著者
及川 佐枝子
出版者
三重大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

食品に含有するナノ粒子の消化器系における炎症反応の誘導作用を解明するため、ヒトマクロファージ様細胞THP-1および大腸腺癌細胞Caco-2を用い、ナノ粒子曝露による生存率の変化、活性酸素種(ROS)および炎症性サイトカインの産生について解析を行った。二酸化チタンのナノ粒子曝露により、ROSおよび炎症性サイトカインIL-1βの産生が増加する傾向が認められた。また一次粒径が同程度でも、酸化亜鉛の方が二酸化チタンより細胞の生存率の低下およびROSの産生を誘導する事が認められ、粒子の種類により細胞毒性作用、炎症反応誘導の機構に違いがあることが示唆された。
著者
高野 麻子
出版者
明治薬科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

グローバル化が進行する現代において、指紋、静脈、虹彩、声紋、顔といった身体的特徴を利用して個人を識別する生体認証技術が世界的に普及している。そもそも19世紀末に植民地統治と国民国家形成ひいては帝国形成のもとで誕生し、使用されてきた生体認証技術が、今日ふたたび注目されている理由とは何か。そこで本研究では、近代から現代に至る身体管理の変容と特徴を、生体認証技術の歴史を軸に描き出した。
著者
高口 倖暉
出版者
千葉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

当研究室が所有する実験住宅を活用し、室内の総揮発性有機化合物(TVOC)の挙動と温湿度や気流、浮遊粒子を同時に多点でリアルタイム測定することで化学物質の分布に寄与する環境要因を解明する。VOCs各成分の分布を調査し、化学物質の室内挙動に起因する物理化学特性(分子量・蒸気圧・密度・分配係数など)を特定する。得られた実測データを基に、計算流体力学を用いて高精度の化学物質の室内分布の予測モデルを構築する。本研究の成果は室内空気中化学物質について基礎的な知見を得ると共に、子どもや化学物質に敏感な人を対象にした化学物質を制御し、滞留させない「シックハウス症候群・アレルギー疾患」の予防システムを提案する。
著者
白銀 勇太
出版者
九州大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2018-08-24

ウイルスが宿主の細胞に寄生し自身を再生産する際、宿主細胞の様々な因子(宿主因子)を利用することが知られている。複数のウイルスに共通する宿主因子を発見すれば、その宿主因子をターゲットとすることで、様々なウイルスに効果のある広域の抗ウイルス薬の開発につながると考えられる。本研究ではウイルス同士が共通の宿主因子を奪い合うことで「干渉」しあうメカニズムの解明を通して、複数種のウイルスに共通する宿主因子を発見し、広域抗ウイルス薬の開発につなげていくことを目的としている。
著者
小林 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

本研究は、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの哲学を自然哲学として提示し、その内実を明らかにすることを目的としている。前年度は、後期の著作である『千のプラトー』(1980)におけるイェルムスレウの言理学および地質学の議論の分析を中心に、ドゥルーズ=ガタリの自然哲学における非人間主義的特性を明らかにした。今年度は、前年度の研究結果を踏まえ、①ドゥルーズの自然哲学に対する哲学史的影響、および、②その自然哲学がいかに現代の人文科学に継承されたのかを明らかにすることで、とりわけ英米圏の人文科学に対するドゥルーズおよびガタリの自然哲学の理論的影響を特定する作業を進めた。
著者
辻 智子
出版者
東海大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究の主たる目的は、東日本大震災に直面した地域社会の変容・地域共同体の再編の経過をそこに暮らす青年の視点からとらえ、その過程における<青年個人/地域青年集団/地域を越えた青年集団のネットワーク>の足跡を記録するとともに、地域社会にとって、および現代日本の青年たちにとって地域青年集団が果たす役割とその意味を考察することにあった。本研究によって、被災地内外において青年たちが東日本大震災をどのように経験し、そのなかをどのように生きぬいてゆき、さらに今後をどのように展望していこうとしているかを具体的に聴くことができた。それを記録化し、青年たちと日本青年団協議会との共同の取り組みとして冊子『生きる~東日本大震災と地域青年の記録~(第1号/第2号)』(編集委員会編、2012年/2013年)をまとめた。そのことによって記録はより多くの人々と共有するものとなった。このような記録化の取り組みも含め青年団の全国的なネットワークは、被災地への支援活動や被災地の青年たちとの交流・学習を促し、そうした経験を通して一人ひとりの青年が自らの生活や地域を見つめなおしてゆくことを支えていることがわかった。また、各地域の青年集団には歴史的経緯があり、例えば岩手県陸前高田市には60年におよぶ地域青年団活動の蓄積があるが、そのことと現在の地域のネットワークは深くかかわり、災害復旧・復興過程における共同生活や異なる立場の住民どうしの意思疎通、自治を対話的・協力的に進めてゆくことと地域青年集団との浅からぬ関係が示唆された。
著者
岡本 崇
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

輻射輸送は,宇宙物理学において極めて基本的かつ重要な物理過程であり,例えばガスの冷却,大質量星や銀河中心超巨大ブラックホールからの輻射によるガスの光電離加熱や輻射圧による銀河風の駆動など,銀河形成においても無視できない役割を担っているはずである.しかしながら,空間3次元,角度2次元,波長1次元の計6次元を扱わねばならないという多次元性のために,現在までの研究ではその効果はほぼ無視されてきた.本研究では,輻射輸送計算の精度を落とさずに大幅に加速する新たなアルゴリズムを開発し,実際にその性能と精度を確認した.その結果既存のアルゴリズムでは実現不可能であった多数の光源を用いた輻射輸送計算を可能にした.この手法を用いることにより,銀河内の星による輻射性フィードバックの効果等を定量的に調べることが可能になり,銀河形成に対する理解が深まることが期待される.今後は流体計算,自己重力計算コードと統合し,上記の,大質量星や銀河中心超巨大ブラックホールからの輻射が銀河形成に果たす役割を明らかにしていく計画である.また,大規模な銀河形成シミュレーションを行い,銀河のハロー星の起源についても研究を行った.その結果,現在の標準的な宇宙モデルの元では,銀河系のハロー星を説明することが困難であることを明らかにした.
著者
平森 大規
出版者
法政大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

近年、LGBTを含む性的マイノリティに対する関心が高まっている。既存研究の多くは質的調査法を用いており、社会全体における性的マイノリティに対する意識、人口集団としての性的マイノリティの実態や、その生活状況に関する統計は限られている。数少ない量的調査法を用いた研究では、クィア理論など性のあり方を考える上で長く蓄積されてきた知見が軽視されている。本研究ではクィア理論的視点から性的マイノリティに対する社会意識、性的マイノリティ人口の複雑性・多面性、性的マイノリティと階層・不平等に関する計量社会学的分析を行う。本研究は、批判的人種理論を含む批判理論と量的方法論の接合を目指す国際的学術潮流の一部である。
著者
高木 駿
出版者
一橋大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

近代まで美の欠如と見なされてきた「醜」は、現代に入り美しくない芸術作品の登場とともに、作品を構成する一つの要素として積極的意義を担わされるようになった。現代美学は、醜に崇高さを惹起する効果があることを解明したが、これにより、すべての種類の醜さが明らかにされたわけでも、ましてや醜の体系的理解が得られたわけでもない。そこで、本研究は、「醜の美学」の体系化に向け、第一に、醜さを類型化し、第二に、別種の醜さの体系性を明らかにする。そのために、18世紀ドイツの哲学者I・カントの美学を用いる。というのも、カント美学では、不快の感情に基づいて、種々の醜さを分類し、それらの体系性を考察できるからである。
著者
高橋 大輔
出版者
茨城大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究の目的は、親権停止中の面会交流の可能性について検討することである。そのために、文献調査や学会などへの参加を通して、親権停止や面会交流について調査した。次に、ドイツ法における親の配慮の剥奪(Entzug der elterlichen Sorge)と交流権(Umgangsrecht)について、文献調査とインタビュー調査を行った。そして、ドイツ法との比較法的視点を踏まえて、親権停止中の面会交流について検討した。
著者
米原 善成
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2018-08-24

本研究では、アホウドリ類を対象として、ダイナミックソアリングと呼ばれる省エネルギーの滑空飛行法のメカニズムの解明を目標とした。ダイナミックソアリングとは、海上の風速勾配を利用して、羽ばたくことなく持続的に滑空飛行する飛行様式である。実際にダイナミックソアリングを行うアホウドリ類の飛行データを得るために、野外調査を実施した。2019年1月~4月にかけて、亜南極域クロゼ島で繁殖する世界最大の飛ぶ鳥であるワタリアホウドリに、3軸加速度、3軸角速度、GPS(位置と速度)、気圧を高解像度で記録できる装置を合計20台装着し、回収した。得られたデータから、状態空間モデルを用いて、アホウドリの3次元的な飛行経路や姿勢の変化を計算した。実データと比較するために、理論的なダイナミックソアリングによる飛行方法を数値計算によって求めた。滑空する鳥をグライダーに近似し、運動方程式に基づいた最適制御問題を解くことで、与えられた風速勾配のもとで理論的に最もエネルギー効率の良い飛び方を求めた。実際の海上では波や突風などによって時々刻々と風環境が変わると考えられる。風速勾配の形状を変化させると、それに応じて理論的に最適な飛行経路、姿勢の変化なども変わることがわかった。次年度は、アホウドリの3次元的な飛行経路や姿勢を飛行モデルと比較することで、エネルギー獲得メカニズムや異なる風環境に応じたアホウドリのダイナミックソアリングによる飛行戦略を研究する計画だったが、初年度で中断した。
著者
森田 智子
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

(1)斎藤優遺稿の史料的価値は、半拉城址の発掘調査の経緯と在満組織の認識の違いを解明できる点、斎藤の報告書の作成過程を復元できる点、出土遺物の移管経緯を解明できる点、斎藤のその他の著作物には記述されていない斎藤の素直な感情・思考を読み取ることができる点、であると明らかにできた。(2)渤海半拉城址出土遺物が、発掘から現在の所蔵機関に移管されるまでの経緯を明らかにすることができた。(3)台湾国立故宮博物院及び早稲田大学會津八一記念博物館に日本未公開の渤海出土遺物が所蔵されている事実を突き止め、それら新出遺物の出土地の特定と、いかなる経緯でこれらの遺物が同館に所蔵されるに至ったのかを明らかにできた。
著者
加藤 隆弘
出版者
九州大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

統合失調症の病態治療機序はいまだ解明されていないが、近年酸化ストレスの関与が示唆されている。脳内酸化ストレス機序にはミクログリア由来のフリーラジカルが重要な役割を果たしている。研究者は近年精神疾患におけるミクログリア仮説を提唱しており、本研究では、培養ミクログリア細胞を用いた、invitro系を樹立し、その機序の一端を探った。統合失調症治療薬である抗精神病薬、特に、ユニークな非定型抗精神病薬であるアリピプラゾールに、ミクログリア活性化抑制を介した抗酸化作用を見出した。さらに、神経一ミクログリア細胞との共培養システムを用いた実験によって、アリピプラゾールには抗酸化作用を介した神経保護作用があることを見出した。これらの成果は、国際誌等で発表している。Among various antipsychotics, only aripiprazole inhibited the' 02 generation from PMA-stimulated microglia. Aripiprazole proved to inhibit the' 02 generation through the cascade of protein kinase C(PKC) activation, intracellular Ca2+ regulation and NADPH oxidase activation via cytosolic p4iphox translocation to the plasma/phagosomal membranes. Formation of neuritic beading, induced by PMA-stimulated microglia, was attenuated by pretreatment of aripiprazole.
著者
大井 瞳
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

本研究は、情報通信技術(Information and Communication Technology: ICT)を用いた不眠症患者に対する遠隔心理療法の提供に関する基盤整備、およびICTを用いた遠隔心理療法の社会実装のための実際調査を目的とする。第一段階として、ICTを用いたメンタルヘルスサービスや認知行動療法に関する尺度の日本語版作成と妥当性・信頼性の検証を行う。第二段階として、高齢者に多い不眠症患者、医療従事者を対象に、作成した尺度を含む質問紙調査とインタビュー調査を行い、ICTを用いた遠隔心理療法を社会実装するうえでの問題を明らかにする。
著者
CUI Songkui
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

真核生物の細胞では、貯蔵脂肪を代謝して、成長に必要なエネルギーとなるスクロースを合成するため、オイルボディとペルオキシソームが協調的に機能すると考えられているが、その生物学的な意義は明らかでなかった。本研究では、オイルボディとペルオキシソーム間の膜付着を制御する遺伝子を発見し、脂肪分解とこれら細胞小器官どうしの相互作用について生物学的なリンクを初めて明らかにした。私たちの結果から、植物細胞は最終産物であるスクロースをシグナルとして、オイルボディとペルオキシソームの物理的相互作用を制御することにより脂肪分解ひいては脂肪酸の移動を微調整する新規のメカニズムを明らかにした。
著者
長谷川 裕峰 寺井 良宣 藤平 寛田
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

本研究課題の調査対象とした未翻刻史料群『阿弥陀房抄』は各研究機関に散在しており、その存在は知られていたが、本格的な研究は僅少であった。そこでまず、叡山文庫円覚蔵19冊、叡山文庫真如蔵13冊、叡山文庫天海蔵『義科抄』の内4冊、西教寺文庫正教蔵27冊、早稲田大学図書館教林文庫所蔵19冊を史料収集し、考察対象とした。また、その撰述者である阿弥陀房宗厳の来歴等に関して、同時代史料から検討を進めた結果、本史料群は当時の天台学における最高水準であった探題職が残した論文集としての性格を読み取ることに成功した(「『阿弥陀房抄』覚書」、『坂本廣博博士喜寿記念論文集 佛教の心と文化』、2019年)。