著者
荒木 功平
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

土の粒度等の情報を基に土粒子間の微視的な力のつり合いに確率論的考察を加え、降水に伴う土壌侵食の評価手法を開発した。具体的には降雨量から地中浸透量を減じ、表流水量を求め、粒子接点でのつり合いから流出粒子の最大径を導き、粒径加積曲線における通過質量百分率を確率として表層体積に乗じることでリスク値として評価した。一方で国頭マージ土壌について、降雨装置を用いた土壌侵食実験、霧吹きを用いた表層せん断試験を行い、表層粘着力が高いほど抑制効果が大きいこと、表層粘着力は飽和度に依存することを示した。また、沖縄県宜野座村農地での現地実験で土砂流出への種々の適応策を検討し、植生や敷き砂の効果が大きいことを示した。
著者
植田 今日子
出版者
東北学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

東日本大震災が訪れる前から幾度にわたって津波の被災と回復を余儀なくされてきた歴史をもつ社会で、「未曾有」の規模と表現されてきた2011年の津波被害が、どのような社会的、文化的実践によって克服されようとしていたのかについて明らかにした。集落単位での分析にこだわることで、被災前からルーティンとして執り行われてきた儀礼や祭祀が被災したコミュニティに果たす役割の重要さが明らかとなった。また「津波常習地」とはいっても、人間の寿命をゆうに跨ぐ間隔で訪れる災害へ警戒を伝えることの難しさも浮き彫りとなった。この伝承において必須となっていたのは、人間の寿命を凌ぐスパンをもつ有形無形の伝承媒体の存在であった。
著者
林 潤
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,平均粒径および粒径分布の幅が噴霧火炎構造に与える影響の解明および様々な噴霧特性を持つ噴霧火炎に対して適用可能な解析手法を開発することを目的とした.実験では,粒径分布が制御された噴霧を層流対向流場に供給することで形成された噴霧火炎に対するレーザー誘起赤熱法計測を行った.その結果,同一平均粒径を持つ場合には,粒径分布の幅が広い条件においてすす一次粒子の生成領域が減少することが明らかとなった.また,単分散噴霧火炎構造の重ね合せによる多分散噴霧火炎構造の評価を行った結果,噴霧火炎特有の群火炎構造が表現できる可能性は示唆されたものの,小粒径の燃料液滴による燃焼を過剰に見積もる傾向が示された.
著者
細野 高史
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

半導体デバイスをウェーハから切り出す「ダイシング」に応用することを目標に,レーザ溝加工を検討した.シリコンに形成した溝を評価したところ,腐食液中で加工した場合,空気中や水中での場合より熱により変質した層が少なかった.また低繰り返し・高ピークパワーのレーザと高繰り返し・低ピークパワーのレーザを比較した結果,後者の方が溝幅を小さくできたものの,繰り返し数が大き過ぎると溝周囲が過剰にエッチングされた.このような過剰エッチングは,腐食液の循環により抑制できた.さらに,シリコンばかりでなく4H-SiCについて,強酸化剤を含む溶液中で加工することで効率的に溝加工できることが分かった.
著者
岡崎 亮太
出版者
福岡教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ボレル固定イデアル I の「Eliahou-Kervaire 自由分解」,「先行研究で得られた自由分解」の2つの分解について,I がコーエン=マコーレーならば,両者には閉球のセル分割が付随することを柳川浩二氏との共同研究で示した.両自由分解は離散モース理論を利用して構成することができ,本成果は,同理論で失われた幾何的情報を復元したと解釈できる.また,多項式環上の多重次数付き加群 M について,「M の自由分解の構成」,「M の根基の定義,及び,既存の結果の拡張(V. Ene 氏と共同)」,「アフィン有向マトロイドイデアルのコーエン=マコーレー性の特徴付け(柳川浩二氏との共同)」等を行った.
著者
伊藤 禎宣
出版者
東京農工大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、ユビキタス情報環境における外部観測可能な情報行動から、人々が欲する情報を推測する技術の開発である。この技術開発を目標に、項目1として、人の情報探索対象判別技術の確立、項目2として、情報探索対象判別技術を実装した、ユビキタス環境において実際的な情報行動判別センサデバイスの開発を目指した。これらの成果は、論文(Ito2006, 伊藤2007)等で発表した。
著者
吉田 寛
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、震災からの復興において求められる復興ガバナンスとは、その当事者たちの「思い出」を言語や表現、活動を通じて紡いでいく過程であることを明らかにした。24年~25年にかけての、東日本大震災被災地である山元町復興への参与的な活動において、復興における被災コミュニティの再結合、合意形成、計画立案過程において「思い出」を担った言語の必要性が示された。26年には、この知見に基づいて、ガバナンス理論の権威であるUCバークレー校のBevir教授のもとで理論的研究を進め、ガバナンス・ストーリーの解釈・言語化が、ガバナンスの成否を握るファクターであることを明らかにした。
著者
岡田 和馬
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

リンゴ品種‘McIntosh’の枝変わりとして発見された‘Wijcik’は,節間が短く,側枝がほとんど発生しないため,細長い円柱状の樹形に生長する.この性質はカラムナー性と呼ばれ,単一の優性遺伝子Coに制御される.本研究では,高精度マッピングによりCo遺伝子と完全連鎖する3つのDNAマーカー(Mdo.chr10.12, 10.13, 10.14)を見出し,Mdo.chr10.12と10.14が信頼性の高いカラムナー性選抜マーカーとして利用できることを示した.また,Co遺伝子座乗領域をDNAマーカー11-1と14-3の間に絞り込み,Co遺伝子座乗領域に挿入変異が生じていることを明らかにした.
著者
服部 峻
出版者
室蘭工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

実世界でスマート空間を実現するには、状況を監視し続け、サービスや構造を最適化する必要がある。しかし、従来の物理的なリアルセンサだけでは、ある場所(空間)ある時間に起きた現象に関して、人々がどのように認識しているか、評判や印象までセンスするのは困難である。そこで本研究では、様々な現象に関して大量のウェブ文書から時空間依存データを抽出するウェブセンサ技術を開発し、その可能性や信頼性を多角的に検証した。
著者
浅野 雅樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

主に大学の授業で使用する新しいタイプの語彙学習を中心とした中級中国語テキストの作成に向けた研究を行った。従来の本文(課文)や文法項目中心のテキストから、語レベルの特徴や難易度に応じた語彙の導入や、日本語の漢語語彙との関係性を利用した語彙の提示方法について考察を行った。また「語彙論体系知識」を教育内容に含めることを提起した。「語彙論体系知識」の中で、いくつかある項目のどれを取り入れるのかという問題に対して、学習者に対するアンケート調査も何度か行い、その結果に依拠して、大筋の結論を得ることができた。さらにテキストの試用版を作成し、その一部を授業等の教育現場で使用することができた。
著者
中俣 尚己
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

中国語話者が日本語を学ぶ際に必要な文法を効率よく記述するために、中国語話者を対象に習得研究を行った。その際に、従来の日本語学での分類を利用するのではなく、あくまでも中国語との対照を意識した上で日本語の分類を行う。その新しい分類で、難易度に差異が存在することを示すことで、従来の日本語学の記述に従っているだけでは、必ずしも中国語話者のために最適な教材は作れないことを実証した。具体的には、累加を表す「も」、数量表現、漢語サ変動詞の自他というテーマを扱った。
著者
鈴木 秀典
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

Monkeyを用いた脊髄損傷モデル作成のための、全身麻酔や術後管理手法、モデル作成方法など多くの基礎的な知見を得た。またAllodyniaについて、Rat&Mouseを用いて、適切な評価スケールを作成し、客観的なスケールを用いて神経障害性疼痛を示すことに成功した。CFを用いた移植治療では、急性期においてはげっ歯類同様に良好な軸索の再生が確認された。短期評価のため、下肢運動機能の回復については未確認なデータであり、今後の検討課題である。
著者
新城 道彦
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の課題は、韓国併合で王公族を創設したことによって天皇制が変容していった過程を解明することである。そこで、①旧韓国皇室たる王公族をどのように日本に編入したのか、②王公族の法整備と歴史書の編纂はどのようになされたのか、を中心に調査を進めた。調査の結果、以下の点が明らかとなった。①韓国併合に際して東アジアにおける国際関係の伝統、すなわち冊封体制は否定され、李王は天皇に対して臣下の礼をとらなかった。②王公族が離婚・離縁した場合の戸籍の移動に関して、皇族の前例に準じた法律を制定して解決したため、共通法という帝国法制の基盤が破綻した。
著者
澤田 敏樹
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

繊維状ウイルスからなる機能性ハイドロゲル構築を目的とし、繊維状ウイルスの一種であるM13バクテリオファージ(ファージ)の末端と金ナノ粒子が特異的に相互作用するよう分子設計して用いた。適切な濃度比で混合すると、両者は自己組織的にハイドロゲル化した。その際、ファージは三次元的に配向しながら集合化して液晶化し、また金ナノ粒子はフラクタル様のネットワーク構造を構築し、構成要素それぞれの構造が制御されたゲルとなることがわかった。両者の間の特異的な相互作用を制御したゲルを調製することで、ゲルの機械的強度が分子間相互作用に支配されることもわかった。また、自己修復能や大腸菌応答性を示すことも見出した。
著者
土屋 晴文 榎戸 輝揚 楳本 大悟
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本海側の冬の雷や雷雲からガンマ線が観測されている。Gamma-Ray Observations of Winter Thunderclouds (GROWTH)実験では、2006年より柏崎刈羽原子力発電所の構内に、放射線検出器と、光や電場を測定する装置を備えてガンマ線の観測を続けており、雷や雷雲は電子を10 MeV以上に加速できることを明かした。本研究では、BGOシンチレータで構成された検出器を新たに導入して、ガンマ線事象の検出数を向上させた。加えて、雷雲から1分にわたり511 keVの陽電子の対消滅線が放射されていることを明かし、雷雲が大量の陽電子を生成しているかもしれないことを示した。
著者
吉田 真樹
出版者
静岡県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では倫理学・日本倫理思想史の観点から「死者」について、古代では『古事記』が死後の霊魂を極力叙述せず、『日本霊異記』が仏教教義に反して死後の霊魂を前提としたこと、中世では『源氏物語』が生霊と死霊とを恋において連続的に把握し、謡曲が成仏を望む死霊と望まない死霊を設定したこと、近世では平田篤胤が庶民仏教の死後霊魂観に対抗して神道に死後の霊魂を導入し、近代の排仏的柳田國男と親仏的折口信夫の霊魂論を準備したことを明らかにした。
著者
鳴坂 真理
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

作物の病気の発生を防ぐことは農業にとって最も重要な課題である。しかし、植物の病気には病原体認識、その後のシグナル伝達、抗菌性物質の産生など多くの遺伝子が関与するため、少数の遺伝子を用いた遺伝子発現解析では病害応答を精緻に理解することは困難である。そこで、一度に千から数万の遺伝子の動きを解析できるマイクロアレイを用いて、「カスタムアレイ設計の方法論の確立」および「遺伝子診断法の確立」を試みた。
著者
山本 薫子
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

バンクーバーDTES地区および横浜寿町地区はともにかつて日雇い労働者の街だった地域だが、生活困窮者、ホームレスの割合が増し、生活保護受給者数も大幅に増加した(「福祉化」)。一方で、公的支援、民間部門による支援活動も活発に展開されてきた。カナダでは障がい等を抱えた生活困窮者への福祉支援としてハウジングファースト施策が導入されたが、そのことは都市下層地域であるDTES地区に外部からさらに多くの生活困窮者を集中させる結果となった。また、横浜市においても市内他地域から生活保護受給を理由として寿町地区へ移住する者が増えている。これらの人々の中には衣食住は満たされていても社会的に孤立している者も多い。
著者
杉木 明子
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は多くの難民が第一次庇護国で長期難民状態となっている状況をふまえ、特に長期的難民が集中しているアフリカ難民受け入れ国に対する支援方法、及び難民保護の「負担分担」に対する国際協力の可能性を多角的に検討した。アフリカに居住する難民および難民受け入れ国のニーズと、ドナー諸国の動向という2つの側面から分析することにより、現在のアフリカにおける難民保護レジームの限界を明らかにし、今後の課題を提示した。
著者
鈴木 康夫
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は,組立・解体が容易なリサイクル・リユース橋梁の部材連結構造を具現化するために,これまでに研究代表者らが提案してきた高力ボルト引張接合と摩擦接合を併用した新しい主桁連結構造の高強度化およびその設計法の確立を目的としたものである.フランジ連結部の構造詳細の違いが継手強度および変形性状に与える影響を検討した結果,フランジ連結部の補剛リブを主桁フランジ平行に取り付けた構造よりも垂直に取り付けた構造の方が,最大強度および最大強度字の変形量が増大し,より延性的な破壊モードとなることなどを明らかにした.さらに,従来の強度算定法よりも精度の良い曲げ強度算定法を提案した.