著者
駒津 順子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.543-550, 2021

<p> COVID-19の感染が拡大していた2020年4月に, 布製マスクを製作する中学校家庭科の授業実践を行った. 授業は1週間で行い, 中学校の2・3年生の283名の生徒がマスクを500枚製作した. 危機に対応する力を育成するため, 家庭科の布を用いた製作実習で学んだ知識・技能を活用したマスク製作の授業を実践し, その教育効果を検討した. 生徒の自由記述では, 学んだ技能を生かし生徒同士が協力して分業で製作を行い, 短期間で目標を達成した実感をあげる生徒が多かった. 知識・技能を活用し, 役割分担を行い短期間に生徒同士で協力する力が, COVID-19のような予期せぬ状況に対応できる力として効果的であった. 今回の実践を通して, より高い技能の習得への意欲をあげる生徒が多かったことも明らかになった. また教科の枠組みを超えた専門知識を有する他教科の教員との連携が, 今回の実践で大変に効果的であった. 実践を通した課題としては, 連続使用によるミシンの金属疲労や布地の補修を行うコンピュータミシンの整備など, 道具について補完が望ましい状況であることがあげられた.</p>
著者
表 真美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.260-271, 2021 (Released:2021-06-05)
参考文献数
30

明治期から昭和戦前期の学校における「家庭の掃除」に関する教育の内容を明らかにするために, 高等女学校家事科検定教科書を分析資料として記述を抽出, 10項目の分析軸を用いて分析し, 『主婦之友』の雑誌記事を補助資料として考察した. その結果, 以下の5点が明らかになった. 1) 49種中47種の教科書から掃除に関する記述が抽出された. 多くの教科書は上巻の「住居」の章に掃除についての節が含まれていた. 2) 毎日の掃除に加え, 曜日を決めて重点的に掃除を行う週掃除, また, 月掃除, 春秋の大掃除を行うことが記され, 毎日の掃除は, 払い掃除, 掃き掃除, 拭き掃除, 洗い掃除について掃除の仕方が説明されていた. 3) 大正期以降, 柄付雑巾や電気掃除機が労力を減らし, 効果的に掃除ができる道具として推奨されていた. 4) 誰が掃除をするかについては, 明治期は使用人の記述があったが, 大正期には「主婦」「婦人」が多く見られ, 昭和期にはその記述が減少した. 5) 掃除は住居の保存上また衛生上重要であることが多くの教科書に記されていた. また, 大正中期以降, 特に昭和期には, 掃除は精神上重要との記述が複数見られた.
著者
小川 暢祐 本島 佑香 村上 美音
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

[目的] 大学期の青年は、少なくとも食の面ではほぼ自立段階に達するが、生活リズムの乱れや偏食等、好ましくない生活習慣が固定化してしまうのを、大学教育等の介入を通じ是正させることは可能だろうか。本発表はそのような問題意識に立ち、前提となる、現代の大学生の嗜好・喫食パターンを、いわゆる学食の販売データから推定し、栄養摂取状況改善に寄与できる新規メニューを企画することを目的とした。<br>[方法] 大学学生食堂の販売月次データに基づき、各メニューに対する選好傾向を把握してソーティングしたうえで、使用食材や価格、あるいは期間限定フェアといった要因ごとに選好理由を推定した。その際、たとえば「鶏の照焼」と「ローストチキン」といった、いわば同工異曲的なメニューの併存にも注意を払い、選択式/記述式アンケートにより選好理由を絞り込み、要因の特性をある程度明確化した。次いで、得られた要因から、栄養機能のより高い食材・調理法を用いるメニューへの展開可能性を検討した。<br>[結果] 友人同士で談笑しながら昼食を摂る、というかつての喫食パターンにもまして、携帯電話の画面操作をしながら喫食する等の事例が増加していることに伴い、ある特徴をもつ品目の被選好傾向が高いこと等が明らかとなった。それをふまえ、学生食堂の既存メニューにはない、栄養機能の高い、かつ選好されることが期待される新商品のコンセプトを策定した。
著者
富士栄 登美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.248, 2018

目的 選択的夫婦別姓が国会で取り上げられてから20年以上が経過し、2015年には「選択的夫婦別姓は合憲」であるとの高等裁判所の判断が下された。2018年1月に男性事業者が「選択的夫婦別姓」訴訟を東京地裁に起こし、その波紋は大きく広がっている。別姓が認められない現状から「旧姓を結合した選択的夫婦同姓」を提案することを目的としている。<br>方法 邦人女性と仏人男性の婚姻届けに立ち会うところから始まる。これまでの「夫婦別姓問題」を検証し、これからどうすればジェンダー平等な社会になれるのかを考えてみる。<br>結果 日本の外務省は、2019年を目途にパスポートに旧姓併記の実施の検討を始めている。しかし、「父の姓に統一、妻は結合姓も認める、子供は父の姓」であるトルコのようになると推測される。この場合、妻は結合姓であっても夫は結合姓ではない。<br> 新しい家族は戸籍が新しくなるように姓も新しくなる必要がある。本当の意味のジェンダー平等の姓とは、双方の姓を結合した結合姓で且つ夫婦同姓ではないだろうか。発表者自身、結合姓を意識したとき、生まれてきた孫の存在に大きな変化を感じた。双方のどちらの孫でもあるという感覚である。これからの婚姻届けに記載する夫婦の氏は、レ点をつけるのではなく自分たちが選択して決めた新姓を書くことができるようになればと考えている。旧姓の残る夫婦同姓は、家族の崩壊どころか親族の絆が深まっている。
著者
峯木 眞知子 棚橋 伸子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.25, 2005

「目的」ダチョウ卵は、全国的に飼育されてきており、その鳥類最大の肉と卵は、新たな食料資源になる。著者は、ダチョウの卵を用いてスポンジケーキ、フィナンシェなど起泡性を利用した製品について鶏卵を用いた調理品の品質と比較してきた。本研究では、ダチョウの卵の熱凝固性について、検討した。「方法」ダチョウの卵は、茨城産のダチョウ(Struthio camelus domesticus)が産卵した無精卵、対照とした鶏卵(白色レグホーン種)は群馬産産卵3日以内の市販卵を用いた。熱凝固性を利用した調理品は、卵焼き及び厚焼き卵(無添加、卵液の塩1%、砂糖5%、10%)、プリン(卵15g、牛乳は卵液の1倍、2倍、砂糖は全体の15%)を作成した。それぞれの調理品について、テクスチャー(破断特性)、組織観察(光学顕微鏡)、色の測定、水分含有量および官能検査を行った。「結果」ダチョウの卵を用いた卵焼きは、鶏卵の製品に比較して加熱時間が長く、色が白く、できあがりの体積は大きかった。ダチョウ卵で作成した厚焼き卵は鶏卵の調理品と官能検査(分析型評点嗜好調査)で比較したところ、厚焼き卵の「見た目」の項目を除いて、「かたさ」「弾力」「味」が好まれた。ダチョウの卵を用いたプリンでは、鶏卵のプリンより破断応力が大きく、もろさ応力は小さかった。官能検査では、鶏卵のプリンと「総合的な好み」には差がなかったが、「やわらかさ」「なめらかさ」が有意に好まれた。従って、ダチョウ卵のプリンのレシピは、鶏卵と異なるものを使用する必要があった。DSC分析から、ダチョウ卵の卵黄及び卵白の凝固温度は鶏卵より幾分高いことがわかった。
著者
森 英子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.266, 2005

発意 郵便局の民営化・分離独立計画策は発案されて久しいが、反対異論続出でむしろ後退している。喫緊性が疑問視される新幹線や空港の公共事業など。経済効率からは考えられない政策・建設が昔から繰り返されている。幾つかの個別例を検証する。私は尊敬、同感するエコノミストの日経新聞紙上の論文を永く保存し続けているが、歳を思い、関心と共にいっさいを清算する記念とする。〈BR〉 方法 空前のバブル崩壊による不況の1992_から_1993年時に日経新・経済教室に載った政府・官僚・審議会委員等(現在も積極的な論者多数)の論説を主に、逐次発表されたそれや、その他の関連発言記事の中から取り上げ、彼等エコノミストの立案や施策が経済理論に基づくものでありながら、実現せず時としては予期せぬ危険な方向に発展してしまった事例をもって現場音痴を検証する。〈BR〉 実例・音痴たらしめる主因・アノマリースの階段 検証 赤字国債の膨張歯止めは至難 高橋是清蔵相ー不況克服に一時的が軍部の圧力で失敗、戦後は福田・太平蔵相ー一年か短期間で均衡財政復帰のつもりが赤字国債発行ゼロにするだけにバブルの恩恵があったにも拘らず十年を要した。経済理論通の各蔵相を実情音痴たらしめたのはレント・シーカー(公的タカリ屋)による拡大圧力を軽視しているからである。逆に官庁エコノミストは統計偏重で実体経済把握に甘く不況に後手であり、積極財政をとのエコノミストの声もある。経済理論からのアノマリースは第一に人の本能の経済合理思考と感情の葛藤が第二に行動経済学となり第三に社会的奸智がさらにアノマリース幅を拡大し恒常化してしまう。
著者
宋 明見 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.221-230, 1996

韓国女性の伝統衣装である韓服の乾性及び蒸発熱抵抗を測定し、これに及ぼす風の影響を調査した.測定対象は, 下着一式, 麻, 絹一重, 絹, ポリエステルの4種のチマ・チョゴリとチマ・チョゴリの上に着る冬用のコート, ドルマギである.乾性及び蒸発熱抵抗の測定には, ドライ及び発汗状態のサーマルマネキンを使用した.主たる結果は次の通りである.<BR>1) 乾性熱抵抗についてはドルマギが最高値を, 続いて絹, ポリエステル, 絹一重のチマ・チョゴリの順となり, 麻が最小値を示した.乾性熱抵抗は, 布地の厚さとの間に0.80の高い相関係数を示すが, 有風下では, 絹とドルマギを除き, 通気性による著しい低下を示した.<BR>2) 蒸発熱抵抗は, ドルマギ以下乾性熱抵抗と同様の順位で布地の厚さとの間に無風化で0.88の有意な相関を示した.有風下では, 麻, ポリエステル, ドルマギで蒸発熱抵抗が低下した.<BR>3) 韓国の伝統服の乾性・蒸発熱抵抗は, その形態や構造によってではなく, 布地の厚さと通気性によって変化すること, これは日本の伝統服, 着物の結果と同様であることが示された.
著者
森田 美佐 長嶋 俊介
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.497-502, 2005

従来の男女平等アプローチでは, 平等の結果が労働者個人やその家族・家庭生活にもたらす影響について, 十分な議論がなされていない.本研究の目的は, 男女平等アプローチに個人・家族成員の福祉(well-being)を保障する視点から, 日本の雇用労働者の実質的男女平等に向けた理論展開を試みることである.本研究は, 厚生経済学のケイパビリティ(潜在能力)アプローチを生活経営の視点から検討した.その結果, 「人間(Human)」を「3側面の存在(再生産的・生産的・文化的存在)」, 「ライフ(Life)」を「生命・暮らし・人生」の側面から捉え, 3Life(生命・暮らし・人生)をもつ人間の「キャリア」を「ライフ・キャリア」と定義した.そして「ライフ・キャリア」を平等指標とした.この指標は「3つの人間発達」の質向上と換言できる.この平等指標に向けて, 本研究ではCo-governanceの構築を提言した.Co-governanceとは, 営利企業と労働者・家族の対等な関係性(Partnership)の構築に向けた, 企業と非営利企業(労働組合, NGO, NPO, ボランティア団体等)との連携(Membership), 企業と国家との連携(Citizenship)を指す.Co-governanceの実践は, 営利企業を, 一般社会に開かれた, 社会的責任を果たす主体として存在させ, 企業と労働者および家族との対等性, 労働者と家族・家庭生活の質の保障に貢献する可能性をもつ.
著者
橋本 令子 加藤 雪枝
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.127, 2004

【目的】現代はIT化、デジタル化時代といわれるが、人は時間に追われストレスに埋もれている。その緩和策として快い音を耳にしたり、美しいものを見ることにより安らぎ感や安心感を得ようとする。そこで今回は、生理評価と心理評価の測定を、環境音に映像を加えることで聴覚と視覚の刺激が複合され、相乗効果が期待できると考え研究を行った。【方法】音刺激はのどかな、わくわく、騒々しいといった観点から、川のせせらぎ、小鳥の鳴き声、列車音、海辺の波音、花火の音、街の騒音の6種とし、映像刺激は音の効果を反映するものとした。被験者は13名である。生理評価は、椅子に腰掛けた閉眼状態で音のみ呈示した場合と、開眼状態でスクリーンに提示された映像をみた場合の脳波(α波含有率、1/fゆらぎ)と心電(心拍変動)を測定した。その後、心理評価として10形容詞対を用いてSD法を行い、呈示方法の違いによる生理と心理評価の関連を追究した。【結果】音と映像による心理評価は「快適性」と「活動性」の因子が抽出された。映像の種類によってα波含有率に差が生じ、花火、列車音は映像呈示することによりα波が喚起され快適感が得られ相乗効果が認められた。川のせせらぎ、小鳥の鳴き声、海辺の波音は音のみ呈示、映像呈示ともに快適感が得られた。しかし街の騒音は、映像呈示により不快感が増しα波が抑制された。1/fゆらぎは、映像呈示後の出現人数が最も増加し、視覚から得られた情報が終了後も反映された形態を示した。心拍変動については映像呈示中にリラックス感を得た。生理と心理評価との対応において、α波含有率は「快適性」「活動性」の因子と関係が明らかとなり、心拍変動は「快適性」の因子と関係が認められた。
著者
菅野 友美 青木 里奈
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 近年,児童の多くが野菜を苦手に感じており,野菜離れが進んでいる.本研究では,児童の野菜への苦手意識を減し,積極的に野菜を摂取することを目的として,野菜の苦手意識の要因をマスキングする調理法を検討した.そして食育教室を実施して親子で野菜を用いた菓子を製作・試食し,野菜の認知と苦手意識について調査した.<br><b>方法</b> 苦手意識の強い野菜を試料とし,蒸す,炒めるなどの調理後,順位法を用いて官能検査した.野菜の苦手意識要因のマスキング効果があった野菜ペーストを用いてクッキーを開発した.食育教室で,3種類の野菜ペーストを使ったクッキーを作製した.対象は4~11歳の児童9名とその保護者6名である.作製・試食後,野菜の苦手意識に関するアンケートを行った.調査は質問紙方で行い,回答は無記名・自記式とした.<br><b>結果</b> 野菜を砂糖などの調味料と一緒に調理することで野菜の苦味をマスキングすることができた。また一度冷凍し、凍結のままペースト状にして加熱することで野菜の香りや食感を改善することができた。そこで3種類の野菜を凍結後ペーストにし、砂糖で煮詰めた野菜ペーストを用いて親子でクッキーを作製した。クッキーに入っている野菜の種類をあててもらったところ,正解率の平均は22%であり,児童は苦手な野菜も摂取していたことから,苦手意識を克服できたといえた。また親子で作製するというコミュニケーションも苦手意識の克服に必要であることがわかった
著者
荒木 裕子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.106, 2007

【目的】工芸茶は中国で考案されたお茶で、緑茶の中に多彩な乾燥花弁を包み込み糸で結束して作られ、浸出時の茶葉と開いた花の美しさや近年の健康ブームと相まって消費が伸びている。本研究では工芸茶の抗酸化能を明らかにするためにポリフェノール含量、DPPHラジカル補足活性を測定した。さらに工芸茶を有効に飲用するための浸出方法についても考察した。【方法】試料は中国茶専門店で購入した工芸茶7種で、使用されている花弁の種類が異なるものを用いた。ラジカル補足活性はDPPH法を用い測定し、ポリフェノール量はFolin-Denis法でクロロゲン酸相当量として算出した。浸出条件の違いによる溶出固形分、ポリフェノール含量を測定した。【結果】工芸茶の製造に用いられる花弁はカーネンション、キンモクセイ、芙蓉など色彩の鮮やかなものが多く、緑茶と花弁の構成比は10対1程度であった。DPPHラジカル補足活性を調べた結果、全ての工芸茶に高い抗酸化活性が示され、ポリフェノール含量とDPPHラジカル補足活性の間には有意に高い正相関が認められた。お茶の浸出条件を調べた結果、工芸茶は製造時に茶葉を硬く結束していることから、煎茶や紅茶に比べ抽出するのに時間を要した。熱湯で5分程度の浸漬では結束中心部まで充分に浸透せず、10分以上浸漬することが望ましいと考えられた。また、2煎目以降でも充分な成分の溶出がみられたことから、お湯を継ぎ足しながら飲用する方法も有効であると考えられた。
著者
櫻井 美代子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

【目的】小麦粉より作られるうどん・そうめんなどの麺類のほかに、すいとんや団子類・まんじゅう類・パン類にも加工されるほか、食品のつなぎや衣などに使用されている。このうち日常食・行事食のいずれにも使われ、地域的特徴のみられるうどんをとりあげ、その種類呼称、調理法用途などについて調査を行った。また、日常のうどん食が継承されている相模原市津久井地区のうどんとの関係についても検討したい。資料としては、大正末期から昭和初期の聞き取り調査をまとめた、『日本の食生活全集』(農山漁村文化協会)47冊を中心に調査・検討を行った。<br>【結果及び考察】 うどんは、ほぼ全国的に食されており今回は、「うどん」の呼称に注目し、以下のように分類した。①地名や形態の呼称。「讃岐うどん」や「稲庭うどん」のように地域名があるものや「ひもかわうどん」のようにうどんの形態をあらわしてあるもの。②うどんをゆであげててから食す、「釜あげうどん」や汁に野菜やうどんを煮こんだ「にこみうどん」などうどんの調理法と用途による違い。③日常食と行事食<br>以上の分類により、地域に根づいた呼称があるうどんが各地で存在している。煮こみうどんでも、ゆでこぼしてから煮こむものと、煮汁に直接いれて煮こむものと調理性の違いによるものがあった。日常では、煮こみにする時には季節の野菜などを共に煮て食され、毎日夜うどんを常食している地域も存在した。日常食以外でも、盆や祭り・正月などにうどんが供えられたり、人寄せの時に振る舞われたりしていた。多くは、行事や接待に使用する時には、ゆでこぼしたうどんを使用することが多く、てんぷらや野菜の煮たものなどを添え、つけ汁で薬味を添えて食することが見受けられた。
著者
渡部 美香 山岸 弘 内藤 厚志 安江 良司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.250, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 生活者が浴室内でカビを見つけたことがある箇所に,「壁」,「ドアや窓のゴムパッキン」と同様に,「洗面器やシャンプー等の小物」が挙げられており,生活者は浴室内小物のカビが気になっていることが判ってきた.本研究では,浴室内小物のカビ汚染及び掃除実態を明らかにし,簡便に効率よく行えるカビ対策法提案を目的とする.方法 掃除実態は,月に1回以上自分で家庭内の掃除をしている首都圏の30~59歳既婚女性450名を対象にWEB調査を実施した.カビ汚染実態は,首都圏の11家庭を対象に浴室内小物のカビ生菌数を測定した.結果 生活者の68%は1年間に浴室内小物にカビを見つけたことがあるが,その37%はカビを見つけても掃除をせず放置していることが判った.一方,浴室内小物にカビを見つけたことのある生活者の63%はカビ取り掃除をしているが,その49%は塩素系カビ取り剤を使用せず浴室用洗剤等で掃除をしていた.以上の結果から,浴室内小物はカビ汚染されている可能性が高いと仮説を立て,一般家庭の浴室内小物のカビ汚染実態を調査した.その結果,カビは11家庭中4家庭の洗面器から検出され,最大で数万CFU/cm2,イスにおいては7家庭から検出され,最大で数百万CFU/cm2存在しており,多くの家庭の浴室内小物がカビ汚染されていた.本報告では,さらに浴室内小物も含め浴室内隅々まで簡便に効率よくカビ除菌ができるカビ対策の提案について報告する.
著者
島村 知歩 藤本 さつき 池内 ますみ 花崎 憲子 小西 冨美子 志垣 瞳
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.180, 2005

【目的】近年わが国の食生活では、外食の日常化、中食産業の多様化や食情報伝達による食事の均一化がみられるようになってきた。そこで、家庭で主菜献立として作られてきた魚介・肉料理の手作り度・購入頻度、食品の摂取状況について、その実態を明らかにし、現場の教育に生かすためにアンケート調査を実施した。【方法】2002年11月_から_12月、東京、愛知、奈良、大阪、京都、岡山、広島、福岡の大学および短期大学14校に在籍する学生1092名の家庭における調理担当者に、アンケート調査を実施した。調査内容は、調理担当者の属性、調理時間、食品の摂取状況、魚介・肉料理の手作り度・購入頻度などであった。【結果】食品の摂取状況をみると、主食として週5回以上摂取されているものは、朝食では米が44%、パンが42%であり、夕食では米が95%であった。食品の摂取頻度は、年代や夕食の調理時間により違いがみられた。主菜となる動物性食品では、週3回以上摂取している人が卵類で84%、肉類で78%、魚介類で65%であった。家庭で作ると答えた魚介料理は、多い順に煮魚87%、塩焼き83%、鍋もの83%であり、肉料理はカレー98%、肉じゃが92%、肉野菜炒め91%などであった。購入すると答えた魚介料理は、さしみ85%、たたき53%、みそ・粕漬け35%であり、肉料理はシューマイ57%、ギョーザ49%、ミートボール49%などであった。調査対象者の50%以上が家庭で作ると答えた料理は、魚介料理よりも肉料理が多かった。
著者
丸井 寧子 中山 徹 大谷 由紀子 杉山 隆一 長瀬 美子 丸山 美和子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.641-650, 2006 (Released:2007-10-12)
参考文献数
16
被引用文献数
1

It is evident that the present framework of kindergartens and nurseries are not capable of coping with the increasingly diversified needs of early childhood education and childcare facilities. Under such circumstances, there have been cases of combining kindergarten and nursery into a single facility aiming at prompting early childhood education, supporting parents in childcare, and solving various problems involving kindergartens and nurseries including helping decrease the number of those working parents in the waiting list of the nurseries of their choice. An overall pattern of how the kindergarten and the nursery are unified into one institution and how it is operated was studies. The subject of this study was those public institutions which have been established and managed at various places in this country. As a result of the unification, the stuff are positive about the advantage of diversification of functions and expansion of activities thanks to an increase of children in their facilities. The expanded facility has brought about, on the other hand, the difficulty in personnel and institution management.
著者
土岐 圭佑
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.243-255, 2018

<p>  The purpose of this research was to examine changes and problems in the concept of independence in the study of home economics through an investigation of research papers about independence in home economics. We also aimed to present perspectives to overcome these problems. The following points became clear.</p><p>  1. In the first period, research aimed to foster independence with regard to everyday life and to show that independence can be achieved by yourself.</p><p>  2. In the second period, research was focused on not only independence in everyday life, but on psychological independence, economic independence, and social independence. However, the concept of independence did not change from that in the first period.</p><p>  3. In the third period, research was focused on independence as the premise of dependence. However, in the study of consumption life, independence was regarded as how an independent individual can consider how to build a better society.</p><p>  4. Based on the results, it is necessary to understand that the concept of independence in the study of home economics is the creation of a relationship of interdependence.</p>
著者
須田 有実子 原 知世 村上 舞花 小林 三智子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.117, 2017 (Released:2017-07-08)

【目的】カカオ含量の異なる3種類のチョコレートを摂取することにより脳波及び自律神経活動がどのように変化するかを解析することを目的とした。【方法】カカオ含量の異なるチョコレート3種類(33%、56%、70%)を試料とした。実験協力者は、パネル選別試験に合格した20~21歳の女性15名であった。脳波の測定にはミューズブレインシステム(株式会社デジタルメディック)を用い、チョコレート摂取前(安静時)、摂取中、摂取後の3時点において、各20秒間3種のチョコレートで繰り返し測定を行った。脳波が正しく検出されるように、測定間でリセットとして暗算を行った。自律神経の測定には加速度脈波測定システム アルテット(株式会社ユメディカ)を用い、安静時及び各チョコレート摂取後に各2分間測定を行った。測定間には、実験協力者にストレスを与えないように5分間の休憩を交えた。脳波と自律神経の測定時にはパソコンに映し出される車窓の映像を眺める状態とし、測定条件を一定にした。【結果】脳波は、測定不能者1名を除いた14名のデータを解析したところ、チョコレート摂取後にα波が安静時に比べて摂取後に増加した人がカカオ含量33%で5人、56%で5人、70%で4人であった。自律神経活動での測定では、15名中8名がチョコレート摂取により、LF/HF-MEMは副交感神経が優位となり、くつろいで落ち着いている状態であった。
著者
大澤 絢子 加藤 友佳里 嶋谷 真理 野寺 和花 服部 菜里 眞岡 孝至 新藤 一敏
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.499-505, 2011-08-15 (Released:2015-03-11)
参考文献数
23

The coconut crab (Birgus Latro), the largest terrestrial arthropod in the world, contains carotenoid pigments mainly in the shell, although no previous studies have identified them. We isolated the pigments in this study, by EtOAc extraction, silica gel column chromatography, and GPC column chromatography.We identified them as astaxanthin [optical isomeric ratio: (3R, 3’R), 9%; (3R, 3’S; meso), 41%; (3S, 3’S),50%] and diacyl astaxanthins [fatty acid ratio: stearic acid (18:0), 46%; palmitic acid (16:0), 26%; and oleic acid (18:1n-9), 18%] by 1H-NMR, LRESI-MS, chiral phase HPLC and GC analyses. This is the first detailed analysis of the carotenoids contained in coconut crab. We also examined the antioxidative activity of isolated astaxanthin and diacyl astaxanthins in the singlet oxygen suppression model. These compounds showed equal antioxidative activities with an IC50 value of 4 μM.