著者
長保 美也 三野 たまき
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>【目的】</b>肥満は成人病などの様々な病気の原因とされている。これを予防し健康的な生活を送るためには,食生活に留意すると共に,運動習慣を身につけ,体脂肪を適量に保つ必要がある。誰もが無理なく行える有酸素運動下において,体脂肪が燃焼しやすい条件を探ることを目的とした。 <b>【実験方法】</b>被験者は20~22歳の成人女子11名であった。彼女らに測定前夜7時間の睡眠をとらせ,測定2時間前までに規定食を摂食させた。人工気象室(環境温度24.5&plusmn;0.3℃,相対湿度50&plusmn;0.5%)に入室後,有酸素運動の範囲内で,自転車エルコ゛メーターによる運動負荷を30分間与えた。<b>実験Ⅰ:</b>ある被験者の夏・冬季の呼吸代謝をそれぞれ月経2サイクルにわたって測定した。 <b>実験Ⅱ</b>(冬季に実施):全被験者それぞれの月経周期の位相の①低温期と②高温期に半袖・半パンで数段階に運動負荷を変えた時,③半袖・半パン,④長袖・長ズボン・帽子・ネックウオーマーを着用し,かつ,休憩を交えて10Wの運動負荷の時,4条件下で呼吸代謝を測定した。得られたRQから,消費エネルキ゛ー(kcal/min)とその由来〔糖・脂肪(g/min)〕を算出した。【<b>結果・考察</b>】<b>結果Ⅰ:</b>有酸素運動下における消費エネルキ゛ー量は有意に夏>冬,脂肪量は有意に夏>冬であったことから,夏の方が脂肪は多く燃焼することがわかった。また脂肪量は夏季では高温期>低温期であるが,冬季では低温期>高温期となり,冬季は夏季に比べて,また冬季の高温期に特に脂肪が消費されにくくなることが示唆された。<b>結果Ⅱ</b>:消費エネルキ゛ー量は有意に①>③・④,②>③・④,④>③であった。糖・脂肪の消費量は有意に①>③・④,②>③であった。脂肪消費量と心拍との関係についても述べる予定である。
著者
池谷 真梨子 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.70-79, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
23

We carried out a survey, using a questionnaire, on the approaches being taken by nursery schools to infants' finger-feeding and on nursery school teachers' perspective on the importance of finger-feeding and related factors, in order to obtain basic materials which would assist in the promotion of infants' finger-feeding at nursery schools. The survey targeted nursery school teachers working at 1,627 nursery schools in Tokyo and the response rate was 37.1%.  Approximately 95% of the responding nursery schools are actively promoting finger-feeding. Nursery schools taking proactive approaches are encouraging cooperation among nursery school staff and are also actively providing assistance to infants' families.  Many of the nursery school teachers report that infants active in finger-feeding later become highly-motivated towards eating. The survey suggests that factors relating to finger-feeding include infants' interest in eating, how they are fed at home, forms of meals and infants' individual likes and dislikes.  From the above, we are of the opinion that in order to promote infants' finger-feeding at nursery schools it is critical that cooperation among nursery school staff be encouraged, that infants' interest in eating be fostered, and that cooking staff-including nationally-certified and other nutritionists-provide meals in forms which facilitate finger-feeding. Furthermore, we believe it is necessary for nursery schools to communicate the importance of finger-feeding to infants' families so that an environment at home can be developed where infants' finger-feeding is accelerated.
著者
岡本 祐子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 = Journal of home economics of Japan (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.923-932, 1995-10-15
参考文献数
3
被引用文献数
1

高齢者の精神的充足感獲得の実態を調査し, それに関連する生活的・心理的要因を分析した.高齢期の精神的充足感形成に関連する要因として, (1) 高齢者をとりまく物理的・環境的状況に関する要因 : 家族構成において配偶者や孫と同居していること, 健康, 経済状態がよいことなど, (2) 自分の現状に対する高齢者自身の主観的評価に関する要因 : 他人や社会に対する貢献度, 家族との関係, 宗教・信仰などにおいて満足できていること, (3) 高齢期以前の要因 : 現役引退までの職業, (4) 人格的要因 : 主体的欲求をもっていること, の四つの側面が存在することが示唆された.高齢期の精神生活の質的向上のためには, これらの側面の状況の改善とともに, 高齢者の主体的欲求が実践できるような支援を行っていくことの必要性が考察された.
著者
小田 良子 加藤 恵子 原田 隆 内田 初代 猪飼 弘子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.345, 2007

[目的] 本研究は,現在の高齢者の日常生活に関する実態および意識(基本的属性・栄養・運動・休養・余暇活動)について調査し,生きがいを持って健康生活を送る方法を見出すための基礎資料とすることを目的とした.本報では,身体状況と健康意識の関連について検討した。[方法] あいち高齢者大学受講生を対象に生活習慣に関するアンケート調査を2006年9~12月に実施した.分析対象者は618名,平均年齢68.9歳(男性283名,女性335名)であった。[結果] 分析対象者の体格はH16年国民栄養調査と比較すると,身長には差がなかったものの,体重,BMIについては全国レベルより低く,有意な差が見られた。このことからBMIは標準域にあるものの全国レベルよりも細身であった。また,メタボリックシンドロームの1つの尺度であるウエスト周囲径の平均は,男性84.4cm,女性83.9cmであった。服薬有の割合は,男性63.6%,女性57.0%であり,服薬の種類についてみると,男性は血圧降下薬40.2%,コレステロール降下薬15.1%,女性は血圧降下薬37.9%,コレステロール降下薬28.1%であり,服薬の種類には男女の違いが有意に明らかになった。さらに,ウエスト周囲径および服薬の内容から,メタボリックシンドロームおよび予備群の割合をみると男性はメタボリックシンドロームが4.6%,予備群20.8%,女性では前者が3.0%,後者が11.0%であった。国民栄養調査と比較すると,かなり少ない結果であった。また健康(運動・栄養・休養)に関する意識では男性,女性では若干違いはみられたものの良好な結果であった。
著者
渡邊 慎一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.231, 2009

<B>目的</B> 本研究は、アンケート調査に基づいて炬燵の使用実態を把握すると共に炬燵の使用終了日を特定することを目的とする。<BR><B>方法</B> アンケート調査は2008年4月下旬から7月に、愛知県を中心に実施した。回収したアンケート総数は1488件である。アンケートは以下の8項目から構成した。1.今年、炬燵を使用したか 2.いつ炬燵の使用を止めたか 3.性別 4.年齢 5.居住地の郵便番号 6.居住形式 7.築年数 8.自由記述。<BR><B>結果</B>(1)炬燵の所有率は全体の70%であった。住居形式別にみると、戸建住宅が77%、集合住宅が61%であった。また、炬燵の使用率は全体の53%であった。<BR>(2)地域によって炬燵使用を終了する時期に差があることが示された。20%の人が炬燵使用を終了する日は愛知県が3月20日、島根県が3月27日、長野県が4月1日であった。また、80%の人が炬燵使用を終了する日は愛知県が5月10日、島根県が5月11日、長野県が6月19日であった。寒冷な地域において炬燵使用を終了する時期は、温暖な地域よりも遅いことが示された。<BR>(3)20%の人が炬燵使用を終了した日の最低気温は、愛知県が7.8℃、島根県が5.6℃、長野県が0.7℃であった。また、80%の人が炬燵使用を終了した日の最低気温は、愛知県が14.6℃、島根県が11.2℃、長野県が12.6℃であった。<BR>(4)男性の方が女性より早く炬燵使用を終了する傾向がある。<BR>(5)30歳までは炬燵使用を終了する時期に差がみられないが、31歳以上になると徐々に炬燵使用を終了する時期が遅くなる傾向がある。<BR>(6)集合住宅の方が戸建住宅より早く炬燵使用を終了する傾向がある。
著者
小口 悦子 山越 美歩 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.691-700, 2011-11-15 (Released:2013-09-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2

The relationship is clarified between the form of choux pastry when baking, and the expansion and cavity formation in choux pastry prepared at different preheating temperatures.The preheating temperature was varied from a level at which the dough did not gelatinize to a higher level. Experimental results show that the expansion and cavity formation in choux pastry depended on its form for baking despite its degree of gelatinization or viscosity. Choux pastry samples free on a baking sheet and preheated up to 98℃ could expand with a single cavity during subsequent baking at more than80℃, but could not expand when preheated up to 70℃. Although choux pastry samples placed in a baking cup and preheated up to 70℃ could expand during subsequent baking. DSC measurements showed that the dough had not sufficiently gelatinized when preheated to this temperature. Despite adequate viscosity when preheating the dough up to 98℃, expansion and cavity formation were insufficient with some sizes of baking cup. The preheating temperature was not critical for good expansion and cavity formation to be obtained with the ratio (height/diameter) of dough more than 0.14.
著者
杉田 あけみ 伊藤 セツ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.144, 2007

<B>目的</B>ワークライフ・バランス(WLB)のとれた働き方ができる環境整備は,男女共同参画社会の実現であり,少子化対策でもあるという政府見解(内閣府2006:3)が示された.企業における経営資源としてのヒトは,個人・家庭・地域においては血のかよった人間である. WLBのとれた働き方ができる環境整備の前提として,このような認識がなければならない.そこで,男女従業員のWLBの現状を把握し,WLB施策とその実施効果に関する男女従業員と企業との認識を生活経営の視点から検討する.<BR><B>方法</B>ファミリー・フレンドリー企業表彰受賞企業(1999~2005年)と均等推進企業表彰受賞企業(1996~2006年)の従業員(男性172人,女性133人)へ「WLB尺度」(WLB実態尺度とWLB満足尺度)による調査を実施した.WLB施策,同施策実施効果に関する調査も実施した(上記従業員と企業49社).2004年に実施した調査との継続において,生活経営の視点から考察した.<BR><B>結果</B>WLB尺度の位置は従業員個々人によって異なるが,「仕事中心の生活に満足していない」従業員は,「仕事中心の生活に満足している」従業員の男性で2.2倍,女性で3.8倍である.男女従業員は,WLB施策では,「長時間労働の廃止」を,同施策実施効果では,「従業員の職場生活と家庭・個人生活とにゆとりと豊かさが生まれ,従業員は,職場生活でも家庭・個人生活でも幸福感を得ることができるようになる」を,上位項目に選択している.企業も同項目を上位に選択している.調査結果から,本報告では男女従業員個々人が満足を得ることができるWLBの実現に向けて,生活経営の視点から企業へ働きかける方策を示した.
著者
久保田 紀久枝 勝見 優子 黒林 淑子 森光 康次郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.160, 2006

目的 セルリアク(Apium graveolens var. rapaceum)はセロリの変種で、ヨーロッパでサラダやスープなどによく利用されている。生ではセロリ様の風味を呈するが、加熱すると甘く香ばしいにおいとなる。本研究では、生および煮熟セルリアクの香気特性および主な香気寄与成分について明らかにすることを目的とする。方法 セルリアクの皮をむき2等分した後、細断後水とともにミキサーでホモジナイズし、一方は1h静置、他方は1h沸騰加熱した。遠心分離により上澄液を得、Porapak Qを充填したカラムにて香気成分を捕集した。有機溶媒で脱着・濃縮した画分をさらに高真空蒸留法により香気濃縮物を得、GC, GC-MS, GC-Olfactometryにより分析した。また、生と煮熟セルリアクのにおい特性を官能評価法により比較した。結果 官能評価の結果、セルリアクは煮熟するとみずみずしい青臭いにおいからキャラメル様の甘さや煮た野菜の甘さを感じさせ、まろやかさと深みのあるにおいになると評価された。香気成分組成を見ると、セロリ様の香りを有するフタライド類が生と煮熟いずれにおいても主成分であった。その他、生には青臭い香りを有するβ_-_ピネンなどのテルペン炭化水素類が多いのに対し、煮熟したものにはフラネオール、バニリン、マルトール、ソトロンなど甘い香りに寄与する成分の生成が認められた。さらに、クローブ様のスパイシーなにおいをもつ2-メトキシ-4-ビニルフェノールの顕著な生成が認められ、これらが官能評価で煮熟セルリアクが甘みや深みのあるにおいと評価された特徴香気に寄与していると考察された。
著者
山下 広美 金行 孝雄 西江 知子 辻岡 智子 伊月 あい 木本 眞順美 比江森 美樹 辻 英明
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.155, 2003

[目的] 持続的運動の最中、肝臓では脂肪酸の&beta;-酸化が盛んに行われ、著量のケトン体が生成される。ケトン体は血中に放出されると筋肉組織に取り込まれ、ミトコンドリア内で酸化分解を受けてエネルギーに変換される。持続的な運動を継続すると持久性は向上するが、演者らは、肝外組織のケトン体利用活性増大にその一因があると考えた。本研究では約1ヶ月の持久性トレーニングをラットに施し、その筋肉のケトン体利用活性について調べた。[方法] 4週齢の雄ラットに電動回転カゴを用いて速度17.7m/min での運動を毎日1時間課し、約1ヶ月間継続した。実験期間中の体重および摂食量を記録した。運動群および運動をさせなかった対照群のラット3匹ずつを解剖し、肝臓、心臓および骨格筋からミトコンドリアを単離した。単離したミトコンドリアについて、&beta;-ヒドロキシ酪酸を基質とした呼吸活性および&beta;-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(HBD)活性を測定した。さらにHBD遺伝子の発現を調べるために各組織からRNAを抽出しノザンブロットを行った。[結果] 運動群ラットにおける心臓ミトコンドリアの呼吸活性は、対照群と比較して有意に増加していた。肝臓、心臓および骨格筋ミトコンドリアの HBD活性を比較すると、心臓および骨格筋における本酵素活性は運動群で増加していたのに対して肝臓では変化していなかった。心臓および骨格筋ではケトン体利用活性が上昇していることが示唆された。各組織におけるノザンブロット解析の結果、心臓において本酵素遺伝子の発現が有意に増加していた。
著者
貝沼 やす子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.785-792, 2006

1) 凍結中の温度履歴では, -20℃より-40℃, 塊よりはシート状, 200gよりは100gの方が, 短時間で最大氷結晶生成帯を通過した. 特に, -40℃・シート状・100gが早く, -20℃・塊・200gが最も通過時間が長かった.<br>2) テクスチャー測定ではほとんどの冷凍保存粥が炊きたてと比較して, かたく, 付着性が大きくなり, 冷凍保存により粥の性状が変化することが確認できた.団塊法では, -20℃より-40℃, 塊よりはシート状, 200gよりは100gの方がやわらかく, 付着性が小さかった. 飯粒法でも同様の傾向がみられたが, シート状・100g, 塊・100gは-20℃より-40℃の方がかたく, 最大氷結晶生成帯通過時間の短い-40℃の方が粥飯粒の崩壊が少ないためと考えた.<br>3) 画像解析結果では-20℃保存の粥に面積の小さな粥飯粒が多く存在していることが示され, これらの飯粒の存在が粥飯のテクスチャーに影響を与えたものと推察された.<br>4) 官能評価では, ほとんどの冷凍保存粥は, 炊きたての粥と比較して, 粒の形が残っておらず, 粒々感, さらさら感がないと評価されたが, -40℃・100gは塊, シート状いずれも炊きたてに近い粥であると評価された. 一方, -20℃, 塊, 200gの保存条件では炊きたてより粥の性状が劣ると評価された.<br>以上, 1)~4) の結果から, 保存形態を問わずに推奨できるのは100gの粥を-40℃に保存する方法であった.
著者
岡本 洋子 吉田 惠子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目 的</b> 我々の健康維持や生活習慣病を予防するうえで、塩味や甘味の低減を考慮した食べ物の摂取が望まれる。本研究では、塩味と甘味の感じ方について、呈味量を軽減したうえで満足感を享受できる方法を明らかにすることを目的として行った。<br><b>方 法</b> 健康な女子学生27~34名を評価者として、「塩味均一試料」と「塩味外側試料」について、0.9%,0.6%,0.3%食塩濃度の塩むすびを調製して官能評価を行った。甘味類では、「甘味内側試料」と「甘味外側試料」を調製した。塩・甘味強度と嗜好性を、2点識別・嗜好試験法によって調べた。さらにカテゴリー尺度による評点法を用いて呈味強度と嗜好度を調べ、対応のあるサンプルのT検定を行って解析した。<br><b>結 果</b> 塩むすびにおいて、同一塩分濃度の場合には、「塩味均一」に比べ「塩味外側」が、有意に塩味が強いことが示された(<i>p</i><0.01)。さらに塩分濃度を2/3あるいは1/3に減じた場合であっても、「塩味均一」に比べ「塩味外側」が、有意に塩味が強いことが示された(<i>p</i><0.05)。塩を均一に混ぜる場合と外側にまぶす場合では、嗜好性については、有意差はみられなかった。同一甘味濃度では、甘味を試料の内側に入れるより、外側に甘味を添加した方が、有意に甘味が強いことが示された(<i>p</i><0.05)。6種の甘味試料のうち、5種の甘味試料について、「内側にのみ甘味」と「外側にのみ甘味」の試料間の嗜好性に有意差はみられなかった。食品に塩味や甘味を局在させた方が、塩味や甘味に対する満足感が大きいことが示唆された。
著者
芳住 邦雄 斉藤 栄一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.183, 2003

<目的> 廃棄物として処理される布団は年間1000万枚にも及ぶと推定される。循環型経済杜会の構築に寄与するための一つとして、布団の洗浄を行い3Rに貢献することが考えられる。一方では、清潔な就寝環境を得るために布団を洗いたいとの要求には根強いものがある。本研究は、布団を家庭用洗濯機で洗浄する際の使い勝手および乾燥特性を明らかにすることを目的としている。形状および充填量、中ワタの素材による影響を検討し、洗える布団を設計するに資する情報を得ることに主眼を置いている。<実験方法> 1)実験用布団:中綿に(1)ウォッシャブルポリエステル100%(2)ウォッシャブルウール100%(3)通常ウール50%・通常ポリエステル50%(4)通常ポリエステル100%(5)綿100%を用いて、クッション・サイズおよび幼児用サイズの布団を試作した。2)洗濯方法:市販7Kg用洗濯機を用いて、洗剤を加えて通常の洗濯プロセスにより自動運転した。最終的には、自動により脱水を行った。3)乾燥過程の測定:電子天秤を用いて重量を測定し、その減少量を以って、洗濯後の水分乾燥量とみなした。クッション・サイズについての乾燥実験は、実験室内で行いデータは1分間ごとに記録した。幼児用サイズでは、屋外にて乾燥実験を実施し、1時間おきに重量を測定した。<結果と考察> 中ワタの素材による乾燥特性の相違を、濡れ率={(濡れ時重量)-(乾燥重量)}/(乾燥重量)で定義して比較した。乾燥性はクッション・サイズおよび幼児用サイズの両実験に共通して、総合的に下記の順で良いことが明らかとなった。綿100%>ウォッシャブルポリエステル100%>通常ウール50%通常ポリエステル50%>ウォッシャブルウール100%>ポリエステル100%幼児用サイズにおいては中ワタ量によっては、家庭用洗濯機で洗うには困難が伴うことが実験結果から判断された。洗い勝手を考慮して敷布団構成は、二枚重ねにする必要があると結論した。直接肌に触れる上部敷布団は、肌にやさしい天然素材でかつ吸収性のある綿100%とし、その下側に透湿性および乾燥性に利点のあるウォッシャブルボリエステル100%を使用することとした。中ワタ重量を0.5kgにし再び乾燥実験を行った。冬期でも晴れの天候下では乾燥可能なことを確認出来た。以上の結果から、自動洗濯機で充分脱水するならば、上述の組み合わせは、洗える布団の構成として実用的に供しうると結論された。
著者
大矢 勝
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

目的 洗浄現象を理論的に解析するのに役立つ新たな洗浄力指標<sup>1)</sup>について検討した。汚れの付着力および洗浄作用のばらつきが正規分布に従うと仮定し、双方の確率密度関数から洗浄過程をシミュレートし、洗浄作用の分布の中心(&mu;<sub>RL</sub>)、および洗浄作用のばらつき(&sigma;<sub>RL</sub>)を汚れの付着力の相対位置として求める。この手法を検証した。<br>方法 酸化鉄(Ⅲ)、各種油性色素、各種酸性染料などをモデル汚れとして、ターゴトメータで5分間の洗浄を4回繰り返し、その間の洗浄率変化を求め、シミュレーションアプリケーションで&mu;<sub>RL</sub>と&sigma;<sub>RL</sub>を計算した。洗浄率は表面反射率からK/S値を求め、質量単位の洗浄率に近似できる洗浄率として計算した。ターゴトメータの回転数(60~180rpm)、各種界面活性剤の濃度、洗浄温度などを変化させて&mu;<sub>RL</sub>と&sigma;<sub>RL</sub>への影響を探った。<br>結果 &sigma;<sub>RL</sub>の値はカーボンブラック汚染布、酸化鉄汚染布、湿式人工汚染布が小さな値、油性汚れ(油溶性染料)が中程度、水溶性汚れ(酸性染料や直接染料)は大きな値となった。<sub>&sigma;RL</sub>の値がほぼ一定の値をとる条件下で、ターゴトメータの回転数、界面活性剤濃度などを変化させると、&mu;<sub>RL</sub>に加算法則が成立することが分かった。<br>実験に協力頂いた、羽田さん、執行さん、小野さん、平出さんに感謝する。
著者
今村 律子 西岡 真弓 赤松 純子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 「アイロンかけ」を体験するだけの授業を、中学校家庭科のねらいである「実践的・体験的な学習活動を通して」科学的に学ばせる授業へと転換することで、生活の中で応用し生かしていける力をつける授業づくりを目指した。<br><b>方法</b> 題材名「アイロンを極めよう」(2時間)で「繊維や布の特徴を理解したアイロンかけができる」ことをねらいとする授業実践を和歌山県内の中学校3校の1・2年生対象(285名)に実施した。しわが伸びる三要素(熱・水分・圧力)を押さえ、種々の衣生活内容と関連付ける授業内容と効果的な指導方法を研究した。また、生徒の授業前後のアンケートなどにより授業の効果を確認した。<br><b>結果 </b>1.「アイロンかけ」実習授業(2時間)に衣生活の総合的な視点を取り入れ、1時間目は【基礎編】、2時間目は【応用編】として内容を整理した授業が実践できた。<br>2.「しわが伸びる原理を示す模式図」や「カッターシャツ解体見本」、「アイロンかけビデオ」などの視覚的教材を活用した指導の工夫ができた。<br>3.「アイロンかけ」実習は、1枚のカッターシャツを分担し相互評価をさせるグループ学習により、時間を有効に使いながら相互に学び合う効果的な学習ができた。<br>4.1時間目実習時に生徒が気づいた「しわを整えるとかけやすそうだ」などの意見を生かし、かけ方のコツについて科学的に考えを深める問題解決学習ができた。<br> 本研究の一部は、基盤研究(B)26282011による。
著者
望月 美也子 重村 隼人 長谷川 昇
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.116, 2007

<B>目的</B> 炎症性腸疾患は、腸粘膜に慢性の炎症または潰瘍を引き起こす難治性特定疾患の総称であり、過剰な過酸化物の生成により発症することが明らかとなっている。一方、シクンシ科植物であるテルミナリアのその抽出物質であるセリコサイドは、<I>Terminalia sericea</I>の樹皮および根に由来し、アフリカや東南アジアでは、抗酸化作用を持つハーブとして民間療法に用いられている。そこで、本研究は、2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)によって誘発される、炎症性腸疾患動物モデルに対するセリコサイドの炎症性腸疾患保護効果を確かめるために行われた。<BR><B>方法</B> 雄SDラット(165±10g)を用い、セリコサイド(30mg/kg)を10日間連続的に経口投与した。その後、炎症性腸疾患を誘発させるためTNBS50%エタノール水溶液(120mg/Kg)を直腸内投与した。12時間後、大腸を採取し、炎症部位のダメージスコア、好中球浸潤の指標であるmyeloperoxidase(MPO)活性、superoxide dismutase(SOD)活性を測定した。<BR><B>結果・考察</B> 本研究の結果、TNBSによる潰瘍、出血を伴う炎症性大腸炎の症状と、MPO活性の有意な増加が見られた。この際、あらかじめセリコサイドを投与しておくと、粘膜肥厚と出血が抑えられ、白血球の浸潤も抑制された。以上の結果を総合すると、セリコサイドはTNBSによって惹起された炎症性腸疾患の粘膜保護に有効であることが明らかとなった。
著者
望月 美也子 重村 隼人 長谷川 昇
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.71, 2006

【目的】シクンシ科植物であるテルミナリアは、東アフリカなどの熱帯地方に約250種分布するといわれ、国内では沖縄県の海岸地帯に多く自生している。その抽出物質であるセリコサイドは、Terminalia sericeaの樹皮および根に由来し、アフリカや東南アジアではハーブとして民間療法に用いられている。そこで本研究では、抗肥満作用が報告されているセリコサイドに着目し、脂肪細胞の脂質代謝に及ぼす影響を確かめるために行われた。【方法】3T3-L1細胞を培養し、細胞がconfluenceに達した時点で、インスリンを培養液に加え、脂肪細胞へと分化させた。充分に脂肪を取り込んだ細胞に、セリコサイドを添加し、取り込まれた脂肪がどのように変化していくかを観察した。脂質動態の判定は、超音波処理細胞浸出液中の細胞質グリセロール量と細胞質中性脂肪量を測定した。【結果・考察】充分に脂肪を取り込んだ細胞に、セリコサイドを添加すると、コントロールに比べ蓄積脂肪が減少し、細胞質グリセロール量が増加する傾向がみられた。これらの結果は、セリコサイドの添加時間と濃度に依存的であった。
著者
田口 秀子 河本 美智子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.603-613, 1986

乳児の適切な衣服着装を考えるための資料とすることを望み, 乳児を対象として, その衣服着装状態を母親に対するアンケート方法により回答を得て, 母親からみた乳児の衣服着装状態を検討した.<BR>乳児における衣服着装状態は, 各季節を通じて「ちょうどよさそうである」と思っている母親が室内では82~100%あり, 戸外では46~70%であった.しかし, 快適感では春, 冬に室内で11~12%の母親が「不快」ではないかと感じており, 戸外では20~49%の高い割合を示した.秋には室内, 戸外とも「快適である」と思っている母親は100%であり, 秋の戸外で14%の母親が「涼しそうである」とする傾向は快適感としてとらえているようである.また, 季節別にみて夏では蒸暑感を, 春と冬には冷感を感じていると回答した母親の割合が高い.しかし, 母親からみた乳児の厚着および薄着感は, 室内と戸外での傾向が似ており, 春, 夏, 冬においては「普通である」と思っている母親が, 室内で50~89%, 戸外は64~83%と多く, 秋では室内で41%, 戸外で36%の母親が「やや厚着である」と思っており, 全体的に春, 夏は薄着, 秋, 冬はやや厚着の傾向であった.<BR>母親からみた乳児の身体局部における冷感は, 春, 秋, 冬にあり, 室内, 戸外とも衣服で被覆されていない, 手, 足, 首, 顔, 頭にあると思う母親が多い.<BR>乳児の衣服着装の特徴としては, おむつカバーを除くすべての衣服が, 月齢よりも大きく, おむつカバーのように, その衣服の機能上フィット性をより望むもの以外は, 乳児の成長度を加味して大きなサイズの衣服を選択しているようである.それらの材質は, 肌着, ブラウス, Tシャツ, ベビードレス, カバーオール, ショートパンツ, おむつ, よだれかけ等, 直接肌に触れる割合の多い衣服がほとんどであるために, 取り扱いやすい綿が選ばれている.しかし, 乳児の月齢が増すにしたがって, 耐久性や耐洗濯性のある材質を着装させている.<BR>乳児の衣服着装パターンの特徴は, 各季節ともロンパース, カバーオールが主体で, ベビードレスは春に着装させる割合が比較的多く, 他の季節での着装は少ない.夏には肌着を着装させないで, Tシャツ+ズボンまたはロンパースのみという薄着の着装もあるが, 春, 秋, 冬では, おむつ+おむつカバー+肌着+カバー・オールまたはロンパース・ブラウス+ズボン+よだれかけが代表的なパターンである.なお, くつ下は夏, 秋に用いることは少ない.また, 家族構成別に乳児の着装パターンの特徴をみると, 祖母同居の家庭では父母のみの家庭にくらべ, 春, 冬に乳児の衣服着装枚数が多く厚着であり, 夏は薄着の傾向である.また, 授乳の方法別にみた乳児の着装パターンは, 秋, 冬の母乳児では薄着, 混合乳児ではやや厚着の傾向がみられた.
著者
荒川 友美子 田中 辰明
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.229, 2005

<b>目的</b> 平成15年6月「高齢者、身体障害者の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」が改正された。これにより、公共交通機関においてもユニバーサルデザインの考え方に基づくバリアフリーが広まっている。福祉後進国といわれているわが国であるが現状でのバリアフリーの普及はどの程度であるか、福祉先進国であると予想したイギリス、ロンドン地下鉄と東京メトロのバリアフリー施設の設置について比較検討することで、今後日本が公共交通機関においてバリアフリーをどう普及していくべきか提案することを目的とした。<br><b>方法</b> 日本とイギリスの公共交通機関のバリアフリー施設の設置について比較するために、日本においては東京メトロ各駅、イギリスにおいてはロンドン地下鉄各駅を調査対象とし、エレベーター、エスカレーター、ホームドアシステム、電車内での車椅子スペースなど、バリアフリー設備の有無を調査した。<br><b>結果</b> 東京メトロ駅総数169駅のうち81駅が、ロンドン地下鉄駅総数323駅のうち66駅においてエレベーターの設置があった。ホームドアシステムについては東京メトロ19駅に対し、ロンドン8駅という結果であった。バリアフリー設備の有無の割合では東京がロンドンより大幅に高いという結果になった。
著者
磯部 由香 阪 恵理子 松井 宏樹 成田 美代
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.633-637, 2011

The chemical composition and bacterial community structure of konoshiro-narezushi were analyzed, the latter by the 16S ribosomal RNA gene clone library method. The respective moisture and the lactic acid concentrations were 62.4% and 1.8%. One hundred randomly selected clones from the clone library were sequenced and analyzed. There were six operational taxonomic units, and the Shannon-Wiener index was1.037. The sequence similarity of all the clones obtained was equal to or higher than 99.6% of the sequence of cultivated bacteria in the public database. Lactobacillus sakei constituted 61% of the clones, suggesting that this bacterium plays an important role in the fermentation of konoshiro-narezushi.
著者
井上 広子 桑野 稔子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.421-430, 2012

日本では,やせや肥満が問題視される一方,BMI は「やせ」や「正常」と診断されるものの,体脂肪率が高い「正常体重肥満」の実態やその特性は,十分に明らかにされていない.そこで,本研究では女子大学生を対象に普通体型 (18.5 ≦BMI<25) の者を体脂肪率別に3 分類し,身体状況,血液パラメーター,体型認識,食品群および栄養素等摂取量の実態を把握し,体脂肪率との関連について検討を行った.対象者は,BMI が18.5-24.9 の範囲内に属する女子大学生57 名である.調査項目は,身体計測,血液生化学検査,ボディイメージ調査,食物摂取状況調査である.統計解析は,体脂肪率3 分位 (Body Fat Percentage: BFP<25.0, 25.0 ≦BFP<30.0, BFP ≧30.0) に分類し,体脂肪率分類別の各パラメーターにおける比較検討を行った.その結果,血清中HDL-Chol 濃度においては,BFP<25.0%group, 25.0 ≦BFP<30.0group に比較し,BFP ≧30.0group が有意に低値を示し,血清中中性脂肪濃度,レプチン濃度は有意に高値を示した.食物摂取状況調査においては,BFP 高値のほど油脂,果実類の摂取量が有意に多かった.本研究結果より,BMI が正常域であっても正常体重肥満者は血液生化学検査や食物摂取状況調査の結果より,今後適切な栄養教育の必要性が示唆された.