著者
金子 善博
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

日本の自殺高率地域において、自殺の社会的影響の拡がりの評価可能性を検討するために、地域の保健福祉関係者に対する質問紙調査を行った。回答者の自殺予防への関心は低くなかったが、近隣の自殺者の存在は対策の費用と関連しなかった。社会コストに関する要因は明確ではなかった。自殺の心理社会学的な外部不経済の評価は明確にならなかった。自殺予防の促進に際して地域住民に参画を求めるためには、自殺にフォーカスする対策だけでなくより幅広い学際的な戦略を検討する必要があるだろう。
著者
渡邊 亜美
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では当研究室で樹立したヒトiPS細胞からの膵島形成培養系をベースとし、ヒト膵島前駆細胞から膵島様構造物形成に至るまでのメカニズムを解析すること、および得られた知見を応用して生体外で大量に膵島を作製する系を確立することを目的に研究を行なった。その結果、分化誘導系において内分泌前駆細胞は, 自己凝集することで膵島様構造を形成することを見出した。この結果をもとに膵島形成培養系を改良したところ, 膵島形成効率を向上させることに成功した
著者
吉野 由起
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本課題はロマン派期文芸における妖精表象の実態をスコットおよびホッグの作品群に焦点をあて検証した。両者による土着の口承伝統を巡る論考や、詩や小説での妖精の描出例は数多く多岐に亘り、一見懐古的な様相の背後に隠された先鋭的な近代性、独創性と実験性に溢れ、同時代英国文壇で稀有な存在感を放ったと考えられる。これらの例の検証の結果、両者の妖精譚は同時代現実世界に向けた眼差しの体現であり、啓蒙主義の開花とロマン派期文芸の独特の展開をみたスコットランドにおける両潮流のせめぎ合いの顕現であり、口承伝統と古典叙事詩の借用を折衷した神話創造の試みで、両者の文学性に密接に関連するという仮説の裏付けを得た。
著者
倉橋 奨
出版者
愛知工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

南海トラフ巨大地震にも対応した緊急地震速報の高度化のため、震源に近い観測点のP波震動からより震源から遠い観測点のS波震動を予測する方法を提案し、適用性の検証を行った。具体的には、波線理論を基とした、P波震動とS波震動の比から計算される伝達関数を計算し、観測記録のP波震動と重畳積分することにより、S波震動を推定する方法である。また、リアルタイムで計算できるよう、伝達関数を時刻歴にするIIRフィルターも構築した。M5クラスの地震動によりその適用性は確認できたが、南海トラフ巨大地震に対しては、P波を含めたシミュレーション波形が得られなかったため、検証できなかった。
著者
横大道 聡
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、裁判所「以外」の政治部門の憲法解釈の現状把握とそのあり方について、比較憲法的な見地から検討を行うものである。本研究により、(1)アメリカ大統領の憲法解釈の表明方法として、法案に署名する際に声明を出すという「署名声明(signing statements)」の近年の利用例とその含意、(2)アメリカにおける執行府の憲法解釈補佐機関である司法省法律顧問局(Office of Legal Counsel)の憲法解釈の実態把握とそのあり方、(3)日本における執行府の憲法解釈補佐機関である内閣法制局の憲法解釈のあり方、(4)国会論議や答弁書で示された日本の政府の憲法解釈の論理構造、を明らかにした。また並行して、比較の見地から政治部門のみならず、裁判所の憲法解釈についての研究を行い、(5)近年の憲法判例の動向の総合的調査、(6)違憲審査基準の使われ方についての研究も行った。
著者
兼清 健志 井出 千束 中野 法彦 鈴木 義久
出版者
藍野大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

脊髄損傷モデルラットを用いて、骨髄間質細胞の培養上清の投与によって神経が再生する際、神経細胞に対する直接な効果だけでなく、シュワン細胞の浸潤や損傷部周辺のアストロサイトが活性化することを明らかにした。培養アストロサイトを用いて in vitro での骨髄間質細胞の影響を調べたところ、骨髄間質細胞の培養上清の添加によってアストロサイトによる炎症性ケモカインの産生が抑えられていた。また、脳脊髄液を産生し中枢神経系の維持に重要であるグリア細胞の一つである脈絡叢上皮細胞も骨髄間質細胞によって一部の栄養因子の産生が増加した。さらに、この脈絡叢上皮細胞の培養上清を脳脊髄液経由で投与し、神経再生を確認した。
著者
近藤 俊明
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

新たに開発した花粉一粒の直接遺伝解析を用いて、個々の訪花昆虫に付着した花粉一粒ごとの遺伝的組成を評価することで、東南アジア熱帯雨林の一斉開花現象における送粉システムの解明を試みた。その結果、東南アジアの熱帯雨林では、アザミウマを中心とした食物連鎖網に基盤をなす他殖種子の生産によって森林の更新が行われていることが明らかとなった。
著者
藤田 慎也
出版者
群馬工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、グラフ理論の連結度の分野における頂点分割問題に関するThomassen予想の解決に向け、禁止部分グラフの研究視点からその部分的解決に取り組んだ。その結果、当該分野において有用な結果を多数得ることが出来た。
著者
小島 泰友
出版者
東京農業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2007-08 年の食料危機における EU や NAFTA 加盟国の主要農産物の需給や貿易動向をみる限り、地域経済統合や自由貿易協定は、地域内の食料安全保障を確保する意味で、加盟国間では有効に機能していたと考えられる。しかし、地域経済統合や自由貿易協定は、EU のトウモロコシの域外輸入の急増や小麦の域外輸出の減少、米国のメキシコへのトウモロコシ輸出の増加とそれに伴うアフリカへの同輸出の減少など、食料危機において域外の農産物輸入国へ負の影響を与える可能性がある。
著者
菊地 重仁 仲田 公輔
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、カロリング期の文書、とりわけ命令書を含む書簡形式の文書を政治的コミュニケーションという観点から分析し、同文書群をもって形成・維持される政治的ネットワークを通じ、政治的秩序が創出・維持ないし再生されていく様態を明らかにすることを目的とした。これらの文書の生成プロセス、文書類型、使用文脈や機能、書式・物的形態、自称と他称に関する用語法などを分析し、発給者・送付者と受取人との関係性の構築あるいは強化、さらにはこうした1対1の関係では完結しない、例えば読み上げられた文書内容を耳にする人々をも含めたより広範なコミュニケーションの可能性をも指摘した。
著者
遠藤 愛
出版者
筑波学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の結果から,国内トップレベルのジュニア選手、国内,および世界トップレベルのプロ選手らは,フォアハンドにおいて,平均70%以上の割台でオープンスタンスを使用していることが明らかになった.また,後ろ脚に体重をため,その脚を軸として体幹を捻る動作を取り入れたオープンスタンスを習得することによって,パフォーマンス(ショットの正確性,ボールスピード)の向上に寄与する可能性が示された.
著者
加藤 貴昭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度(平成18年度)の研究目的は、各種スポーツ競技のライブ状況下における競技者の眼球運動測定データを蓄積すると共に、新たなデータ計測および解析方法について検討し、さらに熟練選手に共通する視覚探索パターンの解明を試みることである。本年度は野球競技における走者の盗塁時の測定、スキー競技におけるスキーヤーのスラローム時の測定、アイススケート競技におけるコーナリング、スピン時の測定を重点的に行った。特に昨年度に引き続き行った雪上でのアルペンスキー競技の実験においては、2台のハイビジョンカメラレコーダを用いて身体運動の映像を撮影し、眼球運動を測定するための専用ハードシェルリュックを作成した。身体運動計測、眼球運動計測共にキャリブレーション方法や撮影機器の準備には工夫を凝らし、これまで以上に詳細なデータを計測することが可能となった。このスキー実験の手法を基に、スケート競技においては実際の氷上のリンク上にて身体運動と眼球運動を計測し、スピードスケート競技者とショートトラックの競技者のコーナリング時における視線、および身体動作の制御方法について考察した。また、各実験において得られた知見をもとに、各種スポーツ競技場面における熟練選手の視覚探索活動を総括し、熟練選手共通の視覚探索パターンについて考察した。特に時間的な変化を伴う情報や空間の位置関係を把握するのに優れた特性を持つ視覚機能である周辺視システムを活用しているとの仮説に対する検証を行った。周辺視システムを活川するためのストラテジーとして視覚対象の中心付近に視支点(visual pivot)を定め、その結果として身体運動の安定、制御を巧みに行っていることが示唆された。このような眼球運動と身体運動のコーディネーションによって、熟練選手が持つスポーツ競技特有の視覚情報獲得スキルが成り立つことが考察できた。
著者
佐藤 哲郎
出版者
松本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は社協ワーカーが地域福祉活動を推進していくために、どのような技術を活用し地域へ働きかけているのかそのプロセスを明らかにすることである。研究方法は社会福祉士有資格者で実務経験が10年以上の社協ワーカー14名を対象に半構造化インタビューを行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにおいて分析を行った。分析の結果2つのコア・カテゴリー、8つのサブ・カテゴリー、24の概念からなるプロセスを生成した。次に、実践に関する55項目を抽出した質問使調査を行った。その結果、6因子・30項目からなる評価尺度を作成した。
著者
星合 泰治
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々はモード解析を用いて、金属床上顎顎義歯にはチタン床が最適であると報告した。しかし、まだ異なる支台装置が設置された金属床上顎顎義歯を装着した上顎欠損患者における上顎歯列の振動特性の比較検討は十分に行われていない。本研究は、間接支台装置の設計に着目し、金属床上顎顎義歯の最適設計を明らかにすることを目的とした。研究の結果、モード解析の観点から上顎前歯に設置した間接支台装置は歯列に加わった振動を止めやすくして変位量の大きさも小さく抑えることから、間接支台装置は金属床上顎顎義歯において重要な設計である可能性が高いことが示唆された。今後は症例数を増やし、さらなる検討を行う必要がある。
著者
熊木 俊朗
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、昨年度から引き続きモヨロ貝塚資料の調査と分析を行った。調査対象はモヨロ貝塚調査団が過去に調査した資料である。詳細は以下のとおりである。1.東京大学文学部所蔵資料の調査東京大学文学部には、モヨロ貝塚調査団が昭和22・23年に発掘調査を行った際に出土した考古資料が収蔵されている。それらの資料のうち、特に土器について実見・図化・写真撮影を行った。これらの一部についてはすでに図版の浄書や各種属性の統計解析等を行っている。2.昨年度調査データの分析昨年度作成したデータのうち、ガラス乾板のデジタル画像データについては整理と内容の分析をほぼ終了し、CD-Rにデータベース化した。また、函館市立博物館・北海道立北方民族博物館の収蔵資料のデータについても、土器図版の浄書や各種属性の統計解析等のデータ分析を行い、考古学的解釈のための基礎データを整えた。3.画像資料の解析モヨロ貝塚の地形や遺構に関する過去の画像データについて、(株)タナカコンサルタントに画像解析の協力を依頼し、研究代表者立ち会いのもと画像から平面図データを作成した。これらの平面図は、遺跡・遺構の立地や分布を分析するための基礎データとして活用が期待される。
著者
相葉 佳洋
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本人PBCの新規疾患感受性遺伝子として同定されたTL1Aは、PBC患者の血中・肝局所において顕著に増加していた。血中TL1Aは、治療薬であるウルソデオキシコール酸によりPBC非進行群において有意に減少するが、PBC進行群では持続高値であることが明らかとなった。これらの結果は、TL1AがPBC、特に進行群患者において新たな治療標的である可能性を示唆する。また、in vitroとin vivoの解析から、単球、マクロファージ、胆管上皮細胞から産生されるTL1Aは直接的に胆管障害に関与するよりも、Tリンパ球を介しPBCの病態形成に関与する可能性が示唆された。
著者
高橋 仁大
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は.テニスの電子スコアブックを用いた新しいパフォーマンス評価法の開発を目的とした.2007年度は各種データとゲーム結果との関連を検討した.その結果,プレーの高速化や時間的要素がプレーヤー個人の特徴を示していることを明らかにした.2008年度はスコアブックの機能追加として時間的要素と最終ショットの頻度を出力するプログラムを開発した.これにより,試合修了後即座にパフォーマンスの結果を出力することが可能となった.
著者
串田 淳一
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Differential Evolution (DE)は進化計算に分類される,個体群による確率的な多点探索手法であり,実数値関数を対象とした最適化手法である.本研究では,DEの組合せ最適化への適用を目的とし,決定変数が離散値となる問題を扱うためのDEのアルゴリズムを提案する.また,並列コンピューティングに適する進化モデルである島モデルを拡張し,効率的に複数の個体群を進化させるための超多点DEを開発する.勤務表作成問題のベンチマーク問題を用いた数値実験を通して,開発手法が多目的・多重制約性を有するにおいて短時間で実用的な勤務表を作成できることを示す.
著者
石部 尚登
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ベルギーにおける「方言」の復権運動には、復権の目標の違いに起因する標準語の形態に対する立場の違いが存在するものの、教育への導入の目標、ICTを利用した活動、さらには公用語政策の影響により、他の地域語・少数言語の復権と同様に「標準語」の必要性が立場の違いを超えて共有されていることを明らかにした。ただし、そこで志向される「標準語」とは、他の地域語・少数言語の復権の場合とは異なり、複数の中心を持つことが可能な、より柔軟かつ寛容な形態であることを示した。
著者
高田 卓
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

超流動ヒートパイプを応用した断熱消磁冷凍機(ADR)の開発の為、超流動ヒートパイプの基礎研究から実機検証までを行った。超流動ヒートパイプにおける充填物の影響、臨界熱流量の差異、入熱方法の影響、重力方向依存性等について調べた。また、本方式を採用した ADR 用の常磁性塩ユニットを製作し、従来型との比較を行った。ここで超流動ヒートパイプは従来型に比べ 2 桁以上高い実効的熱伝導率を得、その有効性を示した。今後、さらに精度の高い臨界熱流量の予測を可能にする詳細な伝熱機構についての調査、ADR の冷凍サイクルの試験が課題として残った。