著者
山本 祐介
出版者
東京歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

明らかなマイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction ; MGD)を有さないが、ドライアイに関する愁訴を有する者19例38眼を対象とし、アイマスク型の温熱マッサージ器「アイマッサー」を1回5分、1日2回、2週間毎日使用させ、自覚症状、涙膜破壊時間などの眼機能の変化、一般所見などを観察した。対象は男性2名、女性17名。平均年齢33.4歳(±6.9歳)。短期間効果:5分間使用し、前後の変化(眼瞼角膜温度、涙液膜破壊時間(BUT)など)を評価した。治療的効果:1日5分使用を1日に2回行い、2週間続けた。結果 BUTは短期間調査、治療的調査ともに著明改善した(P<0.01)。多くの症状が2週間の治療後に改善をみせた。DR-1上、干渉像の変化はないものから、厚みのある油層が観察されるようになる症例まで様々であった。5分間の温熱療法後、上眼瞼温度は1.6℃、角膜温度は1.3℃上昇した(P<0.01)。視力、眼圧、シルマー値に変化は認められなかった。調査した多くの自覚症状項目(瞼の重い感じ(p<0.001)、眼が疲れる、眼が乾燥する、異物感、充血する、不快感がある(以上5項目、p<0.01)、瞬きが多い、めやにが出る、眼がほてった感じがある(以上3項目、p<0.05))で改善が認められた。総合評価でも良好な成績が得られた。また、本試験では併せて眼精疲労に関する愁訴についてもアンケート調査を行ったが、これについても調査した症状の項目の半数以上で改善が認められるなど、良好な成績が得られた。これらのことからアイマッサーはドライアイ及び眼精疲労に関連した愁訴に対して有効であると考えられた。現在、論文執筆中である
著者
鈴木 伸一
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.研究の目的視覚障害者の道路横断に生じる心身のストレス状態を明らかにするとともに,各種ストレスが歩行にどのような影響を及ぼすかを検討することを目的とした.2.対象全盲の視覚障害者6名.被験者の単独歩行歴は20年〜35年であった.3.手続き市街地域の音響式誘導設備が設置された横断歩道(道幅11.6m)を利用し,単独歩行時の生理的反応(心拍率,皮膚電気反射:トーヨーフィジカル社製),心理的反応(POMS不安・緊張尺度),騒音音圧(Rion社製騒音計),横断軌跡,方向見失い(内観)を測定した.各被験者の試行回数は11〜16回であり,総データ数は85であった.4.結果と考察各指標の変化を検討した結果,心拍,皮膚電気反射ともに騒音音圧が上昇する時期と同期して上昇するが,覚醒のピークは皮膚電気反射の方が早い傾向にあった.この結果は昨年度の結果を支持するものであった.また,歩行軌跡のパターンをクラスター分析によって検討すると,歩行軌跡は「離脱無し」,「離脱後復帰」,「離脱」,「後半離脱」の4パターンに分類可能であった.各群における各指標の差異を検討した結果,横断初期(0秒〜5秒)の騒音音圧に顕著な違いが認められ,離脱群の初期騒音は離脱無し群に比べて顕著に高かった.そこで,横断初期の騒音音圧のデータを基準として騒音高群(70db以上)と騒音低群(65db以下)を構成し,ストレス反応の差異を検討した.その結果,騒音高群における横断開始後7〜8秒後の皮膚電気反射は騒音低群にくらべて顕著に高く,横断開始後14〜15秒後の心拍率は騒音低群に比べて顕著に低いことが明らかにされた.これらの結果は,昨年度の研究において示唆された知見を支持していた.以上本研究の結果をまとめると,(1)横断歩道離脱度の高い試行は,初期騒音が高い,横断前半の皮膚電気反射が高い,横断後半の心拍率が低いという特徴がある,(2)横断中の皮膚電気反射の変化は騒音音圧の変化と類似したパターンを示す,(3)横断後半の心拍率は,離脱度の高い試行ほど低い,(4)皮膚電気活動は情緒的反応成分を反映し,心拍率は方向定位に伴う認知的反応成分を反映している,と言うことができる.これらのことから視覚障害者の単独歩行による横断歩道離脱に及ぼすストレスの影響性を考察すると,視覚障害者が横断初期に高い騒音を経験することによって情緒的なストレス反応が高まり,それによって方向定位に関連する認知的活動が妨害され,離脱が生じると考えることができる.
著者
亀谷 義浩
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度は、視覚障害者の基礎的な空間把握特性や探索歩行行動を明らかにするために、屋内に模擬実験空間を作製し、全盲の視覚障害者を主な対象として実験を行った。平成17年度では、16年度の結果を検証するために、実際の社会的空間での視覚障害者の空間把握や探索行動を明らかにする調査を行うとともにリクリエーションとしての空間利用が可能であるかを検証した。調査は、大阪市営定期観光バスの一日ツアーを利用し、さまざまな施設を訪問する。訪問施設は、海遊館、大阪ドーム、大阪城、水上バス、梅田スカイビルである。調査期間は、平成17年7月23日および10月23日である。調査内容は、各施設やツアー全体さらには、移動中について、空間把握だけでなくリクリエーション空間としての娯楽性や快適性、安全性について評価を行った。評価はアンケートにより行った。被験者は、全盲者5人(男性3人、女性2人)および健常者5人(比較対照群として男性3人、女性2人)の計10人である。結果、安全性、快適性、満足度など、多くの項目で、全盲者より健常者のほうが、よい評価になり、出入口の認識や自分の居場所の認識などは、健常者より全盲者はかなり低い評価結果となった。このような観光バスツアーでは、まず、バスから施設まで視覚障害者だけで到達することは困難で、介助者が必ず必要になる。模擬空間とは異なり、さまざまな情報が錯綜する実際の空間では、空間把握は難しい上に、施設内での設備や機材も不十分であり、さらには、施設職員の対応も十分ではないことから、低い評価になったと考えられる。しかし、梅田スカイビルの屋上展望では、光や風を受けることで被験者は楽しむことができ、また参加したいという評価をしている。改善しだいでは、視覚障害者が一人で参加することやリクリエーションとしてうまく利用できる空間の創造が可能であると考えられた。
著者
横山 三菜
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ホスホセリンをポリマーとしたポリホスホセリンやホスホセリンとアスパラギン酸の1対1の共重合体がアパタイトに吸着し、硬組織の形成を促進する。牛歯エナメル質表面に作用させた場合、ポリホスホセリンでは、硬組織形成が早く、エナメル質小窩裂溝入口を硬組織で塞いでしまうため、ホスホセリンとアスパラギン酸の共重合体にて、小窩裂溝内部の石灰化を促す割合を検討する必要がある。
著者
山本 かよ
出版者
神戸市看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,人工呼吸器装着後の療養生活においてALS患者が体験している痛みを明らかにすることである。調査の結果,以下の内容が明らかとなった。1.対象者の概要:ALS患者4名(男2名 女2名)2.ALS患者が体験している痛みの様相:ALS患者は,からだ全体に及ぶズキズキした痛みと首や足の指、骨,カニューレが引っ張られるなど【からだ全体と局部の痛み】を体験していた。痛みはー日中じわじわと続いているが,一端寝てしまうと感じなかったり,天候や季節,午後から強くなるなど1年,1日を通して【強弱の波がある】ことがわかった。このような辛い痛みは同じ姿勢が長くなると特に強くなり,体位調整やマッサージ,ストレッチをして患者の【からだを動かすと楽になる】と3名が語っていた。しかしながら,1名の患者は何をしても痛みが【楽になることはない】と感じており,痛みによる例えようのない苦痛を体験していた。また,患者らは痛みのほかにも全身や痛みのない筋肉の痙攣,からだの位置が決まらないことに対する苦痛など【痛みだけではない】苦痛を体験していた。3.考察:ALS患者においては,痛みなどの感覚障害は陰性徴候に含まれる。しかし,本研究結果から耐え難い痛みをALS患者は体験していたことが明らかになった。がん患者においては、痛みをとることが最優先課題であるが,ALS患者の場合は,呼吸・栄養管理とコミュニケーション技術の工夫に注意が集中し,痛みに関してはいまだ重要視されていない。日常生活全般の援助を要するALS患者にとって看護師によるケアは必要不可欠であり,看護師は,患者の訴えを最も敏感に察知できる医療従事者である。看護師が痛みにもっと着目し,患者の体験している痛みを共感的態度で傾聴するとともに,痛みに対する緩和ケアを積極的に提供することの重要性が示唆された。また,痛みの原因はALS自体の症状,別の原因,四肢麻痺による不動に分類されるため,看護師が痛みの要因を的確にアセスメントし,適切なケアを提供することも重要である。本研究結果は,平成19年8月に開催された第12回日本難病看護学会学術集会にて発表した。また,月刊雑誌「難病と在宅ケア」へ投稿した(2008年6月号に掲載予定)。
著者
秋葉 淳
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、19世紀オスマン帝国の改革を、中央政府と地方社会の相互作用の結果として生じたものとして捉え直すものである。その主たる成果として、地方評議会の機能、地方反乱の性格や背景、地方住民の官僚機構への進出などを分析し、地方住民が国家の政策に影響を及ぼす、あるいは、国家システムに参入する回路についてその具体的諸相を明らかにしたほか、中央政府が地方行政の問題に関する政策決定過程において地方官らに諮問する手続きがとられたことや、1845年の地方代表者会議に見られるように、地方有力者の協力を得るために周到な準備をしていたことなどを見いだした。
著者
丸山 一平
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

高強度コンクリートは,硬化体の密度が高く乾燥収縮量が小さい反面,自己の水和に基づく内部乾燥によって自己収縮することが知られている。この自己収縮に起因して,微細なひび割れが鉄筋による拘束条件によって鉄筋周辺に生じる可能性があり,もし,この微細なひび割れが存在すれば,付着の劣化による構造挙動の変化,かぶり厚さの低減による耐久性の劣化が懸念される。昨年度は,高強度コンクリートの自己収縮に起因する微細なひび割れが発生するかどうかを,溝切り鉄筋を埋設し,材齢1日より,着色アルコールを溝に流し,ひび割れ発生を検証する法を開発し,実際にひびわれが鉄筋周囲にひびわれが入ることが明らかとなった。本年度は,鉄筋拘束供試体の鉄筋ひずみを検証対象として,増分型3次元クリープ解析を行ったところ,鉄筋ひずみは想定される小さくなった。つまり,ひびわれを想定しないで生じる理想状態の応力と実際の応力では大きな隔たりが生じることが解析的に明らかになった。そこで,この原因が鉄筋周囲のひび割れ発生に基づく付着の劣化によるものであると仮定し,水和継続中の部位のひびわれを既往の破壊エネルギーを用いた有限要素スメアードひび割れモデルの概念を発展させ,時間依存性ひび割れモデルとして提案した。このモデルを用いて,様々な鉄筋比の試験帯を用いて検証したところ良い一致を見た。本モデルは,過去に生じた最大ひび割れ幅と引張強度の進展に依存して,ひび割れた部位であっても剛性が水和によって進展するというモデルである。付着の影響とひびわれの影響がいまだ混在しているモデルではあるが,鉄筋周囲のコンクリート要素という適用範囲を考えれば,十分に実用的なモデルであると考えられる。
著者
一ノ瀬 佳也
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究においては、スコットランド啓蒙哲学における「公私」観念についての研究を行った。そのために、グラスゴー大学アダム・スミス・リサーチ・ファンデーションの客員研究員となり、このテーマをめぐってグラスゴー大学のクリストフォー・ベリー教授と議論した。その結果、「私」的個人とは、単に利己的なだけでなく道徳的心性を有しており、自分たちで正義を導くことができることが分かった。
著者
東原 貴志
出版者
上越教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,地域の木材および森林について理解を深めるため,これらを活用した,中学校技術・家庭科技術分野におけるものづくり教材の開発を中心とした,「木育」に関する教材を開発し,中学生を対象とした活動実践に取り組んだ。研究の成果は以下の通りである。(a)国産スギ材を活用した,プランター教材とちゃぶ台教材を開発した。(b)中学生を対象とした木工競技大会の製作課題について検討するため,一例としてCDラックの製作時間を分析した。(c)国立妙高青少年自然の家にいて,森林樹木オリエンテーリングプログラムならびに科学技術学習を取り入れた「森小屋つくり体験活動」に関する教材を開発し,中学生を対象とした活動実践に取り組んだ。
著者
堀田 耕司
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

脊索動物の形態形成過程を細胞レベルで理解するために、本研究では、個体を構成する細胞数が少なくシンプルな体制をもつホヤを用いて個体まるごとの1細胞レベルイメージングを行った。ホヤ幼生ひのう部における新規末梢神経ネットワーク構造の3Dイメージングや尾芽胚の3Dコンピュータモデル化、および神経管閉鎖過程の3Dライブ(4D)イメージングを行い、ホヤ胚発生におけるさまざまな形態形成過程を細胞レベルで明らかにすることができた。
著者
森田 剛文
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

肝細胞癌 37 例を対象に質量顕微鏡法を用いて脂質解析を行った。肝細胞癌と隣接非癌部においてリン脂質の分布が異なっていた。リン脂質の分布が異なる原因として、リン脂質のリモデリング酵素(LPCAT)の発現を確認したところ LPCAT1 の発現が癌部において増加していた。2 種類の肝細胞癌細胞株に対して LPCAT1 の遺伝子発現を抑制したところ、コントロールの細胞と比較してリン脂質の組成に変化が生じ、増殖が抑制され、浸潤・遊走供に抑制された。次に LPCAT1を過剰発現させたところ、細胞増殖や浸潤能が増加することが確認された。
著者
田中 とも子
出版者
日本歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

齲蝕と歯肉炎は罹患率の高い生活習慣病である。そこで、我々はこれらの歯科疾患を教材とした「健康知識と健康行動の実践力が身につく生活習慣病予防ための教育プログラム開発」を目的として、健康教育を行ってきた。結果は2年間のPBL型健康教育が口腔状況の改善のみならず、自己管理スキルの向上に効果的であった。したがって、本研究で開発したプログラムは小児期のヘルスプロモーションに有効であると考えられる。
著者
馬場 基
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

木簡釈文へのタグ付きデータの作成を行った。タグ付きデータを『木簡画像データベース・木簡字典』で公開しているデータと組み合わせることで、木簡画像データ上での記載内容の位置の把握を行うためのシステム開発を行った。この情報を利用して、記載内容木簡上位置情報による分析実験を行い、手法をほぼ確立した。
著者
神崎 美玲
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、悪性黒色腫治療モデルにおけるTGF-β阻害分子の抗腫瘍効果および、腫瘍ワクチン療法と併用した場合の抗腫瘍効果を検討し、最終的には悪性黒色腫の新しい治療法を確立することを目的とする。先に申請した研究計画に基づき、昨年度は以下の2点について研究を行った。1. Melanoma(B16)担癌マウスにおけるTGF-β阻害薬による抗腫瘍作用の検討担癌マウスの治療的モデルを用いて悪性黒色腫に対するTGF-β阻害薬の抗腫瘍効果を検討した。C57BL/6マウスの腹部にB16 melanomaを皮内接種して作成した担癌マウスモデルに、TGF-βRI kinase inhibitor(HTS 466284)を腹腔内投与し、腫瘍径を観察した。腫瘍長径(a)、短径(b)を測定し、腫瘍塊の大きさをtumor index(ab)で評価した。TGF-βRI kinase inhibitorを投与した群において、tumor indexはコントロール群のそれと有意差なく、TGF-βRI kinase inhibitor単独投与では抗腫瘍効果が期待できないことが示された。2. 腫瘍ワクチン療法と併用した場合の抗腫瘍作用の検討先述のTGF-β阻害薬を当教室で以前から行っている腫瘍ワクチン療法と併用し、腫瘍径やsurvivalの評価を行った。担癌マウスモデルにTGF-β阻害薬とR9-OVA融合タンパクを用いた腫瘍ワクチン療法を併用し、腫瘍径やsurvivalの評価を行った。TGF-β阻害薬併用しても、腫瘍径・survivalともにワクチン療法の効果を増強させることはなく、残念ながら抗腫瘍効果は認められなかった。今後は、TGF-β阻害薬を腫瘍塊に直接投与して抗腫瘍効果を検討するなどの工夫が必要と思われた。
著者
村川 秀樹
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

理工学分野において現れる様々な問題を含む非線形拡散問題を取り扱った。非線形拡散を含む問題の解析や数値解析において、拡散の非線形性をどのように扱うかが問題となっている。本研究では、非線形拡散問題の解が、拡散が線形である半線形反応拡散系の解により近似されることを示した。この結果は、非線形拡散問題の解構造が、ある種の半線形反応拡散系の中に再現されることを示唆するものである。一般に、非線形問題を扱うよりも半線形問題を取り扱う方が容易であるため、本研究は非線形問題の解析や数値解析に応用できることが期待される。
著者
森田 圭亮
出版者
京都学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、個々の事例を包括的に捉える形で、租税回避行動のメカニズムや租税回避の抑制方法に関する分析を行った。また、租税知識に焦点を当てながら、従来の研究ではあまり分析の対象にされていなかったループホールを活用した租税回避行為に関する分析を行った。得られた研究成果は次のとおりである。第1に、所得階層ごとに租税回避を実行する動機が異なることを示した。第2に、新たな租税回避抑制手段として税の前納制度を提案した。第3に、従来各国で行われている租税執行政策の問題点を指摘し、改善策を提案した。第4に、ループホールを活用した租税回避行為に対する税務行政の在り方について提言を行った。
著者
川島 滋和
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度は国内水産物の価格形成メカニズムに着目し、(1)産地価格と水揚量の市場間連動に関する研究と(2)国際価格が日本の水産物市場の価格形成に与える影響について分析を行った。前者は東北地方の主要サンマ漁港である女川と気仙沼の価格・水揚量データを用いて分析を行い、後者は輸入比率の高い7品目(サケ・マス類、マグロ類、エビ、イカ,タコ,カツオ,カニ)を対象に輸入価格と国内価格の長期均衡関係と誤差修正過程を明らかにした。分析結果は以下にまとめられる。第一に,気仙沼と女川のサンマ産地価格の長期弾力性は約1.0と推計され,東北地方におけるサンマの産地市場の価格形成は効率的であり,価格情報はすでに統合されていると結論づけられた。第二に,産地市場の長期代替性は1.3と推計された。個々の産地市場は代替関係にあり,漁業者の水揚行動は産地の価格情報に速やかに反応していることが明らかになった。第三に、国内水産物の短期的な価格形成に着目すれば,水産物価格は主としてそのときの水揚量によって決定されており、国内での需給バランスが短期の価格形成において重要な役割を果たしていることが分かった。第四に,輸入比率の高い国内水産物の長期的な価格形成には輸入価格の影響が強く反映されていた。水産業におけるグローバル化が進展するにつれて、日本の水産業は、国内価格の維持と国際競争という2つの課題に直面している。今後は、国際競争力を維持していくためにも、水産物の輸出振興と資源管理や品質管理を考慮した水産物の差別化が必要となるであろう。
著者
岩堀 健治
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、詳細なナノ粒子作製条件の検討を行い、直径12nm内部空洞7nmの球殻状バイオテンプレートであるアポフェリチン内部に、ナノ電子デバイス作製に有用である3種類の新規化合物半導体ナノ粒子(CdS, CuS, ZnS)の作製に成功した。特に、溶液中のアンモニア濃度を調整することにより、異なる粒子径を持ち、異なる蛍光を発するCdSナノ粒子の作製が可能となった。同時に遺伝子変異フェリチンを作製し、フェリチン内部におけるナノ粒子形成メカニズムを明らかにした。さらにフェリチンタンパク質と直径9nmのLisDpsタンパク質をQCM基板上で結合させ雪だるま型バイオナノパーツの試作を行った。
著者
川本 義海
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

まず道路管理者、交通管理者および道路利用者から指摘された問題点に対するハード面(道路構造面)における対策はそれほど進んでいなく抜本的な改善は困難な状況を把握し、とくにソフト面での対応の重要性を確認した。次にソフト面において対策の要点と考えられる雪道の情報提供による交通マネジメントの方法を提案するために、運転者に有効とされる情報内容、情報入手媒体、情報入手タイミングを検討した。その結果、移動中のタイムリーかつ正確な交通情報の必要性が明らかとなり、とくに道路上で提供されている道路交通情報板が重要であることが確認された。そこで現在提供されている情報の諸問題のうち、これまであまり指摘されることのなかった提供される情報のあいまいさおよび運転者の認識不足に着目し、情報提供側の改善点はもちろん、運転者側の改善点も明らかにすべく、運転者に対して情報の正確な認識と判断の観点から、運転者に対するアンケート調査を通じて提供されている情報に対する運転者からみた評価のランク付けをおこなった。あわせて従来体系的に整理されることのなかった情報の内容をそのレベルに応じて規制、警戒、指示、案内の4つに分類した。これら情報の分類と評価ランクという概念を用いて道路交通情報板で提供されている内容の標示方法の是非、内容の是非についても検討できる基準を提示したとともに、標示の組み合わせによる効果的な情報提供の具体例についても提案した。これにより、情報提供者側の意図と運転者の理解の差を少なくすることが可能となり、より分かりやすく有効な情報提供と享受による冬期の道路交通マネジメントに資することにつながることを示した。
著者
ANDREW・C Whitake
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、日本とアメリカ、カナダ、の試験流域の科学者と共同研究した。融雪流出の特質を理解するために、融雪モデルを開発して、日本海側とアメリカ西部とカナダ西部の四つ((1)〜(4))の試験流域を比較した。(1)日本海沿岸部に位置する滝矢川試験流域(A=19.45km^2)(2)アメリカ合衆国コロラド州East St.LouisCreek試験流域(A=8.03km^2)(3)アメリカ合衆国アイダホ州Reynolds Creek試験流域(A=239km^2)(4)カナダRedfish Creek試験流域(25.8km^2)。現在の結果について:1.アメリカ合衆国コロラド州の科学者と共同で、新しい冬季降水量計を開発して、滝矢川試験流域の2箇所に(標高:70m、140m)設置をした(2005年10月)。冬季の降水量を見事に量っている(2006/11/29-2007/3/15:それぞれ1076mm及び1142mm。近くのアメダスデータ(標高:50m)は、1113mmであった。2.滝矢川試験流域で、水文学の観測を続けている。2006/2007年の冬は暖冬であった(3月上旬に、標高140mで114mmのSWE、2005/2006年のは、651mm)。3.様々な試験流域からのデータのアセンブリは完了して、融雪モデルの適用は現在進行たである。4.IUGGの学会で(ペルージア、イタリア、2007/07/9-13)ポスター提示をする予定:(a)"Dynamics and mass balance of a seasonal snow pack in the winter monsoon climate of Niigata, Japan" by Whitaker and Sugiyama (b) "The role of snow cover conditions in the hydrological regime of a mountain area" by Sueivama. Whitaker. and Havakawa.5.2007年4月、国際ジャーナルに論文が掲載される予定(改訂中):"Effect of snow cover conditionsl on the hydrological regime : case study of an experimental watershed located in the winter monsoon zone, Japan" by Sugiyama, Whitaker and Hayakawa. Journal of the American Water Resources Association.