著者
浦田 あゆち
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

う蝕(むし歯)の原因細菌である Streptococcus mutans は,血液中に侵入し病原性を呈することがあることで知られている.本研究では,マウス腸炎モデルを用いて S. mutans による炎症性腸疾患の悪化のメカニズムを検討した.その結果, S. mutansを取り込んだ肝臓実質細胞は,IFN-γを産生しαAGPおよびアミロイドA1といったタンパクにより炎症反応を増幅させることで免疫機構の不均衡が生じ,腸炎の悪化につながる可能性が示唆された.またマウス腸炎の悪化が抗IFN-γ 中和抗体により緩和されることが示された.
著者
中嶋 聖雄
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

過去35年間(1979~2013年)に生産された中国映画についての生産データ――どのスタジオが単独あるいは共同で映画を製作したか――に関するデータベースを作成し、ネットワーク分析の方法を用いることによって、スタジオ共同製作のネットワーク構造の変化・不変化を明らかにすることをめざした。パイロット分析の結果、経済社会学的アプローチが予測するような、「繰り返し共同」のかたちをとった市場の「社会的構造化」――社会的権力(例えば、国有スタジオに対する政策上の優遇)や過去の取引の惰性的継続のような社会構造の存在――を示唆する結果が得られた。
著者
山中 めぐみ
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

体温調節中枢は視床下部の視索前野(POA)に存在し、生体内外の環境変化を末梢からの入力として受けている。それにより、POAからの出力が変化し、その環境変化に応じた体温調節反応が引き起こされる。POA内には、GABA作動性神経があり、体温調節制御に重要な役割を担っている。そこで本研究は、遺伝子改変技術を用い、マウスに光活性化タンパク質であるチャネルロドプシン2(ChR2)およびハロロドプシン(Halo)をGABA作動性神経特異的に発現させ、そして、その神経活動を光によって制御することにより、無麻酔・無拘束下において、GABA作動性神経による生理的な体温調節反応機構についての解析を行うことを目的とする。ChR2およびHaloはそれぞれ非選択的陽イオンチャネルおよびクロライドポンプを形成し、ChR2は青色光により活性化されて、イオンチャネルを開口、膜電位を脱分極させることで、神経細胞では閾値を超えると活動電位を発生させることが出来る。一方、Haloは黄色光で瞬時に反応し、細胞外から細胞内ヘクロライドイオンを流入させ、膜電位を過分極させることによって、活動電位発生を抑制する。今年度は、本マウスを作成し、抗Gad67抗体を用いた免疫染色によって、光活性化タンパク質がGABA作動性神経特異的に発現していることを確認した。さらに、このマウスから脳スライス標本を作製し、GABA作動性神経にパッチクランプを行った。HaloはGFPとの融合タンパク質として発現しているため、GFPの蛍光を指標としてGABA作動性神経を同定した。電流固定により膜電位を記録しながら、対物レンズから黄色光(580nm)を記録神経細胞に照射すると、瞬時に強い過分極が生じ活動電位発生を完全に抑制することに成功した。このことより、in vitroにおいて光活性化タンパク質が正しく機能していることが確認できた。
著者
桑原 俊介
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

本研究は、確率論革命とも呼ばれる17世紀中葉以降の「蓋然性」と「真実らしさ」概念の変容が、いかにして、バウムガルテンの美学の成立のための条件となったのかを明らかにすることを目的とするものである。その結果、近世においては「観客への効果」として主観的に規定されてきた両概念が、確率論革命を経て「真理の度合い」として量的に再規定されたこと、このことが、完全なる真理ではなく真実らしさを実現することしかできないとされる美学を「学問」として、さらには「方法論」として可能にしたひとつの重要な論理的契機となったことが明らかにされた。
著者
羅 〓
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012

膀胱癌に高頻度に生じる遺伝子変化として、第9、17染色体の欠失およびFGFR3遺伝子の点突然変異が挙げられる。本研究では膀胱癌患者尿から上記遺伝子変化の高感度な検出法を確立し、臨床的有用性を検討した。遺伝子変化はパイロシークエンス法を用いて定量した。膀胱癌組織116例を対象とした検討では、上記遺伝子変化は99症例に認めた。同症例尿では87例に遺伝子変化を認めた。一方、20症例の健常者尿にこれらの遺伝子変化を認めなかった。すなわち本定量系を用いることで感度75.0%、特異度100%の精度で尿からの膀胱癌診断が可能であった。尿細胞診では同症例尿での検出感度は44.0%であった。これらの結果より、本定量系は尿から膀胱癌を診断する優れたツールになり得ることが示唆された。
著者
藤田 尚志
出版者
九州産業大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

一年目は近現代フランスのさまざまな思想家の著作を読み、そこに現れる身体観を、愛・性・家族の諸問題を通じて解き明かすことに努めた。この準備作業を経て、二年目の秋に国際シンポジウム「結婚の脱構築-レヴィ=ストロース、ボーヴォワール、クロソウスキー、デリダ」を開催し、海外の研究者らとともに、20世紀フランス思想に現れる身体の諸問題を、「結婚」という具体的な例に即して思考することを試みた。
著者
小森 謙一郎
出版者
武蔵大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究では、フロイト・レヴィナス・デリダが共有している「ユダヤ的なもの」を彼らのテクストに則して考察し、その議論に内包される「母なるもの」への眼差しが、性的差異の観点からして伝統的な男性優位の考え方にはもはや収容されないということ、またその限りにおいて彼らの言説が従来想定されてきたのとは別のユダヤ性を提示しているということを明らかにした。
著者
岩佐 有華
出版者
新潟大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

面会に回数や時間などの制限がないICUにおける重症患者の家族のニーズを構造化することを目的とし,24時間面会可能なICUに入室した重症患者の家族を対象に半構造化面接を行い,質的記述的に分析を行った.その結果,【そばにいたい】【会いたいときに会いたい】【後悔したくない】【居心地の良い場の提供】【その場にいても良いという保障】【そばにいることを自分の意志で選択】【帰ることの自己決定】などのカテゴリーが抽出された
著者
加藤 隆宏
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は10世紀頃のインドで活躍したバースカラの主著『ブラフマスートラ・バースカラ註解』の第一篇の訳註研究である。本研究では、報告者自身の手による新しい校訂批判版に基づき、これまでいかなる言語にも翻訳されてこなかった本書の英語による訳註を作成した。また、詳細な訳註研究に基づいて、バースカラの学説を同世代の有名な思想家シャンカラの学説と比較し、正統派ヴェーダーンタ学説の解明を行った。また、期間中に行った2回のインド現地調査では、これまで存在が知られていなかった全く新しい写本を2本発見入手するなど、大きな成果をあげることができた。
著者
小口 理一
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究では、2次元クロロフィル蛍光装置を利用し、光阻害耐性に変異を持つ植物の探索を目的とした。薬剤処理で変異を誘発した個体とcontrolの野生型とを、2次元でのクロロフィル蛍光が測定可能なクロロフィル蛍光測定装置を用いて比較することで、光阻害の程度が有意に野生型と異なるものを探索した。これまでに約7000個体で、スクリーニングを行い、118個体の変異体候補が探索されてきた。この得られた変異体候補を用いて、詳細な形質評価を行う事で、どのような遺伝子が光阻害耐性に関わっているのかを明らかにし、光阻害および光防御のメカニズムをより詳細に明らかにして行く事ができると考える。
著者
前島 隆司
出版者
金沢大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

視床下部及びモノアミン・コリン作動性神経系により形成される睡眠・覚醒制御システムについて、個々の神経系を結ぶ入出力回路の作動機序と機能的役割の解明をめざし、錐体オプシンを用いた光遺伝学的手法を導入し実験を行なった。マウスをモデル動物とし、視床下部オレキシン神経及び縫線核セロトニン神経の神経活動を光遺伝学的に操作し、睡眠・覚醒状態の変化を観察する実験系の立ち上げを行なった。長波長型及び短波長型錐体オプシンをそれぞれ励起波長の重ならない蛍光タンパク質eGFP及びmCherryで標識し、Cre-loxP部位組み換え反応により発現されるようアデノ随伴ウイルスベクターにクローニングした。実験には細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現する遺伝子改変マウスを用い、オレキシン神経及びセロトニン神経への遺伝子導入のため、それぞれOrexin-Creマウスの視床下部外側野とSERT-Creマウスの背内側縫線核内にウイルスベクターを投与した。いずれの錐体オプシンもセロトニン神経特異的に発現し、最適波長の光照射により過分極応答を誘発させることをそれぞれ組織学及び電気生理学的手法により確認した。また視床下部においては一部非特異的発現が認められたが、オレキシン細胞においても錐体オプシンの活性化により過分極応答が誘導された。次に、脳波・筋電計測下の生体マウスにおいて、錐体オプシンを導入した神経核に対し光ファイバーを通して直接光照射を行ない、睡眠・覚醒状態の変化を観察する実験システムを構築した。予備的ながら光照射期間において睡眠・覚醒状態の変化を観察した。今後実験系の修正を適時行いつつ実験を重ね、厳密な対照実験との比較から慎重に結論を導出したい。錐体オプシンを用いた光遺伝学的手法は神経回路の機能的役割を解明するための一助となると期待される。
著者
河崎 衣美
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

屋外環境に曝される石造文化遺産に初期に付着する微生物のうち、初期対応の必要性が高いと考えられる地衣類について修復材料を適応した際の文化遺産建造物基材に対する定着挙動を調査した。基質強化が施された試験体への地衣類の付着は撥水処置のみ施された試験体と比較して著しく少ないことがわかり、基質強化処置の重要性が明らかとなった。基材の化学的劣化の要因となる地衣類の二次代謝産物の有無を分析する方法を構築した。
著者
川瀬 卓
出版者
弘前大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は不定語と助詞によって構成される副詞の歴史的研究である。本研究の主な成果は次の通りである。(1)副詞の歴史的研究における課題と可能性について明らかにした。(2)「どうも」「どうやら」「どうぞ」「どうか」の歴史を記述した。また、それらの歴史的変化を言語変化の一般的傾向と関連付けることも行った。(3)不定語と助詞によって構成される副詞の歴史から見えてくる日本語史的問題を指摘した。以上のことから、今後の副詞研究の方向性に加え、副詞を視点とした日本語史研究の方向性も示せたといえる。
著者
山岸 正和
出版者
富山高等専門学校
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

有機半導体を用いた有機電界効果トランジスタ(OFET)は,有機エレクトロニクス実用化のために重要な素子の一つである.このOFETでは,有機半導体と絶縁体界面の伝導チャンネルにおけるトラップなど外因的要因が有機半導体本来の優れた伝導性を阻害していることが報告されている.そのトラップを電荷移動によって予め埋めることのできる電荷移動型の絶縁体の構築を目的に新しい電子受容性分子の合成をおこなった.また,自己組織化単分子膜処理のための初期検討や新たな自己組織化単分子膜分子の合成など,絶縁体を変調することによって有機トランジスタの性能の向上を試みた.
著者
桑木野 幸司
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

初期近代に大流行を閲した知的方法論である記憶術が、単なる情報整理技術にとどまらず、同時代の視覚芸術や建築・庭園学においても様々なかたちで応用されていた点を、トスカーナ大公国を中心とした芸術史の展開を置くことで、具体例に即して示すことに成功した。具体的には、アゴスティーノ・デル・リッチョの理想庭園構想に記憶術が応用されていたこと、そしてコスマ・ロッセッリの提案する記憶ロクスに、ピサのカンポサントの図像が適用されていることを示した。
著者
仁平 京子
出版者
高崎商科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究では、日本の少子化と高齢化の同時進行を背景として、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯の消費者行動に対する社会ネットワークとしての家族のくちコミや集団的購買意思決定に着目し、日本型の高齢者マーケティングの理論構築を行うことを目的とする。そして、本研究では、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯において、インターネット上の非対面的くちコミよりも、家族や友人からの伝統的な対面的くちコミの対人的影響力の有用性を検証した。本研究では、家族のくちコミによる社会的効果に着目し、娘や息子、孫などの家族が高齢者(消費者)の購買代理人となるバンク・ショットモデル(購買者・消費者主体不一致型)の理論構築をした。
著者
長坂 康代
出版者
国立民族学博物館
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

ベトナムの首都ハノイで、同郷会の活動や母村の祭りに参加して、都市と村の相互扶助の関係を確認した。この数年、同郷会が運営する施設について、同郷会と母村の長老たちと意見の相違があったが、歩み寄りがみられた。同郷会の総会では、民衆による組織体制づくりに立ち会うことができた。また、ハノイの市場(いちば)での出稼ぎ労働者のコミュニティネットワークについて調査した。経済格差や地域格差を超えた、商業をめぐる相互扶助や、出稼ぎ労働者同士の都市生活の支え合い、ハノイの都市経済と宗教の緊密性が明らかになりつつある。
著者
小林 進太郎
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

オートファジーは細胞内タンパク質分解系の一つで、変性タンパク質の排除や感染微生物の排除等、様々な役割を持つ。ウエストナイル脳脊髄炎発症の原因の一つであることが予想されるウエストナイルウイルス感染によるオートファジーの抑制は、ウエストナイルウイルスの非構造タンパク質であるNS2B/3によって惹起されることが示唆された。また、オートファジーはウエストナイルウイルスのウイルスゲノム複製及び遺伝子発現過程を抑制し、ウイルス増殖を顕著に抑制することが明らかになった。
著者
古田 潤
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

65nmのFD-SOIプロセスを用いて設計した非冗長フリップフロップの放射線起因のエラーの測定を中性子を照射する加速試験により行った。提案回路であるSLCCFFは通常のFFよりも耐性が高く、特に0.4Vと低い動作電圧では約30倍のソフトエラー耐性を持つことを確認した。この値は従来の放射線耐性回路であるstacked FFと等しい値である。SLCCFFは動作速度の点で従来回路よりも優れている。
著者
向井 理恵
出版者
徳島大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

不活動状態や無重力状態で引き起こる廃用性筋萎縮からの回復を助ける食品成分に関する研究を行った。実験動物に筋肉の萎縮を誘導し、そのあとにプレニルフラボノイドを混合した飼料を与えることで骨格筋の回復状況を評価した。プレニルフラボノイドを与えることで、骨格筋の萎縮からの回復の程度は改善した。作用メカニズムとしてフィトエストロゲン活性が寄与する可能性が示唆された。今回の成果は筋萎縮によって引き起こされるQOLの低下を改善する可能性がある。