著者
坂本 久子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.229, 2003

[目的]「福岡県福祉のまちづくり条例」(平成10年3月公布)にもとづいて、高齢化が進んでいる飯塚市の市街地2km<sup>2</sup>圏内での歩道、立体横断歩道施設、公園の実態について調査し、前回までの研究発表でこれらを報告してきた。本報では更に、障害をもつ人々がこれらの住環境をどのように感じているのかを調査し、その結果を報告するものである。[方法]障害者手帳所有者12名に対する聞き取り調査。回答者は調査対象地に居住しているか、またはその周辺に居住して仕事、通院、買物などで調査対象地と何らかの形でかかわりをもっ人を選定した。調査時期:平成15年1月[結果]回答者の性別は男性6名、女性6名で、男性は4名が職業を持っている。女性の有職者は1名である。年齢は40代が1名、50代が2名、60代が3名、70代が6名であり、そのうち65歳以上が7名と高齢者の回答が半数以上である。日常生活では、自立しているか家族の協力、福祉用具やヘルパーの手を借りて自立している。障害の部位については、肢体不自由者が7名、視覚障害者が4名、聴覚障害者が1名となっている。障害の部位により住環境に対する要求の箇所も異なっており、車いす使用者にとっては街の中の段差が切実な問題となり、視覚障害者にとっては音声の出る建物表示への希望が出されている。更に車を運転できる人は駐車場の問題や運転マナーの問題を挙げている。一般的に歩道に対しては、歩道まであふれた商品や看板、車の乗り上げなど使用者のマナーについて指摘が多かった。近所の公園に行く人は少なく、地区公園の勝盛公園には花見など目的がないと行かない人が多い。*本調査にあたり飯塚市身体障害福祉協会連合会会長藤延啓治氏のご協力を得ましたことを記して厚く感謝申し上げます。
著者
澤島 智明 ゴ・ティ チュ・フェン
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 居住者が日常生活において、夏期はより涼しい場所、冬期はより暖かい場所に選択的に滞在すれば、暖冷房エネルギーの使用を削減できる可能性がある。本報では夏期の住宅居住者の滞在場所と温熱環境の関係について事例調査をもとに検討する。<br><b>方法</b> 佐賀県と長崎県に建つ一戸建て住宅4件を対象に居住者へのインタビューと室温実測を行った。調査住戸選定の際には居住者数に対して室数が多く、居住者が比較的自由に滞在場所(室)を選択できることを条件とした。インタビューは事前に準備した平面図を見ながら、①エアコン・扇風機の使用状況、②住戸内各空間の使用・滞在状況、③ 室内の暑さ・涼しさなどについて質問した。インタビュー結果から室温測定の対象空間を定め、2013年8月中旬から9月中旬に10分間隔で測定を行った。<br><b>結果</b> 調査住戸のうち2件はエアコンを毎日、長時間使用しており、他の2件は通風中心の生活をしていた。エアコン使用の多い2件は部屋数に余裕があるにも関わらず、従来の室用途を守って生活しており、熱的条件の悪い部屋での滞在がエアコン使用を助長している可能性がある。一方、通風中心の住戸では居住者が日射を受けやすい場所や熱気のこもりやすい場所を避け、通風の良い場所を選択して滞在している様子が見られた。ただし、こちらも部屋の使用状況や生活行動の内容等を夏向けに大きく変化させているわけではなく、「同室内で着座場所が変わる」「短時間の滞在が時々見られる」といった行動の微細な変化であった。
著者
小林 泰子 石田 華南子 曽我 彩香 小島 麻希甫 牟田 緑
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 近年、多くの消臭製品が上市され、緑茶、ハーブ等の天然素材を利用した製品も目立つ。本研究では、綿布を各種条件で緑茶染色し、臭い物質のアンモニア、酢酸、エタンチオールに対する消臭性と、実用性を考慮した洗濯、光に対する染色堅ろう性について検討した。 <br><b>方法</b> 試料はシルケット加工綿メリヤス、緑茶粉末(宇治抹茶入り煎茶)、前処理剤はKLC-1カチオン剤、媒染剤はみょうばん、硫酸鉄(Ⅱ)、硫酸銅(Ⅱ)を用いた。染色は緑茶濃度5%o.w.f.、媒染は濃度0.5%で行った。調製布の染色性はK/S値で、消臭性は検知管法を用い、臭い物質の残存率で、洗濯、耐光堅ろう度はJIS法に従い、色差値で評価した。<br><b>結果</b> K/S値は、緑茶染色布では小さかったが、カチオン化+緑茶染色布では増加し、媒染、緑茶染色を重ねるとさらに増加し、染色性は向上した。アンモニアに対する消臭性は、未処理布にも認められ、消臭開始1時間後に残存率は20%となった。緑茶染色布では1時間後に0%、カチオン化+緑茶染色+銅媒染+緑茶染色布では10分後に0%になった。カチオン化、媒染により緑茶成分の布への吸着量が増し、高い消臭性が得られることがわかった。洗濯、耐光堅ろう性では、多くの調製布で変色が認められ、赤みが増した。緑茶中のタンニンやクロロフィルの影響によるものと考えられる。今後、成分と変色の関係を明確にし、堅ろう性の向上について検討する。
著者
秋元 宏 宇野 哲也 宮原 岳彦 江川 直行 宮坂 広夫 掬川 正純
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.12, 2007

目的<BR>生活者が衣類着用時に受ける衣類の摩擦について実態を把握するとともに、肌と衣類との摩擦低減効果のある柔軟仕上げ剤(以下、柔軟剤)の肌への影響について調べる。<BR>2.方法<BR><U>試験剤</U>:カチオン性界面活性剤系柔軟剤(以下、汎用柔軟剤)、ポリエーテル変性シリコーン柔軟剤(以下、シリコーン柔軟剤)<BR><U>試験布</U>:綿ブロードおよびポリエステルサテン。試験剤にて布に柔軟仕上げ処理をし、非使用を含む3種の試験布を作成した。<BR><U>動摩擦係数</U>:平面接触子に試験布を貼付し摩擦係数測定装置にて前腕内側上を滑らせて測定した。<BR><U>使用試験</U>:敏感肌、アトピー性皮膚炎、乾皮症等の皮膚炎を有する者を被験者としシリコーン柔軟仕上げ剤を洗濯時に使用させる方法で、1ヶ月間冬季に実施した。また、一部の被験者については約1年間通して使用させた。<BR>3.結果<BR>3種の試験布のうちシリコーン柔軟剤で処理した試験布の動摩擦係数が最も低く、非使用の試験布と比較しその値は0.1も低減していた。また、汎用洗剤および試験剤を用いて30回繰り返し洗濯をしたバスローブの着用感を官能による一対比較法にて試験した。その結果、すべりやすい、やわらかい等の項目に関してシリコーン柔軟剤で仕上げた衣類の着用感は良好であった。<BR>また、使用試験ではシリコーン柔軟剤で仕上げた衣類の着用で7割以上の被験者が「肌あたりの良さ」や「引っかからない感じ」を実感し、半数以上の被験者で肌の「乾燥」や「かゆみ」などが和らぐことが医師により確認された<SUP>1,2)</SUP>。さらに、約1年の長期使用によっても、有害事象および治療を妨げることは無かった。7割以上の被験者が「肌触りのよさ」を実感し、また、「今後も使用し続けたい」との意向を示した。<BR>文献<BR>1)永島敬士他;診療と新薬,43(9),p.912-917(2006)<BR>2)渡辺晋一他;診療と新薬,44(2),p.27-32(2007)<BR>
著者
杉森 孝
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.286, 2011

目的<BR>現在のファッション造形教育の指導においてその多くは、グラフィカルなデザインの内容に偏っているか、被服構成に偏ったものが殆どであり、人体や立体を中心にしたものを見つけることは困難である。ファッション造形教育を受けようとする学生の中には専門的な造形教育の経験が少ないか、全くないという学生も多い、また経験はあっても立体造形に対して苦手意識を持つ学生もいる。本研究はこのような学生であっても立体造形作品を無理なく制作できるための指導方法の確立を目的としている。<BR> 方法<BR>主に香蘭女子短期大学・ファッション総合学科での卒業制作(2009~2011)における造形指導について、20世紀初頭、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックらによって創始された「キュビスム」の手法をファッション造形教育へと導入し授業を行った。また全く同じ内容と指導ステップによってデザイン系専門学校の学生にも授業を行い、課題作品の比較を行った。<BR> 結果<BR>この指導方法の導入によって平面造形から立体造形への移行を自然に行うことが可能となった。また専門的な造形教育の経験の有無に関係なく立体作品の制作が可能であった。また完成した立体作品から服への展開も素材やパターンについての指導方法を整備していくことで解決することが可能である。以上のことから本指導方法がファッションにおける造形指導の一つとして有効であると考えられる。
著者
冬木 春子 佐野 千夏
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.512-521, 2019 (Released:2019-08-24)
参考文献数
25
被引用文献数
3

本研究では「多重役割仮説」を参照した仮説「母親は親役割に加えて仕事役割を担うことで時間が消耗され, 子どもに向けられるそれらが不足し, 子どもの健康な生活習慣形成に悪影響が及ぶ」を検証した. 小学校入学前の子どもをもつ269名の親を対象に質問紙を用いて, 次の主な知見が明らかにされた. 第一に, 母親が有職の場合, 子どもは就寝時間が遅く, 夜間の平均睡眠時間では10時間を満たしていなかったが, 母親が無職の場合は就寝時間が早く, 平均睡眠時間も10時間を超えていた. 第二に, 母親の午後6 時以降の帰宅時間の遅さは, 子どもの就寝時刻の遅れやの睡眠時間の短さにつながるとした仮説は支持されたが, 母親の帰宅時間の遅さは子どもの栄養あるいは献立バランス面における食習慣に影響を及ぼしておらず, 仮説は支持されなかった. 第三に, 父親の帰宅時間の遅さは子どもの睡眠習慣や栄養や献立バランス面での食習慣には影響を及ぼしていないが, 帰宅時間が早いと家族との共食が可能であった. 幼児の生活習慣が母親の就労によって規定される影響力を鑑みると, 子どもの生活習慣の形成には, 社会におけるジェンダーイクイティや雇用環境の改善, さらには親に対する教育的支援が必要である.
著者
西川 和孝 川本 実穂 田中 章江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.339-345, 2014 (Released:2015-01-01)
参考文献数
29

The oxalic acid content of spinach has become a major human health concern due to its toxicity. We investigated in this study the residual oxalic acid content in spinach and the free oxalic acid content in the cooking solution. The water temperature and duration of boiling were important factors for the residual oxalic acid content of spinach, while the water volume and salt concentration had no influence. However, the content of free oxalic acid in the cooking solution was influenced by the water volume, salt concentration, water temperature, and duration of boiling. In particular, the oxalic acid content in the cooking solution decreased with increasing salt concentration. Cooking spinach by boiling was demonstrated, and a follow-up questionnaire survey of junior high school students was conducted. The results of the questionnaire survey clarified that there was insufficient understanding of the preparation of vegetables by boiling as studied at the elementary school level. However, most students understood how to boil spinach after the teaching demonstration, and the results of a cluster analysis showed that the students' interest as well as knowledge about spinach had increased
著者
田中 辰明 柚本 玲
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.244, 2007

<b>目的</b> ブルーノ・タウトは日本では、著書「日本美の再発見」で日本建築の素晴らしさを世界に紹介した人物として知られている。1933年に日本に移住する前はベルリン市の住宅供給公社ゲハークの主任建築家、またシャロッテンブルク工科大学教授として活躍していた。1924年から1933年までの間に12,000戸の勤労者住宅を建設しており、それらは第二次世界大戦後も多数残っている。日本の団地にも大きな影響を与えた氏の作品を調査した。<br><b>方法</b> 調査対象はベルリン南部リッツの馬蹄形住宅フーフアイゼンジードリング・ブリッツ(1925-1930年:1963戸)、ベルリン西郊の森の団地ヴァルドジードリング・オンケルトムズヒュッテ(1926-1931年:1952戸)とした。後者には486戸の独立住宅、2軒を1棟とした住宅も含まれている。この2団地を中心にリューデスハイムプラッツ、アイヒカンプ、ヴァインガンドウーファー、シェラー公園、トリア通りの住宅について、住人への聞き取り、住宅内部調査を含め実地調査した。<br><b>結果</b> 氏の住宅ではヴィーゼと呼ばれる太陽を取り込み芝生のある庭が設けられている。また車の普及を予想し駐車場を確保したり、自然通風に配慮したりと住民への配慮が行き届いている。第二次大戦後の奇跡の復興による立派な住宅が多いベルリンでタウトの労働者住宅は決して目立つものではない。しかし、第一次大戦敗戦後に労働者が住宅に困窮した時代、「戦後復興は住宅から」という確固たる思想で、労働者の健康に配慮した団地建設を行なったタウトの仕事は賞賛されるべきである。リッツ、オンケルトムズヒュッテには住まい手に大変感謝されていることがしのばれるタウトの顕彰碑が建っている。
著者
佐藤 愛 芝木 美沙子 川邊 淳子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, pp.22, 2010

〈B〉目的〈/B〉 衣生活では食生活に比べ、学校教育を離れると手作りをする機会や場が減ってしまうという現状がある。また、核家族化が進みライフスタイルが多様化する中、妊婦が出産・子育てへの不安を抱えたまま、多忙な生活でお腹の中の赤ちゃんへの愛情をゆっくりと醸成させることができない状況にあるのではないかと考えられる。そこで本研究では、子育て支援の新たな取り組みを考える上で、妊婦のものづくり体験についての意識と実態を明らかにすることを目的とした。〈BR〉〈B〉方法〈/B〉 調査対象は、北海道A市の産科婦人科病院に通院する妊婦、および子育て支援事業の親学入門講座に参加する妊婦合計615名、調査方法は留置法による質問紙調査、調査時期は2009年6月下旬~8月上旬で、有効回答数は491名(79.8%)であった。調査内容は、裁縫技能の習得状況および方法、赤ちゃんに関する小物の製作経験および意欲、衣生活に関するものづくりの実態、子育て観などであった。。〈BR〉〈B〉結果〈/B〉 妊婦の63.7%から、生まれてくる子どものために衣生活に関するものづくりをしてあげたいという回答が得られた。その理由としては、「あたたかみ・愛情が感じられる」(16.3%)が一番多く、次に、「作ってあげたい・身につけさせてあげたい」等が続いた。一方、実際赤ちゃんに関する小物の製作経験をもつ妊婦は26.7%にとどまった。また、衣生活におけるものづくりをしない妊婦は70.9%にものぼり、「時間がない・忙しい」(29.9%)などの物理的要因とともに、「苦手・不得意」(21.8%)といった技能的な要因が多くあげられた。さらに、技能習得状況として、家庭科男女共修世代か否かの29歳を境に、ある一定の特徴が認められた。
著者
岡村 益 壁谷沢 万里子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.217-221, 1973

1) 調査対象は主として中高年齢層で8年から10年の長期間勤続した例が多い.このことは, 対象地に主婦労働を必要とする企業が誘致されるとすぐに就職した生活困難な低所得層であると解される.夫もブルーカラーが大半で2人で働いてもなおかつ生活は楽でない.したがって夫は妻の就労に賛成であり, 経済的期待がかなり大きい.<BR>2) 生活に余裕がないことは, 勤めに出ている理由のうち経済的理由の占める率が高いこと, 生計費が県平均よりかなり低いこと, 住居に持家が少なく狭いこと, 貯蓄の仕方が不定期で安定性がないなどに表われている.<BR>3) 主婦の家事労働を助ける機器が必要であるのにあまり使われていない.家事労働軽減のための機器の使用は娯楽的耐久消費財よりむしろおくれている.これは生活水準の低いためと低い生活意識によるものと考えられる.<BR>4) 家庭内における役割構造については概して夫より妻の役割が大きいが, これは家族周期がやや後期段階にわたることと妻の就労によって妻の地位が高められたものと考えられる.また, 家事の役割を分担するという家族習慣が形成されていないことが明らかになった.<BR>5) 対象の多くは結婚後初めて就職したので働く意識は全般に低いが, これからの女性の就労観について「家事と職業両立型」に賛成しており, 職業志向を示しているのは長い間の就労により養われたものかと考えられる.<BR>なお, 労務系の共稼ぎ主婦の生活構造の全般的把握は機会を改めて行なう予定である.
著者
阿部 淳子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.99, 2004

【目的】 現代の子どもたちが地域の民俗文化としての祭囃子の練習に参加し、その学習過程において周囲の人々との関わりや、祭囃子の習熟を通して成長していく姿をフィールドワークにより観察した。その観察の中で、祭囃子への子どもの参加をきっかけとして、親やきょうだいも含めた家族、さらには地域の活動へと発展していく様子に注目し、地域に伝わる民俗文化の現代的意義を探ることが目的である。【方法】 1998年から2003年の6年間にわたり、埼玉県 O町における七夕祭りの祭囃子に参加する小・中・高校生、および保存会会員を対象に観察を行っている。参加人数は年度により異なるが、40名から60名の子どもたち、15名ほどの保存会会員が中心となり活動している。観察は参加観察、ビデオカメラによる記録、インタビューを通して行い、分析をおこなった。【結果】 祭囃子の活動は、子どもたちに太鼓の指導をする保存会の大人、幼稚園・小学校低学年の子どもたちの送り迎えを行う親、毎年祭囃子を楽しみに見に来る地域の人々など、直接演奏には参加していない様々な人に支えられて成り立っている。そして、祭囃子に参加する子どもを通じて、親同士のつながりや指導者と親のつながりが生まれ、地域における交流の場としての機能が観察された。これらのことから、現代において、地域に伝わる祭囃子の活動は、現代社会が失いつつある、地域社会における交流の場を提供するものとして、大きな意義をもつと言えよう。
著者
渡辺 澄子 川本 栄子 黒田 喜久枝 中川 早苗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.131-139, 1993

前報において, 若い女性向けの服装雑誌より選んだ服装サンプルをもとに服装イメージを構成している因子の抽出を行った. 本報では前報で得られた主要な因子の因子得点をもとにクラスター分析を行い, イメージによる服装の類型化を行った. さらに類型化された服装タイプのデザインの特徴を把握するために, クロス集計および数量化II類による分析を行い検討した. その結果, 次のような知見を得た.<BR>1) 服装タイプは, (1) キャリアエレガンス, (2) エレガンスフェミニン, (3) ベーシックカジュアル, (4) トレンディカジュアルの四つに類型化された.<BR>2) 服装タイプとデザイン要素の関連性をクロス集計で分析した結果, 43項目中27項目において有意な関連がみられた.<BR>3) 四つの服装タイプを判別するのにより有効な意味は, エレガンスかカジュアルかの違いであり, そのデザイン要素は服種の違いによるものが大きいことが分かった.<BR>4) 服装タイプを一組ずつ対比させ, その違いをより有効に判別するデザイン要素を検討するとつぎのようになった. キャリアエレガンスとトレンディカジュアルは服種, ディティール, 色柄の順に三つのデザイン要素のみで容易に判別できる. 次いで, キャリアエレガンスとベーシックカジュアルもそれらのデザイン要素に襟・袖の形まで含めると明確に判別できる. また, キャリアエレガンスとエレガンスフェミニンのどちらもエレガンスタイプのものどうし, および, ベーシックカジュアルとトレンディカジュアルのカジュアルタイプのものどうしの判別はやや困難であるが, それらは服種やディティールよりも色柄によつてかなり判別できることが明らかになった
著者
杉田 満 市川 裕佳子 繁田 明
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.337, 2002

一般家庭においてフローリングと総称される木質系床材が標準的な床材として定着してきているが、手入れ剤による拭き掃除は、材質への影響等の懸念から積極的には実施されていない傾向が見られる。そこで、15歳以下の子供のいる家庭を対象に掃除実態調査及び現場観察を行った。その結果、調査対象の半数近い家庭で、手入れ剤を使用した拭き掃除が日常的には行われておらず、その理由として、床材への影響懸念や水拭きだけで汚れは落ちているという意識が見られた。拭き掃除が不十分と見られる家庭では、汚れ残留によるつや低下や黒ずみが見られる傾向がある一方、床面の損傷(微細ひび割れ)は紫外線&middot;暖房機器類の影響を受けやすい場所で顕著であり、拭き掃除の影響は小さいものと考えられた。以上から、フローリング床材には場の汚れに合った湿式手入れの必要性があると考えられた。
著者
渡辺 紀子 矢部 章彦
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.376-380, 1976

家庭洗濯において, 海水を洗濯用水として用いた場合の洗浄性を人工汚染布および天然汚染布を用いて検討した. 主な結果は次の通りである.<BR>1) 非イオン活性剤を用いた海水洗浄は脱イオン水と同様の洗浄効果が認められた.<BR>2) SDSを用いた場合は, 脱イオン水より, 海水洗浄の方が洗浄効果が認められた.<BR>3) Na-LASを用いた場合は, 海水を20%含む洗濯用水において脱イオン水より洗浄効果が認められたが海水の濃度が高くなると洗浄効果は低下した.<BR>4) Na-LASを含む配合洗剤を用いての海水洗濯は5°DHの水よりやや洗浄力は低下したが, 利用可能であると考えられる.
著者
木村 友子 菅原 龍幸 福谷 洋子 加賀谷 みえ子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.585-593, 1994

干し椎茸の合理的な戻し方を見出す目的で, 超音波照射を取り入れた方法を用い, 椎茸の物性及び嗜好性などに及ぼす影響を検討し, 次の結果を得た.<BR>1) 水戻しに超音波処理を用いると, 超音波処理しない椎茸に比し吸水量が増加し, 戻し汁は黄味度が増し褐変が進行した.<BR>2) 蒸し調理した椎茸のテクスチャー特性では超音波照射したものの方が硬さ・ガム性の値が小さく軟化した.<BR>3) 水温5℃と25℃の水戻しの条件では超音波照射時間は20分が望ましく, 全浸漬時間は上冬薙が2時間, 上香信が1時間で最大吸水量の90%に達し, 官能評価では椎茸は柔らかく歯ざわりが適当で, 戻し汁の色の濃度が濃く感じ, 味は旨味があり良好と評価された.<BR>4) 蒸し調理した椎茸中のRNA含量や5'-GMP, 5'-AMP, 5'-UMP, 5'-CMP, 遊離アミノ酸含量に及ぼす超音波照射の影響はわずかにすぎなかった.<BR>以上の結果から, 干し椎茸の水戻しに超音波照射を取り入れることは有効であると考えられる.
著者
小林 由実 小川 進 田中 喜典 小川 宣子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.183, 2011

<B>目的</B> 炊飯に用いる水のイオンの種類やその含量などの水質が飯の品質に影響を及ぼすことを報告している<SUP>1)</SUP>。そこで本研究では、浄水器により調整した水が飯の品質に及ぼす影響についてカルシウムイオンを中心に検討を行った。<BR><B>方法</B> 炊飯には、原水を浄水カートリッジで浄化処理した水(以下:浄水)、浄水をイオン交換樹脂により処理した水(以下:イオン交換水)、そして硬度が浄水に比べ100mg/L高くなるように塩化カルシウムを添加した水(以下:調整水)の3種類を用い、カルシウムイオン濃度は原水が15.7mg/L、用いた3種類の水はそれぞれ15.7mg/L, 2.5mg/L,51.5mg/Lであった。飯の品質はクリ―プメータ測定及び官能検査から硬さ、電子水分計から水分、でんぷんの糊化度はグルコアミラーゼ法と走査電子顕微鏡による組織構造から調べた。また、最初の米の容積に対する炊飯後の容積の割合(膨張率)から飯の「ふっくらさ」を検討した。<BR><B>結果</B> イオン交換水で炊飯することで浄水に比べ、飯の膨張率は高く、水分量が多く、軟らかな飯となり、糊化度の値も高く、網目構造も観察でき、優れた品質の飯となることが示された。一方、調整水で炊飯した飯は浄水に比べ、膨張は悪く、飯の水分量は少なく、でんぷんの糊化度も低かった。これよりカルシウムイオン濃度は飯の品質に影響を及ぼし、カルシウムの除去は飯の品質を上げる効果があることが明らかとなった。<BR>[文献]1)小川宣子、稲垣明子、山中なつみ、下里道子:炊飯溶液中のカルシウムとナトリウムが飯の性状に及ぼす影響(第1報)、日本家政学会誌、57(10)、pp669-675(2006)
著者
平山 静子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.309-312, 1970

1. 電子レンジ加熱の苺ジャムは、本実験の条件では、電熱器加熱のものに対して約1/2の加熱時間で仕上がった。加熱前にさとうによって果汁を浸出させる必要もなく、火力調節の手数もないが、原料の分量に対して、目的の砂糖濃度に仕上げるための加熱時間については、注意を払う必要がある。<BR>2. 電子レンジ加熱によるものは、官能テストの結果、電熱器によるものより好ましいという結果が得られた。<BR>3. 電子レンジ加熱によるものは、香りが良く、色調も美しい。<BR>4. 電子レンジ加熱によるものは、ゼリー化が少ない。しかしレモン汁を添加することにより、両加熱法とも、ゼリー化を高め、両加熱間の差は少なくなる。<BR>5. 電子レンジ加熱によるものは、やや酸性が強い。<BR>6. 電子レンジ加熱によるものは、蔗糖の転化率が少ない。
著者
新田 米子 志水 暎子 小川 裕子 神川 康子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<br><br>目的 高齢の親世帯と子世帯間の居住距離に着目し、親子双方が安心・満足できる住み方を探ることをねらいとし、本報では、将来子世帯が親世帯側への同居や近居を希望する場合の住み替えを促す要件について明らかにしようとするものである。<br><br>方法 中部・北陸地方における親子の居住関係の動向「その1」と同一のデータ(n=411)を用いて分析を行っている。調査方法は「その1」に準ずる。<br><br>結果 現在親と別居の子世帯において、今後親が病弱になった時の住み方ついては、半数強が「わからない」状態であるが、「現在と同距離で別居」や「自分の家での同居か近居」の希望がやや多く、「親の家で同居」または「親の家の近くで住む」とする世帯は1割強にとどまる。結婚後20年未満で現在の住み方に至る世帯が多く、20年以上経過すると住み替えがかなり減少する傾向が認められる。親側への移転を望む場合の居住距離は、「近居・片道15分未満」、「隣居」、「同居」の順となる。親側への住み替えにあたって問題となることは、「親の世話の負担」をあげる人が「住宅購入費」、「住宅探し」に比較しやや多い。さらに、移転するにあたって国・自治体・第三者機関等に期待する支援内容は、「親の世話・介護にあたっている人たちの交流の場の提供」、「介護・介護予防等に関する地域住民の活動を支援する場の提供」、「住宅建て替え費用に対する減税措置」などへの期待が少なくないことが明らかとなった。