を指標にした。<BR>【結果】<BR>▼身体面 TUGT:15秒 筋力:下肢体幹5/5 周計:36.4/36.8 Borg指数11/20▼DM HbaIc6.3% BS130mg/dl▼生活面 歩行数:7000歩 BMI:18 LSA:110 SF36:身体75→100全身的健康40→62活力37.5→68.7社会生活75→100精神75→100「生きるのが楽しい」<BR>【考察】<BR>今回自主トレが定着できないために廃用予防が達成されなかった症例に対し行動分析学に基づく自主トレ指導を実施した結果、定着が可能になり心身の活動量が改善した。行動分析学は自己効力感を高めることを目的とする。指導実施後、自己効力感が向上したことで定着が可能になったと考える。自主トレ指導は丁寧なフォローが必要であり、定着に向けた指導方法として行動分析学を用いることは有用ではないかと考えた。
著者
武田 知樹 大嶋 崇 尾方 英二 川江 章利 大野 智之 平野 真子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100442, 2013

【はじめに、目的】 医療分野においても患者中心の医療を推進する流れがますます強まる中,患者満足度(Patient Satisfaction)に関する研究も散見されるようになった. 医療機関において提供されている各種サービスの中でも,理学療法士や作業療法士等が行うリハビリテーションに関連するサービス(以下,リハサービス)は,患者自身の主体的参加が不可欠な点や,患者のモチベーションがそのまま治療効果として反映されるなどの特徴があることから,リハ領域における患者満足度の特徴やその影響性を把握することは効果的なリハサービス実施に向けて重要な知見となる. そこで今回,リハビリテーションに関する患者満足度と患者の運動に対する動機づけとの関連性について検討した.【方法】 調査協力の得られた医療機関を受診している入院および外来患者の内,理学療法を含むリハビリテーションサービスを受療している患者88名(男性23名,女性65名,平均年齢73.8±9.0歳)を対象とした. なお,言語による意思疎通が困難な者または知的機能の低下が疑われる者は対象より除外した. 調査方法は,担当理学療法士によって調査協力の依頼およびアンケート用紙の配布を行い,患者は自室もしくは自宅にて記入後,専用の返送用封筒にて郵送してもらった.なお,その際の回収率は59%であった. 調査内容について,リハビリテーション部門の理学療法サービスに関する患者満足度(以下,リハ満足度)の評価については,田中らが作成した「欲求充足に基づく顧客満足測定尺度(Customer Satisfaction Scale based on Need Satisfaction;CSSNS)」,また,患者が利用した医療機関のサービス全般に対する満足度(以下,病院満足度)の評価は「サービス満足度評価(SERVQUAL)」をそれぞれ使用した. さらに,患者の運動に対する動機付けについては,大友らの先行研究をもとに「高齢者用運動動機尺度(以下,運動動機)」を用いた. また,顧客満足度に関連する要因として,年齢,性別等の基本的属性データも同時に調査した.【倫理的配慮、説明と同意】 調査実施にあたっては,対象者の十分な同意を得るために調査協力依頼書を作成し,研究の趣旨および内容に対し理解および同意が得られた者を対象とした.【結果】1)性別の比較 リハ満足度を示すCSSNS得点(平均値±SD)は,男性20.8±3.4点に対し女性20.6±3.4点で明らかな性差は認められなかった(Unpaired t-test, N.S.). 2)年齢別の比較 中年者(65歳未満)のCSSNS得点は19.7±3.3点,前期高齢者(65~74歳)21.3±3.4点,後期高齢者(75歳以上)20.6±3.4点で年齢別の有意差を認めなかった(Kruskal Wallis test, N.S.).3)リハ満足度別の運動動機の比較 CSSNS得点を低得点グループ(17点以下:低満足),中得点グループ(18~24点:中満足),高得点グループ(25点以上:高満足)の3群に分類した上で,それぞれのグループの運動動機を比較した. 結果,低得点グループの運動動機は35.2±6.1点に対して,中得点グループ39.3±5.1点,高得点グループ43.1±2.4点で,CSSNS得点が高いほど運動動機が高い傾向にあることが確認された(Kruskal Wallis test, p<0.01).4)患者満足度と運動に対する動機付けとの関連性 患者満足度と運動動機との関連性について,CSSNSと運動動機(r=0.48),SERVQUALと運動動機(r=0.42)ともに中等度の相関関係を認めた(無相関の検定 p<0.01). 【考察】 患者満足度に関する性差や年齢差を調査した先行研究では,女性または高齢者で満足度が高くなりやすいとした報告が散見される中,本研究では満足度の性差および年齢差は明確にすることができなかった. リハ満足度別に運動に対する動機付けの高さを比較してみたところ,リハ満足度が高い患者ほど,動機付け(アドヒアランス)が高い傾向にあった. また,それぞれの患者満足度と運動に対する動機付けとの関連性を検討したところ,リハ満足度(CSSNS)のみならず,病院満足度(SERVQUAL)においても有意な相関を示した.つまり,リハ部門のみならず病院全体での患者満足度を高めていく取り組みは,患者の運動に対する動機づけを高める上で有益であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 リハビリテーションに関する患者満足度が運動に対する動機づけに肯定的な影響を及ぼしていることが示唆された.理学療法士個々人の技能に加えて,リハビリテーション部門および病院全体の取り組みとして良質なサービスを提供することは,患者の運動動機を高めて疾病管理や介護予防を図るうえで有意義であるといえる.
著者
金子 義弘 加藤 宗規
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100178, 2013

【はじめに、目的】ハンドヘルドダイナモメーター(以下,HHD)は安価で簡便な筋力測定方法である一方,膝伸展筋力など高い筋力値を測定する場合においては,徒手による固定方法では検者間による測定誤差が生じる可能性がある.この欠点を補うため,徒手に代わり運動を固定する固定用ベルトを使用した計測方法が考案され,先行研究では同一日でのtest-retest再現性について,若年および高齢健常者,脳血管疾患患者において良好な結果であったことが報告されている.しかし,運動器疾患を有する患者における再現性については報告されていない.そこで,本研究では,大腿骨近位部骨折術後の入院患者における本法のtest-retest再現性を検討するとともに,膝伸展筋力値による病棟内杖歩行自立のカットオフ値について検討した.【方法】対象は,大腿骨近位部骨折にて当院入院中で重度な認知症状がなく,免荷指示やその他の影響する疾患を有さない76名(女性60名,男性16名)である.内訳は,平均年齢80歳(55-97歳),平均体重46.7±10.3kg,手術内容は全人工関節置換術1名,人工骨頭置換術41名,骨接合術34名,手術から計測までの平均日数は26.5±8.4日であった.骨折に至った転倒原因は不明だが,計測時の移動能力は病棟内杖歩行自立以上が31名,杖歩行監視以下が45名であった.大腿四頭筋筋力の測定は椅子座位でアニマ社製等尺性筋力測定器 μTas MF-01を使用した.測定にあたり,被検者は体幹をベッドと垂直にして座り,両側上肢は体側両脇に位置して手をベッド面につき体幹を支持した.そして,パッドを含めセンサーを面ファスナーで被検者の下腿遠位部前面で足関節内果上縁の高さに固定し,さらに固定用ベルトでセンサーおよび下腿をベッド脚に固定した.測定肢の膝窩に折りたたんだバスタオルを入れ,測定時に大腿が床面と水平になるようにしたとともに,膝関節が90°屈曲位になるようにベルトの長さを調節した.等尺性膝伸展筋力は,5秒間の最大努力中における最大値として,健側および患側について各3回実施した.そして得られた結果から,3回の測定における再現性について,級内相関係数[The intraclass correlation coefficient;以下,ICC]と対応のある因子の一元配置分散分析により検討した.また,3回の最大値を採用した膝伸展筋力体重比を算出し,Receiver Operatorating Characteristic curveを用いて膝伸展筋力体重比による病棟内杖歩行自立のカットオフ値を検討した.なお,危険率は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者や家族には,研究の目的と方法,およびデータの管理と使用について書面を用いた説明を行い,同意を得た.【結果】膝伸展筋力測定の結果,健側の平均値(±標準偏差)は,1回目12.6±7.6 kgf/kg,2回目13.6±7.8 kgf/kg,3回目13.6±7.4 kgf/kg,患側の平均値は1回目7.6±4.3 kgf/kg,2回目8.2±4.3 kgf/kg,3回目8.5±4.4 kgf/kgであり,一元配置分散分析では両側ともに主効果を認めなかった.3回の測定の再現性について,ICC(1,1)の値は,健側が0.944(95%信頼区間;0.920-0.962),患側がICC=0.953(95%信頼区間;0.932-0.968)であった.また,3回の最大値を採用した体重比の平均値は,健側0.30±0.14 kgf/kg,患側0.19±0.08 kgf/kg,両側の平均値は0.24±0.10 kgf/kgであった.体重比による病棟内杖歩行自立のカットオフ値について,健側0.25 kgf/kg(感度0.65,特異度0.80),患側0.17 kgf/kg(感度0.80,特異度0.73),健患平均0.20 kgf/kg(感度0.70,特異度0.79)であった.【考察】固定用ベルトを用いたHHDによる等尺性膝伸展筋力測定は,大腿骨近位部骨折受傷後の入院患者においても,先行研究に報告された若年および高齢健常者,脳血管疾患患者と同様にtest-retestの再現性が高いことが考えられた.また,病棟内杖歩行自立のカットオフ値として今回示された膝伸展筋力体重比は,臨床における病棟内杖歩行自立の検討に関する一指標となると考えられた.【理学療法学研究としての意義】固定用ベルトを用いたHHDによる筋力測定方法は,大腿骨近位部骨折術後患者においても有効であることが示唆された.
著者
中川 淳一郎 藤井 智
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.B-30_1-B-30_1, 2019

<p>【はじめに】</p><p>昨秋から臨床場面で提供されたトヨタ自動車のウェルウォーク(以下WW)は、長下肢装具型で膝関節を屈伸できる歩行練習ロボットである。主たる対象は脳卒中亜急性期片麻痺者だが、生活期を担う当センターでも歩容改善に向け活用を開始した。今回、脳卒中発症から9か月経過した短下肢装具歩行の一症例にWWを使用し、歩行能力が向上したので報告する。</p><p>【方法】</p><p>対象は、脳梗塞により左片麻痺、注意障害を呈した40歳代男性である。回復期病院を経て、232病日に当センターに入院した。下肢ブルンストロームステージはⅢで、末梢の筋緊張亢進が著明だった。歩行はT字杖と両側金属支柱付き短下肢装具を用いて3動作で見守りであった。歩容は非麻痺側への重心偏移と杖への荷重が著明で、かつ、麻痺側下肢の振り出しは骨盤の前後傾で行っていた。約1.5か月で病棟歩行は自立となったが、荷重方法の指示でかえって考え込む様子があり、歩行速度や歩行パターンに著変はなかった。そこで、278病日よりWWを開始し、1日40分(週5回)のPTのうちの20分、40日間で20回使用した。</p><p>結果はWWに記録されている実施情報、および期間の前後で測定した10 m歩行速度、6分間歩行距離などを用いた。</p><p>【結果】</p><p>WWの経過として、開始時は遊脚開始の荷重設定(以下、抜重値)を35%、遊脚期の振り出しアシストを3、立脚期の膝伸展のアシストを3、速度を0.9km/hに設定し、手すりを把持しながら、体幹前傾が軽減するよう徒手介助した。徐々に1.7km/hまで速度を上げると、荷重応答期(以下LR)で体幹前傾や膝関節の急速な伸展が見られたため、膝伸展アシストを4と増加し、遊脚開始のタイミングが合うよう抜重値を50%にしてPTは体幹の介助を行った。開始6回目には、非麻痺側立脚期に手すりを離せるようになり、さらにPTが麻痺側への体幹誘導をできるようになった。開始11回目には、徒手の誘導が少なくなり、フリーハンドでの歩行も取り入れることができた。同様の方法で20回目まで継続した。</p><p>WWを使用した結果、歩行パターンは2動作となり、10m歩行は、最速が22.8秒(23歩)から15.2秒(21歩)、6分間歩行距離は120.5mから197.8mとなった。</p><p>【考察】</p><p>本症例では、WWを使用することで、歩行中にロボットで下肢の振り出しの不足やLRでの不安定性をコントロールできた。さらに、手すりを離しながらPTが体幹を誘導することで、積極的に下肢への荷重を促進させることができ、2動作歩行の獲得につながったと考える。また、注意障害を考慮し、ロボットで歩行を担保することで、注意課題を限定して指導できたことも奏功したと考える。生活期の脳卒中片麻痺者であっても、歩容改善につながる一助にWWを活用できるのではないかと考え、症例経験を積み上げていきたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本報告にあたり、本人に口頭および文書にて説明し、同意を得た。</p>
著者
吉田 啓晃 木下 一雄 平野 和宏 中山 恭秀 角田 亘 安保 雅博 河合 良訓
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3040, 2009

【目的】<BR>人工股関節全置換術症例は、下衣更衣動作や靴下着脱動作の獲得に難渋することが多い.その際、股関節屈曲・外転・外旋の複合的な可動域の拡大が求められる.臨床経験上、このような動作時に大転子後面の痛みを訴える場合があるが、我々が渉猟しえた範囲では、疼痛因子を検証した報告は見当たらない.今回、股関節の局所解剖を行い、股関節後面とくに股関節深層外旋筋の構造を観察した.股関節屈曲・外転・外旋運動において、外旋筋の一つである大腿方形筋の伸張が制限因子となりうるという興味深い知見を得たので報告する.<BR>【対象と方法】<BR>東京慈恵会医科大学解剖学講座の解剖実習用献体2体4肢(78歳男性、84歳女性)を対象とした.ホルマリン固定した遺体の表皮及び結合組織、脈管系、表層筋を除去し、深層外旋筋と呼ばれる梨状筋、上・下双子筋、大腿方形筋、内・外閉鎖筋筋と関節包を剖出した後、大腿骨は骨幹部1/2で切断した.遺体は観察側を上にして側臥位に固定し、股関節を他動的に屈曲、外転、外旋させた時の外旋筋群の伸張の程度を観察した.尚、肉眼で観察する限りでは4関節ともに股関節の変形は認められなかった.<BR>【結果】<BR>股関節中間位(解剖学的肢位)からの外旋に伴い深層外旋筋群はすべて弛緩した.一方、屈曲に伴い梨状筋及び大腿方形筋が伸張され、外転に伴い梨状筋、上・下双子筋、内閉鎖筋は弛緩するが大腿方形筋、外閉鎖筋は伸張された.複合的な運動では、屈曲位からの外転では梨状筋や上・下双子筋、内閉鎖筋は弛緩するが、大腿方形筋は伸張され、さらに外旋が加わると大腿方形筋は最大限に伸張され、筋線維が切れる程であった.とくに大腿方形筋を上下部の二等分した場合の下部の線維で顕著であった.<BR>【考察】<BR>骨盤と大腿骨の相対的な位置関係と筋の走行により、股関節に関する筋の作用や筋による関節運動制御は多様に変化する.解剖学書での筋の作用より、解剖学的肢位からの屈曲は梨状筋・内閉鎖筋・大腿方形筋が、また外転は大腿方形筋と外閉鎖筋が関節運動を制御すると考えられる.その中で屈曲・外転ともに制御するのは大腿方形筋であり、屈曲と外転の複合的な運動では大腿方形筋が伸張されたという今回の結果を裏付ける.さらに屈曲・外転位からの外旋では、外旋筋とされる大腿方形筋が伸張された.外転位からの外旋は、大転子後面を背側から尾側に向ける運動であり、大腿方形筋の停止部を遠ざけるため、とくに大腿方形筋の下部線維が伸張されたと考えられる.<BR>変形性股関節症による人工股関節全置換術症例では、手術の展開において大腿方形筋は温存されることが多いが、術中操作により過度のストレスがかかり、術後の関節運動時に大転子後面に痛みが生じることも予想される.今後は術中の様子も含めて、関節運動時の疼痛因子を検討する必要がある.