著者
大嶋 康裕
出版者
崇城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

タッチパネル式電子黒板の機能を活かすことができる大学初年次の数学の単元について、撮影済みの400回程度の授業における板書写真から選定を行った。選定した複数のテーマで、板書と動的な数学ソフトウェアの双方を用いて学生に提示した。教員側から学生側端末への教材配信について、複数の方法を開発および構築し、授業中の実施が可能な方法について実際に授業で実践した。学生同士での成果物共有について、時系列sort表示が可能な電子掲示板への数式投稿による方法を実践した。
著者
竹村 明日香
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

当初の予定では,本年度は,(1)落語雑誌『上方はなし』のコーパスの完成,及び,(2)それらのコーパスに基づいた語彙研究を予定していたが,思いがけぬ体調不良により,いずれも達成半ばとなってしまった。しかし(1)のコーパスに関しては,研究補助員2名と大学院生2名の協力により,少しずつ完成の域に近づきつつある。特に『上方はなし』コーパスに関しては,全文検索システム『ひまわり』において本文とフリガナの検索が行えるようにテキストデータを整えた。これにより,旧字体での簡易な語彙検索が可能となったと言える。また,国立国語研究所の「通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開」プロジェクトの構成員に加えてもらったことで,形態論情報の付加と運用に関して多くの情報を得ることができた。来年度はそれらの知識を基にコーパスの完成を目指す予定である。また本コーパスを使った語彙研究に関しては,京阪方言語彙をリストアップする段階まで行うことができた。今後はこれらの語彙的意味を記述し,辞書の形式で発表できるよう準備を行う予定である。また,コーパスの仕様に関しては,上方落語家と相談を行い,土地情報や話者情報もデータに付加することを決めた。これにより演芸関係者らも使いやすいコーパスを作成することができるものと思われる。本年度の研究成果は,研究発表(2017年12月)の場において進捗情報の報告という形で発表した。発表の場ではコーパス開発者から多くのアドバイスを得ることができた。語彙研究に関しては,現在少しずつ進展中であり,来年度には数点の論文を発表できる予定である。
著者
巻 美矢紀
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究の最終年度として、理論及び実践(解釈論)にわたり、これまでの研究成果を公表した。理論に関しては、リベラリズムの公私区分に対する、フェミニズム、共同体論、共和主義、討議民主主義、ラディカル・デモクラシーなど、左右両派からの批判をふまえ、公私区分の再構成を試みた。具体的には、公私区分は公私の相互関連性を看過している、人格の分裂を強いる、ア・プリオリの私的領域は人民主権を侵奪するとの批判をふまえ、人民主権の制度化にとって公私区分が不可欠であることを明らかにするとともに、とりわけドゥオーキンの法・政治道徳理論をてがかりとして、人格の統合に配慮しつつ、公私の境界線を漸進的に変動させる公私区分論を提示した。さらに公私の相互関連性にかんがみ、「領域」の公私区分とともに、井上達夫が提唱する「理由」の公私区分を、憲法学においても導入する必要性を主張した。また実践に関しては、理論的研究成果をふまえ、私的領域の中核に位置する自己決定権について、アメリカの議論を中心にドイツの議論も参照しながら、自己の基底的信念にもとづく最終的判断権を留保して人格の統合を確保することが、自己決定権保障の趣旨であることを明らかにし、日本国憲法の解釈論に示唆を与えた。さらに、このような意味で決定的に重要な自己決定権の貫徹を阻止しうる存在として、家族という憲法上の法制度保障について考察し、両者の緊張関係を指摘しつつ、人格の根源的平等性を尊重すべきことを論じた。
著者
小松崎 俊彦
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,騒音の存在する自由音場において,高指向性スピーカを利用して局所的に騒音を低減し,無指向型スピーカでの場合のように,周辺空間に余分な音の増大を招くことなく静音化を実現する能動騒音制御システムの開発を目的とする.本年度は,前年度に検討したパラメトリックスピーカの指向性,および干渉音場の実験結果を踏まえて,それらを数値的に予測する理論モデルを構築し,さらに,必要な空間だけを局所的に静音化する能動騒音制御システムの実証実験を行った.まず,数値的検討については,パラメトリックアレイに関する理論モデルに基づき,波動方程式による数値計算モデルを構築した.生成される音圧の空間分布および騒音源との干渉音場特性について数値的に予測し,実験結果との定性的な一致を得た.本モデルによって,音波の高指向性をある程度再現可能であることが示されたが,実測値ほどの高指向性の再現は困難であった.これは計算過程を簡略化するための近似が主な要因であると考えられる。さらに,以上の結果を踏まえて,騒音源を模した無指向型スピーカから制御対象音を出力し,パラメトリックスピーカを制御音源として,目標点に設置したマイクロホンにおける音圧値を最小にするように制御音を生成可能なシステムを構築した.パラメトリックスピーカの再生音が非線形効果によるものであることを考慮して,非線形特性を同定可能なニューラルネットワークを採用した.周期的騒音の発生を想定した制御実験を行い,干渉音場計測により周辺音場への影響などについて調べた.制御音源として無指向型スピーカを用いた場合と比較して,目標点周辺への影響が少ない制御が可能であることが実験的に示された.
著者
吉田 倫子
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

助産師の経験知の中に、乳腺炎を起こす予兆として乳児が授乳を拒否する行動があり、その理由の1つには母乳の味の変化があると言われている。そこで本研究は、第1に、乳児が示す授乳拒否と乳房トラブルとの関係を明らかにすることを目的に母乳育児の経験を持つ母親に対してアンケート調査を行った。その結果、乳児の授乳拒否と乳房トラブルには関連があり、授乳拒否は乳房トラブル発症の予知として重要であることが明らかとなった。第2に、味覚センサによる母乳の味分析により、母乳の味の基本情報と、乳腺炎に関連した母乳の味の変化、乳児が示す授乳拒否に関連する母乳の味の変化を検討した。その結果、母乳の味の基本情報として、乳房トラブルのない正常な母乳において、左右の母乳の味は相関していること、母乳の味は初乳から成乳となる過程で、苦味が増加し、塩味と旨味は低下するが、成乳となった後は味の変化はみられないことが明らかとなった。乳腺炎時の母乳では、塩味や旨味の増加、酸味や苦味、渋味の低下があった。乳児が授乳拒否を示す母乳の味は、授乳拒否を示さない母乳に比べて、旨味が増加し、苦味や渋味が減少する傾向が認められた。本研究により乳腺炎に関連した母乳の味の変化が示唆された。今回の研究で乳腺炎群の8割の児に授乳を拒否する行動が観察され、児は鋭敏にこのような味の変化を認知していると推定される。
著者
高田 宗平
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度も資料の蒐集・調査・分析に注力した。①清原家以外の公家・官人層、顕密僧の漢学実態を解明するため、京都大学総合博物館所蔵勧修寺家文書、国立歴史民俗博物館所蔵の廣橋家旧蔵記録文書典籍類並びにその同館所蔵資料、国立公文書館内閣文庫所蔵資料を調査・分析し、データ集積を図った。その成果の一端を上海師範大学で開催された国際学術会議「古寫本經典的整理與研究國際學術研討会」にて発表した。②日本中世に於ける漢学の実態を解明するため、日本古代中世に於ける類書利用について調査・分析した。③日本中世に於ける『論語義疏』の受容の実態を解明するため、精力的に日本古典籍所引『論語義疏』を蒐集し、それらと旧鈔本『論語義疏』等とを比較検討した。その成果の一端は国際学術雑誌『域外漢籍研究集刊』に投稿し、掲載された。また、台北へ出張し、台北故宮博物院図書文献館にて旧鈔本『論語義疏』を調査し、国家図書館にて関連資料を蒐集した。①の成果を中国哲学、経学、敦煌本・吐魯番学、中国古典文献学、仏教文献学などを専門とする日中学者が出席した上記国際学術会議にて発表し、また同国際学術会議の「總合討論」にて、日本伝存漢籍旧鈔本・古鈔本、日本古典籍所引漢籍の特徴・意義について提起し、討議できたことは大きな成果である。席上、上海師範大学哲学与法政学院教授 石立善氏、浙江大学古籍研究所教授 許建平氏、南京師範大学文学院副教授 蘇ホン(艸+凡,peng)氏、等と情報交換し学術交流した。③に関して、同上国際学術会議にて『論語義疏』についての発表のコメンテーターを務めた。また台北故宮博物院図書文献館にて、同館の諸氏と情報交換し学術交流した。上記のように、上海の国際学術会議にて研究発表と討議し、海外に発信でき、上海と台北にて海外の研究者と情報交換し、学術交流できた。この成果は学術ネットワークの基礎を築く一歩を踏み出すことになると言える。
著者
森 新之介
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は研究成果を論文2本と研究ノート1本、訳註1本、そして学会発表1回として公表した。また、来年刊行予定の事典の項目2つを担当した。研究計画における個別研究c)「慈円『愚管抄』と虞世南『帝王略論』」としては、初年度に学会発表した内容を発展させて論文「虞世南『帝王略論』の聖人窮機論と九条兼実」を刊行した。本稿では、九条兼実が後白河院への申状に記した「聖人之道、察機応時」という文は、その数箇月前に読み合わされた虞世南『帝王略論』の聖人窮機論に由来することを論証した。また、その研究過程で得られた知見を研究ノート「慈円『愚管抄』の冥顕論と道理史観」と訳注「慈円『愚管抄』巻第七今訳浅註稿」として刊行した。前者では、「冥とは目視できない世界のことであり、仏神と権者、怨霊、邪鬼の四つが冥衆だ」という通説を批判し、『愚管抄』に17例ある「冥」は、すべて仏神の意か、道理や作為、作用の冥然として知り難いことの意だと論証した。後者の訳註は、『愚管抄』の先行訳註にあった幾つかの問題を克服し、学界に便を供するために作成した。また、a)「新儒学中心史観の形成過程」として、学会発表「江戸前期における道統論と儒家神道」を行い、初年度の学会発表と合わせて論文「江戸前期における道統と華夷、神儒――神代上古の叙述に着目して――」を刊行した。本稿では神代上古の叙述に着目し、江戸前期における華夷論や神儒論の多くは、自国意識を脅かす外来思想への自衛反応でもあったと見るべきであろうことを指摘した。
著者
塚原 伸治
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

(商店街の展開期に関する研究) おもに、昭和戦前期までの時期について、千葉県香取市と福岡県柳川市の中心市街地における商業がどのような事情にあったのかについて分析をおこなった。『柳川新報』(明治36(1903)年発刊)、『さはらタイムス』(明治41(1908)年発刊)という2つの地元紙を中心に、適宜各商家の所有する史料を参照しながら、商店街の「展開」期における具体的な経緯や、背景などを理解した。国が戦争へと向かう時期における商店街の対応や反応について理解が進んだが、反面、戦時中という事情から、公刊された資料のみで状況を理解することの困難さが浮き彫りとなった。また、戦中戦後期においては、旧藩主家が大きな変化を被り、市内の実業家として定着していった時期でもあるため、立花家の動向についてもより注視して理解していく必要があることが明らかになった。(商店街の現在に関する研究) 予定通りに長期調査を実施することができなかったが、インフォーマントが関東に来訪するタイミング等を利用して調査を進めた。フィールドの外部でおこなわれる商人たちの活動に予定外に立ち会うことになったことで、「シャッター商店街」言説の裏で必ずしもローカルな文脈にとらわれない商売が展開されていることが明らかになった。(成果公開) 前年度の研究成果である論文が、「商店街前夜―買い物空間の創出と商店主たちの連帯―」として、『江戸-明治連続する歴史(別冊環23)』(藤原書店、2018)に掲載された。
著者
大嶋 えり子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アルジェリアの植民地支配(1830-1962)と独立戦争(1954-1962)の記憶をフランスの公的機関がどのように扱っているのかを検討した。その結果、移民統合および国民的結合を促進する政策の一環として、これらの記憶を1990年代以降になって公的機関が取り上げるようになったことが明らかになった。一方で、自治体では住民の中での特定の集団を優遇する政策の一環としてアルジェリアに関わる記憶が承認されるようになったことが分かった。
著者
鈴木 大三
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2年目の平成29年度では,「新たな類似フレーム間予測」や「新たな差分信号適応変換」を実用化するための低演算かつ高効率な基盤技術となり得る手法を実現し,当該分野のトップジャーナルであるIEEE Transactions on Circuits and Systems for Video Technologyに投稿,採択された.具体的には主に以下の2点である.(1)低演算かつ高効率な多次元変換の実現類似フレーム間予測や差分信号適応変換を行うために,高性能な信号解析は不可欠である.しかしそういった多次元信号解析を高性能に行う変換は演算量が増える傾向があり,あまり現実的であるとは言えない.そこで音響符号化標準規格MP3などに用いられる修正離散コサイン変換(MDCT)に注目し,そのMDCTおよびそれに関係する修正サイン変換(MDST)とを2次元信号へ応用する際の関係性を用い,また信号端での処理を周囲画素の平均値を用いることで存在しない方向成分を抑制し,その最小タイリング処理を考慮することにより,低演算かつ高効率に処理を行える多次元変換を実現した.(2)低演算かつ高効率な2次元リフティング構造の実現回転行列の組み合わせによる2次元変換をより低演算かつ高効率で処理できるリフティング構造を新たに提案した.画像符号化標準規格JPEG XRに使用されている重複変換の実現にも応用可能であり,実際にJPEG XRに組み込み,その有用性(低演算かつ高効率で互換性も備えている)を示した.映像符号化においては高速かつ高性能な処理手法が重要であり,この構造も基盤技術として応用が期待される.
著者
阿部 知行
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

関数体上のp進係数理論に対するラングランズ型の対応を構築し,その帰結としてドリーニュの小同志予想を曲線上で解決した.これは,本研究課題の当初からの目標を達成したといえる.この対応の構築により有限体上のコホモロジー理論のp進的解釈が可能となり新しい側面を切り開いたといえる.主定理は曲線上の過収束Fアイソクリスタルと尖点的保型表現の対応であるが,証明では過収束アイソクリスタルの圏では狭いため,数論的D加群と呼ばれるより広い圏で考える必要がある.本研究では数論的D加群の基礎的研究を完成させることによりラングランズ型の対応を得るに至った.
著者
日下田 岳史
出版者
大正大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

第一に、女性の大学教育にかかる事後的収益率の計測を行った。その結果、(1)学歴の主効果が最も高いのが高卒であるということ、(2)短大卒と働き方(ライフコース)との交互作用項は統計的に有意でないということ、(3)大卒と就業継続型のライフコース(育休含む)との交互作用項は統計的に有意であるということ、(4)就業継続型のライフコース(育休含む)の大卒女性の事後的収益率は、調査への回答時点で、1.025%だと推計されるということが、それぞれ明らかとなった。第二に、以上のような女性の経験や認知が、その子供(高校1年生)の認知と希望進路に対して如何なる影響を与えているのか検討するため、実証分析を行った。その結果、(1)母親の学歴や配偶者の年収は、母親が認識する教育上の様々な便益への認知を促し、それが子供に伝播するということ、(2)教育上の様々な便益に関する母子の認知のうち、子供の希望進路に有意な影響を与えるのは、母親のそれのみであるということ、(3)子供の認知が希望進路に影響を及ぼすという構図があるとすれば、それは母親の認知が無視されることによって生じる見かけの相関であるということが、それぞれ明らかとなった。以上の成果は後述の学会発表の形で公開されるともに、博士論文に反映された。第三に、母子を対象とする追跡調査を実施した。実施時期は、子供が高校3年生の3月(すわなち2018年3月)という、卒業後の進路が概ね確定したと思われる頃合いとした。
著者
新井 彩
出版者
武庫川女子大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,運動の修正や結果の誤差修正の積極性が高まることを期待して意図的に調節した教示を与えることを,複数の運動様式を採用して行い,その効果を定量化することを目指した.本研究では,リバウンドジャンプトレーニング中にリズムをガイドラインとして教示をする方法で,接地時間やスティフネスの改善等の一定の効果が認められた.次に,歩行,ジャンプ等を用い,距離のターゲットに対し運動を調節した結果にて意図的に甘い判定と厳しい判定を返すことによる誤差修正の変化を検証した.この結果,パワー発揮特性に応じて誤差修正パターンに一定の傾向があることが認められた.
著者
山田 慎也
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

今年度は最終年度であり、現在までの調査の総括と補足調査を行った。まず、2005年9月に開催された日本宗教学会学術大会において、パネル「死者の祭祀と供養-集団性と個人性の葛藤と共存」のなかで「死者に対する慰撫と顕彰」というタイトルで発表した。当該科研費の研究成果をふまえ、岩手県中部においては当初、哀れむべき慰撫される死者たちが来世の幸福な姿として絵額にされたが、不幸な慰撫される存在の延長上にあった戦死者が、御真影等の肖像形式となり、顕彰として写真を使用するようになった。それ以降、不幸な死者だけでなく、天寿を全うした老人などの遺影も奉納されるようになり、死者が顕彰される存在として捉えられるようになったことを報告した。さらに今までの成果のうち、岩手県宮守村長泉寺の絵額・遺影調査の資料を整理し、「近代における遺影の成立と死者表象」という論考をまとめ、『国立歴史民俗博物館研究報告』132号に掲載された。ここでは絵額の成立と特徴を詳細に検討し、絵額が供養を目的としていること、夭折の死者や連続して死亡した使者など特に慰撫すべき存在であること、ある程度のパターンができていることなどが明らかになった。そうした絵額から遺影への変化は、戦死者において顕著であり、そこには顕彰のまなざしがあり、それ以降になると不幸な死者にも遺影を用いることがわかってきた。こうした遺影への変化は、表象のあり方が現世の記憶を基盤にしただけでなく、写真それ自体が死者そのものの表象として使われるようになり、人々の遺影への意味づけは多義的になっていた。こうして近代の国民国家形成の過程において、とくに戦死者の祭祀との関連から、死者の表象のあり方が大きく変わるとともに、死の意味づけを変えていったこと明らかになった。
著者
別所 俊一郎
出版者
一橋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

公的資金の限界費用(MCPF)とは,税収が1単位増加することによる経済的な実効費用の追加的な変化をさす.本研究では,「就業構造基本調査」の個票データを用いて世帯の賃金弾力性について実証分析を行い,日本のMCPFを推計した.労働供給の非補償弾力性は低い推定値(0.06~0.21)を得たが,代替効果と所得効果については,先行研究に比べても比較的大きな値となった.この数値をもとにMCPFの値の平均値として1.1程度の結果を得た.また,この結果を用いて最適な線形所得税を推計した.
著者
三柴 数
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、メッシュベース画像処理の基本モデルを構築することである。これを実現するために、初年度はメッシュを用いた処理で成果をあげている画像リサイズについて、手法を一般化したリサイズモデルを構築した。次年度は、一般化メッシュリサイズモデルをメッシュベース画像処理の基本モデルへ拡張することを試みた。その拡張に、グラフ信号処理を用いたアプローチを用いた。結果として、一部の画像処理については、メッシュベース画像処理を用いて実現可能であることを確認できた。この成果によりメッシュベース画像処理のさらなる発展が期待できる。
著者
橋本 礼子
出版者
神戸女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本語方言の推量表現形式の変化傾向を探るため、高知方言を対象に文法記述調査と自然談話のコーパス調査を行い、推量表現形式群の使用傾向を質・量の両面から分析した。前節要素の品詞に制限があった老年層のものとは異なり、若年層の推量表現形式群は接続上の制限が薄れて単純化している一方で、談話機能的に違う性質を持つものとして使い分けられる傾向にあることが確認できた。
著者
土屋 一彬
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、生物多様性保全と生態系サービス維持向上のための課題である私有緑地の管理放棄問題の解決に向けて、社会的な観点から(1)緑地管理をとりまく多様な主体の間での地域生態知識の共有・継承プロセスの解明、そして経済的な観点から(2) 緑地管理のためのPESの実効性評価の2つの具体的課題に取り組んだ。その結果、(1)保全活動年数の増加は参加者の知識や経験を増加させる一方で、保全団体活動の継続性に対する問題も同時に発生していること、(2) PESを活用した管理促進策は、財源が確保されるだけでは十分ではなく、管理継続のための主体間の間での連携体制構築が重要になることが示された。
著者
山村 崇
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東京区部の零細オフィスビル集積地域を抽出し、街区単位で周辺環境特性を分析することで、零細オフィスビル集積地域の5類型を得た。また、零細オフィスビルが持続的に利用され続ける条件として、都心からの距離やビル内部の機能性などの「物理条件」、個人ビルオーナーによる管理の質・テナントの属性・権利関係などの「事業者条件」、コストパフォーマンスを中心とした「市場条件」の3要件が重要であることを明らかにした。またいずれの地域においても、手頃な価格のオフィス供給の存在が新たな都市型サービス業流入の要因となっており、零細オフィスビルが新産業育成の苗床として機能していることを明らかにした。