著者
杉尾 一
出版者
上智大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

本研究では、ボーアによる認識論的量子解釈の立場から物理量概念を分析することで、物理量を実在の要素とみなすのではなく、物理的対象を分節し、理解するための認識の枠組みという認識論的解釈を提示した。そして、近年、論争となっている弱測定による弱値の物理的解釈を認識論的に行い、参照枠としての量子系に依存する物理量とみなす解釈を提示した。言い換えるなら、物理量とその値は、観測者が設定した参照枠としての物理系に依存しており、属性というよりも、私たちが参照枠を通して入手可能な情報と考えることができることを示した。
著者
多々納 詩織
出版者
島根県立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年の慢性腎臓病患者増加の背景の一つに、食事からのリン摂取の増加がある。しかしながら、妊娠期や成長期といったライフステージにおけるリン摂取の増加が、将来の慢性腎臓病発症に及ぼす影響は不明な点が多い。さらに、妊娠期における母親の栄養状態は新生児の代謝機構に影響を与えることが知られ、妊娠期の母体のリン摂取状態が将来の慢性腎臓病の発症や進展に寄与している可能性がある。そこで本研究では、胎児期から将来の慢性腎臓病発症を予防する新しい栄養管理法の確立を目指す。
著者
木村 智哉
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

調査対象となるアニメーション専門誌のうち、徳間書店の『アニメージュ』誌については、個人蔵資料である81年分までを、編集スタッフからの示唆もあり、新たに入手した『BEST OF アニメージュ 20TH』(1998年)の記事総覧をもとに精読した。東映動画の韓国企業への発注開始に関する記事をはじめ、多くのスタジオ史にまつわり資料を確認することができた。以降の号については、演劇博物館図書室所蔵資料を用いる予定であったが、同館所蔵分が利用者の少なさのため別置作業に入ってしまったことで、今年度は閲覧することができなかった。また、同じく個人蔵資料である、すばる書房およびブロンズ社の『月刊アニメーション』誌については、精読に加えて一部記事の一覧化に着手した。角川書店の『Newtype』誌については演劇博物館所蔵分を閲覧した。ほか、近代映画社『ジ・アニメ』、秋田書店『マイアニメ』、みのり書房『月刊OUT』、ラポート『アニメック』、ファントーシュ編集室の『ファントーシュ』の5誌について、古書市場を通して入手。研究補助者の協力を得て、精読と該当記事の一覧化を行った。『ジ・アニメ』誌は、1980年の創刊4号以降、85年11月号までチェックを行っている。ただし欠号が多いため、今後それを補う必要がある。『マイアニメ』誌は81年の創刊から84年までの数号に留まったが、各種スタッフインタビュー欄の存在を確認できている。『月刊OUT』誌は78年の創刊から84年分までのほぼすべての号の一覧化を行った。『アニメック』誌は、79年の創刊7号以降、87年の休刊まで、ほぼ全ての号の一覧化を果たした。また、『ファントーシュ』誌はすべての号を一覧化した。また、神戸映画資料館や京都国際マンガミュージアムで所蔵資料調査と関係者聞き取りを行ったほか、一部の成果に関して執筆した論文の英訳を行い、現在審査中である。
著者
鈴木 啓太
出版者
金沢大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2021-08-30

慢性疼痛の発症とビタミンDの関連については、一貫した結果が得られていないのが現状である。その要因として、ビタミンD受容体遺伝子の一塩基多型によって、生体内におけるビタミンDの作用発現が変化することが考えられる。本研究では、慢性疼痛の発症と生体内のビタミンD濃度の関連を、ビタミンD受容体遺伝子の多型別に検討する。それにより、ビタミンDを用いた慢性疼痛のテーラーメイド型アプローチの発展に寄与する。
著者
松尾 梨沙
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2021-08-30

フリデリク・ショパン(1810-49)の創作において、彼が実際に使用していた楽器(ピリオド楽器)の変遷が、その作曲にどう影響し得たかを検証する。とりわけ「強弱設定」に軸を置きつつ、彼の作品における重音連打書法と、彼の愛奏した楽器(特にプレイエル製)の年代や楽器毎のメカニズムとの関係がもたらす効果について考察する。1年目はテレワーク中心でも可能な調査(オンライン資料閲覧、19世紀の楽器構造に関する国内外の書籍の収集・読解)から開始する。2年目はフランスを拠点とした海外での楽器博物館調査を開始する。さらに分析対象をグランドピアノからピアニーノ(縦型ピアノ)にまで広げる。
著者
佐渡友 陽一
出版者
帝京科学大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

日本の動物園経営は、意思決定と歳入構造に課題があるとされる。米国およびドイツ語圏の動物園経営についてヒアリング調査を実施した結果、両地域とも直営から非営利法人への切り替えが行われており、それに伴って意思決定と歳入構造の両面で改善が図られていた。この際、国外での保全研究活動に行政補助を使えないという制約が両地域に見られたことは、日本においてこの種の取り組みが進展しない一因を明らかにしたものと言える。今後の日本の動物園経営の改善のためには、本格的なファンドレイジングができる構造改革と、動物の幸せに敏感な人々を味方にする動物福祉の充実が重要と考えられる。
著者
梅木 佳代
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

本研究は、明治時代以前のエゾオオカミと人の関係性を再検討することを目的とする。かつて北海道に生息したエゾオオカミは明治時代に絶滅したが、絶滅以前の人との関係性については曖昧な議論が続いており、いまだ明確化されていない面が多くある。本研究では文献調査を通じて新たに検討・分析の対象となる事例を拡充したうえで議論に取り組む。北海道でエゾオオカミと遭遇した際の人々の思考や対応を分析し、当時のオオカミ観を把握することを目指すと同時に、北海道における人とエゾオオカミの関係性について、時期、地域、民族ごとの差違の有無を明らかにする。
著者
石本 宙
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

保型形式や保型表現は整数論において価値のある情報を多く含んでいる研究対象である。しかし、重さ半整数の保型形式やメタプレクティック群の保型表現は、重さ整数の保型形式や古典的な代数群の保型表現よりも研究の歴史が浅く、知られていないことが多い。本研究は、重さ半整数の保型形式の理論とメタプレクティック群の保型表現論のさらなる発展への貢献を目的として、重さ整数の保型形式や古典的な代数群の保型表現との関係やその応用について調べる。
著者
河野 保博
出版者
京都芸術大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

日本列島各地に定着した馬匹文化はその後の社会の基層を支えるインフラとなり、馬は人びとの生活に欠かせない生き物としての存在を確立した。古代の列島全域への馬匹文化の拡散は中央集権体制の構築のなかで進められた国家的な生産が大きな役割を果たした。その拠点となるのが列島各地に設置された「官牧」である。本研究は古代国家によって設置された官牧の存在を検証し、地方支配や馬匹生産の展開、古代の地域空間を考えるための基礎を明らかにしようとするものである。そのため、列島各地の官牧想定地を実地調査し、馬の移動や利用という観点から交通路や地域支配の拠点との関係性を検証しながらその立地環境を明らかにしていく。
著者
加治木 政伸
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

暑熱下運動時には、熱放散反応である皮膚血管拡張と発汗が生じ、過度の体温上昇を防いでいる。この熱放散反応についての理解を深めることは、熱中症予防策を確立する上で重要であるが、ヒトの熱放散反応の末梢メカニズムについては、不明な点が多く残されている。本研究では、生体への刺激を感受するセンサーの1つであるTRPV3チャネルに着目し、ヒトの熱放散反応におけるTRPV3チャネルの役割を解明する。
著者
川俣 太
出版者
琉球大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

本研究は最先端のゲノム解析により、膵癌で数多検出される癌の突然変異から治療対象となる遺伝子変異を同定し、その分子機構を解明する研究である。特に、門脈系浸潤を伴う切除可能境界(borderline resectable: BR) 膵癌に対する治療に関しては、ゲノム解析を取り入れることで、術前治療を含む最適な治療戦略を構築できる可能性がある。具体的には、膵癌の再発形式(局所・遠隔転移)の違いが原発巣の遺伝子変異により異なることが解明されれば、局所再発が高いと予想される症例では術前化学放射線療法(CRT)を、遠隔転移の可能性が高い症例では化学療法の期間を長くすることで膵癌の長期予後を改善できる可能性がある。
著者
キタ 幸子 上別府 圭子
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

周産期のIPVと産後の虐待的育児・育児困難感との関連及びその心理要因を明らかにすること目的に、平成28年7月~平成29年9月に妊娠後期・産後1か月・産後3か月における縦断観察研究を行った。その結果、周産期のIPVは産後の虐待的育児・育児困難感と関連し、更にその関連への心理要因として産後うつ病及びボンディング障害が明らかになった。本結果から、産後早期の児童虐待防止に向けて、妊娠中のIPV早期発見と軽減に向けた介入の必要性が示唆された。更に、IPV被害妊婦に対しては産後の児童虐待・育児困難感予防に向けて、産後うつ病及びボンディング障害の早期発見及び発症・重症化予防の取り組みの重要性が示唆された。
著者
石畑 匡基
出版者
大手前大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

豊臣政権の研究の進展の背景には、豊臣秀吉など当該期の主要な大名の発給文書の収集とその分析による居所や動向の解明があげられる。その一方で、政権の実務を担当した奉行らの動向は未だに不明な部分が多いといえよう。彼らは政権運営の実務担当者だけでなく、大名として自身の知行地を保有し、その支配を担っていた。ところが、領国支配に関しては、これまであまり注目されてこなかった。よって、いわゆる「五奉行」を務めた石田三成・前田玄以・増田長盛・浅野長政・長束正家に加え、大谷吉継・寺沢広高らを検討対象として、彼らの発給文書を収集するとともに、領国支配の特徴を分析し、豊臣奉行に関する基礎的な研究を進展させる。
著者
正田 若菜
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

カリウム(K)の排泄は、腎臓の遠位尿細管に存在するNa-Cl共輸送体(NCC)で調節されている。多量のKを摂取した時のKの排泄制御にはカルシニューリン(CaN)が関与しており、高Kが細胞内のカルシウム(Ca)を増加させ、活性化したCaNがNCCを脱リン酸化する機序が考えられている。しかしながら、高K負荷後どのように細胞内のCaが増加するのか、詳細な機序は不明である。本研究は、高K時にCaの流入経路となり得るNa/Ca交換輸送体(NCX)に着目し、NCX阻害剤や遺伝子改変マウスを用い、急性高K血症時のK排泄制御の詳細な分子機構を解明する。
著者
小杉 亮子
出版者
埼玉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

本研究は、高等教育政策や都市計画、産業振興政策が複合的に重なった領域としての大学立地施策に着目し、1945年から1970年代までの日本における学生運動の盛衰のメカニズムを明らかにする。具体的には、1960年代後半における学生運動の中心地と言えた神田・御茶ノ水地区(東京)を取り上げ、文献調査・聞き取り調査・地理情報システムを用いた分析を組み合わせ、大学立地施策によって同地域に大学が集中し、学生街が形成され、学生街での生活をとおして学生たちが政治化していった過程、ならびに大学立地施策の変更によって大学の郊外移転等が進み、同地域の学生街が解体し、そこを拠点とする学生運動が衰退した過程を明らかにする。