著者
雨宮 敏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的 </b>これまで媒染染色により染料を銅の主な担持サイトとした消臭綿布を調製してきた.本研究では染料を用いず,多価カルボン酸を用いて綿布にカルボキシ基を導入後,銅処理を行った.調製した試料布のアンモニアやエタンチオールに対する除去能を検討した.<br><b>方法</b> 綿ブロードを25℃のクエン酸水溶液に浸漬し,予備乾燥後,熱処理を行った.クエン酸処理後,硫酸銅(II)五水和物を用い85℃で30 min,銅処理を行った.試料布を入れた2 Lテドラーバッグにアンモニア1000ppmまたはエタンチオール100ppmを含む空気を導入後,バッグ内の気体の残存濃度を気体検知管法または炎光光度検出器を用いたガスクロマトグラフ法で経時的に測定した.<br><b>結果</b> アンモニア除去については,30 min後,クエン酸未処理綿布(白布)では 600ppmであったのに対し,クエン酸処理綿布では0ppmを示し,クエン酸処理によりアンモニア除去性能が顕著に向上した.導入されたカルボキシ基との酸塩基中和反応による除去が行われたと考えられる.また,クエン酸処理により銅の取込量が増加したことから,導入されたカルボキシ基が銅の結合サイトとして用いられたことが示された.本研究で得た試料布はこれまでの媒染染色による銅量より少なかったが,エタンチオールに対する酸化分解型の除去能は示された.近年のアゾ染料への規制強化を考慮し,染料を用いずに綿布に銅を担持する方法は有用であると思われる.
著者
辻 幸恵
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.249, 2006

【目的】現在、キャラクターはその商品のイメージアップや売れ行きを良くするために衣類、食品類などの多く商品に活用されている。本報告の目的は、幼稚園児に選択されやすいキャラクター商品の特徴を明らかにすることである。【方法】調査地域は兵庫県と大阪府である。調査対象は幼稚園に通う5歳児クラスの158人である。なお、これは複数の幼稚園に通う園児の合計人数である。彼らを観察したことにより得た結果をデータとした。相関分析を用いて園児(男女それぞれ)と菓子(新製品、定番)、キャラクター(新キャラクターと定番)と菓子などの項目ごとに分析をした。【結果】女子の園児と女の子の好むキャラクター間(0.86)、男子の好む菓子とキャラクター間(0.78)には強い相関が見られた。一方、定番である菓子とキャラクター間(0.11)と新製品の菓子とキャラクター間(0.14)には相関が見られなかった。【考察】女子は菓子の種類よりも、キャラクターを選択基準としては優先させる傾向にある。一方、男子は菓子そのものの種類が重視されている。ここから女子には見た目の美も商品には必要であることが考えられる。また、「かわいい」にはサイズ、色に加えて流行の要因があると考えられる。
著者
長山 芳子 深田 祐子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 62回大会(2010年)
巻号頁・発行日
pp.25, 2010 (Released:2010-10-15)

【目的】人にも環境にもやさしい台所や住まいの洗浄剤として、重曹が普及し始めている。被服および繊維製品では重曹使用によるしみ抜きや部分洗いの効果が謳われている。著者らは人工汚染布を用い重曹の洗浄力が高いことを報告したが、濃度や温度の効果については不明な点が多い。そこで本研究では、油汚れに対する重曹の洗浄力について、オレイン酸の乳化作用の面から検討することとした。 【方法】洗浄剤として重曹(炭酸水素ナトリウム、試薬特級)、石けんとしてオレイン酸ナトリウム(試薬特級)、モデル油汚れとしてオレイン酸(試薬1級)をそのまま使用した。濃度は重曹0~950mM、オレイン酸ナトリウム1.25~5.0mMとし、単独及び混合して用いた。乳化方法は、重曹水溶液20mLとオレイン酸0.1mLを共栓遠沈管に入れ、恒温振とう機(大洋科学工業株式会社M-300) で、往復120rpm、温度20~40℃、時間10min~24hr振とうした。振とう後の水溶液は分光光度計(日本分光V-660DS)でスペクトルを確認後、500nmにおける吸光度を測定し、この値を乳化値とした。pHおよび表面張力(輪環法)も測定した。 【結果】重曹-オレイン酸水溶液は、振とうの短時間側では吸光度0に近く、オレイン酸は水溶液上面に油滴状態で浮遊しており乳化されていなかった。振とう時間の経過とともに吸光度は段階的に上昇し乳化が確認された。振とう3hr後ではいずれの温度も重曹濃度5mMの低濃度から乳化が生じた。振とう後の乳化水溶液を撹拌したところ起泡性が確認された。重曹のみの水溶液では表面張力の低下はわずかであるが、重曹-オレイン酸水溶液では重曹低濃度から表面張力は著しく低下しており、重曹石けんの生成が示唆された。
著者
平林 由果 渡辺 澄子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.37, 2007

【目 的】ファッションはその人のライフスタイルを反映し、個性を表現する。おしゃれをすることは、着る人の高揚感を高め、ストレスを軽減させ、免疫力を亢進させるのではないかと考えられる。そこで、気に入った服装とそうでない服装をした時にストレス負荷を行い、おしゃれの心理的効果とストレスホルモンへの影響を検討した。【方 法】ストレスの指標として、唾液中のアミラーゼ、コルチゾール、分泌型IgAを測定した。並行して服装時に生起する多面的感情状態尺度を肯定的・否定的な35項目について尋ねた。実験は女子大学生9名を被験者とし、5分間のクレペリン検査実施後、唾液を採取し、学内の人通りの多いロビーを通って売店で買い物をするというプロトコールで行った。服装条件(条件1: 気に入った服・化粧あり、条件2: Tシャツと短パン・化粧なし)を替えて同実験を実施し、その結果を比較した。【結果および考察】感情状態尺度において、実験後に条件1では肯定的感情状態の値が高くなり、条件2では否定的感情状態の値が高くなった。唾液中のアミラーゼ分泌量、IgA分泌量においては、服装条件の違いによる一定の傾向は認められなかった。コルチゾールの分泌量は9例中7例において、条件1の方が条件2よりも実験後の減少が大きく、有意差(P<0.05)が認められた。コルチゾール分泌量はストレス負荷により増加することが明らかにされている。この実験では、クレペリン検査によるストレスを買い物をすることで解消したが、気に入った服装時(条件1)の方がその効果が大きかったと推測される。これらの結果は、おしゃれを楽しむことがストレスを緩和し、心も体も元気にする可能性を示唆していると考えられる。
著者
川嶋 比野 織田 佐知子 数野 千恵子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.45, 2011

<B>目的</B> 我々は「染付皿に占める青色の割合が和食に与える影響」(家政誌,2010,Vol.61,no.12)で,白い皿色に占める青色の割合が40%前後の染付皿が多くの和食料理と相性が良かったことを報告した.それを踏まえ,本研究では皿に描かれている絵柄の種類によっても食欲の感じ方に影響があるのか,またどのような絵柄と料理の相性が良いのかについて調査を行った.<BR><B>方法</B> 植物,動物,風景,幾何学の絵柄の染付皿から柄の配置等が似ている写真を選び,画像処理ソフトを用いて青色の色合いを合わせ,皿に占める割合を40%程度に調整した.料理は,温菜として筑前煮,天ぷら,卵焼き,磯辺もち,冷菜として寿司,刺身,冷奴,水まんじゅうを用意し,皿と料理の写真を合成して自然な盛り付けに見えるよう大きさを調整した.食物栄養学部の女子大生53名,一般の中高年(40~80歳代)79名を対象とし,料理ごとに4種の皿に盛りつけられた写真を同時に見比べ,どれが美味しそうに見えるか順位法でアンケート調査を行った.<BR><B>結果</B> 対象者全体の結果としては,植物は全ての料理と相性が良く,風景は天ぷら,寿司,刺身などの高級なイメージのある料理と相性が良い傾向が見られた.動物は筑前煮や水まんじゅうと,幾何学は磯辺もちと比較的相性が良い傾向が見られた.女子大生と中高年で結果が大きく違ったのは,刺身,磯辺もち,水まんじゅうであり,女子大生はこれら3つとも植物の評価が最も高かったが,中高年は刺身では風景,磯辺もちでは幾何学,水まんじゅうでは動物の評価が最も高かった.中高年の性別で比較すると男性には風景が,女性には植物が好まれる傾向が見られた.また,温菜よりも冷菜で風景が好まれる傾向が見られた.
著者
高橋 哲也 鶴永 陽子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 70回大会
巻号頁・発行日
pp.13, 2018 (Released:2018-07-28)

目的 アロマテラピーは脳に働きかけて心を和ませ、ストレスを低減させる効果を持つ。その効果を有効に利用するには、肌に密接にある被服を用いるのが効果的であると考えられる。本研究では、アロマテラピー繊維を創製する前段階として、スウィートオレンジとラベンダー精油による生理応答への影響について着目し、その心理的影響を検討した。方法 大学生20名を対象に本実験を実施した。STAI特性不安検査、タイプ行動パターン検査の心理検査を実施した。その後、3回の時間帯にて、香りを付けていないマスクの装着(前レスト)、香り付きマスクの装着(聴香タスク)、香りを付けていないマスクの装着(後レスト)の状態を5分間ずつ実施した。その際にNIRSおよび心拍変動の測定を行うとともに、主観評価も実施した。結果 本実験に用いた2種類の香りには、リラックス効果が見られた。但し、アロマテラピー実験が生理応答や心理に与える影響は、被験者によって個人差が大きかった。NIRSによる測定を行ったところ、聴香タスクでは脳血流量は減少し、アロマテラピーによってリラックス状態を示すことがわかった。さらに、香りの嗜好性も脳血流の結果に影響を与えており、本実験の被験者の嗜好性が高いスウィートオレンジの方が、聴香タスクでの脳血流中の酸素化ヘモグロビン濃度が前レストに比べて大きく減少していた。このことから、スウィートオレンジの方がストレス低減により有効であった。
著者
増田 啓子 古寺 浩 東 珠実 柿野 成美 鈴木 真由子 田崎 裕美 吉本 敏子 村尾 勇之
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.63, 2003

【目的】学校教育法の一部改正に伴い、大学が文部科学相の認証を受けた認証評価機関による第三者評価を定期的に受けることが制度化された。実際の施行は平成16年度からで、当初は対象となる専門分野がある特定の分野に限られるものの、今後、様々な専門分野の教育・研究の質を個々にどのような認証評価機関が、どのような手続きにより、どのような基準によって評価するのか大変注目されるところである。本報告では、わが国における大学評価の全般的な現状をふまえながら、報告者らの研究グル-プがこれまでに明らかにしてきたアメリカ家政学会による認定活動に関する研究成果と、わが国においてすでに実施されている特定専門分野における認定活動における評価基準および、認定組織・手続きを比較・分析することにより、わが国で大学に対する専門分野別第三者評価が現実のものとなった場合の家政学分野における諸課題を見出すことを研究の目的とする。【方法】学校教育法の改正内容と特にその経緯を中教審などの公表資料(議事録など)から明らかにするとともに、アメリカ家政学会が発行している専門分野別基準認定手引書、日本技術者教育認定機構(JABEE)の同様な手引き・申請書式などから認定評価基準・認定組織・申請から認定取得に至る手続きを明らかにし、両者のそれを比較・分析する。【結果】比較した日米両組織が設定する認定評価基準は、教育プログラムの構造をはじめ細部にわたるもので、中教審の議論にもみられたように大学による自由な教育権との関係を明確にする必要がある。改名・改組という流れの中で、わが国の家政系学部・学科構成は多様化しており、特定専門職者育成に関わる分野に比して基準策定・適用が困難である。
著者
湯川 夏子 田中 康代 中村 道彦 木村 晶朗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.105, 2011

【目的】私たちが食事をしておいしいと感じる要因には、食べ物そのものの味やにおい、見た目だけでなく、食事をするときの周囲の環境(食事環境)が挙げられる。本研究では、食事環境として音環境を取り上げ、BGMが食欲に与える影響について検討した。<BR>【方法】2010年11月~12月の10時~12時に、大学生20名を対象に、食欲とBGMの関係性を調べる実験を行った。被験者に食堂の食器一式と料理の画像を見て食事をイメージしてもらいながら、5つの音環境(騒がしい洋楽・穏やかな洋楽・クラシック・学生食堂の録音・BGMを使用しない)において、食欲の増減、音環境の印象について質問紙調査を行った。同時に脳波測定(I-rlx, デジタルメディック社)を行った。統計処理にはSPSS15.0を、脳波解析にはData Make とExcel2010を用いた。<BR>【結果・考察】5つの音環境中、「騒がしい洋楽」で有意に食欲の減退がみられた。音環境の印象調査で、25形容詞対を主成分分析したところ、「優和性」「高尚性」「快活性」「評価性」の4つの因子が抽出された。因子得点より、クラシックで「優和性」「高尚性」が高い、「騒がしい洋楽」で「優和性」が低いという特徴がみられた。各因子と食欲の関係をみると、「優和性」と食欲の間に有意に高い相関がみられた。脳波測定の結果より「脳安静度」を算出したところ、学生食堂の録音やクラシックで安静度が高く、「騒がしい洋楽」では安静度が低かった。「脳安静度」と食欲は -0.63と逆相関がみられ、安静度が高い時、食欲も増すということが明らかになった。以上のことより、食事環境におけるBGMが人の食欲に様々な影響を及ぼしていることが明らかになった。
著者
福本 俊
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.805-811, 2008

高齢社会である日本の抱える社会的問題の一つは,人間関係の脆弱化である.高齢者が人生の最終コーナーを豊かに駆け抜けるためには,幼少期から人間関係を紡ぐことが出来るような環境作りが緊要である.対人的なスキルの養成等は教育的な課題である.豊かな人間関係を阻むものの大きなものとして,従来からの性役割意識がある.この意味で,性を超えて自由にその人らしく生きる事を志向するアンドロジニーな生き方が強く求められている.本研究の目的は、提案されたアンドロジニー尺度の妥当性と信頼性を吟味・検討する事である. 当該尺度は性役割現実像10項目と性役割期待像6項目の計16項目からなっている.これら16項目の概念的妥当性が確かめられた.また内的整合性は充分に満足できる水準にある.因子分析の結果3因子を得たが、これら3因子間には高い有意な順位相関関係が認められた.以上のことから,今回提案のアンドロジニー尺度は妥当性と信頼性を兼ね備えたものであると言える.
著者
水野 一枝 水野 康 山本 光璋 松浦 倫子 松尾 藍 岩田 有史 白川 修一郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.391-397, 2012

Eleven healthy male subjects slept from 13:30 to 15:30 under ambient temperature and humidity maintained at 29℃ and RH70%, using polyurethane foam mattresses (U) and camel mattresses (C). A polysomnography,skin temperature (Tsk), microclimate, bed climate, and subjective sensations were obtained. The rapid eye movement sleep (REM) in the first hour for the U significantly increased compared to that for the C. The leg, arm, and mean Tsks for the C significantly increased compared to those for the U during the later segment of sleep. The microclimate humidity significantly increased, while the microclimate temperature and bed climate significantly increased during the later segment of sleep. The subjective humid sensation and the requirement for decreasing the mattress temperature significantly increased in U compared to the C. These results suggest that bed mattress material can increase the subjective humid sensation and the requirement for decreasing mattress temperature by 1) increasing the bed climate and microclimate temperature and humidity, and 2) changing the REM distribution.
著者
西堀 すき江 並木 和子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.845-850, 1985

一般に食用に供することの多い海藻類 (緑藻類1種, 褐藻類3種, 紅藻類3種) のヘキサン : エタノール (79 : 21v/v) 抽出脂質区分に抗酸化性を認めた.抗酸化力は経時的な酸素吸収量による重量法および生成過酸化物のロダン鉄法による測定で調べた.海藻類では, 青のり, わかめの抽出脂質が既存の抗酸化剤BHA, α-トコフェロールに匹敵する抗酸化性を示した.<BR>脂質をTLCで5分画した場合, 2, 4のフラクションに抗酸化性が強く認められ, わかめではフラクション3にも活性が示され, 抗酸化性を示す複数の物質の存在の可能性が認められた.<BR>海藻の抽出脂質類の食品抗酸化剤としての利用の可能性を調べた結果, リノール酸を用いたマヨネーズ, ドレッシング状エマルジョンでは抗酸化性が認められ, 食品抗酸化剤としての利用の可能性があると考えられた.しかし, ラードを用いたクッキーでは顕著な効果は認められなかった.<BR>海藻の抗酸化性物質については, Fujimotoらの海藻リン脂質区分の抗酸化性の報告がある.また, 一般的に天然抗酸化剤として知られているトコフェロール類も海藻中に存在している.そこで, これらとの関連について検討したところ, 本実験で示される抗酸化性物質はTLC, 且PLC等からリン脂質, トコフェロール類とは別個のものであると考えられる結果が得られた.これについては次報に述べる.
著者
榮 光子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.110, 2009

<B>目的</B> 近年、日本において病原性大腸菌O157による食中毒など細菌汚染にまつわる事件が多発し、安全や衛生に関する意識が高まっている。それに伴い、抗菌加工製品の市場は拡大し、特に繊維製品の市場拡大は著しい。本研究では、抗菌加工製品の市場動向、消費者の購買意欲、抗菌に対する意識を調査し、今後の抗菌加工繊維製品市場の動向を検討することを目的とした。<BR><B>方法</B> 2008年8月に百貨店、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストアにおいて、衣料用、インテリア用、バス・トイレ用、日用、医療用繊維製品5品目について、抗菌表示の有無、抗菌剤の種類、価格等を調査し、エクセルを用いて分析した。また、同年8~9月に306人の男女を対象とし、日常生活の意識行動、「抗菌」という言葉の理解度、抗菌効果の評価など全26項目の質問紙調査を実施し、エクセルまたはSPSSを用いて分析した。<BR><B>結果</B> 本市場調査では、医療用繊維製品では75%、バス・トイレ用では53%、インテリア用では14%、日用では9%、衣料用では8%に抗菌表示があった。「抗菌」の意味については75%が正しく意味を理解しており、衣料用繊維製品に対して根強い購買欲求があることが分かった。今後、抗菌加工を強調したり、望ましい抗菌加工処理をすることによって衣料用繊維製品における抗菌市場はより成長するものと思われる。また、トイレ用繊維製品の便座カバーについては、抗菌加工がほぼすべてになされている温熱洗浄便座の普及とともに、減少するものと推察される。<BR>
著者
阪本 弘子 佐野 恂子 山田 令子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.149-157, 1988

愛知県・岐阜県に在住する女子短大生の母親424名を対象に, 和服の着用に関するしきたり, 結婚支度として和服を調製する程度, 衣裳みせの風習の3行動について調査し, 因襲にとらわれた日本の伝統的慣習がいかに受けとめられているかを考察した.方法としては, 和服に対する一般的態度とのクロス集計, 数量化第II類, 重回帰分析 (Fishbeiaの予測式) を行ったが, その結果は次のようにまとめられる。<BR>1) 和服着用に関するしきたりについて<BR>この行動意図は, 行動に対する態度よりも主観的規範の影響を強く受けて生起し, その結果, しきたりは改めたほうがよいという者が約半数であった.しかし, 残る半数は現状の肯定者であり, 古くからのしきたりは無視できないと考えられる.和服に対する一般的な態度との関係は, 好意的な者ほど現状を肯定しており, 主観的規範の影響も非好意的な者より強く受ける傾向が認められた.<BR>2) 結婚支度に和服を調製する程度について<BR>この行動意図は, 主観的規範よりも行動に対する態度の影響を強く受けて生起し, 「人並み」という中立的な者が大半を占める結果をみた.この行動も, 和服に対する一般的態度が好意的な者ほど, 「入並み~人並み以上」に調製しようとしている.また, 数量化第II類で分析した結果, この行動に強く影響を与えるアイテムは, 和服着用程度, 居住地, 世帯主職業, 世帯の全収入であった.<BR>3) 衣裳みせの風習について<BR>この行動意図は, 行動に対する態度と主観的規範が同程度に影響して生起するという特徴があるが, 結果としては衣裳みせはしないという者が大多数であった.和服に対する一般的態度との関係は, 好意的な者ほど, 衣裳みせを肯定している傾向が, わずかばかりみられた.<BR>今回の調査で取り扱った三つの行動は, いずれもその行動意図を形成する過程において, 自分の意志以外に世間体を配慮していることが明確である.このように本音と建前という相反する意識が交錯して実行に移るという一連の概念は, Fishbe海の予測式に示される (態度+規範=行動意図) に適合していると考えられた。さらに彼の予測式を特徴づける重回帰分析を適用することにより, 態度と規範の行動意図へのかかわり方を, 数量的に把握することができたといえよう.
著者
鎌田 佳伸 千葉 真澄 亘 麻希 江端 美和
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.37, 2009

<B>目的:</B>刺繍ミシンの縫い機構は本縫いミシンと同じであるが、ステッチ長の変化が大きく、前後・左右・斜めと種々の方向に縫いが行われるので縫いは極めて過酷である。縫い方向で縫目形成状況が変わるとすれば、それは光沢にも影響を及ぼすことが考えられる。したがって、よりよい光沢を得るためには先ずは縫目形成の実態調査が必要であると考える。本研究では、送り方向による縫目形成の差異について、糸締まり率と動的上糸張力の測定から検討した。なお、刺繍枠の送り方向は左右に限定した。刺繍ミシンはジャノメメモリークラフト10001、設計用ソフトはデジタイザープロ、刺繍糸は♯50ジャノメ刺繍糸(アクリル、濃い緑色(品番206))を用いた。実験要因にはステッチ長と縫い速度を採用した。<BR><B>結果:</B>糸締まり率:本研究において縫目は下締まり状態にある。その中で、枠が左へ移動する時は刺繍として適正な縫目形成状態にあると思われるのに対して、右へ移動する時は過剰に縫い目がゆるんでいた。これは顕微鏡観察でも確認されている。ピーク引締張力の変動は刺繍枠が左に移動する場合に対して右方向に動く場合は大きい。したがって、枠が右よりも左へ移動する時の方が安定した良い縫目形成となる。なお、ピーク引締張力の大きさの左右差はステッチと縫い速度の両者で差が認められなかった。<BR><B>結論:</B>糸締まりの左右差は縫い方の違いに由来すると考えられる。すなわち、枠が左へ移動する時のパーフェクトステッチに対して、右に移動する時のヒッチステッチでは上糸張力による下糸の引き上げが不十分となり糸調子皿から余分な上糸の引き入れが行われるために上糸がゆるむと推測される。
著者
小林 未佳 柚本 玲 若月 宣行
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<b>目的</b> ホールガーメント編機によりニットワンピースを製作する場合、一般的には編目の増減により成型する。本研究では編目の増減をせずに、編目の大きさを変えることによって成型する、新しい製作方法の検討を行った。<b>方法</b> ホールガーメント横編機MACH2X(8G)およびデザインシステムSDS ONE APEX3(SHIMA SEIKI)により、糸2/48(毛100%)を用い平編みで製作した。編目の大きさは、編機の糸引込み量の設定項目である度目値により変更した。肩からワンピース裾までのよこ方向の編目数を同じにし、度目値設定の変更により編目の大きさを変えた。この変更により起こる寸法変化を利用してワンピースの成型を試みた。ワンピースを円筒に見立て、前身頃と後ろ身頃を同幅で編成した。<b>結果</b> 編成可能な度目値の範囲は度目値30~80であった。度目値10ごと(30、40、50、60、70、80)の1目あたりのたてよこの編目長さを測定し、度目値と編目長さの関係式を得た。肩からウエストまでの前後身頃幅は、仕上り肩幅の長さとし、本編機で編成するのに最適な度目値50で編成した。この場合に必要なよこの編目数を関係式から算出し、編目数136で編成した。裾に向かって幅が大きくなるようにウエストから度目値50から10ずつ80まで上げた。その結果、上半身は身体に沿い、ウエストから裾に向かって広がるフレアスカートワンピースを成型することができた。
著者
岡崎 貴世
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.274, 2009

【目的】冷蔵庫は毎日の食事で私たちが口にするものを保存している場所であるため、衛生には特に注意を払い清潔に保っておきたい。しかし、台所のシンクやガスコンロ周りなど汚れが目につきやすい箇所は掃除の頻度が高いが、冷蔵庫は温度が低く菌に汚染されにくいというイメージがあり、定期的に掃除を行う家庭は少ないのではないのかと考えられる。そこで一般家庭の冷蔵庫の細菌汚染状況及び掃除頻度を調査した。<BR>【方法】調査は本学学生86名を対象とし、2008年6月17日から7月16日に実施した。細菌検査は、生菌数用・標準寒天と大腸菌・大腸菌群用XM-G寒天(フードスタンプ「ニッスイ」)を使用し、冷蔵庫の棚とドアポケットの2ヶ所を検査した。冷蔵庫の掃除頻度は、自記式アンケートで調査を行った。<BR>【結果・考察】調査した全ての冷蔵庫から一般生菌が検出された。また、4割を超える冷蔵庫から大腸菌群が検出された。掃除頻度の低い冷蔵庫ほど検出される菌数は多い傾向にあったが、各冷蔵庫でばらつきがみられた。庫内の汚染状況は、ドアポケットより棚の方が菌の検出率が高かった。これは、棚に置いている他の食材からの汚染が原因のひとつと考えられた。冷蔵庫の掃除は、「年に1回程度している冷蔵庫」では年末やお盆前など決まった時期に行っていることが分かった。しかし、「年に2~3回している冷蔵庫」は『気が向いた時』や『汚れた時』など、不定期に掃除を行っているケースが多く、汚れた部分のみを掃除している可能性が考えられた。今回の結果より、各家庭の掃除頻度は予想以上に低く、また冷蔵庫は多くの細菌に汚染されていることが明らかとなった。
著者
早川 文代 風見 由香利 阪下 利久 上平 安紘 池羽田 晶文
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

【目的】モモの品質には果肉部の軟らかさや特有の風味が重要である。しかし、部位差、剥皮時の果肉損傷および剥皮後の褐変が著しいため、官能評価が難しく、その報告例は少ない。本研究では、モモの分析型官能評価法を設計し、品種および追熟条件の異なる種々の試料の官能特性の数値化を試みた。<br>【方法】官能評価設計には、2014年、2015年産のモモ9品種(日川白鳳、浅間白桃、一宮白桃、川中島白桃、なつっこ、さくら、幸茜、甲斐黄桃、黄金桃)を用い、官能評価パネルの討議および篤農家への面接調査を行った。本評価では、2016年産の6品種について、出荷翌日の果実を、追熟なし、5℃あるいは20℃で4日間追熟させ、その後24時間20℃に置いて試料とした。パネルは選抜、訓練された9人とし、赤色照明下のブースで評価を実施した。各パネリストに試料1果を提示し、においかぎによる香りの評価後、自身で試料片を調製させ、風味およびテクスチャーを評価させた。あわせて、硬度および可溶性固形分を測定した。<br>【結果】「花様の香り」「ココナッツの香り」等、18特性について、各試料の官能評価データを得た。追熟によって、テクスチャーの軟化と香りの増加がみられ、その変化は20℃で顕著であった。においかぎによる香りの評価は、試料片の口中香の評価よりも、品種間差および追熟条件間差の検出力が高く、皮の香気の影響および味やテクスチャーとの相互作用の影響が推察された。
著者
人見 英里 國廣 明子 乃木 章子 安藤 真美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 60回大会(2008年)
巻号頁・発行日
pp.327, 2008 (Released:2008-11-10)

【目的】生体には解毒代謝機構が備わっており、肝臓が重要な役割を担っている。真の解毒代謝といわれる第二相解毒代謝では、第一相解毒代謝で水酸化された化合物がグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)等の抱合酵素により、より水に溶けやすい形となって体外に排出される。このGSTを誘導する食品として、ブロッコリーを代表とするアブラナ科野菜が知られているが、調理操作を行った場合のこれら野菜の解毒酵素誘導活性については未だ検討されていない。そこで本研究ではアブラナ科野菜に対し一般的に行なわれる調理操作を施し、GST誘導活性能の変化について検討した。 【方法】試料には、葉わさび、花わさび、はなっこりー、菜の花、ブロッコリースプラウト、カイワレ大根を用いた。これらの野菜に一般的な調理法である茹で、湯通し、電子レンジ加熱などの加熱操作を行い、生および加熱野菜をエタノールで抽出した。これらの抽出液をラット肝臓由来RL34細胞に投与し24時間培養後のGST活性をCDNB法により測定した。 【結果】生の葉わさび、花わさび、はなっこりー、菜の花は、高いGST誘導活性を示した。葉わさび、花わさびは湯通しにより、90℃の湯を用いた場合では非加熱に比べGST誘導活性は低下したが、80℃の湯を用いた場合では高まる傾向がみられた。ブロッコリースプラウトについては、湯通し後GST誘導活性が高まる傾向がみられた。カイワレ大根については、湯通し後もGST誘導活性は非加熱の場合とほとんど変わらず高いままであった。以上の結果から、野菜に加熱操作を施すことは野菜のGST誘導能を高める効果を持つことが推察された。
著者
庄司 一郎 倉沢 文夫 安立 清一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.666-671, 1979

米菓を製造するときの蒸煮条件および冷却条件と米菓の品質や生地の糊化, 老化との関係をおもにアミログラム, 焼き上げ生地容積, 硬度等で検討し, 次の結果を得た.<BR>1) 焼き上げ生地の品質を容積, 硬度から検討した結果では, 蒸煮条件においては110℃蒸煮は99℃蒸煮よりも容積が大で, 軟らかな焼き上げ生地が得られた.また110℃に蒸煮した生地を冷却した場合では凍結, 流水中冷却の品質がよく, 室温, 冷蔵庫冷却はよくなかった.そして冷却時間では15分冷却がよく, 24時間冷却すると品質が低下した.<BR>2) 蒸煮および冷却後脱水乾燥生地のアミログラムからは蒸煮条件においては110℃, 10分以上蒸煮すると初発粘度が高い値を示し, 粘度上昇はみられず, たんに温度変化とともに粘度が多少変化するのみで未糊化生地と考えられるピークはみられず糊化されていることが明らかとなった.99℃は20分蒸煮しても初発粘度が低く, 未糊化生地と考えられるピークがみられ糊化は完全には行われていなかった.<BR>蒸煮後冷却条件を検討した結果, いずれの冷却方法においても110℃蒸煮にみられたような一直線の曲線はみられなかったが, 凍結, 流水中冷却は初発粘度が高い値を示し, 室温冷却は低い値を示した.冷却時間では15分に比して24時間はいずれの冷却方法とも各特性値が低い値を示す傾向がみられた.<BR>3) 以上のように米菓の品質は蒸煮条件では糊化が完全に行われた110℃蒸煮のほうが糊化が不十分な99℃蒸煮よりも品質がすぐれており, アミログラムとの関係では品質の良い生地は初発粘度が高く, 未糊化生地と考えられるピークはみられないが, 品質の良くない生地は初発粘度低く, 未糊化生地と考えられるピークがみられた.一方冷却条件では凍結, 流水中冷却の品質が良く, 室温, 冷蔵庫冷却は品質がよくなかった.そして品質の良い生地は初発粘度が高く, 良くない生地は逆に低い値を示した.最高粘度, 冷却最終粘度においてもだいたい同様な傾向を示した.