著者
三ツ松 誠
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、国学者としての長野義言の資料の残存状況を調査し、今後の研究の可能性を開くとともに、井伊直弼と義言の国学思想とその政治上の立場との関わりを問題にした。既存の研究では、本居宣長流の歌詠みだった義言は、説教くさい儒教や道徳一般を嫌う故に、安政の大獄に際して容赦なく敵対者を弾圧することができたのだと説かれてきた。だがむしろ、本居宣長説を独自に拡張した神学に伴う善悪二元論的発想が、敵対者への仮借なき姿勢につながったのではないだろうか。
著者
藤井 雅留太
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では光学迷彩構造の1つであるカーペットクロークのトポロジー最適化を行い,複数の周波数において透明マント効果を出現させた.カーペットクロークは平坦面上の凸を無散乱化し,凸が無い場合と同じ平坦面による反射を実現することで.凸を不可視化することができる.形状表現方法としてはレベルセット法を用い,格子点上に配置したレベルセット関数を線形に補間し,レベルセット関数のゼロ等位面を誘電体構造の境界として有限要素モデルを作成した.複数の周波数において,散乱を数値化した評価関数の和を最小化する誘電体構造を設計した.得られた最適化構造の評価関数の周波数応答を計算し,複数の周波数で透明マント効果を確認できた.
著者
清水 節
出版者
金沢工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

オレゴン大学ナイトライブリーのスペシャルコレクションズに所蔵されている「ウッダード文書」の史料を調査した。この史料を用いて、従来、GHQの宗教政策史において基礎的な文献とされてきたウッダードの著作『The Allied Occupation of Japan 1945-1952 and Japanese Religions』(E. J. Brill 1972)を再検証した。これにより、本書の成立過を解明した。また、未掲載に終わった部分の解明と分析により、ウッダードの真意を理解する上での重要な手がかりを得ることができた。
著者
國木田 大
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、環日本海地域をとりまく文化集団の年代や食性変遷を土器付着物の炭素・窒素同位体分析、C/N比分析等を用いて解明するものである。研究課題は、(1)土器出現期の様相解明、(2)極東ロシア・北海道の文化集団の食性変異、(3)栽培植物の利用と海洋資源への特化の3つである。大部分の文化集団の土器付着物は、海洋生物や遡上性のサケ・マス類に由来することが分かった。本研究の成果により、先史文化の形成過程や極東ロシアと北海道の交渉関係をより具体的に議論することが可能になった。
著者
山崎 剛史
出版者
(財)山階鳥類研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

南部琉球(先島諸島)のハシブトガラスは、「島の規則』によく合致した地理的変異のパターンを示し、隣接する台湾に比べ、著しく体サイズが小型化している。本研究では、南部琉球の4つの島の集団を形態学・生態学・遺伝学的に調査し、祖先集団と仮定される台湾集団との比較を行った。南部琉球の島々は互いに非常に近接しているが、島間には大きな形態学的、生態学的、遺伝学的差異が見られた。これら4集団のうち、体サイズの小型化の程度が最も著しいのは、台湾の祖先集団と同様の生態的特徴を持っ集団であった。
著者
牧野 利明
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

漢方薬が引き起こす副作用のうち頻度が高いものに偽アルドステロン症がある。 本研究では、 偽アルドステロン症発症の個体差を説明するマーカーとして、甘草含有成分グリチルリチンの代謝物である 3MGA に着目し、 腎尿細管細胞内への移行性から偽アルドステロン症発症には本化合物が深く関わることを示唆する知見を得た。本研究から、 漢方薬を服用する際に血液または尿中 3MGA をモニタすることで、 副作用発症を予防できる可能性がある。
著者
楠田 哲士
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

食肉目のイヌ科,ネコ科,クマ科の野生動物の多くに「偽妊娠」という現象が存在すると推測されているが,この現象の生殖内分泌学的な側面や生態的な意義には不明な点が多い。本研究では,リカオンとシンリンオオカミにおいて,同施設内の複数雌の妊娠と偽妊娠が毎年同調し,社会生態に関係している可能性があること,ジャイアントパンダとホッキョクグマでは,糞中13,14-dihydro-15-keto-PGF2α代謝物を指標に,妊娠と偽妊娠を区別できる可能性があることなどが明らかになった。
著者
土屋 太祐
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

唐末福建の雪峰教団は雪峰系と玄沙系という二つの系統に分裂していった。その背景には思想的な原因があり、玄沙―法眼系の禅僧は個人を超越し、世界に充満する仏性の体得を目標とした。これは唐代禅の思想的営為の一つの結論といえる。また北宋代の禅僧である契嵩は、その著書『輔教編』で、当時の排仏論から仏教を護るため、仏教が社会秩序の維持に貢献しうることを主張した。その論理体系においては、社会秩序を維持する手段として「因果応報」の観念が重視された。また仏教の他教に対する優位性として実践性を重視した。これは無事禅批判の先駆けとなるものであった。
著者
林 敬人
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

虐待ストレスに基づく内分泌系変化がもたらす神経系並びに免疫系の変化について包括的に検討した。まず,心理的虐待モデルである拘束ストレスマウス及び小児虐待死剖検例の検討によって,虐待ストレスによって副腎内分泌系に変動がみられ,それらを解析することは小児虐待の法医病理学的診断及び虐待期間推定の指標となり得る可能性が示唆された。神経系については,有意な結果は得られなかった。免疫系については,ストレスによる胸腺の萎縮には免疫系の分子CCR5発現が関与していることが示唆され,小児虐待の法医病理学的証明の新規マーカーとなる可能性,さらには虐待による胸腺萎縮を予防する標的となる可能性が示唆された。
著者
友竹 浩之
出版者
飯田女子短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1 タンパク質含量の測定(ケルダール法)タンパク質含量はクロスズメバチ幼虫15g/100g、キイロスズメバチ幼虫23g/100g、トビケラ幼虫16g/100g、イナゴ21g/100g、蚕サナギ27g/100g、カミキリ虫幼虫lOg/lOOgで、肉類、魚介類に匹敵する含有量であった。2 アミノ酸分析1985 (FAO/WHO/UNU) (2-5歳)パタンによると、スズメバチ幼虫、トビケラ幼虫、蚕サナギのアミノ酸スコアはほぼ100であり、良質な動物性タンパク質であることを確認できた。一方、イナゴとカミキリ虫幼虫は含硫アミノ酸の含量が少なくスコアも低かった。3 生理活性物質の探索(1)抗酸化性試験 蚕サナギ、クロスズメバチ幼虫、イナゴのリン酸緩衝液抽出物に強いラジカル捕捉活性がみられた。(2)抗菌性試験 イナコ、トビケラ幼虫、蚕サナギのメタノ叫抽出物に黄色ブドウ球菌に対する増殖阻害作用がみられた。(3)α-グルコシダーゼ阻害作用 蚕サナギの熱水抽出物に強いα-グルコシダーゼ阻害作用がみられた。品種別に活性を比較した結果、「青白」、「世紀二一」の抽出物に強い活性がみられた(50%阻害濃度150μg/ml)。4食用昆虫(蚕サナギ)の安定供給の検討群馬県の製糸工場と情報交換を行った。製糸後に残るサナギは鯉の飼料として出荷している。以上のことより、食用昆虫の中には栄養学的に優れているものや、強い生理活性成分を含むものがあり、新しい食品素材として利用できる可能性が示唆された。特に、蚕サナギは良質タンパク質、α-リノレン酸を多く含み、a-グルコシダーセ阻害作用も有することから、生活習慣病予防型の素材として期待がもてる。
著者
矢澤 憲一
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日本を含む31カ国の上場企業12,384の監査報酬を比較分析し、国際的な視点から監査報酬の決定因子に関する理論的および実証的な知見を提供している。分析の結果、第一に、日本の総資産に占める監査報酬の比率(中央値)は31カ国中20位、米国、英国、オーストラリアの4分の1、フランス、ドイツの2分の1であることが観察された。第二に、証券監督が弱い、経営者報酬が低い、ビジネスリスクが小さい国ほど、監査報酬が低いことが観察された。これの結果は、日本企業の監査報酬の決定因子に関する重要な示唆を与えるものである。
著者
生駒 晃彦
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

健常被験者延べ30名に参加していただき、前年度の実験からわかった、かゆみ過敏を最も生じやすい波長、周波数の皮膚電気刺激を用いてかゆみ過敏を生じさせ、そこにヒスタミン、セロトニン、ブラディキニンを投与した際の反応を調べた。その結果、かゆみ過敏状態下においては、ヒスタミンにより通常よりも強いかゆみが生じた。セロトニン、ブラディキニンにもその傾向があったが有意差には到らなかった。このことは、3物質の全てによって有意にかゆみが強く生じたアトピー性皮膚炎のかゆみ過敏状態のほうが電気刺激によるかゆみ過敏よりも程度が強いことを示唆する。また、抗ヒスタミン薬内服によりヒスタミンのかゆみはかゆみ過敏状態下であろうとなかろうと完全に抑制できたが、セロトニン、ブラディキニンのかゆみは影響を受けなかった。これはアトピー性皮膚炎のかゆみ過敏状態と同じであった。また、ステロイド外用薬の塗布はいずれのかゆみにも影響を与えなかった。これは、アトピー性皮膚炎のかゆみ過敏と異なる点であり、電気刺激のかゆみ過敏が末梢の炎症と無関係に生じていることを示唆している。また、ヒスタミン、セロトニンで生じる軸索反射性紅斑の大きさには、かゆみ過敏状態下とそれ以前の状態とで有意差は見られなかった。これは電気刺激のかゆみ過敏が末梢神経の閾値低下よりもむしろ中枢性であることを示唆している。これらを総括すると、電気刺激誘発性のかゆみ過敏も炎症性メディエーターによるかゆみの程度を増強させるが、その程度はアトピー性皮膚炎の場合よりは弱く、その理由は、アトピー性皮膚炎のかゆみ過敏には炎症による末梢神経の閾値低下が含まれるのに対して、電気刺激のかゆみ過敏にそれが含まれないからであると考えられた。
著者
打越 正行
出版者
特定非営利活動法人社会理論・動態研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、沖縄の下層若者を対象とする追跡調査である。調査を始めた2007年、沖縄の暴走族・ヤンキーの若者の多くは、家族関係が不安定で、中学にほとんど通学しておらず、安定した仕事に就いていなかった。彼・彼女らがその後、誰と、どこで、どのようにつながり、そこでどのような経験を重ねたかのか、そして現在の仕事と生活について追跡調査することが、第1の課題である。続いて、そこで明らかになった沖縄の下層若者の仕事と生活の実態を分析するための概念や枠組みを構築することが、第2の課題である。予定していた参与観察、生活史調査は順調にすすみ、その成果は学会報告、論文、書籍として公開した。
著者
鈴木 卓弥
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

メタボリックシンドロームにおける、消化管バリア機能低下の要因を究明するため、動物モデルと培養細胞を用いて研究を実施した。メタボリックシンドロームモデルラットでは、小腸でタイトジャンクションタンパク質の発現低下に伴い、消化管バリア機能の低下が引き起こされた。これは、肥満のそのものではなく、食事由来の過剰な脂質とそれに伴う胆汁の分泌の増加によることが証明された。
著者
善教 将大 宋 財泫
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、維新の会に対する有権者の意識や行動を、実証的に明らかにすることである。維新はなぜ、大阪において多くの有権者に支持されているのか。この問いに対して本研究は、政党ラベルとしての「維新ラベル」を、維新がうまく機能させたことが重要であることを明らかにした。では、そのような現状であったにもかかわらず、なぜ特別区設置住民投票で大阪市民は、都構想を否決したのか。この問いに対する解答として本研究が提示したのは有権者の批判的志向性の強さであり、これが住民投票で賛成への投票を「踏み止まらせた」ことを、本研究では明らかにした。
著者
松谷 満
出版者
中京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、大都市部で圧倒的な支持を得るようなポピュリズム政治が台頭しているという状況に着目し、河村たかし名古屋市長、橋下徹大阪市長について有権者意識調査からその支持構造を実証的に明らかにした。両者の共通の支持要因は、公務員に対する不信感などであり、社会的属性や価値観は違いも大きいことがわかった。他に、名古屋の住民運動は無党派層が中心とはいえないこと、ポピュリズムの支持には地域要因が影響していることなどが明らかになった。
著者
高橋 仁大
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,筆者らが開発したテニスの電子スコアブックの機能としてのパフォーマンス評価プログラムを開発し,実際の指導場面での活用結果からその有効性について検討するものである.本研究の結果,performance profiling手法を用いたパフォーマンス評価は,試合のセット取得と関連があり,セットを取得したプレーヤーは相手プレーヤーよりも高い評価結果となることが明らかとなった.
著者
立石 直子
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

諸外国の立法においては、DV事案での離婚手続や子どもの処遇について、さまざまな配慮がなされている。それは、一方配偶者のDV加害が、他方配偶者に与える影響は大きく、また子どもへの被害・影響も少なくないとの認識からである。日本では、離婚後の共同親権制の導入や面接交渉が評価される傾向にあるが、諸外国にならい、とりわけDV事案における離婚後の共同親権やDV加害者との面接交渉については、子どもの福祉の視点から、検討すべき課題が残されている。
著者
佐柳 友規
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ヒトと同じ霊長類であるコモンマーモセットにバルプロ酸を経口投与することにより自閉症モデルを作製した。この自閉症マーモセットは複数の自閉症様行動異常を示し、ニューロンの刈り込み異常が認められることを確認している。固定脳切片を用いてミクログリアの形態や数の変化を解析し、自閉症マーモセットのミクログリアは密度の低下、突起の繊細化などの異常形態を有することを示した。免疫組織化学的解析からミクログリアの機能異常も示され、ミクログリアの異常が自閉症におけるシナプス刈り込み不全に関与している可能性が示された。大脳皮質各エリアにおける遺伝子発現変化の解析からも治療標的となりうる分子を見いだしている。
著者
藤吉 正哉
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

新規抗てんかん薬ラモトリギンは、グルクロン酸転移酵素UGT1A4によってグルクロン酸抱合を受け、ラモトリギン2-Nグルクロニドとして尿中に排泄される。本研究では、ラモトリギンのクリアランスは、ラモトリギンとラモトリギン2-Nグルクロニドの血中濃度比(UGT1A4活性マーカー)によって予測可能であることを明らかにした。妊娠の経過に伴い、UGT1A4の発現量は増加することから、UGT1A4活性マーカーを用いるクリアランス予測は、妊娠期間を考慮した投与設計基盤となることが期待できる。