著者
石原 久代 橋本 令子 内藤 章江 井澤 尚子 成田 巳代子 橘 喬子 芦澤 昌子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.244, 2011

目 的 社会において色は重要な情報伝達手段であるが、色弱者への配慮は一部を除いてほとんどされていない。特に衣服は、コーディネートの観点から色そのものを把握する必要がある。そこで、我々は色弱者に配慮した衣服の色表示を提案するために、これまで色票を用いて色弱者の色認識や色弱模擬フィルタを用いた判別、色名の認知について検討してきた。本報では衣服の色を想定して布地の色の認識について実験を行い、検討した。方 法 試料は、前報の結果から選出した125色に「色覚の多様性に配慮した案内・サイン・図表等用のカラーユニバーサルデザイン推奨配色セット」の20色を加えた145色の綿ブロードを用いた。被験者は、正常色覚者14名、色弱者6名、色弱模擬フィルタを装着した正常色覚者7名で、実験は各試料の色名を回答させる方法で行った。色名はJISの基本色名に推奨配色セットの色名を加えた赤・黄赤、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫、赤紫、白、灰、黒、茶、ピンク、水色、肌色、紺色、クリーム、焦げ茶、ねずみ色、空色、ベージュの23語とし、付与できる修飾語は、うすい、濃い、明るい、暗い、鮮やかなの5語とした。結果及び考察 色弱者は、正常色覚者や色弱模擬フィルタ装着者に比べ、修飾語の使用率が高かった。修飾語について正常色覚者は「うすい」を多く用いているのに対して、色弱者は「明るい」「鮮やかな」の使用率が高く、模擬フィルタ装着者は「暗い」が多かった。色名について、色弱者はピンクや赤紫の使用が多かった。また、色弱者には本来識別しにくいとされる赤や橙、緑、青緑などの使用率も正常色覚者や色弱模擬フィルタ装着者より多く使われた。なお、色名の選択については色弱模擬フィルタ装着者について有意な差が認められた。
著者
中村 久美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.330, 2002

集合住宅バルコニーのあり方を検討するため、207戸の中層集合住宅の利用実態と意識に関する調査を行った。それによると、物干しや植栽関連のモノに加えて、ゴミ、不要品や玄関や他の居室に収納しきれない多様なモノが置かれている。北側に台所から出られるバルコニーを有する世帯では、モノの管理はそちらで行い南北バルコニーの使い分けがみられる。展開される生活行為は、物干し、園芸以外にモノの管理を中心とする家事や夕涼み·日向ぼっこ、季節行事、子供の遊び等が比較的よくされるが、多種類のゴミ、不要品を置いているバルコニーでは本格的なくつろぎ行為はされない。しかしリビングの延長としての利用への要求は高く、物干しとの区別、モノの管理を担う台所バルコニーの併置の必要が指摘できる。
著者
加藤 佳子 西 敦子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.741-747, 2010-11-15 (Released:2013-07-01)
参考文献数
23

Objective: The purpose of this study is to clarify the connection between self-esteem in family relationships and relationships with friends, and general self-esteem. Methods: 154 elementary school pupils (78 boys and 76 girls) were surveyed as part of this research. The survey was conducted using three kinds of questionnaires about self-esteem in the family, with friends, and in general. Results: Validity and reliability of these three scales were confirmed. The results of covariance structure analysis indicate that self-esteem in the family directly affects general self-esteem. Self-esteem in the family also influences general self-esteem through self-esteem with friends. Conclusion: For elementary school pupils self-esteem in the family is an important factor in the process of establishing self-esteem with friends and in general.
著者
庄 莉莉 村上 かおり 鈴木 明子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.231-239, 2020 (Released:2020-04-23)
参考文献数
12

現在, ブラジャーは女性の生活必需品となっており, 第二次性徴期から乳房の発達やブラジャー装着についての知識をもってブラジャーを正しく装着することが求められる. 多くの研究によって第二次性徴期における女子の下着装着の課題と下着教育の必要性が明らかにされているが, 下着教育に重要な役割を担っている母親は娘にどのような影響を及ぼしているのかは明らかになっていない. 本研究では, 質問紙調査によって母親とその娘である女子高校生のブラジャー装着に関する意識や行動の実態を明らかにし, 母娘間の関係性を分析することによって, 今後の下着教育の在り方に, 示唆を得ることを目的とした. 結果として, 母娘とも体の変化やブラジャー装着に関する意識は高いとは言えず, 装着に関する実態も望ましくないことが明らかになった. ブラジャー装着に関する知識・理解および関心・意欲の観点には, 母親と娘との関係性は見られなかった一方, 母親の実態や行動は娘に影響をもたらしていることが検証された. また, 娘は下着教育の場は家庭であるという認識が強いことが示されたが, 母親は自分の知識に自信をもっておらず, 下着装着について学校教育に期待している実態が見られた. 娘だけではなく, 母親を対象とした下着教育が必要であり, また, 母娘が交流できる場も求められると考える.
著者
村田 光史 増淵 千保美 久保田 磨子 小伊藤 亜希子 齋藤 功子 池添 大 辻本(今津) 乃理子 田中 智子 中山 徹 藤井 伸生
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.256, 2003

【目的】高齢者の食生活の実態を明確にして、必要とされる食事支援のあり方を考察する。【方法】京都市中京区の2学区に在住する65歳以上の高齢者を対象に食生活に関するアンケート調査を直接聞き取り方式で実施した。時期は2002年9月、295人の協力を得た。【結果】現在の食事に「満足している」人が94%と多い一方で、調理を負担と感じている人が23%存在していた。日常的に惣菜を利用している人は34%、外食を利用している人は14%あり、高齢者の食生活に惣菜・外食利用が一定浸透していることが伺える。食事支援を希望すると答えた人は19%(56人)あったが、その多くが配食サービスを希望していた。他方で、普段1人で夕食を食べているのは、単身者だけでなく家族同居の高齢者にもややあり、会食や外食等、共食の機会を伴う食事サービスのあり方も検討する必要がある。その際、食事制限があったり、堅いものが食べられない高齢者の比率が高いことは十分な配慮を要する。また、「できる限り自分で調理したい」人も53%あり、調理支援や買い物代行等の支援の併用も望まれる。
著者
髙橋 秀子 東海林 明弘
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.512-520, 2015 (Released:2015-10-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

We investigated the substance of a lecture book used in “discipline dojo” performed in Okutama, Senmayacho, Ichinoseki, Iwate prefecture until the mid sixties.   A section referring to “notes on torimochi and guests” in the text book provides information on the protocols that must be observed during a wedding ceremony and the ensuing reception. The ceremony and reception took place in both the homes of the bride and bridegroom. A bowl, which represented the bride, was passed from the mother of the bride to the matchmaker, and then from the matchmaker to the mother of the bridegroom. The ceremony and reception were conducted by an emcee, known as “torimochi” who led people in chanting “utai”. At discipline dojo people learned about wedding ceremony protocols and how to chant “utai”. We were the first people to use this lecture book as part of academic research.
著者
坂田 由紀子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.335-339, 1989

市販のしらす干しについて, 衛生学的見地から品質調査を行った.鮮度の判定はpH, 水分, 水分活性, 塩分濃度, トリメチルアミン-窒素, 揮発性塩基窒素, ヒスタミンについてであり, 微生物学的検査では, 大腸菌群, 一般生菌, 腸炎ビブリオについて検査した.<BR>1) 水分は, 平均約40%で半乾燥品であるため, 生魚より低かったが, 含有量のばらつきが大きかった.これは, 生産地で出荷先にあわせて, いろいろな乾燥度の製品を製造しているためであると考えられる.<BR>ヒスタミン量は平均して新鮮な魚肉の含有量と同等であり, 最高でも3.57mg/100gで中毒量を超えるものはみられなかったが, 2期には含有量が1期に比べて有意に増加した.<BR>2) 微生物学的検査では, 一般生菌数は, 魚の干物と生魚の付着菌数より多い結果となったが, 10<SUP>6</SUP>/g数を示したものが全体の32%あり, 大腸菌群数も干物に比較して検出率が高い結果となった.一般生菌数, 大腸菌群数ともに, 時期的な差はなかった。腸炎ビブリオは1例も検出されなかった.<BR>3) しらす干しの塩分濃度は市販の魚の干物より高く, 平均6.3%であり, 含有量は1期に有意に増加した.最近は魚の干物でも, 水分量が多く生魚に近い値になってきている事実に注目すれば7), しらす干しも生魚と同じように低温保持に十分な注意を払われなければならないし, また, それを購入した消費者も同様に取り扱う必要があると考えられる.
著者
須田 成美 河田 敏勝 上甲 恭平 井上 尚子 高橋 勝六
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.14-22, 2016 (Released:2016-01-23)
参考文献数
15
被引用文献数
1

The heat transfer rate through lined clothes was measured for various lining materials. Heat transfer resistance, which is a scale of the heat retention capability of clothes, increased as a function of the amount of lining material used per unit area. The heat transfer resistance of clothes with down lining was large, those with feather and cotton fibers were 3/4 that of down, and those with crimped polyester fiber and wool fiber were 1/2 that of down. The heat transfer coefficient of lining is given by the sum of the conductive heat transfer coefficient and the radiant heat transfer coefficient. The conductive heat transfer coefficient decreases with an increase in the thickness of the lining. The radiant heat transfer rate through the lining decreases with the shading of the lined material. The decreasing fraction in the radiant heat transfer coefficient against empty air space is defined as the shading fraction. The shading fraction increased with an increase in the amount of lining used, and the shading fraction of the down lining was large, as was the heat transfer resistance of lined clothes. The shading fraction of feather lining was small, which was the reason for the small heat transfer resistance of clothes with feather lining, despite having the same thickness as the down lining. Fiber diameters of lining fiber used were 16, 34 and 40 μm for cotton, crimped polyester and wool fibers, respectively, and the shading fraction of fiber lining for a given amount of lining per unit area increased with a decrease in fiber diameter. The shading fraction of fiber lining increased with the surface area of the lining, calculated using the fiber diameter, and was independent of the kind of lining material used. The shading fraction correlated with the surface area of the fiber lining. Down is an excellent material for retaining heat in lined clothes because of the large shading fraction of radiant heat transfer due to its large surface area consisting of stalks and small fibers, and its relatively large lining thickness per unit amount, which results in a small conductive heat transfer rate.
著者
船津 香住 西村 南美 井上 容子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.268, 2006

【目的】これまでに階段の昇降し易さに関して、明視要素と段形状の関わり、ならびに順応の変化を考慮した評価法を提案している。同法は照度一様な実験室実験と屋内階段での検証実験に基づいたものであり、「物理量→物理量評価→良否評価→昇降のし易さ」という階層構造となっている。本報では、屋外階段の実測調査と評価実験結果を基に、屋外階段への適用性を検討する。【方法】建物内外をつなぐ階段や屋外階段において、光、色、寸法、材料などの物理環境の実測調査と、被験者による階段昇降時の評価実験を行っている。評価項目は、明るさや段寸法の大小、段の見え方や段寸法の良否、昇降のし易さ、昇降時の怖さ、などである。これらの結果を基に、既提案法の屋外階段に対する予測精度を検討している。対象階段は10箇所、被験者は各5名である。【結果】検討対象とした屋外階段の照度や輝度の範囲は、これまでの屋内階段の検討範囲を大きく越えた幅広いものであり、また、屋外から建物内へのアプローチ階段の場合、段面の照度変化も大きい。従って、明るさや寸法などの物理量に対する主観評価(物理量評価)に関しては、既提案法による予測値と被験者の評価値(実験値)の整合性は低い。このため、物理量から予測した階段の見え方や寸法の良否および昇降のし易さの予測精度は低い。一方、物理量評価の実験値から、良否評価や昇降のし易さを予測した場合には、予測値と実験値の間に十分な相関が認められる。このことより、従来法の中の物理量評価の予測方法を補正することによって、実用可能な屋外階段の評価式を得ることができると考えられる。今後、多種の屋外階段の実測調査ならびに昇降評価実験に基づいて、屋外階段の評価式を求めていく。
著者
久保田 紀久枝 桐渕 壽子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.144-147, 1978
被引用文献数
1

甘藷を加熱調理し, その際のVCの変化をしらべた.<BR>1) 蒸し加熱, 電子レンジ加熱の場合にはVCはほとんど変化せず, 焙焼加熱の場合にのみVCの減少がみられ総VCの残存率は約40~60%であった.<BR>2) 蒸し加熱および焙焼加熱の場合, 長時間加熱を続けた場合でもVC量にはほとんど変化がみられなかった.<BR>3) 焙焼加熱の場合, 器内温度170℃で40分焼いた場合より140℃で100分焼いた場合の方がVCの著しい損失がみられた.これらの結果, 高温, 長時間加熱がVC分解の要因になっているのてはないことを示している.<BR>4) 焙焼加熱の場合, 中心部の温度が60~70℃付近に長く保たれる条件で加熱されたとぎVCの減少が著しかった.この場合, 酸化型ビタミンCはいったん増加し, 次いで減少していき還元型ビタミンCが酸化型ビタミンCを経て分解されていくことを示している.<BR>5) 以上のことから, 加熱調理の際のVCの減少は, 高温による熱分解ではなく, ビタミンC酸化酵素が作用していることが示唆された.
著者
菊池 直子 佐藤 恭子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<b>目的</b> 岩手のホームスパンは,大正期に農家の副業として普及し,昭和期に民芸運動との結びつきによって美的価値が高められ,敗戦後の復興とともに地場産業にまで発展したものである.現在も継承されるホームスパンであるが,地元でも認知度が低下し,特に若い世代との乖離が著しくなっている.また,ホームスパン協働組合が2010年頃に解散して以降,工房間のつながりが途絶え,産業としての弱体化が危惧されている.ホームスパン文化を次世代に継承するためには,若い世代へのアプローチ,工房間の関係強化等が必要であり,その方策を探ることを目的とした.<br><b>方法</b> 10~30歳代の17名を対象に,ホームスパン工房で作業等を体験した上で各自がほしいと思うホームスパンを提案するワークショップを実施した.また,各工房の作家,職人をパネリストとする公開座談会を実施した.<br><b>結果</b> ワークショップの参加者からは,スマートフォンケース,ポーチ等の生活雑貨,ポケット付ストール,つけ襟等の服飾小物,ペンダントライトのセード,ファブリックパネル等のインテリア小物,ペットの衣服等,若者目線の製品が提案された.また,親から子への祝い品,マフラー受注会とパーソナルカラー診断の組み合わせ等の販売企画も提案された.公開座談会では,ホームスパンの認知度が低いことや価値が適正に評価されていないことが挙げられ,広報活動の余力を持ちえない工房の現状が浮き彫りになった.&nbsp;&nbsp;
著者
畑 久美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.216, 2009

《目的》手芸としてのビーズワークは、19世紀前半頃から上流階級の婦人の趣味として行われており、19世紀後期頃からは一般の家庭でも様々な生活用品にビーズを施して楽しむようになった。共立女子大学にはそうした趣味で作られたとみられるビーズワークが254点収蔵されており、前報でそれらの概要について報告した。そのような近代の手芸としてのビーズワークについて、その歴史の概論や制作方法などの書物は存在するがデザインや文化に関する専門的な研究はみられない。そこで本研究では主に服飾や手芸の観点から近代におけるビーズワークについて解明することを目的とする。《方法》共立女子大学所蔵のシアーズ=ローバック社の通信販売カタログのうち1897年から1954年のものを資料に、その誌面でのビーズに関連する商品の内容やその扱われ方について調査し、そこからみえるビーズワーク文化について検討する。《結果》通信販売のカタログは、(1)発行年と発行場所が確定できる、(2)当時確実に流通していたものである、(3)価格や商品の説明が記載されている、ことが対象となるモノの流行を知るための資料として有用であると考える。本研究の対象資料でビーズに関連する商品が掲載されているページ数、品目数、ビーズの種類数の数的推移をみたところ、大筋で、いずれも1920年代に伸び30年代には徐々に下降していき40年代以降はほとんど無くなっていくことが把握できた。通信販売のカタログである以上、売れ行きが商品掲載を左右するものとみて、1920~30年代のアメリカではビーズワークの人気が高まっていたと推測できる。
著者
吉田 花美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.284-291, 1960

明治より現代までの和裁書25冊の中から、大裁ひとえ長着の寸法を一覧表にしたところ、和服寸法は、明治より現代まで殆ど変化していないことを確認した。<BR>しかるに我国民の体位向上は最近特に目覚ましく、明治33年から昭和31年までの成年男女の体格の推移を見ると、男子においては身長4cm胸囲3.7cm、女子においては身長8.2cm胸囲3.2cmの増加がある。和服寸法もこれに伴って変化しなければ正しい着装は望めない。しかるに現代の和裁書の中には、明治・大正時代のそのままの標準寸法を示しているものが多い。そこで私は、和服製作にあたって誰もが、直ちに自分の体格に基づいて適正な寸法を見出すことができる基準を決めたかと考え、これについて検討した。和服に関する寸法は、体型を基にすることは勿論着装の仕方や社会の動きなどによって決められるべきであるが、先づ今回は身長と胸囲の面から考察した。今後諸賢の御批判と御意見を俟って、更に適正な方法を決めてゆきたいと念願するものである。
著者
竹内 紗央里 田手 早苗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.142, 2018

目的:TDS (Temporal Dominance of Sensations)とは、時間経過に伴うサンプルの質的変化を測定し表現する手法であり、近年新しい官能評価手法の一つとして企業などで取り入れられている。この手法を用いることで、サンプルを口の中に入れてから経時変化する風味の特徴を把握することが可能となる。multi-sip TDSとは、一般的なTDSがひと口飲み込んだ場合の評価であるのに対し、サンプルを複数回飲み込むことで飲料の実際の飲用場面に近づけたTDSの派生法である。今回は、弊社より発売しているReady To Drinkタイプのブレンド茶である十六茶が、狙い通りに改良できているか確認するために評価を行った。<br>方法:社内パネル約30名(20~60代男女)に対して、現行十六茶・新十六茶・競合品の計3品を約8℃で提供し、TDS法とmulti-sip TDS法による評価を実施した。項目は "苦味・渋味""甘味・うま味""お茶の風味""香ばしい香り""スッキリ感""コク"の6項目を使用した。<br>結果:TDSの結果より、新十六茶は現行十六茶と比較して後半の"香ばしい香り"の選択率が有意に高く、狙い通り味わいと香りを強化できていることが確認できた。またmulti-sip TDSの結果より、新十六茶は3口目の最後で"スッキリ感"が感じられていることから「スッキリゴクゴク飲める」という十六茶の特徴を保持していることも確認できた。
著者
山本 鈴子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.75-80, 1957-05-31 (Released:2010-03-09)
参考文献数
2

1. きうりやだいこんなどの浅漬では漬物を出してからのビタミンCの損失は、漬物の種類をとわずすべて時間の経過とともに減少していく。従つて出したてを食べる方がよい。2.だいこんでは糠味噌漬と塩漬ではそれ程の差は認められないがきうりの糠味噌漬は塩漬に比し出しておくと色も味も悪くなりまたビタミンCの損失の割合も大きい、3.長時間漬けておいたもの程出してからのビタミンCの減り方は大きい。4.漬物の形から見ると丸漬より半月漬の方が出してからのビタミンCの損失が大きい。5.生野菜を庖丁して5時間位おいてもビタミンCはあまり減らなかつた。6.水分の減少。7~8月頃のような気温の高い折には5時間後に生野菜でも漬物でも15%前後目方が失われる。7.野菜のビタミンCは長く漬ける程損失が多いようだ。詳細については目下研究中である。
著者
松元 文子 向山 りつ子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.115-120, 1956-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
4
被引用文献数
1

1) 鶏卵は、産卵日から日数経過にしたがつて、卵白の濃厚部分は水様化す。市販卵の卵白の水様、濃厚の割合は、約半々のものが多いことから産卵後の経過日数を推定することが出来る。2) 電力撹拌と手動撹拌では、水様卵白と濃厚卵白の泡だちにおいて逆の結果をみるが、これは撹拌程度のちがいとみてよく、同一撹拌程度では新鮮卵より古卵の方が泡だちはよい。このことから普通卵白を泡だてる際に、先ず充分に濃厚卵白を均一にする為、即ち機械的に水様化をおこさせるための予備的撹拌(切る操作)を行つた後に、泡だてる方がたやすく泡を得ることが出來る。3) 撹拌時間の増加に従い、或る範囲迄はその卵白泡の比重は小となるが、卵白泡の成績は必ずしもよいとは云えない。それ故に、泡の状態(均一度、緻密度・艶など)を主にして最もよい攪拌時間を捉える必要がある.それは卵の新古, 温度, 撹拌器, 撹拌方法などによつて異るものである。4) 凝固しない程度において、卵白温度は高いほど泡だちはよいが、安定度は気温に関係すること大で、気温と大差をもたせると安定度は低下し、起泡力と安定度及び泡の状態からみて、卵白温度は30℃前後が適当である。メレンゲにおいては、冷却した泡の方が、起泡は困難であるが卵白泡そのものの光沢が良い。5) 電力撹拌器使用の場合、起泡を容易にするための添加物は普通に考えられる食品の中にはないようである。
著者
梶原 彩子 草野 篤子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.109, 2003

目的 1995年の農水省による「家族経営協定の普及推進による家族農業経営の近代化について」通達により、家族経営協定は政策の中に位置づけられ、長野県においても2003年現在、家族経営協定締結農家は1,416組が誕生している。しかし一方で、家族経営協定に対して「知らない」「必要ない」と考えている農業者が多いことも事実である。そこで本研究では、家族経営協定締結の動機・家族経営協定の実際等を明らかとすると共に、今後、家族経営協定未締結農家に対する有効なアプローチを考察する。方法 2002年11月下旬に長野県小川村の家族経営協定締結者30人に配票調査・インタビュー調査を行なった。結果 小川村における家族経営協定締結者は、農業改良普及センターのすすめで協定を締結している者が多かった。発案者は大半の場合女性である。協定の効果については、全体的に経営面に関する変化は少なく、生活に関する変化や後継者との関係の変化に言及した者が多かった。
著者
布施谷 節子 松本 智絵美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.242, 2006

〈目的〉 スカート丈は流行によって変化するものの,定番のタイトスカートで、下体部が美しく見え、かつ、着用者に適合するような丈や色の設定はいかなるものであろうか。本研究では、若い女性が気にするような、脚が細く長く見える条件を体型別に明かにしようと試みた。〈資料・方法〉 被験者は体型が異なる女子大生4名で,着用実験に用いたタイトスカートは,各人の身体寸法に合わせて製作したものである。スカート丈は膝の中央を基準として、膝上10cm、膝の中央、膝下10cm、ふくらはぎの位置、踝の5条件で白と黒の2種類、計10条件をカメラで撮影し、これを評価の資料とした。写真資料を51名の女子大生が、バランスの良い・悪いもの、下体部の太く・細く見えるもの、脚の長く・短く見えるもの、総合評価の7項目の印象評価を行った。〈結果〉 _丸1_因子分析の結果、固有値1以上の6つの因子が抽出され、体型別に評価が分かれることがわかった。_丸2_黒スカートの場合、脚が細く長く見える丈は、背が高く太った被験者では踝丈、背が高く細い被験者では膝上10cm丈、背が低く太い被験者ではふくらはぎ丈であった。背が低く細い被験者では膝丈又は膝上10cm丈であった。スカートと脚のバランスの良い評価はいずれの被験者も膝丈であった。_丸3_白スカートの場合は、細い被験者は黒の場合と同じ評価であったが、太い被験者の場合では膝下丈は脚が細く見えるが、脚が長く見えるのは膝上丈であった。_丸4_黒と白のスカートを比較すると、太った被験者は黒の評価が高く、細い被験者では評価は分かれた。
著者
富安 郁子 浦上 智子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.451-457, 1977

極度に加熱した油とその揮発生成物中に毒性物質が存在するという最近の報告より, 揮発生成物の分析によって天ぷら油の安全使用の指標を得ることができるか試みた.<BR>大豆油を継続的に180℃で30時間加熱し, その間にじゃがいも, 鶏肉, 豆腐, 鯨肉, 鯖, ピーマンと水を添加した綿球 (対照) をおのおののたねものからでる水分量を一定になるように調節しながらフライした.このように調整した試料油の揮発物を直接に二硫化炭素中へ導く窒素気流で蒸留し, その濃縮物をガスクロマトグラフィー (GC) とガスクロトグラフィー-質量分析計 (GC-MS) で分析した.<BR>GCによるピーク数および相対的量には試料油間にはっきりした違いはなかった.低沸点部ではアルカナール, カプロン酸1-オクテン-3-オールが, 高沸点部ではデカナール, デカジエナール, 7-フェニールヘプタノイック酸が検出された.7-フェニールヘプタノイック酸は毒性があると考えられる.<BR>加熱時間が増加するに従い低沸点部は減少し高沸点部は増加の傾向を示した.<BR>揮発物のTLC分析 (ベンゼン, ヘキサン, 酢酸, 70 : 30 : 2) の結果3つのスポットを得たが, <I>Rf</I>値0.4のスポットは上に述べたフェニール化合物を含み278nmに強い吸収を示すことがわかった.
著者
都築 (早川) 和代 磯田 憲生 梁瀬 度子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.537-544, 1991

気温と着衣が運動時の人体に及ぼす影響を明らかにするために, 相対湿度50%, 気流0.2m/sec以下とし, 着衣を裸体 (ビキニタイプの水着着用), 半袖Tシャツ・短パン着用, 長袖・長ズボン着用の3種類とし, 気温条件を裸体20~30℃, 半袖20~27.5℃, 長袖15~25℃に設定した環境下で, 被験者に30分間の安静および自転車エルゴメーターによる40分間, 0.5kp, 50rpmの軽い運動を負荷する実験を行い, 次の点を明らかにした.<BR>(1) 平均皮膚温は, 気温が高くなるほど, 着衣が増えるほど高くなる.体重減少量は安静時は気温や着衣にかかわらず, ほぼ同じであるが, 運動時では安静時よりも多く, 半袖で多くなる傾向が認められた.<BR>(2) 温冷感申告は, 気温が高くなるほど, 着衣が増えるほど暑い側申告となる.温熱的中性申告は安静時では, 裸体気温26℃, 半袖24.5℃, 長袖21.5℃で得られ, 運動時では裸体21.5℃, 半袖20.5℃, 長袖18.5℃で得られた.<BR>(3) 着衣量について, 文献からの算出を試みた.衣服表面温度, 皮膚温などの実測値から算出する着衣量と温熱的中性気温との関係が他の着衣量算出式との関係に比べて, clo値の定義式に近い傾きになった.スポーツウエアなどのゆとり量が多い衣服や運動時についての着衣量の算出には, 詳細な検討が必要であると考えられる.