著者
原田 栄津子
出版者
宮崎大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

亜熱帯地方の広い範囲で自生し濃厚な旨味をもつ高級食材である亜熱帯性食用担子菌オオシロアリタケ属菌は人工栽培化が強く望まれている食用きのこの一つである。このきのこは、キノコシロアリと共に生活環を維持している共生菌であり、さらにきのこ中の生理活性化合物も注目されている薬食用きのこでもある。この独自に進化した生態系を持ち、且つ創薬の可能性も兼ね備えたオオシロアリタケ属菌研究の最初のステップとして、国内外に散在するオオシロアリタケを採取し、その子実体や菌薗を多角的分析する。得られた成果により世界初の人工栽培化を目指し、最終的にきのこと昆虫の絶対的相利共生の謎に迫る。
著者
尾崎 和海
出版者
東邦大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究計画では、原生代の大気組成(酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4))を制約し、それらを規定する物質循環についての理解を得るための基礎的研究を行う.具体的には、研究代表者が開発を行ってきた海洋物質循環モデル(CANOPS カノープス)を大気化学や陸域風化作用を考慮した地球システムモデルへと高度化し、地質記録を制約条件とした統計的手法を適用することで、原生代と呼ばれる地質時代(約25~6億年前)の地球大気組成の進化を物質循環に基づいた理論的見地から解明することを目指すものである.
著者
山口 真由
出版者
信州大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

親とは何か――この問いに対する法的に普遍的な答えは、いまだ与えられていない。例えば、わが国においては、両親の婚姻又は親子の血縁のいずれを重視するかによる緊張関係がある。わが国に先んじて、社会的変化に直面し、各州が競って親子法制を進化させた合衆国の親子法を題材として、普遍的な「親子の要件」を抽出することを、本研究の目的とする。その際に、婚姻と血縁に収斂すると思われている親子の要件について、それとは異なる可能性や、父と母の決定に関して異なる哲学に基づく別個の法理が形成されている可能性を検証する。
著者
東原 亜希子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

妊娠後期の妊婦および非妊婦女性を対象に、無煙棒灸実施前後にサーモグラフィーと血流計を用い下肢の温度変化を測定し、循環動態を客観的データとして収集し分析した。結果、灸を実施した経穴である至陰と大腿部の体温、血流が増加する傾向にあること、灸実施後の体温の経時的変化はおよそ20分までは上昇傾向であることが示された。実行可能性として実装においては、脱落者はおらずデータ全て解析可能であった。実用性において有害事象はなかった。受容性に関しては、「研究に参加してよかったか」の質問に対し、全員が参加してよかったと回答した。無煙棒灸による熱刺激量測定の実験プロトコールの実行可能性は確保された。
著者
山口 桃生 森下 智也
出版者
静岡県立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

肝線維化の有効な治療法は、いまだに見出されていない。肝星細胞(HSC)は、肝障害時に活性化し、コラーゲンを産生・分泌するようになる(活性型HSC)ため、肝線維化の責任細胞と考えられている。対照的に、静止型HSCはMMPを産生・分泌し、コラーゲンを分解することから、活性型HSCを静止型に脱活性化させることができれば、肝線維化も治療可能であると考えられる。本研究において、カフェインが、一度活性化した活性型HSCを静止型に脱活性化させること、その作用の一部にアデノシン受容体阻害作用が関与することを明らかにした。本研究成果により、有効な肝線維化治療法の開発に繋がることが期待できる。
著者
片山 翔太
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

緑内障は本邦における中途失明原因第1位の眼疾患である。日本人の緑内障患者の約7割は正常眼圧緑内障であり、眼圧下降以外の有効な治療法の開発が望まれている。ATPはエネルギー代謝の中心的役割を果たす分子で、緑内障で障害される網膜神経節細胞では重要な働きをしている。眼圧非依存因子としての眼循環障害が緑内障病態の一つであることも証明されており、エネルギー代謝の異常によるATP量の減少が考えられる。本研究では、網膜神経節細胞特異的なPDHK遺伝子の破壊を行い、PDHK阻害剤投与による網膜神経節細胞の保護効果が網膜神経節細胞内のPDHK阻害によるものであるかを検証する。
著者
浦川 智和
出版者
生理学研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

我々の脳には絶え間なく曖昧な視覚情報が入力されている。この曖昧な情報を先行する非曖昧刺激情報を手がかりとして補完し安定した知覚を形成することは、脳内視覚情報処理に課せられた重要な課題である。しかしながら、この曖昧情報の補完メカニズムについての研究は少なく、とりわけこの脳内視覚情報処理の初期段階での動態については明確になっていない。視覚ミスマッチ反応振幅は刺激提示後150ミリ秒付近に後頭側頭領域において観察される脳反応で、先行刺激と入力されてくる刺激情報間の逸脱度の大きさがその反応振幅の大きさとして反映されている。したがって曖昧刺激情報知覚が先行する非曖昧刺激知覚になる場合(先行刺激により曖昧刺激情報が補完される場合)はそうでない場合に比べて曖昧刺激情報の先行刺激情報に対する逸脱度は小さくなると考えられる。このことから、曖昧刺激に対するミスマッチ反応振幅は、曖昧刺激が先行する非曖昧刺激により補完される場合はそうでない場合に比べて小さくなると予想した。このことを検討するために本課題では曖昧図形としてnecker cube図形、非曖昧図形としてcube図形を用い、刺激提示には視覚ミスマッチ反応を誘発させるオドボール課題を用いた。脳活動は、時間分解能にすぐれかつ空間的に限局した活動が計測可能な脳磁図で計測した。被験者は、necker cube提示後200ミリ秒後に提示されるcue刺激が提示された時にnecker cubeが左向きか右向きかを判断した。実験の結果、予想とは逆で曖昧刺激知覚が非曖昧刺激知覚になりやすい被験者ほど、曖昧刺激に対するミスマッチ反応は大きくなった。現在は得られた脳活動データについて多信号源解析法を用いることでより詳細に検討している。
著者
阿部 純一郎
出版者
椙山女学園大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究の成果は、以下の通りである。第1に、1930-40年代の日本の観光政策に関する行政文書、観光関連団体の機関誌を収集・分析し、ヒトラー政権下のドイツの観光事業(政策・法律・組織体制など)との比較検討を通して日本の観光事業体制の特質を明らかにした。第2に、占領期日本の国境管理政策、特にインバウンド観光に関する政策展開について、GHQ/SCAP文書、運輸省の行政文書、国会議事録、新聞・雑誌などを用いて整理した。第3に、日本人の海外渡航に関するGHQ/SCAPの政策と極東委員会(FarEasternCommission:FEC)の審議内容について資料収集を行ない、日本の国際社会復帰をめぐる米国、ソ連、アジア太平洋諸国間の対立点の詳細を明らかにした。これらの成果の一部は、日本社会学会や関東社会学会などで報告した後、学会誌で発表した。
著者
伏田 享平
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

過去に実施された開発プロセスの再利用による開発プロセス記述の支援を目指して研究を実施し,下記の成果を得た.(1)開発プロセスの品質を定量的に表す尺度として,作業の並列性,複雑性に着目したプロセスメトリクスを考案した.(2)(1)で考案したプロセスメトリクスを,実際の開発プロジェクトのデータを対象に抽出し,計測可能であることを確認した.(3)プロセスメトリクスとプログラムの複雑度メトリクスを利用して,実際のソフトウェア開発プロジェクトを対象に定量的なプロセスの品質評価を実施した.その結果,プロセスメトリクスを用いて作業が複雑となるプロセスを特定することが可能となった.
著者
横内 裕人 須田 牧子 池田 寿 藤田 励夫 山口 華代 荒木 和憲 一之瀬 智
出版者
京都府立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

東アジアにおける日本・朝鮮・中国の文化交流を考える基礎情報を得るため、長崎県対馬市に所在する渡来経巻を悉皆調査した。具体的には、豆酘・多久頭魂神社に所蔵される高麗再雕版大蔵経の詳細な目録を作成し、他の寺院等に所蔵される再雕版大蔵経との比較検討を通じて、本経巻の成立・伝来を考察した。その結果、本大蔵経は、おそらくは15世紀頃に印刷され、江戸時代までに対馬に伝来した経巻であり、李氏朝鮮と対馬との緊密な関係の中でもたらされた文化財であることが確認された。
著者
鈴木 絢子
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

予防接種政策の評価基準の1つとして費用対効果分析が広く利用されており、日本においても研究が行われているが、多くは感染症の罹患リスクと予防接種率との間に線形の関係を想定したモデルを用いる傾向がある。しかし、ワクチンには集団免疫等の間接的効果があり、感染リスクと接種率の関係は本質的に非線形であるため、伝播メカニズムを捉えた数理モデルを用いて間接的効果を加味した評価が求められる。本研究ではワクチンの間接的効果を考慮し、日本において理論的に最適な予防接種政策を確立することを目的とする。
著者
酒井 雅史
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、西日本諸方言の敬語運用の地理的バリエーションを明らかにしようとするものである。これまでの方言敬語に関する研究では、敬語形式の地理的分布と特徴的な運用が個別に指摘されてきているという問題があった。本研究では、この問題に対して、各地に赴いて収集した会話データを分析することで、敬語形式の体系とその運用の双方に関する記述を行い、敬語運用ということばの運用に関する分布を明らかにする。さらに、どのように方言が形成されるのかという課題に取り組む方言形成論の分野では昨今議論が活発になってきているが、敬語運用の地理的分布を明らかにすることによって当該分野に新たなモデルを提示する。
著者
山根 明子
出版者
岡山商科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究では、株式のキャッシュフローのタイミングを表す指標である株式デュレーションを用いることによって、日本の株式市場におけるバリュー・プレミアムの説明を試みた。分析の結果、バリュー株、グロース株の違いが株式デュレーションの長さの違いと対応していること、株式デュレーションに関するリスクファクターがHMLファクターと似た性質を持つこと、1996年以降の標本ではどちらのファクターも説明力を失うことが明らかにされた。
著者
城 憲秀
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

病原体やがんに対して中心的役割を果たす「T細胞」の産生臓器「胸腺」は、思春期以降に退縮する。このため、末梢T細胞は加齢の影響を受けやすく、増殖能低下・炎症性サイトカイン産生能の上昇など様々な機能的変容を来す。この現象は「T細胞老化」と呼ばれ、多くの加齢関連疾患の基礎をなすことが明らかになってきた。申請者らは加齢に伴いT細胞のミトコンドリア量と膜電位が低下することを見出した。本研究では、1)胸腺退縮に伴いT細胞のミトコンドリア障害を誘導する機構、および2)ミトコンドリア変化がT細胞老化の機能的特徴に果たす役割を解明し、3)T細胞老化を正常化する介入法を探索することを目的とする。
著者
横田 陽匡
出版者
日本大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

糖尿病網膜症(以下、網膜症)は糖尿病患者の増加と相まって、我が国の中途失明の主因になっています。網膜症を予防するためには血糖コントロールが重要であることは言うまでもありません。しかし血糖コントロールを良好に維持することは容易なことではなく、網膜症の予防に対してその効果にも限界があります。我々はレニンの前駆体であるプロレニンと網膜症の関連性を明らかにしました。そこでプロレニンを標的として網膜症に対するワクチンを作成することに成功しました。実際に糖尿病マウスに接種したところ、網膜神経機能が保護されインスリン感受性も改善していたことから、網膜症のみならず他の糖尿病合併症に対しても効果が期待されます。
著者
田島 弥生
出版者
岐阜大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

日本語母語話者の周辺認知の高さと、周辺情報から先に言語化するという日本語の言語習慣との関連性を検証するために、日本語、英語の母語話者を対象に、言語描写を求められているときといないときの2つの条件下で、静止画像に対する眼球運動を計測した。同時に、談話レベルに観察される情報構造の特徴を明らかにするために、静止画像に対する言語描写を録音し、データ分析を実施した。諸事情により、当初の計画通りに実験が進まず、残念ながら、未だ、データ採取、およびデータ分析の途中である。今年度中に研究を完了させる予定である。
著者
久井 貴世
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

本研究の目的は、歴史資料を用いた調査から、江戸時代の日本に生息していたツル類各種の生息実態のうち、特に渡りに関する生態を明らかにすることである。江戸時代の幕府・藩の公用記録、博物誌資料、地誌、紀行・旅行記などを対象としてツルに関する記録を収集し、ツルの渡来地・渡来時期を示す記録を用いて、GIS(地理情報システム)によって種別、月別の分布図を作成した。これにより、江戸時代におけるツルの分布と渡りを視覚的に把握することを可能とした。本研究では、ツルの種による渡来状況や移動傾向の違い、現在日本では繁殖しないマナヅルやナベヅルの繁殖、あるいは北海道外でのタンチョウの繁殖の可能性を明らかにした。
著者
細谷 将
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究は、魚類における種特異的な体サイズを決定するゲノム領域を特定することを目的とした。実験魚には、体の大きいトラフグと体の小さいクサフグの雑種第2世代を用いて両種の成長速度の差に影響する遺伝子領域をQTL連鎖解析により1領域に特定した。また、最も影響力の強い領域にあたるトラフグゲノム領域をクサフグに導入して、その影響力を評価するための家系を作出した。
著者
伊藤 寛祥
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

本研究ではソーシャルネットワークの変化を長期的に予測できる数理モデルの確立を目指す.基本的なアイデアとして,興味関心が類似する人の間には友人関係が生まれ,友人関係から興味関心が伝搬するという,人々の興味関心と人間関係の相互作用に着目し,これらを確率的な生成モデルとして捉えることでソーシャルネットワークを長期的に予測する手法を構築する.本研究の確立により,情報推薦によるSNSの使用感の向上や,ものごとに対する社会的な反応および市場規模を予測できるようになる.
著者
清水 啓介
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

北太平洋の5地点から軟体動物翼足類(Limacina helicina)を採集し、ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子の塩基配列を決定し、集団解析を行った結果、北大西洋の集団と遺伝的交流がほとんどないことを明らかにした。また、100年後に予想されるような大気二酸化炭素濃度の高い海水で10日間の飼育実験を行った結果、貝殻への大きな影響は見られなかったが、いくつかの貝殻形成関連遺伝子の発現が促進されていることが明らかとなった。