- 著者
-
山下 英俊
- 出版者
- 一橋大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究は,産業廃棄物税を題材とし,都道府県の産業廃棄物統計を用いて税導入に伴う産廃最終処分量の変化の要因分解を行い,主要な変化要因の中から税導入の影響が認められるものを抽出することで,産業廃棄物税の効果を定量評価することを目的とする。産廃税は,価格メカニズムを用いた廃棄物削減と,財源調達という二つの政策目的を有する。自治体によって導入形態が異なり、(1)事業者申告納付方式、(2)最終処分者特別徴収方式、(3)焼却処理・最終処分業者特別徴収方式、(4)最終処分業者課税方式の4種類に大別される。理論的には廃棄物削減への誘因効果は(3)が最も高くなることが示唆される。こうした制度設計の相違が最終処分量の変化に影響を及ぼしたか否かを検証する。21年度は、統計分析の対象として20年度に抽出した対象自治体のうち、データ入手済みの各県について、要因分解による分析を行った。加えて、岩手県についても産業廃棄物実態調査報告書を入手した。さらに、県別の分析結果の一部を先行的に研究集会などで報告をし、関係専門家との意見交換や分析結果の検討を行った。一例に三重県の分析結果を示す。三重県では産廃税の導入前後で産廃最終処分量が18万トン弱減少している。要因分解の結果、主要な減少要因は(1)化学産業の汚泥、(2)建設業のがれき、(3)建設業の活動低下、(4)建設業の汚泥であることが判明した。このうち、(3)は公共事業の減少によるものであり、(1)は後に廃棄物処理法違反で有罪判決が確定した石原産業による汚泥の偽装リサイクルによるものである。さらに、(2)及び(4)は建設リサイクル法に起因する可能性もある。したがって、主要な減少要因のうち、明らかに産廃税の効果と考えられるのは一部に過ぎないことが確認された。以上の成果を踏まえ、県別の分析結果及び全体の比較分析の結果をそれぞれとりまとめ、学術雑誌への論文投稿を進めている。