著者
大西 正二 小菅 英恵 熊谷 恵子
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.34-45, 2022 (Released:2022-02-28)
参考文献数
26

漢字書字が困難な学習障害児61名において,見本の漢字を視写(見本を見て書き写す)するまでの6つの工程(①注視点の移行,②形の記憶,③画要素,④筆順,⑤書字運動,⑥視写結果)におけるつまずきの傾向について,10検査(13項目)の結果から階層的クラスター分析を行い,4群に分けられた。4群の集団的特徴を把握するため,Kruskal-Wallis検定を行った結果,第1クラスターは①注視点の移行,②形の記憶,⑤書字運動,第2クラスターは①注視点の移行,③画要素,第3クラスターは②形の記憶,③画要素,④筆順,⑤書字運動,第4クラスターは①注視点の移行の工程に問題がみられる群であることが示唆された。漢字書字が困難な児童の苦手な工程を補い,それぞれの特徴に合わせた学習支援が重要である。しかし,通常学級に存在することが多い学習障害児に対する視写の工程の詳細な評価が困難な学校現場においては,視写の工程のすべてを補う学習支援が必要だろう。
著者
田中 駿 牛山 道雄 郷間 英世 石倉 健二
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.90-97, 2023 (Released:2023-05-26)
参考文献数
12

本研究は,発達がアンバランスな幼児6名と定型発達児32名に対して,年少から年長にかけて身体模倣課題を実施し,身体模倣の獲得過程の違いを明らかにすることを目的とした。身体模倣の正中線交差なしは,アンバランスな児と定型発達児で有意な差は認められなかったが,正中線交差あり,および手指の模倣は,年中および年長で有意な差が認められた。また,身体模倣の発達については,アンバランスな児は,正中線交差なし,および正中線交差ありは,年少から年長にかけて伸びがあり,定型発達児は,年少から年中にかけて伸びがあると考えられた。本研究において,アンバランスな児の対象人数は少なかったが,アンバランスな児と定型発達児は共に年齢による発達がみられるものの,正中線交差ありや手指の複雑な模倣は,年中から差が生じ始めると考えられた。また,個別の検討により,アンバランスな児の模倣の発達には3つのパターンがあることが推測された。
著者
岡村 章司 藤田 継道
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.152-164, 2021 (Released:2021-12-23)
参考文献数
24

本研究では,保護者と担任を対象に,場面緘黙と不登校を呈した自閉スペクトラム症児に対する協働型行動コンサルテーション(Conjoint behavioral consultation : 以下,CBC)を実施した。コンサルタントは直接支援を行わず,保護者と学級担任が家庭・学校場面において,自閉スペクトラム症の特性に応じた,不登校と緘黙症状に対する支援を行った。その結果,対象児は毎日登校し,学校での活動への参加行動の増加およびコミュニケーション手段や内容の拡大がみられた。保護者と学級担任は支援を受け入れやすいと評価し,両者のコミュニケーションの増加が確認された。保護者と教師の協働を促すCBCは,学校現場で用いられるモデルになりえると考えられる。しかしながら,学校での対象児の発話はみられず,支援の効果に関する項目で学級担任の評価は低く,母親も他の項目に比べて一部低かった。対象児の変化をもたらした要因および今後の支援,CBCの効果的な条件について考察した。
著者
島田 直子
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.358-367, 2016 (Released:2021-03-23)
参考文献数
38
被引用文献数
1

近年,外国につながる子どもたちが増加し,その子どもたちが抱える発達障害が報告されている。文化間を移動する子どもたちのアセスメントで知能検査を利用する場合,文化や言語の違いから,特別な方法が必要であるが,その方法について総括的にまとめられているものは国内ではみられない。そこで本稿では,米国の文献から,多文化心理教育アセスメントにおける,知能検査の9つの利用方法についてまとめる:1.滞在国の検査を利用する,2.滞在国の検査を適宜手順変更して利用する,3.通訳者を介して検査を利用する,4.母国の検査を利用する,5.非言語検査を利用する,6.文化差を考慮した検査を利用する,7.バイリンガルアセスメントを利用する,8.バイリンガルの多面的アセスメント:MAMBIモデルを利用する,9.文化と言語の解釈表(C-LIM)を利用する。さらに,日本において多文化心理教育アセスメントを行う際の知能検査の利用法の可能性について論じる。
著者
大沼 泰枝
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.77-89, 2023 (Released:2023-05-26)
参考文献数
20

障害学生支援部署において,発達障害のある学生を対象に防災教育・防災訓練の教材を作成し,個別に実施した成果について検討した。本防災教育・防災訓練は,大学にいる時間帯に災害が発生した場合に,学生が周囲の支援者にスムーズに自分の情報を提供し,必要な支援を受けられるようにすることを目的とした教材と大学周辺の防災情報や大学で地震に遭遇した場合の対処について学び,実際に避難訓練を実施するための教材から構成された。発達障害のある学生1名を対象に防災教育・防災訓練を行った結果,地震に対する対処行動の知識を習得することができ,地震発生時の対処行動の自己効力感を高めることができた。しかしながら,対象者の地震に対する不安を低減することはできなかった。このことから,対象者の特性を考慮し,不安の軽減を目的としたメニューを入れる等,防災教育・防災訓練の内容を個別に検討する必要性が示された。
著者
山本 ゆう 安藤 瑞穂 熊谷 恵子
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.135-155, 2022-05-25 (Released:2022-07-28)
参考文献数
25

子どもは加減算を実行するとき,指を使ったり数えたりする方略から次第に答えを記憶から引き出す方略へと変化していく。そして,より速い反応時間で計算が実行できるように自動化する。しかし,どの学年段階で自動化が完成するのかは明らかになっていない。また,加減算の難易度についてもいまだ研究は少ない。本研究は,通常学級に在籍する1年生から4年生の児童に対して加減算の課題を実施し,反応と反応時間を測定した。そして,学年変化と,式別の難易度を検討した。また,計算困難のある子どもの特徴を明らかにすることを目的とした。結果,2年生以上において加減算の計算の自動化は十分でないことが明らかとなった。また,式別の難易度が明らかとなり,有効な指導法や系統的な指導への示唆が得られた。さらに,計算困難がある子どもの特徴が明らかとなり,早期支援の重要性が見出された。
著者
井上 知洋
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.503-510, 2016 (Released:2021-03-23)
参考文献数
48

本稿では,発達性ディスレクシアの認知機能に関する研究と,そこで展開されてきた理論を概観する。前半では,ディスレクシアの認知研究を牽引してきた単一原因理論(single-cause theories)について述べる。これらの理論では,認知または感覚・知覚のある特定の側面の障害が読みの困難の原因として仮定されていたが,個人間の多様性を説明できないという限界もあった。後半では,近年広く認められるようになってきた,発達障害の多重障害モデル(multiple deficit models)を紹介する。このモデルでは,子どもの発達はリスク因子と保護的因子の複雑な相互作用のサイクルとして捉えられている。以上のような研究の展開を踏まえ,今後の研究における検討課題(測定の問題と因果関係の問題)を提案する。最後に,発達障害の多重障害モデルから得られるディスレクシアの教育実践への示唆について議論する。
著者
玉木 宗久 海津 亜希子 榎本 容子 伊藤 由美 廣島 慎一
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.17-33, 2022 (Released:2022-02-28)
参考文献数
27

本稿では発達障害のある児童生徒を対象とした通級(発達障害通級)における自立活動に相当する指導の主成分を検討することを目的とした。47都道府県の発達障害通級の担当教員に調査を行い,その中で児童生徒1名の実際の指導と自立活動の内容27項目との関連性を評定してもらった。最終的に小学校874名,中学校564名,高等学校147名の発達障害のある児童生徒のサンプルを得た。主成分分析の結果5成分が抽出され,各成分への負荷が高い項目からその意味を検討した。成分1–5はそれぞれ「指導全体」「社会的コミュニケーションの指導」「生活基盤の指導」「自己効力感の指導」「言語コミュニケーション・学習習慣の指導」と名付けた。各成分得点は,児童生徒の学校種と障害種の要因の影響を受けていることが示唆された。これらの結果は,発達障害通級での自立活動に相当する指導の内容や専門性をより良く理解するために役立つと考えられる。
著者
内田 佳那 丹治 敬之
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.73-84, 2021 (Released:2021-10-08)
参考文献数
21

本研究は,ICTの音声読み上げ機能の活用が,学習障害児の文章読解成績と自律的な家庭学習にもたらす効果を検証した。参加児は,特別支援学級に在籍し,自律的に家庭学習を行うことが難しい小学3年生の学習障害児であった。反転(ABAB)デザインを用いて,紙教材による条件(ベースライン期)と,教材作成アプリケーション「OMELET」を用いた音声読み上げ支援条件(ICT介入期)の間で,参加児の読解成績と保護者に代読を依頼する頻度を比較した。その結果,ICT介入期において,参加児の読解成績の向上と,保護者に代読を依頼する頻度の減少が認められた。さらに,参加児の行動観察からは,ICT機器の使用を喜ぶ姿や,音声読み上げ機能の利点を発言する姿がみられた。本研究の結果から,音声読み上げ機能の活用が学習障害児の読解成績の向上と自律的な家庭学習を促す効果が示された。
著者
柳井 康子
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.321-333, 2021 (Released:2022-01-27)
参考文献数
31

本研究では幼少期に高機能発達障害と診断された子どもを持つ母親19名に誕生から就労までの育児を振り返る半構造化面接を行い,母親にとっての「普通」という言葉の意味の変容過程について調査した。分析の結果,①「普通」ではないかもしれない不安,②「普通」を巡る傷つき,③「普通」へのこだわり,④「普通」の問い直し,⑤わが子なりの「普通」で十分,というプロセスが明らかになり,母親にとって「普通」という言葉は,「人並み」という意味から「もっとできて当然」,そして「他者の上でも下でもない」という意味へと変容してはいるが,青年期に至るまでわが子が「普通」であるか否かで葛藤し続けていることが示された。また母親らは周囲の人々の「普通」を強要しない態度を契機に「普通」へのこだわりから解放されていたことから,「普通」か否かを決めるのは母親自身であり周囲が押し付けるものではないことを支援者側が再認識する重要性が示唆された。
著者
白石 純子 草野 佑介 杉村 喜美子 加藤 寿宏
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.45-57, 2021 (Released:2021-10-08)
参考文献数
15

京都府作業療法士会特別支援教育OTチームは,平成19年より特別支援教育における作業療法の有用性を検証してきた。今回,中学生3名に対し約半年間で3回ずつの訪問支援を行い,中学校における作業療法による介入の成果と特性について検討した。ASEBAによる行動チェックリストや授業参観・個別面談に加え,それぞれの主訴に応じた個別アセスメントにより,主訴の背景の解釈や,日常生活および学校生活で実施可能な支援計画を本人・保護者・教員に提案した。その結果,3名全員に学校生活上の改善を認めた。これらの背景には,作業療法の専門性を活かした個人,作業,環境の相互関係を踏まえた包括的アセスメントとそれに基づく課題の調整や学校・家庭の環境調整が有効であったと考える。今後も中学校と作業療法との連携の有効性について検証し,発信していくことが必要であると考えられる。
著者
村瀬 忍 池谷 幸子 林田 宏一 池谷 尚剛
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.123-131, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
25

日常的にまぶしさを感じていたASDのある男子中学生1名に遮光眼鏡を装用してもらい,効果を検討した。まず,遮光眼鏡の文字の読みへの効果をMNREAD-Jを用いて検討したところ,遮光眼鏡を装用することですぐに文字が読みやすくなるという結果は得られなかった。次に,遮光眼鏡を1カ月間自由に使ってもらい,行動や心理の変化をインタビュー調査とQOL評価とで検討した。インタビュー調査から,遮光眼鏡の効果は,まぶしさが減ったこと,取り組みの意欲が高まったこと,見えにくさの理解が高まったことであるとわかった。QOL評価の結果からは,遮光眼鏡使用後に自尊感情が高まった可能性が示された。これらの結果から,遮光眼鏡は即時的に読み能力は向上しなくても,まぶしさを感じているASDのある子どもへの,取り組み意欲や自己理解を促す支援として,有効な方法であることが示唆された。
著者
吉村 拓馬 大西 紀子 惠良 美津子 松田 裕之 小橋川 晶子 広瀬 宏之 大六 一志
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.144-153, 2019 (Released:2020-12-03)
参考文献数
34

【目的】療育手帳制度は知的障害児者に対する主要な施策の一つだが,全国で統一された制度ではなく,各自治体が規定・運用している。従来,制度自体の不備や自治体間の判定基準の違いは指摘されてきたが,判定に際して児童相談所で実施される知能検査や発達検査に言及した研究は皆無である。判定に関わる検査の扱いについて,各自治体の現状の把握を目的に調査を行った。【方法】全国の児童相談所を対象に質問紙調査を行い,60自治体161カ所から回答を得た。【結果】集計の結果,認められる検査の規定,実際に用いられる検査の割合,検査結果の説明,他機関での検査結果の活用等について,自治体間で大きく異なることが明らかとなった。【考察】手帳判定の指標としての検査が自治体によってさまざまに扱われていることは,制度の公平性や知能検査・発達検査の本来の役割という点で憂慮すべきことである。制度自体の抜本的な見直しが必要であると考えられる。
著者
堀部 要子
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.206-223, 2021 (Released:2021-12-23)
参考文献数
30

小学校全体で通常の学級に在籍する全児童にスクリーニングテストを行い,その上で学習面の困難さを示す児童を毎週1回15分間教室から取り出し,国語・算数に関する基礎的な内容の学習支援を実施した。その結果,国語の単語聴写課題とカタカナ聴写課題に有意な正の変容が認められるとともに,学習支援を行った取り出し群において有意な得点の上昇が認められ,指導の効果が示された。事後アンケートの記述からは,教師と対象児が学習支援を肯定的に捉えていることと,取り出しに際して本人と周囲の児童への配慮が必要であることが確認できた。また学習支援の実施に伴う校内支援システムについて検討した結果,システム構築過程と運用過程での役割分担,取り出しを行う時に必要な配慮,コーディネーター会議の有用性,校長およびミドルリーダーの関与の在り方が示された。最終的にスクールワイドの学習支援を実施するための校内支援システムの要件を8点に整理した。
著者
長山 芳子 勝二 博亮
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.466-477, 2020 (Released:2020-12-03)
参考文献数
21

対人関係形成が困難で通常の学級(以下,通常学級)で孤立していたADHDの小学5年生女児を対象として,通常学級と特別支援学級の相互的アプローチによる対人関係支援を実施した。通常学級では主に構成的グループエンカウンターによる居場所づくりを,特別支援学級ではソーシャルスキルトレーニングによる対人関係スキル形成を試みた。さらに,通常学級では対象児との具体的な関わり方の手本を示すとともに,特別支援学級を開放した友達づくりの支援も行った。学級診断アセスメントである「楽しい学校生活を送るためのアンケート(Q-U)」を継続的に実施して支援効果を検証した結果,学級満足度尺度による評価から,通常学級内での居心地感が徐々に高まることが明らかとなった。さらに,学校生活意欲尺度では,互いに信頼できる友達関係形成により,学級の雰囲気や友達関係の評価が高まるだけでなく,学習意欲の向上にも寄与するなど,さまざまな波及効果を生むことが示唆された。
著者
青木 康彦 丸瀬 里菜 河南 佐和呼 金 晶 馬場 千歳 藤本 夏美 伊 薇琳 松尾 祐希 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.249-261, 2020

本研究は,ASDの診断がある児童2名,定型発達児(対照児)1名に対して,シミュレーション訓練としてボードゲーム(野球盤)を使用したルール理解指導を実施し,ルール実施,ソーシャルスキルがキックベース場面へ般化するかを検討することを目的とした。その結果,2名中2名のASDのある児童において,野球盤でのルール指導期前よりも後でキックベース場面のルール実施率が高いことが明らかになった。また,ソーシャルスキルについては,2名中1名のASDのある児童にキックベース場面での生起率の上昇が認められた。対照児においては,キックベースの経験回数を重ねることで,キックベースのルール実施率の上昇傾向が認められたが,ソーシャルスキルの生起率については変動がなかった。考察では,野球盤を使用したキックベース指導の利点や,ソーシャルスキルについて指導効果が認められなかった児童に対する指導手続きの課題等について論じられた。
著者
金 彦志 矢野 夏樹 梅田 真理 韓 昌完
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.484-493, 2020

限局性学習症(Specific Learning Disorder : SLD)の児童生徒において早期発見と学習支援についての関心が高まっている。SLDの児童生徒を評価するためには学習困難に影響を与えている要因を明らかにし,その要因を教育的対応によって取り除いた上で彼らの学習を改めて評価する必要がある。本研究では児童生徒の教育的ニーズを評価するための尺度であるInclusive Needs Child Record(ICR)の評価データを分析することで,SLDの可能性のある児童生徒の学習に影響を与える要因を明らかにすることを目的とする。研究の結果,ICRにおけるSLDモデルとして読む,書く,計算する,推論するの4領域を含むモデルにおいて良好な適合度が検証された。また,そのモデルに影響を与える要因として,身体の状態,姿勢・運動・動作,不注意,自己肯定感が明らかになった。