著者
土野 瑞穂
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

三年目である平成29年度は、前年度に続いてフェミニスト国際関係論に関する文献を用いた理論研究と、紛争下における女性への性暴力の問題として日本が問われている問題である「慰安婦」問題に関するフィールドワークを韓国と台湾で実施した。理論研究に関しては、安全保障政策の意思決定や平和構築に女性の参加を促すことを目的とした「女性・平和・安全保障」に関する国連安全保障理事会決議1325号に着目し、とりわけ紛争下の戦時性暴力に関する文献収集を行った。そして「ジェンダー視点を取り入れた安全保障のグローバル・ガバナンス」である同決議にもとづく日本版国別行動計画(National Action Plan。2015年9月に外務省が発表)の策定過程において、紛争下における女性への性暴力として「慰安婦」がどのように論じられ、結果として行動計画から抜け落ちたかについて、外務省と市民社会との会合の議事録を主な分析資料として用いながら考察したものを論文として発表した。フィールドワークでは韓国と台湾において「慰安婦」問題と上述の国連安全保障理事会決議1325号に関する文献調査を行った。本年度中に調査結果の考察が終わらなかったため、次年度の課題にしたい。
著者
山水 康平
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1.ヒトiPS細胞由来血管内皮細胞の誘導 これまで申請者らは、血管系列の分化発生過程を段階的にかつ単一細胞でも解析を可能とするマウスES細胞・マウスiPS細胞の新しい分化誘導法を確立した。また、この分化誘導系を用いて、セカンドメッセンジャーであるcAMPの分化発生過程における様々な役割を解明してきた。そこで我々は、これまでのマウスES細胞・マウスiPS細胞からの血管内皮細胞の誘導のノウハウを生かし、ヒトiPS細胞からの血管内皮細胞の誘導を試みた。様々な条件検討の結果、まず血管内皮細胞の前駆細胞を効率的に誘導することに成功した。血管内皮細胞の前駆細胞のマーカーであるVEGFⅡ型受容体(KDR)陽性の細胞を80%以上誘導できる系を構築した。このKDR陽性細胞をFACSまたはMACSで純化し、cAMPやVEGFといった血管内皮細胞を誘導する因子を処置することにより、100%に近い血管内皮細胞の誘導に成功した。2.ヒトiPS細胞由来ペリサイトの誘導 上記の血管内皮細胞の誘導法を応用し、ペリサイトの誘導を試みた。KDR陽性細胞を血清条件(血管内皮誘導因子なし)で培養することによりペリサイトを約100%誘導することに成功した。3.ヒトiPS細胞由来神経細胞の誘導 ヒトiPS細胞より神経細胞を効率的に誘導する分化誘導系の構築を試みた。笹井先生らが開発した神経細胞誘導を参考にしてヒトiPS細胞からの神経細胞誘導を行い、効率的な神経細胞の誘導に成功した。4.ヒトiPS細胞由来アストロサイトの誘導 ヒトiPS細胞よりアストロサイトを効率的に誘導する分化誘導系の構築を試みた。笹井先生らが開発した神経細胞誘導を参考にしてより長期培養およびPassageを繰り返すことでヒトiPS細胞からのアストロサイト誘導を行い、効率的なアストロサイトの誘導に成功した。
著者
田村 美由紀
出版者
人間総合科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,睡眠不足時の社会認知機能への影響について,機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて検討を行った.社会認知機能の1つであるミラーニューロンシステム(MNS)と共感が関連する,脳の機能領域に着目し,痛みを伴う行動認知や表情認知刺激を用いた実験を実施した.その結果,睡眠不足時には情動に重要な役割を持つ島皮質において,痛みや恐怖の表情といったネガティブな刺激に対して強く賦活する事が明らかとなった.
著者
高山 修
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度は、ヒト生殖細胞の操作トレーニング試料の開発、仮想治療データベース(DB)の構築ならびに顕微授精シュミレーターの開発に取り組み、それぞれ成果を得られた。ヒト生殖細胞の操作トレーニング用試料として、卵の代替物については、ブタ、マウス、ウサギ卵で検討したところ、ウサギ卵が直径や透明度、透明帯の厚さ、細胞膜の伸展性の点からヒト卵に近く、これらの特性を必要とする顕微授精のトレーニングに適していると考えられた。また、ガラスのピペット(毛細管)を用いた卵の培地間の移動や凍結操作などのトレーニングには、直径と透明度のみの特性でも十分トレーニングできることから、ヒト卵と同等の大きさで透明度も同等な細胞培養用の極小ビーズ(マイクロキャリアビーズ)が利用可能であることが分かった。ウシ精子は大きさと形状がヒト精子とほぼ類似しているものの、精子頭部が若干ヒト精子より大きいためヒト顕微授精用ピペット内には入らないことが判明した。このため、ウシ精子を使った顕微授精のトレーニングには、ヒト用より少し大きめのピペットを作成または購入する必要があると考えられる。射精直後に粘度が高いヒト精子を再現するため、ウシ凍結精子を鶏卵の卵白と混ぜたところ、再現度の高い擬似精液の作成に成功した。この粘度は、ヒト精液では時間経過とともに低下するが、作成した擬似精液もタンパク分解酵素であるブロメラインを添加することで、粘度の低下も再現可能であった。仮想治療DBについてはFileMaker Proを用いて、架空の患者情報(氏名、住所、生年月日、婚姻情報)と治療情報を作成し、それぞれを紐付けることで、基本的なデータベース構築の作成に成功した。また顕微授精シュミレーターはゲームエンジンであるUnityを利用してサンプル版を作成したところ、物理的な動きも再現可能であることが判明し、今後本ソフトを用いて開発することを決定した。
著者
堅田 香緒里
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

フェミニストのベーシック・インカム(基本所得)に対する評価は両義的である。そこで本研究では、ベーシック・インカムをめぐるフェミニズムの二つの立場―女の解放のための「解放料」と捉える立場/抑圧のための「口止め料」と捉える立場―の主張について整理した。両者を分かつ論点は多岐にわたるが、その主要な対立点は、ベーシック・インカムが性別役割分業に与える影響に関する見立てに求めることができる。そこで続いて、ベーシック・インカムが性別役割分業に与え得る影響について、これに類似した二つの所得保障政策―ケア提供者手当と参加所得―との対比を通して検討した。
著者
ミケェエヴ アレクサンダー
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アリ・ハチを含む膜翅目昆虫には単一の相補的性決定遺伝子座CSDが存在すると考えられている。ミツバチでは性決定カスケードの最上流に存在するCSDが特定されており、ヘテロ型なら雌、ヘミ・ホモ型なら雄になることが分かっている。 本研究では、ウメマツアリを用いて近親交配系を確立し、次世代に生じる二倍体の雄と雌を用いてQTL解析を行い、CSDの存在する領域を調べた。結果、2つの独立な染色体上にCSDの存在が示され、アリ類で初めて相補的性決定遺伝子座の複数化が生じている可能性が示唆された。CSDの複数化は近親交配で生じる不妊個体の出現頻度を従来の半分に抑える長所があり、他の種でも進化している可能性がある。
著者
古賀 崇
出版者
天理大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、「政府のオープンデータをいかに保存し、その長期的アクセスをいかに保障するか」という観点での制度・政策的課題、および米国連邦政府を中心とした課題解決の試みを明らかにした。研究成果の中で提示したポイントは、以下のような点である。(1)「オープン・ガバメント時代」のもとで政府情報は「メディアとしての多様化」を示しており、その全体像を把握していく必要がある。(2)オープンデータが有する「機械可読性」を、保存においても考慮する必要がある。(3)政府のオープンデータや、官・民によるその加工物の保存は、「ガバナンス」すなわち官・民が交わる統治状況を遡及的に検証することにつながり得る。
著者
古荘 真敬
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

初年度以来、我々は、"言語主体としての<私>もまた動物的生命との連続を欠いては生成しえない"という原始的事実の意味を明らかにし、そのことによって、"人間存在と動物存在との絶対的断絶"を語るハイデガー的思考の枠組みを流動化することを目指してきた。昨年度、日本現象学会編『現象学年報20』に発表した論文において、我々は、こうした問題意識のもと、後期ハイデガー哲学におけるラチオ(ratio=理由)概念の批判に学びつつ考察を展開し、いわゆる「理由の空間」の生成こそは、「ニヒリズム」と「Gestell」の結実を準備し、「戯れ」としての本来的「自然」の概念を切り捨てて、我々の「生」と「死」の意味を空洞化した存在史の展開点であったと推察するに至った。今年度、我々は、上記のラチオ概念の批判を承けつつ、1936年から38年に成立した『哲学への寄与論稿』におけるハイデガーのロゴス論の帰趨を検討することを試み、そこにおいて「存在者トシテノ存在者on he onを一者henとするギリシア的な解釈」(GA65,459)へと向けられた彼の批判が、畢竟、いわゆる「共同体」概念を脱構築することを狙うものとして了解しうることを見出した。ギリシア的に根源的なロゴス概念の基底を掘り崩しつつ、彼が狙っていたのは、別言すれば、「我々」という表象を繋ぎとめている「一ニシテ共通ノ世界」(ヘラクレイトス断片89)を、むしろ本質的に「各自的」で「固有ナモノidion」へと一旦散乱させ、その錯綜的多様体の力動性のうちに「存在」の要求を反復させることであったと解釈される。ハイデガー自身の意図を超えて、この洞察を拡張すれば、それはまた、人間的生(bios)と動物的生命(zoe)の差異が再流動化するさなかにおいて、我々の意味の秩序と自然の秩序との差異の根源が反復され、ある「底無しの没根拠Abgrund」としての「時間」の根源が闡明されることを意味している。『山口大学哲学研究』第13号に発表した拙論「時の過ぎ去り-人称的世界の時間的構造の探究のための準備的考察-」において、私は、この最後の時間論的観点を、狭義のハイデガー解釈の枠組みにはとらわれない仕方で、一般的に展開し、「時の過ぎ去りVergehen」の重層的経験のうちに、我々の「生」と「死」の意味あるいは無意味を、照らし出すことを試みた。
著者
斉藤 雅英
出版者
愛媛女子短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.PHA(後催眠健忘)暗示の潜在記憶への影響について検討することを目的として,催眠感受性検査中に提示された単語についてPHA暗示を与え,PHA解放前およびPHA解放後に単語完成課題をおこなわせた。PHA解放前のターゲット単語の単語完成率を比較すると,催眠感受性高群と低群との間で差は認められず,PHA暗示解放後のターゲット単語の単語完成率を比較しても,高群と低群との間に差は認められなかった。つまり,PHA暗示は,潜在記憶課題に影響しなかったと考えられる。この結果は,先行研究を支持する結果である。ただし,本実験の単語完成率をみると完成率は非常に低く,先行研究の未学習時の完成率と同レベルである。このことから,今回の実験結果は実験手続き上の問題によるプライミング効果の消失であるという解釈の可能性を否定できない。2.被暗示性の測度として状況的な欲求圧力による記憶の変容から被暗示性を測定することができるGSSを用い,被暗示性と催眠感受性との関連を検討することを目的とした。集団式催眠感受性検査(GTHS)とGSSの各得点の記述統計量および両者の相関関数を算出したところ,shiftのタイプII項目においてのみ催眠感受性との間に弱い正の相関が認められ,タイプIIの質問において反応が変遷する人ほど催眠感受性が高いという関連がみられた。しかしながら,GSSの他の得点は催眠感受性との関連は認められなかったことを鑑みれば,総じてGSSにおける被暗示性と催眠感受性は関連しないということが示されているという結論が得られた。3.基本的には記憶に依存している態度や性格について,催眠との関連を検討するためのツールを開発した。催眠が潜在記憶を外部から制御する手続であるととらえた場合,潜在的態度の変化を催眠の使用によりコントロールすることが可能と考えられる。このことから,Web版潜在連合システムにより,今後,催眠と催眠に対する潜在的態度との関連を検討することが可能となった。
著者
祐成 保志
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,まず,R.K.マートンを中心とするコロンビア大学応用社会調査研究所のグループが1940年代に実施した計画的コミュニティ研究の概要を明らかにした。そして,1960年代以降の英国で形成されたハウジングの社会学が,都市の希少資源の配分をめぐる政治と,日常生活の物質文化を構成するさまざまな仕事の実践という二つの焦点をもっていたことが分かった。本研究を通じて,ハウジングの社会学の展開を,社会心理学/政治経済学/エスノグラフィという方法の創出過程として把握することができた。それは,ハウジングが,既存の理論や調査手法の実験場から,固有の意義をもった対象として再発見されてゆく過程でもある。
著者
藤田 亜美
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

皮膚末梢から中枢へ至る痛覚情報伝達の修飾が行われる脊髄膠様質のニューロンにホールセル・パッチクランプ法を適用して、種々の植物由来物質がTRPチャネルを活性化することで痛覚情報伝達がどのように修飾されるのかをシナプスレベルで検討した。その結果、黒胡椒成分ピペリン、ミント成分(-)カルボン、ユーカリ成分1,4-シネオールがTRPV1チャネルを、月桂樹成分オイゲノール、生姜成分ジンゲロン、オレガノ成分カルバクロール、キャラウェイ成分(+)-カルボン、ユーカリ成分1,8-シネオールがTRPA1チャネルをそれぞれ活性化して、興奮性シナプス伝達を促進することが明らかとなった。
著者
玉置 幸雄
出版者
福岡歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、自己組織化マップ(SOM)を用い、単一のノルムに依存しない新しい矯正診断システムの構築を目的とした。方法として、矯正治療後の成人女性109名を対象に、側面セファログラムを資料とし、硬組織19個の計測点の座標値から入力データを作成し、4×4個の計算ユニットを持つSOMで反復学習を行った。1万回の学習後に各ユニットの情報を視覚化したところ、下顎の前後・垂直的位置、上下顎切歯の前後的位置に違いがみられ、特徴の異なる16パターンが視覚化された。これらの硬組織側貌のバーチャルパターンをもとに、初診時の分類を行えることが示唆された。
著者
浜野 志保
出版者
千葉工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、十九世紀後半から二十世紀初頭にかけて大量に撮影されたパラノーマル写真(心霊写真、念写など)の事例研究である。パラノーマル写真に関する一次資料をイギリスおよびドイツでの調査によって収集した後、視覚文化史および疑似科学史と照らし合わせ、網羅的かつ体系的なパラノーマル写真の発展史の構築を試みた。以上の成果については、『パラノーマル写真史(仮題)』として25年度内に青弓社より刊行予定である。
著者
安井 行雄
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

水田に生息する甲殻類ホウネンエビBranchinella kugenumaensis(Ishikawa)の生活史形質において,前年度までの研究で明らかにされた表現型多型(長期繁殖型と短期繁殖型)が生じる原因が,遺伝によるのか環境によるのかを実験的に明らかにするためには,大前提として供試個体を容易に入手する必要がある。そこで本研究ではまず、香川県木田郡三木町を流れる河川(吉田川、新川、鴨部川)の流域においてホウネンエビ長期繁殖型の発生が見られるかどうかを探索した。また表現型多型の生じる原因を明らかにするためには、これまで困難とされてきたコントロールされた環境条件下で個体を飼育することが必要である。そのため本研究では半野外条件および恒温室内での飼育技術の確立を試みた。野外の調査地においてホウネンエビの発生が確認できたのはM3地点(吉田川上流足田打)のみであった。M3での個体の成長は短期繁殖型のものと類似しており、河川上流部で長期繁殖型個体の発生を確認することはできなかった。しかし半野外環境下での飼育において、M1地点(吉田川上流朝倉)の土壌から長期繁殖型と思われる個体の発生が確認出来た。恒温室内での実験ではN20地点(琴電農学部前駅南西)の土壌を用いた。これは野外網室での半野外飼育の結果としてN20個体はM1やM3など山間部の個体と比べて環境順応能力が高いと考えられたからである。大型のプラスティックトレイ(924×610×200mm、容量79リットル)に水田土壌を入れ、水道水を加えて攪拌し、網室内に放置して自然の日射と温度変化に曝すだけで土壌中のホウネンエビ卵を孵化・成長・繁殖させることができた。またトレイの底に土壌を入れた状態であれば恒温室(27℃、16L8D)内で人工照明を当てた状態でもホウネンエビを飼育することができた。光条件(ライト1灯と2灯)と水質条件(ハイポネクス添加、乾燥酵母添加および無添加対照区)をコントロールした飼育実験で発生消長を調べたところ、ライトの照度と水質の違い、および雌雄の性差についていずれも体サイズにおける有意差を生じさせることができた。ライトは2灯が1灯よりも成体の体長を大幅に促し、また酵母添加区、ハイポネックス添加区、対照区の順でわずかずつ体長が大きかった。また雌は雄よりもわずかに大型であった。本実験を通して、水中に土壌を残すという半人工条件とはいえ、これまでは困難とされてきたホウネンエビを飼育することに成功した。この結果、今後季節的要因にとらわれることなくホウネンエビを周年累代飼育することが可能となった。またその際、ライトの照射および酵母・ハイポネックスの添加を行うことは成長を促進する上で有効である。
著者
後藤 淳
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島原発事故被災地における効率的な除染に資する事を目的に、指向性があるガンマ線自動車走行サーベイシステムを開発した。開発したシステムは、異なる6方向(自動車の進行方向の前後左右及び上下)に向けて設置した6台の鉛遮蔽体付検出器で構成され、それぞれの方向から入射するγ線の計数率を個別に測定できる。被災地での実測結果より、開発したシステムが、指向性があるガンマ線自動車走行サーベイシステムとして機能する事を示した。
著者
田中 悟志
出版者
生理学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

頭蓋の外に置いた電極から電気刺激を行う経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、安全にヒトの脳活動を制御する方法として、神経障害に伴う脳機能低下の回復への応用に期待が高まりつつある。本研究では、下肢運動機能に障害を持つ皮質下梗塞患者に対して、下肢筋力トレーニング中における損傷半球側の運動野へtDCSを実施し、下肢運動機能への促進効果を検討した。その結果、8名中7名の下肢筋力を促進することができた(Tanaka et al., 2011a)。また機能的磁気共鳴画像実験により、大脳皮質運動野へ直流刺激を与えると、刺激された大脳皮質に加えて皮質下の脳活動も上昇するという予備的な知見を得た。
著者
直江 学美
出版者
金沢星稜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

アドルフォ・サルコリの演奏活動の調査を2014年にフィリピン、2015年にルーマニアで行った。サルコリはフィリピンで1910年12月11日から1911年1月25日の間に6演目のオペラに出演し主役級の役を演じたこと、ルーマニアでの共演者はイタリアやアメリカで活躍した人物であることをみつけた。本研究では、サルコリは多くのオペラレパートリー、そして世界につながるネットワークを持って来日した事を明らかにした。
著者
大島 郁葉
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、スキーマ療法の概念である早期不適応的スキーマと発達障害(自閉症スペクトラム障害)の関連性を調べ、認知行動療法の効果を検討した。媒介分析を行った結果、早期不適応的スキーマが媒介すると成人の自閉症スペクトラム障害のメンタルヘルスが損なわれることがわかった。したがって、成人の自閉症スペクトラム障害には早期不適応的スキーマの介入がターゲットとなりうることが示唆された。
著者
中山 仁史
出版者
香川高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

現在,高齢化が進み医療現場はこれまで以上に,医療診断における精密検査などの必要性が高まってきている.これに伴い,精密検査を行うための機器がより多く用いられるようになってきた.その中の一つとして, MRI(Magnetic Resonance Imaging)が挙げられる. MRIは磁気共鳴現象を用いた分析装置で,画像撮影時には強磁場と100dBSPLを超える騒音が生じる.そのため,被撮像者はブザーを押してオペレータ室に異常を知らせるか,非磁性体によって構成されたMRI用の光マイクロフォンを用いた通信を行う.ところが,気導音である音声は雑音の影響を直接受けやすいため, MRI用の光マイクロフォンを用いたとしても明瞭な信号を得ることはできない.そこで,本研究では高騒音下でも明瞭な信号を抽出することができる骨伝導光マイクロフォンの開発を行う.本研究ではまず,骨伝導光マイクロフォンを用いた信号採取により,従来用いてきた加速度ピックアップよりも高い周波数成分を得ることが確認できた.そして,研究代表者らが提案する明瞭化アルゴリズムを用いて骨伝導光音のみで周波数特性の改善を実現し,高磁場・騒音下でもより明瞭度の高い音声抽出が可能なことを確認した.