著者
宮 信明 飯島 満
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

速記や点取り(覚書)、草双紙などの文字テクストを比較考察することで、正本芝居噺・素噺それぞれの特徴(話法や演出、様式など)を正確に把握した。また現在、正本芝居噺のほぼ唯一の継承者である林家正雀師による正本芝居噺映像記録会を、東京文化財研究所において開催。正本芝居噺と素噺を比較するための基礎資料を作成しえたことは、本研究の大きな成果である。記録会の一般への公開は、芸能を記録するという側面からも、成果を広く発信するという観点からも、非常に意義深い試みであったと言えよう。さらに、三遊亭円朝以降の正本芝居噺の系譜についてオーラル・ヒストリーを収集し、文字資料の空白を埋めた。
著者
横川 哲朗
出版者
福島県立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

呼気検査の心不全患者における有用性について検討した。非虚血性心不全患者102名を対象として、呼気中のアセトン濃度を測定した。その結果、呼気アセトン濃度が右心カテーテル検査における血行動態と関連していた。また、35名の心不全のある糖尿病患者と20名の心不全のない糖尿病患者の呼気アセトン濃度を比較したところ、糖尿病患者においても心不全で呼気アセトン濃度が上昇していることが分かった。さらに急性心不全においても、呼気アセトン濃度が治療後に低下することを示した。心不全に対する呼気低分子化合物の中でも、呼気アセトン濃度が有用な非侵襲的バイオマーカーとなる可能性が示唆された。
著者
井上 正純 竹内 裕也 松田 祐子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

食道扁平上皮癌切除例における癌組織中のIL-8とCXCR2の発現を検討したところ、IL-8/CXCR2共発現例で有意に術後無再発生存割合及び全生存割合が不良だったことからIL-8/CXCR2シグナルが食道扁平上皮癌細胞動態に関与していることが示唆された。食道扁平上皮癌細胞株を用いた実験ではin vitroにおいてIL-8/CXCR2シグナルを外因的・内因的に刺激すると細胞増殖は亢進し、外因的・内因的に抑制すると細胞増殖が抑制された。ヌードマウスを用いたin vivo実験でも同様の結果を得たことから、IL-8/CXCR2シグナル伝達が食道扁平上皮癌の細胞増殖に関与していることが示唆された。
著者
辻 尚子
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

[目的]我々はマウス敗血症性急性腎障害(AKI)の早期にミトコンドリアDNA(mtDNA)が大量に全身循環し、腎障害を惹起していることを明らかにしたが敗血症患者における全身循環mtDNAの動態や意義は明らかではない。今回我々は、血中mtDNAの存在部位の違いに着目し、エンドトキシン吸着療法(PMX-DHP)を必要とした敗血症患者の循環mtDNAをエクソソーム(Ex)分画と遊離(Free)分画に分けて定量検討した。[方法]2013年~2016年に当院集中治療室で敗血症性ショックと診断されPMX-DHPを施行した20名を対象に、治療直前の血漿中mtDNAを超遠心法にてFree分画とEx分画に分けRT-PCRを用いて定量した。[結果]敗血症性ショックの患者は健常者と比較しEx-mtDNAが優位に増加していた(1.4±4.9 vs 0.002±0.003 ×10^3copies/μl, p<0.05)。院内死亡例では生存例と比較し、Ex-mtDNAが優位に増加し(5.3±9.4 vs 0.1±0.3 ×10^3copies/μl, p<0.01)、Ex-mtDNA量は血中乳酸値と正の相関を示した。また、AKI合併例では非AKI合併例と比較し、Ex-mtDNA(2.0±5.9 vs 0.03±0.06 ×10^3copies/μl, p<0.05)および遊離mtDNA(8.7±2.8 vs 0.08±0.12 ×10^3copies/μl, p<0.05)が増加しており、KDIGO分類で重症度が高い程増加する傾向であった。[結論]敗血症性ショックでは血中Ex-mtDNAが増量しており、Ex-mtDNA量は敗血症の重症度やAKI合併、死亡と関連を認めた。各分画のmtDNAの腎特異的役割や意義に関しては今後さらなる検証が必要である。
著者
安藤 馨
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

規範的排除的法実証主義と記述的源泉準拠的包含的法実証主義を法体系の命令説モデルに基づき擁護し、更に権利概念のホーフェルド分析と法命令説を結合することによって、ある法的権利(すなわちそれらに相関的な法的責務)を定める法規範の帰結主義的道徳的正当化の条件を、法規範がそれらの名宛人に対して有する行為指導性の様態に応じて分類・同定した。
著者
苅部 甚一
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

H30年度は,放射性ストロンチウム(Sr)汚染地域を流れる請戸川の上流域の小河川において,環境試料(河川水,魚類,河川周辺の土壌等)の採集を行い,土壌,河川水,魚類(骨)に含まれる放射性Sr濃度の時間変化および移行プロセスについて検討した.その結果,H30年度に採取した土壌,河川水,魚類の骨の放射性Sr(Sr-90)濃度がH27,28年度の値とそれほど変わっていないことが明らかとなった.また,この小河川の下流域と源流部の湧水,土壌のSr-90濃度を調べたところ,H28年に採取した小河川下流部の河川水におけるSr-90濃度に比べて下流域の湧水が高く,源流域の湧水は低いという傾向を示した.同時に採取した土壌のSr-90は下流域が高く,源流域で低い結果となった.このことは,この小河川における福島第一原子力発電所事故由来の放射性Srの供給源の一つとして,この小河川下流域に広く分布するSr-90を高濃度に含む土壌が考えられ,それらの土壌から湧水を通じて原発事故由来の放射性Srが小河川に供給されている可能性を示している.以上の結果から,請戸川上流域の一部地域では,未だに土壌中に多くの原発事故由来の放射性Srが残存し,そこから湧水等を通じて河川へと放射性Srが移行していること,そして,最終的にその河川に生息する生物(魚類)への移行が続いていることが考えられる.河川への原発事故由来の放射性Sr供給源の一つと考えられる土壌のSr-90濃度の低下傾向が確認できていないため,今後もこの地域における放射性Sr濃度が高い状況が続く可能性が考えられ,放射性Srの今後の挙動を把握するためにも長期的な調査の継続が必要だろう.
著者
北山 峰生 藤原 学 竹村 忠洋 山岡 邦章
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

煉瓦の製作技術を反映する痕跡が、製品の外面にどのように現れるかを確認した。その視点にもとづき、明治時代から大正時代にかけての、煉瓦生産の技術的推移を検討した。その結果、一般に言われているような生産工程の機械化は、関西地方では一般的ではないことが明らかとなった。このことから、従来の研究で構築された大手企業の記録に基づく枠組みでは、産業の実態を捉えられていないことを指摘できる。
著者
瀬木 恵里
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、視床下部における新規抗うつシグナルの探索を目的としている。(1)ストレス中枢である室傍核で、抗うつ治療である電気けいれん刺激はコレシストキニン遺伝子の発現を抑制した。この抑制は抗ストレスに働くと予想される。(2)摂食制御中枢である腹内側核で、電気けいれん刺激は摂食抑制因子の発現を亢進した。実際に摂食抑制作用も認められ、その反応は腹内側核を介していた。本研究は抗うつ治療の代謝シグナルに対する新規調節機構を示した。
著者
Cui Songkui
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

寄生植物は他の高等植物に寄生し、栄養と水を奪う植物である。宿主植物に寄生するために、吸器という特殊な器官を形成する。しかし、吸器がどうやって宿主を認識するのかは未だに未解明である。本研究ではモデル寄生植物コシオガマを用いたエチレン突然変異体の同定および宿主-寄生植物相互作用におけるエチレンシグナル伝達の役割を解析した。寄生植物側のエチレンシグナル伝達は吸器形成過程において、吸器先端細胞の分裂や分化の調節により、宿主感染の有無を決定することを明らかにした。また、宿主植物側のエチレンは寄生に一部寄与することを明らかにした。これはエチレンによって寄生植物の有する宿主感受性をあげていると考えられる。
著者
茅原 崇徳
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,身体負担の総合評価関数の定式化について検討した.はじめに,身体部位ごとに任意の作業負荷をかけて負担感を計測する実験を行った.複数の近似モデルで負担感評価関数を作成し,ロジスティック関数を用いて負担感を高い精度で予測できることを確認した.さらに,上肢および全身の総合負担を予測する評価関数を定式化した.具体的には,すべての部位の負担が低い場合は平均値に影響され,一つ以上の負担感が高い場合には最大値に影響される関数として定式化した.提案した総合負担評価関数の有効性を実験により検証し,従来手法と比較して精度の高い評価指標であることを実証した.
著者
西田 亮介
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、情報技術が発展した今日の社会、すなわち情報社会において競合関係が複雑化した政治とジャーナリズムの研究を目的としたものであった。なかでも、新しいソーシャルメディアを中心にした政治の情報発信の現状と、政策的背景、歴史的背景、発展の経緯等を検討した。本研究の検討中に、昨今の、テキストベースではなく、画像や(短編)映像をコンテンツの中核にしたinstagram等の新しいソーシャルメディア(「非テキスト型ソーシャルメディア」)の行政、政治による利活用が始まった。本研究ではそれらの利用に対する定量的分析の先鞭をつけ、成果の一部を公開するに至った。
著者
浅野 孝
出版者
岩手医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

アルツハイマー病は原因不明の疾病で完治が不可能であるため、症状の進行を遅らせるための薬の開発が数多く行われており、複数のアルカロイドの有効性が報告されている。本研究では、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有するGalanthamineを含むヒガンバナ科植物に注目し、効果的なアルツハイマー病治療薬を創り出す基盤として、ヒガンバナアルカロイドの安定かつ効率の良い生産を無菌的に培養可能な植物にて確立することができた。
著者
竹原 健二
出版者
独立行政法人国立成育医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の主たる目的は、妊産婦とそのパートナーにおいて、妊娠期から産後にかけてメンタルヘルスが不調になる者の割合を把握することとした。本研究では、愛知県西尾市に妊娠届を提出した妊婦とそのパートナー262組から同意を得て、妊娠20週、産後数日、2週、1か月、2か月、3か月の計6回の調査を実施した。妊産婦のパートナーにおけるEPDS+(8点以上)の者の割合は、妊娠20週から産後3か月にかけて、9.1%、8.1%、3.4%、5.8%、8.5%、7.1%であった。本研究の結果から、妊産婦のパートナーであるわが国の男性も、妊娠期や産後には、メンタルヘルスの問題を抱えるリスクが高いことが示された。
著者
宮路 天平
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

コンパッショネート・ユース制度(CU制度)とは、重篤な疾患の患者や既承認の代替薬がない患者の救済を目的として、公的に未承認薬へのアクセスを可能にし、倫理的見地から一定のルールのもとに例外的に未承認薬の治療目的での使用を認める制度の一般的な総称である。本研究では、未承認薬へのアクセスを運用する上で、重要となる未承認薬の品質マネジメント体制や安全性の評価体制について、米国のCU制度下での医療用大麻(Medical Cannabis)の運用体制を事例研究として調査した。品質マネジメントの体制整備については、患者支援団体が率先し第三者認証制度を確立させ、標準化への取り組みを行っている状況であった。
著者
増田 曜章
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

小径線維ニューロパチー (SFN) は、糖尿病、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー (ATTR-FAP) など様々な末梢神経障害に関与しており、早期治療のためにも小径線維障害を早期から正確に検出することが重要である。本研究では、SFNの早期診断および病態評価に有用なバイオマーカーの探索を行った。ATTR-FAPでは早期より皮神経脱落が認められ、無症候の時期においても認められた。皮神経脱落は罹病期間や末梢神経障害のパラメーターと相関した。以上より、皮膚生検は、SFNの早期診断および病態評価法として有用であり、臨床試験のバイオマーカーとして応用できる可能性が示された。
著者
中妻 彩
出版者
徳島文理大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ビタミンA欠乏マウスの腸間膜リンパ節樹状細胞(MLN-DC)は、IL-13を高産生する炎症性T細胞を誘導することを見出した。ビタミンA欠乏マウスでは経口抗原に対する抗体産生がIL-13依存的に亢進していた。そこで、ビタミンA欠乏状態によって、MLN-DCに機能変化をもたらす腸管環境因子を探索したところ、近位結腸粘膜組織でTNF-αが高発現していることを見出した。以上の結果から、ビタミンAは腸管環境とDCの機能発現を制御し、腸管粘膜における免疫寛容の誘導に極めて重要であることが示唆された。
著者
坂上 和弘
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、近現代日本人およびアメリカ人集団の全身骨における左右差の変異幅や左右差の出現場所を調べることである。過去の左右差研究では極めて限られた資料および骨しか扱われていないため、全身骨における左右差を調べた本研究は極めて独創的である。資料としては1890年から1970年の間に死亡した年齢、性別既知の近現代日本人、近現代アメリカ人を資料に用いた。その内訳は日本人男性50個体、日本人女性43個体、アメリカ白人男性50個体、アメリカ白人女性50個体、アメリカ黒人男性50個体、アメリカ黒人女性50個体の計293個体である。年齢は鎖骨胸骨端癒合〜50歳まで、対象となる骨が完形で保存されており、病変が見られないものを資料として用いた。対象となる骨は、頭蓋骨、下顎骨、鎖骨、肩甲骨、上腕骨、橈骨、尺骨、第一中手骨、第三中手骨、寛骨、大腿骨、脛骨、腓骨、第一中足骨、第三中足骨であり、各骨の長さ、骨幹中央の径や太さ、両骨端の大きさを中心に112項目について左右の計測を行なった。結果としては、どの集団においても、頭蓋骨、鎖骨、肩甲骨、寛骨といった体幹部の骨は左が統計的に有意に大きい傾向にあり、特に鎖骨の長さは全集団で左が有意に長く、全体の約80%の個体で左が長かった。上肢骨はほとんどの変数で右の方が有意に大きく、全体の約70%以上の個体で右が大きい。また、下肢骨はほとんどの変数で有意な左右差は見られなかった。これらの結果は、「体幹部の発生では左右軸が決定された後、細胞の分化に左右の偏りが見られるのに対して、四肢の発生では右肢と左肢の偏りは見られない。こういったことから、体幹部と四肢部での左右差が異なる傾向を示すと予想される。」という予測を支持するものであり、体幹部の左右差は神経系や循環器系などの左右差に影響され、上肢の左右差は利き腕に影響され、下肢の左右差の無さは運動器としての必然性に影響されると考えられた。
著者
福島 真実
出版者
女子栄養大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

食品中の葉酸は、結合しているグルタミン酸が1つのモノグルタミン酸型と数個結合したポリグルタミン酸型があり、吸収過程が異なっているため、それぞれBioavailability(生体利用率)が異なる。葉酸供給源となる主な食品17品と通常の献立5種類中の両者を微生物法にて分別定量した。その数値を基に、健康な女子大学生および高齢者施設入居者の食事調査からモノとポリグルタミン酸型葉酸の摂取比率を求めたところ、平均してそれぞれ17%と83%であった。
著者
田中 健一郎
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

私は多くの疾患の原因が活性酸素による組織傷害であることに着目し、活性酸素を消去するストレスタンパク質、SODに注目した。私は、SODにリン脂質を結合させその組織親和性と血中安定性を向上させたDDS製剤・PC-SODを開発し、この薬が炎症性腸疾患、肺線維症、COPDの動物モデルで予防・治療効果を発揮することを見出した。
著者
長井 歩
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

非常に難解な将棋の必至問題を計算機で多数解いたことである。詰将棋を高速に解くアルゴリズムは近年著しく進歩したが、必至問題を高速に解くアルゴリズムは未開拓であった。本研究では、難解な必至問題を高速に解くアルゴリズムとしてdf-pn+を応用し実装した。実験の結果、難解な必至問題として有名な『来条克由必至名作集』全81問のうち79問を計算機で解くことに成功した。また多数の別解(余必至)を発見した。