著者
佐藤 晃
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

Z住民検診で得られた1261名分の頚動脈内膜中膜厚(IMT)およびレムナントリポ蛋白コレステロール(RLP-C)の測定値をもとに、追跡調査と解析を行った。IMTの変化率(follow up IMT/baseline IMT×100)がどのような身体変量と相関があるか、多変量解析にて検討を行った結果、年齢、性で補正したbaseline IMTはRLP-Cと正の相関が認められた(P=0.0121)。しかし年齢、性、baseline IMTで補正したIMT変化率は、RLP-Cと有意な正の相関は認められなかった(P=0.7497)が、LDL-C/HDL-C比と有意な正の相関(P=0.0163)が認められた。
著者
斎藤 彰子
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

公務員の職務遂行に際しての不適切な行為や不作為が原因となり国民の死傷結果が発生した事件・事故につき、公務員個人の刑事責任の適正な根拠と限界を探究し、それによってその責任の不当な拡張を防止するために、刑法理論上検討する必要のある問題のうち、作為犯と競合する不作為の評価(正犯か共犯か、その区別の基準)、過失犯における正犯と共犯の区別、過失犯の共同正犯の肯否・要件などに関する日独の議論を分析した結果、とくにわが国において注目される複数の重要な判例に対して、理論的な検討を深めることができた。
著者
山田 和志
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究代表者は、金ナノ粒子をガラス基板上に固定化し、そこへポリマーコーティングを行いナノ加工ターゲット基板を作製した。その基板に対して波長532 nmの可視光レーザーを大気中下で照射することにより、レーザーアブレーションを誘起させ、ポリマーコーティング膜およびガラス基板上へ世界最小のナノ加工(加工サイズ10~30 nm)を行うことに成功した。また、金ナノ粒子のサイズまたはコーティング薄膜の厚みや種類等を変えることにより、ナノ加工サイズや形状を制御できることを見いだした。
著者
権藤 克彦
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

前年度まででスライサとビジュアライザの基本的な研究・開発は終了した.本年度は,我々が開発したANSI C用XMLマークアップ言語であるACMLの応用と,昨年度までの研究で判明した「XMLを用いたソースレベルのデータ統合方式」の欠点をより解明・解決する研究を行った.1.ACMLを用いたプログラム情報抽出システムAXESの設計.昨年度までで実現したスライサとビジュアライザをさらに進めた応用事例として,構文要素を用いたパターン(例えば,@if($exp=$exp){})を与えることで,ソースコードの一部を検索できるプログラム情報抽出システムの設計を行った.この機能は,例えば既存のクロスリファレンサ(例えば,GNU GLOBAL, LXR, SPIE, Cxref)にない機能であり,ソースコードに対するより高度で柔軟な検索を可能とする点で意義が大きい.2.DWARF2デバッグ情報を用いたバイナリレベル・データ統合方式の評価.ソースレベルのデータ統合方式は,コンパイラの独自拡張や規格の未規定動作への対応が困難であることが判明したため,昨年度からバイナリレベルのデータ統合方式の設計・実装を開始し,本年度は本方式を用いて実装したクロスリファレンサやコールグラフ生成系の性能や開発効率の評価を行い,本方式の有効性を明らかにした.特に,組込みソフトウェア分野など,本質的にC言語が必要なソフトウェアに対しても本方式が有効であること,一部に不完全なデータ統合を許す「軽量なデータ統合方式」が有用であることを示した.
著者
鶴田 滋
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

通常共同訴訟や必要的共同訴訟の成立根拠とそれらの審判規律は密接に関連しているのではないかという視点から、日本民事訴訟法における共同訴訟の成立要件と手続規律を、ドイツ法およびオーストリア法と比較しつつ明らかにした。たとえば、通常共同訴訟は訴訟経済のためにあるため、通常共同訴訟全体に主張共通の原則を認めるべきではないこと、固有必要的共同訴訟における合一確定の必要性は、共同訴訟の必要性から生じるため、職権調査事項であり、それゆえ不利益変更禁止の原則に優先することなどを明らかにした。
著者
綾野 絵理
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

外部温度変化に応答し、その構造・性質を変化させる機能性ポリマー、poly(N-isopropylacrylamide)(PNIPAAm)と生分解性ポリマーであるPLA(ポリ乳酸)を用いて、薬物放出制御機能・ステルス性を備えた新しいナノ粒子製剤を開発した。ナノ粒子を細胞へ取り込ませたところ、相転移温度を境に取り込みのON-OFFが確認されたことから、人体に影響の無い程度のわずかな温度変化で取り込みの制御が可能であることが示された。このナノ粒子の実用化により、少ない投与量による副作用の軽減、高いQOLを目指せる製剤となることが期待される。
著者
物部 博文
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

火災や火炎に対応する消防員の装具は、必然的に衣服熱抵抗の高い密閉型の衣服となる。しかし、火災に対する熱抵抗性を高めることで、夏季における消火活動中に消防士がヒートストレスを生じ、たおれるという事故も発生するようになってきた。そこで、本研究では、消防服を着用し消火活動を行うことでどの程度生体への影響が生じるのか。その時に認知判断能力へはどの程度の影響があるのか。また、どの様な部位をどの様な方法で冷却することが効果的であるのか。を明らかにすることを目的した。実際にヒートストレスが生じた消火活動の状況をシナリオ化し、被験者に同程度の負荷を与えたところ約2℃近い体温上昇が生じることが明らかになった。しかし、今回の実験結果に限って言えば、一過性のヒートストレスでは、認知判断力には影響がないことが示唆された。また、衣服内換気を行うことで体温の上昇を約1℃抑えられること、頭部冷却を行うことで快適感が向上することを明らかにし、換気型消防服の開発に取りかかった。平成17年度は、日本家政学会で「換気型消防服の開発」で、を、日本衣服学会で「消火活動に伴う体温上昇と認知判断」を発表するとともに、3年間の総括として研究報告書を作成した。
著者
保科 英人
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,農村地帯に放棄された水田を,ビオトープとして,学校教育や社会教育の材料として維持・管理し,活用していくシステムを確立していくことを目的としている.フィールドは,平成17年度と同様,越前市(旧武生市)黒川町の休耕田を用いた.このエリアは,武生西部地区と呼ばれ,ナミゲンゴロウやハッチョウトンボのほか,アベサンショウウオなどの希少種が数多く残存する地域として有名である.環境省が全国から4つ選定した「里山保全モデル事業」の1つにもなっている場所である.フィールドとなった休耕田の管理を始めてから,今年で4年目である.近年の温暖化,少雪傾向を反映してか,イノシシの増加が目立つ.そのため,あぜの決壊が頻繁に起こり,その対策が必要となった.なお,希少種であるナミゲンゴロウは,平成19年度も新成虫が誕生している.トンボ類では,ニューフェイスの飛来は見られなかったが,種多様度は全体的に維持されている.里地保全で最も重要と言うべき,地元の協力は相変わらず強く得られている.アベサンショウウオに代表される希少種の保護活動が,住民の意識を高めているのは言うまでもないが,それから派生して,外来種問題などにも協力を得られている.オオクチバスやアメリカザリガニと言った里地に生息可能な侵略的外来種に対しては,地域の厳しい監視の目が存在する.昨年度から見られるようになったヒシ類の極端な増加は見られず,トンボ類にとって,重要な休憩場所及び産卵場所になっていることが観察された.他地域に位置する休耕田との比較の調査を前年に続き,継続した.北陸における水資源の豊かさは,本州太平洋側や四国,九州と比べて際だっており,ビオトープ造営や維持・管理に関しては,大きな強みであることが改めて示された.
著者
田中 修二
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

彫刻家・新海竹太郎のご遺族のもとにのこる彼の自筆手帳・ノート等の資料類(「新海竹太郎旧蔵資料」)の整理・調査・研究を進めた。彼の作品を多く所蔵する山形市の山形美術館で作品の写真撮影をさせていただき、同時に作品に刻まれた彼のサインについて調査した。その一部は平成19年7月の屋外彫刻調査保存研究会で「彫刻表現のために-新海竹太郎(1868〜1927)の資料から〜近代彫刻家が制作した仏像をめぐって〜」のテーマで発表した。当初、これらの調査の結果を年度末までに資料集にまとめる予定であったが、十分な調査及び研究を反映させるため、半年から1年後の完成を目指している。これまで3年間継続した新海竹太郎についての調査・研究の一部は、平成19年9月に刊行された共著『日本近現代美術史事典』に反映されている。彫刻家・朝倉文夫については主に第二次世界大戦当時の彼の活動と、戦後大分市に設置された彼の屋外彫刻作品について、当時発行された新聞などを調査しつつ、研究を進めた。戦時中の彼の活動については、平成19年12月に刊行された共著『戦争と美術1937-1945』所収の拙論「戦争と彫刻1937-1945」で論じた。また彼の屋外彫刻作品について調査は、別に大分市からの受託事業として実施している大分市内の屋外彫刻のメンテナンス活動および保存・管理の研究に活かすことができた。このほか、明治期に工部美術学校で学んだ洋風彫刻家たちや朝倉文夫の教え子にあたる日名子実三、戦後の彫刻界で重要な役割を演じた岡本太郎などについて調査を進め、その一部は平成20年度に論文等で発表することとなった。
著者
櫻谷 英治
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

これまでに、アラキドン酸(AA)の工業生産糸状菌であるMortierella alpina IS-4の形質転換系を構築し(平成16年度本研究課題)、高度不飽和脂肪酸生合成に関わる遺伝子の過剰発現と遺伝子発現抑制により、高度不飽和脂肪酸の生産性向上の可能性を示した(平成17年度本研究課題)。本年度では、脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子の発現抑制とω3脂肪酸不飽和化酵素(ω3DS)遺伝子の過剰発現を行い、高度不飽和脂肪酸の組成を大きく変えることに成功した。1.M.alpina 1S-4の脂肪酸鎖長延長酵素(MAELO)遺伝子は、他の脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子と相同性が高いものの、その機能は明らかでなかった。そこでRNAi法により本遺伝子の発現抑制を行ったところ、炭素鎖長22以上の飽和脂肪酸が検出されなかったことから、本酵素遺伝子は主に超長鎖飽和脂肪酸の生合成に関与していることが示唆された。炭素鎖長20以上の超長鎖飽和脂肪酸は高度不飽和脂肪酸生成過程の不必要物質である。グルコースを炭素源とした培地で培養すると、野生株で超長鎖飽和脂肪酸は培養日数と共にその割合が増加し、培養14日目には総脂肪酸の8%に達する。一方で、MAELO-RNAi形質転換株では、超長鎖飽和脂肪酸は培養14日目でも検出されなかった。以上より、MAELO遺伝子発現抑制により超長鎖脂肪酸を含まないAA生産を示すことができた。2.AAをエイコサペンタエン酸(EPA)に変換するω3DS遺伝子を本菌株で過剰発現させ、EPAの生産量を増加させることに成功した。野生株のEPAは総脂肪酸当たり8%蓄積するのに対して、ω3DS遺伝子過剰発現株では32%となったことから、EPAの生産を4倍増加させることができた。このようにある特定の遺伝子の過剰発現により、高度不飽和脂肪酸の生産性を向上できることを示した。
著者
郭 偉
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

今年度は、主に日本近代文学館「武田泰淳コレクション」の分析を行った。「武田泰淳の未発表翻訳原稿について」(『近代文学 研究と資料』第2次第1集、2007年3月)、および『日本近代文学』第77号(2007年11月)に発表した論文「武田泰淳的リアリズムの生成-小説『秋風秋雨人を愁殺す 秋瑾女士伝』の方法-」は、その成果の一部である。前記コレクション中の中国経済史関連未発表翻訳原稿の意味を探る過程で、大学時代の泰淳の中国雑誌『歴史科学』への投書を入手。日本ではこれまでその存在すら知られていなかったため、日本語に試訳し、「『進歩的科学者之国際的握手』-大学生武田泰淳の中国雑誌への投書-」(『近代文学 研究と資料』第2次第2集、2008年3月)で紹介した。目下、関連論文の執筆中。1933年に北京で発行された『歴史科学』の主要メンバーは東京高等師範学校などへの留学経験者であり、泰淳投書について考える場合、日中学術交流史という視点、さらに泰淳が在学していた東大支那哲学支那文学科を中心とする、1930年代以降の日本における中国研究をめぐる状況の分析も必要となる。東大支那哲学支那文学科関係者も多数モデルとなった所謂中国問題小説『風媒花』については、2007年12月、「中国三十年代文学研究会」において、口頭報告「『自画像』、あるいは『新・儒林外史』-武田泰淳『風媒花』試論-」を行った。論文・翻訳としては、今年度は他に以下ものを発表。「武田泰淳と『中国』-その文学の始発期をめぐって-」(杉野要吉編著『戦中戦後文学研究史の鼓動-その一側面-』2008年3月)/丸尾常喜著・郭偉訳「『阿Q正伝』再考-関於「類型」」(『魯迅研究月刊』2007年9期、中国)/佐藤泉著・郭偉訳「解読"国民文学論"-戦後評論的元歴史、近代記憶之場與教科書式文学史之来源」(『新文学』第7輯、2007年11月、大象出版社・中国)
著者
中屋 宗雄
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

(はじめに)我々は,ヒト鼻粘膜におけるヒスタミンH3受容体の存在を免疫組織学的にその局在を明らかにし過去に報告したが,マウスにおけるその存在は不明であった.マウスにおけるヒスタミンH3受容体の存在を確認し,その働きを検討するために研究を行った.また,鼻アレルギーマウスの過敏性を非侵襲的に他覚的に評価する方法について研究した.(方法)正常マウスおよび鼻アレルギーマウスにおけるヒスタミンH3受容体のmRNAの存在と,免疫組織学的にその局在を検討した.また,鼻アレルギーマウスにヒスタミンH3受容体刺激薬・拮抗薬の投与を行いその効果を検討した.さらに,ヒスタミンH1受容体拮抗薬とヒスタミンH3受容体刺激薬の相互作用についても検討した.また、鼻アレルギーマウスの過敏性を非侵襲的に他覚的に評価するために,Penhを使用しその評価を行った.(結果)マウスの鼻粘膜におけるヒスタミンH3受容体の存在を,PCR法により確認することができた.また,正常マウスおよび鼻アレルギーマウスのいずれにもヒスタミンH3受容体のmRNAの発現を認めた.免疫染色でも,その局在を確認できた.ヒスタミンH3受容体刺激薬投与により鼻アレルギーマウスの鼻症状(くしゃみ・鼻掻き)を有意に抑制し,有意な鼻粘膜好酸球の減少を確認できた.H3受容体拮抗薬は鼻アレルギーマウスの鼻症状を増悪させたが,有意差は認めなかった.ヒスタミンH1受容体拮抗薬とヒスタミンH3受容体刺激薬は単剤投与より,併用投与の方が有意に鼻アレルギー症状を抑制した.有意に鼻粘膜の好酸球も減少させた.鼻アレルギーマウスの過敏性変化を経時的にみたが,Penhで経時的に抗原刺激後の反応が増加することが確認でき、これらの反応増加は抗原刺激後のくしゃみ・鼻擦り回数の増加と鼻粘膜好酸球の増加と相関した。(まとめ)マウスにおいて,ヒスタミンH3受容体の存在をmRNAレベル・蛋白レベルで確認できた.また,ヒスタミンH3刺激薬は鼻アレルギーマウスの鼻症状を改善し,ヒスタミンH1拮抗薬と併用することで,単剤投与より作用の増強を確認できた.さらに,Penhを使用して鼻アレルギーの過敏性変化を非侵襲的に評価することができた.
著者
瀬嶋 尊之
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

アレルギーの成立とその後の病態に、線溶因子が関与するのではないかという仮説に基づき、主に動物実験(マウス)を主体に実験を行った。線溶因子のPAI-1ノックアウトマウスの感作モデルにおいては、鼻症状・血清中特異的抗体価・組織変化・局所でのサイトカイン産生などの面で、コントロールに比べてアレルギー性炎症が抑制されるという結果が得られている。本年度は、この結果を治療法の開発に応用する基礎実験として、後天的にマウスの局所でPAI-1をノックダウンするRNAi実験を行った。使用するsiRNAはプラスミドベクターとして作製し、マウスへの局所投与により、そのノックダウン効率を検討して本実験に備えた。本実験ではこれまで確立されたアレルギー性鼻炎モデルの感作過程で、PAI-1のsiRNA発現プラスミドを投与し、in vivoでのRNAi実験を行った。その結果、siRNA発現プラスミド投与マウスは、コントロール(通常の感作モデルマウス)に比較して、鼻症状(鼻掻きおよびくしゃみ回数)・鼻粘膜の組織検査(好酸球浸潤や上皮の杯細胞化生)・鼻粘膜局所でのサイトカイン産生などが抑制され、PAI-1ノックアウトマウスの実験とほぼ同様の結果を得た。しかし血清中特異的抗体価(Ig-G1やIg-E)は一定の傾向がみられず、全身に対する効果としてははっきりと認められなかった。これらのことは、ある疾患にかかわると思われる特定の遺伝子を、後天的に局所のみで制御できる可能性があるという点で、非常に意義があることと考えられる。局所のアレルギー性炎症のように、できるだけ全身的には大きな影響を及ぼさず、症状の出る局所のみで病態をコントロールできることは非常に重要と思われる。本研究をさらに発展させることにより、今後のさらなる病態解明や治療法への応用も期待される。
著者
犀川 陽子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ミドリイガイの殻皮層を塩酸抽出したのちイオン交換、分子ふるい、逆相クロマトグラフィーなどを用いて精製を行い、主成分である青色色素が光、酸素に安定で親水性の色素ペプチドであることを明らかにした。また、アカクラゲ由来の刺激物質の探索を敏感マウスのくしゃみを用いた評価法にて行った。抽出物のヘキサン画分をシリカゲルや逆相クロマドグラフィーにて精製し、有意な活性を持つ脂肪酸を分離した。
著者
宮崎 義之
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

サイトカインは免疫制御を司り、自己免疫疾患やアレルギー性疾患の病態形成においても重要な役割を果たす。「WSX-1」は、インターロイキンー12受容体(IL-12R)ファミリーに属し、IL-27Rとして機能することが示されている。我々は、IL-27/IL-27R(WSX-1)が、「Th1分化の誘導」もしくは「炎症応答の抑制」と言う2つの異なる免疫制御に関わることを明らかにしており、本研究課題では、アレルギー性疾患の病態形成における役割を解析した。平成17年度は、気管支喘息や遅延型過敏反応などのモデル試験で、IL-27Rがそれらアレルギー性疾患の抑制に関わることを明らかにした。そこで平成18年度は、アレルギー性鼻炎についてさらに検討を進めた。WSX-1欠損マウスでは、抗原特異的lgEの血中レベルおよび頸部リンパ節のTh2サイトカイン産生に更新を認め、全身的所見についてはIL-27Rが抑制的に作用することが示唆された。しかし、抗原暴露に伴う鼻症状(くしゃみや鼻擦り行動)や鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)紬胞のサイトカイン産生などの局所応答はWSX-1欠損により軽減され、IL-27/IL-27Rが喘息と鼻炎で異なる病態制御を担うことが明らかとなった(ケモカイン藤生への影響など、機構解析を進めている)。また、喘息治療におけるIL-27の有効性を検証するために、IL-27を高発現するTgマウス(C57BL/6系)を用いてモデル試験を行ったが、喘息の症状が弱く、改善効果の判定が困難であった。現在、喘息モデルで汎用されるBALB/c系への戻し交配を行っている。さらに、IL-27Rによる炎症抑制機構を明らかにするために、炎症誘導に関わるIL-17について並行して解析を行う中で、IL-17がTrypanosoma cruzi原虫感染に対する効率的防御に働くことを明らかにした。
著者
西田 昌史
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,討論などの議事録に話者の発話状態を付与するため,音声から音響特徴を抽出し分析することで,話者の発話状態をモデル化し推定することを目的としている.これまでの研究では,日本語地図課題対話コーパスを対象として話者4名の40発話を用いて,6つの発話状態と4つの韻律特徴の全体の相関関係を正準相関分析により明らかにした.これを踏まえて,今回はさらにデータ量ならびに韻律特徴を増やして重回帰分析に基づき各発話状態のモデル化と推定について検討を行った.データとしては話者10名の130発話を用い,今回「強調」「疑問」「驚き」「自信」「迷い」の5つの発話状態に対して被験者12名によりSD法に基づいて7段階で評定実験を行った.各音声データごとに平均の評定値が一定値以上であればその発話状態があるとみなした.また,韻律特徴としては「F0の平均値・レンジ・最大値・最小値」「パワーの平均値・レンジ・最大値・最小値」「平均モーラ長」の9つを用いており,話者ごとにパラメータを正規化している.以上の評定実験で得られた評定値を目的変数,韻律特徴を説明変数として重回帰分析によりモデル化を行った.変数選択により,「強調」は「F0レンジ・最小値」「パワー平均値・最大値」,「疑問」は「F0平均値・レンジ」「パワーレンジ・最大値」,「驚き」は「F0レンジ・最大値・最小値」「パワーレンジ」「平均モーラ長」などのように韻律特徴により各発話状態をモデル化することができた.この重回帰モデルにより発話状態の推定を行った.その結果,各発話状態がある場合の判別制度が64%,各発話状態がない場合の判別制度が93%となり全体で80%の判別制度が得られた.また,重回帰モデルの推定値と人間の評定値との相関を分析した結果,平均して0.74の相関値が得られ今回のモデルが人間の印象を反映できていることがわかった.
著者
中尾 敬
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本年度は,答えが1つではない事態における行動選択過程を明らかにするため,事象関連脳電位を用いた実験1〜4と,行動指標を用いた実験5を実施した。実験1,2では,答えが1つでない事態における行動選択(職業選択課題:どちらの職業に就きますか?「高校教師大工」)時に認められる陰性電位が,競合(迷い)の程度を反映しているのかどうかを検討した。その結果,職業選択時の陰性電位の振幅が,競合の程度によって変化することが明らかとなった。このことにより,答えが1つではない事態における行動選択過程を探るための1っの指標(CRN,conflict related negativity)を確立することができた。実験3では,CRNを指標とし,内側前頭前皮質の表象(自己知識)が,職業選択時の競合を低減するのかどうかを検討した。自己知識課題(例:あなたにあてはまりますか?「やさしい」)の遂行直後に職業選択を行った場合と,他者知識課題(例:小泉首相にあてはまりますか?「陽気な」)の遂行直後に職業選択を行った場合とで,職業選択時のCRNの振幅を比較したところ,自己知識が活性化されやすい状況で職業選択を行ったときの方がCRNの振幅は1」小さかった。また,実験4から,実験3の結果が,自己知識課題と職業選択の両方が自己についての判断であったことにより認められた結果ではなく,自己知識が行動選択の基準として機能したためにみられた結果であることが明らかとなった。このことから職業選択時には自己知識が行動選択の基準として機能していることが示された。実験5はfMRI(functional magnetic resonance imaging)を用いた実験を行うための予備実験として実施した。実験5からは,行動選択の基準として機能している情報の特性(行動選択の基準に記銘語を関連付けると記憶が促進される)が明らかとなった。今後はこれらの実験結果の公表を進めつつ,fMRIを用いて,答えが1つでない事態における行動選択の脳内過程についての検討をさらに進めたい。
著者
永光 輝義
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

17地点に設置した70トラップのそれぞれによって2004年に採集された外来種の個体数は、温室で使われたコロニーからの分散と水田の広さに正の相関を示した。一方、在来3種は畑と森林の面積が大きい場所で採集個体数が多かった。外来種が多い場所で在来種の個体数とワーカーサイズが小さくなる関係は認めらず、外来種と在来種との種間競争を示唆する証拠はこの観察からは得られなかった。この観察は、土地利用で表される生息地の条件がマルハナバチの個体数を決める主な要因であることを示唆している。ワーカーの個体群動態を5地点で4年以上観察した。外来種の分布中心部では、外来種が減少し、在来種が増加した。南北の分布周辺部では、外来種が増加したが、在来種の動態は様々だった。南の分布境界では、外来種の分布域が拡大した。この観察結果は、温室からの分散に起源する個体群が「波」として拡大するパターンを表しているのかもしれない。2005年に1511個体、2006年に2978個体の外来種を6地点で除去した。一方、7地点は対照とし、除去を行わなかった。そして、2004年から2006年までの3年間、これらの地点でトラップを用いてマルハナバチを採集した。除去は、外来種の全個体数と女王個体数を減少させた。しかし、2006年の強い除去よりも2005年の弱い除去の方が減少効果は大きかった。また、除去によって在来種の女王個体数が増加した。2006年と比べて、外来種がより大きく減少した2005年に、在来種はより大きく増加した。一方、除去によるワーカーサイズへの影響は見られなかった。よって、少なくとも女王の個体数について外来種と在来種との種間競争を示唆する証拠がこの実験から得られた。
著者
NIRAULA Madan
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では高い空間及びエネルギー分解能、高い検出効率を有する高性能放射線検出器を実現することを目的とし、CdTe半導体結晶を用いて検出器の作成を行った。CdTeは放射線に対する吸収係数が大きく、また禁制帯幅が大きいため常温動作可能な検出器を作製できる。しかしながら、CdTe検出器では電子と正孔の移動度と寿命差に起因する検出感度の低下や、エネルギー分解能劣化などの問題がある。それを解決するため本研究では新規の電極構造である微小収束型電極構造を持つ検出素子の検討を行った。今年度は昨年度得た成果を基に電極構造、検出器作製の最適化を行い、さらにこの検出器アレイ化について検討した。また、大規模アレイ作製に必要な素子分離に適用できるレーザーアブレーション技術の検討を行った。検出器作製技術の改良により単一検出器及び小規模アレイ(2x2素子)の検出特性の向上を達成できた。その結果は従来の結晶表面と表面に平面電極を形成した構造の検出器より優れた検出特性を持っていることが確認できた。また、検出器アレイでは素子間の特性のばらつきがなく、均等な検出特性が得られた。一方、レーザーアブレーションによるアレイの素子分離では結晶上に金属マスクを置きKrFエキシマレーザー照射することにより深いトレンチが形成可能であることを確認した。また、レーザー照射がCdTe結晶内に及ばす影響が少ないことが電気特性から明らかになった。以上の結果は来年度アメリカに開催予定の放射線検出器に関する国際会議に報告する予定である。
著者
奥田 勝博
出版者
広島国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

4-Methyl-2, 4-bis(ρ-hydroxyphenyl)pent-1-ene(MBP)は、我々のグループがビスフェノールA(BPA)の活性代謝物として発見した化合物であり、in vitroではBPAの数十倍から千数百倍のエストロゲン活性を示すことが明らかとなっている。本研究ではラットin vivoにおけるMBPのエストロゲン活性を評価することを目的とした。Wistar系ラットの卵巣を外科的に摘出し(OVX)、内在性のエストロゲンを枯渇させたOVXラットにエストラジオール(0.55μg/kg/day)、BPA(0.5,5,50mg/kg/day)及びNBP(0.1,1,10mg/kg/day)を5日間皮下投与し、最終投与の翌日に子宮を摘出して重量を測定した。ホルマリン固定・パラフィン包埋サンプルを作成して、薄切後にHE染色を行い、組織の観察を行った。また、パラフィン包埋サンプルからRNAの抽出を行い、リアルタイムPCRによって、各種エストロゲン関連遺伝子のmRNA発現量を定量した。MBPを投与したOVXラットの子宮重量はコントロールに比べて有意かつ濃度依存的に増加し、子宮内膜上皮高、及び子宮筋層厚についても同様の結果が観察された。同時に行ったBPA投与群と比較して、MBPはBPAの500倍以上のエストロゲン活性を有することが示唆された。また、OVXによって惹起されたエストロゲン受容体のmRNA発現上昇を有意に抑制し、IGF-1およびc-fosのmRNA発現の減少を濃度依存的に回復させた。これらの結果から、MBPは哺乳動物においても高いエストロゲン活性を有し、BPAの活性代謝物として人体に影響を及ぼす化合物であることが示唆された。